(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指固定部材は、前記指受入部の下面及び両側面に配置され、3方向から前記指を固定するものであることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の描画装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1(a)及び
図1(b)から
図8を参照しつつ、本発明に係るネイルプリント装置(描画装置)及びネイルプリント装置(描画装置)の描画方法の第1の実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、ネイルプリント装置1は手の指の爪を描画対象として、これに描画するものとして説明するが、本発明の描画対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を描画対象としてもよい。
【0012】
図1(a)は、ネイルプリント装置の内部構成を示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示されたネイルプリント装置の内部構成を示す側面図である。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態におけるネイルプリント装置1は、描画ヘッド43が描画用具であるペン41とインクジェットヘッド71とを備え、プロッタ方式とインクジェット方式とを併用して爪Tに描画を施す描画装置である。
このネイルプリント装置1は、ケース本体2と、このケース本体2に収容される装置本体10とを備えている。
【0013】
図1(b)に示すように、ケース本体2には、その上面から上部前面にかけて、後述する描画部40のペン41及びインクジェットヘッド71を交換するために開閉可能に構成された蓋部23が設けられている。蓋部23は、例えばヒンジ等を介して、
図1(b)に示すように閉状態から開状態まで回動自在となっている。
【0014】
ケース本体2の上面(天板)には操作部25(
図3参照)が設置されている。
操作部25は、ユーザが各種入力を行う入力部である。
操作部25には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、爪Tに描画するデザイン画像を選択するデザイン選択釦、描画開始を指示する描画開始釦等、各種の入力を行うための図示しない操作釦が配置されている。
【0015】
また、ケース本体2の上面(天板)のほぼ中央部には表示部26が設置されている。
表示部26は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態において、この表示部26には、例えば、印刷指U1を撮影して得た爪画像(爪Tの画像を含む指画像)、この爪画像中に含まれる爪Tの輪郭線等の画像、爪Tに描画すべきデザイン画像を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面等が適宜表示される。
なお、表示部26の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。
【0016】
装置本体10は、ほぼ箱状に形成され、ケース本体2の内部下方に設置された下部機枠11と、この下部機枠11の上方で且つケース本体2の内部上方に設置されている上部機枠12とを備えている。
【0017】
まず、下部機枠11について説明する。
下部機枠11は、背面板111、底板112、左右一対の側板113a,113b、X方向移動ステージ収容部114、Y方向移動ステージ収容部115及び隔壁116を有する。
側板113a,113bの下端部は、底板112の左右両端部にそれぞれ連結され、側板113a,113bが底板112に対して立てられた状態に設けられている。
背面板111の下部は、前方(指挿入方向手前側)に向かって2段に窪むように形成されている。背面板111の下端部は底板112の前端部に連結されており、背面板111は、底板112と側板113a,113bによって囲われた領域を前後に区切っている。
この窪んだ背面板111の後ろ側に形成される空間がX方向移動ステージ収容部114、Y方向移動ステージ収容部115(
図1(b)参照)となっている。X方向移動ステージ収容部114内には、描画部40が前方(指挿入方向手前側)に移動した際に描画部40のX方向移動ステージ45が収容される。また、Y方向移動ステージ収容部115内には、描画部40のY方向移動ステージ47が配置されている。
また、隔壁116は、下部機枠11の内部前方側の空間(背面板111、底板112及び側板113a,113bによって囲われた指挿入方向手前側の空間)を上下に区切るように下部機枠11の内側に設けられている。隔壁116はほぼ水平に設けられ、隔壁116の左右両端部が側板113a,113bにそれぞれ連結され、隔壁116の後端部が背面板111に連結されている。
【0018】
この下部機枠11には、指固定部30(
図1(b)参照)が一体的に設けられている。
指固定部30は、描画を施す爪T(すなわち描画対象)に対応する指(以下、これを「印刷指U1」という。)を受け入れる指受入部31と、この印刷指U1以外の指(以下、これを「非印刷指U2」という。)を退避させる指退避部32と、から構成されている。
指受入部31は、隔壁116の上側であって、例えば、下部機枠11の幅方向のほぼ中央に配置されている。また、隔壁116によって下部機枠11の下側に区分けられた空間が指退避部32を構成している。
例えば、薬指の爪Tに描画を施す場合には、指受入部31に印刷指U1としての薬指を挿入し、非印刷指U2であるその他の4指(親指、人差し指、中指、小指)を指退避部32に挿入する。
ユーザは指受入部31に挿入した印刷指U1と指退避部32に挿入した非印刷指U2との間に隔壁116を挟むことができる。そのため、指受入部31内に挿入された印刷指U1が安定して固定される。
【0019】
図2(a)及び
図2(b)は、本実施形態における指受入部31の要部斜視図である。
図2(a)及び
図2(b)では、指受入部に挿入された印刷指U1を二点鎖線で示している。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、指受入部31は、隔壁116の一部によって構成され描画を施す爪Tの指(印刷指U1)をXY平面上に載置する指載置部310と、この指載置部310の上にねじ等によって固定された指固定ケース311とで構成されている。
指固定ケース311は、隔壁116への取り付け側である下側及び装置前面側に配置される側(印刷指挿入方向の手前側)が開口したほぼ箱形の部材である。
【0020】
指固定ケース311の奥側には、爪置台311aが設けられている。爪置台311aは、印刷指U1の爪Tの先を載せることで描画時における爪Tの高さ位置を規定するものである。なお、爪置台311aは指固定ケース311に一体的に設けられていてもよいし、例えばゴムや各種合成樹脂等によって別部材として形成されたものを指固定ケース311の奥側に貼着等により固定したものであってもよい。
また、指固定ケース311の上面であって印刷指挿入方向の手前側は、印刷指U1の高さが上がり過ぎるのを防ぐ指押さえ部311bとなっており、指固定ケース311の上面であって印刷指挿入方向の奥側は、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tを露出させるための窓部311cとなっている。
本実施形態では、爪Tの先端部が爪置台311aに載るとともに、印刷指U1の上側が指押さえ部311bの下面に当接する位置(高さ位置)にある状態が、爪Tに対して後述する描画部40のペン41及びインクジェットヘッド71による描画を適切に行うことができる描画可能位置となっている。
指押さえ部311bは、単なる板状の部であってもよいし、印刷指U1の上側が当接する部分(すなわち、指固定ケース311における内側の面)に樹脂等で形成された緩衝材が設けられていてもよい。このように指押さえ部311bの内側の面に緩衝材を設けることにより、印刷指U1が押し上げられ指押さえ部311bに突き当てられたときに衝撃や痛みを感じにくくなり、好ましい。
【0021】
また、本実施形態における指受入部31内には、印刷指U1を固定する指固定部材312が配置されている。本実施形態の指固定部材312は、内圧を変化させることにより膨縮可能に構成され、膨張状態において印刷指U1を固定するものである。
指固定部材312は、例えばウレタン樹脂のシート等、ある程度の伸縮性・柔軟性を有する材料により形成された袋状の部材である。
なお、指固定部材312は、空気等の流体を注入することにより内圧を高めた膨張状態では、
図2(b)に示すように、印刷指U1の上側が指押さえ部311bの下面に当接する位置まで印刷指U1を押し上げ、空気等の流体を排出することで内圧が低くなった収縮状態では、
図2(a)に示すように、印刷指U1の着脱を阻害しない大きさまで収縮可能なものであればよく、その材料は特に限定されない。
本実施形態では、指固定部材312は、指受入部31の下面(すなわち、指載置部310の上側)に配置される中央ブロック312aと、指受入部31の両側面にそれぞれ配置される一対の側部ブロック312bとからなり、これら3つのブロックは流体の流入・流出が可能な状態(すなわち、少なくとも一部が連通した状態)で連結されている。
