(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800957
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】膜加熱による液体浄化
(51)【国際特許分類】
C02F 1/04 20060101AFI20201207BHJP
B01D 1/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
C02F1/04 Z
B01D1/00 Z
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-511355(P2018-511355)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公表番号】特表2018-518367(P2018-518367A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】US2016032427
(87)【国際公開番号】WO2016183471
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】62/160,664
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517396098
【氏名又は名称】ブレイクスルー・テクノロジーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Breakthrough Technologies, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジャフリー・カマル
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−121585(JP,A)
【文献】
特開昭47−008049(JP,A)
【文献】
米国特許第07008515(US,B1)
【文献】
特開平04−260489(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0230039(US,A1)
【文献】
特開2013−139007(JP,A)
【文献】
特開2004−154691(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0090354(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0120779(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104740903(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0305788(US,A1)
【文献】
米国特許第05053110(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/02 − 1/18
B01B 1/00 − 1/08
B01D 1/00 − 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体浄化のための器具において、
蒸気を集めるための蒸気用キャノピーと、
前記蒸気用キャノピーより下にあり、液体中に浸されるように構成された加熱層であって、前記加熱層は、前記液体により囲まれ、前記液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置しており、前記加熱層は、前記液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱されるように構成されており、少なくとも蒸気分子に電荷を与える帯電素子が直接的に結合している、加熱層と、
前記加熱層の上方に、帯電した前記蒸気分子を引きつける逆電荷の素子と、を含み、
帯電した前記蒸気分子を前記加熱層から引き離し、前記加熱層上での蒸気膜の形成を防ぐように構成されている、器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具において、
前記液体を保持するための容器をさらに含み、
前記加熱層は、前記容器内部に収容されている、器具。
【請求項3】
請求項1に記載の器具において、
前記加熱層に連結され、前記液体中で前記加熱層を浮遊させるフロートをさらに含み、前記加熱層の深さは、前記液体の体積に関わらず、一定のままである、器具。
【請求項4】
請求項3に記載の器具において、
前記フロートはさらに、前記蒸気用キャノピーに連結され、前記蒸気用キャノピーを前記液体の上で支持し、
前記蒸気用キャノピーは、水域上に浮遊するように構成されている、器具。
【請求項5】
請求項1に記載の器具において、
前記加熱層は、少なくとも1つの加熱素子を含み、
前記加熱素子は、電気的に、赤外線により、または電磁波により加熱される、器具。
【請求項6】
液体浄化のための器具において、
蒸気を集めるための蒸気用キャノピーと、
前記蒸気用キャノピーより下にあり、液体中に浸されるように構成された加熱層であって、前記加熱層は、前記液体により囲まれ、前記液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置しており、前記加熱層は、前記液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱されるように構成されている、加熱層と、を含み、
前記加熱層は、ハイブリッドの加熱−帯電素子を含み、
前記ハイブリッドの加熱−帯電素子は、
加熱素子と、
帯電フィンと、
前記加熱素子と前記帯電フィンとの間の絶縁層と、
を含み、
前記絶縁層は、電気絶縁性であり、かつ熱伝導性である、器具。
【請求項7】
請求項1又は6に記載の器具において、
