(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2配線構造部の前記第2配線層の前記絶縁層は、前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記導電層を少なくとも部分的に覆い、絶縁性を有する無機層を更に含む、請求項6に記載の配線基板。
前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記絶縁層の前記無機層は、前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記導電層に少なくとも部分的に前記第1側から接している、請求項13に記載の配線基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前面板の額縁領域における配線の密度を高めることは、表示パネルなどの電子部品の小型化に寄与する。配線の密度を高めるための方法の1つとして、配線の多層化が考えられる。例えば、絶縁層及び導電層を含む配線層を額縁領域に多数積層することが考えらえる。一方、配線層の絶縁層に含まれる有機材料の熱膨張率は、基板を構成するガラスや珪素などの無機材料の熱膨張率に比べて大きい。このため、配線の多層化により額縁領域における有機材料の体積が大きくなると、有機材料の熱膨張に起因して基板に引っ張り応力が発生し、この結果、基板に反りが生じてしまう。基板の反りは、製造工程における搬送不良などの不具合や、基板のフレキシビリティの低下を生じさせ得る。
【0007】
本開示の実施形態は、このような点を考慮してなされたものであり、絶縁層及び導電層を含む配線層が形成された基板において反りが発生することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、第1側に位置する第1面及び前記第1側とは反対の第2側に位置する第2面を含むとともに、透明性を有する第1領域と前記第1領域の周辺に位置する第2領域とに少なくとも区画される基板と、前記基板の前記第2領域において前記第1面上に位置する第1配線層、及び、前記第1配線層上に位置する第2配線層を少なくとも含む第1配線構造部と、を備え、前記第1配線層は、前記基板の第1面上に位置する絶縁層と、前記絶縁層上に位置する導電層と、を有し、前記第2配線層は、前記第1配線層の前記導電層上に位置する開口が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の前記開口を介して前記第1配線層の前記導電層に接続された導電層と、を有し、前記第2配線層の前記絶縁層は、絶縁性を有する有機層を含み、前記第1配線層の前記絶縁層、前記第2配線層の前記絶縁層、又は前記第1配線構造部のうち前記第1配線層及び前記第2配線層以外の層の少なくともいずれか1つが、絶縁性を有する無機層を含む、配線基板である。
【0009】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第2配線層の前記絶縁層は、前記無機層を更に含んでいてもよい。
【0010】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第2配線層の前記絶縁層の前記無機層は、前記第1配線層の前記導電層を少なくとも部分的に覆っていてもよい。
【0011】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第2配線層の前記絶縁層の前記有機層は、前記無機層よりも前記第1側に位置していてもよい。
【0012】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1配線構造部は、前記第2配線層上に位置する第3配線層を更に含み、前記第3配線層は、無機層及び前記無機層よりも前記第1側に位置する有機層を含み、前記第2配線層の前記導電層上に位置する開口が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の開口を介して前記第2配線層の前記導電層に接続された導電層と、を有していてもよい。
【0013】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記基板の前記第2領域において前記基板の前記第2面上に位置する絶縁層を更に備えていてもよい。
【0014】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記基板の前記第2領域において前記第2面上に位置する第1配線層、及び前記第1配線層上に位置する第2配線層を少なくとも含む第2配線構造部を更に備え、前記第2配線構造部の前記第1配線層は、前記基板の第2面上に位置する絶縁層と、前記絶縁層上に位置する導電層と、を有し、前記第2配線構造部の前記第2配線層は、前記第1配線層の前記導電層上に位置する開口が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の前記開口を介して前記第1配線層の前記導電層に接続された導電層と、を有し、前記第2配線構造部の前記第2配線層の前記絶縁層は、絶縁性を有する有機層を含んでいてもよい。
【0015】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第2配線構造部の前記第2配線層の前記絶縁層は、前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記導電層を少なくとも部分的に覆い、絶縁性を有する無機層を更に含んでいてもよい。
【0016】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1配線構造部に含まれる前記導電層の層数と、前記第2配線構造部に含まれる前記導電層の層数とが異なっていてもよい。
【0017】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1配線層の前記絶縁層は、有機層と、前記有機層よりも前記第1側に位置する前記無機層と、を含んでいてもよい。
【0018】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1配線層の前記絶縁層の前記無機層は、前記第1配線層の前記導電層に少なくとも部分的に前記第2側から接していてもよい。
