【実施例】
【0015】
図1は本発明の一実施例としての燃料電池システム10の構成の概略を示す構成図である。実施例の燃料電池システム10は、
図1に示すように、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガス(エア)との供給を受けて発電する燃料電池36を有する発電ユニット20と、発電ユニット20の発電に伴って発生する熱を回収して給湯する貯湯タンク101を有する給湯ユニット100と、システム全体を制御する制御装置80と、を備える。
【0016】
発電ユニット20は、改質水と原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)との供給を受けてこれらを加熱することにより改質水を蒸発させて水蒸気を生成すると共に原燃料ガスを予熱する気化器32と、気化器32からの原燃料ガスを水蒸気改質反応により改質して燃料ガスを生成する改質器33と、燃料ガスとエアとの供給を受けて発電する燃料電池36とを含む発電モジュール30と、気化器32に原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給装置40と、燃料電池36にエアを供給するエア供給装置50と、気化器32に改質水を供給する改質水供給装置55と、発電モジュール30で発生した排熱を回収する排熱回収装置60と、を備える。なお、発電ユニット20は、筐体22に収容され、筐体22の吸気口22aに設けられた換気ファン24によって内部が換気される。
【0017】
気化器32と改質器33と燃料電池36は、断熱性材料により形成された箱型のモジュールケース31内に収容されている。モジュールケース31内には、燃料電池36の起動や、気化器32における水蒸気の生成、改質器33における水蒸気改質反応に必要な熱を供給するための燃焼部34が設けられている。燃焼部34には燃料電池36からのアノードオフガス(燃料オフガス)とカソードオフガス(酸化剤オフガス)とが供給され、これらの混合ガスが点火ヒータ35により点火されることにより燃焼して燃料電池36や気化器32、改質器33を加熱する。
【0018】
原燃料ガス供給装置40は、燃料供給装置1と気化器32とが原燃料ガス供給管41により接続され、原燃料ガスポンプ45の駆動により燃料供給装置1からの原燃料ガスを原燃料ガス供給弁(電磁弁)42,43と脱硫器46とを介して気化器32へ供給する。気化器32へ供給された原燃料ガスは、気化器32を経て改質器33へ供給され、燃料ガスへと改質される。原燃料ガス供給弁42,43は、直列に接続された2連弁として構成される。脱硫器46は、原燃料ガスに含まれる硫黄分を除去するものであり、例えば、硫黄化合物をゼオライトなどの吸着剤に吸着させて除去する常温脱硫方式などを採用することができる。また、原料ガス供給管41には、当該原料ガス供給管41内の原燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ47や原料ガス供給管41を流れる原燃料ガスの単位時間当たりの流量を検出する流量センサ48が設けられている。
【0019】
エア供給装置50は、外気と連通するフィルタ52と燃料電池36とがエア供給管51により接続され、エア供給管51に設けられたエアブロワ53の駆動により外気をフィルタ52を介して燃料電池36へ供給する。エア供給管51には、当該エア供給管51を流れるエアの単位時間当たりの流量が設定流量NLM_s以上となると作動してオン信号を出力する流量スイッチ54が設けられている。ここで、流量スイッチ54としては、電磁式流量スイッチや機械式流量スイッチなどを採用することができ、流量センサに比して、シンプルな構造で故障が少なく、コスト面でも有利である。また、流量スイッチ54は、本実施例では、設定流量NLM_sが燃料電池36の通常運転時においてエア供給装置50に供給され得る流量範囲内の流量となるように設計されている。
【0020】
改質水供給装置55は、改質水を貯蔵する改質水タンク57と気化器32とが改質水供給管56により接続され、改質水供給管56に設けられた改質水ポンプ58の駆動により改質水タンク57の改質水を気化器32へ供給する。気化器32へ供給された改質水は、気化器32で水蒸気とされ、改質器33における水蒸気改質反応に利用される。改質水タンク57には、貯蔵される改質水を精製する図示しない水精製器が設けられている。
【0021】
排熱回収装置60は、発電モジュール30内の燃焼排ガスが供給される熱交換器62と貯湯水を貯蔵する貯湯タンク101とが循環配管61により接続され、循環配管61に設けられた循環ポンプ63の駆動により熱交換器62にて貯湯タンク101からの貯湯水が燃焼排ガスとの熱交換により加温されて貯湯タンク101に貯湯されるようになっている。熱交換器62は凝縮水供給管66を介して改質水タンク57に接続されると共に排気ガス排出管67を介して外気と接続されており、熱交換器62に供給された燃焼排ガスは貯湯水との熱交換によって水蒸気成分が凝縮されて改質水タンク57に回収されると共に残りの排気ガスが排気ガス排出管67を介して外気へ排出されるようになっている。
【0022】
燃料電池36は、電解質とこの電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とを含む単セルが複数積層された固体酸化物燃料電池として構成されており、燃料ガス中の水素とエア中の酸素とによる電気化学反応によって発電する。燃料電池36の出力端子にはインバータとDC/DCコンバータとを含むパワーコンディショナ71を介して商用電源2から負荷4への電力ライン3が接続されており、燃料電池36からの直流電力が交流電力に変換されて商用電源2からの交流電力に付加されて負荷4に供給できるようになっている。パワーコンディショナ71から分岐した電力ラインには電源基板72が接続されている。