赤外線、電磁波、または電力を提供する加熱源をさらに含む、器具。
【請求項8】
請求項7に記載の器具において、
前記加熱源は、赤外線を提供し、前記加熱層は、前記加熱源により提供された赤外線を吸収することにより熱を提供する、器具。
【請求項9】
請求項1又は6に記載の器具において、
前記液体は、海水、廃水、または汽水である、器具。
【請求項10】
請求項1又は6に記載の器具において、
前記加熱層は、少なくとも193℃の温度に加熱されるように構成されている、器具。
【請求項11】
請求項1又は6に記載の器具において、
前記液体の表面高さを制御するように構成された入力供給源をさらに含む、器具。
【請求項12】
請求項1又は6に記載の器具において、
前記加熱層は、前記液体の表面から5mm〜14mmの深さで前記液体中に浸されるように構成されている、器具。
【請求項13】
請求項1又は6に記載の器具において、
前記加熱層は、14mmの深さで前記液体中に浸されるように構成されている、器具。
【請求項14】
方法において、
全溶解固形物(TDS)を含む液体を、蒸気用キャノピーの下に配列された加熱層に提供することであって、前記加熱層は、前記TDSを含む液体によって囲まれ、前記TDSを含む液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置するように、前記TDSを含む液体中に浸される、ことと、
前記加熱層を、前記TDSを含む液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱して、蒸気を生成することと、
前記加熱層に直接結合した帯電素子により、少なくとも前記蒸気に電荷を与えることと、
前記加熱層の上方に設けられた逆電荷の素子に、帯電した前記蒸気を引きつけて、前記加熱層上での蒸気層の形成を回避することと、
前記蒸気用キャノピーおよび凝縮装置により前記蒸気を集めることと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記加熱層は、14mmの深さで前記液体中に浸される、方法。
【請求項16】
方法において、
全溶解固形物(TDS)を含む液体を、蒸気用キャノピーの下に配列された加熱層に提供することであって、前記加熱層は、前記TDSを含む液体によって囲まれ、前記TDSを含む液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置するように、前記TDSを含む液体中に浸される、ことと、
前記加熱層を、前記TDSを含む液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱して、蒸気を生成することと、
前記蒸気用キャノピーおよび凝縮装置により前記蒸気を集めることと、を含み、
前記加熱層は、ハイブリッドの加熱−帯電素子を含み、
前記ハイブリッドの加熱−帯電素子は、
加熱素子と、
帯電フィンと、
前記加熱素子と前記帯電フィンとの間の絶縁層と、
を含み、
前記絶縁層は、電気絶縁性であり、かつ熱伝導性である、方法。
【請求項17】
請求項14又は16に記載の方法において、
前記TDSを含む液体を提供することは、前記蒸気用キャノピーおよび加熱素子を海水域中に置くことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2015年5月13日出願の米国仮特許出願第62/160,664号の優先権を主張する。この仮特許出願の内容全体が、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本明細書に記載する主題は、例えば、熱による膜加熱および蒸発を用いた、液体浄化に関する。
【0003】
〔背景〕
脱塩(Desalination)、塩分除去(desalinization)、および淡水化(desalinisation)は、いくらか量の塩および他のミネラルを塩水から除去する、いくつかのプロセスのいずれかを指す。脱塩は、液体、特に水を浄化する一形式である。塩水は、人間による消費、灌漑、または他の用途に適した真水を生成するために、脱塩され得る。比較的高いエネルギー消費のため、海水を脱塩する費用は、一般的に、代替物(例えば、川もしくは地下水からの真水、水の循環利用、節水など)より高いが、代替物は常に利用可能であるわけではない。
【0004】
脱塩への一例としてのアプローチは、低温熱脱塩(low-temperature thermal desalination)(LTTD)であり、これは、低い圧力で沸騰する水を活用するものである。真空ポンプにより、水が2つの水の体積の間の8〜10℃(46〜50°F)の温度勾配で沸騰し得る、低圧の低温環境を作る。冷却用の海水が、コイルを通って供給されポンプで注入されて、水蒸気を凝縮させ、浄水を生成することができる。別のアプローチは逆浸透であり、これは、飲料水から、より大きい粒子を除去するために半透膜を用いる、水浄化テクノロジーである。
【0005】
しかしながら、既存のシステムおよび技術で飲用水を製造するのは費用がかかる。LTTDは、深海へのアクセス、および海中深くから水をポンプでくみ上げる能力を必要とする。逆浸透は、高価な膜を使用し、高い圧力を作り出さなければならず、これには、かなりのエネルギーを要する。
【0006】
〔概要〕
これまでの脱塩へのアプローチに関連する問題は、本明細書に記載する主題により解決することができる。浄化システムは、膜加熱による液体の有効な加熱をもたらすことができ、膜加熱は、加熱素子と液体の沸点との温度差が93℃以上になったときに起こる。膜加熱により、蒸気泡の薄い膜が加熱素子上に形成され得、これは、ライデンフロスト効果としても知られている。蒸気膜は絶縁体として作用して、加熱層の有効表面積を減少させることにより液体が急速に蒸気を形成するのを防ぐことができるので、この蒸気の膜は、蒸発効率に影響し得る。いくつかの実施形態では、本主題は、加熱素子の近くで液体および/もしくは蒸気分子上に電荷を与えることができる。逆電荷の素子と組み合わせて、液体および/または蒸気分子を帯電させた結果、帯電した液体および/または蒸気分子が加熱素子から引き離され、それにより蒸気膜の形成を回避することができる。
