特許第6800892号(P6800892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒルティ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6800892反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800892
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20201207BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20201207BHJP
   G01S 17/08 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01C3/06 120Q
   G01S7/481 A
   G01S17/08
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-560228(P2017-560228)
(86)(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公表番号】特表2018-514789(P2018-514789A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016060485
(87)【国際公開番号】WO2016184733
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】15167961.0
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴゴラ, トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンター, アンドレアス
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102013205589(DE,A1)
【文献】 特開2007−010346(JP,A)
【文献】 特開2009−063383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射型目標物までの距離を光学的に測定する測距置であって、
1つのプリズムを備える単体のリトロリフレクタ体(47,61)、及び面状に互いに隣接して配置された複数のプリズムを備えるリトロリフレクタ面(71)のいずれかで構成される反射型目標物と、
電気光学装置として構成され、レーザビーム(41)を発するビーム発生源(31)と
もう1つの電気光学装置として構成され、前記反射型目標物(47,61;71)で反射され生成された受光ビーム(42)を受光する検出器(32)と、
前記レーザビーム(41)を整形する出射側光学システム(35)及び前記受光ビーム(42)を整形する受光側光学システム(36)を有するビーム整形システム(33)と、
前記レーザビーム(41)のビーム経路に配置可能であって、前記単体のリトロリフレクタ体(4761)までの前記距離を測定するように構成された、一方のレーザビーム整形部材(62,65;82,92;128,133;158,163)と、
前記レーザビーム(41)のビーム経路に配置可能であって、前記リトロリフレクタ面(71)までの距離を測定するように構成された、他方のレーザビーム整形部材(72;102,112;138,143,147;168,173,177)とを備え、
前記レーザビーム(41)のビーム径は、前記単体のリトロリフレクタ体(47,61)に入射する際には、前記プリズムの寸法よりも小さく、且つ、前記リトロリフレクタ面(71)に入射する際には、前記複数のプリズムの寸法よりも大きく、
前記一方のレーザビーム整形部材は、少なくとも1つの出射側開口(63,66.1〜66.3;84,85.1〜85.4,94,95.1〜95.4;129,134;159,164)を有する出射側開口配置部材(62,65;82,92;128,133;158,163)として構成され、
前記少なくとも1つの出射側開口は、部分的ビーム(64,67.1〜67.3)を生成すると共に、前記部分的ビーム(64,67.1〜67.3)を、1.0ミリラジアンの下限角度(αmin)を下回ることのない1つまたは複数の広がり角(α,α)に広げ
記他方のレーザビーム整形部材(72;102,112;138,143,147;168,173,177)は、整形用開口を有する部材として構成され、当該整形用開口(72;102,112;138,143,147;168,173,177)は、前記レーザビーム(41)を、0.3ミリラジアンの上限角度(βmax)より小さい1つまたは複数の広がり角(β)を有した整形後レーザビーム(74)に変換する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記出射側開口配置部材(65;82,92;128,133;158,163)は、複数の出射側開口(66.1〜66.3;84,85.1〜85.4,94,95.1〜95.4;129,134;159,164)を有し、
前記複数の出射側開口(66.1〜66.3)は、複数の部分的ビーム(67.1〜67.3)を生成し、
前記部分的ビーム(67.1〜67.3)のそれぞれは、1.0ミリラジアンの下限角度(αmin)を下回ることのない1つまたは複数の広がり角(α)で広がる
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記出射側開口(84,85.1〜85.4,94,95.1〜95.4)は、前記レーザビーム(41)に対して部分的な透過性を有するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記レーザビーム(41)のビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第1の出射側開口(63;84,85.1〜85.4;129;159)を有する第1の出射側開口配置部材(62;82;128;158)として構成された第1のレーザビーム整形部材(62;82;128;158)と、
前記レーザビーム(41)のビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第2の出射側開口(66.1〜66.3;94,95.1〜95.4;134;164)を有する第2の出射側開口配置部材(65,92,133,163)として構成された第2のレーザビーム整形部材(65;92;133;163)とを備え、
前記第1及び第2の出射側開口配置部材(62,65;82,92;128,133;158,163)は互いに相違する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の測距装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の出射側開口配置部材(62,65;82,92;128,133;158,163)は、前記第1の出射側開口(63;84,85.1〜85.4;129;159)の寸法と、前記第2の出射側開口(66.1〜66.3;94,95.1〜95.4;134;164)の寸法とが互いに相違することを特徴とする請求項4に記載の測距装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の出射側開口配置部材(62,65;82,92)は、出射側開口(63,66)の数、出射側開口(84,85.1〜85.4,94,95.1〜95.4)の開口面積、及び出射側開口(84,85.1〜85.4,94,95.1〜95.4)の透過性のうちの少なくとも1つが互いに相違することを特徴とする請求項4または5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記整形用開口(102,112;138,143)は、前記レーザビームに対して部分的な透過性を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項8】
前記レーザビーム(41)のビーム経路に配置可能な第1の整形用開口(102;138,143;168,173)と、
前記レーザビーム(41)のビーム経路に配置可能な第2の整形用開口(112;143,147;173,177)とを備え、
前記第1及び第2の整形用開口(102,112;138,143,147;168,173,177)は、寸法、開口面積、透過性のうちの少なくとも1つが異なる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の測距装置。
【請求項9】
前記受光ビーム(42)のビーム経路に配置可能であり、少なくとも1つの受光側開口(86.1〜86.4,96.1〜96.6;104.1〜104.6,114.1〜114.4;131,136,140,145,149;161,166,170,175,179)を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材(83,93;103,113;130,135,139,144,148;160,165,169,174,178)を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の測距装置。
【請求項10】
前記受光側開口配置部材(83,93;103,113;130,135,139,144,148;160,165,169,174,178)は、互いに間隔を置いて設けられた複数の受光側開口(86.1〜86.4,96.1〜96.6;104.1〜104.6,114.1〜114.4;131,136,140,145,149;161,166,170,175,179)を有することを特徴とする請求項9に記載の測距装置。
【請求項11】
前記受光側開口(86.1〜86.4,96.1〜96.6;104.1〜104.6;131,136,140,145,149)は、前記受光ビーム(42)に対して部分的な透過性を有するように構成されることを特徴とする請求項9または10に記載の測距装置。
【請求項12】
前記受光ビーム(42)のビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第1の受光側開口(86.1〜86.4;104.1〜104.6;131,136,140,145;161,166,170,175)を有する第1の受光側開口配置部材として構成された第1の受光側ビーム整形部材(83;103;130,135,139,144;160,165,169,174)と、