本実施形態の指固定部材312は、このように、指受入部31の下面及び両側面に配置されるようになっており、流体を注入することで膨張状態となったときには、3方向から印刷指U1を固定する。
なお、指固定部材312の形状や大きさ、配置される範囲等は、図示例に限定されない。
例えば、本実施形態では、
図2(a)及び図(b)等に示すように、指固定部材312が爪Tの生え際あたりまでしか設けらず、指の先端部分まで設けられていないが、さらに奥側まで指固定部材312を設けてもよい。ただ、爪Tの下部分等、指の先端部分まで指固定部材312を設けた場合には、指固定部材312が膨張した際に、指の先端部分が爪置台311aよりも高い位置まで押し上げられ、描画を行うのに高すぎる位置まで窓部311cから外側に飛び出してしまうおそれがある。このため、指の先端部分まで指固定部材312を設ける場合には、少なくとも指受入部31の下面に配置される指固定部材312(本実施形態では中央ブロック312a)については爪Tの下部分まで設けないようにしたり、爪Tの下部分まで設けるとしてもその膨張具合を調整する等により、印刷指U1の先端部分が指固定部材312によって上方に持ち上がりすぎるのを防ぐ構成とすることが好ましい。
【0022】
指固定部材312には、図示しない連通管を介して指固定部材312の内部に流体(すなわち、例えば、空気等の気体や水等の液体。なお、本実施形態では以下流体が空気である場合を例として説明する。)を注入するポンプ313(
図3参照)が接続されている。
また、指固定部材312とポンプ313との間には、流体の流入・流出を調整するためのバルブ314(
図3参照)及び指固定部材312の内圧を検出することが可能なセンサ315(
図3参照)が設けられている。
本実施形態では、後述するように、指受入部31内に挿入された印刷指U1の大きさを指サイズ検出部813(
図3参照)により検出し、検出された印刷指U1の大きさに応じて、指固定調整部としての圧力調整部814(
図3参照)が印刷指U1の固定時における指固定部材312の内圧を調整するようになっており、ポンプ313、バルブ314及びセンサ315は、圧力調整部814と接続されて、その動作を制御される。
【0023】
また、隔壁116の上面であって下部機枠11の前面側の両側部には、下部機枠11の前面側を塞ぐ前壁31f(
図1(a)参照)が立設されている。また、隔壁116の上面には、この前壁31fの中央部寄りの端部から前記指受入部31に向けて狭窄し、印刷指U1を指受入部31内に案内する一対のガイド壁31g(
図1(a)参照)が立設されている。
【0024】
下部機枠11の上面であって、指受入部31の側方(ケース本体2の媒体挿出口24に対応する位置であり、本実施形態では、
図1(a)において左側)には、後述する描画ヘッド43による描画可能範囲内に、後述するペン41のペン先(先端部)413の書き出し時のかすれ等を無くすための慣らし書きを行う慣書部61が設けられている。
慣書部61は、平板状の部分であり、前述のケース本体2の媒体挿出口24から挿入された図示しない描画媒体が載置されるようになっている。
慣書部61に載置される描画媒体は、ペン先(先端部)413の慣らし書きを行うことができるものであればよく、例えば紙片である。
【0025】
下部機枠11の上面であって、指受入部31を挟んで慣書部61の逆側(本実施形態では、
図1(a)において右側)には、後述する描画ヘッド43の移動可能範囲内に、後述するペンホルダ42に対応する数(本実施形態では1つ)だけペンキャップ62が設置されている。
ペンキャップ62は、例えばゴムによって形成されており、描画部40にペン41が装着されている状態で描画を行っていないとき(非描画時)には、ペン41を下降させて、ペン先413をペンキャップ62に収容することにより、ペン先413の乾燥を防止するようになっている。
また、ペン先413がペンキャップ62に収容されたときにインクジェットヘッド71が配置される位置に対応する位置には、インクジェット保守部63が設けられている。インクジェット保守部63は、例えば後述するインクジェットヘッド71のインク吐出部(ノズル面)をクリーニングするためのクリーニング機構やインク吐出部(ノズル面)の保湿状態を保つためのキャップ機構等(いずれも図示せず)で構成されている。
なお、ペンキャップ62、インクジェット保守部63等の配置はここで例示したものに限定されない。
【0026】
描画部40は、描画ヘッド43、描画ヘッド43を支持するユニット支持部材44、描画ヘッド43をX方向(
図1(a)におけるX方向、描画装置1の左右方向)に移動させるためのX方向移動ステージ45、X方向移動モータ46、描画ヘッド43をY方向(
図1(b)におけるY方向、描画装置1の前後方向)に移動させるためのY方向移動ステージ47、Y方向移動モータ48等を備えて構成されている。
【0027】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態の描画ヘッド43には、ペン41を保持するペンホルダ42とインクジェットヘッド71を保持するインクジェットホルダ72とが隣り合って配置されている。
インクジェットヘッド71は、例えば、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクに対応する図示しないインクカートリッジと各インクカートリッジにおける描画対象(爪T)に対向する面(本実施形態では、
図1(a)等における下面)に設けられた図示しないインク吐出部とが一体に形成されたインクカートリッジ一体型のヘッドである。インク吐出部は、それぞれの色のインクを噴射する複数のノズルからなるノズルアレイを備えており、インクジェットヘッド71は、インクを微滴化し、インク吐出部から描画対象(爪T)の被描画面に対して直接にインクを吹き付けて描画を行う。なお、インクジェットヘッド71は、上記3色のインクを吐出させるものに限定されない。その他のインクを貯留するインクカートリッジ及びインク吐出部を備えていてもよい。
【0028】
本実施形態のペンホルダ42には、1本のペン41が装着可能となっている。
ペン41は、爪Tの表面を描画対象面とし、先端部が描画対象面である爪Tの表面に接触して描画を施す描画用具である。
図2(b)等に示すように、ペン41は、棒状のペン軸部411の先端側(
図2(b)において下側)にペン先413が設けられたものである。
ペン軸部411の内部は、各種インクを収容するインク収容部となっている。
ペン軸部411の内部に収容されるインクとしては、各種のインクが適用可能である。インクの粘度や色材の粒径(粒子の大きさ)等は特に限定されず、例えば、金銀のラメ入りのインクや白色のインク、UV硬化型のインクやジェルネイル、アンダーコート用インク、トップコート用インクやマニキュア液等も用いることができる。
【0029】
本実施形態において、ペン41は、例えばペン先413を爪Tの表面に押し当てることでペン軸部411内に収容されているインクが染み出して描画する、ペン先413がボールペンタイプとなったペンである。
なお、ペン41は、ボールペンタイプのものに限定されない。例えばフェルト状のペン先にインクを染み込ませて描画するサインペン(フェルトペン)タイプや、束ねた毛にインクを染み込ませて描画する筆ペンタイプのもの等であってもよい。
また、ペン先413の太さも各種のものを用意することができる。
ペン41はペンホルダ42に上方から挿通するだけで保持されている。このため、ケース本体2に設けられている蓋部23を開けて、例えば手やピンセットでペン軸部411の上端部を摘み上げ引き出す等により、容易に交換が可能である。
これにより、ユーザは、ペンホルダ42に装着するペン41を、描画したいネイルデザインに応じて色やペン先413の種類やインクの種類の異なるペン41に適宜入れ替えることで、幅広いネイルデザインを実現することができる。
ペンホルダ42の近傍には、ステッピングモータからなるペン上下用モータ426(
図3参照)等、ペン41を動作させるための機構が設けられており、ペン41は、このペン上下用モータ426の駆動によって上下方向に移動可能に構成されている。
【0030】
また、ユニット支持部材44は、X方向移動ステージ45に取り付けられたX方向移動部451に固定されている。X方向移動部451は、X方向移動モータ46の駆動によりX方向移動ステージ45上を図示しないガイドに沿ってX方向に移動するようになっており、これにより、ユニット支持部材44に取り付けられている描画ヘッド43が、X方向(
図1(a)におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に移動するようになっている。
また、X方向移動ステージ45は、Y方向移動ステージ47のY方向移動部471に固定されている。Y方向移動部471は、Y方向移動モータ48の駆動によりY方向移動ステージ47上を図示しないガイドに沿ってY方向に移動するようになっており、これにより、ユニット支持部材44に取り付けられている描画ヘッド43が、Y方向(
図1(b)におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に移動するようになっている。
なお、本実施形態において、X方向移動ステージ45及びY方向移動ステージ47は、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48と、図示しないボールネジ及びガイドとを組み合わせることで構成されている。