【0007】
ある態様では、液体浄化のための器具は、蒸気用キャノピーと、加熱層と、を含む。蒸気用キャノピーは、蒸気を集めるためのものである。加熱層は、蒸気用キャノピーより下にあり、液体中に浸されるように構成されており、加熱層は、液体によって実質的に囲まれ、液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置する。加熱層は、液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱されるように、さらに構成されている。
【0008】
別の態様では、全溶解固形物(TDS)が多い液体が、蒸気用キャノピーより下に配列された加熱層に提供され、加熱層は、TDSの多い液体中に浸され、このため、TDSの多い液体によって実質的に囲まれ、TDSの多い液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置する。加熱層は、TDSの多い液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱され、蒸気を生成する。蒸気は、蒸気用キャノピーおよび凝縮装置によって集められる。
【0009】
以下の特徴部のうちの1つ以上を、任意の実現可能な組み合わせで含めることができる。例えば、液体を保持する容器を含めることができる。加熱層は、容器内部に収容され得る。フロートが、加熱層に連結されて、加熱層を液体中に浮遊させることができ、そのため、加熱層の深さは、液体の体積にかかわらず、実質的に一定のままである。フロートは、さらに蒸気用キャノピーに連結され、蒸気用キャノピーを液体の上で支持することができる。蒸気用キャノピーは、水域上に浮遊するように構成されてもよい。
【0010】
加熱層は、少なくとも1つの加熱素子を含み得る。加熱素子は、電気的加熱素子、気体加熱素子、強制熱水(forced hot liquid)加熱素子、赤外線吸収材料、または電磁吸収材料を含み得る。加熱層は、加熱層の近くの液体または蒸気分子上に電荷を与える帯電素子をさらに含み得る。逆電荷の素子が、帯電した液体または蒸気分子を加熱層から引き離し、加熱層上での蒸気膜の形成に抵抗するために、含まれ得る。加熱層は、加熱素子、帯電フィン(charging fin)、および加熱素子と帯電フィンとの間の絶縁層を含む、ハイブリッドの加熱−帯電素子を含み得る。絶縁層は、電気絶縁性であり、かつ熱伝導性であってよい。加熱層は、液体の表面から1mm〜20mm、または液体の表面から5mm〜14mmの深さで、液体中に浸されるように構成され得る。例えば、加熱層は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および/または20mmの深さで、液体中に浸されるように構成され得る(または、液体中に位置づけられ得る)。
【0011】
加熱源を含むことができる。加熱源は、赤外線源、電磁波源、または電源を含むことができる。加熱源は、赤外線源を含んでよく、加熱層は赤外線吸収材料を含み得る。液体は、海水、廃水、または汽水であってよい。加熱層は、少なくとも193℃の温度に加熱されるように構成され得る。入力供給源が、液体の表面高さを制御するように構成され得る。
【0012】
蒸気は、加熱層上での蒸気層の形成を回避するため、帯電素子を用いて帯電され得る。加熱層は、約14mmの深さで液体中に浸され得る。TDSの多い液体を提供することは、蒸気用キャノピーおよび加熱素子を、海水域(body of sea water)に置くことを含み得る。
【0013】
本主題を用いると、膜加熱により、他の方法よりも少ないエネルギーを用いて液体の蒸発を可能にすることができる。これは、蒸気膜の形成を回避することができるためである。さらに、大量の液体を加熱するのではなく、液体の薄層を加熱し、それにより、液体を蒸発させるのに必要なエネルギーの量を減らすことができる。液体の薄層の深さは、例えば、用途に基づいて、さまざまであってよい。さらに、溶解固形物(例えば、塩)を有する液体(例えば、海水)を加熱する際、液体および固形物の両方を加熱しなければならない。蒸発が起こると、固形物の濃度は高くなり、蒸発を生じるためにより多くのエネルギーを液体に供給しなければならない。浄化システムは、液体の層のみを加熱することができるので、固形物を加熱するのに必要なエネルギーが少なく、これにより、液体を浄化する際にエネルギー効率が高くなる。これらの効率性により、飲用水のコストを下げることができる。
【0014】
本明細書に記載される主題は、多くの技術的利点をもたらす。例えば、TDSの多い液体を、液体が水である場合に飲用に適し得る(例えば、人が消費、灌漑などをするのに十分である)TDSの少ない液体および/または純粋な液体に変換するための低コストのシステムが提供され得る。半透膜は必要でないので、コストを下げることができる。TDSの多い液体としては、海水;廃水処理プラント、製造および/または工業プロセスからの廃水;ならびに他の同様の液体が含まれ得る。このようなシステムのメンテナンスは、ほとんど、またはまったくしなくてよい。(例えば、大きな工場により生じ得るような)騒音公害を、減らすか、またはなくすことができる。液体は、自律的に(例えば、人の相互作用をまったく、またはほとんどなくして)浄化され得る。いくつかの実施形態では、膜加熱層または素子が、生物分解性であってよく、これにより、汚染および廃棄物が減る。
【0015】
比較的低い加熱温度でパイプ内部において少量の水を温める、オンデマンド式の住宅用水加熱システムとは異なり、本主題は、より高い温度で大量の液体を加熱して、浄化目的で液体を蒸発させることができる。
【0016】
