特許第6801360号(P6801360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6801360-発泡壁紙 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801360
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】発泡壁紙
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/00 20060101AFI20201207BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   D06N7/00
   B32B27/00 E
   B32B27/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-206174(P2016-206174)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-66089(P2018-66089A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】南部 祐一
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−102273(JP,A)
【文献】 特開2007−211238(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/085151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00− 7/06
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
水性エマルジョン系樹脂、発泡剤及び無機フィラーを含有する発泡樹脂層と、
樹脂、金属粒からなる抗菌剤及び有機窒素硫黄ハロゲン系化合物からなる防カビ剤を含有する表面保護層とがこの順で積層され、
前記抗菌剤の平均粒径が0.2μm以上0.6μm以下であり、
前記表面保護層の樹脂100質量部に対して、前記抗菌剤が0.05質量部以上1.0質量部以下であり、
前記表面保護層の樹脂100質量部に対して、前記防カビ剤が0.1質量部以上1.0質量部以下であることを特徴とする発泡壁紙。
【請求項2】
前記表面保護層の樹脂100質量部に対して、前記防カビ剤が0.2質量部以上0.4質量部以下である請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項3】
前記紙基材は、坪量が50g/m以上100g/m以下、かつ厚み80μm以上150μm以下であり、
前記発泡樹脂層は、坪量が50g/m以上220g/m以下、かつ3倍以上の発泡倍率であり、
前記表面保護層は、坪量が5g/m以上40g/m以下である請求項1又は2に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
前記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤である請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床、壁、天井等の建築物内装材等の用途に用いる発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙基材(いわゆる壁紙用裏打紙)の上に少なくとも発泡樹脂層が積層された積層シート(いわゆる発泡壁紙用原反)の発泡樹脂層を架橋させた後に発泡させることにより発泡壁紙を製造することができる。このような発泡壁紙の一例として、特許文献1に、紙基材、樹脂層及び絵柄模様層を有し、絵柄模様層の密着性及び表面ラビング特性を向上させた発泡壁紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−196590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発泡壁紙においては、耐汚染性と、抗菌性及び防カビ性とを同時に付与することが望まれている。そこで、従来の発泡壁紙では、発泡樹脂層に抗菌剤及び防カビ剤を添加することで抗菌性及び防カビ性を付与し、発泡樹脂層の上に耐汚染性を有する表面保護層を設けることで耐汚染性を付与していた。しかしながら、抗菌剤及び防カビ剤が添加された発泡樹脂層は表面保護層の下層に位置しているため、抗菌性能及び防カビ性能が出難かった。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、耐汚染性と高い抗菌性及び防カビ性とが付与された発泡壁紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る発泡壁紙は、紙基材と、水性エマルジョン系樹脂、発泡剤及び無機フィラーを含有する発泡樹脂層と、樹脂、抗菌剤及び防カビ剤を含有する表面保護層とがこの順で積層され、上記抗菌剤の平均粒径が0.2μm以上0.6μm以下であり、上記表面保護層の樹脂100質量部に対して、上記抗菌剤が0.05質量部以上1.0質量部以下であり、上記表面保護層の樹脂100質量部に対して、上記防カビ剤が0.1質量部以上1.0質量部以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、耐汚染性と高い抗菌性及び防カビ性とが付与された発泡壁紙を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る発泡壁紙の断面の形状の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る発泡壁紙について説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(発泡壁紙)
図1に、本発明の一実施形態に係る発泡壁紙10の断面の形状の一例を示す。
本実施形態の発泡壁紙10は、基材となる紙基材1の上に、発泡樹脂層2、適宜設ける絵柄模様層3、表面保護層4が、この順に積層されている。更に、本実施形態に係る発泡壁紙10の表面にはエンボス模様5が賦型されている。発泡樹脂層2、絵柄模様層3及び表面保護層4は紙基材1上で積層体を構成している。そして、表面保護層4は積層体の最上層に設けられ、最終保護膜として用いられている。
【0010】
<紙基材>
紙基材1は、いわゆる壁紙用裏打紙(繊維質シート)である。紙基材1としては、例えば、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙;繊維混抄紙(パルプと合成繊維とを混合して抄紙したもの)等が挙げられる。
【0011】
この実施形態では、紙基材1としては、普通紙が適用可能であり、坪量50g/m以上100g/m以下、かつ厚み80μm以上150μm以下の範囲のものとすることにより、壁装材として求められる剛性が確保される。
【0012】
<発泡樹脂層>
発泡樹脂層2は、紙基材1の表面に発泡剤を含有した樹脂を塗工することで形成される。本実施形態では、樹脂に対して、発泡剤、可塑剤、安定剤、減粘剤その他の有機系添加剤、及び充填剤として無機粉体(無機フィラー)を用途に応じて適宜混合し、紙基材1の表面にシート状もしくは絵柄模様状に塗工することで、発泡樹脂層2を設ける。
樹脂の塗工方法としては、例えば、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法等の塗工方法を挙げられる。
【0013】
発泡樹脂層2に含有される樹脂としては、水性エマルジョンの形態で使用可能な樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂が使用可能であり、特にエチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体の少なくとも1種がより好ましい。更に言えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂が好適に使用可能である。
【0014】
