特許第6800920号(P6800920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800920化合物の作製方法およびそれを用いるポリマーの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800920
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】化合物の作製方法およびそれを用いるポリマーの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/20 20160101AFI20201207BHJP
   C07C 323/20 20060101ALN20201207BHJP
   C07C 315/02 20060101ALN20201207BHJP
   C07C 317/22 20060101ALN20201207BHJP
   C07C 319/14 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   C08G75/20
   !C07C323/20
   !C07C315/02
   !C07C317/22
   !C07C319/14
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2018-142980(P2018-142980)
(22)【出願日】2018年7月30日
(65)【公開番号】特開2019-48798(P2019-48798A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】62/539,681
(32)【優先日】2017年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】106145978
(32)【優先日】2017年12月27日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】何 柏賢
(72)【発明者】
【氏名】林 志祥
(72)【発明者】
【氏名】蔡 豐任
(72)【発明者】
【氏名】范 正欣
(72)【発明者】
【氏名】張 義和
(72)【発明者】
【氏名】高 信敬
(72)【発明者】
【氏名】陳 建明
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−245558(JP,A)
【文献】 特開2016−147955(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03190142(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第03190143(EP,A1)
【文献】 特開2017−160185(JP,A)
【文献】 特開2017−197713(JP,A)
【文献】 特開2017−197712(JP,A)
【文献】 特開2017−125014(JP,A)
【文献】 特開2017−125190(JP,A)
【文献】 Nongyao,2005年,44(8),p.361-362
【文献】 Gaoxiao Huaxue Gongcheng Xuebao,2003年,17(2),p.180-184
【文献】 Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1985年,50(10),p.2179-2190
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00
C07C 315/00
C07C 317/00
C07C 319/00
C07C 323/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有する化合物と式(III)で表される構造を有する化合物とを、式(II)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る工程を含み、
前記式(IV)で表される構造を有する化合物と化合物(A)とを反応させて、式(V)で表される構造を有する化合物を得る工程をさらに含み、
前記式(V)で表される構造を有する化合物と式(VI)で表される構造を有する化合物とを反応させて、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含み、
求核剤と前記式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーとを反応させて、式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含み、
前記式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーと過酸化水素とを反応させて、式(X)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含むポリエーテルスルホンの作製方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
(式中、Arは置換または非置換のフェニル基、ビフェニル基、または、ナフチル基であり、Xは−O−であり、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、RはC1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であり、Rは独立にC1−6アルキル基、C5−8シクロアルキル基であり、またはC2−6アルコキシアルキル基であり、
前記化合物(A)は硝酸、硫酸、酢酸、過酸化水素、またはこれらの組み合わせであり、
は水酸基、C1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であり、Arは置換または非置換のフェニレン基、ビフェニレン基、または、ナフチレン基である。)
【請求項2】
前記式(I)の構造を有する化合物が、
【化10】

【化11】
、または
【化12】
