特許第6800894号(P6800894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800894自動注射器用のシリンジキャリア(syringe carrier)および組み立て方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800894
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】自動注射器用のシリンジキャリア(syringe carrier)および組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20201207BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/32 510D
【請求項の数】19
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-562774(P2017-562774)
(86)(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公表番号】特表2018-516691(P2018-516691A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016062503
(87)【国際公開番号】WO2016193374
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月22日
(31)【優先権主張番号】15170580.3
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ティミス
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ・ホジソン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−500089(JP,A)
【文献】 特表2009−529395(JP,A)
【文献】 特表2009−523587(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0105663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジキャリア(16)であって:
着脱可能な保護ニードルシース(5)によって封入された針(4)を有するシリンジ(3)を受けるように適用されたハウジング(16.0)と、
弛緩状態において内向きに突出し、取り付け位置においてシリンジ(3)と連結するように適用された2つまたはそれ以上の可撓性アーム(16.1)であって、シリンジキャリア(16)内のシリンジ(3)の事前組み立て位置では径方向外向きに偏向するように適用され、取り付け位置では、弛緩状態に戻ることが可能にされる、可撓性アームとを含み、
ここで、可撓性アーム(16.1)は、ハウジング(16.0)の遠位のキャリア前端(16.2)から遠位に延び、
可撓性アーム(16.1)は、内向きに向けられ、シリンジ(3)の遠位ショルダと連結するように構成された突出部(16.3)を含む、前記シリンジキャリア。
【請求項2】
突出部(16.3)の内径は、保護ニードルシース(5)の外径およびシリンジ(3)の軸の外径より小さい、請求項に記載のシリンジキャリア(16)。
【請求項3】
ハウジング(16.0)は、シリンジキャリア(16)の近位端に、近位シリンジフランジ(3.1)の外径より一部小さい外径を有する近位アパーチャを含
ここで、近位アパーチャは楕円または長円の形態を有している、請求項1または2に記載のシリンジキャリア(16)。
【請求項4】
ハウジング(16.0)は中空シリンダとして形成され、そして、可撓性アーム(16.1)は、弛緩状態で、中空シリンダの長手方向軸に対して内向きに傾斜する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンジキャリア(16)。
【請求項5】
可撓性アーム(16.1)のそれぞれの遠位端は、シリンジキャリア(16)それぞれの遠位端を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンジキャリア(16)。
【請求項6】
自動注射器(1)であって:
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンジキャリア(16)と、
該シリンジキャリア(16)を受けるように適用されたケース(2)であって、シリンジキャリア(16)はケース(2)内に解放可能に保持され得る、ケースとを含む前記自動注射器。
【請求項7】
ケース(2)は、軸方向力(F2)がシリンジキャリア(16)に作用するとき、取り付け位置において可撓性アーム(16.1)をさらに内向きに偏向させるように適用される、請求項6に記載の自動注射器(1)。
【請求項8】
ケース(2)は、可撓性アーム(16.1)に作用する少なくとも1つの内向きに向けられた縁部(2.1.3)を含み、軸方向力(F2)がシリンジキャリア(16)に作用するとき、シリンジ(3)および保護ニードルシース(5)を強制分離する、請求項7に記載の自動注射器(1)。
【請求項9】
ケース(2)は、前部ケース(2.1)と、該前部ケース(2.1)によって長手方向に沿って取り囲まれ、前部ケース(2.1)の開放近位端を閉じるように適用された後部ケース(2.2)とを含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項10】
ケース(2)は、1つまたはそれ以上のアパーチャを含んで、少なくとも1つの組み立てツール(18、19)の挿入を可能にして、力をかけてシリンジキャリア(16)をケース(2)内で移動させ、シリンジキャリア(16)の少なくとも1つの保持クランプ(16.6)をケース(2)から解放し、またはシリンジキャリア(16)をシリンジ(3)に対して動かし、または少なくともシリンジ(3)をシリンジキャリア(16)内で動かす、請求項6〜9のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の自動注射器(1)を組み立てる方法であって:
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンジキャリア(16)が中に取り付けられているケース(2)を提供する工程と、
着脱可能な保護ニードルシース(5)によって封入された針(4)を備えたシリンジ(3)を提供する工程と、
a)シリンジ(3)を軸方向にシリンジキャリア(16)内に挿入する工程と、
シリンジキャリア(16)の2つまたはそれ以上の可撓性アーム(16.1)が径方向内向きに弛緩状態に戻り、シリンジ(3)と連結するまで、遠位端からシリンジに軸方向力がかけられることによって、シリンジ(3)を事前に位置決めする工程と、
シリンジキャリア(16)をケース(2)から解放し、シリンジキャリア(16)に作用する軸方向力(F2)によって、シリンジキャリア(16)をケース(2)内で前方に動かす工程とあるいは、
b)シリンジ(3)を軸方向にシリンジキャリア(16)内に挿入し、事前に位置決めする工程と、
