(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
損傷/傷害軟骨標的用プローブのモル比が、1:4、1:3、1:2、1:1、1:3.9、1:3.5、1:2.3、4:1、3:1、又は2:1である、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬。
1若しくは2以上のケモカイン又は1若しくは2以上のTGF活性薬剤が、架橋バイオポリマーに結合している、放出可能に結合している、架橋バイオポリマー中に配置している、架橋バイオポリマー上にスプレー被覆されている、又はそれらの組合せである、請求項4又は5に記載の医薬。
架橋バイオポリマーが1又は2以上の孔を含み、前記1又は2以上の孔に、1若しくは2以上のケモカイン又は1若しくは2以上のTGF活性薬剤が、時間と共に持続放出するように配置されており、前記1又は2以上の孔が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29nm、又は1nm未満の直径、若しくは29nmを超える直径を有する、請求項4又は5に記載の医薬。
【発明の概要】
【0005】
外傷後骨関節炎(PTOA,Post-traumatic osteoarthritis)は、関節炎の最も一般的な形態の1つである。PTOAは、関節軟骨傷害の結果であると信じられている。X線及びMRIは、損傷軟骨において生じる解剖学的な変化を検査するために従来使用されてきた。残念ながら、早期の軟骨傷害を、特に細胞レベルで検出する方法は、存在しない。以前の研究により、PTOAにおける軟骨細胞アポトーシスとプロテオグリカン欠乏の間に良好な関係性が存在することが示されている。
【0006】
関節炎は、炎症を特徴とする関節障害である。多くのタイプの関節炎が存在する。関節炎のタイプは、軟骨の摩耗及び断裂に関わるものから過敏性免疫応答から生じる炎症に関連するものまでにわたる。
【0007】
関節炎に関する標準的な処置は、減量、衝撃度の低い運動及び関節の周囲の筋肉の強化、並びに経口非ステロイド性抗炎症薬(NSAID,non-steroidal anti-inflammatory drug)で開始される。NSAID及びステロイドの慢性的使用にしばしば伴う全身合併症を減少させるために、コルチゾン又は滑りやすいポリマー(Hylamers)を関節内に注射する。それらが不快感及び多くの症状を減少させることに有効であるにもかかわらず、これらの薬理学的な処置は、関節炎の自然経過を変更させる上で無効である。これらの処置の失敗は、典型的には、擦り切れた関節表面の壊死組織切除、再構築及び人工的なインプラントでの置換が関与する手術を必要とする。薬理学的なアプローチと同様に、従来の外科療法は、軟骨関節の完全な機能を回復できない。加えて、関節補綴物は、天然組織との一体化が不十分であり、異物応答を誘発し、寿命が限られるため、10〜15年毎に外科的な介入が何回も必要となる恐れがある。有効で永続的な治療がないことから、関節の治癒を改善することができるが、炎症性応答は減少させる、新しい治療アプローチが必要とされる。本発明は、関節炎に関する永続的な治癒としてデザインされる。
【0008】
本発明は、損傷軟骨をイメージングするためのターゲティングプローブを提供する。ターゲティングプローブは、傷害を受けた組織を標的とし、次に健常組織から傷害を受けた組織への周囲の軟骨細胞の移動を惹起するケモカインを放出させることができる。ターゲティングプローブは、傷害を受けた組織を標的とし、次に滑膜幹細胞を動員するケモカインを放出させることができる。幹細胞は次に軟骨細胞に分化され、これが次に軟骨再生に関与する。いくつかの実施形態において、特許請求された発明は、これらの機能の3種全てを行ってもよく、他方、他の実施形態において、特許請求された発明は、これらの機能を全てで1又は2種行ってもよい。
【0009】
本発明は、ビニルスルホンによって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性HAポリマー:ビニルスルホンの架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、CD44受容体と相互作用するヒアルロン酸、葉酸受容体と相互作用する葉酸又は両方である、リガンド;並びに架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する検出可能なタグを含む、関節炎軟骨を標的とする及び/又は処置する医薬として使用するための関節炎軟骨標的用プローブを提供する。
【0010】
本発明は、ビニルスルホンによって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性HAポリマー:ビニルスルホンの架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する、リガンド;並びに架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する検出可能なタグを含む、損傷軟骨を標的とする及び/又は処置する医薬として使用するための損傷軟骨標的用プローブを提供する。
【0011】
本発明は、ビニルスルホン架橋剤によって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性ポリマー:架橋剤の架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する、リガンド;並びに架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する検出可能なタグを含む、損傷軟骨標的用プローブを用意するステップ;損傷されていることが疑われる軟骨を損傷軟骨標的用プローブと接触させるステップ;並びに損傷軟骨標的用プローブを検出するステップを含む、損傷軟骨を識別するための損傷軟骨標的用プローブの使用を提供する。
【0012】
本発明は、ビニルスルホン架橋剤によって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性ポリマー:架橋剤の架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーは内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する、リガンド;SDF1、SDF1β、Epo、CCL2、CCL16、VEGF、TGF−β1及びTGF−β3から選択され、ポリマーターゲティングプローブに結合する、1又は2以上のケモカインであって、幹細胞、軟骨細胞又は両方を動員するため放出される、1又は2以上のケモカイン;並びに架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する検出可能なタグを含む、損傷軟骨に幹細胞、軟骨細胞又は両方を動員することによって損傷軟骨を処置する医薬として使用するための軟骨標的用プローブを提供する。
【0013】
本発明は、ビニルスルホン架橋剤によって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性ポリマー:架橋剤の架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する、リガンド;TGF−β1及びTGF−β3から選択され、ポリマーターゲティングプローブに結合する、1又は2以上のTGF活性薬剤であって、より高い軟骨細胞への分化を惹起するために放出される、1又は2以上のTGF活性薬剤;並びに架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する検出可能なタグを含む、軟骨細胞への分化を増加させることによって損傷軟骨を処置する医薬として使用するための軟骨標的用プローブを提供する。
【0014】
本発明は、ビニルスルホン架橋剤によって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性ポリマー:架橋剤の架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する);並びに架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する検出可能なタグを含む、損傷軟骨標的用プローブを用意するステップ;1mmに至る小さい傷害を有することが疑われる軟骨を損傷軟骨標的用プローブと接触させるステップ;並びに損傷軟骨標的用プローブを検出するステップを含む、1mmに至る小さい傷害を有する、損傷軟骨を識別するための損傷軟骨標的用プローブの使用を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、リガンドはヒアルロン酸であり、1又は2以上の細胞表面標的はCD44受容体である。他の実施形態において、リガンドは葉酸であり、1又は2以上の細胞表面標的は葉酸受容体である。