である(式中、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基である。)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(II)の構造を有する化合物が、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはこれらの組み合わせである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
が独立に、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
が独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、または
【化13】
(ただし、1≦n≦5、0≦m≦4、かつ1≦n+m≦5である。)である、請求項1および2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(IV)の構造を有する化合物が、
【化14】

【化15】
、または
【化16】

である(式中、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは独立にC1−6アルキル基、C5−8シクロアルキル基、またはC2−6アルコキシアルキル基である。)、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記式(V)の構造を有する化合物が、
【化17】

【化18】
、または
【化19】
である(式中、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは独立にC1−6アルキル基、C5−8シクロアルキル基、またはC2−6アルコキシアルキル基である。)、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式(VI)の構造を有する化合物が、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記求核剤が、ピリジン、4-メチルピリジン、トリエチルアミン、塩化カリウム、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーと過酸化水素とを式(IX)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させる、請求項1に記載の方法。
【化20】
(式中、RはC1−6アルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、化合物の作製方法およびポリマーの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide,PAS)(またはポリチオエーテルスルホン(polythioether sulfone,PTES))は、耐熱性、耐薬品性、耐炎性、無毒性、および電気絶縁特性のような優れた物性を持つ材料である。よって、ポリアリーレンスルフィド(PAS)(またはポリチオエーテルスルホン(PTES)は、腐蝕性薬品に接触する部品のコーティングとして、および耐薬品性を有する工業用繊維として、コンピュータ付属品および自動車用アクセサリに用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第20030004302号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリチオエーテルスルホン(PTES))、またはそれらのモノマーを作製する従来の方法は、原則として、低収率という結果をもたらし、かつ環境汚染を引き起こし得るリサイクル不可能なハロゲン含有副産物を生成するハロゲン含有プロセスである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態によれば、本開示は、化合物の作製方法を提供する。該方法は次のステップを含む。式(I)で表される構造を有する化合物と式(III)で表される構造を有する化合物とを、式(II)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】
【0010】
式中、Arは置換または非置換のアリール基であり、Xは−O−、−S−、または−NH−であり、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは水酸基、C1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であり、Rは独立にC1−6アルキル基、C5−8シクロアルキル基、またはC2−6アルコキシアルキル基である。
【0011】
本開示の実施形態によれば、本開示はポリマーの作製方法も提供する。該方法は次のステップを含む。式(I)で表される構造を有する化合物と、式(III)で表される構造を有する化合物とを、式(II)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る。式(IV)で表される構造を有する化合物と化合物(A)とを反応させて、式(V)で表される構造を有する化合物を得る。化合物(A)は硝酸、硫酸、酢酸、過酸化水素、またはこれらの組み合わせである。式(V)で表される構造を有する化合物と、式(VI)で表される構造を有する化合物とを反応させて、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る。
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
【化8】
【0016】
【化9】
【0017】
【化10】
【0018】
【化11】
【0019】
式中、Arは置換または非置換のアリール基であり、Xは−O−、−S−、または−NH−であり、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であり、Rは水酸基、C1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であり、Rは独立にC1−6アルキル基、C5−8シクロアルキル基、またはC2−6アルコキシアルキル基であり、Rは水酸基、C1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であり、Arは置換または非置換のアリールジラジカル(aryl diradical)である。