シリンジキャリア(16)をケース(2)から解放し、可撓性アーム(16.1)が径方向内向きに弛緩状態に戻り、取り付け位置において、一部にはシリンジキャリア(16)に作用する軸方向力(F2)によってシリンジ(3)と連結するまで、シリンジキャリア(16)をケース(2)内で前方に動かすことによって、シリンジ(3)をシリンジキャリア(16)内に最終的に取り付ける工程
含む前記組み立てる方法。
【請求項12】
シリンジ(3)をシリンジキャリア(16)内に挿入するために、シリンジ(3)は、シリンジフランジ(3.1)がキャリア後端(16.4)と係合するまでシリンジキャリア(16)の近位端であるキャリア後端(16.4)内に軸方向前方に動かされる、請求
項11に記載の組み立てる方法。
【請求項13】
シリンジ(3)をシリンジキャリア(16)内に挿入するとき、後部組み立てツール(18)が、軸方向前方にシリンジ(3)に押しつけられる、請求項12に記載の組み立てる方法。
【請求項14】
シリンジ(3)がシリンジキャリア(16)内に挿入されたとき、可撓性アーム(16.1)は、シリンジ(3)の軸と係合し、外向きに偏向する、請求項12または13に記載の組み立てる方法。
【請求項15】
シリンジ(3)をシリンジキャリア(16)内で事前に位置決めするために、シリンジ(3)は、可撓性アーム(16.1)が径方向内向きに偏向されてシリンジ(3)の遠位ショルダと連結するまで、固定されたシリンジキャリア(16)内で軸方向後方に動かされる、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組み立てる方法。
【請求項16】
シリンジ(3)をシリンジキャリア(16)内で事前に位置決めするとき、前部組み立てツール(19)が、軸方向後方にシリンジ(3)に押しつけられる、請求項15に記載の組み立てる方法。
【請求項17】
前部組み立てツール(19)は、軸方向後方に保護ニードルシース(5)に押しつけられ、それにより、保護ニードルシース(5)は、シリンジ(3)と一緒になって軸方向に後方方向に動く、請求項16に記載の組み立てる方法。
【請求項18】
シリンジキャリア(16)をケース(2)から解放し、シリンジキャリア(16)をケース(2)内で前方に動かすために、後部組み立てツール(18)は、軸方向前方にシリンジキャリア(16)に押しつけられ、それにより、シリンジキャリア(16)は、シリンジ(3)と一緒になって前方方向に動く、請求項11〜17のいずれか1項に記載の組み立てる方法。
【請求項19】
シリンジキャリア(16)をケース(2)内で前方に動かし、取り付け位置に到達したとき、ケース(2)は、可撓性アーム(16.1)をさらに内向きに偏向させるように適用され、シリンジ(3)および保護ニードルシース(5)を強制分離する、請求項18に記載の組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動注射器用のシリンジキャリア、および自動注射器を組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注射を投与することは、ユーザおよび医療関係者にとって、精神的および身体的両方の数多くのリスクおよび難題を呈するプロセスである。注射デバイスは、通常、2つの種類−手動デバイスおよび自動注射器に分類される。従来の手動デバイスでは、針を通して薬剤を駆動するために手動の力が必要とされる。これは、通常、注射中、連続して押されるプランジャによって行われる。この方法に関連する欠点は数多く存在する。たとえば、プランジャが早期に解放された場合、注射は停止し、意図する用量を送達しないことがある。さらに、プランジャを押すために必要とされる力が大きすぎる場合がある(たとえば、ユーザが老人または子供である場合)。また、注射デバイスを位置合わせし、注射を投与し、注射中、注射デバイスを静止状態に保つことは、器用さが必要とされることがあり、一部の患者は有していないことがある。
【0003】
自動注射器デバイスは、自己注射を患者にとってより容易にすることを目的とする。従来の自動注射器は、ばねによって注射を投与するための力をもたらすことができるが、トリガボタンまたは他の機構を使用して注射を起動することもできる。自動注射器は、単回使用または再使用可能なデバイスとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動注射器用の改良されたシリンジキャリア、そのような改良されたシリンジキャリアを備えた改良された自動注射器、および自動注射器を組み立てる改良された方法が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様によれば、自動注射器用のシリンジキャリアであって:
−着脱可能な保護ニードルシースによって封入された針を有するシリンジを受けるように適用されたハウジングと、
−弛緩状態において内向きに突出し、取り付け位置(mounted position)においてシリンジと連結するように適用された2つまたはそれ以上の可撓性アームであって、シリンジキャリア内のシリンジの事前組み立て位置(pre−assembled position)では径方向外向きに偏向するように適用され、取り付け位置では弛緩状態に戻ることが可能にされる、可撓性アームとを含む、シリンジキャリアが提供される。
【0006】
可撓性アームは、シリンジに対するシリンジキャリアの相対運動によって弛緩状態に戻る。この相対運動は、シリンジキャリア上の軸方向力によって引き起こすことができる。
【0007】
本開示の代替の態様によれば、2つまたはそれ以上の可撓性アームは、弛緩状態において真っ直ぐに延びる。両方の実施形態、−真っ直ぐなアームまたは内向きに向けられたアーム−は、事前組み立て状態において、すなわち可撓性アームをシリンジの軸上に係合させる間の可撓性アームの外向き偏向中(=可撓性アームの初期応力状態およびシリンジキャリア内のシリンジの事前組み立て状態)、引っ張り力の量において異なる。特にアームの初期応力状態では、真っ直ぐなアームの引っ張り力は、内向きに向けられたアームの引っ張り力より小さい。
【0008】
キャリア設計により、シリンジおよびニードルシールドの寸法ならびにニードルシールドおよびシリンジの相対位置における大きな変動にもかかわらず、シリンジをその基準点上に正確に支持することが可能になる。特に、シリンジキャリア、すなわち内向きに突出するアームは、大きなシリンジ基準点を可能にし、高い安全マージンを有する頑強な支持表面を提供する。さらに、最終的な組み立てが簡易化され、軸方向組み立てプロセスを可能にする。
【0009】
例示的な実施形態では、可撓性アームは、キャリア前端から遠位に延びる。さらなる例示的な実施形態では、可撓性アームは、キャリア前端周りに対称的に配置される。可撓性アームは、径方向外向きに偏向可能であり、事前組み立て位置において初期応力がかけられる。
【0010】
例示的な実施形態では、可撓性アームは、シリンジ上に内向きに向けられ、シリンジの遠位ショルダと連結するように構成された突出部を含む。好ましくは、シリンジは、針を有する充填済みシリンジである。代替的には、針を有する薬剤容器を設けることができる。
【0011】
