特許第6800963号(P6800963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800963ワークピースのレーザー溶接のためのレーザー加工機および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800963
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ワークピースのレーザー溶接のためのレーザー加工機および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20201207BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20201207BHJP
【FI】
   B23K26/064 A
   B23K26/21 G
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-516017(P2018-516017)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公表番号】特表2018-528081(P2018-528081A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016072907
(87)【国際公開番号】WO2017055242
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年5月24日
(31)【優先権主張番号】102015218564.8
(32)【優先日】2015年9月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504035571
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エルケ カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ブロークハマー
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6198962(JP,B2)
【文献】 特開平10−296471(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/137475(JP,A1)
【文献】 特開2011−170052(JP,A)
【文献】 特開2013−075331(JP,A)
【文献】 特開2015−112644(JP,A)
【文献】 特開2006−192503(JP,A)
【文献】 特許第3075571(JP,B2)
【文献】 特開昭59−144448(JP,A)
【文献】 特開昭54−152299(JP,A)
【文献】 特表2004−510177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/064
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(2,3)のレーザー溶接のためのレーザー加工機(1)であって、レーザービーム(5)を生成するためのレーザービーム生成器(7)と、前記レーザービーム(5)を加工面(10)に結像させるための結像光学系(9)とを備えているレーザー加工機(1)において、
前記結像光学系(9)は、アキシコン(15)を有しており、
当該アキシコン(15)は、入射する拡散性のレーザービーム(5)をリング状のレーザービーム(5)に変形し、前記リング状のレーザービームの外側の縁部放射(5a)はコリメートされて焦点合わせレンズ(12)に入射して、前記焦点合わせレンズ(12)によって、焦点面(13)に焦点合わせされ、かつ前記リング状のレーザービームの内側の縁部放射(5b)は拡散して前記焦点合わせレンズ(12)に入射し、前記焦点合わせレンズ(12)の影響を受けず、前記アキシコン(15)は、前記レーザービーム(5)を、前記加工面(10)において少なくとも±2mmの焦点深度(Δd)で当該焦点深度(Δd)に沿って、ビーム軸線(16)に対して直角の各面において、前記レーザービーム(5)の半径方向の出力密度分布(P)がベル形に形成されており、かつ、前記焦点深度(Δd)に沿った、ベル形の前記出力密度分布(P)の最大値(Pmax)相互の変動が10%を下回るように、結像させる、
ことを特徴とする、レーザー加工機(1)。
【請求項2】
前記アキシコン(15)は、凸型に形成されており、前記加工面(10)は、前記結像光学系(9)の焦点面(13)の前方に位置する上方焦点領域に位置する、請求項に記載のレーザー加工機。
