【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、サイズ中に存在するナノ材料は少量であっても、炭素繊維複合材料の機械的特性を格段に改善することが判明した。
【0012】
本発明は、コーティングが、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の乾燥重量に対して0.01重量%から10重量%未満までのナノ粒子を含む、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料であって、コーティングが、さらなる反応に関与することができる、炭素繊維材料を提供する。
【0013】
本発明の範囲において、ナノ粒子という用語は、有機粒子または無機粒子を意味し、好ましくは無機粒子、より好ましくは酸化物粒子および/または水酸化物粒子、さらにより好ましくは鉱物由来でない粒子を意味しており、このナノ粒子は、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ、バナジウム、セリウム、鉄、マグネシウムまたはケイ素の酸化物および/または水酸化物を含むことが特に好ましく、このナノ粒子は、SiO
2粒子であることがより特段に好ましい。SiO
2粒子は、沈降シリカ、コロイダルシリカ、珪藻土(キースラガー)およびヒュームドシリカから選択されることが好ましく、コロイダルシリカが特に好ましい。
【0014】
SiO
2粒子は、表面処理によって疎水化されていることが好ましい。EP2067811(US2009/0149573)の第60〜65段落において開示された表面改質粒子が特に好ましく、SiO
2ナノ粒子は、アルキルアルコキシシランまたはアリールアルコキシシランによって表面処理されていることがより特段に好ましい。
【0015】
無機粒子は、表面処理されていることがより好ましい。表面処理は、トリアルキルクロロシラン、ジアルキルジクロロシラン、アルキルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン、Si−H官能性ポリシロキサン、カルボン酸、キレート化剤およびフルオロポリマーならびにこれらの混合物等の有機ケイ素化合物から選択される化合物によって実施されていることが好ましい。
【0016】
ナノ粒子は、好ましくは球体形状または不規則的な形状であり、ナノ粒子は、より好ましくは球体形状である。
【0017】
コーティングが、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の乾燥重量に対して0.01重量%から10重量%未満までのナノ粒子を含む、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料であって、コーティングが、さらなる反応に関与することができ、ナノ粒子が、表面改質された球形シリカナノ粒子である、炭素繊維材料が特に好ましい。
【0018】
ナノ粒子の平均直径は、好ましくは1nmから300nm、より好ましくは1nmから200nmまで、さらにより好ましくは2nmから150nmまで、さらにより好ましくは3nmから100nmまで、特に好ましくは5nmから50nmまでである。
【0019】
炭素繊維への塗布前のナノ粒子の直径は、DLS(動的光散乱法)によって測定されることが好ましい。DLSの平均値は、重量平均値である。炭素繊維上のナノ粒子の直径は、電子顕微鏡写真によって判定される。このとき、平均値は、相加平均である。
【0020】
少なくともSiO
2粒子を含む、異なる種類のナノ粒子の混合物がさらに好ましく、これらの混合物が、すべてのナノ粒子の総質量に対して好ましくは50重量%超、より好ましくは80重量%超、さらにより好ましくは95重量%超、特に好ましくは99重量%超のSiO
2粒子を含む。
【0021】
直径が5nmから50nmまでであり、表面が、疎水性修飾されている、特に、アルキルアルコキシシランおよび/またはアリールアルコキシシランによって疎水化されている、SiO
2ナノ粒子が特に好ましい。
【0022】
炭素繊維材料は好ましくは、個別のフィラメント、個別のフィラメントを含む繊維束、または、個別のフィラメントもしくは繊維束を含むヤーンである。炭素繊維材料は、個別のフィラメント、繊維束またはヤーンを含むレイドスクリムおよび織物等の製品であることがさらに好ましい。繊維束を含むレイドスクリムが特に好ましい。織物は、好ましくはリネン織り型のものである。好ましいレイドスクリムは、複数の層から構成されており、これらの層は、単一方向への配向(一軸配向)または多方向への配向(多軸配向)を有し得る。