【0016】
本発明は、損傷軟骨イメージングプローブが、ビニルスルホンによって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性HAポリマー:ビニルスルホンの架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、CD44受容体と相互作用するヒアルロン酸、葉酸受容体と相互作用する葉酸又は両方である、リガンド;並びに、架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する、検出可能なタグであって、損傷軟骨で検出することができ、損傷軟骨の画像を生成するために使用することができる、検出可能なタグを含む、損傷軟骨を標的とする及び/又は処置する医薬として使用するための損傷/傷害軟骨イメージングプローブを提供する。
【0017】
軟骨に対する損傷は、機械的な(mechanical)外傷、物理的な外傷、圧迫性外傷、関節炎性損傷、炎症性損傷又はそれらの組合せを含む、いかなる原因からのものであってもよい。
【0018】
いかなる実施形態においても、ポリマーターゲティングプローブは、約10K、60K、700k、1.5M又はそれらの様々な増分(例えば、8K、9K、10K、11K、12K、13K、14K、15K、16K、17K、18K、19K、20K、21K、22K、23K、24K、25K、26K、27K、28K、29K、30K、31K、32K、33K、34K、35K、36K、37K、38K、39K、40K、41K、42K、43K、44K、45K、46K、47K、48K、49K、50K、51K、52K、53K、54K、55K、56K、57K、58K、59K、60K、61K、62K、63K、64K、65K、66K、67K、68K、69K、70K、71K、72K、73K、74K、75K、76K、77K、78K、79K、80K、81K、82K、83K、84K、85K、86K、87K、88K、89K、90K、100K、110K、120K、130K、140K、150K、160K、170K、180K、190K、200K、210K、220K、230K、240K、250K、260K、270K、280K、290K、300K、310K、320K、330K、340K、350K、360K、370K、380K、390K、400K、410K、420K、430K、440K、450K、460K、470K、480K、490K、500K、510K、520K、530K、540K、550K、560K、570K、580K、590K、600K、610K、620K、630K、640K、650K、660K、670K、680K、690K、700K、710K、720K、730K、740K、750K、760K、770K、780K、790K、800K、810K、820K、830K、840K、850K、860K、870K、880K、890K、900K、1M;1.2M;1.3M;1.4M;1.5M;1.6M;1.7M;1.8M;1.9M;1.10M;1.11M;1.12M;1.13M;1.14M;1.15M;1.16M;1.17M;1.18M;1.19M;1.20M;1.21M;1.22M;1.23M;1.24M;1.25M;1.26M;1.27M;1.28M;1.29M;1.30M;1.31M;1.32M;1.33M;1.34M;1.35M;1.36M;1.37M;1.38M;1.39M;1.40M;1.41M;1.42M;1.43M;1.44M;1.45M;1.46M;1.47M;1.48M;1.49M;1.50M;1.51M;1.52M;1.53M;1.54M;1.55M;1.56M;1.57M;1.58M;1.59M;1.60M;1.61M;1.62M;1.63M;1.64M;1.65M;1.66M;1.67M;1.68M;1.69M;又は1.70M)の分子量を有し、その架橋比は1:4、1:3、1:2、1:1、1:3.9、1:3.5、1:2.3、4:1、3:1、2:1及びそれらの様々な増分(例えば、1:4;1.1:4;1.2:4;1.3:4;1.4:4;1.5:4;1.6:4;1.7:4;1.8:4;1.9:4;2:4;2.1:4;2.2:4;2.3:4;2.4:4;2.5:4;2.6:4;2.7:4;2.8:4;2.9:4;3:4;3.1:4;3.2:4;3.3:4;3.4:4;3.5:4;3.6:4;3.7:4;3.8:4;3.9:4;4:1;4:1.1;4:1.2;4:1.3;4:1.4;4:1.5;4:1.6;4:1.7;4:1.8;4:1.9;4:2;4:2.1;4:2.2;4:2.3;4:2.4;4:2.5;4:2.6;4:2.7;4:2.8;4:2.9;4:3.0;4:3.1;4:3.2;4:3.3;4:3.4;4:3.5;4:3.6;4:3.7;4:3.8;又は4:3.9)である生体適合性ヒアルロン酸ポリマーを含むことができる。
【0019】
検出可能なタグは、蛍光色素、放射性タグ、金属、ナノ粒子又はそれらの組合せであってもよい。いかなる実施形態においても、ポリマーターゲティングプローブは、生分解性又は部分的に生分解性であってもよい。
【0020】
ポリマーターゲティングプローブは、架橋バイオポリマーに結合している、放出可能に結合している(releasably associated)、架橋バイオポリマー中に配置している、架橋バイオポリマー上にスプレー被覆されている、又はそれらの組合せの、1若しくは2以上のケモカイン又は1若しくは2以上のTGF活性薬剤を含んでいてもよい。
【0021】
架橋バイオポリマーは、活性薬剤を保持するための1又は2以上の孔を形成してもよく、例えば、保持される活性薬剤及び所望の放出割合又はプロファイルに応じて、時間と共に持続放出させるための1若しくは2以上のケモカイン又は1若しくは2以上のTGF活性薬剤を保持するための1又は2以上の孔を形成してもよく、架橋は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29nm又は1nm未満又は29nm超及びそれぞれに関して0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9の様々な増分(例えば、X.1、X.2、X.3、X.4、X.5、X.6、X.7、X.8、又はX.9、式中のXは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29;特定の例には3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、又は11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9又は20.1、20.2、20.3、20.4、20.5、20.6、20.7、20.8、20.9が含まれる)の平均直径を有する孔を形成させるために変動させてもよい。
【0022】
ポリマーターゲティングプローブは、15分未満で1又は2以上の標的と接触するために使用することができ、15分以内での迅速な検出を可能にする。ポリマーターゲティングプローブは、関節内注射することができる。
【0023】
本発明は、損傷軟骨の指向的処置(directed treatment)のための組成物及び方法を提供する。本発明は、リガンドを使用して、軟骨損傷イメージングプローブを損傷軟骨及び第1の検出可能なタグに指し向けて、身体中の軟骨損傷イメージングプローブの位置を識別する、損傷軟骨を位置付ける識別機構として使用することができる。第2の軟骨標的用プローブは、損傷軟骨に幹細胞、軟骨細胞又は両方を動員することによって損傷軟骨を処置する医薬として使用することができる。リガンドを使用して、第2の軟骨標的用プローブを損傷軟骨に指し向けて、そこで1又は2以上のケモカインが第2の軟骨標的用プローブから放出されて、幹細胞、軟骨細胞又は両方が損傷軟骨に動員される。第2の軟骨標的用プローブは、第2の軟骨標的用プローブの位置を識別するための、第2の検出可能なタグを有し得る。第3の軟骨標的用プローブは、軟骨細胞への分化を増加させることによって損傷軟骨を処置する医薬として使用することができる。第3の軟骨標的用プローブは、第3の軟骨標的用プローブを損傷軟骨に指し向けるために使用されるリガンドを含み、そこで1又は2以上のTGF活性薬剤が第3の軟骨標的用プローブから放出されて、より高い軟骨細胞への分化が惹起される。第3の軟骨標的用プローブは、第2の軟骨標的用プローブの位置を識別するための、第3の検出可能なタグを有し得る。この例では、3つのプローブとともに3つの異なる検出可能なタグが存在して、位置及び送達に関して、それぞれをイメージングすること及び識別することが可能になる。しかし、いくつかの事例では、検出可能なタグは、それぞれについて同じであってもよい。