(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステム1の一例であるデジタルスチルカメラの構成を示している。カメラシステム1は、撮像装置101およびレンズ鏡筒(レンズ装置)201を有する。レンズ鏡筒201は、撮像装置101と一体的に構成されていてもよいし、撮像装置101に着脱可能に取り付けられるように構成されていてもよい。
【0011】
撮像装置101は、レンズ鏡筒201を介して形成された被写体像を光電変換する撮像素子102を有する。撮像素子102として、主にCCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーなどが用いられる。
【0012】
レンズ鏡筒201は、補正レンズ202aを備える振れ補正ユニット(振れ補正装置)202、光軸αに沿って移動可能な可動レンズ203、および演算部204aを備える駆動制御部204を有する。振れ補正ユニット202は、補正レンズ202aを光軸αに垂直な平面内を移動させることで像振れの補正を行う。
図1では、補正レンズ202aは、光軸αの中心位置(基準位置)に位置している。可動レンズ203は、ズームレンズおよびフォーカスレンズの少なくとも一方を含んでいる。駆動制御部204は、演算部204aにより算出された補正レンズ202aの駆動量に基づいて補正レンズ202aを駆動制御する。また、レンズ鏡筒201は、補正レンズ202aや可動レンズ203の他に、撮像光学系を形成する不図示のレンズ群を有する。
【0013】
以下、
図2および
図3を参照して、振れ補正ユニット202の駆動原理および構成について説明する。
図2は、振れ補正ユニット202を被写体側から見た分解斜視図である。
図3は、振れ補正ユニット202を撮像素子102の撮像面側から見た分解斜視図である。
【0014】
可動レンズ枠(可動部材)220は、補正レンズ202aを保持可能な枠部材である。固定レンズ枠(固定部材)210は、レンズ鏡筒201に対して、光軸に垂直な方向に固定される。駆動装置は、第1のヨーク310、第2のヨーク320、シフトコイル330およびシフトマグネット340によって構成される。第1のヨーク310および第2のヨーク320は、固定レンズ枠210に対して固定配置されている。第2のヨーク320は、可動レンズ枠220に対して第1のヨーク310が配置される側の反対側に配置されている。シフトコイル330は、可動レンズ枠220に2つ固定されている。2つのシフトコイル330は、光軸中心から見て、同じ量だけ離れた位置であって、互いに90°ずれた位置に配置されている。シフトマグネット340は、第1のヨーク310上に配置されている。シフトマグネット340は、光軸方向から見て、シフトコイル330と重なる2つの位置に2個ずつ配置されている。2つの位置は、光軸中心から同じ量だけ離れた位置である。シフトマグネット340は、第2のヨーク320上にも配置されている。シフトマグネット340は、光軸方向から見て、シフトコイル330と重なる2つの位置に2個ずつ配置されている。2つの位置は、光軸中心から同じ量だけ離れた位置である
第1のヨーク310、第2のヨークおよびシフトマグネット340によって閉じた磁気回路が形成され、磁気吸引力によって第1のヨーク310と第2のヨーク320が引き合う。シャフト350は、第1のヨーク310と第2のヨーク320との間に配置され、磁気吸引力によって各ヨークや固定レンズ枠210が変形することを防止する。磁気回路内でシフトコイル330に通電することで、コイルとマグネットの電磁気的な相互作用によって、可動レンズ枠220がX方向およびY方向へ移動する。したがって、可動レンズ枠220は、固定レンズ枠210に対して光軸に垂直な平面内のX方向およびY方向へ移動可能である。
【0015】
位置検出手段240は、固定レンズ枠210に対する可動レンズ枠220の相対的な移動量を検出する。位置検出手段240として、例えば、ホール効果を利用するホール素子などが使用される。本実施例では、可動レンズ枠220に検出部であるホールセンサー、固定レンズ枠210に被検出部であるホールマグネットが設けられている。位置検出手段240は、光軸中心から見て、同じ量だけ離れた位置であって、互いに90°ずれた位置に配置されている。
【0016】
以下、
図4から
図6までを参照して、振れ補正ユニット202の回転防止機構について説明する。
図4は、第1のヨーク310が固定レンズ枠210に取り付けられた状態を被写体側から見た図である。
図5は、第1のアンチロールプレート410が
図4の状態のユニットに取り付けられた状態を被写体側から見た図である。
図6は、第2のアンチロールプレート420が
図5の状態のユニットに取り付けられた状態を被写体側から見た図である。
【0017】
第1のヨーク310は、転動ボール当接部311および転動ボール当接部312を有する。転動ボール当接部312は、長穴により構成されるガイド溝形状である。可動レンズ枠220は、
図3に示されるように、転動ボール当接部222を有する。固定レンズ枠210は、転動ボール当接部211を有する。第1の転動ボール(第1の転動部材)430、第2の転動ボール(第2の転動部材)440、および第3の転動ボール(第3の転動部材)450は球状の部材であり、例えば、セラミックなどで作られる。第1の転動ボール430は、2つの転動ボール当接部312に当接する第1の転動ボール430aと転動ボール当接部211に当接する第1の転動ボール(被規制転動部材)430bとを有する。第3の転動ボール450は、転動ボール当接部311に当接する。
【0018】