【請求項3】
前記アキシコン(15)は、凹型に形成されており、前記加工面(10)は、前記結像光学系(9)の焦点面(13)の後方に位置する下方焦点領域に位置する、請求項に記載のレーザー加工機。
【請求項4】
前記アキシコン(15)は、前記レーザービーム(5)の平行するまたは拡散性のビーム路に配置されている、請求項からまでのいずれか1項に記載のレーザー加工機。
【請求項5】
前記レーザービーム(5)は、パルス状の緑色のレーザービームである、請求項1からまでのいずれか1項に記載のレーザー加工機。
【請求項6】
レーザービーム(5)を用いた、加工面(10)における、DBC構造体(4)の重ね溶接での結像光学系(9)としてのアキシコン(15)またはデュアルフォーカス対物レンズ(22)の使用方法において、
前記レーザービーム(5)は、前記加工面(10)において少なくとも±2mmの焦点深度(Δd)で、当該焦点深度(Δd)に沿って、ビーム軸線(16)に対して直角の各面において、前記レーザービーム(5)の半径方向の出力密度分布(P)がベル形に形成されており、かつ、前記焦点深度(Δd)に沿った、ベル形の前記出力密度分布(P)の最大値(Pmax)相互の変動が10%を下回るように、結像される、
ことを特徴とする、レーザービーム(5)を用いた、加工面(10)における、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースのレーザー溶接、特にDBC構造体の重ね溶接のためのレーザー加工機に関する。このレーザー加工機は、レーザービームを生成するためのレーザービーム生成器と、このレーザービームを加工面に結像させるための結像光学系とを備えている。本発明はまた、レーザービームを用いた、加工面における、ワークピースのレーザー溶接、特にDBC構造体の重ね溶接のための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第10005593号明細書(DE10005593C1)から、ワークピースを点溶接するための方法が既知である。ここでは、焦点合わせレンズと、片面が平面で、もう片面が円錐状のレンズ(いわゆる「アキシコン」)とから成る光学系が、レーザービームを次のように成形する。すなわち、加工面である焦点面において、一方では大きいビームスポットが得られ、他方ではリング状のエネルギー分布が得られるように成形する。
【0003】
DBC(Direct Bonded Copper(ダイレクトボンド銅))構造体は、高性能電子回路において使用され、セラミック基板とその上に延在する銅の導体路とから成る多層のシステムから成る。銅は、熱と電流を通し、セラミックは、熱は通すが、電流は通さない。銅の導体路は、それぞれ、銅から成る接続コンタクトと電気的に接続されていなければならない。これは、これまで、超音波溶接によって行われてきたが、これは、セラミック基板における破れおよび熱の滞留を引き起こすことがあり、したがって、確かな成果をもたらさない。DBC構造体では、セラミック上の銅の層は極めて薄いので、溶接プロセスは、極めて確実に、かつ、正確に再現可能な溶接深さで行われなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第10005593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、冒頭に記載した様式のレーザー加工機および方法を改善して、レーザー溶接プロセスを極めて確実に、かつ、正確に再現可能な溶接深さで行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題は、本発明では、次のことによって解決される。すなわち、結像光学系が、レーザービームを加工面において少なくとも±2mmの焦点深度で、有利には少なくとも±5mmの焦点深度で次のように結像させるビーム成形光学系を有していることによって解決される。すなわち、この焦点深度に沿って、ビーム軸線に対して直角の各面において、レーザービームの半径方向の出力密度分布がベル形に形成されており、かつ、焦点深度に沿ったこれらのベル形の出力密度分布の最大値相互の変動が10%、有利には5%を下回るように結像させる。
【0007】
出力測定が示しているように、本発明のビーム成形光学系によって、焦点深度の領域において、
・数ミリメートルにわたる、放射方向(z方向)における大きい出力不変性と、
・再現可能な溶接深さを生じさせる、放射方向に対して半径方向のベル形の出力密度分布と、
が得られる。
【0008】