同様に、個々のプローブを2つの又はそれどころか1つのプローブに組み合わせることによって、プローブの数が減少されてもよいことは明らかである。例えば、ケモカインを放出して幹細胞、軟骨細胞又は両方を損傷軟骨に動員する及び1又は2以上のTGF活性薬剤も放出してより高い軟骨細胞への分化を惹起する、第2のプローブの局所注射に続いて、単一のイメージングプローブを使用することができる。例えば、本発明は、ビニルスルホンによって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性HAポリマー:ビニルスルホンの架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、CD44受容体と相互作用するヒアルロン酸、葉酸受容体と相互作用する葉酸又は両方である、リガンド;並びに、架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する、第1の検出可能なタグであって、損傷軟骨で検出することができ、損傷軟骨の画像を生成するために使用することができる、第1の検出可能なタグを含む、損傷軟骨を識別するための軟骨損傷イメージングプローブ;ビニルスルホン架橋剤によって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性ポリマー:架橋剤の架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する、リガンド;SDF1、SDF1β、Epo、CCL2、CCL16、VEGF、TGF−β1及びTGF−β3から選択され、ポリマーターゲティングプローブに結合する、1又は2以上のケモカインであって、幹細胞、軟骨細胞又は両方を動員するために放出される、1又は2以上のケモカインを含み、架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する、第2の検出可能なタグを含んでいてもよい、損傷軟骨に幹細胞、軟骨細胞又は両方を動員することによって損傷軟骨を処置する医薬として使用するための軟骨標的用プローブを含み、ビニルスルホン架橋剤によって架橋されて架橋バイオポリマーを形成する生体適合性ヒアルロン酸ポリマーであって、10K〜1.5Mの分子量を有し、生体適合性ポリマー:架橋剤の架橋比が4:1〜1:4の間であり、架橋バイオポリマーが内部移行を調節するために約200nmを超える直径を有する、生体適合性ヒアルロン酸ポリマー;架橋バイオポリマーと接触するリガンドであって、1又は2以上の細胞表面標的と相互作用する、リガンド;TGF−β1及びTGF−β3から選択され、ポリマーターゲティングプローブに結合する、1又は2以上のTGF活性薬剤であって、より高い軟骨細胞への分化を惹起するために放出される、1又は2以上のTGF活性薬剤;並びに、架橋剤、第1の生体適合性ポリマー、リガンド又はそれらの組合せと接触する、第3の検出可能なタグを含む、軟骨細胞への分化を増加させることによって損傷軟骨を処置する医薬として使用するための軟骨分化プローブを含んでいてもよい、損傷軟骨の標的化処置(targeted treatment)に関する医薬として使用するための損傷軟骨プローブを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の特徴及び利点のより完全な理解のために、以下の添付の図面に従って発明の詳細な説明について以下に参照を作成する:
【
図1】
図1AはDLS(左)によるHAナノ粒子キャラクタリゼーションのサイズ分布のプロットであり、
図1BはSEM画像である。
【
図2】
図2A〜2Dは、正常及び活性化軟骨細胞を標的とするインビトロCD44標的用HA粒子を示す。
図2A及び2Cは、CD44標的用プローブでインキュベートしたナイーブ及び活性化(LPS処置)軟骨細胞を示す蛍光画像である。
図2Bは、CD44標的用プローブでインキュベートしたナイーブ及び活性化(LPS処置)軟骨細胞の蛍光画像強度を示す。
図2Dは、活性化軟骨細胞の数を示す。
【
図3】
図3A〜3Dは、ヒト関節炎軟骨組織を診断するCD44標的用プローブのエクスビボ評価を示す。
図3Aは関節炎軟骨組織対健常軟骨組織の蛍光画像であり、
図3Bは定量した組織関連蛍光強度を示す。
図3Cは、関節炎軟骨組織対健常軟骨組織に関して、撮像した後、細胞核画像と重ね合わせた組織断面画像であり、
図3Dは、関節炎軟骨組織及び健常軟骨組織の両方におけるCD44+細胞の数の定量を示す。
【
図4】
図4A及び4Bは、炎症性細胞を検出するFA受容体標的用プローブのインビトロ評価を示す。
図4Aは、ナイーブ細胞を対照とするLPS処置活性化マクロファージにおけるFA受容体標的用プローブの増加した蛍光強度を示す。
図4Bは、細胞関連蛍光強度と活性化マクロファージの数の間の直線関係を示すプロットである。
【
図5】
図5は、関節炎組織を診断するFA受容体標的用プローブの評価を示す画像である。本発明者らは、プローブでのインキュベーション後に、健常組織(右)においてよりも関節炎組織(左)において有意に高いプローブ蓄積を見出している。
【
図6】
図6A及び6Bは、HA分子量の効果(
図6A架橋密度:1:1);架橋密度の効果(
図6B分子量:60k)を示す、HA粒子ベースのプローブのインビトロ細胞毒性を示すプロットである。
【
図7】
図7A及び7Bは、マウス関節内注射モデルにおいて組織に対して最小毒性を惹起するHA粒子ベースのプローブの画像である、H&E染色(
図7A)及び炎症細胞数(
図7B)。
【
図8】
図8A及び8Bは、それぞれラット軟骨傷害のインビボイメージング及びその定量分析である。データは、HA粒子ベースのプローブ(CD44標的用プローブ)が、対照(健常軟骨)に対するよりも機械的な外傷で傷害を受けた軟骨に対するより高い親和性を有することを支持している。
【
図9】
図9A及び9Bは、HA粒子ベースのプローブのインビトロ分解を示す。HA分子量の効果(
図9A架橋密度:1:1);架橋密度の効果(
図9B分子量:60k)。
【
図10】
図10Aは、エクスビボでCD44標的用プローブが、傷害軟骨組織領域で優先的に蓄積することによって軟骨組織傷害及び損傷の領域を速やかに識別するために使用することができることを示す。
図10Bは、関節炎軟骨中に蓄積したプローブの量が、異なる時点で定量されたグラフである。
【
図11】
図11A及び11Bは、FA受容体標的用プローブを使用する機械的傷害軟骨の診断を示す。
図11Aは、FA受容体標的用プローブが、健常組織(下部)よりも機械的に傷害を受けた組織(上部)に優先的に蓄積することを示す画像である。
図11Bは、傷害を受けた組織及び健常組織の両方に蓄積したプローブの量が、定量され、次に比較(右)されたグラフである。
【
図12】
図12A〜12Cは、CD44標的用プローブを使用する機械的に傷害を受けた剣状突起の診断を示す。
図12Aは、機械的傷害軟骨に蓄積するが、健常なものには蓄積しないCD44標的用プローブを示す(上部)。傷害を受けた組織及び健常組織の両方に蓄積したプローブの量を、定量し、次に比較した(下部)。
図12Bはエクスビボの結果を示し、
図12Cは蛍光の定量を示す。
【
図13】
図13Aは画像であり、
図13Bは1mm直径サイズの軟骨傷害のプロット定量である。CD44標的用HA−ベースのプローブは、傷害を受けた部位で優先的に蓄積することが見出された。
【
図14】
図14は、それらの内部移行される機会へのCD44標的用プローブのサイズの影響のグラフである。本発明者らのデータは、250nmを超えるプローブが、大部分は受容体相互作用を介して関節炎組織に蓄積することを見出している。しかし、小さなプローブ(例えば、50nm直径)は、内部移行を介して関節炎組織に蓄積し、これはEDTA洗浄で除去することができない。
【
図15】
図15は、放出されたSDF1、SDF1β、及びEpoにより誘導されたヒト軟骨細胞移動を示すプロットである。
【
図16】
図16は、様々な増殖因子により誘導されたBMSC移動及び定量分析を示すプロットである。
【
図17】
図17は、それぞれ対照EPO、HA粒子から放出されたEPO及び培地により誘導されたBMSC移動のプロットである。
【
図18】
図18Aは放出されたTGFβ1及びTGFβ3によって惹起されたBMSC分化の画像であり、
図18Bはその定量分析である。
【
図19】
図19Aは、処置無しHAスキャフォールド/プローブの及び処置有りのヒト関節炎軟骨の画像である。
図19Bは、インビトロで2週間のHAスキャフォールド処置の有り又は無しの関節炎軟骨の修正Mankinスコアのプロットである。
【
図20】
図20Aは、処置無し及びEpo負荷HAスキャフォールド及び間葉系幹細胞の処置有りのヒト関節炎軟骨の画像である。