【0023】
電源基板72は、原燃料ガス供給弁42,43やエアブロワ53、原燃料ガスポンプ45、改質水ポンプ58、循環ポンプ63、可燃ガスセンサ91、圧力センサ47、流量センサ48、流量スイッチ54などの補機に直流電力を供給する直流電源として機能する。
【0024】
制御装置80は、CPU81を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU81の他に処理プログラムを記憶するROM82と、データを一時的に記憶するRAM83と、図示しない入出力ポートと、を備える。制御装置80には、圧力センサ47や流量センサ48、流量スイッチ54、筐体22の排気口22b付近に設けられた可燃ガスセンサ91などからの各種検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置80からは、筐体22の吸気口22aに設けられた換気ファン24のファンモータへの駆動信号や原燃料ガス供給弁42,43のソレノイドへの駆動信号、原燃料ガスポンプ45のポンプモータへの駆動信号、エアブロワ53のブロワモータへの駆動信号、改質水ポンプ58のポンプモータへの駆動信号、循環ポンプ63のポンプモータへの駆動信号、パワーコンディショナ71のインバータやDC/DCコンバータへの制御信号、点火ヒータ35への駆動信号、表示パネル90への表示信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0025】
制御装置80は、負荷4の負荷変動に伴う負荷指令を入力し、入力した負荷指令に応じた流量により原燃料ガスやエア等が供給されるよう原燃料ガス供給装置40やエア供給装置50等を制御する。ここで、本実施例では、原燃料ガス供給装置40の制御は、入力した負荷指令に基づいて原燃料ガス供給装置40が供給すべき目標流量を設定し、設定した目標流量と流量センサ48により検出される流量との偏差に基づくフィードバック制御により制御DUTYを設定し、設定した制御DUTYにより原燃料ガスポンプ45のポンプモータを駆動制御することにより行なわれる。また、エア供給装置50の制御は、入力した負荷指令に基づいてエア供給装置50が供給すべき目標流量を設定し、設定した目標流量に基づいてマップから対応する制御DUTYを設定し、設定した制御DUTYによりエアブロワ53のブロワモータを駆動制御することにより行なわれる。
図2にマップの一例を示す。マップでは、図示するように、流量と制御DUTYとが比例関係を有する。
【0026】
次に、こうして構成された燃料電池システム10の動作、特に、エア供給装置50を制御するためのマップを更新する処理について説明する。
図3は、制御装置80のCPU81により実行されるマップ更新処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、負荷増大を伴う負荷指令を入力したときに実行される。
【0027】
マップ更新処理ルーチンが実行されると、制御装置80のCPU81は、まず、入力した負荷指令に応じて燃料電池36へ供給されるエアの流量が増量するよう制御DUTYを徐々に上昇させてエア供給装置50(エアブロワ53)を制御しながら(ステップS100)、流量スイッチ54の出力信号がオフ信号からオン信号に変化するのを待つ(ステップS110)。流量スイッチ54の出力信号がオフ信号からオン信号に変化すると、そのときに設定している制御DUTYを制御DUTY_aとしてRAM83に記憶し(ステップS120)、記憶した制御DUTY_aが下限値DUTY_Lよりも大きく且つ上限値DUTY_Hよりも小さいか否かを判定する(ステップS130,S140)。ここで、下限値DUTY_Lおよび上限値DUTY_Hは、流量スイッチ54が正常に作動するときに取り得る制御DUTY範囲の下限値および上限値を示すものである。制御DUTY_aが下限値DUTY_Lよりも大きく上限値DUTY_Hよりも小さいと判定すると、制御DUTY_aに基づいてマップを更新して(ステップS150)、マップ更新処理ルーチンを終了する。
図4にマップを更新する様子を示す。マップの更新は、図示するように、流量と制御DUTYとの関係を、設定流量NLM_sと制御DUTY_aとの交点と原点とを通る直線上の比例関係とすることにより行なわれる。上述したように、流量スイッチ54は、設定流量NLM_sが燃料電池36の通常運転時においてエア供給装置50に要求されるエア流量範囲内の流量となるよう設計されているから、燃料電池36の運転中にマップを更新することができる。
【0028】
ステップS130において制御DUTY_aが下限値DUTY_L以下と判定したり、ステップS140において制御DUTY_aが上限値DUTY_H以上と判定すると、流量スイッチ54が故障していると判定して(ステップS160)、マップ更新処理ルーチンを終了する。なお、この場合、CPU81は、流量スイッチ54のメンテナンスや交換を促す警告表示を表示パネル90に表示する。
【0029】