前記受光ビーム(42)のビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第2の受光側開口(96.1〜96.6;114.1〜114.4;136,140,145,149;166,170,175,179)を有する第2の受光側開口配置部材として構成された第2の受光側ビーム整形部材(93;113;135,139,144,148;165,169,174,178)とを備え、
前記第1及び第2の受光側開口配置部材(83,93;103,113;130,135,139,144,148;160,165,169,174,178)は互いに相違する
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の測距装置。
【請求項13】
前記第1及び第2の受光側開口配置部材(83,93;103,113;130,135,139,144,148;160,165,169,174,178)は、受光側開口(86.1〜86.4,96.1〜96.6;104.1〜104.6,114.1〜114.4;131,136,140,145,149;161,166,170,175,179)の数、受光側開口(86.1〜86.4,96.1〜96.6;104.1〜104.6,114.1〜114.4;131,136,140,145,149;161,166,170,175,179)の開口面積、及び受光側開口(86.1〜86.4,96.1〜96.6;104.1〜104.6,114.1〜114.4;131,136,140,145,149)の透過性のうちの少なくとも1つが互いに相違することを特徴とする請求項12に記載の測距装置。
【請求項14】
出射側開口配置部材(82,92;128,133;158,163)として構成されたレーザビーム整形部材と、受光側開口配置部材(83,93;130,135;160,165)として構成された受光ビーム整形部材とが第1の整形部材(81,91;122,123;152,153)に設けられ、
前記第1の整形部材(81,91;122,123;152,153)は、前記レーザビーム(41)のビーム経路及び前記受光ビーム(42)のビーム経路に配置可能である
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の測距装置。
【請求項15】
整形用開口(102,112;138,143,147;168,173,177)として構成されたレーザビーム整形部材と、受光側開口配置部材(103,113;139,144,148;169,174,178)として構成された受光ビーム整形部材とが第2の整形部材(101,111;124,125,126;154,155,156)に設けられ、
前記第2の整形部材(101,111;124,125,126;154,155,156)は、前記レーザビーム(41)のビーム経路及び前記受光ビーム(42)のビーム経路に配置可能である
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の測距装置。
【請求項16】
少なくとも1つの第1の整形部材(81,91;122,123;152,153)と、少なくとも1つの第2の整形部材(101,111;124,125,126;154,155,156)とを備えることを特徴とする請求項14または15に記載の測距装置。
【請求項17】
前記第1の整形部材(81,91;122,123;152,153)と、前記第2の整形部材(101,111;124,125,126;154,155,156)との少なくとも一方を複数備えることを特徴とする請求項16に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載するような、反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射型目標物までの距離を光学的に測定する公知の測距装置として、望遠鏡と、距離測定デバイスと、レーザビームの広がりを調整する調整デバイスとからなる測距装置が開示されている。距離測定デバイスは、レーザビームを発するビーム発生源と、目標物で反射されて生じた受光ビームを受光する検出器と、レーザビームのビーム整形を行う出射側光学システム、及び受光ビームのビーム整形を行う受光側光学システムを有したビーム整形システムとを備える。レーザビームの広がりは、ビーム発生源におけるレーザビームの射出角や、ビーム発生源と出射側光学システムとの間のビーム経路長、またはビーム発生源の前方への付加的な出射側光学システムの配置により調整が可能である。レーザビームの広がりを調整するために提案されている手段は、いずれも距離測定デバイスの内部で行われるものであり、距離測定デバイスの安定性が低下するという欠点がある。
【0003】
また、反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置は、特許文献2によっても公知である。この測距装置は、距離測定デバイスと、目標物に向けてレーザビームを調整する調整デバイスとを備えている。距離測定デバイスは、1つまたは2つのビーム発生源と、検出器と、出射側光学システム及び受光側光学システムを有したビーム整形システムとを備える。1つまたは2つのビーム発生源は、ビーム広がりが大きい第1レーザビームと、ビーム広がりが小さい第2レーザビームとを生成し、第1レーザビームは、散乱型目標物までの距離測定用に設けられ、第2レーザビームは、反射型目標物までの距離測定用に設けられる。
【0004】
適切なレーザビームの選択は、ビーム発生源、または検出器で行うことが可能である。一具体例では、第1レーザビーム及び第2レーザビームが同時に発せられて目標物に照射される。受光ビームのビーム経路には、検出器の手前に光学フィルタが配置され、第1レーザビーム及び第2レーザビームの一方のみが、この光学フィルタを通過するようになっている。光学フィルタは、手動操作によって配置され、または個々の光学フィルタを受光ビームのビーム経路に送り込むことが可能な、モータ駆動式のフィルタホイールまたはフィルタスライダにより配置される。異なるビーム広がりを有した2つのレーザビームが必要となるということは、目標物までの距離の測定を調整する上で不利である。様々なビーム広がりを形成するためには、いくつかのビーム経路といくつかのビーム整形用光学システムが必要となり、そのために必要な空間が増大する。
【0005】
更に、特許文献3も、反射型目標物までの距離を光学的に測定する公知の測距装置として、距離測定デバイスと、距離測定デバイスの外部に配置された調整デバイスとからなる測距装置を開示する。距離測定デバイスは、ビーム発生源と、検知器と、出射側光学システム及び受光側光学システムを有したビーム整形システムとを備える。調整デバイスは、レーザビームのビーム経路に配置可能で散乱用光学システムとして構成された、少なくとも1つのレーザビーム整形部材を備える。反射型目標物までの様々な距離の範囲に対してレーザビームを調整可能とするため、散乱用光学部材として構成されて、それぞれが互いに異なる散乱特性を有した複数のレーザビーム整形部材が設けられる。更なる展開として、調整デバイスは、受光ビームのビーム経路に配置可能で散乱用プレートとして構成された、少なくとも1つの受光ビーム整形部材を備える。散乱用プレートを用いることにより、受光ビームを減衰させて、検出器が過剰入力状態となるのを防止することが可能となる。受光ビームを反射型目標物までの様々な距離の範囲に適合させることができるようにするため、散乱用プレートとして構成されて光散乱特性が互いに異なる複数の受光ビーム整形部材が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19727988号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19840049号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102013205589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反射型目標物までの距離を光学的に測定する公知の測距装置は、例えば直接的または間接的に入射する太陽光など、外部光により、固定的な測定時間での距離測定では測定誤差が増大し、そのために測定結果の精度が低下するという欠点があり、また距離測定に必要な測定時間が増大するという欠点がある。レーザビームとは異なり、外部光は方向を特定することができず、様々な方向から入り込む可能性がある。散乱用プレートとして構成された受光ビーム整形部材は、方向が定められた受光ビームに比べ、きわめてわずかしか外部光を減衰させない。リトロリフレクタ面を用いる場合、光学的に距離を測定する公知の測距装置は、散乱用光学部材が引き起こすビームの拡散に起因した更なる欠点を有する。リトロリフレクタ面が、入射するレーザビームの光軸に直角に配置されない場合には、最短距離がレーザビームの光軸上では測定されず、距離測定デバイスが測定した距離は、実際の距離に対して誤差を有する。このような誤差は、散乱用光学部材によってレーザビームが拡散するほど増大する。
【0008】
本発明の目的は、反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置として、単体のリトロリフレクタ面までの距離の測定に好適であり、簡易な装備で外部光を減衰させることが可能な測距装置を得ることにある。また、この測距装置は、リトロリフレクタ面までの距離の光学的な測定にも好適となるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
初めに述べた、反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置において、このような目的は、独立請求項1に記載の特徴を有した発明によって達成される。有用な更なる態様は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明によれば、反射型目標物までの距離を光学的に測定するための測距装置は、レーザビーム整形部材が、少なくとも1つの出射側開口を有する出射側開口配置部材として構成され、この少なくとも1つの出射側開口は、部分的ビームを生成すると共に、当該部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度を下回ることのない1つまたは複数の広がり角で広げる。1.0ミリラジアン以上の広がり角を有した部分的ビームを形成する少なくとも1つの出射側開口を有した、出射側開口配置部材として構成されるレーザビーム整形部材は、単体のリトロリフレクタ体までの距離を光学的に測定するのに好適である。広がり角の下限角度を1.0ミリラジアンとすることにより、単体のリトロリフレクタ体までの距離を計測する際に、レーザビームの大きな広がりが確実に生じる。1.0ミリラジアン以上の広がり角とすることにより、単体のリトロリフレクタ体の中央部分に確実に部分的ビームが当たるような、レーザビームの十分な広がりを確保することができる。部分的ビームが、単体のリトロリフレクタ体の中央部分に当たらなかった場合、反射された受光ビームは、平行にずれることによって受光側光学システムを外れ、距離測定デバイスの検出器から逸れるおそれがある。