【発明の効果】
【0020】
ハロゲン含有副生成物が形成されない。さらに、得られる結果物中にハロゲン含有化合物が残留しない。本開示の化合物の作製方法は、ハロゲン含有副生成物または残留ハロゲン含有化合物を除去するための追加のステップを含まないため、作製コストが減少し、かつ製造収率が高まる。よって、後続の重合において用いることのできるハロゲンフリーのモノマーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細に説明する。
【0022】
本開示は化合物の作製方法を提供し、このうち、当該化合物の作製方法の出発物質または触媒は、ハロゲンフリー化合物である。
【0023】
さらに、本開示は、ポリマー(例えばポリエーテルスルホン(PES)またはポリチオエーテルスルホン(PTES))の作製方法も提供する。当該ポリマーのモノマーの作製方法およびポリマーの作製方法の出発物質は、ハロゲンフリー化合物である。よって、ハロゲン含有副生成物が形成されない。加えて、得られる結果物中にハロゲン含有化合物が残留しない。本開示のポリマーの作製方法は、ハロゲン含有副生成物または残留ハロゲン含有化合物を除去するための追加のステップを含まないため、作製コストが減少し、かつ製造収率が高まる。よって、ハロゲンフリーポリマーが得られる。また、本開示のポリマーの作製方法は、モノマーに対して求電子重合(electrophilic polymerization)を行ってから、重合後に酸化を行う工程を含む。よって、得られたポリマーは、分子量が高まり、かつ多分散指数(polydispersity index,PDI)が減少する。
【0024】
本開示の実施形態によれば、本開示は化合物の作製方法を提供し、このうち該化合物は、後続の重合(例えばポリエーテルスルホン(PES)の重合またはポリチオエーテルスルホン(PTES)の重合)に用いるモノマーとなり得る。この化合物の作製方法は、式(I)で表される構造を有する化合物と式(III)で表される構造を有する化合物とを、式(II)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る工程を含む。
【0025】
【化12】
【0026】
【化13】
【0027】
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
式中、Arは置換または非置換のアリール基であってよく、Xは−O−、−S−、または−NH−であってよく、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であってよく、Rは水酸基、C1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であってよく、Rは独立にC1−6アルキル基、C5−8シクロアルキル基、またはC2−6アルコキシアルキル基であってよい。ここで、本開示の置換アリール基とは、アリール基の炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、C1−6アルキル基で置換可能であることを意味する。
【0030】
本開示の実施形態によれば、Arは、置換または非置換のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、チエニル基、インドリル基、フェナントレニル基、インデニル基、アントラセニル基、またはフルオレニレン基であってよい。詳細には、置換フェニル基、置換ビフェニル基、置換ナフチル基、置換チエニル基、置換インドリル基、置換フェナントレニル基、置換インデニル基、置換アントラセニル基、または置換フルオレニレン基とは、上述した基の炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、C1−6アルキル基で置換可能であることを意味する。
【0031】
本開示の実施形態によれば、C1−6アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、もしくはヘキシル基のような直鎖または分岐アルキル基であり得る。
【0032】
本開示の実施形態によれば、Rは独立に、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基であり得る。
【0033】
本開示の実施形態によれば、Rは水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、またはトリル基であり得る。
【0034】
本開示の実施形態によれば、Rは独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、または
【化16】
(ただし1≦n≦5、0≦m≦4、かつ1≦n+m≦5である。)であってよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、式(I)の構造を有する化合物は、
【0036】
【化17】
【0037】
【化18】
【0038】
【化19】
【0039】
【化20】
【0040】
【化21】
【0041】
【化22】
【0042】
【化23】
【0043】
【化24】
、または
【0044】
【化25】
【0045】
であってよく、式中、Rは上記と同じ定義を有し、Rは独立に水素またはC1−6アルキル基であってよい。
【0046】
本開示の実施形態によれば、Rは独立に水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基であってよい。
【0047】
本開示の実施形態によれば、式(II)の構造を有する化合物は、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0048】
本開示の実施形態によれば、式(III)の構造を有する化合物は、
【0049】
【化26】
【0050】
【化27】
【0051】
【化28】
【0052】
【化29】
【0053】
【化30】
、または
【0054】