【0023】
レイドスクリムには、層の繊維または繊維束が編組み手順によって曲げられないという利点がある。これにより、力を吸収する能力が向上する。
【0024】
炭素繊維材料は、炭素繊維から製造されたレイドスクリムであることが特に好ましい。
【0025】
炭素繊維材料は、清浄化済みの材料の形態のまたはあらかじめコーティングされた、半製品であることが好ましく、清浄化済みの炭素繊維材料を使用することが好ましい。清浄化方法は、材料に応じたものであることが好ましく、好ましい清浄化方法は熱処理であり、赤外線源を用いた照射が特に好ましい。熱処理は、不活性気体中で実施されることが好ましい。不活性気体は、酸素を含まず、不活性気体中に存在する酸素の量は、好ましくは1体積%未満、より好ましくは0.1体積%未満、特に好ましくは50ppm未満であることが好ましい。
【0026】
好ましい赤外線源の長さは、1mである。炭素繊維材料は、5mmから10cmまで、好ましくは1cmから3cmまでの距離にわたって、赤外線源を通り過ぎるように誘導される。照射により、炭素繊維材料の表面上に配置された化合物の分解が起きる。この手順は、同一の条件下で照射を繰り返した後であっても、1つの試験試料の質量または複数の同一の試験試料の質量が、測定値に対して1%超相違することがないように最適化される。
【0027】
本発明のコーティングされた炭素繊維材料が、ナノ材料によってコーティングされている場合、炭素繊維材料は好ましくは、個別のフィラメント、繊維束、織物またはレイドスクリムの形態になっており、より好ましくは、繊維束が、ナノ材料によってコーティングされている。
【0028】
本発明の炭素繊維材料は、コーティングされた繊維の乾燥重量に対して好ましくは9重量%未満、より好ましくは8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満または2重量%未満のナノ材料を含む。
【0029】
さらにより好ましくは、本発明の炭素繊維材料は、コーティングされた繊維の乾燥重量に対して0.05重量%から1.6重量%まで、特に好ましくは0.1重量%から1.2重量%まで、特に好ましくは0.2重量%から1.0重量%までのナノ材料を含む。
【0030】
特に好ましくは、ナノ粒子によってコーティングされた本発明の炭素繊維材料は、エポキシ樹脂中に取り込まれた、アルキルアルコキシシランおよび/またはアリールアルコキシシランによって表面処理された球形SiO
2ナノ粒子によってコーティングされた繊維束であり、コーティングされた繊維束が、コーティングされた繊維束の乾燥重量に対して0.1重量%から2重量%までのナノ粒子を含み、コーティングが、さらなる反応に関与することができる。
【0031】
炭素繊維材料のコーティングのさらなる反応は、架橋反応によってポリマーマトリックスへの化学結合を可能にする反応である。ポリマーマトリックスおよびナノ粒子によってコーティングされた本発明の炭素繊維材料は、コーティングの表面において炭素繊維材料のコーティングがポリマーマトリックスと反応することができる、炭素繊維複合材料を形成し得る。
【0032】
これらの反応は、エポキシドの開環重合を伴うことが好ましい。
【0033】
本発明は、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の製造のための方法であって、炭素繊維材料を、浸漬もしくは噴霧によってまたは浴を用いて、ナノ粒子含有成膜剤を含む水性エマルションと接触させ、続いて、コーティングされた炭素繊維材料を乾燥させることを含み、コーティングが、コーティングされた炭素繊維材料の乾燥重量に対して0.01重量%から10重量%未満までのナノ粒子を含み、水性エマルションが、表面改質された球形シリカナノ粒子を含む、方法をさらに提供する。
【0034】
コーティングが、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の乾燥重量に対して0.01重量%から10重量%未満までのナノ粒子を含み、炭素繊維材料を、ナノ粒子含有成膜剤の水性エマルションを含む浴と接触させ、続いて、コーティングされた炭素繊維材料を乾燥させる、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の製造のための本発明の方法が好ましい。
【0035】