第1のアンチロールプレート410は、転動ボール当接部411、
図3に示される転動ボール当接部413、および転動ボール当接部414を有する。転動ボール当接部411および転動ボール当接部414は、長穴により構成されるガイド溝形状である。転動ボール当接部312に当接する2つの第1の転動ボール430aは、転動ボール当接部411に当接する。転動ボール当接部211に当接する第1の転動ボール430bは、転動ボール当接部413に当接する。2つの第2の転動ボール440は、転動ボール当接部414に当接する。転動ボール当接部411の長手方向はX方向と一致しており、第1のアンチロールプレート410は固定レンズ枠210に対してX方向にのみ移動可能である。
【0019】
第2のアンチロールプレート420は、転動ボール当接部421を有する。転動ボール当接部421は、長穴により構成されるガイド溝形状である。転動ボール当接部421は、長手方向が転動ボール当接部411の長手方向と直交するように設けられている。2つの第2の転動ボール440は、転動ボール当接部421に当接する。転動ボール当接部421の長手方向はY方向と一致しており、第2のアンチロールプレート420は第1のアンチロールプレート410に対してY方向にのみ移動可能である。
【0020】
可動レンズ枠220は、第2のアンチロールプレート420に対してビス等で固定されている。転動ボール当接部311に当接する第3の転動ボール450は、転動ボール当接部222に当接する。したがって、可動レンズ枠220は3つの転動ボールで支持される。
【0021】
上記構成により、可動レンズ枠220は、固定レンズ枠210に対して回転することなく光軸に垂直な平面内の第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)にのみ移動可能となる。可動レンズ枠220の回転を抑制することで、位置検出手段240による誤検出を防ぐことが可能となる。
【0022】
なお、本実施例では、第1の方向と第2の方向は直交しているが、本発明はこれに限定されない。第1の方向と第2の方向は、光軸に垂直な平面内において互いに異なる所定方向であればよい。
【0023】
以下、
図7を参照して、アンチロールプレートと転動ボールの構成について説明する。
図7は、第2の転動ボール440が転動ボール当接部414および転動ボール当接部421に当接した状態を、第2の転動ボール440の中心位置を通り、転動ボール当接部414および転動ボール当接部421の長手方向に垂直な面で切断した断面図である。
【0024】
転動ボール当接部414と転動ボール当接部421は、第2の転動ボール440が当接する、光軸αに垂直な平面と45°をなす面を有する。可動レンズ枠220は、第2のアンチロールプレート420と一体となっており、3か所をコイルばね460によって固定レンズ枠210側(撮像面側)に引っ張る力で付勢されている。この付勢力によって、第1のアンチロールプレート410および第2のアンチロールプレーと420が光軸方向において第1のヨーク320に近づく方向へ付勢され、当接部から転動ボールが浮き上がることを抑制している。他の当接部に当接する転動ボールも同様の構成により、ガタつきなく転動可能である。したがって、可動レンズ枠220は、光軸に垂直な平面内において回転することなく、光軸に垂直な平面内を移動可能である。
【0025】
以下、
図8から
図10を参照して、転動ボールの移動規制構造について説明する。
図8は、転動ボール当接部211周辺を拡大した図である。
図9は、転動ボール当接部211を被写体側から見た図である。
図10は、転動ボール当接部211を第1の転動ボール430bの移動方向に垂直な面で切断した断面図である。
【0026】
第1の転動ボール430bは、固定レンズ枠210と第1のアンチロールプレート410との間で転動する。第1のアンチロールプレート410は、前述したように、固定レンズ枠210に対してX方向にのみ移動可能であるため、第1の転動ボール430bもX方向にのみ移動可能である。
【0027】
固定レンズ枠210は、転動ボール当接部(第1の面)211に対して垂直な壁面である移動規制部212を有する。第1の転動ボール430bは、移動規制部212の形状によって、その移動範囲を規制される。移動規制部212では、第1の転動ボール430bの移動方向であるX方向には十分な長さが必要になるが、第1の転動ボール430bの移動方向に垂直な幅方向であるY方向の長さはX方向の長さよりも短くすることができる。従来、円形状で構成されていた規制形状を本実施例の形状にすることで、移動規制部212の面積を小さくすることができ、ユニットの省スペース化やレイアウト自由度向上の効果を得ることができる。
【0028】
第1の転動ボール430bは、通常、
図9(b)に示される移動規制部212の幅方向(Y方向)の中心線に沿ってX方向にのみ移動する。すなわち、第1の転動ボール430bは、第1の転動ボール430bの中心が移動規制部212の幅方向の中心線に沿うように移動する。しかしながら、衝撃等で第1の転動ボール430bの中心が移動規制部212の幅方向の中心線からずれる場合がある。振れ補正ユニット202を駆動している間、第1の転動ボール430bが移動規制部212の幅方向の第1の壁面部(第2の面)215に接触すると、振れ補正ユニット202の特性悪化に繋がる。
【0029】
本実施例では、移動規制部212は、第1の転動ボール430bが移動範囲の端部に近づくにつれて、第1の転動ボール430bの中心が移動規制部212の幅方向の中心線に近づくように形成されている。したがって、第1の転動ボール430bの中心が移動規制部212の幅方向の中心線からずれた場合であっても、第1の転動ボール430bは移動範囲の端部において中心が移動規制部212の幅方向の中心線に一致するように移動する。