【0011】
出射側開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。出射側開口の開口形状により、部分的ビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するかが定まる。円形または正方形の開口形状を有した出射側開口は、1つの寸法(円形の径、または正方形の辺の長さ)によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。楕円形または長方形の開口形状を有した出射側開口は、2つの寸法によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した出射側開口は、出射側開口を出た後に、最小広がり角と最大広がり角との間にある複数の広がり角を有した部分的ビームを生成する。
【0012】
出射側開口によって生成される部分的ビームの広がり角は、当該出射側開口の寸法により調整することが可能である。1.0ミリラジアンの下限角度は、部分的ビームの広がり角が1.0ミリラジアンの下限角度を下回ってはならない場合に、出射側開口が上回ってはならない最大寸法に変換することが可能である。出射側開口の寸法が小さくなるほど、出射側開口を出た後のビーム経路における部分的ビームの広がり角が大きくなる。距離測定の際に良好な測定性能を得るため、様々な距離範囲に対応し、様々な寸法の出射側開口を用いて様々な広がり角とするのが有利である。この場合、部分的ビームの広がり角は、距離の増大に伴って減少させる必要があり、即ち、近い距離範囲の場合には、大きな広がり角が有利であり、距離が長い場合には、1.0ミリラジアンの下限角度に近い広がり角が有利である。
【0013】
好ましい態様として、出射側開口配置部材は、複数の出射側開口を有し、これらの出射側開口が複数の部分的ビームを生成し、部分的ビームのそれぞれは、1.0ミリラジアンの下限角度を下回ることのない1つまたは複数の広がり角で広がる。複数の出射側開口を用いることにより、単体のリトロリフレクタ体にレーザビームを指向させる上で要求される精度を低くすることができる。出射側開口を出た後の部分的ビームは、初めのうちはビーム径が小さいため、数mの近接した距離範囲では、単体のリトロリフレクタ体に正確にレーザビームを指向させる必要があることになる。複数の出射側開口の場合、部分的ビームのそれぞれのビーム径が足し合わされることによってビーム径が増大する。単体のリトロリフレクタ体までの距離を測定するための出射側開口配置部材として、例えば、出射側開口配置部材に入る前のレーザビームの光軸と同軸に配置された中央出射側開口を、当該中央出射側開口の周囲に環状に分散配置された更なる出射側開口と共に用いるのが好適である。複数の出射側開口によって生成され、出射側開口配置部材を出た後に互いに合体して1つのレーザビームとなる部分的ビームは、同じ広がり角を有するべきであり、周方向に沿って一定の広がり角とするのが好ましい。出射側開口のそれぞれは、同じ開口形状及び同じ寸法であるのが好ましい。
【0014】
出射側開口は、レーザビームに対して部分的な透過性を有するように構成するのが特に好ましい。発せられるレーザビームの放射エネルギは、散乱型目標物までの距離の測定用に設定される。散乱型目標物の場合、レーザビームは、大きな角度範囲で散乱され、放射エネルギのわずかな部分のみが受光側光学システムに届き、検出器に送られる。単体のリトロリフレクタ体までの距離測定の場合、レーザビームが目標物で反射され、指向された受光ビームとして検出器に照射される。検出器の過剰入力状態を避けるため、検出器に入射する受光ビームの放射エネルギは、ビーム発生源が発するレーザビームの放射エネルギに比べて大幅に小さなものとする必要がある。放射エネルギの低減は、レーザビームのビーム経路に設けた手段、及び受光ビームのビーム経路に設けた手段の少なくとも一方により行うことが可能である。レーザビームの放射エネルギは、出射側開口配置部材の出射側透過面積、及び出射側開口の透過性によって調整することが可能である。出射側開口配置部材の出射側透過面積は、一般に個々の出射側開口の開口面積の合計で定義される。それぞれの出射側開口の寸法が同じ場合、出射側透過面積は、出射側開口の数と出射側開口の開口面積との積で算出することもできる。出射側開口の透過性は、放射エネルギにのみ影響を及ぼすが、出射側透過面積の変化は、放射エネルギに加えて、部分的ビームの広がり角をも変化させうる。あらゆる開口形状の出射側開口についていえることは、開口面積は出射側開口の寸法に依存するものであるが、出射側開口の寸法により、レーザビームの広がり角も定まるということである。出射側開口の透過性により、部分的ビームの広がり角を変化させずに放射エネルギを調整することが可能となる。
【0015】
出射側開口の透過性は、例えば、グレイフィルタとも称されるニュートラルフィルタ、またはカラーフィルタとして構成された光学フィルタを用いて調整することができる。カラーフィルタは、狭い波長領域において小さい透過率を有する一方、それより短い波長及び長い波長では、ほとんど全てを通過させる。ニュートラルフィルタは、均一にくすんだ灰色を有して均一の減衰が得られる光学的特性のガラス製またはプラスチック製のプレートである。ニュートラルフィルタの場合は、広い波長領域で減衰が生じるが、カラーフィルタの場合には、ビーム発生源の波長周辺、例えば±15nmの狭い波長範囲で減衰が生じる。レーザビームの放射エネルギは、光学フィルタの透過率により調整することが可能である。透過率は、入射する放射エネルギに対する、透過可能な放射エネルギの比として定義される。
【0016】
本発明による測距装置の好ましい更なる態様として、レーザビームのビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第1の出射側開口を有する第1の出射側開口配置部材として構成された第1のレーザビーム整形部材と、レーザビームのビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第2の出射側開口を有する第2の出射側開口配置部材として構成された第2のレーザビーム整形部材とを備え、第1及び第2の出射側開口配置部材は互いに相違する。異なる出射側開口配置部材を用いることで、様々な距離範囲に位置する単体のリトロリフレクタ体や、様々な大きさの単体のリトロリフレクタ体までの距離の光学的な測定に、本発明による測距装置を適合させることが可能となる。出射側開口の数、出射側開口の開口面積、出射側開口の寸法、及び出射側開口の透過性のうちの少なくとも1つは、単体のリトロリフレクタ体の個々の距離範囲及び大きさの少なくとも一方に本発明の測距装置を適合させるための調整に好適である。
【0017】
第1及び第2出射側開口配置部材は、第1の出射側開口の寸法と第2の出射側開口の寸法とが互いに相違するのが特に好ましい。部分的ビームの広がり角は、出射側開口の寸法によって調整することが可能である。異なる寸法を採用することにより、単体のリトロリフレクタ体の様々な距離範囲及び様々な大きさに対応して、出射側開口配置部材を調整することが可能となる。目標物までの距離が増大するほど、部分的ビームの広がり角を小さくする必要があり、いずれの場合も、部分的ビームの広がり角は、1.0ミリラジアンの下限角度を下回ってはならない。
【0018】
第1及び第2の出射側開口配置部材は、出射側開口の数、出射側開口の開口面積、及び出射側開口の透過性のうちの少なくとも1つが互いに相違するのが特に好ましい。単体のリトロリフレクタ体の場合に必要となる受光ビームの放射エネルギの低減は、出射側開口配置部材の出射側透過面積、及び出射側開口の透過性のうちの少なくとも1つによって行うことが可能である。出射側開口配置部材に入る直前のレーザビームの断面積に対する出射側透過面積の比が小さいほど、通過して出射されるレーザビームの部分が少なくなる。レーザビームの放射エネルギは、出射側透過面積に加え、出射側開口の透過性によって調整することが可能である。これを目的として、出射側開口には光学フィルタを設けることが可能であり、レーザビームの放射エネルギは、この光学フィルタの透過率により調整することができる。
【0019】
本発明による測距装置の好ましい更なる態様として、レーザビームのビーム経路に配置可能であって、整形用開口として構成されたもう1つのレーザビーム整形部材を備え、この整形用開口は、レーザビームを、0.3ミリラジアンの上限角度より小さい1つまたは複数の広がり角を有した整形後レーザビームに変換する。整形用開口として構成されて、0.3ミリラジアンより小さい広がり角を有した整形後レーザビームを生成するレーザビーム整形部材は、リトロリフレクタ面までの距離を光学的に測定するのに好適である。広がり角の上限角度を0.3ミリラジアンとすることで、リトロリフレクタ面までの距離測定の際に、レーザビームを確実に均質化する一方、単体のリトロリフレクタ体までの距離測定の際には、広がり角の下限角度を1.0ミリラジアンとすることで、レーザビームを確実に大きく広げることができる。整形後レーザビームの広がり角は、整形用開口の寸法によって調整することが可能である。この場合、整形用開口の寸法を大きくするほど、整形後レーザビームの広がり角は小さくなる。
【0020】
整形用開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。整形用開口の開口形状により、整形後レーザビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが決まる。円形または正方形の開口形状を有した整形用開口は、1つの寸法(円形の径、または正方形の辺の長さ)によって規定され、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有したレーザビームを生成する。楕円形または長方形の開口形状を有した整形用開口は、2つの寸法によって規定され、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有したレーザビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。
【0021】
本発明に係る測距装置の場合、出射側開口と整形用開口とは、その径によって区別される。出射側開口は、単体のリトロリフレクタ体までの距離を測定する場合に用いられ、整形用開口は、リトロリフレクタ面までの距離を測定する場合に用いられる。1.0ミリラジアンの下限角度は、単体のリトロリフレクタ体までの距離の測定用に規定され、0.3ミリラジアンの上限角度は、リトロリフレクタ面までの距離の測定用に規定される。1.0ミリラジアンの下限角度は、出射側開口の寸法が上回ってはならない最大寸法に変換可能であり、0.3ミリラジアンの上限角度は、整形用開口の寸法が下回ってはならない最小寸法に変換可能である。