さらなる実施形態によれば、突出部の外径は、保護ニードルシースの外径およびシリンジの軸の外径より小さい。突出部のより小さい外径は、シリンジキャリアおよび保護ニードルシースに対する軸方向位置にシリンジを支持し、したがって事前に位置決めする。
【0012】
例示的な実施形態では、ハウジングは、近位シリンジフランジの外径より一部小さい外径を有する近位アパーチャを含む。シリンジをシリンジキャリア内で動かすとき、近位シリンジフランジは、近位アパーチャのキャリア後端と係合し、その上に載置する。好ましくは、近位アパーチャは、楕円または長円の形態を有し、したがって近位アパーチャの外径は、近位シリンジフランジの円形外径より小さくかつ大きくなることができる。
【0013】
本開示の別の態様によれば、自動注射器であって、少なくともシリンジキャリアと、シリンジキャリアを受けるように適用されたケースとを含み、ここで、シリンジキャリアは、ケース内に解放可能に保持され得る、自動注射器が提供される。
【0014】
例示的な実施形態では、ケースは、取り付け位置、したがって軸方向力がシリンジキャリアに作用するときの可撓性アームの弛緩状態において可撓性アームの内向き偏向を拘束し、支持するように適用される。例示的な実施形態では、ケースは、可撓性アームに作用する少なくとも1つの内向きに向けられた縁部を含み、ここで、取り付け位置における可撓性アームの内向き偏向は、軸方向力がシリンジキャリアに作用するとき、シリンジおよび保護ニードルシースを強制分離する。シリンジキャリアおよびケースの設計は、保護ニードルシース、たとえば剛性またはゴム製ニードルシースが、組み立て中に所定の位置に自動的に変位されてシリンジを基準点において支持するのに十分な隙間をもたらすようなものである。
【0015】
例示的な実施形態では、ケースは、少なくとも1つの内向きに向けられた剛性縁部、たとえば円周方向に隆起した縁部またはラッチを遠位端に保護ニードルシースの方向に含む。
【0016】
例示的な実施形態では、シリンジキャリアは、軸方向キャリア後端上、たとえば保護ニードルシースの方向の反対側に、シリンジキャリアをケース内に解放可能に保持するための保持クランプを含む。保持クランプは、たとえば突端部としてシリンジキャリアと一体的に形成される。特に、保持クランプは外向きに向けられる。さらに、シリンジキャリアは、キャリア後端上、たとえばキャリアフランジまたはキャリアヘッド上に互いに対向して配置された少なくとも2つのクランプを含む。
【0017】
例示的な実施形態では、ケースは、保持クランプを解放可能に保持するための少なくとも1つの内側支持体を含む。特に、内側支持体は、内側溝またはスロットまたは開口部として形成することができる。
【0018】
例示的な実施形態では、ケースは、前部ケースおよび後部ケースを含む。
【0019】
前部ケースは、キャリアをその後端において解放可能に保持し、キャリアをその前端において固定式に保持するように適用することができる。さらに、前部ケースは、自動注射器を密閉し、取り付け位置においてキャリアの可撓性アームの内向き偏向を拘束し、支持するように適用される。
【0020】
さらに、後部ケースは、ケースに対するシリンジの軸方向運動を防止し、保護ニードルシースの方向とは反対側において軸方向ケースを閉じるように適用される。
【0021】
例示的な実施形態では、自動注射器は、ケースに嵌め込み式に連結されたニードルシュラウドであって、ニードルが覆われる、ケースに対する伸張位置と、針が露出される、ケースに対する後退位置との間で可動であるニードルシュラウドと、ニードルシュラウドをケースに対して遠位方向に付勢するシュラウドばねと、ケース内に摺動可能に配設されたプランジャと、プランジャを駆動する駆動ばねとをさらに含む。
【0022】
例示的な実施形態では、ケースは、前部ケースと、前部ケースによって長手方向に沿って取り囲まれ、前部ケースの開放近位端を閉じるように適用された後部ケースとを含む。
【0023】
例示的な実施形態では、ニードルシュラウドは、ケースの内側ケースボスが当接する内側シュラウドボスを含む。
【0024】
例示的な実施形態では、シリンジキャリアの後端にかけられた軸方向力により、保持クランプは、ケースから解放され、それにより、シリンジキャリアは組み立てられたシリンジと一緒になってケース内を移動することができる。
【0025】
例示的な実施形態では、ケースは、シリンジキャリアをケース内で動かすために力をかけるための少なくとも1つの組み立て工具の挿入を可能にする1つまたはそれ以上の開口部、または1つまたはそれ以上のアパーチャを含み、ここで、ケースからのシリンジキャリアの少なくとも1つの保持クランプは、解放され、または少なくともシリンジをシリンジキャリア内で移動させる。
【0026】
本開示のさらなる態様によれば、自動注射器を組み立てる方法が提供され、方法は:
−弛緩状態において内向きに突出する可撓性アームを備えたシリンジキャリアが取り付けられるケースを提供する工程と、
−着脱可能な保護ニードルシースによって封入された針を備えたシリンジを提供する工程と、
−シリンジを軸方向にシリンジキャリア内に挿入し、事前に位置決めする工程であって、可撓性アームは径方向外向きに引っ張られる、工程と、
−最終的に、シリンジキャリアをケースから解放し、可撓性アームが径方向内向きに弛緩状態に戻り、取り付け位置においてシリンジと連結するまで、シリンジキャリアをケース内で前方に動かすことによって、シリンジをキャリア内に取り付ける工程とを含む。
【0027】
取り付けられた最終位置における可撓性アームの内向き偏向は、保護ニードルシースを変位させてシリンジをその基準点に支持する空間を可能にする。この取り付け位置では、シリンジキャリアの可撓性アームは、ケースによって剛性に保持され、したがってシリンジを安全に支持する。
【0028】
可撓性アームは、一部にはシリンジキャリアに作用する軸方向力によって弛緩状態に戻り、それにより、シリンジキャリアは、ケースに対して、最終的にはこれに加えてシリンジに対して相対的に移動される。
【0029】
例示的な実施形態では、シリンジをシリンジキャリア内に挿入するために、シリンジは、開放キャリア後端内に、シリンジフランジがキャリア後端と係合するまで軸方向前方に動かされる。
【0030】
シリンジをシリンジキャリア内に挿入するとき、たとえば、後部組み立てツールが軸方向前方にシリンジに押しつけられる。さらに、シリンジがシリンジキャリア内に挿入されたとき、可撓性アームはシリンジの軸と係合し、外向きに偏向し、したがって初期応力がかけられる。
【0031】
シリンジキャリア内のシリンジのオプションの事前位置決めとして、シリンジは、可撓性アームが偏向され、径方向内向きにはじき戻され、したがって弛緩されてシリンジの遠位ショルダと連結するまで、固定されたキャリア内で軸方向後方に動かされる。場合により、シリンジをシリンジキャリア内で事前に位置決めするとき、前部組み立てツールが、軸方向後方にシリンジに押しつけられる。特に前部組み立てツールは、軸方向後方に保護ニードルシースに押しつけられ、それにより、保護ニードルシースは、シリンジと一緒になって後方方向に軸方向に動く。
【0032】
例示的な実施形態では、シリンジキャリアをケースから解放し、シリンジキャリアをケース内で前方に動かすために、たとえば、後部組み立てツールが軸方向前方にシリンジキャリアに押しつけられ、それにより、キャリアは、シリンジと一緒になって前方方向に動く。