【0019】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第2配線層の前記絶縁層は、前記有機層よりも前記第1側に位置する無機層を更に含んでいてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1配線構造部は、前記第2配線層上に位置する第3配線層を更に含み、前記第3配線層は、有機層及び前記有機層よりも前記第1側に位置する無機層を含み、前記第2配線層の前記導電層上に位置する開口が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の開口を介して前記第2配線層の前記導電層に接続された導電層と、を有していてもよい。
【0021】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記基板の前記第2領域において前記基板の前記第2面上に位置する絶縁層を更に備えていてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記基板の前記第2領域において前記第2面上に位置する第1配線層、及び前記第1配線層上に位置する第2配線層を少なくとも含む第2配線構造部を更に備え、前記第2配線構造部の前記第1配線層は、前記基板の第2面上に位置する絶縁層と、前記絶縁層上に位置する導電層と、を有し、前記第2配線構造部の前記第2配線層は、前記第1配線層の前記導電層上に位置する開口が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の前記開口を介して前記第1配線層の前記導電層に接続された導電層と、を有し、前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記絶縁層は、有機層と、前記有機層よりも前記第2側に位置し、絶縁性を有する無機層と、を含んでいてもよい。
【0023】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記絶縁層の前記無機層は、前記第2配線構造部の前記第1配線層の前記導電層に少なくとも部分的に前記第1側から接していてもよい。
【0024】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1配線構造部に含まれる前記導電層の層数と、前記第2配線構造部に含まれる前記導電層の層数とが異なっていてもよい。
【0025】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記有機層は、ポリイミド、エポキシ、又はアクリルを少なくとも含んでいてもよい。
【0026】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記無機層は、珪素酸化物又は珪素窒化物を少なくとも含んでいてもよい。
【0027】
本開示の一実施形態による配線基板は、表示パネルに設けられる前面板であってもよい。
【0028】
本開示の一実施形態は、光を放射する表示パネルと、前記表示パネルと対向する前面板と、を備え、前記前面板は、第1側に位置する第1面及び前記第1側とは反対の第2側に位置する第2面を含むとともに、前記表示パネルから放射された光を透過させる第1領域と前記第1領域の周辺に位置する第2領域とに少なくとも区画される基板と、前記基板の前記第2領域において前記基板の前記第1面上に位置する第1配線層、及び、前記第1配線層上に位置する第2配線層を少なくとも含む第1配線構造部と、を備え、前記第1配線層は、前記基板の第1面上に位置する絶縁層と、前記絶縁層上に位置する導電層と、を有し、前記第2配線層は、前記第1配線層の前記導電層上に位置する開口が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の前記開口を介して前記第1配線層の前記導電層に接続された導電層と、を有し前記第2配線層の前記絶縁層は、絶縁性を有する有機層を含み、前記第1配線層の前記絶縁層、前記第2配線層の前記絶縁層、又は前記第1配線構造部のうち前記第1配線層及び前記第2配線層以外の層の少なくともいずれか1つが、絶縁性を有する無機層を含む、表示装置である。
【発明の効果】
【0029】
本開示の実施形態によれば、絶縁層及び導電層を含む配線層が形成された基板において反りが発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
第1の実施の形態
以下、本開示の実施形態に係る配線基板の構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基板」や「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0032】
以下、本開示の実施の形態について説明する。まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る配線基板11を備えた表示装置10について説明する。
図1は、表示装置10を示す展開図である。
【0033】
表示装置及び配線基板
図1に示すように、表示装置10は、表示パネル20及び配線基板11を備える。表示パネル20は、表示部21及び回路部22を有する。表示部21は、映像光などの光を放射する。回路部22は、表示部21を駆動するための電子部品、配線などを含む。
【0034】
配線基板11は、表示パネル20と対向するよう配置され、表示パネル20を保護する前面板として機能する。配線基板11は、基板12を備える。基板12は、表示パネル20に対向する第1面13、及び、第1面13の反対側に位置する第2面14を含む。また、基板12は、第1領域15及び第2領域16に少なくとも区画される。第1領域15は、表示パネル20の表示部21から放射された光を透過させる。第1領域15は、例えば、基板12の第1面13の法線方向に沿って表示装置10を見た場合に、表示パネル20の表示部21に重なっている。第2領域16は、第1領域15の周辺に位置している。例えば、第2領域16は、基板12の第1面13の法線方向に沿って基板12を見た場合に、第1領域15を囲んでいる。なお、図示はしないが、第2領域16は、第1領域15を囲うことなく第1領域15に隣接していてもよい。
【0035】
図2は、
図1の表示装置10の配線基板11を第1面13側から見た場合を示す平面図である。配線基板11は、基板12の第2領域16において第1面13上に位置する第1配線構造部30を更に備える。第1配線構造部30は、絶縁層35及び導電層38を含む。図示はしないが、第1配線構造部30は、フレキシブル基板やフラットケーブルなどの接続用部材が取り付けられる端子部を更に含んでいてもよい。接続用部材及び端子部を介して、外部から導電層38へ信号又は電力を供給したり、導電層38から外部へ信号を取り出したりすることができる。
【0036】
図3は、表示パネル20及び配線基板11が組み合わされた表示装置10を示す断面図である。