図20Bは、処置無し対インビトロで2週間のEpo負荷HAスキャフォールド及び間葉系幹細胞の処置有りの関節炎軟骨の修正Mankinスコアのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用が、以下に詳細に考察されると同時に、本発明が、多種多様な特定の関係において具体化され得る多くの適用可能な本発明の概念を提供することを認識すべきである。本明細書中に考察される特定の実施形態は、本発明を製造及び使用する特定の様式の単なる例示であり、本発明の範囲を限定しない。
【0026】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語が以下に定義される。本明細書中に定義される用語は、本発明と関連性のある領域における通常の当業者によって一般に理解されている意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数形の実体のみを指すことを意図するものではなく、特定の例が説明のために使用され得る一般的なクラスを含む。本明細書中の用語は、本発明の特定の実施形態を記載するために使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲に概説されるものを除いて本発明を限定しない。
【0027】
生体適合性及び分解性ポリマーは、ナノ又はマイクロスキャフォールドを製作するため使用することができる。このような能力を実証するために、ヒアルロン酸(HA,hyaluronic acid)を、スキャフォールド製作に関するモデル材料として使用した。
【0028】
そこで使用される、用語「マイクロ/ナノ粒子」、「ナノ粒子」、「マイクロ粒子」、「スキャフォールド」、「損傷/傷害軟骨標的用プローブ」、「ポリマーターゲティングプローブ」、「プローブ」、及びそのバリエイションは、交換可能であり、ビニルスルホンによって架橋される生体適合性ヒアルロン酸ポリマーを表すために使用され、いくつかの実施形態において、リガンド、検出可能なタグ及び/又は1若しくは2以上の活性薬剤を含み得る。
【0029】
HAマイクロ/ナノ粒子の製作。HAマイクロ/ナノ粒子は、マイクロエマルジョンシステムを使用して製作することができる。簡潔に述べると、水相を、HA(60mg、700K)を3mlのNaOH(0.2M)溶液中に溶解することによって調製し;有機相を、0.2MエアロゾルOT及び0.04M 1−ヘプタノールをイソオクタン(50ml)に溶解することによって調製した。水溶液を有機相に滴下して加え、次に混合物を直ちに10分間ホモジナイズした。ビニルスルホン(100μl)を引き続いてマイクロエマルジョンに加え、混合物を再度ホモジナイズしてDVSを分散させた。反応を、1時間、室温で激しく撹拌しながら進行させた。HA粒子を、アセトン中に沈殿することによって収集した。沈殿させたHA粒子ペレットを、DI水に再分散し、続いて1000rpmで10分遠心分離してマイクロサイズHAを除去した。最終的に、HAナノ粒子を、5000rpmでの上清の遠心分離によって収集した。収集したHAナノ粒子を、水、エタノール及びアセトンで徹底的に洗浄した後、37℃で一晩乾燥させた。CD44標的用光学ナノプローブを調製するために、50mgの調製した状態のHAナノ粒子及び1mgのCF(商標)647色素(Biotium社、CA)を、PBS緩衝液(pH:4.5;3.0ml)に順次分散し、次に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)(色素とEDCのモル比1:10で)を混合物に加えて、HAナノ粒子への色素コンジュゲーションを開始させた。24時間後、反応溶液を、DI水に対して徹底して透析し、精製されたCF(商標)647標識化HAナノ粒子を、収集し、将来使用するために乾燥させた。色素のコンジュゲーション効率は、乾燥させたHA粒子の1ミリグラム当たり10ナノモルであるとUV−vis分光計を使用して推定される。調製した状態のCD44標的用プローブ(又はHA粒子)のサイズを、動的光散乱(DLS,dynamic light scattering)及び走査型電子顕微鏡(SEM,scanning electron microscopy)(App.1)によって特徴付けた。HA粒子の平均直径は、約500nmであった。HA粒子のゼータ電位は、約−41mvであった。SEM画像は、SEM測定についての試料調製の間に乾燥に関連する粒子の収縮に起因する粒子サイズの減少(約300nm)を示す。サイズ及び表面特性などの粒子の物理化学的な特徴は、細胞取り込みにおいて重大な役割を担う。膜理論の「ラッピング時間」によると、より大きなサイズの粒子は、細胞内部移行プロセスにおいてより強力な推進力及び追加エネルギーを必要とし、より大きなサイズ(150nmを超える)を有するものは、非食作用性の細胞内部移行から大部分は除外されるであろう。以前の研究は、非食作用性細胞がより小さい粒子の取り込みを好んだことを明らかにしている。他方、負に帯電した粒子は、NPと細胞膜の間の静電気的な反発力が増加することに起因して、細胞取り込みを減少させた。したがって、調製した状態のHA粒子プローブは、非標的化細胞/組織に対して非特異的に結合する機会が少なく、より高いイメージング解像度をもたらす。したがって、ここで使用されるHA粒子プローブは、細胞膜におけるCD44受容体の標的化に適切である。
【0030】
図1AはDLS(左)によるHAナノ粒子キャラクタリゼーションのサイズ分布のプロットであり、
図1BはSEM画像である。
図2は、正常及び活性化軟骨細胞を標的とするインビトロCD44標的用HA粒子を示す。
図2A及び2Cは、CD44標的用プローブでインキュベートしたナイーブ及び活性化(LPS処置)軟骨細胞を示す蛍光画像である。
図2Bは、CD44標的用プローブでインキュベートしたナイーブ及び活性化(LPS処置)軟骨細胞の蛍光画像強度を示す。
図2Dは、細胞関連蛍光強度が、活性化軟骨細胞の増加ともに増加することを示す。インビトロで軟骨細胞におけるCD44受容体を標的とするHA粒子の能力を、ウシ軟骨細胞を使用して調査した。LPS処置(50ng/ml、24時間)を使用して、軟骨細胞を活性化して、CD44受容体を発現させた。ナイーブ及び活性化軟骨細胞(2×10
5/ウェル)を、1時間37℃で、CF(商標)647色素標識化CD44標的用HA粒子(0.1mg/ml)でインキュベートした。PBSで2回洗浄後、細胞表面におけるHAナノ粒子蓄積を、蛍光顕微鏡を使用して観察し、細胞関連蛍光強度を、プレートリーダーを使用して記録した。蛍光画像(
図2A、2C)は、LPS処置軟骨細胞が、多数のCD44標的用HA粒子に関連することを示した。定量分析は、LPS処置軟骨細胞からの蛍光強度が、対照よりも約4倍高いことをさらに明らかにした(
図2B)。これは、HA粒子が、活性化軟骨細胞において高度に上方制御されるCD44受容体と相互作用することが理由である(
図2D)。さらにまた、蛍光強度と活性化軟骨細胞数の間に直線関係が存在する。本発明者らの結果は、HA粒子が、CD44発現軟骨細胞を標的とするために使用され得ること及びCD44標的用プローブが、CD44+関節炎細胞の数を評価するために使用され得ることを支持している。
【0031】
図3は、ヒト関節炎軟骨組織を診断するCD44標的用プローブのエクスビボ評価を示す。
図3Aは関節炎軟骨組織対健常軟骨組織の蛍光画像であり、
図3Bは定量した組織関連蛍光強度を示す。
図3Cは、関節炎軟骨組織対健常軟骨組織に関して、撮像した後、細胞核画像と重ね合わせた組織断面画像であり、
図3Dは、関節炎軟骨組織及び健常軟骨組織の両方におけるCD44+細胞の数の定量を示す。炎症性、傷害を受けた又は関節炎軟骨が高レベルのCD44受容体を発現することが十分に確立されている。関節炎軟骨を標的とするCD44標的用プローブ(HA粒子)の能力を、インビトロで評価した。罹患した組織及び健常な組織の両方を、6ウェルプレートに配置した。CF(商標)647コンジュゲートCD44標的用プローブを、各ウェル(1.0mg/ml)に加え、次に37℃で30分間インキュベートした。全膝部又は臀部置換後に、廃棄したヒト関節炎及び炎症性軟骨を、この調査に使用した。関節炎及び炎症性軟骨を標的とするCD44標的用プローブの能力を、Kodakイメージングシステムを使用して定量した。本発明者らのデータは、罹患した(関節炎)組織が、対照組織(健常軟骨)よりも4倍よりCD44標的用プローブを蓄積することを示した。IHC染色(CD44染色)は、関節炎軟骨組織における増強したCD44発現を明らかにした。健常軟骨組織におけるよりも、関節炎軟骨組織において約3.8倍高いCD44が存在する。これらの結果は、CD44標的用プローブ(HA粒子)が、関節炎軟骨組織を検出するために使用することができるとの結論を支持している。
【0032】