本実施形態では、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等により、ペン41を備える描画ヘッド43をX方向及びY方向に駆動するXY駆動部としてのヘッド移動部49が構成されている。
【0031】
描画部40におけるペン上下用モータ426、インクジェットヘッド71、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48は、後述する制御装置80の描画制御部816(
図3参照)に接続され、該描画制御部816によって制御されるようになっている。
【0032】
また、描画ヘッド43の側方には、乾燥部90が配置されている。
本実施形態では、乾燥部90は、ヘッド移動部49によって描画ヘッド43とともに移動可能に構成されている。
乾燥部90は、熱を発生させるためのヒータ91(
図3参照)と、送風のためのファン92(
図3参照)とを備え、指受入部31に置かれた印刷指U1の爪Tにファン92によって生じた風を当て、爪T上に施されたインクジェットヘッド71によるインクジェット描画、又はペン41によるプロッタ描画を乾燥させる機能を有する。
なお、乾燥部90のヒータ91は、用途に応じてON/OFF切り替えが可能となっており、ヒータ91をOFFした状態でファン92のみを回転させることもできるように構成されることが好ましい。
【0033】
また、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、上部機枠12に固定されている基板13には撮影部50が設けられている。撮影部50は、撮像装置51と、照明装置52とを備えている。
すなわち、上部機枠12には基板13が設置されており、この基板13の下面であって指受入部31のほぼ上方位置に、2つの撮像装置51が設置されている。
撮像装置51は、例えば200万画素程度以上の画素を有するものであることが好ましい。
この撮影部50は、指受入部31内に挿入されて上部の開口(すなわち、窓部311c)から見える印刷指U1の爪Tを照明装置52によって照明する。そして、撮像装置51によってその印刷指U1を撮影して、印刷指U1の爪Tの撮影画像である爪画像(爪画像を含む指の画像)を取得するものである。
2つの撮像装置51のうちの一方は、指受入部31の底面に対向して設けられており、爪Tを真上から撮影するものである。
また、撮像装置51のうちの他方は、指受入部31の底面に対して僅かに傾けて配置されており、爪Tを斜め上方向から撮影するものである。
このように、2つの撮像装置51を異なる位置・角度に配置することにより、少なくとも2つの異なる位置・角度から爪Tを撮影することができる。
【0034】
本実施形態では、異なる位置・角度に設けられた2つの撮像装置51により、異なる位置・角度から撮影された爪画像を少なくとも2枚取得する。
そして、撮像装置51によって取得されたこれらの撮影画像(爪画像)に基づいて、後述する爪形状検出部812が、xy平面上における爪Tの位置や、爪Tの輪郭(爪Tの形状)、爪Tの曲率(すなわち爪Tの湾曲形状)、爪Tの垂直位置等の爪情報を検出する。なお、異なる位置・角度から爪Tを撮影して複数枚の撮影画像(爪画像)を取得することにより、特に印刷指U1の爪Tの湾曲形状を正確に検出することが可能となる。
また、本実施形態では、少なくとも1つの撮像装置51によって取得されたこれらの撮影画像(爪及び指画像)に基づいて、後述する指サイズ検出部813が、指受入部31内に挿入された印刷指U1の大きさ(本実施形態では後述するように印刷指U1の幅)を検出する。
【0035】
照明装置52は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)等の光源である。
本実施形態において照明装置52は、基板13上であって撮像装置51の近傍に配置されており、撮像装置51による撮影の際に印刷指U1の爪Tを照明する。
なお、照明装置52を設ける数や具体的な配置等は図示例に限定されない。
撮影部50は、後述する制御装置80の撮影制御部811(
図3参照)に接続され、該撮影制御部811によって制御されるようになっている。
撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する記憶部82の爪画像記憶領域821(
図3参照)に記憶される。
【0036】
制御装置80は、例えば上部機枠12に配置された基板13等に設置されている。
図3は、本実施形態における制御構成を示す要部ブロック図である。
制御装置80は、
図3に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0037】
記憶部82には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82のROMには、爪画像(撮影画像)から爪Tの形状(輪郭)、幅方向における湾曲形状、爪の幅や長さ等の各種の爪情報を検出するための爪情報検出プログラム、爪画像(撮影画像)から印刷指U1のサイズを検出する指サイズ検出プログラム、指固定部材312の内圧を調整するための圧力調整プログラム、描画データを生成するための描画データ生成プログラム、描画処理を行うための描画プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置80によって実行されることによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、本実施形態において記憶部82には、撮影部50によって取得されたユーザの印刷指U1の爪Tの爪画像(撮影画像)を記憶する爪画像記憶領域821、爪形状検出部812によって検出された爪情報(爪Tの形状(輪郭)や爪Tの湾曲形状等)が記憶される爪情報記憶領域822、及び爪Tに描画されるネイルデザインの画像データを記憶するネイルデザイン記憶領域823、指固定部材312の圧力調整処理に必要な圧力調整情報記憶領域824等が設けられている。
【0038】
図4は、圧力調整情報記憶領域824に格納されている指幅サイズと指幅レベルとの対応関係を規定するテーブルの一例を示した図である。
本実施形態では、
図4に示すように、指幅サイズに応じて、3段階の指幅レベルに分類する例を示している。すなわち、後述する指サイズ検出部813により、印刷指U1の横幅(指幅W)が12mmよりも小さい場合には、指幅レベルを「サイズ1」とし、指幅Wが12mm以上16mm以下の場合には、指幅レベルを「サイズ2」とし、指幅Wが16mmよりも大きい場合には、指幅レベルを「サイズ3」と分類するようにそれぞれ指幅レベルが対応付けられている。
なお、指幅レベルの分類はここに例示したものに限定されず、さらに細かく分類してもよい。
また、各レベルの閾値はここに例示したものに限定されず、適宜設定される。
【0039】
また、
図5は、圧力調整情報記憶領域824に格納されている指幅レベルと圧力レベルとの対応関係を規定するテーブルの一例を示した図である。
図5に示すように、本実施形態では、
図4に規定された3段階の指幅レベルに応じて、それぞれ指幅の小さい場合ほど指固定部材312の内圧が高くなるように圧力レベル(すなわち圧力値、単位:mmHg)が設定されている。
すなわち、指幅レベルが最も小さい「サイズ1」と分類された印刷指U1については、指固定部材312の内圧が200mmHgとなるように圧力レベルを設定して印刷指U1の固定を行う。また、指幅レベルが「サイズ2」と分類された印刷指U1については、指固定部材312の内圧が150mmHgとなるように圧力レベルを設定し、指幅レベルが最も大きい「サイズ3」と分類された印刷指U1については、指固定部材312の内圧が100mmHgとなるように圧力レベルを設定して、印刷指U1の固定を行う。
なお、各指幅レベルに対応する圧力レベルは、ここに例示したものに限定されず、適宜設定される。
【0040】
制御部81は、機能的に見た場合、撮影制御部811、爪形状検出部812、指サイズ検出部813、圧力調整部814、描画データ生成部815、描画制御部816、表示制御部817、乾燥制御部818等を備えている。これら撮影制御部811、爪形状検出部812、指サイズ検出部813、圧力調整部814、描画データ生成部815、描画制御部816、表示制御部817、乾燥制御部818等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0041】
撮影制御部811は、撮影部50の撮像装置51及び照明装置52を制御して撮像装置51により、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tの画像を含む指の画像である爪画像(撮影画像)を撮影させるものである。
本実施形態では、撮影制御部811が、2つの撮像装置51によって爪Tの幅方向における複数の位置・角度(例えば、爪Tの真上と爪Tの斜め上方等)から爪Tを撮影して、複数枚の爪画像(撮影画像)を取得させる。
なお、1つの爪Tについて何枚の撮影画像を取得させるかは特に限定されないが、爪Tの幅方向における異なる位置において2枚以上の撮影画像を取得させた方が爪Tの湾曲形状まで精密に検出することが可能となるため好ましい。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、記憶部82の爪画像記憶領域821に記憶される。
【0042】
爪形状検出部812は、撮像装置51によって撮影された指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tの画像(撮影画像)に基づいて、印刷指U1の爪Tについての爪情報を検出するものである。