本明細書に記載される主題の1つ以上の変形体の詳細が、添付図面および以下の説明に記載されている。本明細書に記載する主題の他の特徴部および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0017】
さまざまな図面における同様の参照符号は、同様の要素を示している。
【0018】
〔詳細な説明〕
図1は、海水および/または汽水などの液体を浄化し、膜加熱を用いるための、例としての浄化システム100の断面図である。半透膜は必要ないので、この例としての浄化システム100は、逆浸透システムより低いコストで液体を浄化することができる。
【0019】
浄化システム100は、膜加熱により液体の効果的な加熱をもたらすことができる。既存の蒸発システムは、プールまたは核加熱/沸騰(pool or nucleate heating/boiling)を使用することができるが、本主題では、加熱素子と液体の沸点(または飽和温度)との温度差が93℃以上になったときに起こる、膜加熱を用いる。大量の液体を加熱するのではなく、液体の薄層を加熱して、液体を蒸発させるのに必要なエネルギーの量を減少させることができる。膜加熱は、他の方法よりも少ないエネルギーを用いて液体の蒸発を可能にすることができる。さらに、溶解固形物(例えば、塩)を有する液体(例えば、海水)を加熱する際、この液体および固形物の両方を加熱しなければならない。蒸発が生じると、固形物の濃度が高くなり、蒸発を引き起こすために、より多くのエネルギーを液体に供給しなければならない。浄化システムは液体の層のみを加熱することができるので、固形物を加熱するのに必要なエネルギーは少なく、これにより、液体を浄化する上で、より高いエネルギー効率が可能となり得る。これらの有効性により、飲用水のコストが低下し得る。
【0020】
浄化システム100は、塩分除去;汚水、工業廃水、農業廃水などといった廃水を処理する廃水処理プラント内;および他の同様の用途を含む、多くの用途に適用され得る。
【0021】
浄化システム100は、海水および/または汽水などのTDSの多い液体110を保持するための容器105を含み得る。容器105は、浄化システム100により生成された蒸気120を集めるための、円錐形または同様の形状の蒸気用キャノピー115を含み得る。容器105は、プラスチック、機能傾斜材料などといった、非金属材料で形成され得る。容器105は、絶縁されていても、絶縁されていなくてもよい。
【0022】
容器105の内部には加熱層125が存在しており、加熱層125は、TDSの多い液体110の表面より下に浮遊していてよく、そのため、加熱層125より上には、TDSの多い液体110の液体層130がある。加熱層125は、容器105の底に、またはその付近に位置するのとは対照的に、TDSの多い液体110により実質的に囲まれるように、TDSの多い液体110中に浮遊し得る。加熱層125は、フロート137を用いて浮遊してよく、フロート137は、容器105がTDSの多い液体110でどれだけ満たされているかに関わらず加熱層125より上に液体層130が確実に存在するように配列され得る。よって、いくつかの例としての実施形態では、加熱層125は、容器105内部におけるTDSの多い液体110のレベルによって、上下し得る。
【0023】
加熱層125は、加熱層125と別個または一体であってよい、1つ以上の加熱素子135を含み得る。加熱素子135は、(例えば、加熱素子135を通過する電流によって加熱素子135の温度が上昇するように高い抵抗を有する)電気加熱素子を含み得る。加熱源140が含まれ、加熱素子135に動作可能に連結されていてよい。加熱源140は、電源を含み得る。いくつかの実施形態では、加熱素子135および加熱源140は、他の加熱手段を含んでよく、例えば、加熱素子135は、例えば産業廃棄物処理によって、かつ/またはガス炉によって生成された、高温液または低温液を循環させるパイプを含み得る。よって、加熱源140は、他の工業的プロセスおよび/またはガス炉を含み得る。他の実施形態では、加熱素子135は、赤外線吸収材料の層を含んでよく、加熱源140は、赤外光が加熱素子135に当たって加熱素子135の温度を上昇させるように位置する、赤外線源を含み得る。いくつかの実施形態では、太陽光が加熱源140として使用され得る。他の実施形態では、加熱素子135は、電磁吸収材料の層を含んでよく、加熱源140は、容器105内部に位置する電磁発電機を含み得る。
【0024】
浄化システム100は、TDSの多い液体110を容器105に提供し、かつ容器105内部におけるTDSの多い液体110のレベルを制御する入力供給源145を含み得る。入力供給源145は、ポンプおよび/または他のシステム、ならびに容器105内部におけるTDSの多い液体110のレベルを制御するフィードバックセンサを含み得る。浄化システム100は、容器105内で生成された蒸気を凝縮して浄化された液体155を生じる凝縮装置150を含んでよく、浄化された液体155は、タンク160内に集められ得る。いくつかの実施形態では、凝縮装置150は、より冷たいTDSの多い液体110と、より温かい蒸気120との熱交換を利用するため、蒸気120が蒸気用キャノピー115の上から加熱層125の下へと向けられるように、容器105の内側に含まれてよい。いくつかの実施形態では、凝縮装置150は、熱交換器である。
【0025】
いくつかの実施形態では、浄化システム100は、容器105内部の圧力を制御することができる圧力制御装置170を含み得る。容器105内の圧力を下げることで、TDSの多い液体110の沸点も下げることができる。さらに、容器105は、TDSの多い液体110および/または浄化プロセス中に生成されたあらゆる沈殿物を除去するためのポート175を含み得る。いくつかの実施形態では、表面張力を和らげ、加熱層125から蒸気泡が形成されるのを減少させるか、または妨害するために、攪拌器が含まれ得る。例としての攪拌器は、エアウェーブ発生器(例えば、ファン)、超音波源などを含む。
【0026】
図2は、海水および/または汽水などの液体を浄化するための、別の例としての浄化システム200の断面図である。