【化31】
【0055】
であってよい。
【0056】
本開示の実施形態によれば、本開示は、式(IV)の構造を有する化合物の作製方法を提供し、このうち、式(IV)の構造を有する化合物は、
【0057】
【化32】
【0058】
【化33】
【0059】
【化34】
【0060】
【化35】
【0061】
【化36】
【0062】
【化37】
【0063】
【化38】
【0064】
【化39】
、または
【0065】
【化40】
【0066】
であってよく、式中、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。
【0067】
本開示の実施形態によれば、本開示の式(IV)の構造を有する化合物の作製方法は、式(I)の構造を有する化合物と式(II)の構造を有する化合物とを溶媒中に溶解して混合物を得る工程を含んでいてよい。次に、式(III)の構造を有する化合物をその混合物に加えて反応させ、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る。上記反応の合成経路は次の通りである。
【0068】
【化41】
【0069】
式中、Ar、X、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。ここで、溶媒は、式(I)の構造を有する化合物および式(II)の構造を有する化合物を溶解させるのに用いることができる任意の溶媒(例えばハロゲンフリー有機溶媒)であってよい。また、反応が完了した後に容易に除去され、かつ、所望の反応に関与しないハロゲン含有有機溶媒も、上記反応の溶媒となり得る。本開示の実施形態によれば、溶媒は非プロトン性溶媒であってよい。溶媒には、例えばアセトニトリル、直鎖または 環状アルカン(例えばプロパン、ブタン、もしくはシクロヘキサン)、ハロアルカン(ジクロロメタン、トリクロロメタン、もしくはジクロロエタン)が含まれ得る。また、反応は溶媒無しで行われてもよい。
【0070】
本開示の実施形態によれば、本開示の化合物の作製方法において、式(II)の構造を有する化合物の式(I)の構造を有する化合物に対するモル比は約0.5から5とすることができる。また、本開示の化合物の作製方法において、式(I)の構造を有する化合物の式(III)の構造を有する化合物に対するモル比は約1から20、例えば約1から3、または約1から10とすることができる。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示の化合物の作製方法は、式(IV)の構造を有する化合物を作製した後、式(IV)で表される構造を有する化合物と化合物(A)とを反応させて、式(V)で表される構造を有する化合物を得る工程をさらに含む。
【0072】
【化42】
【0073】
このうち、化合物(A)は硝酸、硫酸、酢酸、過酸化水素、またはこれらの組み合わせであってよく、Ar、X、およびRは上記と同じ定義を有する。
【0074】
本開示の実施形態によれば、本開示は、式(V)の構造を有する化合物の作製方法を提供し、このうち式(V)の構造を有する化合物は、
【0075】
【化43】
【0076】
【化44】
【0077】
【化45】
【0078】
【化46】
【0079】
【化47】
【0080】
【化48】
【0081】
【化49】
【0082】
【化50】
、または
【0083】
【化51】
【0084】
であってよく、式中、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。
【0085】
本開示の実施形態によれば、本開示の式(V)の構造を有する化合物の作製方法は、式(I)の構造を有する化合物および式(II)の構造を有する化合物を第1の溶媒に溶解して混合物を得る工程を含み得る。次に、式(III)の構造を有する化合物をその混合物に加えて反応させ、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る。次に、式(IV)の構造を有する化合物を第2の溶媒に溶解すると共に、化合物(A)を加えて反応させ、式(V)で表される構造を有する化合物を得る。上記反応の合成経路は次の通りである。
【0086】
【化52】
【0087】
式中、Ar、X、R、RおよびRは上記と同じ定義を有する。ここで、XがSであるとき、R基に結合したS原子は立体障害が比較的低く、かつ酸化されるのに適した酸化電位を有するため、Xと比べ、R基に結合したS原子は、選択的に酸化され得る。
【0088】
本開示の実施形態によれば、第1の溶媒は、式(I)の構造を有する化合物および式(II)の構造を有する化合物を溶解させるのに用いることができる任意の溶媒であってよい。第2の溶媒は、式(IV)の構造を有する化合物を溶解させるのに用いることができる任意の溶媒であってよい。本開示の実施形態によれば、ハロゲンフリー有機溶媒は第1の溶媒または第2の溶媒となり得る。また、反応が完了した後に容易に除去され、かつ、所望の反応に関与しないハロゲン含有有機溶媒も、上記反応の溶媒となり得る。本開示の実施形態によれば、第1の溶媒または第2の溶媒は非プロトン性溶媒であってよい。溶媒には、例えばアセトニトリル、直鎖もしくは環状アルカン(例えばプロパン、ブタン、もしくはシクロヘキサン)、またはハロアルカン(ジクロロメタン、トリクロロメタン、もしくはジクロロエタン)が含まれ得る。また、反応は溶媒無しで行われてもよい。式(IV)の構造を有する化合物の化合物(A)に対するモル比は約0.8から30であり得る。
【0089】
本開示の実施形態によれば、本開示はポリマーの作製方法を提供する。ポリマーの作製方法は次の工程を含む。先ず、式(I)で表される構造を有する化合物と式(III)で表される構造を有する化合物とを式(II)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る。次に、式(IV)で表される構造を有する化合物と化合物(A)とを反応させて、式(V)で表される構造を有する化合物を得る。このうち、化合物(A)は硝酸、硫酸、酢酸、過酸化水素、またはこれらの組み合わせである。次に、式(V)で表される構造を有する化合物と式(VI)で表される構造を有する化合物とを反応させて、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る。