関節炎軟骨を診断するための葉酸受容体標的用プローブ。多くの報告は、傷害を受けた軟骨、損傷された軟骨、又は罹患した軟骨が、葉酸(FA,folic acid)受容体の上方制御を有することを示している。FA受容体を標的とすることにより、本発明者らは、傷害を受けた軟骨、損傷された軟骨、又は罹患した軟骨を検出する新規プローブを開発した。軟骨組織における活性化マクロファージ及び炎症性細胞が、それらの表面に高レベルのFA受容体発現を有していることを示している。FA受容体発現細胞の程度を検出することにより、我々は、関節炎軟骨を診断できる。FA受容体は、葉酸塩及びその断片に対して高親和性を有する。プローブは、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコールなどを含む多種多様な材料を使用して製作することができる。使用される粒子には、ヒアルロン酸マイクロ又はナノサイズ粒子、キトサン粒子、ゼラチン粒子、コラーゲン粒子、アルブミン粒子、PLGA/PLA粒子及びポリエチレングリコールナノ粒子などが含まれるが、これらに限定されない。葉酸受容体標的化特性のために、プローブの表面は、葉酸塩/葉酸の全分子又は断片を保有しなければならない。可視化/視覚的な診断に関して、プローブは、FITC、Fluor(登録商標)及びCY(登録商標)などの蛍光色素でコンジュゲートされるべきである。
【0033】
FA受容体陽性炎症性細胞を検出するイメージングプローブは、FA及びFA誘導体をコンジュゲートさせた蛍光色素標識粒子で調製することができる。FA受容体標的用プローブを調製するために、FAを、EDC化学によってアミン−PEG−アミン(M
w:5K)の一端に最初にカップリングして得た。70mgのFA−PEG−NH
2及び10mgのCF(商標)647標識化HAナノ粒子を、5mlのPBS緩衝液(pH:4.5)に分散した。EDC(FAとEDCのモル比:1:10で)の付加により、CF(商標)647標識化HA粒子へのFAコンジュゲーションが開始した。24時間後、反応溶液を、DI水に対して徹底して透析し、FA受容体標的用プローブを、収集し、将来使用するために乾燥させた。FAのコンジュゲーション効率は、乾燥させたHA粒子の1ミリグラム当たり0.12マイクロモルであるとUV−vis分光計を使用して推定される。
【0034】
図4A及び4Bは、炎症性細胞を検出するFA受容体標的用プローブのインビトロ評価を示す。
図4Aは、ナイーブ細胞を対照とするLPS処置活性化マクロファージにおけるFA受容体標的用プローブの増加した蛍光強度を示す。
図4Bは、細胞関連蛍光強度と活性化マクロファージの数の間の直線関係を示すプロットである。滑膜マクロファージは、早期段階の関節炎において、炎症及び軟骨傷害の媒介に重大な役割を担う。以前の調査は、軟骨の周囲のこれらの活性化マクロファージが、骨関節炎様病状の発生に関与することを示している。加えて、活性化マクロファージが、FA受容体を発現させることは公知である。したがって、本発明者らは、関節内空間での軟骨におけるFA受容体発現細胞の測定が、早期段階の関節炎を診断する直接的な手段を提供するであろうことを信じている。この仮説を試験するために、本発明者らは、FA受容体標的用プローブ(FA−コンジュゲートHA粒子)及びマウスRaw264.7マクロファージを使用する。LPS処置(1.0μg/ml、4時間)を使用してマクロファージを活性化し、PBS培地を対照として使用した。ナイーブ及び活性化マクロファージ(6.0×10
6/ウェル)を、1時間37℃で、CF(商標)647色素標識化FA受容体標的用プローブ(0.1mg/ml)でインキュベートした。PBSで3回洗浄後、細胞表面におけるFA受容体標的用プローブの蓄積を、蛍光顕微鏡を使用して観察し、細胞関連蛍光強度を、プレートリーダーを使用して記録した。細胞関連蛍光強度を測定することにより、本発明者らは、LPS処置マクロファージが、多数のFA受容体標的用プローブに結合することを見出している(
図4A)。定量分析は、LPS処置マクロファージからの蛍光強度が、PBS処置マクロファージからのものよりも約1.5倍高いことをさらに明らかにした(
図4B)。結果は、FAの存在が、マクロファージ活性化に際して葉酸受容体の上方制御に起因する活性化マクロファージに対するHA粒子の親和性を増強することを示す。さらにまた、FA受容体標的用プローブを様々な数の活性化マクロファージとインキュベートすることにより、活性化マクロファージの数と蛍光強度の間の直線関係を観察することができる(
図4B)。これらの結果は、FA受容体標的用プローブは、インビトロで活性化MΦの数を定量するために使用することができることを示す。
【0035】
図5は、関節炎組織を診断するFA受容体標的用プローブの評価を示す画像である。本発明者らは、プローブでのインキュベーション後に、健常組織(右)においてよりも関節炎組織(左)において有意に高いプローブ蓄積を見出している。さらにまた、全膝部置換の間に回復される、廃棄したヒト関節軟骨を利用して、関節炎軟骨組織を診断するFA受容体標的用プローブの能力を探索した。罹患した軟骨及び健常組織の両方を、患者の身元と関連させることなく廃棄した組織から単離した。予想されたように、FA受容体標的用プローブは、健常組織(
図5右)におけるものよりも関節炎組織(
図5左)に対してより高い親和性を有する。これらの所見は、FA受容体標的用プローブが、関節炎軟骨組織(強い色素関連蛍光を伴う)を診断し、限局的及び標的化処置のため、関節炎軟骨の領域を識別するために使用することができることを支持している。
【0036】
イメージングプローブの関節内注射による関節炎軟骨の診断。関節内の軟骨表面における損傷又は傷害を診断するため開発されたイメージングプローブは存在しない。全ての以前のプローブは、血流を介してプローブを注射すること及び/又は送達することによって関節炎を検出するために開発された。それらの方法は、骨/軟骨界面で血管に近傍する炎症応答のみ検出することができる。軟骨組織は血管をほとんど有していないため、したがって、現在の方法は、関節内の軟骨組織の表面における細胞障害の程度を評価するために使用することができない。本発明者らのプローブは、軟骨組織の表面における傷害及び損傷を診断するために設計される。プローブが傷害軟骨表面組織のみを標的とすることを保証するために、プローブは、滑液に由来する又は滑膜細胞に対して生体適合性であるかのいずれかである全ての成分の関節内注射のため設計される。
【0037】
HA粒子を、プローブのベースとして製作した。簡潔に述べると、水相を、HA(60mg、700K)を3mlのNaOH(0.2M)溶液中に溶解することによって調製し;有機相を、0.2Mエアロゾル OT及び0.04M 1−ヘプタノールをイソオクタン(50ml)に溶解することによって調製した。水溶液を有機相に滴下して加え、次に混合物を直ちに10分間ホモジナイズした。ビニルスルホン(100μl)を引き続いてマイクロエマルジョンに加え、混合物を再度ホモジナイズしてDVSを分散させた。反応を、1時間、室温で激しく撹拌しながら進行させた。HA粒子を、アセトン中に沈殿することによって収集した。沈殿させたHA粒子ペレットを、DI水に再分散し、続いて1000rpmで10分遠心分離してマイクロサイズHAを除去した。最終的に、HAナノ粒子を、5000rpmでの上清の遠心分離によって収集した。収集したHAナノ粒子を、水、エタノール及びアセトンで徹底的に洗浄した後、37℃で一晩乾燥させた。異なる製剤を、粒子サイズ、粘性、及び徐放性:HAの分子量、及び架橋密度(HAヒドロキシル基とDVSのビニル基の比)及びHA濃度におけるいくつかのパラメータの効果を研究するために使用した。
【0038】
図6A及び6Bは、HA分子量の効果(
図6A架橋密度:1:1);架橋密度の効果(
図6B分子量:60k)を示すHA粒子ベースのプローブのインビトロ細胞毒性を示すプロットである。これらのHA粒子ベースのプローブの毒性を、インビトロ及びインビボで調査した。インビトロ試験において、HA粒子の細胞毒性を、Alamar Blueアッセイを使用してヒト軟骨細胞において評価した。簡潔に述べると、播種した細胞(1ウェル当たり5000個細胞)を、24時間Alamar Blueの存在下、異なる条件下で調製したプローブの異なる濃度でインキュベートした。本発明者らは、異なる分子量又は架橋密度のいずれかで調製したプローブが、5mg/mlまでの濃度で細胞に対して明らかな毒性を示さないことを見出している。類似の実験が、ウサギ滑膜細胞において実施され、ヒト軟骨細胞において行ったのと同じ傾向を示した。これらの結果は、HA粒子ベースのプローブが、良好な細胞適合性を有することを示唆している。
【0039】