本実施形態において、爪形状検出部812は、撮影画像に基づいて、例えば爪Tの形状(輪郭)や爪Tの水平位置のXY座標、爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置、以下「爪Tの垂直位置」又は単に「爪Tの位置」ともいう。)、爪Tの幅方向における形状、すなわち、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの湾曲形状、爪Tの傾斜角度)等を検出する。なお、爪形状検出部812によって検出される内容はこれに限定されない。
爪形状検出部812によって取得された爪情報は、記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶される。
【0043】
指サイズ検出部813は、撮像装置51によって撮影された印刷指U1の画像(撮影画像)から、指受入部31に挿入された印刷指U1の大きさを検出する。
本実施形態では、指サイズ検出部813は、印刷指U1の大きさとして指幅Wを検出する。
また、指サイズ検出部813は、検出した印刷指U1の指幅Wを
図4に示すテーブルを参照して、3つの指幅レベル(すなわち、サイズ1〜サイズ3)に分類する。
図6は、指幅検出の手法を説明する説明図である。
図6に示すように、本実施形態では、爪Tの長さ方向の中央部における印刷指U1の横幅を指幅Wとする場合を例示している。
なお、印刷指U1のどの部分の横幅を指幅Wとするかはこれに限定されない。撮影部50により撮影が可能な部分、すなわち、窓部311cから露出している部分の横幅であれば、指幅Wとして検出することが可能である。
なお、どの部分を指幅Wとするかにより、前述の指幅レベルの設定(
図4参照)や圧力レベルの設定値(
図5参照)も適宜変更される。例えば、印刷指U1の大きさとしての指幅Wを指の第1関節(DIP関節)部分の横幅をもって検出する場合には、印刷指U1の横幅を各指幅レベル(すなわち、サイズ1〜サイズ3)に分類するための閾値の値が、爪Tの長さ方向の中央部における印刷指U1の横幅を指幅Wとする場合の値(すなわち、
図4に示した値)と比べて全体的に大きくなる可能性がある。
【0044】
圧力調整部814は、指サイズ検出部813によって検出された印刷指U1の大きさに応じて、印刷指U1の固定時における指固定部材312による固定レベルを調整する指固定調整部である。
本実施形態では、圧力調整部814は、指サイズ検出部813によって検出された印刷指U1の大きさに応じて、印刷指U1の固定時における指固定部材312の内圧を調整する。
具体的には、圧力調整部814は、
図5に示したテーブルを参照することにより、指サイズ検出部813によって分類された指幅レベル(すなわち、サイズ1〜サイズ3)に対応する圧力レベル(すなわち、圧力値)を読みだして、これを当該印刷指U1を固定するための指固定部材312の内圧値として設定する。
そして、圧力調整部814は、ポンプ313、バルブ314を制御して、設定した内圧となるまで指固定部材312内に適宜流体である空気を注入して膨張状態とさせる。
圧力調整部814には、指固定部材312の内圧を検出するセンサ315から適宜検出結果が送られており、圧力調整部814は、この検出結果から指固定部材312の内圧値が設定したレベルに達したと判断すると、ポンプ313による空気の注入を停止させる。
例えば、指サイズ検出部813により、指幅サイズが「サイズ1」と分類された印刷指U1であれば、圧力調整部814は、指固定部材312の内圧が200mmHgとなるまでポンプ313を動作させて空気を注入し、センサ315により、指固定部材312の内圧が200mmHgとなったことが検出されると、圧力調整部814は、ポンプ313による空気注入動作を停止させる。
また、当該印刷指U1へのペン41やインクジェットヘッド71による描画動作が完了すると、バルブ314を開放して指固定部材312内の空気を排出させて、指固定部材312の内圧を下げて収縮状態とさせる。
【0045】
描画データ生成部815は、爪形状検出部812により検出された爪情報に基づいて、描画ヘッド43により印刷指U1の爪Tに施される描画用の描画データを生成する。
具体的には、描画データ生成部815は、爪形状検出部812により検出された爪Tの形状(輪郭形状)等に基づいてネイルデザインの画像データを拡大、縮小、切出し等することにより爪Tの形状に合わせ込む合せ込み処理を行う。
また、描画データ生成部815は、爪形状検出部812により検出された爪Tの湾曲形状に応じて、爪Tに描画するように指定されたネイルデザインの画像データに適宜曲面補正等を行う画像データ補正部としても機能する。
これにより、ペン41やインクジェットヘッド71によって描画されるネイルデザインの描画用のデータが生成される。
【0046】
描画制御部816は、描画データ生成部815によって生成された描画データに基づいて描画部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの描画データにしたがった描画を施すように描画部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、ペン上下用モータ426、インクジェットヘッド71等を制御する制御部である。
具体的には、描画制御部816は、ペン41の非描画時にはペン41の先端部(ペン先413)が爪Tの表面に接しない高さまで上がった状態を維持し、描画時にはペン41の先端部(ペン先413)が爪Tの表面に当接する高さまで下がるようにペン上下用モータ426の動作を制御する。
また、適宜X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48を動作させることにより、描画ヘッド43をX方向、Y方向に移動させながら、爪T上の所定位置に順次描画を施す。
【0047】
表示制御部817は、表示部26を制御して表示部26に各種の表示画面を表示させるものである。本実施形態では、表示制御部817は、例えばネイルデザインの選択画面やデザイン確認用のサムネイル画像、印刷指U1を撮影して取得した爪画像、各種の指示画面、操作画面等を表示部26に表示させるようになっている。
【0048】
乾燥制御部818は、乾燥部90の乾燥動作を制御して、指受入部31に挿入され、描画が施された爪Tについて乾燥部90による乾燥処理を行わせる。
具体的には、乾燥制御部818は、乾燥部90のヒータ91及びファン92のON/OFFを適宜切り替える。また、乾燥制御部818は、適宜ヒータ91の温度制御を行い、必要に応じて、ヒータ91をOFFしてファン92のみを動作させることも可能となっている。
【0049】
次に、
図7及び
図8を参照しつつ、本実施形態におけるネイルプリント装置(描画装置)1による指固定処理及び描画方法について説明する。
【0050】
まず、
図7を参照して、ネイルプリント装置(描画装置)1による描画処理の全体的な流れを説明する。なお、ここでは、ペン41により爪Tに下地を塗布する第1の描画処理、インクジェットヘッド71により絵柄を描画する第2の描画処理、ペン41により絵柄を描画する第3の描画処理、絵柄等が描画された爪Tにペン41によりトップコートを塗布する第4の描画処理の4段階の描画処理を順次行う場合を例示している。
なお、描画処理の内容は、ここに例示したものに限定されず、これ以外の処理工程が含まれてもよいし、例えば、ペン41により爪Tに下地を塗布する第1の描画処理と、ペン41により絵柄を描画する第3の描画処理のみを行う等、上記の描画処理のうちの一部のみを行うものでもよい。
【0051】
このネイルプリント装置1により描画を行う場合、ユーザはまず、電源スイッチを入れて制御装置80を起動させる。
表示制御部817は、表示部26にデザイン選択画面を表示させ、ユーザは操作部25の操作釦等を操作して、デザイン選択画面に表示された複数のネイルデザインの中から所望のネイルデザインを選択する。これにより、操作部25から選択指示信号が出力されて爪Tに描画すべきネイルデザインが選択される。
ユーザが印刷指U1を指受入部31に挿入し、非印刷指U2を指退避部32に挿入して、操作部25の図示しない描画スイッチを操作すると、指受入部31内に印刷指U1が固定される(ステップS1)。
【0052】
描画スイッチから指示が入力されると、描画動作を開始する前に、まず撮影制御部811が撮影部50の撮像装置51及び照明装置52を制御して、撮像装置51により印刷指U1を撮影させ、爪画像(撮影画像)を取得させる(ステップS2)。
爪画像(撮影画像)が取得されると、爪形状検出部812は、爪画像(撮影画像)に基づいて爪Tの外形形状である輪郭形状を検出する。また、爪形状検出部812は、爪画像(撮影画像)に基づいて、爪Tの湾曲形状、その他の爪情報を検出する(ステップS3)。
次いで、描画データ生成部815は、爪形状検出部812により検出された爪情報に基づいて、ユーザによって選択されたネイルデザインをユーザのTに描画するための描画用データ(ネイルデザインの描画データ)を生成する(ステップS4)。
描画用データが生成されると、描画制御部816は、この描画用データを描画部40に出力し、ヘッド移動部49を動作させて適宜描画ヘッド43を移動させながら、ペン41により爪Tに下地を塗布する第1の描画処理を行わせる(ステップS5)。