【0030】
以下、具体的な移動規制部212の形状について説明する。移動規制部212は、第1の転動ボール430bの移動範囲の端部に近づくにつれて、Y方向の長さが狭くなるように形成されている。移動規制部212の端部には、第1の転動ボール430bが当接した場合に第1の転動ボール430bに第1の転動ボール430bの移動方向とは異なる方向の反力を与えるイコライズ部212aが設けられている。本実施例では、イコライズ部212aとして、第1の斜面部213および第2の斜面部214が設けられている。移動規制部212の端部は、第1の斜面部213および第2の斜面部214を有する。第1の斜面部213は、X方向に対して第1の角度だけ傾く第1の斜線213aに沿って形成されている。第2の斜面部214は、第1の転動ボール430bの移動方向に対して第1の角度とは異なる第2の角度だけ傾く第2の斜線214aに沿って形成されている。第1の転動ボール430bが第1の斜面部213または第2の斜面部214に当接した場合、第1の斜面部213または第2の斜面部214は第1の転動ボール430bに第1の転動ボール430bの移動方向とは異なる方向の反力を与える。
【0031】
第1の斜面部213および第2の斜面部214の光軸αに垂直な平面における長さは等しく、第1の斜線213aと第2の斜線214aとの交点は移動規制部212の幅方向の中心線上に位置している。第1の斜線213aと第2の斜線214aとが交わる角度をA(度)とするとき、以下の条件式(1)を満足する。
【0032】
60≦A≦120 (1)
角度Aが120度より大きい場合、移動規制部212の幅方向の長さが長くなり、移動規制部212の面積が大きくなってしまう。また、第1の転動ボール430bが移動範囲の端部に到達しても、中心が移動規制部212の幅方向の中心線に一致するように移動しないおそれがある。一方、角度Aが60度より小さい場合、移動規制部212のX方向の長さが長くなり、移動規制部212の面積が大きくなってしまう。
【0033】
角度Aは、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
【0034】
70≦A≦110 (2)
条件式(2)を満足することで、移動規制部212の面積をより小さくすることができるとともに、移動範囲の端部において中心が移動規制部212の幅方向の中心線に一致するように第1の転動ボール430bが確実に移動することが可能となる。
【0035】
角度Aは、90度であることがより好ましい。
【0036】
また、第1の斜面部213または第2の斜面部214の光軸αに垂直な平面における長さをD1(mm)、第1の転動ボール430bの直径をD2(mm)とするとき、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0037】
0.25≦D1/D2<1
比D1/D2が1より大きい場合、移動規制部212のX方向の長さが長くなり、移動規制部212の面積が大きくなってしまう。一方、比D1/D2が0.25より小さい場合、第1の転動ボール430bが第1の壁面部215に接触しやすくなってしまう。
【0038】
なお、本実施例においては、D1=1mm、D2=2mm、D1/D2=0.5となるように構成されている。
【0039】
上述したように、本実施例の構成により、振れ補正ユニット202の初期動作等を行った際に第1の転動ボール430bは中心が移動規制部212のY方向の中心線に一致するように移動するため、振れ補正ユニット202の安定性向上につながる。
【0040】
なお、本実施例では、移動規制部212の第1の転動ボール430bの移動方向における第1の端部の形状について説明したが、第2の端部も同様の形状を有する。
【0041】
また、第1の壁面部215は、光軸方向の長さBが第1の転動ボール430bの半径Rより短くなるように形成されている。このような構成は、長さBが半径Rより長くなる構成に比べて、第1の転動ボール430bが壁面部215に接触しにくくなり、移動規制部212の幅方向の長さ(横幅)をより短くすることが可能である。
【0042】
図11から
図13を参照して、
図8の移動規制部と異なる構成の移動規制部について説明する。
図11は、転動ボール当接部211周辺を拡大した図である。
図12および
図13は、転動ボール当接部211を第1の転動ボール430bの移動方向に垂直な面で切断した断面図である。
【0043】
第2の壁面部216は、転動ボール当接部211に平行な面であり、第1の壁面部215を介して転動ボール当接部211に接続されている。第1の壁面部215は、第1の壁面部215の光軸方向の長さBは、第1の転動ボール430bの半径Rより短くなるように形成されている。このような構成は、長さBが半径Rより長くなる構成に比べて、第1の転動ボール430bが壁面部215に接触しにくくなり、移動規制部212のY方向の長さ(横幅)をより短くすることが可能である。また、第1の壁面部215は、光軸αに平行に構成される必要はなく、
図13に示されるように、斜面形状で構成されていてもよい。
【0044】
なお、本実施例では、移動規制部を固定レンズ枠210に設けたが、可動レンズ枠220に設けてもよいし、ガイド部材(第1のアンチロールプレート410および第2のアンチロールプレート420)に設けてもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。