【0022】
整形用開口は、レーザビームに対して部分的な透過性を有するように構成されるのが特に好ましい。発せられるレーザビームの放射エネルギは、散乱型目標物までの距離の測定用に設定されており、このとき、放射エネルギのわずかな部分のみが、受光側光学システムに到達し、検出器に送られる。単体のリトロリフレクタ体までの距離の測定では、レーザビームが目標物で反射され、指向された受光ビームとして検出器に照射される。検出器の過剰入力状態を避けるため、検出器に入射する受光ビームの放射エネルギは、ビーム発生源が発するレーザビームの放射エネルギに比べて大幅に小さなものとする必要がある。レーザビームの放射エネルギは、整形用開口の開口面積、及び整形用開口の透過性によって調整することが可能である。整形用開口の透過性は、放射エネルギにのみ影響を及ぼすが、整形用開口の寸法に依存する整形用開口の開口面積は、放射エネルギとレーザビームの広がり角とを変化させる。整形用開口の透過性により、レーザビームの広がり角を変化させずに放射エネルギを調整することが可能となる。整形用開口の透過性は、例えば、ニュートラルフィルタまたはカラーフィルタとして構成された光学フィルタを用いて調整することができる。レーザビームの放射エネルギは、光学フィルタの透過率により調整することが可能である。
【0023】
本発明による測距装置の好ましい更なる態様として、レーザビームのビーム経路に配置可能な第1の整形用開口と、レーザビームのビーム経路に配置可能な第2の整形用開口とを備え、第1及び第2の整形用開口は、寸法、開口面積、及び透過性のうちの少なくとも1つが異なる。異なる整形用開口を用いることにより、リトロリフレクタ面が位置する様々な距離範囲や、様々な大きさのリトロリフレクタ面に、本発明による測距装置を適合させることが可能となる。整形後レーザビームの広がり角は、整形用開口の寸法によって調整することが可能である。整形用開口の寸法が大きくなるほど、整形後レーザビームの広がり角が小さくなり、目標物までの距離測定デバイスの距離が長くなるほど、レーザビームの広がり角を小さくする必要がある。
【0024】
本発明による測距装置の好ましい更なる態様として、受光ビームのビーム経路に配置可能であり、少なくとも1つの受光側開口を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材を備える。反射型目標物(単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)を用いる場合に必要となる、入射する受光ビームの放射エネルギの低減は、少なくとも1つの受光側開口を有する受光側開口配置部材により行うことが可能である。受光ビームの放射エネルギは、受光側開口配置部材の受光側透過面積、及び受光側開口の透過性によって調整することが可能である。受光側開口配置部材の受光側透過面積は、一般に個々の受光側開口の開口面積の合計によって定義される。それぞれの受光側開口の寸法が同じ場合、受光側透過面積は、受光側開口の数と受光側開口の開口面積との積で算出することもできる。受光側開口配置部材に入る直前における受光ビームの断面積に対する受光側透過面積の比が小さくなるほど、受光ビームの放射エネルギが小さくなる。受光側透過面積を制限することによる受光ビームの減衰は、ビーム発生源の波長とは無関係であり、例えば広範な波長スペクトルを有した太陽光のような外部光も減衰させることが可能であって、外部光の減衰は、付加的な装備を必要とすることなく行われる。
【0025】
受光側開口配置部材は、互いに間隔を置いて設けられた複数の受光側開口を有するのが特に好ましい。受光ビームのビーム断面に沿って分散配置された複数の受光側開口を有する受光側開口配置部材を用いることにより、受光ビームの均質化がなされる。均質化は、ビーム断面において不均質に分布する受光ビームに対して特に好適である。受光側透過面積は、受光側開口の数、及び受光側開口の開口面積によって調整することが可能である。
【0026】
好ましい更なる態様として、受光側開口は、受光ビームに対して部分的な透過性を有するように構成される。受光ビームの放射エネルギは、受光側透過面積に代え、または受光側透過面積に加え、受光側開口の透過性により低減することが可能である。この場合、受光側開口には、光学フィルタを設けるのが特に好ましく、受光ビームの放射エネルギは、この光学フィルタの透過率により調整することができる。広範な波長スペクトルにおいて減衰が生じ、受光ビームだけでなく外部光をも減衰させるニュートラルフィルタが、部分的な透過性を有した受光側開口に用いる光学フィルタとして好適である。ニュートラルフィルタを用いた外部光の減衰は、更なる装備を必要とすることなく行われる。
【0027】
好ましい更なる態様として、受光ビームのビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第1の受光側開口を有する第1の受光側開口配置部材として構成された第1の受光側ビーム整形部材と、受光ビームのビーム経路に配置可能であって、少なくとも1つの第2の受光側開口を有する第2の受光側開口配置部材として構成された第2の受光側ビーム整形部材とを備え、第1及び第2の受光側開口配置部材は互いに相違する。異なる受光側開口配置部材を用いることで、反射型目標物が位置する様々な距離範囲、様々な種類の反射型目標物(単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)、及び様々な大きさの反射型目標物に対し、本発明による測距装置を適合させることが可能となる。受光側開口の数、受光側開口の面積、及び受光側開口の透過性のうちの少なくとも1つが、様々な距離範囲、様々な種類の反射型目標物、及び様々な大きさの反射型目標物に対し、本発明による測距装置を適合させるための調整に適している。
【0028】
第1及び第2の受光側開口配置部材は、受光側開口の数、受光側開口の開口面積、及び受光側開口の透過性のうちの少なくとも1つが互いに相違するのが特に好ましい。受光ビームの放射エネルギは、受光側開口配置部材の受光側透過面積、及び受光側開口の透過性によって調整することが可能である。受光側透過面積は、受光側開口の数、及び受光側開口の開口面積の少なくとも一方により調整することができる。受光側開口配置部材に入る直前の受光ビームの断面積に対する受光側透過面積の比が小さいほど、受光ビームの放射エネルギが小さくなる。距離測定デバイスから反射型目標物までの距離の増大に伴い、受光側透過面積を大きくする必要がある。受光側開口配置部材の受光側透過面積に代え、または加えて、受光側開口の透過性により、レーザビームの放射エネルギを調整することが可能である。受光側開口には、ニュートラルフィルタを設けるのが特に好ましく、受光側開口の透過性は、このニュートラルフィルタの透過率により調整することが可能である。受光ビームの減衰にニュートラルフィルタを用いることには、受光ビームに加えて外部光をも減衰させることができるという利点がある。ニュートラルフィルタを用いた外部光の減衰は、更なる装備を必要とすることなく行われる。
【0029】
本発明による測距装置の好ましい更なる第1の態様として、出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材と、受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材とが第1の整形部材に設けられ、第1の整形部材は、レーザビームのビーム経路及び受光ビームのビーム経路に配置可能である。第1の整形部材に出射側開口配置部材と受光側開口配置部材とを設ける構成は、出射側開口配置部材と受光側開口配置部材とが連帯し、レーザビーム及び受光ビームのビーム経路にそれぞれ配置されるので、単体のリトロリフレクタ体までの距離の測定に好適であり、構造の複雑さを軽減すると共に、必要な空間を縮小することができる。出射側開口配置部材と受光側開口配置部材とは、互いに同軸状に配置することが可能であり、または交互に配置することが可能であって、出射側開口配置部材と受光側開口配置部材との適切な配置は、レーザビームと受光ビームとの配置によって定まる。
【0030】
本発明による測距装置の好ましい更なる第2の態様として、整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材と、受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材とが第2の整形部材に設けられ、第2の整形部材は、レーザビームのビーム経路及び受光ビームのビーム経路に配置可能である。第2の整形部材に整形用開口と受光側開口配置部材とを設ける構成は、整形用開口と受光側開口配置部材とが連帯し、レーザビーム及び受光ビームのビーム経路にそれぞれ配置されるので、リトロリフレクタ面までの距離の測定に好適であり、構造の複雑さを軽減すると共に、必要な空間を縮小することができる。整形用開口と受光側開口配置部材とは、互いに同軸状に配置することが可能であり、または互いに隣接して配置することが可能であって、整形用開口と受光側開口配置部材との適切な配置は、レーザビームと受光ビームとの配置によって定まる。
【0031】
少なくとも1つの第1の整形部材と、少なくとも1つの第2の整形部材とを備えるのが特に好ましい。少なくとも1つの第1の整形部材と、少なくとも1つの第2の整形部材とが設けられる本発明の測距装置は、単体のリトロリフレクタ体及びリトロリフレクタ面までの距離の光学的な測定に好適である。第1の整形部材は、単体のリトロリフレクタ体までの距離の測定用に構成され、第2の整形部材は、リトロリフレクタ面までの距離の測定用に構成される。
【0032】
第1の整形部材及び第2の整形部材の少なくとも一方を複数備えるのが特に好ましい。複数の第1の整形部材もしくは複数の第2の整形部材、または複数の第1の整形部材及び複数の第2の整形部材が設けられる本発明の測距装置は、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材のそれぞれのビーム整形特性を、単体のリトロリフレクタ体またはリトロリフレクタ面が位置する様々な距離範囲に対応して調整することが可能である。第1の整形部材は、単体のリトロリフレクタ体までの距離の光学的な測定用に設けられ、第2の整形部材は、リトロリフレクタ面までの距離の光学的な測定用に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】本発明に係る測距装置として、距離測定デバイスと、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有したモータ駆動式の調整デバイスとを備え、反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置を示す図である。