図3に示すように、表示パネル20の表示部21から放射された光Lは、配線基板11の基板12の第1領域15を透過して表示装置10の外部に至る。
【0037】
基板12は、一定の絶縁性を有する無機材料から構成されている。また、基板12のうち少なくとも第1領域15は、光を透過させる透明性を有する。なお「透明性」とは、基板12の第1領域15の全光線透過率が70%以上であることを意味している。全光線透過率は、JIS K7375の全光線透過率測定法に準拠して求められ得る。基板12の第2領域16は、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。
【0038】
基板12は、例えば、ガラス基板、石英基板、樹脂基板など、又は、これらの基板が積層されたものである。基板12の厚さは特に制限はないが、例えば、100μm以上且つ800μm以下の厚さの基板12を使用することが好ましい。より好ましくは、基板12は、250μm以上且つ600μm以下の厚さを有する。基板12の厚さを100μm以上とすることにより、基板12のたわみが大きくなることを抑制できる。このため、製造工程における基板12のハンドリングが困難になったり、基板12上に形成する薄膜等の内部応力に起因して基板12が反ってしまったりすることを抑制できる。また、基板12の厚さを800μm以下とすることにより、基板12に可撓性を持たせることができる。これにより、配線基板11を、例えばウェアラブル端末など使用時に変形が生じ得る用途において利用することが可能になる。
【0039】
基板12の第2領域16に設けられる第1配線構造部30は、絶縁層35及び導電層38を含む複数の配線層を有する。配線層を複数積層させることにより、単位面積あたりの配線の密度を高くすることができる。絶縁層35は、例えば表示パネル20の回路部22に電気的に接続される。
【0040】
(第1配線構造部)
次に、
図4及び
図5を参照して、第1配線構造部30について詳細に説明する。
図4は、基板12の第2領域16において配線基板11を切断した場合を示す断面図である。また、
図5は、
図4の配線基板11を拡大して示す断面図である。
【0041】
図4に示すように、第1配線構造部30は、基板12の第1面13上に位置する第1配線層31、及び第1配線層31上に位置する第2配線層32を含む。以下、第1配線層31及び第2配線層32の構成について説明する。なお、以下の説明において、符号D1が付された矢印で表される、基板12の第1面13の法線方向において基板12から遠ざかる側のことを「第1側」と称することがある。また、符号D2が付された矢印で表される、基板12の第2面14の法線方向において基板12から遠ざかる側のことを「第2側」と称することがある。
【0042】
〔第1配線層〕
図4に示すように、第1配線層31は、基板12の第2領域16において第1面13上に位置する絶縁層35と、絶縁層35上に位置する導電層38と、を有する。絶縁層35は、例えば、絶縁性を有する有機材料から構成された有機層36を含む。有機層36が基板12の第1面13に接していてもよく、若しくは、基板12の第1面13と有機層36との間にその他の層が位置していてもよい。有機層36の有機材料としては、例えばポリイミド、エポキシ、アクリルなどを用いることができる。有機層36は、着色剤や染料などを含んでいてもよい。これにより、第1配線構造部30の遮光性を高めることができる。絶縁層35の厚みは、例えば0.5μm以上且つ10μm以下である。
【0043】
第1配線層31の絶縁層35は、有機層36に加えて、若しくは有機層36に代えて、絶縁性を有する無機材料から構成された無機層を含んでいてもよい。第1配線層31の無機層の無機材料としては、SiO
2などの珪素酸化物、SiNなどの珪素窒化物を用いることができる。その他にも、無機層の無機材料の例として、SiOC、SiC、SiOF、SiON、SiCNなどを挙げることができる。
【0044】
図5に示すように、導電層38は、基板12側から第1側D1へ並ぶバリア層381、シード層382、及びめっき層383を含んでいてもよい。
【0045】
バリア層381は、シード層382やめっき層383などのその他の導電層38の構成要素と絶縁層35との間に位置する層である。バリア層381は、シード層382やめっき層383などのその他の導電層38の構成要素中の金属元素が絶縁層35の内部に拡散することを抑制するために、必要に応じて設けられる。シード層382又はめっき層383が銅を含む場合、バリア層381の材料として、例えば、チタン、チタン窒化物、モリブデン、モリブデン窒化物、タンタル、タンタル窒化物等、又はこれらを積層したものを用いることができる。また、バリア層381の材料として、絶縁層35に対する高い密着性を有する導電性材料を用いてもよい。例えば、バリア層381の材料として、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニッケル、クロム、アルミニウム、これらの化合物、これらの合金など、又はこれらを積層したものを使用することができる。バリア層381の厚みは、例えば10nm以上且つ1μm以下である。バリア層381は、例えば、蒸着法やスパッタリング法などの物理成膜法で形成される。
【0046】
シード層382は、めっき処理によってめっき層383を形成する電解めっき工程の際に、めっき液中の金属イオンを析出させてめっき層383を成長させるための土台となる、導電性を有する層である。シード層382の材料としては、例えば、銅などの、めっき層383と同一の金属材料を用いることができる。シード層382の厚みは、例えば100nm以上且つ3μm以下である。シード層382は、例えば、蒸着法やスパッタリング法などの物理成膜法で形成される。
【0047】
なお、図示はしないが、絶縁層35とめっき層383との間に、バリア層としての役割及びシード層としての役割の両方を果たすことができる1つの層を設けてもよい。
【0048】
めっき層383は、めっき処理によって形成される、導電性を有する層である。めっき層383を構成する材料としては、銅、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属又はこれらを用いた合金など、あるいはこれらを積層したものを使用することができる。めっき層383の厚さは、例えば、1μm以上且つ10μm以下の範囲内である。
【0049】
〔第2配線層〕
次に、第2配線層32について説明する。なお、第2配線層32の構成要素のうち第1配線層31と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0050】