図2の例としての浄化システム200には容器105が無く、代わりに、浄化システム200は、水域(例えば、海、湖など)の表面上に浮かぶことができる。この例としての実施形態では、フロート137は、蒸気用キャノピー115と、加熱層125と、加熱源140と、凝縮装置150と、タンク160と、を含め、浄化システム200を支持することができる。
【0027】
再び
図1を参照すると、動作中、入力供給源145は、加熱層125より上に液体層130がくるようにTDSの多い液体110を浄化システム100に提供する。加熱源140により、加熱素子135の温度が上昇し、それによって、液体層130が加熱される。加熱素子135は、膜加熱が起こるような温度にされ得る。膜加熱は、加熱素子と液体沸点との温度差が93℃以上になったときに起こる。蒸気120が生成され、これは、蒸気用キャノピー115の上部から出て、凝縮装置150内で凝縮されて、浄化された液体155を生じる。浄化された液体155は、タンク160の中に集まる。いくつかの実施形態では、界面活性剤が、TDSの多い液体110に添加されて、表面張力を低下させ、蒸発効率を改善することができる。
【0028】
液体層130の厚さ、および加熱素子135の温度は、浄化のエネルギー効率を改善する(例えば、浄化された液体の単位当たりのエネルギー消費を減少させる)ように制御され得る。例えば、加熱層125は、液体層130の厚さが液体の比重の関数として変化し得るように、構成され得る。加熱素子135または加熱層125の温度は、液体の沸点を93℃超上回るように制御され得る。いくつかの実施形態では、加熱素子135または加熱層125の温度は、液体の沸点を93℃〜200℃上回ってよい。例としての実施形態では、液体が海水、汽水、または工業廃水である場合、加熱素子135または加熱層125の温度は、少なくとも193℃であってよい。海水の沸点は、TDSのレベルに基づいて変化し得るが、典型的には100℃〜103℃で変化し、そのため、加熱素子135または加熱層125の温度は、少なくとも193℃、少なくとも194℃、少なくとも195℃、または少なくとも196℃であってよい。他の温度も可能である。
【0029】
さらに、液体層130の最適な厚さ(例えば、加熱層125の深さ)は、自由表面;TDS;温度(混合平均/乾/湿球(bulk/dry/wet bulb));境界層速度(boundary layer velocity);および相対湿度を含む、水および空気(湿り空気の)条件によって左右され得る。いくつかの実施形態では、最適な厚さは、1mm〜20mm、5mm〜14mmの範囲であるか、または、例えば、センサ、コントローラ、およびフィードバックシステムを用いて、望ましい蒸発率に従って調節される。最適な厚さは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および/または20mmを含み得る。いくつかの実施形態では、熱電冷却器/加熱器(TEC)が、蒸気への正確な熱エネルギー伝達に用いられ得る(運動エネルギーは、KE=3/2k*Tにより特徴づけられ、式中、kはボルツマン定数(Boltzman constant)であり、Tは温度である)。加熱層125の深さは、液体の表面から20mm以下であってよいが、いくつかの実施形態では、加熱層125は、0.1平方メートル以上、例えば、10平方メートルの面積を有し得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、膜加熱は、加熱層125上に蒸気泡の薄い膜を生じ、これは、ライデンフロスト効果としても知られる。この蒸気の膜は、蒸発効率に影響を及ぼし得る。それは、蒸気膜が、加熱層125の有効表面積を減少させ、それによりその液体が急速に蒸気を形成するのを防ぐことができるためである。いくつかの実施形態では、帯電プレートまたは素子が、加熱素子135と共に含まれて、加熱層125の近くの液体および/または蒸気分子に電荷を与えることができる。浄化システム100内に配列された逆電荷のプレートと組み合わせて、液体および/または蒸気分子を帯電させると、帯電した液体および/または蒸気分子が加熱層125から引き離されて、それにより蒸気膜の形成を回避することができる。
【0031】
図3Aは、加熱層125の一部、および逆電荷のプレート305の断面図である。加熱層125は、帯電素子310を含み得る。帯電素子310は、極性液体および/または蒸気分子に電荷を与えることができ、極性液体および/または蒸気分子は、その後、逆電荷のプレート305に引きつけられる。液体および/または蒸気分子の動きにより、蒸気膜の形成を妨げることができる。逆電荷のプレートは、凝縮装置の近く、例えば、蒸気用キャノピー115の上部の近くに、位置し得る。いくつかの実施形態では、同じように帯電したプレートが、加熱層125に隣接して位置してよく、水分子が帯電すると、水分子は、この同じように帯電したプレートから跳ね返されるようになっている。
【0032】
いくつかの実施形態では、加熱層125は、水分子に熱および電荷の両方を与えることができる、ハイブリッドの加熱−帯電素子を含み得る。
図3Bは、ハイブリッドの加熱−帯電素子315の例としての実施形態の断面図である。ハイブリッドの加熱−帯電素子315は、熱電性であるか、または別の加熱手段に基づいていてよい、加熱素子320と、チューブ層325と、絶縁層330と、帯電プレートもしくはフィン335を含む。いくつかの実施形態では、絶縁層330は、電気絶縁性であるが、熱伝導性である。
【0033】
いくつかの実施形態では、加熱層125は、トッププレートを含み得る。いくつかの実施形態では、加熱層125は、チューブまたはパイプから形成されている。
図3Cは、例としての加熱層125の上面図である。チューブまたはパイプは、有効な被覆エリアにわたって延びる。チューブまたはパイプは、いくつかの実施形態では、プレートの実施形態と比べた場合に、周囲の液体に対して加熱層125が有する表面積を増やすために、使用され得る。