【0033】
最終的にシリンジをシリンジキャリア内に取り付け、位置決めするために、シリンジキャリアをケース内で前方に動かし、取り付け位置に到達したとき、シリンジキャリアはシリンジと共に、シリンジの保護ニードルシースがキャップ内でバーブと係合し、それによりシリンジが固定されるまで前方に動かされ、シリンジキャリアは、可撓性アームがシリンジの遠位端上を動き、最終取り付け位置に到達するときに弛緩状態に戻るまで、シリンジに対して相対的にさらに動かされる。この最終取り付け位置では、可撓性アームは、保護ニードルシースと係合しこれを変位させて、シリンジをその最終位置およびその基準点に支持する空間を可能にする。さらに、この最終取り付け位置では、ケースは、可撓性アームの内向き偏向を拘束し、支持するように適用され、シリンジおよび保護ニードルシースを強制分離する。
【0034】
本開示のさらなる態様によれば、自動注射器を組み立てる方法が提供され、方法は:
−取り付けられたニードルシュラウドを備えた前部ケースと、キャリア前端およびキャリア後端を備えたシリンジキャリアが中に取り付けられている開放ケース後端とを含む前部サブアセンブリを提供する工程と、
−着脱可能な保護ニードルシースによって封入された針を備えたシリンジを提供する工程と、
−シリンジフランジがキャリア後端と係合するまでシリンジフランジを押し出すことによってシリンジをケース後端に軸方向に挿入する工程であって、キャリア前端から延び、弛緩状態において内向きに突出する可撓性アームが、外向きに偏向するようにシリンジと係合する、工程と、
−最終的に以下の工程:
−シリンジキャリアをケースから解放する工程と、
−シリンジキャリアを前方に動かす工程であって、それにより、シリンジキャリアはシリンジと一緒になって、可撓性アームが径方向内向きに弛緩状態に戻り、取り付け位置においてシリンジと連結するまで、ケース内で前方方向に動く工程によってシリンジをキャリア内に取り付ける、工程とを含む。
【0035】
ケースは、シリンジキャリアが取り付け位置に到達したときに可撓性アームの内向き偏向を拘束するように適用され、それにより、シリンジキャリアに作用する軸方向力により、ケースは、可撓性アームに作用してシリンジおよび保護ニードルシースを強制分離する。可撓性アームは、保護ニードルシースの後端の後方に係合する。保護ニードルシースおよびシリンジは、可撓性アームがケースによって拘束され径方向内向きに強制されるまで離間される。この時点において、シリンジキャリアおよび保護ニードルシースは、一体として動き、一方でシリンジは、シリンジキャリアの可撓性アームが完全に係合されるまで「後方に残される」。
【0036】
場合により、シリンジは、保護ニードルシースを後方に移動させることによってシリンジキャリア内に事前に組み立てられ、位置決めされ、その結果、保護ニードルシースはシリンジと一緒になって、可撓性アームが内向きに偏向され、その弛緩状態まで戻り、保護ニードルシースと係合するまで、固定されたシリンジキャリアに対して後方方向に動く。
【0037】
本発明の適用性のさらなる範囲は、これ以後与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の例示的な実施形態を示している詳細な説明および特有の例は、本発明の趣旨および範囲に入るさまざまな変更および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【0038】
本発明は、以下に与えられる詳細な説明、および例示としてのみ与えられ、したがって本発明を限定するものではない、添付の図からより完全に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】組み立て後の本発明による自動注射器の例示的な実施形態の簡易化された長手方向断面図である。
図2A】組み立て後の部分的に切り取られた(より詳細な)概略斜視図である。
図2B】本発明による自動注射器の例示的な実施形態の分解図である。
図2C】後部組み立てツールの例示的な実施形態の斜視図である。
図2D】オプションの前部組み立てツールの例示的な実施形態の斜視図である。
図3】シリンジが中に組み立てられるシリンジキャリアが取り付けられた前部ケースを含む前部サブアセンブリの例示的な実施形態の概略分解図である。
図4】シリンジが中に取り付けられている前部ケースが取り付けられた前部サブアセンブリの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図5A】最終取り付け位置に動かされるシリンジキャリアおよびシリンジが取り付けられた前部ケースを含む前部サブアセンブリの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図5B】シリンジキャリアに取り付けられた後部組み立てツールの概略斜視図である。
図6】最終的に組み立てられた前部サブアセンブリの概略拡大部分図である。
図7図6による最終的に組み立てられた前部サブアセンブリの概略拡大部分図である。
図8】シリンジキャリアの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図9A】シリンジキャリアの遠位端の概略斜視図である。
図9B】シリンジキャリアの遠位端の概略斜視図である。
図10A】中間組み立て位置に動かされるシリンジが取り付けられた前部ケースを含む前部サブアセンブリの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図10B】シリンジに取り付けられた、オプションの前部組み立てツールの概略斜視図である。
図11】最終取り付け位置に動かされるシリンジキャリアおよびシリンジが取り付けられた前部ケースを含む前部サブアセンブリの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図12】真っ直ぐに伸張されたアームを備えたシリンジキャリアの代替の実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
対応する部材は、すべての図において同じ参照記号によってマークされる。
【0041】
図1は、組み立て後の本発明による自動注射器1の例示的な実施形態の簡易化された長手方向断面図であり、主要な組み立て部材を示す。図2Aは、自動注射器1の部分的に切り取られた概略斜視図である。図2Bは、自動注射器1のすべての構成要素の分解図を示す。図2A、2Bは、組み立てられた自動注射器1をより詳細に示す。
【0042】
自動注射器1は、ケース2を含む。ケース2は、複数部分として設計される。特に、ケース2は、前部ケース2.1と、後部ケース2.2とを含む。後部ケース2.2は、前部ケース2.1によって長手方向に沿って取り囲まれ、前部ケース2.1の開放近位端を閉じるように適用される。ケース2は、シリンジ3を保持するように適用される。
【0043】
シリンジ3は、充填済みシリンジまたは充填済み薬剤容器とすることができ、遠位端に配置された針4を有する。シリンジ3は、事前に組み立てることができる。通常、保護ニードルシース5を針4に着脱可能に連結することができる。保護ニードルシース5は、ゴム製ニードルシースまたは(ゴムおよび完全または部分的にプラスチックのシェルから構成される)剛性ニードルシースとすることができる。