第1配線層31と同様に、第2配線層32も、絶縁層35及び導電層38を有する。絶縁層35には、第1配線層31の導電層38上に位置する開口が設けられている。すなわち、絶縁層35の開口は、基板12の第1面13の法線方向に沿って見た場合に少なくとも部分的に第1配線層31の導電層38に重なっている。第2配線層32の導電層38は、絶縁層35の開口を介して第1配線層31の導電層38に接続されている。例えば、導電層38は、絶縁層35の開口の内部に位置し、第1配線層31の導電層38に接続されている第1部分38a、及び絶縁層35よりも第1側D1に位置する第2部分38bを含む。そして、第2部分38bの一部が第1部分38aに接続されている。
【0051】
第2配線層32の絶縁層35は、第1配線層31の絶縁層35及び導電層38の上に位置する無機層37と、無機層37よりも第1側D1に位置する有機層36と、を有する。無機層37は、第1配線層31の導電層38の第2部分38bを少なくとも部分的に覆っている。なお「覆う」とは、基板12の第1面13の法線方向に沿って配線基板11を見た場合に、第2配線層32の無機層37と第1配線層31の導電層38の第2部分38bとが少なくとも部分的に重なっていることを意味する。
【0052】
無機層37は、絶縁性を有する無機材料から構成された層である。無機層37の無機材料としては、SiO
2などの珪素酸化物、SiNなどの珪素窒化物を用いることができる。その他にも、無機層37の無機材料の例として、SiOC、SiC、SiOF、SiON、SiCNなどを挙げることができる。
【0053】
図5に示すように、無機層37は、複数の無機層を含んでいてもよい。例えば、無機層37は、第1無機層371と、第1無機層371の第1側D1に位置する第2無機層372と、を含む。好ましくは、第1無機層371は、第2無機層372に比べて、導電層38のめっき層383に対する高い密着性を有する。また、好ましくは、第2無機層372は、第1無機層371よりも低い比誘電率を有する。例えば、第1無機層371は、SiNなどの珪素窒化物を含み、第2無機層372は、SiO
2などの珪素酸化物を含む。第1無機層371の厚みは、例えば0.05μm以上且つ5μm以下であり、第2無機層372の厚みは、例えば0.1μm以上且つ10μm以下である。好ましくは、第1無機層371の厚みは、第2無機層372の厚みよりも小さい。
【0054】
第2配線層32の有機層36は、絶縁性を有する有機材料から構成される。第2配線層32の有機層36の有機材料としては、上述の第1配線層31の有機層36の場合と同様に、ポリイミド、エポキシ、アクリルなどを用いることができる。
【0055】
配線基板の製造方法
以下、配線基板11の製造方法の一例について、とりわけ配線基板11の第1配線構造部30の製造方法の一例について、
図6乃至
図16を参照して説明する。
【0056】
(第1配線層の絶縁層の形成工程)
まず、基板12を準備する。次に、
図6に示すように、第2領域16における基板12の第1面13上に絶縁層35の有機層36を形成する。例えば、まず、感光性ポリイミドなどの有機材料を、スピンコート法などによって基板12上に成膜して、有機層36を形成する。続いて、有機層36のうち基板12の第1領域15上に位置する部分が除去されるよう、有機層36を露光及び現像する。続いて、有機層36を焼成して有機層36を硬化させる。有機層36の焼成温度は、例えば200℃以上である。
【0057】
上述のとおり、絶縁層35は、有機層36に加えて、若しくは有機層36に代えて、絶縁性を有する無機材料から構成された無機層を含んでいてもよい。第1配線層31の無機層は、例えば、プラズマCVDによって形成されるSiO
2の膜又はSiNの膜を含む。無機層の厚みは、例えば0.1μm以上且つ10μm以下である。
【0058】
(第1配線層の導電層の形成工程)
次に、
図7に示すように、有機層36の表面に、物理成膜法によってバリア層381を形成する。また、バリア層381上に、物理成膜法によってシード層382を形成する。
【0059】
続いて、
図8に示すように、シード層382上に、開口391が設けられたレジスト層39を形成する。続いて、
図9に示すように、レジスト層39の開口391にめっき液を供給して、電解めっきにより、シード層382上にめっき層383を形成する。その後、
図10に示すように、レジスト層39を除去する。続いて、
図11に示すように、バリア層381及びシード層382のうちレジスト層39によって覆われていた部分を、例えばウェットエッチングにより除去する。このようにして、バリア層381、シード層382及びめっき層383を含む導電層38を形成することができる。その後、めっき層383をアニールする工程を実施してもよい。めっき層383のアニール温度は、例えば200℃以上である。
【0060】
このようにして、有機層36及び導電層38を含む第1配線層31を形成することができる。
【0061】
(第2配線層の無機層の形成工程)
次に、
図12に示すように、第1配線層31の有機層36及び導電層38上に、プラズマCVDにより、第1無機層371を形成する。続いて、
図13に示すように、第1無機層371上に、プラズマCVDにより、第2無機層372を形成する。
【0062】
(第2配線層の有機層の形成工程)
次に、
図14に示すように、基板12の第1面13の法線方向に沿って見た場合に第1配線層31の導電層38と重なる位置に開口361が設けられた有機層36を形成する。例えば、まず、感光性ポリイミドなどの有機材料を、スピンコート法などによって第2無機層372上に成膜して、有機層36を形成する。続いて、有機層36のうち開口361に対応する部分が除去されるよう、有機層36を露光及び現像する。続いて、有機層36を焼成して有機層36を硬化させる。有機層36の焼成温度は、例えば200℃以上である。
【0063】
(第2配線層の無機層の加工工程)
次に、有機層36をマスクとして、プラズマエッチングにより、有機層36の開口361に露出している無機層37の第1無機層371及び第2無機層372をエッチングする。これによって、
図15に示すように、有機層36の開口361に連通する開口373を無機層37に形成する。エッチングガスとしては、例えば、CF
4とH
2との混合ガスを用いることができる。なお、プラズマエッチングにより有機層36の表面に損傷が生じる場合、有機層36に熱処理を施すことにより、損傷が生じた有機層36の表面を除去してもよい。有機層36の熱処理温度は、例えば200℃以上である。
【0064】
(第2配線層の導電層の形成工程)
次に、
図16に示すように、第1配線層31の導電層38に接続されるとともに有機層36の第1側D1にまで至る導電層38を形成する。このようにして、有機層36、無機層37及び導電層38を含む第2配線層32を、第1配線層31の第1側D1に形成することができる。