図1B】本発明に係る測距装置として、距離測定デバイスと、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有したモータ駆動式の調整デバイスとを備え、反射型目標物までの距離を光学的に測定する測距装置を示す図である。
図2A】1つの出射側開口を有する出射側開口配置部材を備えた、図1に示す測距装置による、単体のリトロリフレクタ体までの距離の光学的な測定を示す図である。
図2B】複数の出射側開口を有する出射側開口配置部材を備えた、図1に示す測距装置による、単体のリトロリフレクタ体までの距離の光学的な測定を示す図である。
図3図1に示す測距装置による、リトロリフレクタ面までの距離の光学的な測定を示す図である。
図4A】様々な距離範囲にある単体のリトロリフレクタ体までの距離を光学的に測定するための、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有した第1整形部材の第1実施形態を示す図である。
図4B】様々な距離範囲にある単体のリトロリフレクタ体までの距離を光学的に測定するための、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有した第1整形部材の第2実施形態を示す図である。
図5A】様々な距離範囲にあるリトロリフレクタ面までの距離を光学的に測定するための、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有した第2整形部材の第1実施形態を示す図である。
図5B】様々な距離範囲にあるリトロリフレクタ面までの距離を光学的に測定するための、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有した第2整形部材の第2実施形態を示す図である。
図6】単体のリトロリフレクタ体までの距離を光学的に測定するために構成された2つの第1整形部材と、リトロリフレクタ面までの距離を光学的に測定するために構成された3つの第2整形部材とを有する調整デバイスの第1実施形態を示す図である。
図7A】第1回転ホイールに配置された複数のレーザビーム整形部材及び複数の受光ビーム整形部材と、第2回転ホイールに配置された複数の減衰部材とを有する調整デバイスの第2実施形態において、第1回転ホイールを示す図である。
図7B】第1回転ホイールに配置された複数のレーザビーム整形部材及び複数の受光ビーム整形部材と、第2回転ホイールに配置された複数の減衰部材とを有する調整デバイスの第2実施形態において、第2回転ホイールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面に基づき、本発明の実施形態を以下に説明する。図面は、実施形態を必ずしも正しい縮尺率で示すものではなく、説明に役立つように、概略で示したり、幾分変形して示したりするものである。
【0035】
図面から直接的に明らかとなる教示に加え、関連する先行技術も参考とされる。本発明の大要から逸脱することなく、実施形態の形状や詳細な構成に対する様々な調整や変更が可能であることに留意すべきである。明細書、図面、及び特許請求の範囲に記載された本発明の特徴は、本発明の態様において、それぞれが個々に必須となりうるだけでなく、あらゆる組み合わせも必須となりうる。更に、明細書、図面、及び特許請求の範囲の少なくともいずれか1つに記載された本発明の特徴のうちの少なくとも2つの組み合わせは、いずれも本発明の範囲に含まれるものである。本発明の大要は、以下に示して説明する実施形態の厳密な形状及び詳細な構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲の請求項に示す主題に比べて狭められた主題に限定されるものでもない。寸法範囲が示される場合、その範囲内にある値も、限界値として示しうるものであり、任意に請求項に含めうるものである。簡略化のため、同一または類似の機能を有した、同一または類似の部材については、同じ参照符号を用いる。
【0036】
図1Aは、本発明に係る測距装置として、距離測定デバイス11と、距離測定デバイス11の外部に設けられたモータ駆動式の調整デバイス12とを備え、目標物までの距離を光学的に測定する測距装置10を示す図である。目標物については、入射したレーザビームが主に反射される反射型目標物と、入射したレーザビームが主に散乱される散乱型目標物とに区別される。
【0037】
更に、反射型目標物については、単体のリトロリフレクタ体と、リトロリフレクタ面とに区別される。単体のリトロリフレクタ体として定義される反射型目標物は、1つのトリプルプリズムからなり、トリプルプリズムの寸法は、一般的なレーザビームのビーム径より大きくなっていて、入射したレーザビームが、トリプルプリズムの1つの面に当たるようになっている。単体のリトロリフレクタ体の例として、25mmまたは50mmの幅を有したトリプルプリズムがある。リトロリフレクタ面として定義される反射型目標物は、平坦面に互いに隣接して配置された複数のプリズムからなり、それぞれのプリズムの寸法は、一般的なレーザビームのビーム径より小さくなっていて、入射したレーザビームが、複数のプリズムに当たるようになっている。リトロリフレクタ面の例として、反射膜やキャッツアイ型リフレクタがある。ここでの適用に関わるキャッツアイ型リフレクタは、レーザビームのビーム径に対するプリズムの寸法の比が、0.1〜1.0のリトロリフレクタ面であり、反射膜は、レーザビームのビーム径に対するプリズムの寸法の比が、0.1未満のリトロリフレクタ面となっている。
【0038】
距離測定デバイス11は、光学装置保持部材13と、結合部材15を介して光学装置保持部材13に結合された回路基板14とを備える。距離測定デバイス11において生成されたレーザビームは、光学装置保持部材13の非干渉開口16を通って、距離測定デバイス11から出射され、調整デバイス12に照射される。このレーザビームは、調整デバイス12により、目標物の特性及び目標物までの距離範囲に対応する調整が行われる。本実施形態の調整デバイス12の場合、6つの異なる整形部材17.1〜17.6を備えており、これら整形部材17.1〜17.6は、回転ホイール18に固定され、モータ駆動機構19により、回転軸線20周りに回転移動可能となっている。
【0039】
調整デバイス12の整形部材17.1〜17.6のそれぞれは、レーザビームを整形するレーザビーム整形部材と、受光ビームを整形する受光ビーム整形部材とを有し、これら整形部材17.1〜17.6は、その回折特性及び減衰特性の少なくとも一方が相違しており、様々な距離範囲にある反射型目標物についての距離の測定に用いるために設けられている。回転ホイール18は、6つの整形部材17.1〜17.6のほかに、もう1つの開口部21を有しており、この開口部21には整形部材が設けられず、レーザビーム及び受光ビームの少なくとも一方において、回折及び減衰の少なくとも一方が生じないようになっている。
【0040】
回転ホイール18は、駆動モータ23により回転軸線20周りに回転可能な軸部材22に固定して連結されており、駆動モータ23の回転角が、角度センサデバイスを用いて検出される。回転軸線20周りの回転ホイール18の回転駆動は、手動式回転機構でも行うことが可能となっている。回転ホイール18は、回転することにより、回転軸線20周りの7つの角度位置に位置を定めることができる。6つの角度位置では、6つの整形部材17.1〜17.6のうちの1つが、レーザビームのビーム経路に配置され、残る7番目の角度位置では、6つの整形部材17.1〜17.6がいずれも、レーザビーム及び受光ビームのビーム経路外に位置する。この7番目の角度位置は、散乱型目標物までの距離の測定のために設けられる。
【0041】
図1Bは、図1Aに示した、距離を光学的に測定するための、本発明による測距装置10における、距離測定デバイス11及びモータ駆動式の調整デバイス12の構成を詳細に示している。
【0042】
距離測定デバイス11は、ビーム発生源31として構成された第1電気光学装置、検出器32として構成された第2電気光学装置、ビーム整形光学システム33、ビームスプリット光学システム34、光学装置保持部材13、及び回路基板14を備える。ビーム整形光学システム33は、レーザビームを整形する出射側光学システム35と、受光ビームを整形する受光側光学システム36とを備え、一体型のビーム整形光学システム33にまとめられている。ビーム発生源31、ビーム整形光学システム33、及びビームスプリット光学システム34は、光学装置保持部材13に固定され、検出器32は、回路基板14に固定される。光学装置保持部材13は、ビーム発生源31のための第1受容部37と、ビーム整形光学システム33のための第2受容部38と、ビームスプリット光学システム34のための第3受容部39とを有する。検出器32は、回路基板14に設けられたもう1つの受容部40に固定される。
【0043】
ビーム発生源31は、可視光または赤外線のレーザビーム41を生成するレーザダイオードで構成される。検出器32は、目標物で反射または散乱されて生じた受光ビーム42を受光するフォトダイオードで構成される。ビームスプリット光学システム34は、レーザビームと同軸状に伝播する受光ビームからレーザビームを分離するものであり、ビーム発生源31とビーム整形光学システム33との間のレーザビームのビーム経路で、且つビーム整形光学システム33と検出器32との間の受光ビームのビーム経路に配置される。ビームスプリット光学システム34は、例えば、偏光ビームスプリッタ、孔あきミラー、またはそれ以外のビームスプリット光学素子で構成することができる。ビーム発生源31及び検出器32は、制御・分析デバイス43と接続されており、この制御・分析デバイス43が、基準ビームと受光ビームとの時間差に基づき、目標物までの距離を求める。
【0044】
検出器32は、光学装置保持部材13の方を向く回路基板14の表側の面44に配置され、ハンダ付けにより回路基板14にしっかりと固定されている。検出器32は、回路基板14を製造する際に、例えば、自動的に組み付けてハンダ付けすることが可能である。検出器32は、回路基板14のみに機械的に支持されており、検出器32を光学装置保持部材13に直接結合するような結合手段は存在しない。光学装置保持部材13は、検出器32の方を向く面が開口しており、結合部材15を介し、接合面が回路基板14に結合されている。結合部材15は、距離測定デバイス11の位置合わせをする際に取り外し可能となっている。
【0045】
ビーム発生源31と、一体構造の光学装置保持部材13に一体的に組み込まれたビームスプリット光学システム34との間のレーザビーム41のビーム経路には、開口部45が配置されている。開口部45は、ビーム発生源31の開口角度を制限し、ビームスプリット光学システム34及びビーム整形光学システム33に向かうレーザビーム41の形状を調整するために用いられる。ビーム発生源31と開口部45との間には、開口部45と同じ様に、一体構造の光学装置保持部材13に一体的に形成された遮光部材46が配設される。遮光部材46は、入射光を吸収し、不要な反射を防止するものである。このような目的のため、遮光部材46は、内側に低反射性の吸収剤コーティングがなされている。開口部45及び遮光部材46は、ビーム発生源31から検出器32までの部分における光学的及び電気的な雑音だけでなく、レーザビームにおける人為的な乱れを低減する。