HA粒子ベースのプローブの組織適合性を評価するために、インビボ試験をマウス皮下移植モデル及びマウス関節内注射モデルを使用して実施した。マウス皮下移植モデルに関して、様々なHA粒子及び対照として供されるPLAG粒子を、Taconic Farms社(Germantown、NY、USA)からのBalb/cマウス(雄、約20g体重)の皮下に移植した。簡潔に述べると、粒子(1マウス当たり6mg/100μl)を、背部における皮下空間に投与した。移植後3及び14日、インプラント及び周囲組織を、回収し、凍結切片化し、次に組織学的に分析した。炎症細胞浸潤及びカプセル厚を、異なるプローブに対する組織反応の程度を評価するバイオマーカーとした。本発明者らは、分子量又は架橋密度と無関係に、全てのHA粒子ベースのプローブの生体適合性が、PLGA粒子のものに匹敵する又はさらにより良好であることを見出している。PLGAはFDA承認の材料であり、したがって、これらの調製した状態のHA粒子は、動物のインビボ研究に使用され得る。
【0040】
図7A及び7Bは、マウス関節内注射モデルにおいて組織に対して最小毒性を惹起するHA粒子ベースのプローブの画像である、H&E染色(
図7A)及び炎症細胞数(
図7B)。さらに、HA粒子ベースのプローブに対する組織応答を、マウス関節内注射モデルを使用して実施した。本発明者らは、本発明者らが調製した全てのプローブが、関節の組織に対して毒性を示さない/最小の毒性を示すことを見出している。代表的な結果は、
図7A及び7Bに示される。H&E染色から、様々な分子量で調製されたプローブは、生理食塩水が行うのと類似する炎症細胞動員を惹起する。インビトロ及びインビボの結果を一緒に考慮して、本発明者らは、HA粒子ベースのプローブが、細胞及び組織に対して安全であるとの結論を引き出すことができる。
【0041】
図8Aは、ラット軟骨傷害のインビボイメージング及びその定量分析(
図8B)である。データは、HA粒子ベースのプローブ(CD44標的用プローブ)が、対照(健常軟骨)に対するよりも機械的な外傷で傷害を受けた軟骨に対するより高い親和性を有することを支持している。
【0042】
最終的に、軟骨傷害ラットモデルを、粒子プローブがインビボで軟骨傷害を検出するために使用することができるかどうかを調査するために利用した。第一に、ラット(n=3)の左膝部における大腿軟骨傷害が22G針を使用して作り出され、右膝部は非傷害のまま対照として残存させた。100μlのHA粒子ベースのプローブ(1mg/ml)を、関節内に注射した。30分後、インビボイメージングを、Kodakインビボイメージングシステムを使用して取得し、結果は
図8に提示される。強い蛍光シグナルは機械的傷害軟骨に関連し、非常に弱いシグナルは対照膝部において可視化されることを観察することができる(
図8A)。定量分析は、傷害軟骨におけるおおよそ4倍高い粒子蓄積を示す(
図8B)。結果は、HA粒子ベースのプローブ(CD44標的用プローブ)が、インビボで軟骨傷害を検出するために、関節内に投与することができることを支持している。本発明者らのプローブは、血流を通過することなく、傷害及び損傷軟骨を検出することができる。
【0043】
分解性を有するプローブ。ヒトでの使用の安全性を保証するため及び潜在的な異物反応を回避するために、関節炎診断プローブは、生分解性材料を使用してプローブを製作することによって、生分解性を保有するように設計される。プローブは、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール、キトサン粒子、ゼラチン粒子、コラーゲン粒子、アルブミン粒子、PLGA/PLA粒子及びポリエチレングリコールナノ粒子などを含む、異なる生分解性材料を使用して製作される。
【0044】
図9A及び9Bは、HA粒子ベースのプローブのインビトロ分解を示す。HA分子量の効果(
図9A架橋密度:1:1);架橋密度の効果(
図9B分子量:60k)。調製した状態のHA粒子ベースのプローブの分解を、インビトロでヒアルロニダーゼ(50単位/ml)の存在下で試験した。ヒアルロニダーゼの存在下でのHA粒子ベースのプローブの分解プロファイルが、HA分子量又は架橋密度のいずれかに依存することを観察することができる。より高い分子量で調製されたHAプローブは、より低い分子量で調製されたものよりも迅速に分解し、架橋密度を増加させることにより、HA粒子ベースのプローブの分解速度は減少する。これは、より高い分子量又はより低い架橋密度で作製されたHA粒子ベースのプローブが、より高い腫脹比を示し、これにより酵素がネットワークを切断するマイクロスキャフォールドにより容易に浸透することを可能にすることが理由であり得る。これらの結果は、本発明者らのイメージングプローブが身体内側で分解性であり得、複数の注射後に身体内側に本発明者らのプローブが蓄積するリスクは存在しないことを支持している。
【0045】
迅速な検出(15分未満)のためのプローブ。関節炎診断プローブは、迅速な疾患診断を提供するために設計される。そのように行うために、プローブは、罹患した軟骨に対して高親和性を有させるため及び疾患組織の迅速な可視化を提供するために設計される。現在、12時間未満の間に、軟骨傷害及び損傷を検出するために使用することができるイメージングプローブは存在しない。この弱点を克服するために、本発明者らのプローブは、関節内側に投与され、滑液中で循環し、最終的に傷害軟骨の表面に蓄積するものとして開発された。そのために、本発明者らはプローブの成分としてヒアルロン酸(HA)を選択したが、それは、HAが、滑液中の主な成分の1つであるからである。
【0046】
図10Aは、エクスビボでCD44標的用プローブが、傷害軟骨組織領域で優先的に蓄積することによって軟骨組織傷害及び損傷の領域を速やかに識別するために使用することができることを示す。
図10Bは、関節炎軟骨中に蓄積したプローブの量が、異なる時点で定量されたグラフである。関節炎軟骨を診断するHA粒子ベースのプローブ(CD44標的用プローブ)の能力を調査した。そのために、ヒト関節炎軟骨組織を、6ウェルプレートに配置した。各ウェルに関して、CF(商標)647色素標識化CD44標的用プローブ(終濃度:100又は300μg/ml)を含有する6mlのDMEM培地を、ウェルプレートに加え、37℃でインキュベートした。様々な時点で、プレーティングしたウェルを、組織の蛍光強度(励起:630nm;発光:700nm)を記録するために、携帯型の近赤外線イメージングシステムに配置した。結果は、プローブ濃度に関係なく、CD44標的用プローブは、関節炎軟骨組織(組織の右上の隅)に迅速に蓄積することができることを示している(
図10A)。インキュベーション10分後、経時的に蛍光強度の有意な増加は存在しない。この時点で、関節炎軟骨組織は、健常組織よりも約3倍高いプローブ蓄積を惹起する。類似する結果が、葉酸受容体標的用プローブについて観察された。全体的に見て、本発明者らの結果は、本発明者らのプローブが、関節炎軟骨の領域を迅速(15分未満)に識別することに使用することができることを示している。
【0047】
図11A及び11Bは、FA受容体標的用プローブを使用する機械的傷害軟骨の診断を示す。
図11Aは、FA受容体標的用プローブが、健常組織(下部)よりも機械的に傷害を受けた組織(上部)に優先的に蓄積することを示す画像である。
図11Bは、傷害を受けた組織及び健常組織の両方に蓄積したプローブの量が、定量され、次に比較(右)されたグラフである。
【0048】
機械的な又は圧迫性外傷のためのプローブ。関節炎は、異なる機構によって引き起こされ得る。いくつかの検出方法が関節炎症について開発されたにもかかわらず、機械的な及び/又は圧迫性外傷によって引き起こされる軟骨傷害を検出するために開発された方法は存在しない。そのようなギャップを克服するために、ここでのプローブ開発は、機械的及び/又は圧迫性傷害軟骨の特質である、CD44及び/又は葉酸受容体を標的とするために設計される。
【0049】
ヒト関節における健常軟骨は、インビボで15〜20MPaと同じ程度の強さまでの標準的な機械的衝撃を繰り返し受ける。より高い物理的な衝撃は、組織傷害をもたらし得、最終的には軟骨分解が引き起こされ得る。軟骨傷害の早期検出は、非外科的な処置を使用して不可逆的な軟骨分解を防止するために極めて重要である。FA受容体標的用プローブが、機械的な負荷によって生成される軟骨傷害を検出するために使用することができるかどうかを調査するために、以前の研究による、機械的に傷害を受けたウシ軟骨外植片のインビトロモデルを利用した。簡潔に述べると、軟骨外植片ディスク(8×4mm、1mm厚)を、2週齢子ウシの大腿膝蓋の溝から得た。その後、軟骨外植片を、DMEM培養培地中で7日間培養した。それらの中で、いくつかの外植片を、14〜20MPaで2.0分、止血薬を使用して又は軟骨組織の上部にステンレスロッドを配置して、外植片をクランプすることによって傷害を受けた外植片を生成するために使用した。機械的に傷害を受けた組織及び対照健常組織を、15分間、37℃で、1ウェル当たり3mlのDMEM(CF(商標)647色素標識化FA受容体標的用プローブ、0.4mg/ml)を含有する6ウェルプレートのウェルに配置した。最終的に、これらの組織のエクスビボイメージングを、携帯型の撮像装置を使用して取得した。結果は、かなり強い蛍光強度が、傷害を受けていない組織からよりも傷害を受けた組織から観察されることを示している(