【0065】
(配線基板の作用)
以下、本実施の形態による配線基板11の作用について説明する。
【0066】
〔伝播遅延及びクロストークの抑制作用〕
第1配線層31や第2配線層32などの配線層の絶縁層35は、ポリイミドなどの有機材料から構成され、且つ導電層38に接する有機層36を含む。有機層36の有機材料は、無機層37を構成する無機材料よりも小さい誘電率を有する。例えば、有機層36の有機材料の比誘電率は、2.0以上且つ3.3以下であり、一方、無機層37の無機材料の一例であるP−SiO
2の比誘電率は4.1である。このような有機材料から構成される有機層36が、配線層において隣り合う2つの導電層38の間に位置することにより、導電層38の間の配線容量を小さくし、導電層38を伝播する信号の遅延量を小さくすることができる。また、隣り合う2つの導電層38の間におけるクロストークを抑制することができる。伝播遅延及びクロストークの抑制という観点からは、第1配線層31や第2配線層32などの配線層において、絶縁層35全体の厚みに対する有機層36の厚みの比率が、40%以上且つ90%以下であることが好ましい。
【0067】
〔反りの抑制作用〕
有機層36を構成するポリイミドなどの有機材料の熱膨張率は、基板12を構成する無機材料の熱膨張率に比べて大きい。例えば、有機層36を構成する有機材料の熱膨張率が50〜100E−6/Kであるのに対し、基板12の材料の一例であるガラスの熱膨張率は、約3E−6/Kであり、基板12の材料のその他の例である珪素の熱膨張率は、約2.4E−6/Kである。このため、有機層36の焼成工程や導電層38のアニール工程などにおいて、雰囲気温度が200℃以上になると、有機層36の熱膨張に起因して基板12に引っ張り応力が発生する。この結果、基板12に反りが生じてしまうことが考えられる。
【0068】
ここで本実施の形態においては、第1配線構造部30が有機層36に加えて無機層37を更に含む。例えば、第1配線構造部30の第2配線層32が、第1配線層31の有機層36及び導電層38の上に位置する無機層37を含む。無機層37を構成する無機材料の熱膨張率は、有機層36を構成する有機材料の熱膨張率よりも小さく、例えば0.3E−6/K以上且つ10.0E−6/K以下である。このため、有機層36の熱膨張に起因して基板12に引っ張り応力が発生することを抑制することができる。これによって、基板12に反りが生じてしまうことを抑制することができ、製造工程において基板12の搬送不良などの不具合が生じることを抑制することができる。反りの抑制という観点からは、第1配線層31や第2配線層32などの配線層において、絶縁層35全体の厚みに対する無機層37の厚みの比率が、10%以上且つ60%以下であることが好ましい。
【0069】
〔有機層への銅の拡散抑制作用〕
また、本実施の形態においては、無機層37が、めっき層383と有機層36との間に位置し、SiNなどの珪素窒化物から構成された第1無機層371を含む。このため、雰囲気温度が高温の場合に、めっき層383を構成する銅などの金属材料の原子、分子、イオンなどが有機層36内に拡散することを抑制することができる。これによって、隣り合う2つの導電層38が導通してしまうことや、有機層36の絶縁破壊が生じてしまうことを抑制することができる。
【0070】
〔有機層の緩衝作用〕
ところで、導電層38を構成する銅などの金属材料の熱膨張率は、基板12を構成するガラスや珪素などの絶縁性無機材料や、無機層37を構成する無機材料の熱膨張率に比べて大きい。例えば、銅の熱膨張率は約16E−6/Kである。このため、有機層36の焼成工程や導電層38のアニール工程などにおいて、雰囲気温度が200℃以上になると、導電層38が膨張することが考えられる。雰囲気温度が200℃以上になる工程が繰り返し実施されると、導電層38の膨張及び収縮が繰り返し発生する。この結果、無機層37と導電層38との間の界面や、第1配線層31の導電層38と第2配線層32の導電層38との間の界面で剥離や割れなどが生じてしまうことが考えられる。ここで、本実施の形態においては、導電層38に有機層36が接している。有機層36を構成する有機材料のヤング率は低く、例えば3GPa以上且つ7GPa以下である。このため、雰囲気温度が上昇するとき、導電層38は、ヤング率が低く柔軟な有機層36側へ膨張することができる。従って、導電層38の熱膨張に起因する応力が、無機層37と導電層38との間の界面や、第1配線層31の導電層38と第2配線層32の導電層38との間の界面に加わることを抑制することができる。これによって、例えば、無機層37にクラックなどの欠陥が生じてしまうことを抑制することができる。このため、無機層37のクラックを介して導電層38のめっき層383を構成する銅などの金属材料が有機層36内へ拡散してしまうことを抑制することができる。また、第1配線層31の導電層38と第2配線層32の導電層38との間で電気的な接続不良が生じてしまうことを抑制することができる。
【0071】
なお、上述した第1の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0072】
(第1配線構造部の第1変形例)
図17は、第1変形例に係る第1配線構造部30を示す断面図である。
図17に示すように、第1配線構造部30は、第2配線層32上に位置する第3配線層33を更に含んでいてもよい。第3配線層33は、第2配線層32の導電層38上に位置する開口が設けられた絶縁層35と、絶縁層35の開口を介して第2配線層32の導電層38に接続された導電層38と、を有する。第3配線層33の絶縁層35は、無機層37及び無機層37よりも第1側D1側に位置する有機層36を含む。第3配線層33の無機層37は、第2配線層32の導電層38を少なくとも部分的に覆っている。
【0073】
(第1配線構造部の第2変形例)
図17に示す第1の変形例においては、第2配線層32及び第3配線層33のいずれもが、無機層37を含む例を示したが、これに限られることはなく、第1配線構造部30の複数の配線層の少なくとも1つが無機層37を含んでいればよい。例えば、
図18に示すように、第3配線層33の絶縁層35は無機層37を含むが、第2配線層32の絶縁層35は無機層37を含んでいなくてもよい。若しくは、図示はしないが、第2配線層32の絶縁層35は無機層37を含むが、第3配線層33の絶縁層35は無機層37を含んでいなくてもよい。第1配線構造部30の複数の配線層の少なくとも1つが無機層37を含むことにより、基板12に反りが生じてしまうことを抑制することができる。
【0074】
(第1配線構造部の第3変形例)
図19に示すように、第1配線層31の絶縁層35は、有機層36よりも第2側D2に位置する無機層37を更に含んでいてもよい。第1配線層31の無機層37は、基板12の第1面13に接していてもよく、接していなくてもよい。