【0034】
TDSの多い液体110の分子が蒸発するための十分なエネルギーを与えるために熱が必要である。必要なエネルギーは、溶液中の水の余分な熱力学ポテンシャルとして表され得る。このプロセスは、溶液から水を除去するため、および気化熱を供給するために、十分なエネルギーを必要とする。水を除去する際、必要なエネルギーの99%超が、気化熱を供給するのに使われる。溶液の表面張力を克服する必要性は、エネルギーも要し得る。水が液体から蒸気になるために相転移が起こらなければならないので、このプロセスのエネルギー要件は、非常に高くなり得る。
【0035】
一般的に、蒸発プロセスは、
図4を参照して説明することができる。
図4は、液体を浄化する、特に水を浄化するためのプロセスの概要を示す、プロセスフロー
図400である。このプロセスは、本主題のいくつかの態様によると低コストで高効率の浄化をもたらすことのできる、膜加熱を用いることを含み得る。
【0036】
405で、海水および/または汽水などのTDSの多い液体が提供され得る。海水は、概して35000百万分率(ppm)の平均塩分濃度を有するが、塩分濃度は、例えば、海水を入手する海の深さに基づいて、さまざまであってよい。海水は、ポンプまたは他のシステムにより、提供され得る。410で、TDSの多い液体をろ過することができる。ろ過により、大きな物体または他のデブリをTDSの多い液体から除去することができる。いくつかの実施形態では、TDSの多い液体は、ろ過する必要はない。
【0037】
415では、膜加熱により、TDSの多い液体の温度を上げて蒸発させることができ、これにより蒸気が生成される。420では、蒸気は、例えば、蒸気層が加熱素子上で形成されるのを回避するために帯電素子を用いて、帯電され得る。425で、蒸気は凝縮され、430で(例えば、タンクの中に)集められ得る。435では、集められた液体は、調製/調薬され(dosed)てよく、これには、TDSのバランスを取ることが含まれ得る。これは、カルシウム、マグネシウム、塩化物、硫酸塩など(例えば、軟化水)などを含むTDSを導入することを含み得る。440では、集められた液体が、紫外線放射で処理されて、集められた液体を滅菌することができる。445で、水がパッケージングおよび/または輸送に適切となり、生産水450を生じる。
【0038】
一般に、蒸発とは、液体(例えば、表面膜)が気化して気相になることである。分子レベルでは、液体状態と蒸気状態との間に境界(厳密な分離点)はない。蒸発の速度は、水分子(例えば、表面)に影響を与える因子によって左右され得る。分子の運動エネルギーは、その温度に比例し、例えば、速いまたは高エネルギーの分子は、遅いまたは低エネルギーの分子と比べて、容易に逃げる。
【0039】
したがって、蒸発速度は、少なくとも、温度;表面積;圧力;空気の動き;および/または界面からの蒸気除去;および表面張力(例えば、分子間の力(inter molecular forces)、濃度、放射率等)の関数となり得る。
図5は、蒸発および凝縮の段階を示す、プロセスフロー
図500である。入力エネルギー505が、510で液体分子に加えられる。これにより、液体の温度、体積、および圧力を含め、運動エネルギーが増大する。515で、分子は蒸気として液体から逃げる。これらの蒸気は、520で帯電され、525で放電することができる。蒸気は、530で凝縮されて、液相に戻ることができる。
【0040】
一般に、加熱された表面からの液体の気化(例えば、液体から気体への位相変化)は、プール沸騰、核沸騰、および膜沸騰の3つの異なる方法で起こり得る。プール沸騰は、気泡がほとんどもしくはまったく形成されず、かつ加熱素子の温度がほぼTDSの多い液体の沸点である、対流性熱伝達である(例えば、飽和)。核沸騰は、蒸気泡が形成され、加熱素子の温度がTDSの多い液体の沸点より高い、複雑な熱伝達プロセスである(例えば、気化)。膜沸騰は、加熱素子の表面を覆う蒸気の膜を作るものであり、加熱素子と沸点の温度差が200°F(93℃)以上になったときに起こる。
【0041】
例としての浄化システム100および200は、膜加熱が加熱層125および加熱素子135の温度を制御することによって起こるように、動作され得る。
図6は、追加の表示を含む、例としての浄化システム100の断面図である。固形物がTDSの多い液体110から沈殿し、塩分濃度の勾配が生じる。加熱層125の体積は、以下のとおり表すことができる。
【数1】
【0042】
水は、極性分子であり、(イオン性である)塩のような物質をよく溶解することができる。さらに、水は、熱の不良導体であり、かつ電気(溶解固形物/電極(塩化ナトリウム(NaCl)など)の良導体である。海水のTDSは、35,000百万分率(ppm)であるが、真水は50〜500ppmを有する。最後に、蒸発は、吸熱プロセスである。
【0043】
本主題のいくつかの実施形態は、意図する用途によって調整され(scale)得る。例えば、
図7は、平行な浄化システム100
i(i=1,2,・・・,N)を有するシステム700を示すシステムブロック図である。N個の浄化システムは共通のタンク160を共有することができ、各浄化システム100
iからの凝縮した液体は、その共通のタンク160に集められる。いくつかの実施形態では、各浄化システム100
iは、共通の凝縮装置150を共有することができ、各浄化システム100
iは蒸気を生成し、この蒸気は、共通の凝縮装置150により凝縮されて、共通のタンク160に集められる。浄化システム100
iは、別個の加熱手段を有し得る(例えば、加熱は、気体、電気、および放射線/光に基づいていてよい)。他の構成も可能である。
【0044】
エネルギーに関しては、加熱素子135を介して浄化システム100に入力された熱は、TDSの多い液体110により吸収される熱に実質的に等しい。
【0045】
加熱素子135により入力される熱は、以下のとおり表すことができる。
【数2】
【0046】
TDSの多い液体により吸収される熱は、以下のとおり表すことができる。