第1の描画処理が終了すると、乾燥制御部818が乾燥部90の動作を制御して爪Tに塗布されたインクを乾燥させる乾燥処理を行わせる(ステップS6)。
所定時間乾燥処理が行われると、次いで、再び撮影制御部811が撮影部50を制御して、撮像装置51により爪画像(撮影画像)を取得させ(ステップS7)、爪形状検出部812により、爪画像(撮影画像)から爪Tの輪郭形状等の爪情報が検出される(ステップS8)。そして、この爪情報に基づいて、描画データ生成部815が次の描画処理(すなわち第2の描画処理)を行うための描画用データを生成し(ステップS9)、生成された描画用データに基づいて、インクジェットヘッド71により絵柄を描画する第2の描画処理が行われる(ステップS10)。
第2の描画処理が終了すると、再び乾燥処理が行われ(ステップS11)、所定時間乾燥処理が行われると、次いで、再び撮影制御部811が撮影部50を制御して、撮像装置51により爪画像(撮影画像)を取得させ(ステップS12)、爪形状検出部812により、爪画像(撮影画像)から爪Tの輪郭形状等の爪情報が検出される(ステップS13)。そして、この爪情報に基づいて、描画データ生成部815が次の描画処理(すなわち第3の描画処理)を行うための描画用データを生成し(ステップS14)、生成された描画用データに基づいて、ペン41により絵柄を描画する第3の描画処理が行われる(ステップS15)。
第3の描画処理が終了すると、再び乾燥処理が行われ(ステップS16)、所定時間乾燥処理が行われると、次いで、再び撮影制御部811が撮影部50を制御して、撮像装置51により爪画像(撮影画像)を取得させ(ステップS17)、爪形状検出部812により、爪画像(撮影画像)から爪Tの輪郭形状等の爪情報が検出される(ステップS18)。そして、この爪情報に基づいて、描画データ生成部815が次の描画処理(すなわち第4の描画処理)を行うための描画用データを生成し(ステップS19)、生成された描画用データに基づいて、第1〜第3の描画処理により絵柄等が描画された爪Tにペン41によってトップコートを塗布する第4の描画処理が行われる(ステップS20)。
第3の描画処理が終了すると、再び乾燥処理が行われ(ステップS21)、所定時間乾燥処理が行われると、印刷指U1の固定を解除して(ステップS22)、描画処理を終了する。
【0053】
上記のような4段階の描画処理が行われた場合、1つの指の爪Tに対して2分から3分ほどの時間を要する。この間、ユーザにできるだけ負担や不快感を与えず、かつ描画位置ずれを生じないように、適切に印刷指U1を固定しておく必要がある。
そこで次に、
図8を参照して、本実施形態における印刷指U1の固定処理について説明する。
【0054】
図8に示すように、印刷指U1の固定(
図7におけるステップS1)を行う場合には、まず、撮影制御部811が撮影部50の撮像装置51及び照明装置52を制御して、撮像装置51により印刷指U1を撮影させ、撮影画像を取得させる(ステップS31)。
なお、この撮影画像は、
図7におけるステップS2において取得される指部分を含む爪Tの画像(爪画像)を共通して用いてもよい。この場合には、
図7におけるステップS1からステップS2の間に1回撮影画像の取得を行えば足りする。
そして、撮影画像が取得されると、指サイズ検出部813は、撮影画像に基づいて、印刷指U1の大きさとして指幅Wを検出する(ステップS32)。
さらに、指サイズ検出部813は、
図4に示すようなテーブルを参照して、検出された指幅Wを3段階の指幅レベルのうちどれに当てはまるかを分類(判定)する(ステップS33)。例えば、印刷指U1が中指であり、検出された指幅Wが13mmであった場合には、「サイズ2」と分類する。
指幅レベルの分類(判定)が行われると、圧力調整部814は、
図5に示すようなテーブルを参照して、当該指幅レベルに対応する圧力値を読み出し、これを当該印刷指U1を固定するための指固定部材312の内圧値として設定する(ステップS34)。例えば、前述の例であれば、指幅レベルが「サイズ2」と分類(判定)されているので、圧力レベルは、150mmHgと設定される。
そして、圧力調整部814は、ポンプ313を動作させて指固定部材312への空気の注入を開始させる(ステップS35)とともに、指固定部材312の内圧値をセンサ315から取得する。そして、圧力調整部814は、圧力値が設定レベル(すなわち上記の例では150mmHg)か否かを常に判断し(ステップS36)、圧力値が設定レベルに達していないと判断する場合(ステップS36;NO)には、圧力調整部814は、ポンプ313を動作させたまま、ステップS36の判断を繰り返す。
他方、圧力値が設定レベルに達したと判断する場合(ステップS36;YES)には、圧力調整部814は、ポンプ313による指固定部材312への空気の注入を停止させる(ステップS37)。このとき、指固定部材312は当該印刷指U1の大きさに対応した適切な膨張状態となっており、印刷指U1が爪Tに描画を施すのに適切な位置に固定される。
圧力調整部814は、当該印刷指U1の爪Tへの描画処理(上記の例では、第1から第4の4段階の描画処理)が終了したか否かを判断し(ステップS38)、終了していないと判断する場合(ステップS38;NO)には、圧力調整部814は、指固定部材312の内圧を所定の圧力値(例えば上記の例では150mmHg)に維持させたまま、ステップS38の判断を繰り返す。
他方、終了したと判断する場合(ステップS38;YES)には、圧力調整部814は、バルブ314を開放させて指固定部材312内の空気を排出させ、指固定部材312を低下させて収縮状態として(ステップS39)、処理を終了する。これにより、ユーザが指受入部31から印刷指U1を取り出すことのできる固定解除の状態(すなわち、
図7におけるステップS22の状態)となる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、印刷指U1を撮影した撮影画像から印刷指U1の大きさを検出し、検出された印刷指U1の大きさに応じて、印刷指U1の固定時における指固定部材312の内圧を調整することにより、指固定部材312を膨張状態として印刷指U1を固定するようになっている。
このため、どのようなサイズの指の爪Tに描画する場合でも適度な締め付け力による固定を行うことができ、描画中に印刷指U1が動いて描画位置がずれてしまったり、逆にきつく締め付け過ぎて印刷指U1に痛みや不快感等を感じたりすることなく、適切に印刷指U1の固定を行うことができる。
また、本実施形態では、指固定部材312は、指受入部31の下面及び両側面に配置され、3方向から印刷指U1を固定するようになっている。このため、印刷指U1を周囲から包み込むようにして適切に固定することができる。
また、本実施形態の指サイズ検出部813により検出される印刷指U1の大きさは、印刷指U1の指幅であり、この指幅に応じて印刷指U1の固定時における指固定部材312の内圧を調整する。このため、印刷指U1を上方から撮影した撮影画像から容易に指サイズを検出することができる。
【0056】
[第2の実施形態]
次に、
図9から
図13(a)〜
図13(c)を参照しつつ、本発明に係るネイルプリント装置(描画装置)及びネイルプリント装置(描画装置)の描画方法の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、指受入部の構成のみが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0057】
図9は、実施形態における指受入部の斜視図であり、
図10(a)及び
図10(b)は、指受入部の分解斜視図である。なお、
図10(b)では、後述する下ケース35を省略している。
図9、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、指受入部33は、第1の実施形態と同様に、描画対象である爪Tに対応する印刷指U1を少なくとも1本挿入することができるものである。指受入部33は、上ケース34及び下ケース35を有しており、ほぼ箱形に形成されている。
上ケース34の下面側は開口部341となっており、この開口部341の周縁に沿って外向きフランジ部342が形成されている。外向きフランジ部342には上ケース34における両側部の2か所ずつにねじ孔343が形成されている。また、開口部341には外側に向かって係止部344が立設されている。
また、下ケース35の上面側は開口部351となっており、この開口部351の周縁に沿って外向きフランジ部352が形成されている。外向きフランジ部352には上ケース34のねじ孔43に対応する位置にそれぞれねじ孔353が形成されている。
【0058】
本実施形態では、上ケース34をその開口部341が下側になった状態で下ケース35の上に嵌め合わせるようになっており、両者を嵌め合わせた際に上ケース34の係止部344が下ケース35の側面内側に係止されるとともに、上ケース34と下ケース35の外向きフランジ部342,352が重ね合わされるようになっている。
本実施形態では、隔壁116における指受入部33に対応する位置には、切欠き部116bが形成されており、この切欠き部116bの周囲は隔壁116の上面よりも一段下がった段部116cとなっている。
切欠き部116bには下ケース35が嵌め込まれるようになっており、下ケースの上に上ケース34を嵌め合わせた状態において、隔壁116の段部116cに外向きフランジ部342,352が配置され、上ケース34の外向きフランジ部342の上面が隔壁116の上面とほぼ面一となるようになっている。このような嵌め込み状態において、外向きフランジ部342,352のねじ孔343,353に図示しないねじを挿通させてねじ止めすることにより、上ケース34及び下ケース35が隔壁116に固定される。