【0075】
(配線基板の第1変形例)
図20に示すように、配線基板11は、基板12の第2領域16において第2面14上に位置する絶縁層45を更に備えていてもよい。絶縁層45は、配線基板11の反りを抑制するために第2面14側に設けられる層である。絶縁層45は、有機材料を含む有機層であってもよく、無機材料を含む無機層であってもよく、有機層及び無機層の両方を含んでいてもよい。絶縁層45の層構成は、配線基板11に生じ得る反りの方向及び程度に応じて適切に定められる。
【0076】
絶縁層45の有機層を構成する有機材料としては、第1配線構造部30の有機層36の場合と同様に、ポリイミド、エポキシ、アクリルなどを用いることができる。絶縁層45の無機層を構成する有機材料としては、第1配線構造部30の無機層37の場合と同様に、SiO
2などの珪素酸化物、SiNなどの珪素窒化物を用いることができる。その他にも、SiOC、SiC、SiOF、SiON、SiCNなどを用いることができる。
【0077】
第2面14上に位置する絶縁層45は、基板12の第2領域16だけでなく第1領域15にも設けられていてもよい。例えば、絶縁層45は、第2面14において第1領域15及び第2領域16の両方に跨るよう、広がっている。例えば、絶縁層45は、第2面14の全域に広がっている。この場合、第1領域15に位置する絶縁層45の材料及び厚みは、絶縁層45が光を透過させる透明性を有するよう設定されている。
【0078】
(配線基板の第2変形例)
配線基板11の上述の第1変形例においては、基板12の第2領域16において第2面14上に絶縁層45を設ける例を示した。本変形例においては、絶縁層45に加えて導電層48を更に設ける例について説明する。すなわち、基板12の第2領域16において第2面14上に、絶縁層45及び導電層48を含む配線層を設ける例について説明する。
【0079】
図21は、本変形例に係る配線基板11を示す断面図である。配線基板11は、基板12の第2領域16において第2面14上に位置する第2配線構造部40を更に備える。第2配線構造部40は、基板12の第2領域16において第2面14上に位置する第1配線層41、及び第1配線層41上に位置する第2配線層42を少なくとも含む。
【0080】
図22は、
図21に示す配線基板11の第1配線構造部30及び第2配線構造部40を拡大して示す断面図である。第1配線構造部30の第1配線層31の場合と同様に、第1配線層41は、絶縁層45及び導電層48を有する。絶縁層45は、第1配線層31の絶縁層35と同様に、絶縁性を有する有機材料から構成された有機層46を含む。有機層46が基板12の第2面14に接していてもよく、若しくは、基板12の第2面14と有機層46との間にその他の層が位置していてもよい。有機層46の有機材料としては、例えばポリイミド、エポキシ、アクリルなどを用いることができる。絶縁層45の厚みは、例えば0.5μm以上且つ10μm以下である。
【0081】
第1配線層41の絶縁層45は、有機層46に加えて、若しくは有機層46に代えて、絶縁性を有する無機材料から構成された無機層を含んでいてもよい。第1配線層41の無機層の無機材料としては、SiO
2などの珪素酸化物、SiNなどの珪素窒化物を用いることができる。その他にも、無機層の無機材料の例として、SiOC、SiC、SiOF、SiON、SiCNなどを挙げることができる。
【0082】
導電層48は、第1配線層31や第2配線層32の導電層38と同様に、導電性を有する金属材料を含む。導電層48は、導電層38と同様に、基板12側から第2側D2側へ並ぶバリア層、シード層、及びめっき層などの複数の層を含んでいてもよい。
【0083】
第1配線層41と同様に、第2配線層42も、絶縁層45及び導電層48を有する。絶縁層45には、第1配線層41の導電層48上に位置する開口が設けられている。導電層48は、絶縁層45の開口を介して第1配線層41の導電層48に接続されている。
【0084】
第2配線層42の絶縁層45は、第1配線層41の絶縁層45及び導電層48の上に位置する無機層47と、無機層47よりも第2側D2に位置する有機層46と、を有する。無機層47は、第1配線層41の導電層48を少なくとも部分的に覆っている。なお「覆う」とは、基板12の第2面14の法線方向に沿って配線基板11を見た場合に、第2配線層42の無機層47と第1配線層41の導電層48とが少なくとも部分的に重なっていることを意味する。無機層47は、第1配線構造部30の無機層37と同様に、絶縁性を有する無機材料から構成された層である。無機層47を構成する無機材料や、無機層47の層構成は、無機層37の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
第2配線層42の有機層46は、絶縁性を有する有機材料から構成される。第2配線層42の有機層46の有機材料としては、上述の第1配線層41の有機層46の場合と同様に、ポリイミド、エポキシ、アクリルなどを用いることができる。
【0086】
(配線基板の第3変形例)
配線基板11の上述の第2変形例においては、基板12の第1側D1に位置する第1配線構造部30に含まれる導電層38の層数と、基板12の第2側D2に位置する第2配線構造部40に含まれる導電層48の層数とが同一である例を示した。しかしながら、第1配線構造部30に含まれる導電層38の層数と、第2配線構造部40に含まれる導電層48の層数とが異なっていてもよい。
【0087】
図23は、本変形例に係る配線基板11を示す断面図である。配線基板11の第1配線構造部30は、第1配線層31、第2配線層32及び第3配線層33を含んでおり、このため、第1配線構造部30に含まれる導電層38の層数は3である。一方、配線基板11の第2配線構造部40は、第1配線層41及び第2配線層42を含んでおり、このため、第2配線構造部40に含まれる導電層48の層数は2である。
【0088】
図23に示すように、第1配線構造部30の第2配線層32及び第3配線層33はそれぞれ、有機層36及び無機層37を含んでいる。このため、第1配線構造部30に起因して基板12に反りが生じることを抑制することができる。また、第2配線構造部40の第2配線層42も、有機層46及び無機層47を含んでいる。このため、第2配線構造部40に起因して基板12に反りが生じることを抑制することができる。このように、第1配線構造部30及び第2配線構造部40のそれぞれにおいて、無機層37及び無機層47によって反りの発生が抑制されている。このため、第1配線構造部30に含まれる配線層の層数すなわち導電層38の層数と、第2配線構造部40に含まれる配線層の層数すなわち導電層48の層数とが異なる場合であっても、基板12に反りが生じることを抑制することができる。