図5は制御DUTYと流量スイッチ出力と流量の時間変化の様子を示す説明図である。図示するように、マップを用いて制御されるエアブロワ53(ブロワモータ)の制御DUTYが上昇してエア供給管51を流れるエアの流量が設定流量NLM_s以上となると、流量スイッチ54の出力がオフ信号からオン信号となる。このときの制御DUTY_aは、設定流量NLM_sと対応するため、その対応関係をマップに反映させることで、機器のバラツキや設置環境、経時変化等による圧損変化に対応することができる。
【0030】
以上説明した本実施例の燃料電池システム10は、エア供給管51を流れるエアの流量が設定流量NLM_s以上となったときにオン信号を出力する流量スイッチ54を設け、流量スイッチ54の出力信号がオフ信号からオン信号へ変化したときに、そのときの制御DUTY_aと設定流量NLM_sとの関係をマップに反映させることによりマップを更新する。これにより、機器のバラツキや設置環境、経時変化等による圧損変化に対応することができる。この結果、流量計を用いることなく、エアの流量制御を精度良く行なうことができる。
【0031】
また、本実施例の燃料電池システム10では、流量スイッチ54は、設定流量NLM_sが燃料電池36の通常運転時においてエア供給装置50に要求されるエアの流量範囲内の流量となるように設計される。これにより、燃料電池36の運転中にマップを更新することができ、流量制御の制御精度をより向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施例の燃料電池システム10は、流量スイッチ54の出力信号がオフ信号からオン信号へ変化したときの制御DUTY_aが下限値DUTY_Lおよび上限値DUTY_Hにより定まるDUTY範囲内にない場合には、流量スイッチ54に故障が生じていると判断する。これにより、マップを更新する際に流量スイッチ54の異常の有無も判定することができる。
【0033】
実施例では、設定流量NLM_sが燃料電池36の通常運転時においてエア供給装置50に要求されるエアの流量範囲内の流量となるように流量スイッチ54を設計したが、燃料電池36の起動時においてエア供給装置50に要求されるエアの流量範囲内の流量となるように流量スイッチ54を設計するものとしてもよい。この場合、マップ更新処理ルーチンは、燃料電池36の起動時において実行されるものとしてもよい。これにより、燃料電池36の燃焼性の厳しいポイントである起動時の流量制御の制御精度を向上させて燃焼性を良好なものとすることができる。
【0034】
実施例では、燃料電池36の運転時において負荷変動を伴う負荷指令を入力したときにマップ更新処理を実行するものとしたが、燃料電池36の起動前においてマップ更新処理を実行するものとしてもよい。これにより、燃料電池36の起動前にマップを更新しておくことで、燃料電池36の起動時や運転時における流量制御を精度良く実行することができる。
【0035】
実施例では、負荷増大を伴う負荷指令の入力によりエアブロワ53の駆動制御する際の制御DUTYを上昇させて流量スイッチ54の出力信号がオフ信号からオン信号に変化したときにマップを更新するものとしたが、負荷減少を伴う負荷指令の入力によりエアブロワ53の駆動制御する際の制御DUTYを下降させて流量スイッチ54の出力信号がオン信号からオフ信号に変化したときにマップを更新してもよい。
【0036】
実施例では、原燃料ガス供給管41に流量センサ48を設け、原燃料ガスポンプ45の制御を、目標流量と流量センサ48により検出される流量との偏差に基づくフィードバック制御により行なうものとしたが、マップを用いて目標流量から対応する制御DUTYを設定することにより制御するものとしてもよい。この場合、流量センサ48に代えて原燃料ガス供給管41を流れる原燃料ガスの流量が設定流量以上となると作動する流量スイッチを設けて、流量スイッチが作動したときの制御DUTY_aと設定流量との関係に基づいてマップを更新すればよい。また、改質水供給装置55の改質水ポンプ58の制御を、マップを用いて目標流量から対応する制御DUTYを設定することにより行なうものとしてもよい。この場合も、改質水供給管56に流量スイッチを設けて、流量スイッチが作動したときの制御DUTY_aと設定流量との関係に基づいてマップを更新すればよい。このように、システムで用いられる流体の流量をマップを用いて制御可能なものであれば、如何なる流体供給装置にも適用することができる。
【0037】
実施例では、マップを用いて目標流量に対応する制御DUTYを設定するものとしたが、マップに代えて演算式を用いて目標流量に対応する制御DUTYを設定するものとしてもよい。この場合、演算式を更新する際には、設定流量NLM_sと制御DUTY_aとの交点と原点とを通る直線の比例関係式を演算式として求めるものとすればよい。
【0038】
実施例やその変形例では、マップや演算式を、制御DUTYと流量との関係として定めるものとしたが、例えば、ブロワモータやポンプモータの回転数と流量との関係として定めてモータを回転数によって制御するなど、操作量と流量との関係を定めるものであれば、如何なるものであってもよい。
【0039】
実施例では、制御DUTY_aが下限値DUTY_Lおよび上限値DUTY_Hにより定まるDUTY範囲内にない場合には、流量スイッチ54に故障が生じていると判定したが、こうした判定を行なわないものとしてもよい。
【0040】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エアブロワ53が「流体供給装置」に相当し、流量スイッチ54が「流量スイッチ」に相当し、制御装置80が「制御装置」に相当する。
【0041】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。