【0046】
単体のリトロリフレクタ体47として構成された反射型目標物は、図1Bの実施形態において、距離測定デバイス11から短い距離にある目標物として用いられる。レーザビーム41及び受光ビーム42のビーム経路には、第1の整形部材17.1が位置する。第1の整形部材17.1は、レーザビーム41用のレーザビーム整形部材48と、受光ビーム42用の受光ビーム整形部材49とを有する。
【0047】
ビーム発生源31は、ビームスプリット光学システム34に向けてレーザビーム41を発する。レーザビーム41の最大限可能な部分が、ビームスプリット光学システム34から出射されて出射側光学システム35に照射され、この出射側光学システム35で最初のビーム整形が行われる。出射側光学システム35は、レーザビーム41を平行にして、平行レーザビーム51としてレーザビーム整形部材48に向かわせるコリメーティングレンズとして構成される。コリメーティングレンズ35の光学的特性は、散乱型目標物の距離測定に適合したものとされる。平行レーザビーム51は、レーザビーム整形部材48に照射され、レーザビーム整形部材48において、平行レーザビーム51のビーム整形と減衰とが行われる。整形後レーザビーム52は、反射型目標物47に照射される。
【0048】
目標物47で反射して生じた受光ビーム42は、受光ビーム整形部材49に当たり、この受光ビーム整形部材49が、受光ビーム42を整形し、減衰させて、整形後受光ビーム53として受光側光学システム36に向かわせる。受光側光学システム36では、整形後受光ビーム53の更なるビーム整形が行われる。2回整形後受光ビーム54は、ビームスプリット光学システム34に向けられ、当該ビームスプリット光学システム34で偏向される。偏向後受光ビーム55は、検出器32に当たる。ビームスプリット光学システム34により、偏向後受光ビーム55の光軸と、発せられたレーザビーム41の光軸とが、確実に互いに相違したものとなる。
【0049】
図2A及び図2Bは、図1に示す測距装置10による、単体のリトロリフレクタ体61までの距離の光学的な測定を示す概略図である。単体のリトロリフレクタ体61に対するレーザビームの調整が、1つの出射側開口を有する出射側開口配置部材(図2A)として構成されたレーザビーム整形部材、または複数の出射側開口を有する出射側開口配置部材(図2B)として構成されたレーザビーム整形部材を用いて行われる。
【0050】
距離測定デバイス11は、出射側光学システム35を用い、平行レーザビーム51を生成する。平行レーザビーム51のビーム経路には、単体のリトロリフレクタ体までの距離の測定用に構成された、第1レーザビーム整形部材62が配置される。単体のリトロリフレクタ体の場合は、反射されて生じた受光ビームが受光側光学システム36に照射され、検出器32で検知できるように、レーザビームをリトロリフレクタ体の中央部分に当てる必要がある。レーザビームがリトロリフレクタ体の中央部分に当たらないと、反射されて生じた受光ビームが平行にずれて、受光側光学システム36から外れてしまう可能性がある。レーザビームを単体のリトロリフレクタ体61に向けるために要求される精度を低下させてもよいように、レーザビームが広げられる。
【0051】
第1レーザビーム整形部材62は、1つの第1出射側開口63を有した第1出射側開口配置部材として構成される。第1出射側開口63は、ある径の円形開口形状を有する。第1出射側開口63は、部分的ビーム64を形成し、この部分的ビーム64を、1.0ミリラジアンの下限角度αminより大きい第1広がり角αで広げる。部分的ビーム64の第1広がり角αは、第1出射側開口63の径で調整可能であり、第1出射側開口63の径が小さくなるほど、部分的ビーム64の第1広がり角αが大きくなる。また、第1出射側開口63は、レーザビームの放射エネルギを大幅に減少させる。
【0052】
出射側開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。1.0ミリラジアンの下限角度αminは、出射側開口が超えてはならない出射側開口の最大寸法に変換することができる。出射側開口の開口形状により、部分的ビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが定まる。円形または正方形の開口形状を有した出射側開口は、1つの寸法(円形の径、または正方形の1辺の長さ)によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。楕円形または長方形の開口形状を有した出射側開口は、2つの寸法によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した出射側開口は、出射側開口を出た後に、最大広がり角と最小広がり角との間にある複数の広がり角を有した部分的ビームを生成する。
【0053】
第1出射側開口63を出た当初、部分的ビーム64はビーム径が小さく、近接した距離範囲の場合には、単体のリトロリフレクタ体61への正確な指向が必要となる。部分的ビーム64を単体のリトロリフレクタ体61に向ける際に要求される精度を低減するため、図2Bに示す第2レーザビーム整形部材65を用いることが可能である。第2レーザビーム整形部材65は、3つの第2出射側開口66.1,66.2,66.3を有した第2出射側開口配置部材として構成される。これら第2出射側開口66.1,66.2,66.3は、それぞれ部分的ビーム67.1,67.2,67.3を生成し、これら部分的ビーム67.1,67.2,67.3を、1.0ミリラジアンの下限角度αminより大きい第2広がり角αで広げる。第2出射側開口66.1,66.2,66.3の好適な配置例として、平行レーザビーム51の光軸と同軸状に中央の第2出射側開口を配置し、中央の第2出射側開口の周囲に、それ以外の第2出射側開口を環状に分散配置してもよい。それぞれの部分的ビーム67.1,67.2,67.3の第2広がり角αは、第2出射側開口66.1,66.2,66.3の径で調整することが可能であり、第2出射側開口66.1,66.2,66.3の径が小さくなるほど、部分的ビーム67.1,67.2,67.3の第2広がり角αが大きくなる。
【0054】
出射側開口配置部材を出た後のレーザビームの放射エネルギは、出射側開口配置部材の出射側透過面積と、各出射側開口の透過性とによって調整することが可能である。出射側開口配置部材の出射側透過面積は、一般に個々の出射側開口の開口面積の合計で規定される。各出射側開口が同じ寸法の場合、出射側透過面積は、出射側開口の数と出射側開口の開口面積との積で算出することも可能である。出射側開口配置部材に入る直前のレーザビームの断面積に対する出射側透過面積の比が小さいほど、出射側開口配置部材を出た後のレーザビームの出射部分の放射エネルギが小さくなる。
【0055】
図3は、図1に示す測距装置10による、リトロリフレクタ面71までの距離の光学的な測定を示す概略図である。距離測定デバイス11は、出射側光学システム35を用い、平行レーザビーム51を生成する。平行レーザビーム51のビーム経路には、リトロリフレクタ面までの距離の測定用に構成された、レーザビーム整形部材72が配置される。
【0056】
レーザビーム整形部材72は、円形の開口形状の整形用開口として構成される。レーザビーム整形部材(整形用開口)72は、入射したレーザビーム51を、広がり角βの整形後レーザビーム74に変換し、整形後レーザビーム74の広がり角βは、0.3ミリラジアンの上限角度βmaxより小さい。整形後レーザビーム74の広がり角βは、整形用開口72の径で調整することが可能であり、整形用開口72の径が大きくなるほど、整形後レーザビーム74の広がり角βは小さくなる。
【0057】
整形用開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。0.3ミリラジアンの上限角度βmaxは、整形用開口が下回ってはならない整形用開口の最小寸法に変換することができる。整形用開口の開口形状により、整形後レーザビームが、1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが定まる。円形または正方形の開口形状を有した整形用開口は、1つの寸法(円形の径、または正方形の1辺の長さ)によって規定され、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有したレーザビームを生成する。楕円形または長方形の開口形状を有した整形用開口は、2つの寸法によって規定され、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有したレーザビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した整形用開口は、整形用開口を出た後に、最大広がり角と最小広がり角との間にある複数の広がり角を有したレーザビームを生成する。
【0058】
図4A及び図4Bは、様々な距離範囲にある単体のリトロリフレクタ体までの距離を光学的に測定するために構成された、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有する第1整形部材の第1実施形態及び第2実施形態を示す図である。距離の測定は、例えば図1に示す測距装置10を用いて行われる。
【0059】
図4Aは、レーザビーム整形部材82及び受光ビーム整形部材83を有した第1整形部材81の第1実施形態を示している。レーザビーム整形部材82は、入射したレーザビームを5つの部分的ビームに細分する5つの出射側開口84,85.1,85.2,85.3,85.4を有した出射側開口配置部材として構成されている。これらの出射側開口84,85.1〜85.4は、第1径dの円形の開口形状を有し、それぞれの部分的ビームを、回折により1.0ミリラジアンの広がり角に広げる。受光ビーム整形部材83は、レーザビーム整形部材82の周囲に環状に分散配置された4つの受光側開口86.1,86.2,86.3,86.4を有した受光側開口配置部材として構成されている。これらの受光側開口86.1〜86.4は同一径の円形の開口形状を有する。
【0060】
発せられるレーザビーム41の放射エネルギは、散乱型目標物までの距離の測定用に設定される。散乱型目標物の場合、レーザビームは、大きな角度範囲にわたって散乱され、放射エネルギのわずかな部分のみが受光側光学システム36に届き、検出器32に送られる。反射型目標物までの距離測定の場合、レーザビームが目標物で反射され、指向された受光ビームとして検出器32に達する。反射型目標物までの距離測定の際の検出器32の過剰入力状態を避けるため、検出器32に入射する受光ビーム42の放射エネルギは、ビーム発生源31が発するレーザビーム41の放射エネルギに比べて大幅に小さなものとする必要がある。放射エネルギの低減は、レーザビーム41のビーム経路に設けた手段、及び受光ビーム42のビーム経路に設けた手段の少なくとも一方により行うことが可能である。