【0089】
第2の実施の形態
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1配線構造部30の無機層37が、第1側D1からではなく第2側D2から導電層38に面するように位置している点が異なるのみであり、他の構成は、上述の第1の実施の形態と略同一である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0090】
図24は、第3の実施の形態に係る配線基板11を示す断面図である。
図25は、
図24の配線基板11を拡大して示す断面図である。第1配線構造部30の第1配線層31の絶縁層35は、有機層36と、有機層36よりも第1側D1に位置する無機層37を含む。無機層37は、第1配線層31の導電層38に少なくとも部分的に第2側D2から接していてもよい。このような無機層37を設けることにより、雰囲気温度の変化に起因して配線基板11の構成要素が熱膨張したし熱収縮したりする時に、第2配線層32の導電層38が配線基板11の第1面13の法線方向において変位することを抑制することができる。
【0091】
第1配線層31と同様に、第2配線層32の絶縁層35も、有機層36及び無機層37を含んでいてもよい。第2配線層32の無機層37は、第1配線層31の無機層37と同様に、第2配線層32の有機層36よりも第1側D1に位置していてもよい。この場合、第2配線層32の無機層37は、第2配線層32の導電層38の第2部分38bに少なくとも部分的に第2側D2から接していてもよい。
【0092】
第2配線層32の絶縁層35の有機層36及び無機層37には、第1配線層31の導電層38上に位置する開口が設けられている。第2配線層32の導電層38は、絶縁層35の開口を介して第1配線層31の導電層38に接続されている。
【0093】
図25に示すように、導電層38は、基板12側から第1側D1へ順に並ぶバリア層381、シード層382、及びめっき層383を含んでいてもよい。この場合、無機層37は、導電層38のバリア層381には接するが、めっき層383には接しない。従って、導電層38のバリア層381が銅以外の金属材料で構成されている場合、例えばチタンやチタン化合物で構成されている場合、無機層37は、銅には接しない。このため、無機層37を構成する材料が銅に対する高い密着性を有する必要はない。従って、導電層38に対する密着性という観点からは、本実施の形態による無機層37は、SiNなどの珪素窒化物から構成された層を含んでいる必要はない。例えば、無機層37は、SiO
2などの珪素酸化物から構成された単一の層であってもよい。なお、図示はしないが、第1の実施の形態の無機層37の場合と同様に、無機層37が、SiNなどの珪素窒化物を含む第1無機層と、SiO
2などの珪素酸化物を含む第2無機層と、を含んでいてもよい。
【0094】
配線基板の製造方法
以下、配線基板11の製造方法の一例について、
図26乃至
図32を参照して説明する。
【0095】
(第1配線層の絶縁層の形成工程)
まず、基板12を準備する。次に、
図26に示すように、感光性ポリイミドなどの有機材料を、スピンコート法などによって基板12の第1面13上に成膜して、有機層36を形成する。続いて、有機層36を焼成して有機層36を硬化させる。次に、
図26に示すように、有機層36上に、プラズマCVDにより、無機層37を形成する。
【0096】
(第1配線層の導電層の形成工程)
続いて、
図27に示すように、絶縁層35上に導電層38を形成する。絶縁層35上に導電層38を形成する工程は、第1の実施の形態の場合と同一である。
【0097】
(第2配線層の絶縁層の形成工程)
次に、第1配線層31の絶縁層35の場合と同様にして、
図28に示すように、第1配線層31の絶縁層35上及び導電層38上に、有機層36及び無機層37を形成する。
【0098】
続いて、
図29に示すように、無機層37上に、開口551が設けられたレジスト層55を形成する。続いて、
図30に示すように、レジスト層55をマスクとして、プラズマエッチングにより、レジスト層55の開口551に露出している無機層37をエッチングする。続いて、
図31に示すように、無機層37をマスクとして、有機層36のうち無機層37の開口に露出している部分を除去する。続いて、レジスト層55を削除する。
【0099】
(第2配線層の導電層の形成工程)
続いて、
図32に示すように、絶縁層35の開口及び絶縁層35上に導電層38を形成する。これによって、有機層36及び無機層37を含む絶縁層35と、絶縁層35の開口を介して第1配線層31の導電層38に接続された導電層38と、を有する第2配線層32を得ることができる。
【0100】
上述の第1の実施の形態の場合と同様に、第2の実施の形態に係る配線基板11においても、第1配線構造部30の配線層が、有機層36に加えて無機層37を更に含む。無機層37は、例えば第1配線層31において、有機層36よりも第1側D1に位置している。無機層37を構成する無機材料の熱膨張率は、導電層38を構成する金属材料の熱膨張率や、有機層36を構成する有機材料の熱膨張率よりも小さい。このため、有機層36の熱膨張に起因して基板12に引っ張り応力が発生することを抑制することができる。これによって、基板12に反りが生じてしまうことを抑制することができる。好ましくは、絶縁層35全体の厚みに対する無機層37の厚みの比率が、10%以上且つ60%以下である。
【0101】
また、本実施の形態においても、導電層38に有機層36が接している。このため、雰囲気温度が上昇するとき、導電層38は、有機層36側へ膨張することができる。従って、導電層38の熱膨張に起因する応力が、無機層37と導電層38との間の界面に加わることを抑制することができる。これによって、例えば、無機層37にクラックなどの欠陥が生じてしまうことを抑制することができる。このため、無機層37のクラックを介して導電層38のめっき層383を構成する銅などの金属材料が有機層36内へ拡散してしまうことを抑制することができる。
【0102】
なお、上述した第2の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、第2の実施の形態と同様に構成され得る部分について、第2の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、第2の実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0103】
(第1配線構造部の第1変形例)
図33は、第1変形例に係る第1配線構造部30を示す断面図である。