【0044】
ストッパ6が、シリンジ3を近位に封止し、シリンジ3内に含まれた薬剤Mを針4を通って変位させるために配置される。他の例示的な実施形態では、シリンジは、薬剤Mを含み、着脱可能な針と(たとえばねじ山、スナップ、摩擦などによって)係合するカートリッジまたは容器とすることができる。
【0045】
例示的な実施形態では、キャップ11をケース2の遠位端に着脱可能に配設することができる。キャップ11は、ケース2内にはめ込まれた保護ニードルシース5、キャップ11および/またはニードルシュラウド7と係合するように配置されたグリップ要素11.2(たとえばバーブ、フック、狭くされたセクションなど)を含むことができる。キャップ11は、キャップ11の(たとえばキャップ11をケース2に対してねじるおよび/または引っ張ることによる)取り外しを容易にするためのグリップ機能11.1を含むことができる。
【0046】
さらに、キャップ11は、保護ニードルシース5をシリンジ3の最終取り付け位置においてケース2内に把持するグリップ要素11.2としてバーブを含む。
【0047】
例示的な実施形態では、(図2Aおよび2Bに示す)シュラウドばね8が、ニードルシュラウド7をケース2に対して遠位方向Dに付勢するように配置される。
【0048】
例示的な実施形態では、駆動ばね9がケース2内に配置される。プランジャ10は、駆動ばね9の力をストッパ6に送るように働く。例示的な実施形態では、プランジャ10は、中空であり、駆動ばね9は、プランジャ10内に配置されて、プランジャ10をケース2に対して遠位方向Dに付勢する。別の例示的な実施形態では、プランジャ10は、中実とすることができ、駆動ばね9は、プランジャ10の近位端と係合することができる。同様に、駆動ばね9をプランジャ10の外径に巻き付けることができ、駆動ばね9はシリンジ3内に延びることができる。
【0049】
例示的な実施形態では、プランジャ解放機構12が、ニードルシュラウド7がケース2に対して後退する前のプランジャ10の解放を防止し、ニードルシュラウド7が十分に後退された後にプランジャ10を解放するために配置される。
【0050】
例示的な実施形態では、シュラウドロック機構14が、キャップ11が所定位置にあるときにケース2に対するニードルシュラウド7の後退を防止するために配置され、それによって自動注射器1の意図しない起動(たとえば落下した場合、発送または梱包中など)を防止する。
【0051】
シュラウドロック機構14は、キャップ11上に1つまたはそれ以上の柔軟ビーム(compliant beam)11.3と、柔軟ビーム11.3の各々を受けるように適用されたニードルシュラウド7内のそれぞれの数のアパーチャ7.6(図2Aに示す)とを含むことができる。キャップ11が自動注射器1に取り付けられたとき、柔軟ビーム11.3は、ケース2上の径方向止め具2.15と当接し、この止め具は、柔軟ビーム11.3がアパーチャ7.6から係合解除することを防止する。
【0052】
キャップ11が自動注射器1に取り付けられたとき、キャップ11のケース2に対する近位方向Pの軸方向運動は、ケース2と当接するキャップ11上のリブ11.4によって限定される。キャップ11がケース2に対して遠位方向Dに引っ張られたとき、柔軟ビーム11.3はアパーチャ7.6の縁部と当接し、アパーチャ7.6から係合解除するように偏向することができ、それによってキャップ11およびこれに取り付けられた保護ニードルシース5の取り外しを可能にする。さらに、キャップ11のグリップ要素11.2もまた、保護ニードルシース5を把持し、保護ニードルシース5の取り外しを可能にする。
【0053】
図示する実施形態では、キャップ11は、その遠位端部において閉じられる。代替的には、キャップは、(一例が図2Dに示される)前部組み立てツールを挿入するための閉鎖可能な開口部を含むことができる。
【0054】
例示的な実施形態では、柔軟ビーム11.3および/またはアパーチャ7.6を傾けて柔軟ビーム11.3をアパーチャ7.6から係合解除するのに必要な力を低減することができる。
【0055】
自動注射器1は、薬剤Mの送達の完了の可聴フィードバックを生み出すための(図2Aに示す)可聴インジケータ(audible indicator)13を少なくとも含む。可聴インジケータ13は、たとえば双安定ばねとして形成され、後部ケース2.2内に保持される。
【0056】
後部ケース2.2は、組み立て後、特に収納、輸送、および通常使用中、シリンジ3の軸方向運動を防止するように適用される。詳細には、後部ケース2.2は、その前端に弾性アーム15を含む。弾性アーム15は、ラビリンスアームとして形成されて衝撃力を減衰させる。
【0057】
組み立て中および組み立て後にシリンジ3の正確な支持を可能にするために、自動注射器1は、シリンジキャリア16を含む。シリンジキャリア16は、シリンジ3をケース2内に組み立て、保持するように適用され、これは、より詳細にさらに説明される。
【0058】
特に、シリンジ3は、剛性保護ニードルシース5を備えた1.0mlの充填済みシリンジである。通常、シリンジ3および保護ニードルシース5は、寸法が大きく変動する。これらの大きな変動に関わらず取り付け位置におけるシリンジ3の正確な支持を可能にするために、シリンジキャリア16および前部ケース2.1の設計は、シリンジ3を取り付け位置においてその基準点に支持するのに十分な隙間をもたらすために、組み立て中保護ニードルシース5を自動的に所定の位置に変位させ位置決めするように適用される。
【0059】
したがって、シリンジキャリア16は、シリンジ3を取り付け、位置決めし、これを取り付け位置に保持するように適用された可撓性アーム16.1を含む。可撓性アーム16.1は、弛緩状態において内向きに突出する。
【0060】
シリンジキャリア16は、シリンジ3を受けるように適用されたハウジング16.0と、取り付け位置においてシリンジ3と連結するように適用された少なくとも2つの可撓性アーム16.1とを含む。ハウジング16.0は、中空シリンダとして形成される。
【0061】
可撓性アーム16.1は、ハウジング16.0の軸方向キャリア前端16.2から遠位方向に伸張され、弛緩状態において内向きに突出し、たとえば内向きに形成され、たとえば傾斜する。可撓性アーム16.1は、その遠位端部に、内向きに向けられた突出部16.3を含む。
【0062】
シリンジ3のシリンジキャリア16への最終組み立てを支持するために、少なくとも2つの可撓性アーム16.1は、取り付け位置においてシリンジ3と連結するように適用され、それにより、外向きに初期応力がかけられた可撓性アーム16.1は、取り付け位置において径方向内向きに戻りまたはカチッと戻って弛緩状態になる。可撓性アーム16.1は、シリンジに対するシリンジキャリアの相対運動によって弛緩状態に戻る。この相対運動は、シリンジキャリア16上、たとえばキャリア後端16.4に作用する軸方向力によって引き起こすことができる。
【0063】
さらに、前部ケース2.1は、シリンジ3が取り付け位置にあるときに可撓性アーム16.1の内向き偏向を拘束するように適用され、それにより、ケース2の組み立て力は、可撓性アーム16.1に作用し、シリンジ3および保護ニードルシース5を強制分離し、それにより、シリンジ3は、図1および2Aに示される取り付け位置に固定される。