【0059】
図9に示すように、上ケース34及び下ケース35が隔壁116に固定された状態における上ケース34の印刷指挿入方向の手前側は開口している。
また、上ケース34における印刷指挿入方向の奥側には、第1の実施形態と同様に、描画時において爪Tの先端部が載置される爪置台345が設けられている。
上ケース34における両側面の内側には、後述する指載置台36を上下方向にガイドするガイド溝346が形成されている。なお、ガイド溝346の設けられる位置や形状、数等は図示例に限定されない。
【0060】
また、上ケース34の上面であって印刷指挿入方向の奥側は、指受入部33に挿入された印刷指U1の爪Tを露出させるための窓部347となっており、上ケース34の上面であって印刷指挿入方向の手前側は、印刷指U1の高さが上がり過ぎるのを防ぐ指押さえ部348となっている。
本実施形態では、爪Tの先端部が爪置台345に載るとともに、印刷指U1の上側が指押さえ部348の下面に当接する位置(高さ位置)にある状態が、窓部347から露出する爪Tに対して描画部40のペン41及びインクジェットヘッド71による描画を適切に行うことができる描画可能位置となっている。
本実施形態の指押さえ部348は、印刷指U1の上側が当接する部分(すなわち、上ケース34の上面における内側の面)に樹脂等で形成された緩衝材349が設けられている。このように指押さえ部348の内側の面に緩衝材を設けることにより、印刷指U1が押し上げられ指押さえ部348に突き当てられたときに衝撃や痛みを感じにくくなり、好ましい。
なお、指押さえ部348の構成はここに例示したものに限定されず、単なる板状の部であってもよい。
【0061】
指受入部33を構成する上ケース34及び下ケース35の内部には、印刷指U1を固定する指固定部材が配置されている。
本実施形態において、指固定部材は、印刷指U1が載置される指載置台36とこの指載置台36を昇降させる昇降機構37とを備えている。
指載置台36は、昇降機構37によって上昇することでその上に載置された印刷指U1を指押さえ部348との間で挟むように固定するようになっている。
指載置台36の上面であって印刷指U1が載置される載置面は、指の形状に沿って断面がほぼ弧状となる形状に形成されている。なお、指載置台36の形状は図示性に限定されないが、印刷指U1を安定して保持できるような形状となっていることが好ましい。
【0062】
指載置台36と昇降機構37との間にはばね38が介在しており、指載置台36の底面には、ばね38の一端側が係止される凸状のばね係止部361が設けられている。
なお、指載置台36と昇降機構37との間に介在するのは弾性部材であればよく、ばねに限定されない。またばね係止部361はばね38を係止できるものであればよく、その形状等は図示例には限定されない。
また、指載置台36の両側部には、上ケース34に設けられているガイド溝346に対応する位置にガイド溝346に沿って移動可能なガイド突起362が設けられている。
【0063】
本実施形態では、昇降機構37は、プッシュプルソレノイドであり、図示しないコイル等を内蔵するフレーム371とフレーム371に対して出入可能に構成されたプランジャ372とを有している。昇降機構37は、通電することでプランジャ372が
図9等における上下方向に動作するようになっており、後述する指固定調整部としての昇降調整部819によりその動作を制御される。
なお、昇降機構37は、指載置台36を昇降させることのできるものであればよく、プッシュプルソレノイドに限定されない。各種小型のモータやアクチュエータ等を適用してもよい。
プランジャ372の自由端側には、ばね係止部373が設けられており、ばね38の他端側がこのばね係止部373に係止される。
また、昇降機構37は、図示しないねじ等により、下ケース35内に固定されている。
【0064】
図11は、本実施形態に係る描画装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
図11に示すように、本実施形態の記憶部82には、指固定部材である指載置台36の高さレベルを調整する昇降調整処理に必要な高さ調整情報記憶領域825等が設けられている。
また、図示は省略するが、記憶部82には、印刷指U1の大きさに応じて指載置台36の高さレベルを調整する昇降調整プログラムが格納されている。
【0065】
高さ調整情報記憶領域825には、第1の実施形態における圧力調整情報記憶領域824に格納されている指幅サイズと指幅レベルとの対応関係を規定するテーブルと同様のテーブルが格納されている。
また、高さ調整情報記憶領域825には、指幅レベルと高さレベルとの対応関係を規定するテーブルが格納されている。
図12は、指幅レベルと高さレベルとの対応関係を規定するテーブルの一例を示した図である。
図12に示すように、本実施形態では、指幅サイズと指幅レベルとの対応関係を規定するテーブルにしたがって規定された3段階の指幅レベルに応じて、それぞれ指幅の小さい場合ほど指載置台36の高さが高くなるように高さレベルが設定されている。
なお、本実施形態では、高さレベルは、指載置台36の上面から指押さえ部348の下面までの距離で規定される。
【0066】
ここで、本実施形態では、印刷指U1を指載置台36の上面と指押さえ部348の下面とで印刷指U1を挟むようにして固定するため、印刷指U1の太さや厚みに応じて指載置台36の高さレベルを設定することが好ましい。
例えば、第1関節付近から第2関節手前までの指の厚みを計測したデータとしては、最も指の厚みの小さな小指の厚みを指厚1とした場合、7mm<指厚1≦12mmとなり、中間的な厚みの指である人差し指、中指、薬指の厚みを指厚2とした場合、12mm<指厚2≦22mmとなり、最も指の厚みの大きな親指の厚みを指厚3とした場合、17mm<指厚3≦22mmとするものがある。
しかし、指受入部33に挿入された印刷指U1の厚み方向の長さ寸法を計測、検出することは容易ではない。
この点、指の厚みは、指の幅寸法に比例することから、指の厚みレベルは指の横幅レベル(これを指幅レベルという)に置き換えることができる。
【0067】
このため、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、指幅サイズと指幅レベルとの対応関係を規定するテーブルを用意して、印刷指U1の指幅レベルを「サイズ1」から「サイズ3」のいずれかに分類し、さらに、
図12に示すような指幅レベルと高さレベルとの対応関係を規定するテーブルを参照して印刷指U1毎の高さレベルを設定する。
すなわち、指幅レベルが最も小さい「サイズ1」と分類された印刷指U1については、
図13(a)に示すように、指載置台36の高さ(すなわち、指載置台36の上面から指押さえ部348の下面までの距離)が7mmとなるように高さレベルを設定して印刷指U1の固定を行う。また、指幅レベルが「サイズ2」と分類された印刷指U1については、
図13(b)に示すように、指載置台36の高さが12mmとなるように高さレベルを設定し、指幅レベルが最も大きい「サイズ3」と分類された印刷指U1については、
図13(c)に示すように、指載置台36の高さが17mmとなるように高さレベルを設定して、印刷指U1の固定を行う。
【0068】
なお、指載置台36と昇降機構37との間にはばね38が介在しているが、高さレベルを上記のように設定することにより、ばね38の圧縮範囲は最大で5mmとなり、圧縮荷重差でも数gf程度にとどめることが可能となる。これにより、指の厚み、指の太さの違いによる固定力の差をほとんどなくすことができ、各種の太さの印刷指U1を適切に固定することが可能となる。
なお、指幅サイズの計測手法や指幅サイズに応じた指幅レベルの分類手法は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
また、各指幅レベルに対応する高さレベルや各レベルの閾値等は、ここに例示したものに限定されず、適宜設定されることは第1の実施形態と同様である。
【0069】
また、本実施形態では、制御部81は、昇降機構37の動作を制御する昇降調整部819として機能する。
昇降調整部819は、指サイズ検出部813により検出された印刷指U1の大きさに応じて、印刷指U1の固定時における指載置台36の高さを調整する指固定調整部である。
具体的には、昇降調整部819は、
図12に示したテーブルを参照することにより、指サイズ検出部813によって分類された指幅レベル(すなわち、サイズ1〜サイズ3)に対応する高さレベル(すなわち、指載置台36の上面から指押さえ部348の下面までの距離)を読み出して、これを当該印刷指U1を固定するための指載置台36の高さとして設定する。
そして、昇降調整部819は、指固定時において、昇降機構37であるプッシュプルソレノイドを制御して、指載置台36が設定された高さ位置となるようにプランジャ372を突出させる。
例えば、指サイズ検出部813により、指幅サイズが「サイズ1」と分類された印刷指U1であれば、昇降調整部819は、指載置台36が、指載置台36の上面から指押さえ部348の下面までの距離が7mmとなる高さ位置(
図13(a)参照)まで昇降機構37を動作させて指載置台36を押し上げる。