【0061】
レーザビーム41の放射エネルギは、レーザビーム整形部材(出射側開口配置部材)82の出射側透過面積、及び出射側開口84,85.1〜85.4の透過性によって調整することが可能である。出射側開口配置部材の出射側透過面積は、一般に個々の出射側開口の開口面積の合計で定義される。本実施形態のように、それぞれの出射側開口の寸法が同じ場合、出射側透過面積は、出射側開口の数と出射側開口の開口面積との積でも算出することができる。出射側開口配置部材82に入る直前のレーザビーム41の断面積に対する出射側透過面積の比が小さいほど、出射側開口配置部材82から出た後のレーザビーム41の放射エネルギが小さくなる。
【0062】
レーザビーム41の放射エネルギは、出射側透過面積に代え、または出射側透過面積に加え、出射側開口84,85.1〜85.4の透過性により調整することが可能である。本実施形態では、出射側開口84,85.1〜85.4が、例えば、ニュートラルフィルタまたはカラーフィルタとして構成された光学フィルタ87を有する。レーザビームの減衰は、光学フィルタの透過率により調整することが可能であり、この透過率は、入射するレーザビームの放射エネルギに対する、透過が許容された放射エネルギの比として定義される。出射側開口84,85.1〜85.4の透過性は、レーザビーム41の放射エネルギにのみ影響を及ぼすが、出射側開口84,85.1〜85.4の寸法に依存する出射側透過面積は、放射エネルギに加え、部分的ビームの広がり角も変化させる。出射側開口84,85.1〜85.4の透過性により、部分的ビームの広がり角を変化させずに、レーザビーム41の放射エネルギを減少させることが可能となる。
【0063】
受光ビーム42の放射エネルギは、受光ビーム整形部材(受光側開口配置部材)83の受光側透過面積、及び受光側開口86.1〜86.4の透過性によって調整することが可能である。受光側開口配置部材の受光側透過面積は、一般に個々の受光側開口86.1〜86.4の開口面積の合計で定義される。本実施形態のように、それぞれの受光側開口の寸法が同じ場合、受光側透過面積は、受光側開口の数と受光側開口の開口面積との積でも算出することができる。受光側開口配置部材83に入る直前の受光ビーム42の断面積に対する受光側透過面積の比が小さいほど、受光側開口配置部材83から出た後の受光ビーム42の放射エネルギが小さくなる。受光側透過面積を制限することによる受光ビーム42の減衰は、ビーム発生源31の波長とは無関係であり、例えば広範な波長スペクトルを有した太陽光のような外部光も、更なる工夫を要することなく減衰させることが可能である。
【0064】
受光ビーム42の放射エネルギは、受光側透過面積に代え、または受光側透過面積に加え、受光側開口86.1〜86.4の透過性により調整することが可能である。本実施形態では、例えばニュートラルフィルタまたはカラーフィルタとして構成された光学フィルタ88が、受光側開口86.1〜86.4に設けている。受光ビームの減衰は、光学フィルタの透過率により調整することが可能であり、この透過率は、入射する受光ビームの放射エネルギに対する、透過が許容された放射エネルギの比として定義される。
【0065】
光学フィルタ87及び光学フィルタ88は、ニュートラルフィルタまたはカラーフィルタとして構成される。ニュートラルフィルタの場合、広範な波長領域で減衰が行われるのに対し、カラーフィルタの場合は、ビーム発生源31の波長周辺の狭い波長領域で減衰が行われる。開口(出射側開口または受光側開口)の透過性による放射エネルギの減衰は、分散されるビームの広がり角を変化させることなく、放射エネルギの調整を可能とするものである。ニュートラルフィルタの適用には、ビーム発生源31の波長だけでなく、外部光も含まれるような広範な波長領域で減衰が行われるという利点がある。従って、ニュートラルフィルタは、外部光の減衰も必要である場合に、特に好適である。また、ニュートラルフィルタは、プラスチックフィルムとして安価に入手可能であるという利点もある。
【0066】
図4Bは、レーザビーム整形部材92及び受光ビーム整形部材93を有した第1整形部材91の第2実施形態を示している。レーザビーム整形部材92は、図4Aの出射側開口84,85.1〜85.4と同様に、平行レーザビーム51の光軸を中心として配置された5つの円形の出射側開口94,95.1,95.2,95.3,95.4を有する出射側開口配置部材として構成される。受光ビーム整形部材93は、レーザビーム整形部材92の周囲に環状に配置された6つの円形の受光側開口96.1,96.2,96.3,96.4,96.5,96.6を有した受光側開口配置部材として構成される。
【0067】
図4Bの出射側開口94,95.1〜95.4は、図4Aの出射側開口84,85.1〜85.4とは径が相違している。本実施形態において、出射側開口94,95.1〜95.4は、径が第2径dであり、5つの部分的ビームを、2.0ミリラジアンの広がり角に広げる。図4Bの受光側開口96.1〜96.6は、図4Aの受光側開口86.1〜86.4よりも径が小さくなっている。出射側開口94,95.1〜95.4、及び受光側開口96.1〜96.6は、部分的な透過性を有するように構成される。出射側開口94,95.1〜95.4には光学フィルタ97が、また受光側開口96.1〜96.6には光学フィルタ98が、それぞれ設けられる。検出器32に照射される受光ビームの放射エネルギは、これら光学フィルタ97及び光学フィルタ98の透過率によって調整することができる。
【0068】
出射側開口84,85.1〜85.4,94,95.1〜95.4、及び受光側開口86.1〜86.4,96.1〜96.6は、それぞれ円形の開口形状を有している。円形の出射側開口及び受光側開口は、好ましい開口形状である。図4Aの出射側開口84,85.1〜85.4は第1径dの径を有し、周方向に沿って一定の1.0ミリラジアンの広がり角を有した部分的ビームを生成する。図4Bの出射側開口94,95.1〜95.4は、第2径dの径を有し、周方向に沿って一定の2.0ミリラジアンの広がり角を有した部分的ビームを生成する。原理的には、円形ではない開口形状の出射側開口及び受光側開口も使用可能である。楕円形または長方形の開口形状の出射側開口及び受光側開口の場合、それぞれの開口配置部材を出た後のビームは、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有する。
【0069】
図5A及び図5Bは、様々な距離範囲にあるリトロリフレクタ面までの距離を光学的に測定するために構成された、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有する第2整形部材の第1実施形態及び第2実施形態を示す図である。距離の測定は、例えば図1に示す測距装置10を用いて行われる。
【0070】
図5Aは、レーザビーム整形部材102及び受光ビーム整形部材103を有した第2整形部材101の第1実施形態を示す。レーザビーム整形部材102は、入射したレーザビームを均質化し、第1広がり角βを有した整形後レーザビームに変換する第1整形用開口として構成されている。レーザビームの広がりを完全に防止することはできないが、整形後レーザビームの第1広がり角βは、0.3ミリラジアンの上限角度βmaxより小さい。受光ビーム整形部材103は、レーザビーム整形部材102の周囲に環状に配置された6つの円形の受光側開口104.1,104.2,104.3,104.4,104.5,104.6を有する受光側開口配置部材として構成されている。
【0071】
リトロリフレクタ面の場合に必要となる受光ビームの放射エネルギの低減は、レーザビーム整形部材(第1整形用開口)102及び受光側開口104.1〜104.6を用いて行うことができる。レーザビーム41の放射エネルギは、第1整形用開口102の開口面積及び透過性によって調整することが可能であり、受光ビーム42の放射エネルギは、受光ビーム整形部材(受光側開口配置部材)103の受光側透過面積及び受光側開口104.1〜104.6の透過性によって調整することが可能である。本実施形態では、第1整形用開口102及び受光側開口104.1〜104.6が部分的な透過性を有するものとして構成されている。第1整形用開口102には、光学フィルタ105が設けられ、受光側開口104.1〜104.6には、光学フィルタ106が設けられる。
【0072】
図5Bは、レーザビーム整形部材112及び受光ビーム整形部材113を有した第2整形部材111の第2実施形態を示す。レーザビーム整形部材112は、入射したレーザビームを均質化し、第2広がり角βを有した整形後レーザビームに変換する第2整形用開口として構成されている。
【0073】
受光ビーム整形部材113は、レーザビーム整形部材112の周囲に環状に配置された4つの円形の受光側開口114.1,114.2,114.3,114.4を有する受光側開口配置部材として構成されている。図5Bの受光側開口114.1〜114.4は、図5Aの受光側開口104.1〜104.6よりも径が大きくなっている。
【0074】
レーザビーム整形部材(第2整形用開口)112は、レーザビームの波長に対して部分的な透過性を有するように構成されている。このため、第2整形用開口112には、レーザビームの波長の領域において100%未満、例えば20%の透過率を有した光学フィルタ115が設けられる。本実施形態の受光側開口114.1〜114.4は、受光ビームに対して完全な透過性を有するように構成されている。これに代え、受光側開口114.1〜114.4が、受光ビームに対して部分的な透過性を有するように構成することもできる。検出器32に照射される受光ビームの放射エネルギは、受光ビーム整形部材(受光側開口配置部材)113の受光側透過面積に加え、受光側開口114.1〜114.4の透過性によって調整することができる。
【0075】
第1整形用開口102、第2整形用開口112、及び受光側開口104.1〜104.6,114.1〜114.4は、それぞれ円形の開口形状を有する。円形の整形用開口及び受光側開口は、好ましい開口形状である。第1整形用開口102、第2整形用開口112は、円形であることにより、周方向に沿って一定の広がり角を有した部分的ビームを生成する。原理的には、円形ではない開口形状の整形用開口及び受光側開口も使用可能である。楕円形または長方形の開口形状の整形用開口及び受光側開口の場合、開口を出た後のビームは、周方向に沿って広がり角が変化するようなビーム断面を有する。
【0076】