【0064】
キャリア16は、キャリア前端16.2とは反対側にキャリア後端16.4を含む。キャリア後端16.4において、キャリア16は、キャリア16をケース2に対して解放可能に断続的に保持するための保持クランプ16.6を備えたキャリアフランジ16.5を含む。
【0065】
保持クランプ16.6は、突端部としてキャリアフランジ16.5上に一体的に形成される。保持クランプ16.6の近位端は、ケース2のスロット2.1.1と係合するように外向きに向けられる。一実施形態では、キャリア16は、互いに対向して配置された2つの保持クランプ16.6を含む。スロット2.1.1の代わりに、前部ケース2.1は、保持クランプ16.6を解放可能に保持するための内側支持体を含むことができる。特に、内側支持体は、内側溝として形成することができる。
【0066】
例示的な実施形態では、自動注射器1は、少なくとも2つのサブアセンブリ、たとえば制御または前部サブアセンブリ1.1および駆動または後部サブアセンブリ(rear subassembly)1.2から形成されて、サブアセンブリ1.1、1.2の製造時間および場所ならびにシリンジ3との最終組み立てに関する柔軟性を可能にすることができる。
【0067】
図2Cおよび2Dは、剛性アーム18.1を有する後部組み立てツール18およびオプションの前部組み立てツール19の例示的な実施形態の斜視図を示す。
【0068】
自動注射器1が、閉鎖遠位端を備えたキャップ11を含む場合、シリンジ3は、後部組み立てツール18によってケース2およびシリンジキャリア16内でのみ組み立てられる。
【0069】
場合により、キャップ11が閉鎖可能な開口部を含む場合、剛性アーム19.1を有する前部組み立てツール19を提供してシリンジ3をシリンジキャリア16内の最終位置に事前に位置決めすることができる。
【0070】
図3は、自動注射器1の前部サブアセンブリ1.1の例示的な実施形態の斜視分解図である。
【0071】
例示的な実施形態では、前部サブアセンブリ1.1は、少なくとも前部ケース2.1と、ニードルシュラウド7と、シリンジ3を中に組み立てるシリンジキャリア16とを含む。
【0072】
ニードルシュラウド7およびシリンジキャリア16は、前部ケース2.1内に取り付けられる。特に、シリンジキャリア16は、前部ケース2.1のその後端のスロット2.1.1内の保持クランプ16.6のクランプ連結によって安定する。
【0073】
シリンジ3をシリンジキャリア16内に、したがって前部ケース2.1内に組み立てるために、ケース2は、1つまたはそれ以上のアパーチャを含んで、後部組み立てツール18の挿入を可能にして、シリンジ3に力をかけてこれをシリンジキャリア16内に挿入し、さらに、シリンジキャリア16に力をかけてシリンジキャリア16の少なくとも1つの保持クランプ16.6をケース2から解放し、シリンジキャリア16をシリンジ3と一緒になってケース2に対して動かす。
【0074】
図3に示されるように、ケース2、特に前部ケース2.1が提供され、この中にシリンジキャリア16が事前に組み立てられ、取り付けられる。着脱可能な保護ニードルシース5によって封入された針4を備えたシリンジ3が、軸方向にシリンジキャリア16内に挿入され、事前に位置決めされ、これは以下でより詳細に説明される。
【0075】
前部サブアセンブリ1.1を組み立てるために、シリンジキャリア16は、シリンジキャリア16の保持クランプ16.6が前部ケース2.1内の保持スロット2.1.1と係合するまで近位端Pから前部ケース2.1内に軸方向に挿入され、それにより、シリンジキャリア16は、前部ケース2.1に固定され安定する。
【0076】
追加的に、シュラウドばね8が、ニードルシュラウド7(図3には示すが図4には示さず)に挿入され、ニードルシュラウド7はシュラウドばね8と共に前部ケース2.1の遠位端2.1.2に挿入される。キャップ11はバーブ(グリップ要素11.2)と一緒になって、ニードルシュラウド7の遠位端上に配置される。
【0077】
シリンジキャリア16が前部ケース2.1内に固定された後、上記で説明したように、シリンジ3を前部サブアセンブリ1.1内に、すなわちシリンジキャリア16内にそのキャリア後端16.4から挿入することができる。
【0078】
シリンジ3をシリンジキャリア16内に挿入するために、シリンジ3は、シリンジフランジ3.1がキャリア後端16.4と係合するまで軸方向前方に開放キャリア後端16.4内へと動かされ、これは図4の矢印F1によって示される。シリンジ3をシリンジキャリア16内に挿入するとき、たとえば後部組み立てツール18が軸方向前方にシリンジ3に押しつけられる。
【0079】
シリンジ3がシリンジキャリア16内に挿入されたとき、可撓性アーム16.1はシリンジ3の軸と係合し、外向きに偏向し、したがって初期応力がかけられる(図4に示す)。
【0080】
図4は、取り付けられたシリンジキャリア16が取り付けられたシリンジ3と一緒になって中間組み立て位置にある前部サブアセンブリ1.1を詳細に示す。
【0081】
保護ニードルシース5は、通常、シリンジ直径より大きいため、シリンジ3をニードルシュラウド7から前部ケース2.1に組み立てることはできない。この問題を取り除くために、シリンジキャリア16が設けられる。故に、シリンジキャリア16のハウジング16.0は、シリンジ3の軸の外径より大きい内径を含む。さらに、ハウジング16.0は、近位シリンジフランジ3.1の外径より一部小さい外径を有する近位アパーチャを含む。
【0082】
シリンジ3は、シリンジフランジ3.1がキャリア後端16.4、特にキャリアフランジ16.5の近位ショルダ16.5.1と係合するまで、軸方向前方にシリンジキャリア16の開放キャリア後端16.4に挿入され動かされる。代替的には、シリンジフランジ3.1は、キャリアフランジ16.5の遠位ショルダと係合する。
【0083】
組み立てられたシリンジキャリア16およびシリンジ3を備えた前部サブアセンブリ1.1のこの対応する中間組み立て位置では、保持クランプ16.6は、スロット2.1.1内に保持され、シリンジキャリア16の可撓性アーム16.1は、シリンジ3のバレルまたは軸上に着座し、外向きに偏向し、したがって初期応力がかけられる。
【0084】
図5Aおよび5Bに示されるように、その後、シリンジ3をシリンジキャリア16内で最終的に位置決めするために、次いで矢印F2による軸方向力がシリンジキャリア16にかけられ、それにより、保持クランプ16.6はスロット2.1.1から解放され、シリンジキャリア16はシリンジ3と一緒になって、ケース2内で遠位方向Dに動かされる。シリンジキャリア16にかけられた軸方向力F2は、保持力、たとえばシリンジキャリア16とシリンジ3の間、たとえばそれらの接触表面間の摩擦力より小さい。さらに、軸方向力F2は、前部ケース2.1上の保持クランプ16.6の保持力より大きい。
【0085】
図5Aおよび5Bに示されるように、たとえば後部組み立てツール18が、軸方向前方にシリンジキャリア16に押しつけられ、それにより、シリンジキャリア16はケース2から解放され、シリンジ3と一緒になって前方方向に動く。図5Bで最もよく分かるように、後部組み立てツール18のアーム18.1は、シリンジキャリア16に取り付けられる。キャリア後端16.4は、楕円または長円の形態を含み、シリンジフランジ3.1の外径より一部大きい外径を有する。