また、当該印刷指U1へのペン41やインクジェットヘッド71による描画動作が完了すると、昇降調整部819は、昇降機構37のプランジャ372を縮めて、指載置台36の高さを下げ、印刷指U1の固定を解除する。これにより、ユーザが印刷指U1を指受入部33から引き抜くことのできる状態となる。
【0070】
なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であることから、同一部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
次に、本実施形態におけるネイルプリント装置(描画装置)1による指固定処理等について説明する。
なお、ネイルプリント装置(描画装置)1による描画処理の全体的な流れは、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0072】
本実施形態において印刷指U1の固定処理を行う場合には、まず、第1の実施形態と同様に、印刷指U1を撮影した撮影画像に基づいて指サイズ検出部813が印刷指U1の大きさとして指幅Wを検出する。
さらに、指サイズ検出部813は、高さ調整情報記憶領域825に記憶されているテーブルを参照して、検出された指幅Wを3段階の指幅レベルのうちどれに当てはまるかを分類(判定)する。例えば、印刷指U1が中指であり、検出された指幅Wが13mmであった場合には、「サイズ2」と分類する。
指幅レベルの分類(判定)が行われると、昇降調整部819は、
図12に示すようなテーブルを参照して、当該指幅レベルに対応する高さレベルを読み出し、これを当該印刷指U1を固定するための指載置台36の高さレベルとして設定する。例えば、前述の例であれば、指幅レベルが「サイズ2」と分類(判定)されているので、高さレベルは、12mmと設定される。
そして、昇降調整部819は、昇降機構37を動作させ、指載置台36の上面から指押さえ部348の下面までの距離が12mmとなる高さ位置(すなわち、
図13(b)に示す高さ位置)まで指載置台36を押し上げる。これにより、印刷指U1が爪Tに描画を施すのに適切な位置に固定される。
昇降調整部819は、当該印刷指U1の爪Tへの描画処理が終了するまで指載置台36の高さ位置を維持するように昇降機構37を制御する。そして、描画処理が終了した場合には、昇降調整部819は、昇降機構37を動作させて指載置台36を、その高さ位置が最も低くなるところまで下げて、処理を終了する。これにより、ユーザが指受入部31から印刷指U1を取り出すことのできる固定解除の状態となる。
本実施形態では、昇降機構37のプランジャ372が
図9等における上下方向に動作すると、ばね38を介して指載置台36が上昇又は下降する。このとき、指載置台36のガイド突起362が上ケース34のガイド溝346によってガイドされるため、指載置台36が傾いたり位置ずれしたりせず、安定して昇降することが可能となっている。
【0073】
なお、その他の点については、第1の実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、プッシュプルソレノイド等で構成される昇降機構37によって指載置台36を昇降させ、これにより、印刷指U1を適切な固定状態とすることができる。
このため、印刷指U1を固定する構成を簡易かつ小型のものとすることができる。
【0075】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0076】
例えば、上記実施形態では、印刷指U1の指幅Wをもって印刷指U1の固定時における指固定部材による固定レベルを調整する際(すなわち、第1の実施形態における指固定部材312の内圧を調整する際、第2の実施形態における指載置台36の高さを調整する際)の印刷指U1の大きさとしたが、印刷指U1の大きさはこれに限定されない。
例えば、印刷指U1を上面視した場合の指先部分の表面積をもって指固定部材による固定レベルを調整する際の印刷指U1の大きさとしてもよい。なお、指先部分をどの領域とするかは特に限定されないが、例えば、爪Tの長さ方向の中央部(
図6参照)よりも爪Tの先端側の指の領域や、指の第1関節よりも上側(指の先端側)の領域を印刷指U1の指先部分とする。
この場合には、印刷指U1の指先部分の表面積に応じて指固定部材による固定レベルを調整する。なお、指先部分の表面積に応じて指固定部材312の内圧を調整する場合には、予め記憶部82(第1の実施形態における圧力調整情報記憶領域824、第2の実施形態における高さ調整情報記憶領域825)等に、指の表面積と面積レベル(すなわち、当該面積が指の表面積として大きいか小さいか等のレベル)との対応関係を規定するテーブルを用意しておく。例えば3段階の面積レベルに分類する場合には、それぞれのレベルの閾値を設定し、指の表面積がある閾値よりも小さければ「小サイズ」、指の表面積がある閾値よりも大きければ「大サイズ」、その中間であれば「中サイズ」と言ったように指の表面積と面積サイズとを対応付けておく。そして、さらに、各面積サイズに対応する固定レベル(第1の実施形態における圧力レベル、第2の実施形態における高さレベル)を規定するテーブルを設けて、面積サイズが小さい場合ほど指固定部材による固定レベル(第1の実施形態において指固定部材312の内圧、第2の実施形態において指載置台36の高さ)が高くなるように固定レベル(第1の実施形態において圧力レベル(すなわち圧力値、単位:mmHg)、第2の実施形態において高さレベル(すなわち指載置台36の上面から指押さえ部348の下面までの距離))を設定しておく。なお、レベル分けは3段階に限定されず、さらに細かく分類してもよい点等は、実施形態中で説明した指幅Wによる分類の場合と同様である。
【0077】
また、第2の実施形態の場合、例えば、撮像部50によって印刷指U1を側面側から撮影し、指サイズ検出部813は、この側面側からの撮影画像から印刷指U1の厚み(高さ)を算出して、算出した指の厚み(高さ)から指厚レベルを分類してもよい。
この場合、高さ調整情報記憶領域825には、指厚レベルと高さレベルとを対応付けるテーブルが予め記憶されるとともに、指サイズ検出部813によって検出(分類)された指厚レベルが記憶される。
そして、昇降調整部819は、高さ調整情報記憶領域825に記憶されている指厚レベルと高さレベルとを対応付けるテーブルを参照することにより、指サイズ検出部813によって分類された指厚レベルに対応する高さレベルを読み出して、これを当該印刷指U1を固定するための指載置台36の高さとして設定する。
第2の実施形態では、高さレベルでの分類となるため、指の横幅よりも指の厚み(高さ)との関係で指固定部材(第2の実施形態では、指載置台36)による印刷指U1の固定レベルを調整することがより効果的である。
上記実施形態中において説明した撮影部50に設けられている撮像装置51は印刷指U1の上方から指の上面側の画像を撮影するものを前提としている。このため、第2の実施形態では、印刷指U1の上面側の撮影画像から指幅を算出し、印刷指U1の指幅レベルを分類して、指幅が広ければ指の厚み(高さ)も大きくなり、指幅が狭ければ指の厚み(高さ)も小さくなるとの前提のもとに印刷指U1の固定レベルを設定する場合を例示した。
しかし、上記のように、印刷指U1を側面側から撮影することのできる撮像装置を装置内に
内に設けた場合には、指幅から指の厚み(高さ)を推定するのではなく、直接的に指の厚み(高さ)を算出することができ、より適切に指の厚み(高さ)に応じた印刷指U1の固定レベルの調整を行うことが可能となるため好ましい。
【0078】
第1の実施形態のように、内圧を調整することのできる指固定部材312によって印刷指U1を固定する場合、印刷指U1にかかる圧力は、指と指固定部材312との接触面積によって変わる。このため、上記のように指先部分の表面積を考慮して印刷指U1の固定時における指固定部材312の内圧を調整した場合には、指固定部材312の内圧をより適切に調整することができる。
印刷指U1にかかる圧力を正確に把握するためには、印刷指U1(指の腹部分)と指固定部材312との接触面積を測定して、その値を用いることが最も好ましい。
この点、本実施形態では、指受入部31の構造上印刷指U1(指の腹部分)と指固定部材312との接触部分が隠れてしまうため、撮影部50による撮影によっては接触部分の面積を正確に取得することができない。このため、便宜的に窓部311cから露出している部分の指先部分の表面積の値を使う場合を例示している。
なお、例えば、指受入部31を透明部材で構成し、撮影部50による撮影によって得られた画像から印刷指U1(指の腹部分)と指固定部材312との接触面積を測定することを可能としたり、指受入部31内に接触センサ等を配置して、これにより印刷指U1(指の腹部分)と指固定部材312との接触範囲(接触面積)を取得する等の手法により印刷指U1(指の腹部分)と指固定部材312との接触面積を取得することができる場合には、この値を用いて指固定部材312の内圧調整を行ってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、印刷指U1の大きさを3段階等の複数レベルに分けて印刷指U1の固定時における指固定部材による固定レベルを調整(すなわち、第1の実施形態における指固定部材312の内圧を調整、第2の実施形態における指載置台36の高さを調整)する場合を例示しているが、指固定部材による固定レベルを調整する手法はこれに限定されず、特にレベル分けを行わず、印刷指U1の大きさによって無段階的に指固定部材による固定レベルの調整を行ってもよい。