【0090】
【化53】
【0091】
【化54】
【0092】
【化55】
【0093】
【化56】
【0094】
【化57】
【0095】
【化58】
【0096】
【化59】
【0097】
式中、Ar、X、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。Rは水酸基、C1−6アルキル基、フェニル基、またはトリル基であり、Arは置換または非置換のアリールジラジカルである。本開示のポリマーの作製方法は、1000以上の数平均分子量を有するポリマーを作製するのに用いることができる。本開示のポリマーの作製方法は、大きい数平均分子量(例えば80000以上)および狭い多分散指数(PDI)(例えば2以下)を有するポリマーを作製するのに特に適するという点に留意すべきである。本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーの作製方法は、80000から500000の数平均分子量、および1から2の多分散指数(PDI)を有するポリマーを作製するのに特に適している。本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示のポリマーの作製方法は、80000から200000の数平均分子量、および1.4から2の多分散指数(PDI)を有するポリマーを作製するのに特に適している。
【0098】
本開示の実施形態によれば、Rはヒドロキシル、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、またはトリル基であってよい。
【0099】
本開示の実施形態によれば、本開示の置換アリールジラジカルとは、アリールジラジカルの炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子がC1−6アルキル基と置換可能であることを意味する。
【0100】
本開示の実施形態によれば、Arは、置換または非置換のフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、チエニレン基、インドリレン基(indolylene group)、フェナントレニレン基(phenanthrenylene group)、インデニレン基(indenylene group)、アントラセニレン基(anthracenylene group)、またはフルオレニレン基であってよい。特に、置換フェニレン基、置換ビフェニレン基、置換ナフチレン基、置換チエニレン基、置換インドリレン基、置換フェナントレニレン基、置換インデニレン基、置換アントラセニレン基、または置換フルオレニレン基とは、上述の基の炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子C1−6アルキル基と置換可能であることを意味する。
【0101】
本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーの作製方法において、式(II)の構造を有する化合物の式(I)の構造を有する化合物に対するモル比は約0.5から5であってよい。さらに、本開示のポリマーの作製方法において、式(I)の構造を有する化合物の式(III)の構造を有する化合物に対するモル比は約1から20、例えば約1から3、または1から10であってよい。式(IV)の構造を有する化合物の化合物(A)(例えば硝酸、硫酸、酢酸、過酸化水素、またはこれらの組み合わせ)に対するモル比は約0.8から30であってよく、かつ式(V)の構造を有する化合物の式(VI)の構造を有する化合物に対するモル比は約0.8から20、例えば約1.2から5であってよい。また、式(VI)の構造を有する化合物は、式(V)の構造を有する化合物との反応の反応物質となり得、かつ過剰の式(VI)の構造を有する化合物は反応溶媒ともなり得る。
【0102】
本開示の実施形態によれば、式(VI)の構造を有する化合物は、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはこれらの組み合わせであってよい。また、本開示の実施形態によれば、式(II)の構造を有する化合物と式(VI)の構造を有する化合物とは、同じであるかまたは異なっていてよい。
【0103】
本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーの作製方法は、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを作製するのに用いることができる。例えば、式(VII)で表される繰り返し単位は、
【0104】
【化60】
【0105】
【化61】
【0106】
【化62】
【0107】
【化63】
【0108】
【化64】
、または
【0109】
【化65】
【0110】
であってよく、式中、R、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。
【0111】
本開示の実施形態によれば、本開示の式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法は、式(I)の構造を有する化合物および式(II)の構造を有する化合物を第1の溶媒中に溶解して、混合物を得る工程を含み得る。次に、式(III)の構造を有する化合物をその混合物に加えて反応させ、式(IV)で表される構造を有する化合物を得る。次に、式(IV)の構造を有する化合物を第2の溶媒中に溶解すると共に、化合物(A)を加えて反応させ、式(V)で表される構造を有する化合物を得る。次に、式(V)で表される構造を有する化合物と式(VI)で表される構造を有する化合物とを反応させて、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る。上記ポリマーを作製する合成経路は次のとおりである。
【0112】
【化66】
【0113】
【化67】
【0114】
式中、Ar、Ar、X、R、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。
【0115】