【0086】
シリンジキャリア16に作用する矢印F2による軸方向力により、保持クランプ16.6は、スロット2.1.1から解放され、それにより、キャリア16はシリンジ3と一緒になって前方に動かされる。
【0087】
軸方向力F2をシリンジキャリア16に作用させると、シリンジキャリア16はシリンジ3と共にケース2内で前方に動かされ、取り付け位置まで到達し、ついにはシリンジ3の保護ニードルシース5はキャップ11内のバーブ(グリップ要素11.2)と係合するようになり、それにより、シリンジ3は停止され固定され、シリンジキャリア16は、可撓性アーム16.1がシリンジ3の遠位端上を動き、最終的な取り付け位置に到達するときに弛緩状態に戻るまで、ケース2内でシリンジ3に対してさらに相対的に動かされる。この最終取り付け位置では、可撓性アーム16.1は保護ニードルシース5と係合しこれを変位させて、シリンジ3をその最終位置およびその基準点に支持するための空間を可能にする。さらに、この最終取り付け位置では、ケース2は、可撓性アーム16.1の内向き偏向を拘束し、支持するように適用され、シリンジ3および保護ニードルシース5を強制分離する。
【0088】
特に、バーブ11.2は、たとえば、シリンジキャリア16およびシリンジ3のケース2内の前方運動中、保護ニードルシース5がキャップ11内で軸方向に動かされるときに保護ニードルシース5のショルダに取り付けられる伸張アーム(これも図示せず)を含み、それにより、シリンジ3のさらなる動きが停止される。シリンジキャリア16上のさらなる軸方向力F2と、固定されたバーブ11.2を保護ニードルシース5上に取り付けることとにより、シリンジキャリア16は、可撓性アーム16.1が径方向内向きに偏向されてシリンジ3の遠位ショルダと連結するまで、軸方向前方にシリンジ3に対して相対的に動かされる。
【0089】
さらに、前部ケース2.1は、矢印F3によってシリンジキャリア16の可撓性アーム16.1をさらに内向きに偏向させるように適用され、それにより、シリンジ3および保護ニードルシース5は、シリンジ3が図6および7に示されるその取り付け位置に到達したとき、矢印F3によって強制分離される。
【0090】
特に、前部ケース2.1は、縁部2.1.3を含む。縁部2.1.3は、内向きに向けられ、内側円周剛性縁部として形成される。
【0091】
組み立てを行い、軸方向力F2をシリンジキャリア16にもたらす間、可撓性アーム16.1は、弛緩状態に戻ることが可能にされ、縁部2.1.3によって矢印F3によってさらに内向きに偏向され、弛緩状態に拘束され、それにより、保護ニードルシース5は、矢印F4によって変位されて、シリンジ3と保護ニードルシース5との間に、シリンジ3をその取り付け位置に支持し、最終的に位置決めするための空間を可能にする。
【0092】
図6に示されるように、最終取り付け位置では、シリンジキャリア16の可撓性アーム16.1は、前部ケース2.1の縁部2.1.3によって剛性に保持され安定しており、それによってシリンジ3を安全に支持し位置決めする。
【0093】
図8は、シリンジキャリア16をより詳細に示す。シリンジキャリア16は、追加的に、シリンジ3およびシリンジキャリア16を前部ケース2.1に対して位置合わせし、位置決めする支持要素16.7を含む。支持要素16.7は、シリンジキャリア16上に対称的に配置された軸方向リブとして形成される。リブは、キャリアフランジ16.5の近位端から長手方向軸に沿って延ばされる。リブは、「T字」または「I字」として成形することができる。
【0094】
シリンジキャリア16の長さは、組み立てられるシリンジ3の長さより小さくなることができる。
【0095】
図9Aおよび9Bは、キャリア前端16.2をより詳細に示す。可撓性アーム16.1は、弛緩位置において径方向内向きに偏向され突出する。シリンジ3を保護ニードルシース5に対して最終的に位置決めするために、突出部16.3の内径は、保護ニードルシース5の外径およびシリンジ3の軸の外径より小さい。
【0096】
まとめると、図1は、最終組み立て後の本発明による自動注射器1の長手方向断面図を示し、ここで、後部サブアセンブリ1.2(駆動サブアセンブリとも呼ばれる)は、前部サブアセンブリ1.1上に取り付けられる。
【0097】
例示的な実施形態では、後部サブアセンブリ1.2は、プランジャ10と、駆動ばね9と、後部ケース2.2とを含む。たとえばシリンジ3内の薬剤Mの粘性または量が変更された場合、後部サブアセンブリ1.2の部材しか変更する必要がないことを当業者は理解するであろう。後部サブアセンブリ1.2を組み立てるために、駆動ばね9がプランジャ10に挿入され、プランジャ10は後部ケース2.2内に近位方向Pに挿入され、それによって駆動ばね9を圧縮する。プランジャ10および駆動ばね9が圧縮位置に到達した後、これは、後部ケース2.2に対してたとえば約30度の角度だけ回転されて、プランジャ10を後部ケース2.2に係合させる。例示的な実施形態では、後部ケース2.2は、カム表面を有することができ、これによってプランジャ10と係合してプランジャ10および駆動ばね9が圧縮位置に到達する前にこの回転を誘起する。
【0098】
例示的な実施形態では、後部サブアセンブリ1.2を前部サブアセンブリ1.1に最終的に組み立てた後、自動注射器1を温度制御された環境(たとえば低温流通収納庫)内に保って、たとえば駆動ばね9からの負荷下で高応力がかけられた構成要素内の、たとえばクリープを低減することができる。
【0099】
例示的な実施形態では、ニードルシュラウド7を押さえるために必要とされる力は、約2Nから12Nとすることができる。同様に、機構は、より大きい力で作用することができる。
【0100】
例示的な実施形態では、自動注射器1内で使用されるシリンジ3は、約1mLの薬剤Mを含むことができるシリンジとすることができる。別の例示的な実施形態では、自動注射器1内に使用されるシリンジ3は、約2mLの薬剤Mを含むことができるシリンジとすることができる。
【0101】
本発明による自動注射器1は、たとえば、プランジャ10のみが駆動ばね9の比較的大きい力を受けるため、従来の自動注射器に比べて収納可能期間を延ばすことができる。
【0102】
本発明による自動注射器1は、たとえば異なる粘性の薬物を有する薬剤または再構成薬剤を送達するために、または薬剤の用量を注射するために必要とされる時間を変更するために、駆動ばね9を変更してプランジャ10にかけられる力を変更することができるので、プラットフォームとして使用することができる。
【0103】
キャップ11は、注射デバイスまたは自動注射器の任意の種類に応用するのに適切である。
【0104】
図10Aおよび10Bは、前部サブアセンブリ1.1の組み立て方法のためのオプションを示す。この実施形態では、キャップ11は、開口部を含み、シリンジ3をシリンジキャリア16内で事前に位置決めするために、この開口部を通して前部組み立てツール19を挿入することができる。
【0105】