この場合には、例えば、第1の実施形態であれば、(印刷指U1における指固定部材312との接触面積)×(指固定部材312の内圧)が等しくなるように設定する。これにより、印刷指U1がどのような大きさの指である場合にも、全ての印刷指U1において、指にかかる力を略均一にして適切な指固定を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、描画動作を行う度に、指固定部材による固定レベルを調整(すなわち、第1の実施形態における指固定部材312の内圧を調整、第2の実施形態における指載置台36の高さを調整)ための印刷指U1の大きさ(本実施形態では印刷指U1の指幅W)を取得する場合を例示したが、印刷指U1の大きさを取得するタイミングは描画動作ごとに限定されない。
例えば、装置の取得時や、初回の描画の際等に、ユーザが予め各指の大きさ(例えば印刷指U1の指幅W)をネイルプリント装置1によって取得させ、これを装置側の記憶部82(第1の実施形態における圧力調整情報記憶領域824、第2の実施形態における高さ調整情報記憶領域825)等に登録しておいてもよい。
この場合には、その後描画動作を行う際には、描画対象となる指を指定するだけで、当該印刷指U1を固定するための適切な固定レベル(第1の実施形態では圧力レベル、第2の実施形態では高さレベル)を読みだして印刷指U1の固定を行うことができ、処理速度の短縮を図ることができる。
また、このように、事前の登録を行う際には、各指と具体的な固定レベル(第1の実施形態では圧力レベル(すなわち、指固定部材312の内圧値)、第2の実施形態では高さレベル)とを対応付けたテーブルを作成しておき、次回からはこのテーブルを参照して固定レベルの設定を行ってもよい。
【0081】
また、各指の大きさを複数段階に分類してこれに所定の固定レベル(第1の実施形態では圧力レベル(すなわち、指固定部材312の内圧値)、第2の実施形態では高さレベル)を対応付けるのではなく、各指に対応する固定レベル(第1の実施形態では圧力レベル(すなわち、指固定部材312の内圧値)、第2の実施形態では高さレベル)を、ユーザが事後的に任意に設定してもよい。
指が締め付けられ、固定されている感覚の感じ方は人によって異なるため、このようにユーザ自ら自由に固定レベルを設定できるようにすることで、ユーザ本人にとって指が抜けにくく、かつ不快でない程度の適切な締め付け状態での印刷指U1の固定を行うことができる。
【0082】
また、第1の実施形態では、指固定部材312は、指受入部31の下面(すなわち、指載置部310の上側)に配置される中央ブロック312aと、指受入部31の両側面にそれぞれ配置される一対の側部ブロック312bとからなり、これら3つのブロックが流体の流入・流出が可能な状態で連結され、3方向から印刷指U1を固定する例を示したが、指固定部材312の形状、構成等はここに示したものに限定されない。
例えば、各ブロックが互いに連通可能状態で連結されずに、別個独立にポンプ313等に接続されて膨縮可能となっていてもよい。
【0083】
また、第1の実施形態における指固定部材312は、指受入部31の下面(すなわち、指載置部310の上側)のみに配置されていてもよい。この場合でも指固定部材312が膨張することで印刷指U1を押し上げることができる。
また、指固定部材312は、その全体又は一部が複数段重ねて配置されていてもよい。
【0084】
さらに、第1の実施形態における指固定部材312は、2つのブロックを幅方向におけるほぼ中央部で連結して指受入部31内に配置したものであってもよい。この場合、内圧を高めた膨張状態では、指固定部材312はほぼV字状となり、印刷指U1を下側から挟み込むように固定する。
また、指固定部材312は、内圧を高めた膨張状態において断面がほぼU字状又はコ字状となるように構成された一繋がりの部材であってもよい。この場合にも、指固定部材312は、下側及び両側面の3方向から印刷指U1を固定することができる。
なお、指固定部材312の形状や構成は、ここに例示したものに限定されず、適宜各種の形状・構成とすることができる。
【0085】
また、上記各実施形態では、ネイルプリント装置(描画装置)1の描画ヘッド43に描画用のペン41を保持するペンホルダ42とインクジェットヘッド71とを備える構成としたが、ペン41とインクジェットヘッド71との両方を備えることは必須の構成ではなく、いずれか一方のみを備えて描画を行う描画装置であってもよい。
【0086】
また、上記各実施形態では、描画ヘッド43にペンホルダ42を1つ備えている場合を例示したが、描画ヘッド43に設けられるペンホルダ42の数は1つに限定されない。例えば2つ以上のペンホルダ42を備え、描画用のペン41が2本以上保持されていてもよい。
【0087】
また、上記各実施形態では、ペンホルダ42に保持させるペン41を、ユーザが適宜手動で交換する場合を例示したが、例えば、ホームエリア60等にペン41を待機させておく待機スペースを設けて、図示しないペン交換機構により必要なペン41を自動的に待機スペース内から取得してペンホルダ42に差し替えるようにしてもよい。
【0088】
また、上記各実施形態では、装置の上部に撮像装置51や照明装置52が固定配置されている場合を例示したが、撮像装置51や照明装置52を設ける位置はこれに限定されない。
例えば、描画ヘッド43に撮像装置51や照明装置52を搭載して、ヘッド移動部49によりXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
また、例えば描画ヘッド43を移動させる機構とは別に撮影部50を移動させる機構を別途設けてもよい。
このように、撮像装置51や照明装置52を移動可能に構成した場合には、撮像装置51を1つだけ設けて、移動させることで複数の異なる位置や角度から撮影を行うようにしてもよい。
【0089】
また、上記各実施形態では、指を1本ずつ装置に挿入して順次描画を行うネイルプリント装置1を例としたが、複数本の指に対して、各指を抜き差しすることなく、連続的に描画を行うことのできる構成とすることも可能である。
【0090】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
描画対象である爪に対応する指を少なくとも1本挿入可能である指受入部と、
前記指受入部内に挿入された前記指の大きさを検出する指サイズ検出部と、
前記指受入部内に配置されており、前記指を固定する指固定部材と、
前記指サイズ検出部により検出された前記指の大きさに応じて、前記指の固定時における前記指固定部材による固定レベルを調整する指固定調整部と、
前記指受入部内に挿入され前記指固定部材により固定されている前記指の爪に描画を施す描画部と、
を備えていることを特徴とする描画装置。
<請求項2>
前記指固定部材は、内圧を変化させることにより膨縮可能に構成され、膨張状態において前記指を固定するものであり、
前記指固定調整部は、前記指サイズ検出部により検出された前記指の大きさに応じて、前記指の固定時における前記指固定部材の内圧を調整する圧力調整部であることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
<請求項3>
前記指サイズ検出部により検出される前記指の大きさは、前記指の指幅、又は、前記指を上面視した場合の指先部分の表面積であり、
前記圧力調整部は、前記指サイズ検出部により検出された前記指の指幅、又は、前記指の指先部分の表面積に応じて、前記指の固定時における前記指固定部材の内圧を調整することを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
<請求項4>
前記圧力調整部は、前記指サイズ検出部により検出された前記指の指幅、又は、前記指の指先部分の表面積が大きいほど、前記指固定部材の内圧が下がるように調整することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の描画装置。
<請求項5>
前記指固定部材は、前記指受入部の下面及び両側面に配置され、3方向から前記指を固定するものであることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の描画装置。
<請求項6>
前記指固定部材は、前記指受入部内に配置され前記指を載置する指載置台と前記指載置台を昇降させる昇降機構とを備えており、
前記指固定調整部は、前記指サイズ検出部により検出された前記指の大きさに応じて、前記指の固定時における前記指載置台の高さを調整する昇降調整部であることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
<請求項7>
描画対象である前記爪及び対応する指である前記指の撮影画像を取得する撮像装置を更に備え、
前記指サイズ検出部は、前記撮像装置により取得された前記撮影画像から前記指の大きさを検出することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の描画装置。
<請求項8>
描画装置の描画方法であって、
前記描画装置は、
描画対象である爪に対応する指を少なくとも1本挿入可能である指受入部と、
前記指受入部内に配置されており、前記指を固定する指固定部材と、
前記指受入部内に挿入され前記指固定部材により固定されている前記指の爪に描画を施す描画部と、
を備え、
前記指受入部内に挿入された前記指の大きさを検出し、
検出された前記指の大きさに応じて、前記指の固定時における前記指固定部材による固定レベルを調整することを特徴とする描画装置の描画方法。