再現可能な溶接深さは、温度に敏感な基盤を伴う構成部分のレーザー溶接を可能にする。したがって、通常、レーザー溶接時に、溶接深さが深すぎることで生じ得る導電性コンタクトの基盤(例えばセラミック基板)の損傷を回避することができる。本発明は、セラミック基板上の銅の層が極めて薄いDBC構造体において、セラミック基板を破壊することなく、正確に再現可能な溶接深さを備える極めて確実な溶接プロセスを可能にし、かつ、ベル形の出力密度分布に基づいて、溶接されるべき銅構成部分間の熱の滞留も阻止する。このような熱の滞留は、例えば、リング状の出力密度分布において生じ得る。
【0009】
本発明の第1の有利な実施形態では、ビーム成形光学系は、凸型のアキシコンまたは凹型のアキシコンとして形成されており、ここでアキシコンが凸型の場合には、加工面は、結像光学系の焦点面の前方に位置する上方焦点領域に位置し、アキシコンが凹型の場合には、加工面は、焦点面の後方に位置する下方焦点領域に位置する。アキシコンが、レーザービームの拡散性のビーム路に配置されていても、平行するビーム路に配置されていてもよい。ここで、後者の場合には、アキシコンは、存在する複数の光学系に容易に付加的に導入可能である。
【0010】
本発明の第2の有利な実施形態では、ビーム成形光学系は、デュアルフォーカス対物レンズによって形成されている。この場合には加工面は、デュアルフォーカス対物レンズの2つの焦点の間に位置している。有利には、デュアルフォーカス対物レンズの前には、均一化光学系が位置する。この均一化光学系は、レーザービームの半径方向の出力密度分布を混合するまたは均一化する。この均一化光学系は例えば、光導体(例えばレーザー用光ケーブル)を有していてよく、レーザービームは光導体軸線に対して偏心的に、この光導体に入力される。
【0011】
本発明は別の態様では、レーザービームを用いた、加工面における、ワークピースのレーザー溶接、特にDBCの重ね溶接のための方法にも関する。ここで本発明では、レーザービームは加工面において少なくとも±2mmの焦点深度で、有利には少なくとも±5mmの焦点深度で、次のように結像される。すなわち、この焦点深度に沿って、ビーム軸線に対して直角の各面において、レーザービームの半径方向の出力密度分布がベル形に形成されており、かつ、焦点深度に沿ったこれらのベル形の出力密度分布の最大値相互の変動が10%、有利には5%を下回るように結像される。
【0012】
銅から成るワークピース同士は有利には、パルス状の緑色のレーザービーム(波長は例えば515nmまたは532nm)で、または、パルス状のIRレーザービームで相互に溶接される。
【0013】
本発明の構成要件の別の有利な構成は、明細書、特許請求の範囲および図面から明らかである。同様に、上述した、さらに詳細に説明される特徴は、単独でまたは複数の任意の組み合わせで使用されてよい。図示および説明された実施形態は最終的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明の描写に対して例示的な性質を有している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半径方向およびz方向におけるレーザービームの属する出力密度分布を伴うアキシコンの形態のビーム成形光学系を備える第1の本発明のレーザー加工機。
図2】半径方向およびz方向におけるレーザービームの属する出力密度分布を伴う光導体とデュアルフォーカス対物レンズの形態のビーム成形光学系を備える第2の本発明のレーザー加工機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以降の図面の説明では、同一の、または、機能が同等の構成部分に対して、同一の参照符号が用いられている。
【0016】
図1に示されたレーザー加工機1は、例えば、パルス状のレーザービーム5を用いた、DBC(Direct Bonded Copper)構造体4の、銅から成る接続コンタクト2と、銅の導体路3との重ね溶接に用いられる。DBC構造体4はここでは、セラミック基板6を有しており、このセラミック基板6上に、銅の導体路3が被着されている。セラミック基板6上の銅の導体路3は極めて薄いので、レーザー溶接プロセスは極めて確実に、かつ、正確に再現可能な溶接深さで行われなければならない。
【0017】
レーザー加工機1は、レーザービーム5を生成するレーザービーム生成器7と、レーザービーム5が入力されるレーザー用光ケーブル(LLK)8と、LLK8から放出されたレーザービーム5を加工面10に結像させる結像光学系9とを含んでいる。
【0018】