シリンジ3をシリンジキャリア16内に事前に位置決めするために、矢印F5による軸方向力が、遠位端Dからシリンジ3にかけられる。特に、軸方向力は、シリンジ3の保護ニードルシース5にかけられる。シリンジキャリア16はケース2内に固定されるので、保護ニードルシース5はシリンジ3と一緒になって、可撓性アーム16.1、特にキャリア16の突出部16.3が内向きに偏向され、シリンジ3の遠位ショルダと連結し、保護ニードルシース5と接触状態になるまで、キャリア16に対して後方に動かされ、これは、図10Aに示される。
【0106】
−シリンジ挿入のための−矢印F1による軸方向力は、後部組み立てツール18によってもたらすことができる。
【0107】
シリンジ3をシリンジキャリア16内に事前に位置決めするための矢印F5による軸方向力は、シリンジ挿入のための矢印F1の軸方向力とは反対であり、たとえば、図10Bに示されるように前部組み立てツール19を保護ニードルシース5に押しつけることによって、別個の組み立て工程としてかけることができる。
【0108】
前部組み立てツール19は、保護ニードルシース5のショルダに取り付けられる伸張アーム19.1を含み、このとき前部組み立てツール19は、軸方向後方に保護ニードルシース5に押しつけられ、それにより、シリンジ3もまた、可撓性アーム16.1が径方向内向きに偏向されてシリンジ3の遠位ショルダと連結するまで、固定されたシリンジキャリア16内で軸方向後方に動かされる。
【0109】
シリンジ3をシリンジキャリア16内で最終的に位置決めするために、シリンジキャリア16は、ケース2から解放され、図11に示され、他の実施形態においてより詳細に上記で説明したように軸方向力F2によってケース2内で前方に動く。
【0110】
図12は、シリンジキャリア16の代替の実施形態を示す。この代替の実施形態により、2つまたはそれ以上の可撓性アーム16.1は、弛緩状態で真っ直ぐに延びる。
【0111】
組み立て方法は、真っ直ぐに伸張された可撓性アーム16.1を備えたこのシリンジキャリア16の場合も同じである。真っ直ぐに伸張された可撓性アーム16.1は、その初期応力がかけられた状態において、すなわちシリンジ3のシリンジキャリア16内での事前に組み立てられた状態における、可撓性アーム16.1がシリンジ3の軸と係合するときの外側偏向中、引っ張り力の量が異なる、特により少量であるという点において異なる(図4および5Aを参照)。
【0112】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0113】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0114】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0115】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0116】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0117】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0118】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン−4(Exendin−4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC−2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034.MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド(Exenatide)−XTENおよびグルカゴン−Xtenである。
【0119】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0120】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0121】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0122】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG−F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0123】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0124】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0125】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0126】
例示的な抗体は、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0127】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0128】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1〜C6−アルキル基、場合により置換されたC2〜C6−アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10−アリル基、または場合により置換されたC6〜C10−ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0129】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0130】
当業者は、本明細書において説明される物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の改変(追加および/または取り除き)を、そのような改変およびそのあらゆるすべての等価物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0131】
1 自動注射器
1.1 前部サブアセンブリ
1.2 後部サブアセンブリ
2 ケース
2.1 前部ケース
2.1.1 スロット
2.1.2 前部ケースの遠位端
2.1.3 縁部
2.2 後部ケース
2.15 径方向止め具
3 シリンジ
3.1 シリンジフランジ
4 針
5 保護ニードルシース
6 ストッパ
7 ニードルシュラウド
7.6 アパーチャ
8 シュラウドばね
9 駆動ばね
10 プランジャ
11 キャップ
11.1 グリップ機能
11.2 グリップ要素
11.3 柔軟ビーム
11.4 リブ
12 プランジャ解放機構
13 可聴インジケータ
14 シュラウドロック機構
15 弾性アーム
16 シリンジキャリア
16.0 ハウジング
16.1 可撓性アーム
16.2 キャリア前端
16.3 突出部
16.4 キャリア後端
16.5 キャリアフランジ
16.5.1 近位ショルダ
16.6 保持クランプ
16.7 支持要素
17 視界窓
18 後部組み立てツール
18.1 アーム
19 前部組み立てツール
19.1 アーム
F1からF5 矢印
D 遠位端
M 薬剤
P 近位端
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12