本開示の実施形態によれば、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製後、本開示のポリマーの作製方法は、求核剤と式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーとを反応させて、式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含む。
【0116】
【化68】
【0117】
【化69】
【0118】
式中、Ar、X、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。上記式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法の合成経路は次のとおりである。
【0119】
【化70】
【0120】
【化71】
【0121】
【化72】
【0122】
式中、Ar、Ar、X、R、R、RおよびRは上記と同じ定義を有する。
【0123】
本開示の実施形態によれば、求核剤は、置換または非置換のピリジンまたはその誘導体 (例えばピリジンもしくは4-メチルピリジン)、アミン(例えばトリエチルアミン)、ハロゲン化塩(例えば塩化カリウム)、アルコール(例えばメタノールもしくはエタノール)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、もしくはN−メチルピロリドン)、またはこれらの組み合わせであってよい。式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーの
【0124】
【化73】
【0125】
で表される部分(moiety)に対する求核剤の当量比は1から10であってよい。本開示の実施形態によれば、求核剤および式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、任意で、反応させる前に、有機溶媒中に溶解させることができる。
【0126】
本開示の実施形態によれば、式(VIII)で表される繰り返し単位のXが−O−または−NH−である(つまり、式(VIII)で表される繰り返し単位が、
【0127】
【化74】
または
【0128】
【化75】
【0129】
である。式中ArおよびRは上記と同じ定義を有する。)であるとき、本開示のポリマーの作製方法は、式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得た後に、式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーと過酸化水素(H)とを反応させて、式(X)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含んでいてよい。あるいは、式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーと過酸化水素とを式(IX)で表される構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(X)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得ることもできる。
【0130】
【化76】
【0131】
【化77】
【0132】
【化78】
【0133】
式中、Xは−O−または−NH−であってよく、RはC1−6アルキル基であり、ArおよびR は上記と同じ定義を有する。上記式(X)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法の合成経路は次のとおりである。
【0134】
【化79】
【0135】
【化80】
【0136】
【化81】
【0137】
【化82】
【0138】
式中、Xは−O−または−NH−であってよく、Ar、Ar、R、R、R、RおよびRは上記と同じ定義を有する。
【0139】
本開示の他の実施形態によれば、本開示の式(X)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法において、反応をさせる前に、式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマー、式(IX)の構造を有する化合物、および過酸化水素を溶媒中に溶解させることができる。例えば、溶媒は、アミド型溶媒またはスルホキシド型溶媒であってよい。
【0140】
本開示の実施形態によれば、Rは独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基であってよい。
【0141】
本開示の実施形態によれば、式(VII)で表される繰り返し単位のXが−S−である(つまり式(VII)で表される繰り返し単位が、
【0142】
【化83】
【0143】
である。式中、Ar、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。)とき、本開示のポリマーの作製方法は、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得た後、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーと過酸化水素とを反応させて、式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含んでいてよい。あるいは、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーと過酸化水素とを、式(IX)の構造を有する化合物の存在下で反応させて、式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る。
【0144】
【化84】
【0145】
【化85】
【0146】
【化86】
【0147】
式中、Xは−S−であってよく、Ar、R、R、RおよびRは上記と同じ定義を有する。上述の式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法の合成経路は次のとおりである。
【0148】
【化87】
【0149】
【化88】
【0150】
【化89】
【0151】