図11A)。軟骨外植片に対する機械的な衝撃は、約4倍高いFA受容体標的用プローブ蓄積を惹起する(
図11B)。類似する結果が、CD44受容体標的用プローブについて観察される。これらの結果は、FA受容体標的用プローブ及びCD44標的用プローブ両方が、機械的な衝撃関連の軟骨傷害を検出するために使用することができることを主張する。
【0050】
図12A〜12Cは、CD44標的用プローブを使用する機械的に傷害を受けた剣状突起の診断を示す。
図12Aは、機械的傷害軟骨に蓄積するが、健常なものには蓄積しないCD44標的用プローブを示す(上部)。傷害を受けた組織及び健常組織の両方に蓄積したプローブの量を、定量し、次に比較した(下部)。
図12Bはエクスビボの結果を示し、
図12Cは蛍光の定量を示す。機械的傷害軟骨を検出するCD44標的用プローブの能力を、確立された剣状突起傷害モデルを使用して試験した。剣状突起を、14〜20MPa、2.0分の圧迫止血で傷害を受けさせた。24時間傷害を受けた後、CD44標的用プローブを、腹膜空間(循環血液のない閉鎖空間)に注射した。24時間プローブ注射後、動物を、次にKodakインビボイメージングシステムを使用してイメージングした。本発明者らの結果は、CD44標的用プローブが、生きた動物の内側の機械的傷害軟骨組織を診断することができることを見出した。
【0051】
小さい傷害(1mm又はそれ以上)のためのプローブ。今までのところ、傷害又は損傷軟骨の小さい領域に関連する、関節炎の早期段階を検出し、次に処置する方法は、開発されていない。本発明者らのプローブは、機械的な又は圧迫性の力を介して軟骨に小さい及び局在型の傷害を受けたことによって引き起こされることが多い、関節炎の早期段階を診断するために設計される。機械的な力は、細胞障害及び活性化を引き起こして、異なる程度のCD44受容体及び/又は葉酸(FA,folate acid)受容体を発現させる。高レベルのCD44受容体又はFA受容体を有する領域を識別することによって、本発明者らのプローブは、非常に小さい及び局在型の機械的な又は圧迫性の力で誘導された傷害を識別するために使用することができる。
【0052】
図13Aは画像であり、
図13Bは1mm直径サイズの軟骨傷害のプロット定量である。CD44標的用HA−ベースのプローブは、傷害を受けた部位で優先的に蓄積することが見出された。CD44受容体標的用プローブ(CF(商標)647色素標識化を有する)を、20MPa、2分間で、ステンレススチールロッド(1mm直径)によって引き起こされる軟骨表面傷害を検出するために使用した。プローブ溶液(0.4mg/ml)を、次に15分間、全組織の上部に配置した。組織の蛍光画像を、次に携帯型の撮像装置を使用して記録した。本発明者らは、軟骨の傷害を受けた部位において強い蛍光シグナルを観察することができることを見出している。本発明者らの結果は、本発明者らのプローブが、軟骨表面に1mm直径と同じ程度小さい傷害を検出できることを示している。この能力により、我々は、改善された治療転帰のために、傷害軟骨の領域にのみ処置を送達することが可能になる。
【0053】
最小の内部移行なしの表面分子のためのプローブ(200nmを超える)。全ての現存するプローブは、ナノメートルサイズ(100nm未満)に製作される。残念ながら、そのような小さいサイズを有するプローブは、細胞によって容易に内部移行され得る。この特性は傷害診断の正確さに影響する、というのも、プローブの蓄積が、細胞表面の標的化又は細胞内部移行によって引き起こされるかどうかを区別することが困難であろうからである。そのような弱点を克服するために、本発明者らのプローブは、内部移行(又は細胞によって摂食される)される機会が実質的により少ない、サブマイクロメートルサイズに製作される。
【0054】
本発明者らは、粒子:細胞受容体相互作用を放出させるためにキレーター(EDTA)を使用した。しかし、プローブが細胞によって内部移行されると、そのような処置はプローブを洗浄して除去することができず、細胞はプローブの蛍光強度を保持する。
【0055】
図14は、それらの内部移行される機会へのCD44標的用プローブのサイズの影響のグラフである。本発明者らのデータは、250nmを超えるプローブが、大部分は受容体相互作用を介して関節炎組織に蓄積することを見出している。しかし、小さなプローブ(例えば、50nm直径)は、内部移行を介して関節炎組織に蓄積し、これはEDTA洗浄で除去することができない。ヒト関節炎軟骨組織を、6ウェルプレートに配置した。各ウェルに関して、2つの異なるサイズのCF(商標)647色素標識化CD44標的用プローブ(250ナノメートル直径対50ナノメートル直径)を含有する6mlのDMEM培地を、300μg/ml、37℃で60分インキュベートした。組織を、次に0.05% EDTAを有するDMEM培地でインキュベートした。様々な時点で、プレーティングしたウェルを、組織の蛍光強度(励起:630nm;発光:700nm)を記録するために、Kodakインビボイメージングシステムに配置し、結果を
図14に示した。
【0056】
本発明者らは、50nmサイズのプローブでインキュベートした組織が、250nmプローブでインキュベートした組織よりも、それらの蛍光強度をかなり良好に保持していることを見出している。これらの結果は、より大きなサイズのプローブが、小さいサイズのプローブよりも、内部移行の機会を減少させることができ、関節炎診断についてより良い機会を有し得ることを支持している。したがって、全ての本発明者らのプローブは、200nmを超えるサイズで製作される。
【0057】
軟骨細胞を動員するためのプローブ。本発明者らのゴールは、軟骨傷害を受けた部位への軟骨細胞の動員を惹起することである。次に、軟骨細胞の存在が傷害軟骨組織及び細胞の修復の助けとなるであろう。傷害軟骨組織/細胞標的用HA粒子は、軟骨細胞特異的ケモカインを負荷される。傷害を受けた組織部位を放出することにより、放出されたケモカインは、軟骨組織傷害の部位に軟骨細胞の動員に指し向けるためのケモカイン勾配を生じる。
【0058】
HAスキャフォールドからの放出された生体分子に関連した軟骨細胞移動の調査。
図15は、放出されたSDF1、SDF1β、及びEpoにより誘導されたヒト軟骨細胞移動を示すプロットである。放出されたEPO、SDF−1α及びSDF−1βを、700μlの無血清軟骨細胞増殖培地(EPO、SDF−1α及びSDF−1βの最終濃度:10単位/ml,10ng/ml及び10ng/ml)に加え、次に馴化培地を、transwellのボトムチャンバーに移した。200μlの無血清軟骨細胞増殖培地中の2×10
5ヒト軟骨細胞を、トップチャンバーに配置した。24時間インキュベーション後、移動した軟骨細胞を、Wright-Geimsaで染色し、顕微鏡下で計数した。結果を
図15に示した。興味深いことに、放出されたケモカインが、ヒト軟骨細胞の移動を促進することができることも発見された。定量分析により、対照培地よりも、おおよそ4.9、3.7及び4.2倍高い細胞移動が存在することが示された。これらの結果は、傷害軟骨細胞の部位でケモカインを放出することによって、HAスキャフォールドが、傷害を受けた部位に幹細胞、軟骨細胞又は両方のタイプの細胞の動員を促進し得ることを示唆している。この「ボーナス」は、傷害軟骨組織の再生をさらに増強し得る。
【0059】
幹細胞を動員するためのプローブ。本発明者らのゴールは、軟骨傷害を受けた部位への幹細胞の動員を惹起することである。次に、幹細胞の存在が傷害軟骨組織及び細胞の修復の助けとなるであろう。傷害軟骨組織/細胞標的用HA粒子は、幹細胞特異的ケモカインを負荷される。傷害を受けた組織部位を放出することにより、放出されたケモカインは、軟骨組織傷害の部位に幹細胞の動員に指し向けるためのケモカイン勾配を生じる。
【0060】
様々な増殖因子によって惹起される幹細胞移動の調査。
図16は、様々な増殖因子により誘導されたBMSC移動及び定量分析を示すプロットである。5種の増殖因子(SDF、EPO、VEGF、CCL2及びCCL16)を、使用した。調査を通して、大部分の量の幹細胞を動員することができる、2〜3つの増殖因子が、選択される。これを行うために、細胞移動アッセイを、Transwell(8μmポリカーボネート、6.5mmインサート、Costar社)を使用して行った。ヒト骨髄ストローマ細胞(BMSC,human bone marrow stromal)を、PBSで三度洗浄し、次にRPMI中に一晩プレーティングした。全ての実験において、5×10