炭素繊維材料が、浴中に直接浸漬されず、代わりに、ナノ粒子含有成膜剤が、回転式アプリケーターロールによって炭素繊維材料に塗布されることが好ましい。アプリケーターロールの下側が浴中に浸漬され、回転中に、フィルムの形態のある特定の量の成膜剤を取り込み、炭素繊維材料が、ロールの上面に付いたナノ粒子含有成膜剤と接触することが好ましい。ここで、炭素繊維材料に塗布される量は、ナノ粒子含有成膜剤の水性エマルションに固有の特性、例えば、好ましくは粘度ならびにロールの回転速度、ロールの直径およびロール表面の性質に依存する。ロールの速度と炭素繊維材料の速度は、滑り摩擦が生じないように互いに対して合わせられていることが好ましい。
【0036】
成膜剤は、反応性の良い架橋性モノマーまたはオリゴマーであり、特に好ましくはエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0037】
コーティングが、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の乾燥重量に対して0.01重量%から10重量%未満までのナノ粒子を含み、浸漬もしくは噴霧によってまたは浴を用いて炭素繊維材料を、ナノ粒子含有成膜剤を含む水性エマルションと接触させ、続いて、コーティングされた炭素繊維材料を乾燥させる、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の製造のための方法であって、水性エマルションが、表面改質された球形シリカナノ粒子を含み、成膜剤が、エポキシ樹脂である、方法がより好ましい。
【0038】
ナノ粒子含有成膜剤の水性エマルションは、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースであるのが好ましい粘度調整剤、湿潤剤および分散剤ならびに乳化剤から選択されることが好ましいさらなる成分を含むことが好ましい。
【0039】
水性エマルションの固形分は、水を除外した成分全体から計算される。
【0040】
水性エマルションは、エマルションの固形分に対して1重量%から50重量%まで、好ましくは5重量%から30重量%まで、特に好ましくは10重量%から20重量%までのナノ粒子を含むことが好ましい。
【0041】
コーティングが、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の乾燥重量に対して0.01重量%から10重量%未満までのナノ粒子を含み、浸漬もしくは噴霧によってまたは浴を用いて炭素繊維材料を、ナノ粒子含有成膜剤を含む水性エマルションと接触させ、続いて、コーティングされた炭素繊維材料を乾燥させる、ナノ粒子によってコーティングされた炭素繊維材料の製造のための方法であって、水性エマルションが、表面改質された球形シリカナノ粒子を含み、成膜剤が、エポキシ樹脂であり、水性エマルションが、エマルションの固形分に対して10重量%から20重量%までのナノ粒子を含む、方法が特に好ましい。
【0042】
本発明の方法における乾燥は、室温より高い温度、好ましくは30℃から95℃まで、より好ましくは35℃から90℃まで、さらにより好ましくは40℃から85℃まで、さらにより好ましくは45℃から80℃まで、特に好ましくは50℃から75℃まで、特に好ましくは55℃から70℃までで実施されることが好ましい。
【0043】
乾燥は、0.5分から10分以内で、好ましくは1分から3分以内で実施されることが好ましい。
【0044】
乾燥は、向流の熱風によって実施されることが好ましい。
【0045】
特に、本発明の方法における乾燥は、55℃から70℃までの温度において、向流の熱風によって1分から3分以内で実施される。
【0046】
本発明の方法におけるコーティング手順および乾燥は、繰り返し実施してもよい。
【0047】
ナノ粒子含量を測定するために、本発明の方法の最後に、炭素繊維材料を恒量になるまで乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、好ましくは55℃から70℃までで実施されるが、室温に冷却した後で材料を秤量し、連続した少なくとも2回の秤量の差が測定値に対して0.5%未満になるまで乾燥および秤量手順を繰り返す。
【0048】
本発明は、炭素繊維複合材料の製造のための、ナノ粒子によってコーティングされた本発明の炭素繊維材料および/または本発明の方法の生成物の使用をさらに提供する。
【0049】
本発明は、ナノ粒子によってコーティングされた本発明の炭素繊維材料をポリマーマトリックス中に含む、炭素繊維複合材料および/または本発明の方法の生成物をさらに提供する。
【0050】
ポリマーマトリックスは、熱硬化性樹脂であり、好ましくはエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂または不飽和ポリエステル樹脂であり、特にエポキシ樹脂であることが好ましい。