式中、Xは―S−であってよく、Ar、Ar、R、R、R、RおよびR は上記と同じ定義を有する。
【0152】
本開示の別の実施形態によれば、本開示の式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法において、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマーおよび過酸化水素を有機溶媒中に溶解させることができ、次いでその混合物と式(IX)で表される構造を有する化合物とを反応させて、反応を進行させる。例えば、溶媒は、ニトリル型溶媒、アミド型溶媒またはスルホキシド型溶媒であってよい。また、反応させる前に、式(VII)で表される繰り返し単位を有するポリマー、式(IX)で表される構造を有する化合物、および過酸化水素を有機溶媒に溶解させることができる。
【0153】
本開示の実施形態によれば、式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーを作製した後、本開示のポリマーの作製方法は、 求核剤と式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーとを反応させて、式(XII)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る工程をさらに含んでいてよい。
【0154】
【化90】
【0155】
【化91】
【0156】
式中、Ar、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。上述の式(XII)で表される繰り返し単位を有するポリマーの作製方法の合成経路は次のとおりである。
【0157】
【化92】
【0158】
【化93】
【0159】
【化94】
【0160】
式中、Xは−S−であり、Ar、Ar、R、R、R、R、およびRは上記と同じ定義を有する。
【0161】
本開示の実施形態によれば、求核剤は、置換または非置換のピリジンまたはその誘導体(例えばピリジンもしくは4−メチルピリジン)、アミン(例えばトリエチルアミン)、ハロゲン化塩(例えば塩化カリウム)、アルコール(例えばメタノールもしくはエタノール)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、もしくはN−メチルピロリドン)、またはこれらの組み合わせであってよい。式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーの
【0162】
【化95】
【0163】
で表される部分(moiety)に対する求核剤の当量比は1から10であってよい。本開示の実施形態によれば、求核剤および式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、任意で、反応させる前に、有機溶媒中に溶解させることができる。
【0164】
当該分野において通常の知識を有する者に容易に理解されるよう、以下に例示的な実施形態が詳細に説明される。本発明概念は、ここに記載されるこれら例示的な実施形態に限定されることなく、各種形式で具体化され得る。明確とするために、周知の部分についての記述は省かれている。
【0165】
実施例1
【0166】
ジフェニルエーテル5g、ベンゼンスルホン酸11.7g、およびジクロロメタン50mlを窒素雰囲気下で反応瓶に加えてから、15℃に冷却した。次に、1,2−ジメチルジスルファン(1,2-dimethyldisulfane)5.54gをその反応瓶に加えた。15℃で20時間反応させた後、得られたものを、水酸化ナトリウム水溶液 (水酸化ナトリウムと水との重量比は1:10)50mlと混合した。0.5時間攪拌した後、得られたものを、ジクロロメタンおよび水を抽出剤として用いて3回抽出した。次いで、有機相を分離および乾燥して、化合物(1)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりであった。
【0167】
【化96】
【0168】
化合物(1)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,CDCl):2.50(−CH,3H,s)、7.00(phenyl,4H,m)、7.14(phenyl,1H,t)、7.32−7.41(phenyl,4H,m)。
【0169】
実施例2
【0170】
化合物(1)0.73g、硝酸水溶液12ml(濃度20%)、およびアセトニトリル4mlを反応瓶に加えた。室温で4時間攪拌した後、水酸化ナトリウム水溶液10ml(濃度3%)をその反応瓶に加えた。次いで、反応が完了した後、得られたものを分離および乾燥し、化合物(2)(オレンジ色の粉末)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりであった。
【0171】
【化97】
【0172】
化合物(2)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,CDCO):2.71(−CH,3H,s)、7.10−7.25(phenyl,5H,m)、7.44−7.48(phenyl,2H,t)、7.70−7.72(phenyl,2H,d)。
【0173】
実施例3
【0174】
化合物(2)0.65gを反応瓶に加えた。次いで、氷浴中に入れたその反応瓶に、メタンスルホン酸(CHSOH)3mlを加えた。1時間反応させた後、その反応瓶を室温まで昇温し、次いで室温で20時間反応させて、ポリマー(1)を含有する溶液を得た。次に、そのポリマー(1)を含有する溶液をエチルエーテル100ml中に加え、30分攪拌した。次に、窒素雰囲気下で4−メチルピリジン6mlを加えてから、得られたものを100℃で4〜6時間攪拌した。反応が完了した後、得られたものを塩酸溶液100ml(濃度10%)中に加え、次いで10分攪拌した。濃縮した後、ポリマー(2)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりであった。
【0175】
【化98】
(n>1)
【0176】
ポリマー(2)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,(CDSO):7.04(phenyl,d)、7.36(phenyl,d)。