図6は、単体のリトロリフレクタ体までの距離を光学的に測定するために構成された2つの第1整形部材122,123と、リトロリフレクタ面までの距離を光学的に測定するために構成された3つの第2整形部材124,125,126と、散乱型目標物までの距離を光学的に測定するために構成されたビーム通路127とを有する調整デバイス121の第1実施形態を示す図である。距離の測定は、例えば図1に示す測距装置10を用いて行われる。
【0077】
第1整形部材122は、5つの円形の出射側開口129を有する出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材128と、光学フィルタ132が設けられ、受光ビームに対して部分的な透過性を有した4つの円形の受光側開口131を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材130とを備える。もう一方の、第1整形部材123は、5つの円形の出射側開口134を有する出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材133と、光学フィルタ137が設けられ、受光ビームに対して部分的な透過性を有した4つの円形の受光側開口136を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材135とを備える。
【0078】
第1整形部材122と第1整形部材123とは、出射側開口129と出射側開口134との径、受光側開口131と受光側開口136との径、及び受光側開口131と受光側開口136との透過性が、それぞれ互いに相違している。例えば、第1整形部材122は、30m〜100mの距離範囲の距離の測定用に設けられ、第1整形部材123は、30mまでの距離範囲の距離の測定用に設けられる。
【0079】
第2整形部材124は、円形の整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材138と、4つの円形の受光側開口140を有し、受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材139とを備える。レーザビーム整形部材(整形用開口)138は、光学フィルタ141を用い、レーザビームに対して部分的な透過性を有するように構成され、受光側開口140は、光学フィルタ142を用い、受光ビームに対して部分的な透過性を有するように構成される。もう1つの第2整形部材125は、円形の整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材143と、4つの円形の受光側開口145を有し、受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材144とを備え、レーザビーム整形部材(整形用開口)143は、光学フィルタ146を用い、レーザビームに対して部分的な透過性を有するように構成される。更にもう1つの第2整形部材126は、円形の整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材147と、7つの円形の受光側開口149を有し、受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材148とを備え、レーザビーム整形部材(整形用開口)147は、レーザビームに対して部分的な透過性を有するように構成され、受光側開口149は、受光ビームに対して部分的な透過性を有するように構成される。
【0080】
3つの第2整形部材124,125,126は、整形用開口138,143,147の径、整形用開口138,143,147の透過性、受光側開口140,145,149の径、受光側開口140,145,149の数、及び受光側開口140,145,149の透過性の少なくとも1つの点で互いに相違する。例えば、第2整形部材124は、10mまでの距離範囲にあるキャッツアイ型リフレクタまでの距離の測定用に設けられ、第2整形部材125は、10m〜100mの距離範囲にあるキャッツアイ型リフレクタまでの距離の測定用に設けられ、第2整形部材126は、100mを超える距離範囲にあるキャッツアイ型リフレクタまでの距離の測定用に設けられる。提示した距離範囲は、良好な反射性を有したキャッツアイ型リフレクタの場合の一例であって、距離範囲は、リトロリフレクタ面の質に依存する。適用可能な取り決めとしては、レーザビーム及び受光ビームの減衰の程度は、リトロリフレクタ面の質の低下に伴って小さくすべきであるということである。
【0081】
図7A及び図7Bは、第1調整デバイス150(図7A)と、第2調整デバイス151(図7B)とを有する調整デバイスの第2実施形態を示しており、第1調整デバイス150は、単体のリトロリフレクタ体までの距離を測定するための第1整形部材と、リトロリフレクタ面までの距離を測定するための第2整形部材とを有し、第2調整デバイス151は、レーザビーム及び受光ビームの少なくとも一方の放射エネルギを減衰させるための減衰部材を有する。距離の測定は、例えば図1に示す測距装置10を用いて行われる。
【0082】
第1調整デバイス150は、単体のリトロリフレクタ体までの距離の光学的な測定用に構成された2つの第1整形部材152,153と、リトロリフレクタ面までの距離の光学的な測定用に構成された3つの第2整形部材154,155,156と、散乱型目標物までの距離の計測用に構成されたビーム通路157とを備える。第1整形部材152は、5つの円形の出射側開口159を有する出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材158と、4つの円形の受光側開口161を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材160とを備える。もう一方の、第1整形部材153は、5つの円形の出射側開口164を有する出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材163と、4つの円形の受光側開口166を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材165とを備える。
【0083】
第1整形部材152と第1整形部材153とは、出射側開口159と出射側開口164との径、及び受光側開口161と受光側開口166との径が、それぞれ互いに相違している。例えば、第1整形部材152は、30m〜100mの距離範囲の距離の測定用に設けられ、第1整形部材153は、30mまでの距離範囲の距離の測定用に設けられる。
【0084】
第2整形部材154は、円形の整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材168と、4つの円形の受光側開口170を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材169とを備える。もう1つの、第2整形部材155は、円形の整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材173と、4つの円形の受光側開口175を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材174とを備える。更にもう1つの、第2整形部材156は、円形の整形用開口として構成されたレーザビーム整形部材177と、7つの円形の受光側開口179を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材178とを備える。
【0085】
3つの第2整形部材154,155,156は、レーザビーム整形部材(整形用開口)168,173,177の径、受光側開口170,175,179の径、及び受光側開口170,175,179の数のうちの少なくとも1つの点で互いに相違する。例えば、第2整形部材154は、5mまでの距離範囲にある反射膜までの距離の測定用に設けられ、第2整形部材155は、5m〜30mの距離範囲にある反射膜までの距離の測定用に設けられ、第2整形部材156は、30mを超える距離範囲にある反射膜までの距離の測定用に設けられる。距離範囲は、良好な反射性を有した反射膜の場合の一例であって、リトロリフレクタ面の質に依存する。適用可能な取り決めとしては、レーザビーム及び受光ビームの減衰の程度は、リトロリフレクタ面の質の低下に伴って小さくすべきであるということである。
【0086】
第2調整デバイス151は、反射型目標物までの距離の測定用に構成された5つの減衰部材182,183,184,185,186と、散乱型目標物までの距離の計測用に構成されたビーム通路187とを備える。減衰部材182〜186のそれぞれは、レーザビーム41のビーム経路に配置可能なレーザビーム減衰部材と、受光ビーム42のビーム経路に配置可能な受光ビーム減衰部材とを備える。反射型目標物までの距離を測定する際には、第1調整デバイス150の整形部材152〜156と、第2調整デバイス151の減衰部材182〜186とを、互いに組み合わせることが可能である。
【0087】
第1減衰部材182は、完全な透過性を有した第1レーザビーム減衰部材191と、第1透過率TEの部分的な透過性を有した第1受光ビーム減衰部材192とを備える。第2減衰部材183は、完全な透過性を有した第2レーザビーム減衰部材193と、第2透過率TEの部分的な透過性を有した第2受光ビーム減衰部材194とを備える。第1受光ビーム減衰部材192と第2受光ビーム減衰部材194とは、第1透過率TEと第2透過率TEとが互いに相違し、例えば、第1受光ビーム減衰部材192の第1透過率TEは、第2受光ビーム減衰部材194の第2透過率TEの2倍の大きさとする。
【0088】
第3減衰部材184は、部分的な透過性を有した第3レーザビーム減衰部材195と、部分的な透過性を有した第3受光ビーム減衰部材196とを備えている。本実施形態において、第3レーザビーム減衰部材195の第3透過率TSと、第3受光ビーム減衰部材196の第3透過率TEとは一致する。これに代えて、第3レーザビーム減衰部材195の第3透過率TSと、第3受光ビーム減衰部材196の第3透過率TEとを互いに異なるものとすることも可能である。
【0089】
第4減衰部材185は、第4透過率TSの部分的な透過性を有した第4レーザビーム減衰部材197と、完全な透過性を有した第4受光ビーム減衰部材198とを備える。第4レーザビーム減衰部材197の第4透過率TSは、例えば5%である。
【0090】
第5減衰部材186は、第5透過率TSの部分的な透過性を有した第5レーザビーム減衰部材199と、第5透過率TEの部分的な透過性を有した第5受光ビーム減衰部材200とを備えている。本実施形態において、第5レーザビーム減衰部材199の第5透過率TSと、第5受光ビーム減衰部材200の第5透過率TEとは一致する。これに代えて、第5レーザビーム減衰部材199の第5透過率TSと、第5受光ビーム減衰部材200の第5透過率TEとを互いに異なるものとすることも可能である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B