【数3】
【0047】
よって、kg/m
3での密度は、以下のとおり表すことができる。
ρ(S,T)=ρ
w=ρ
w0
+(8.24493×10
−1−4.0899×10
−3T−7.6438×10
−5T
2
−8.2467×10
−7T
3+5.3875×10
−9T
4)S
+(−5.72466×10
−3+1.0227×10
−4T−1.6546×10
−6T
2)S
3/2
+4.8314×10
−4S
2
【0048】
塩分濃度(S)は、海水の単位質量当たりの塩の質量であり、パーセンテージで、以下のとおり表すことができる。
【数4】
【0049】
温度を1℃上げるのに必要な単位質量当たりの熱量である、海水の比熱は、j/kg°kで、以下のとおり表すことができる。
【数5】
【0050】
蒸発率は、以下のとおり表すことができる。
【数6】
【0051】
よって、気化の方程式は、以下のとおり表すことができ、
【数7】
ここで、
【表1】
【数8】
である。
【0052】
蒸発境膜係数(evaporation film coefficients)に対する放射の効果に関しては、加熱素子135の温度は、高くなる可能性があり、そのため、放射の効果が検討され得る。放射は、蒸気膜の厚さを増し(すなわち、蒸気膜は、加熱素子の周囲で形成される蒸気の層である)、境膜係数および対流性熱伝達の値を下げる。この効果は、以下のとおり表すことができる。
【数9】
ここで、膜沸騰における総合熱伝達は、以下のとおり表すことができる。
Q=qA=h
totalA(T
S−T
sat)
h
r=放射境膜係数
h
total=総合境膜係数=対流および放射熱伝達
かつ、
【数10】
ここで、すべての性質は、蒸気圧に対応する飽和温度で評価することができる。さらに、以下のとおりである。
【数11】
【0053】
図8は、境膜係数と膜温度とのグラフであり、平らなプレートから海水が蒸発する特徴を示している。例示された値は、以下のとおりである。
【表2】
【0054】
前述のとおり、液体が、加熱された表面から気化している場合、位相変化は、3通りに起こり得る。プール沸騰では、加熱素子の温度は、液体沸騰/飽和の温度とほぼ等しい。核沸騰では、加熱素子の温度は、沸騰/気化の温度より高い。膜沸騰では、加熱素子と液体沸騰/気化の温度との温度差が、200°Fまたは93℃より大きい。
【0055】
自然対流の境膜係数は、以下のとおり表すことができる。
【数12】
【0056】
いくつかの変形を詳細に前述してきたが、他の変更または追加も可能である。例えば、本明細書に記載する実施例では脱塩に言及しているが、本主題は、脱塩に限定されず、塩分除去のため;汚水、工業廃水、農業廃水などの廃水を処理する廃水処理プラント内;および他の同様の適用を含む、任意の液体材料の浄化に適用することができる。
【0057】
さらに、加熱層125は、フロート137に加えていくつかの方法を使用して、例えば、加熱層125を容器105の側面に貼り付けて、TDSの多い液体110の体積を制御し、液体層130の存在を確実にすることによって、TDSの多い液体110中に浮遊され得る。さらに、加熱の動作原理(例えば、気体、電気、廃棄物処理、赤外線放射、太陽放射、電磁放射など)だけでなく、加熱層125のサイズおよび面積は、さまざまであってよい。
【0058】
前述した説明および特許請求の範囲において、「〜のうちの少なくとも1つ」または「のうちの1つ以上」という語句が、要素または特徴部の結合的なリストに続いて現れる場合がある。「および/または」という用語も、2つ以上の要素または特徴部のリスト内に現れる場合がある。使用される文脈によって暗にまたは明白に否定されない限り、このような語句は、列挙された要素または特徴部のいずれかを個々に、あるいは、列挙された要素または特徴部のいずれかを、列挙された他の要素または特徴部のいずれかと組み合わせたものを、意味することが意図されている。例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」、「AおよびBのうちの1つ以上」、「Aおよび/またはB」という語句はそれぞれ、「A単独、B単独、またはAとBとを一緒に」と意味することが意図されている。3つ以上のアイテムを含むリストについても、同様の解釈が意図されている。例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つ以上」、「A、B、および/またはC」という語句はそれぞれ、「A単独、B単独、C単独、AとBとを一緒に、AとCとを一緒に、BとCとを一緒に、またはAとBとCとを一緒に」と意味することが意図されている。さらに、前記および特許請求の範囲において、「〜に基づいて」という用語を使用することは、「〜に少なくとも部分的に基づいて」と意味することを意図しており、列挙されていない特徴部または要素も許容される。
【0059】
本明細書に記載する主題は、所望の構成に応じて、システム、器具、方法および/または物品において具体化される。前記の説明に記載した実施形態は、本明細書に記載する主題と一致する全ての実施形態を表しているわけではない。代わりに、これらは、単に、記載する主題に関連した態様と一致するいくつかの例に過ぎない。いくつかの変形を詳細に前述しているが、他の改変または追加が可能である。本明細書に記載したものに加えて、特に、さらなる特徴部および/または変形が、提供され得る。例えば、前記に説明した実施形態は、開示した特徴部のさまざまな組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびに/または前記に開示したいくつかのさらなる特徴部の組み合わせおよび部分的組み合わせに関連し得る。さらに、添付図面に描かれ、かつ/または本明細書に記載された論理の流れは、望ましい結果を達成するために、必ずしも図示した特定の順序、または順番を必要とするわけではない。特許請求の範囲内に、他の実施形態が含まれ得る。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 液体浄化のための器具において、