図33に示すように、第1配線構造部30は、第2配線層32上に位置する第3配線層33を更に含んでいてもよい。第3配線層33は、第2配線層32の導電層38上に位置する開口が設けられた絶縁層35と、絶縁層35の開口を介して第2配線層32の導電層38に接続された導電層38と、を有する。第3配線層33の絶縁層35は、有機層36及び有機層36よりも第1側D1側に位置する無機層37を含む。
【0104】
(第1配線構造部の第2変形例)
図33に示す第1の変形例においては、第1配線層31、第2配線層32及び第3配線層33のいずれもが無機層37を含む例を示したが、これに限られることはなく、第1配線構造部30の複数の配線層の少なくとも1つが無機層37を含んでいればよい。例えば、
図34に示すように、第1配線層31の絶縁層35は無機層37を含むが、第2配線層32の絶縁層35及び第3配線層33の絶縁層35は無機層37を含んでいなくてもよい。第1配線構造部30の複数の配線層の少なくとも1つが無機層37を含むことにより、基板12に反りが生じてしまうことを抑制することができる。また、無機層37よりも第1側D1側に位置する導電層38に生じる残留応力を軽減することができ、このことにより、導電層38にボイドなどの欠陥が形成されることを抑制することができる。
【0105】
(配線基板の第1変形例)
図35に示すように、配線基板11は、基板12の第2領域16において第2面14上に位置する第1配線層41、及び第1配線層41上に位置する第2配線層42を少なくとも含む第2配線構造部40を更に備えていてもよい。
【0106】
第1配線構造部30の第1配線層31の場合と同様に、第2配線構造部40の第1配線層41は、絶縁層45及び導電層48を有する。絶縁層45は、有機層46と、有機層46よりも第2側D2に位置する無機層47と、を含む。
【0107】
第1配線層41と同様に、第2配線層42も、絶縁層45及び導電層48を有する。絶縁層45には、第1配線層41の導電層48上に位置する開口が設けられている。導電層48は、絶縁層45の開口を介して第1配線層41の導電層48に接続されている。絶縁層45は、有機層46と、有機層46よりも第2側D2に位置する無機層47と、を含む。導電層48は、第1配線層31や第2配線層32の導電層38と同様に、導電性を有する金属材料を含む。導電層48は、導電層38と同様に、基板12側から第2側D2側へ並ぶバリア層、シード層、及びめっき層などの複数の層を含んでいてもよい。
【0108】
(配線基板の第2変形例)
上述の第1変形例においては、基板12の第1側D1に位置する第1配線構造部30に含まれる導電層38の層数と、基板12の第2側D2に位置する第2配線構造部40に含まれる導電層48の層数とが同一である例を示した。しかしながら、
図36に示すように、第1配線構造部30に含まれる導電層38の層数と、第2配線構造部40に含まれる導電層48の層数とが異なっていてもよい。
【0109】
図36に示すように、第1配線構造部30の第1配線層31、第2配線層32及び第3配線層33はそれぞれ、有機層36及び無機層37を含んでいる。このため、第1配線構造部30に起因して基板12に反りが生じることを抑制することができる。また、第2配線構造部40の第1配線層41及び第2配線層42も、有機層46及び無機層47を含んでいる。このため、第2配線構造部40に起因して基板12に反りが生じることを抑制することができる。このように、第1配線構造部30及び第2配線構造部40のそれぞれにおいて、無機層37及び無機層47によって反りの発生が抑制されている。このため、第1配線構造部30に含まれる配線層の層数すなわち導電層38の層数と、第2配線構造部40に含まれる配線層の層数すなわち導電層48の層数とが異なる場合であっても、基板12に反りが生じることを抑制することができる。
【0110】
基板の第1領域及び第2領域の配置の変形例
上述の各実施の形態においては、例えば
図2に示すように、基板12の第1領域15が第2領域16よりも広い例を示した。また、平面視において第1領域15が基板12の中央に位置する、例えば第1領域15が基板12の中心点を含む例を示した。また、第1領域15の形状が矩形状である例を示した。しかしながら、第2領域16が第1領域15の周辺に位置する限りにおいて、第1領域15と第2領域16の具体的な形状や位置などが特に限られることはない。
【0111】
例えば、
図37に示すように、第2領域16が第1領域15を囲っており、且つ、第2領域16が第1領域15よりも広くてもよい。また、
図38に示すように、平面視において第1領域15が基板12の中心点を含んでいなくてもよい。例えば、平面視において第1領域15が基板12の中心点よりも基板12の1つの辺寄りに位置していてもよい。また、
図39に示すように、平面視における第1領域15の形状が円形状であってもよい。
【0112】
配線基板の用途の変形例
また、上述の各実施の形態においては、例えば
図3に示すように、配線基板11が、光Lを放射する表示パネル20と組み合わされる例を示した。しかしながら、配線基板11の用途が特に限られることはない。例えば、
図40に示すように、配線基板11を、光Lを受光する受光パネル26と組み合わせて、受光装置25を構成してもよい。
【0113】
受光装置25は、受光パネル26及び配線基板11を備える。受光パネル26は、受光部27及び回路部28を有する。受光部27は、例えばCCDイメージセンサなどの固体撮像素子を含んでおり、光を検出して電気信号を生成する。回路部28は、受光部27を制御したり受光部27から電気信号を取り出したりするための電子部品、配線などを含む。
【0114】
配線基板11は、受光パネル26と対向するよう配置される。配線基板11の第1領域15は、外部から入射した光Lを透過させて受光パネル26の受光部27に到達させる。第1領域15は、例えば、基板12の第1面13の法線方向に沿って受光装置25を見た場合に、受光パネル26の受光部27に重なっている。
【0115】
通電極基板が搭載される製品の例
図41は、本開示の実施形態に係る配線基板11が搭載されることができる製品の例を示す図である。本開示の実施形態に係る配線基板11は、例えば、表示装置10を備える様々なウェアラブル端末において利用され得る。例えば、メガネ型ウェアラブル端末110、バンド121を備えたバンド型ウェアラブル端末120、クリップ131を備えたクリップ型ウェアラブル端末130、取付部141を備えたウェアラブル端末140等に搭載される。バンド型ウェアラブル端末120は、例えば、人の手首、指、腕、足首などに取り付けられる。クリップ型ウェアラブル端末130は、例えば、人が着用している服などに取り付けられる。ウェアラブル端末140の取付部141は、例えば粘着性を有しており、このためウェアラブル端末140を人の皮膚などに取り付けることができる。