4細胞を、RPMI(100μl)中に再懸濁し、それぞれrHuEPO(100単位/ml)、CCL2(30ng/ml)、CCL16(30ng/ml)、SDF(9ng/ml)及びVEGF(0.8μg/ml)でインキュベートした。細胞を、各移動チャンバーの上部に加え、下のチャンバー中に10%FCSの存在下で14hチャンバーの下面に移動させた。フィルターの上部表面を、細胞を拭き清浄にし、フィルターを次に100%メタノール中に浸漬することによって固定し、ギムザで15分間染色した。移動した細胞を、明視野で顕微鏡を使用して取得した。取得された画像から、移動した細胞を、ImageJソフトウェアを使用して計数した。結果をApp.16に示した。EPO及びSDFが、CCL16、CCL2及びVEFGよりも、かなりより多くのBMSC移動を惹起することを観察することができる。定量分析は、対照と比較して、CCL16、CCL2、VEGF、SDF及びEPOが、それぞれ5.2、7.6、7.8、18及び19倍高い細胞移動を惹起することを示す。したがって、EPO及びSDF(1α及び1β)は、細胞移動を動員するために使用することができる。
【0061】
HAスキャフォールドからの放出された生体分子に関連した幹細胞移動の調査。
図17は、それぞれ対照EPO、HA粒子から放出されたEPO及び培地により誘導されたBMSC移動のプロットである。生体分子を、物理吸着及び化学的なコンジュゲーションの2つの様式においてHAスキャフォールドに負荷した。物理吸着に関して、1mgのHAスキャフォールド(直径500nm)を、一晩、4℃で、200μlのPBS緩衝液中の7μgのEPOでインキュベートした。上清を遠心分離によって収集し、遊離EPO量をEPOの負荷効率を決定するために測定した。化学的なコンジュゲーションに関して、1.0mgのHAスキャフォールド(直径500nm)及び7μgのEPOを、200μlのPBS緩衝液(pH:4.5)に順次分散し、次に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(EPOとEDCのモル比1:10で)を混合物に加えて、HAスキャフォールドへのEPOコンジュゲーションを開始させた。24時間インキュベーション後、EPO負荷HAスキャフォールドを、DI水に対して徹底して透析することで精製した。SDF−1α/SDF−1β負荷HAスキャフォールドも、類似する方法を使用して調製した。
【0062】
例として、EPO負荷HA粒子を、幹細胞移動を惹起するために使用した。その目的のため、EPOを、物理的な方法によってHA粒子に負荷した。200単位のEPOを含有する0.1mgのHA粒子をRPMI培地に加え、次にEPO負荷HA培地を2日間、37℃でインキュベートした。上清を、遠心分離によって収集し、transwell移動アッセイによる幹細胞移動研究のために使用した。新鮮なEPO(200単位)及び培地を、対照として使用した。結果をApp.17に示した。放出されたEPOが、幹細胞移動を惹起することができることを観察することができるが、新鮮なEPOと比較して移動した幹細胞におけるわずかな減少(約8%)が存在する。この移動した幹細胞の減少は、HA粒子からの不完全なEPO放出に起因し得る。
【0063】
軟骨細胞への分化に指し向けるためのスキャフォールド。幹細胞を、異なる因子/カクテルを使用して軟骨細胞に分化させることができることは十分に確立されている。軟骨の傷害を受けた部位で軟骨形成因子を放出させることにより、傷害軟骨標的用プローブが、動員された幹細胞の軟骨細胞への分化を促進させるために作製される。傷害軟骨標的用プローブは、軟骨細胞への分化微小環境を作り出し、動員された幹細胞の軟骨細胞への分化を促進するために、軟骨細胞への分化因子で(物理的又は化学的に)負荷される。
【0064】
幹細胞分化の調査は、HAスキャフォールドからの放出された生体分子に関連した。
図18Aは放出されたTGFβ1及びTGFβ3によって惹起されたBMSC分化の画像であり、
図18Bはその定量分析である。さらなる研究も行って、ケモカイン負荷HAスキャフォールドの能力を評価し、移動した幹細胞の軟骨細胞への分化を促進した。移動したBMSCを、対照としての培養培地、HA(直径500nm)から放出された10ng/mlの濃度でのTGF−β1及びTGF−β3でインキュベートした。3週間培養後、軟骨マトリックス形成の程度を、次にトルイジンブルー染色を使用して定量的に分析した。結果を
図18に示した。TGF−β1は、TGF−β3よりも、幹細胞のわずかに高い軟骨細胞への分化を惹起する。これらの結果は、TGF−β1及びTGF−β3のようなケモカイン因子を放出させることによって、軟骨又は滑膜幹細胞が、傷害軟骨に移動し、組織を再生することができることを示す。
【0065】
軟骨組織再生における傷害軟骨標的用HAスキャフォールドの調査。関節炎軟骨組織を、HA粒子スキャフォールドで2週の期間にわたってインキュベートした。組織を、次に切片化し、サフラニン−Oで染色した。軟骨傷害の程度を、次に修正Mankin分類体系に基づいて定量した。
図19Aは、対照の傷害を受けた組織の画像であり、HA粒子処置した傷害を受けた組織の画像である。画像は、HA粒子の処置が、軟骨細胞及び組織の再生を促進することができることを示す。修正Mankinスコア(
図19B)は、HAスキャフォールド処置が、おそらく軟骨再生を惹起することによって、傷害軟骨を有意に減少させることを支持している。傷害軟骨標的用HA粒子スキャフォールドの蓄積が、周囲の健常組織から傷害を受けた部位に移動する軟骨細胞の移入を促進し得る蓋然性が高い。
【0066】
軟骨組織再生における、EPOを負荷し、間葉系幹細胞(MSC,mesenchymal stem cell)でインキュベートした、傷害軟骨標的用HAスキャフォールドの調査。関節炎軟骨組織を、HA粒子スキャフォールドで2週の期間にわたってインキュベートした。組織を、次に切片化し、サフラニン−Oで染色した。軟骨傷害の程度を、次に修正Mankin分類体系に基づいて定量した。
図20Aは、対照の傷害を受けた組織の画像であり、HA粒子処置した傷害を受けた組織の画像である。画像は、HA粒子の処置が、軟骨細胞及び組織の再生を促進することができることを示す。修正Mankinスコア(
図20B)は、EPO負荷HAスキャフォールドとMSCの組合せ処置が、おそらく幹細胞性の軟骨再生を惹起することによって、傷害軟骨を大幅に減少させることを支持している。HA粒子スキャフォールドが、傷害軟骨を標的とし、次にEPOを放出し、これにより傷害軟骨におけるMSC蓄積をもたらし得る蓋然性が高い。結果として、処置は、幹細胞の軟骨細胞応答、次に軟骨再生を有意に改善する。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲に使用されるように、用語「含む(comprising)」及び含む(comprising)の任意の形態、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有する(having)」(及び有する(having)の任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(及び含む(including)の任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)又は「含有する(containing)」(及び含有する(containing)の任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、未記載の要素又は方法ステップを排除しない。本明細書中に提供される組成物及び方法のいずれかの実施形態において、「含む(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」で置きかえてもよい。本明細書中に使用されるように、語句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特定の整数又はステップ並びに請求項に係る発明の形質(character)又は機能に実質的に影響しないものを必要とする。本明細書中に使用されるように、用語「からなる(consisting)」は、記載の整数(例えば、特徴、要素、特質(characteristic)、特性、方法/プロセスステップ又は限定)又は整数の群(例えば、複数の特徴、複数の要素、複数の特質、複数の特性、複数の方法/プロセスステップ又は限定)のみの存在を示すために使用される。
【0068】
本明細書中に使用されるように、限定されることなく、「約」、「実質的な」又は「実質的に」などの近似の用語は、そのように修飾されることが、必ずしも絶対的に又は完全に理解されないが、通常の当業者に対して、その条件が存在しているとして指定されることが保証されるほど十分に近いと考えられるであろう条件を指す。説明が変動し得る程度は、どれほど大きい変化が起こり得、当業者に、必要とされる特質及び未修飾の特徴の能力をなおも有しているとして、修飾される特徴がなおも認識されるかに依存する。先行する考察の対象であるが、一般に、「約」などの近似の用語によって修飾される、本明細書中の数値は、明記される値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%まで変動し得る。