蒸気を集めるための蒸気用キャノピーと、
前記蒸気用キャノピーより下にあり、液体中に浸されるように構成された加熱層であって、前記加熱層は、前記液体により実質的に囲まれ、前記液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置しており、前記加熱層は、前記液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱されるように構成されている、加熱層と、
を含む、器具。
(2) 実施態様1に記載の器具において、
前記液体を保持するための容器をさらに含み、
前記加熱層は、前記容器内部に収容されている、器具。
(3) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層に連結され、前記液体中で前記加熱層を浮遊させるフロートをさらに含み、前記加熱層の深さは、前記液体の体積に関わらず、実質的に一定のままである、器具。
(4) 実施態様3に記載の器具において、
前記フロートはさらに、前記蒸気用キャノピーに連結され、前記蒸気用キャノピーを前記液体の上で支持し、
前記蒸気用キャノピーは、水域上に浮遊するように構成されている、器具。
(5) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層は、少なくとも1つの加熱素子を含み、
前記加熱素子は、電気的加熱素子、気体加熱素子、強制熱水加熱素子、赤外線吸収材料、または電磁吸収材料を含む、器具。
【0061】
(6) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層は、前記加熱層の近くの液体または蒸気分子上に電荷を与える帯電素子をさらに含む、器具。
(7) 実施態様6に記載の器具において、
帯電した液体または蒸気分子を前記加熱層から引き離し、前記加熱層上での蒸気膜の形成に抵抗するために、逆電荷の素子をさらに含む、器具。
(8) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層は、ハイブリッドの加熱−帯電素子を含み、
前記ハイブリッドの加熱−帯電素子は、
加熱素子と、
帯電フィンと、
前記加熱素子と前記帯電フィンとの間の絶縁層と、
を含み、
前記絶縁層は、電気絶縁性であり、かつ熱伝導性である、器具。
(9) 実施態様1に記載の器具において、
赤外線源、電磁波源、または電源を含む加熱源をさらに含む、器具。
(10) 実施態様9に記載の器具において、
前記加熱源は、赤外線源を含み、前記加熱層は、赤外線吸収材料を含む、器具。
【0062】
(11) 実施態様1に記載の器具において、
前記液体は、海水、廃水、または汽水である、器具。
(12) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層は、少なくとも193℃の温度に加熱されるように構成されている、器具。
(13) 実施態様1に記載の器具において、
前記液体の表面高さを制御するように構成された入力供給源をさらに含む、器具。
(14) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層は、前記液体の表面から5mm〜14mmの深さで前記液体中に浸されるように構成されている、器具。
(15) 実施態様1に記載の器具において、
前記加熱層は、約14mmの深さで前記液体中に浸されるように構成されている、器具。
【0063】
(16) 方法において、
全溶解固形物(TDS)が多い液体を、蒸気用キャノピーの下に配列された加熱層に提供することであって、前記加熱層は、前記TDSの多い液体によって実質的に囲まれ、前記TDSの多い液体の表面から1mm〜20mmの深さに位置するように、前記TDSが多い液体中に浸される、ことと、
前記加熱層を、前記TDSの多い液体の沸点を少なくとも93℃超える温度に加熱して、蒸気を生成することと、
前記蒸気用キャノピーおよび凝縮装置により前記蒸気を集めることと、
を含む、方法。
(17) 実施態様16に記載の方法において、
帯電素子を用いて前記蒸気を帯電させて、前記加熱層上での蒸気層の形成を回避することをさらに含む、方法。
(18) 実施態様16に記載の方法において、
前記加熱層は、約14mmの深さで前記液体中に浸される、方法。
(19) 実施態様16に記載の方法において、
前記加熱層は、ハイブリッドの加熱−帯電素子を含み、
前記ハイブリッドの加熱−帯電素子は、
加熱素子と、
帯電フィンと、
前記加熱素子と前記帯電フィンとの間の絶縁層と、
を含み、
前記絶縁層は、電気絶縁性であり、かつ熱伝導性である、方法。
(20) 実施態様16に記載の方法において、
全溶解固形物(TDS)の多い液体を提供することは、前記蒸気用キャノピーおよび加熱素子を海水域中に置くことを含む、方法。
【0064】
(21) 本明細書中で説明または例示された、器具、システム、技術、および物品。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】海水および/または汽水などの液体を浄化するための、例としての浄化システムの断面図である。
【
図2】海水および/または汽水などの液体を浄化するための、別の例としての浄化システムの断面図である。
【
図3A】加熱層の一部および逆電荷のプレートの断面図である。
【
図3B】ハイブリッドの加熱−帯電素子の、例としての実施形態の断面図である。
【
図4】液体を浄化するための、例としてのプロセスの概観を示すプロセスフロー図である。
【
図5】蒸発および凝縮の段階を示すプロセスフロー図である。
【
図6】追加の表示を含む、例としての浄化システムの断面図である。
【
図7】平行な浄化システムを含むシステムを示す、システムブロック図である。
【
図8】平坦なプレートからの海水蒸発の特徴を示す、境膜係数と膜温度とのグラフである。