【0177】
実施例4
【0178】
ポリマー(2)0.2g、酢酸10ml、過酸化水素溶液0.9g(濃度30%)およびジメチルアセトアミド(DMAc)2mlを反応瓶に加え、その反応瓶を80℃で6時間攪拌した。次いで、得られたものを濃縮して、ポリマー(3)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりであった。
【0179】
【化99】
(n>1)
【0180】
ポリマー(3)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,(CDSO):7.28(phenyl,d)、7.99(phenyl,d)。次に、ポリマー(3)をフーリエ変換赤外(FT−IR)分光法により分析した。結果は、強い吸光ピークが1483cm−1(ベンゼン環の固有振動数)、1575cm−1(ベンゼン環の固有振動数)、1295cm−1(S=Oの非対称振動数(asymmetry vibration frequency))、1318cm−1(S=Oの非対称振動数)、および1145cm−1(S=Oの対称振動数(symmetry vibration frequency))であることを示している。ポリマー(3)の特性を示差走査熱量測定(DSC)により測定した。結果は、ポリマー(3)のガラス転移温度が(Tg)約210℃であることを示す。ポリマー(3)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。結果は、ポリマー(3)の重量平均分子量(Mw)が約128287、数平均分子量(Mn)が約85435、および多分散指数(PDI)が約1.5であることを示す。
【0181】
実施例5
【0182】
ジフェニルスルフィド5.58gおよび1,2−ジメチルジスルファン5.64gを反応瓶に加えてから、溶媒としてのジクロロメタン50mlをその反応瓶に加えた。次に、ベンゼンスルホン酸11.7gをその反応瓶に加えた。15℃で44時間反応させた後、得られたものを、n−ヘキサンジクロロメタン150mlおよび水を抽出剤として用いて3回抽出した。次いで、有機相を分離、乾燥、およびし、カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(3)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【0183】
【化100】
【0184】
化合物(3)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,CDCl): 2.50(−CH,3H,s)、7.21−7.34(phenyl,9H,m)。
【0185】
実施例6
【0186】
化合物(3)5.07gを反応瓶に加えてから、溶媒としてのアセトニトリル20mlをその反応瓶に加えた。次いで、硝酸水溶液60ml(濃度20%)をその反応瓶に加えた。室温で4時間反応させた後、水酸化ナトリウム12gをその反応瓶に加え、溶液を中和した。得られたものを、ジクロロメタン150mlを抽出剤として用いて3回抽出した。次いで、有機相を分離および乾燥して、化合物(4)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【0187】
【化101】
【0188】
化合物(4)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,CDCl): 2.73(−CH,3H,s)、7.34−7.49(phenyl,9H,m)。
【0189】
実施例7
【0190】
化合物(4)3gを反応瓶に入れ、メタンスルホン酸10mlを15℃でその反応瓶に加えた。20時間反応させた後、水50mlをその反応瓶に加えて、沈殿を生じさせた。その沈殿を分離および乾燥して白色の固体を得た。その白色の固体を、クロロホルム46mlおよびトリフルオロ酢酸46mlを含む溶媒中に溶解させた。次に、過酸化水素水溶液4.14g(濃度30%)を加え、次いで得られたものを60℃で5時間反応させた。反応が完了した後、得られたものを水と混合し、沈殿を生じさせた。その沈殿を分離および乾燥してポリマー(4)を得た。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【0191】
【化102】
【0192】
ポリマー(4)を核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法により分析した。その結果は次のとおりである。H NMR(400MHz,ppm,d−DMSO):7.56(phenyl,4H,s)、7.93(phenyl,4H,s)。ポリマー(4)の特性を示差走査熱量測定(DSC)により測定した。結果は、ポリマー(4)のガラス転移温度が(Tg)約222℃であることを示す。
【0193】
したがって、本開示は、化合物の作製方法であって、当該化合物の作製方法の出発物質または触媒がハロゲンフリー化合物である、化合物の作製方法を提供する。故に、ハロゲン含有副生成物が形成されない。加えて、得られたものの中にハロゲン含有化合物が残留しない。本開示の化合物の作製方法は、ハロゲン含有副生成物または残留ハロゲン含有化合物を除去するための追加のステップを含まないため、作製コストが低減すると共に、製造収率が高まる。よって、後続の重合において用いることのできるハロゲンフリーモノマーが得られる。さらに、本開示は、ポリマー(例えばポリエーテルスルホン(PES)またはポリチオエーテルスルホン(PTES))の作製方法も提供する。当該ポリマーの作製方法は、酸性環境下でモノマーに対し求電子重合(electrophilic polymerization)を行ってから、重合後に酸化を行う工程を含み、得られるポリマーは、分子量が高まり、かつ多分散指数 (PDI)が比較的低い。
【0194】
各種の修飾および変更を、開示された方法および物質に加え得ることは明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示として見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示さる。