結像光学系9は、拡散的にLLK8から放出されたレーザービーム5をコリメートするコリメートレンズ11と、コリメートされたレーザービーム5を焦点面13で焦点合わせする焦点合わせレンズ12とを有している。焦点合わせされたレーザービーム5に配置されている保護ガラス14は、焦点合わせレンズ12を損傷から保護する。拡散性のレーザービーム5に、すなわち、LLK8とコリメートレンズ11との間に、ビーム成形光学系が、片面が平面で、もう片面が円錐状のレンズ(いわゆる「アキシコン」)15の形態で、例えば0.1°のエッジ角度βで、光軸16に対して同軸に配置されている。ここで円錐状の面は、LLK8の方を向いている。アキシコン15は、入射する拡散性のレーザービーム5をリング状のレーザービーム5に変形し、このリング状のレーザービームの外側の縁部放射5aはコリメートされて、かつ、このリング状のレーザービームの内側の縁部放射5bは拡散性に、焦点合わせレンズ12に入射する。外側の縁部放射5aは、焦点合わせレンズ12によって、焦点面13に、すなわち、焦点Fに焦点合わせされる。他方で、内側の縁部放射5bは、焦点合わせレンズ12によって影響されない。加工面10は、焦点面13の前に位置する上方焦点領域に、例えば焦点面13の20mm前に位置する。
【0019】
出力測定が示しているように、この付加的なアキシコン15によって、レーザービーム5は、加工面10において、少なくとも±2mmの焦点深度Δdで、次のように結像される。すなわち、この焦点深度Δdに沿って、ビーム軸線に対して直角の各面において、レーザービーム5の半径方向の出力密度分布Pがベル形に形成されており、かつ、焦点深度Δdに沿って、光軸16の方向(z方向)において、これらのベル形の出力密度分布Pの最大値Pmax相互の変動が5%を下回るように結像される。すなわち、これの最大値Pmaxは全て、5%の変動範囲17内に位置している。
【0020】
したがって、焦点深度Δdの領域において、レーザービーム5は、数ミリメートルにわたる、自身の光軸16に沿った大きい出力均一性とそれぞれ、ベル形の半径方向の出力密度分布Pとを有している。これによって、加工面13において、極めて正確な溶接深さのもとでのパラメータの大きいトレランスと、ひいては再現可能な溶接深さとが得られ、ベル形の出力密度分布Pによって、溶接されるべき銅の構成部分2、3の間での熱の滞留が阻止される。
【0021】
選択的に、アキシコン15が、レーザービーム5の平行するビーム路に、すなわち、コリメートレンズ11と焦点合わせレンズ12との間に配置されていてもよい。
【0022】
図1ではアキシコン15は、凸型のアキシコンとして形成されており、したがって、加工面10は、結像光学系9の焦点面13の前に位置する上方焦点領域に位置する。選択的に、アキシコンが凹型のアキシコンとして形成されていてもよく、したがって、加工面10は、焦点面13の後方に位置する下方焦点領域に、例えば焦点面13の20mm後方に位置する。
【0023】
図2に示されているレーザー加工機1は、図1と、以下の点において異なっている。すなわち、図2では、ビーム成形光学系が、レーザー用光ケーブル(LLK)21として形成されている光学的な均一化光学系と、後置されているデュアルフォーカス対物レンズ22(内側領域にある焦点距離f>外側領域にある焦点距離f)とによって形成されており、加工面10がデュアルフォーカス対物レンズ22の2つの焦点FとFの間に位置している。レーザービーム5は、半径方向の出力密度分布を混合するまたは均一化する目的で、LLK軸線23に対して偏心的に、LLK21に入力される。LLK21から拡散性に放出されたレーザービーム5は、デュアルフォーカス対物レンズ22に入射する。このデュアルフォーカス対物レンズは、自身の内側領域に入射する、レーザービーム5の内側ビーム束24aを焦点Fに焦点合わせし、自身の外側領域に入射する、レーザービーム5のビーム束24bを焦点Fに焦点合わせする。
【0024】
ここでも出力測定が示しているように、LLK21とデュアルフォーカス対物レンズ22とによって、レーザービーム5は、加工面10において、少なくとも±2mmの焦点深度Δdで、次のように結像される。すなわち、この焦点深度Δdに沿って、ビーム軸線に対して直角の各面において、レーザービーム5の半径方向の出力密度分布Pがベル形に形成されており、かつ、焦点深度Δdに沿って、光軸方向(z方向)において、これらのベル形の出力密度分布Pの最大値Pmax相互の変動が5%を下回るように結像される。すなわち、これの最大値Pmaxは全て、5%の変動範囲17内に位置している。
【0025】
したがって、焦点深度Δdの領域において、レーザービーム5は、数ミリメートルにわたる、自身の光軸16に沿った大きい出力均一性とそれぞれ、ベル形の半径方向の出力密度分布Pとを有している。これによって、加工面13において、極めて正確な溶接深さのもとでのパラメータの大きいトレランスと、ひいては再現可能な溶接深さとが得られ、ベル形の出力密度分布Pによって、溶接されるべき銅の構成部分2、3の間での熱の滞留が阻止される。
図1
図2