エチレン共重合体は、融点及びMFRの観点で押出し製膜に適している。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらのエチレン共重合体は単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのエチレン共重合体の中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種が好ましく、これらと他の樹脂とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0015】
また、エチレン共重合体に含有されるエチレン以外のモノマーの含有量としては、例えば、5質量%以上25質量%以下が好ましく、9質量%以上20質量%以下がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性がより高まる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9質量%以上25質量%以下が好ましく、9質量%以上20質量%以下がより好ましい。エチレン−メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5質量%以上25質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体は、アクリル酸の共重合比率(MAA量)としては2質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上11質量%以下がより好ましい。
【0016】
ここで、発泡樹脂層2に含有される樹脂は、例えば、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10分当たり10g以上100g以下(10g/10分以上100g/10分以下)であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡樹脂層2を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層3を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、形成される発泡樹脂層2の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0017】
また、発泡樹脂層2に含有される発泡剤としては、通常公知の発泡壁紙に使用されている発泡剤の使用が可能であるが、特に、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤が性能(発泡倍率、強度)の観点から好ましい。その他、アゾ系、ヒドラジッド系、ニトロソ系等が使用可能である。
発泡剤の添加量としては、発泡樹脂層2の厚みと発泡倍率(発泡前後での体積の膨張率)にもよるが、例えば、樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下、好ましくは5質量部以上15質量部以下程度が良い。
なお、発泡樹脂層2の坪量と発泡倍率を、坪量50g/m以上220g/m以下、かつ3倍以上の発泡倍率とすることで、不陸隠蔽性を得るのに十分なボリューム感を有しかつ優れた表面強度を有するとともに、後述するエンボス模様5の凹凸形状もシャープに再現することができる。
【0018】
発泡樹脂層2に含有される無機粉体としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪砂、タルク、シリカ類、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、二酸化チタン等が挙げられる。無機粉体は、樹脂100質量部に対して50質量部以上150質量部以下の量を加えるものとする。
このように、本実施形態に係る発泡樹脂層2は、水性エマルジョン系樹脂と発泡剤と無機フィラーとを含有する樹脂組成物により形成される。
【0019】
<絵柄模様層>
絵柄模様層3は、発泡壁紙10に意匠性を付与する。絵柄模様層3は、例えば、発泡樹脂層2の表面に絵柄模様を印刷することで形成できる。もしくは、発泡樹脂層2を絵柄模様状に塗工することでも形成できる。絵柄模様層3の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1μm以上10μm以下程度とすることが好ましい。
【0020】
絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、目的に応じて選択できる。
【0021】
絵柄模様の印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、例えば、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0022】
着色剤としては、例えば、顔料を適宜使用することができる。顔料には、無機顔料と有機顔料とがある。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。着色剤の含有量は、樹脂100質量部に対して10質量部以上50質量部以下程度が好ましく、15質量部以上30質量部以下程度がより好ましい。
また、発泡樹脂層2が絵柄模様層3に対するベタ層の役割を果たす場合、又は発泡樹脂層2を絵柄模様状に塗工する場合には、発泡樹脂層2も着色剤を含有していても良い。
【0023】
結着材樹脂は、絵柄模様層3を形成する下層の樹脂の種類に応じて設定できる。結着材樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0024】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0025】
本実施形態では、絵柄模様層3は、印刷インキ(非発泡性インキ)及び/又は水性エマルジョン樹脂を主成分とした発泡性インキ、塩化ビニルペースト樹脂を主成分とした発泡性インキ等を用いて、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等にて形成する。
【0026】
なお、発泡樹脂層2の上に絵柄模様層3を形成しない場合は、絵柄模様層3の代替として、アンダーコート層(プライマー層)を形成しても良い。アンダーコート層は、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を含み、乾燥後の坪量は1g/m以上3g/m以下が望ましい。
【0027】
<表面保護層>
表面保護層4は、絵柄模様層3の表面に、艶調整及び/又は絵柄模様層3の保護を意図して形成される。表面保護層4の厚みは限定的ではないが、0.1μm以上15μm以下程度が好ましい。ここで、表面保護層4の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層4であれば、例えば、シリカ等の既知フィラーを含む表面保護層4がある。
表面保護層4の形成方法としては、例えば、グラビア印刷等の公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層3と表面保護層4との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層3の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層4を設けることもできる。発泡壁紙10の表面強度(耐スクラッチ性等)、耐汚染性、絵柄模様層3の保護等を目的として表面保護層4を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0028】
本実施形態では、表面保護層4は、絵柄模様層3の上に形成するものとし、水性エマルジョン樹脂を主成分とした層を、グラビア印刷法、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法等にて形成する。
【0029】
表面保護層4に含有される樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、特にアクリル系樹脂が好適である。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。また、表面保護層4の形成に架橋可能な樹脂を使用する場合には、必要に応じて、当該樹脂に架橋処理を行っても良い。表面保護層4の乾燥後の坪量は5g/m以上40g/m以下、できれば15g/m以上30g/m以下とすることが好ましい。
【0030】
また、表面保護層4に含有される樹脂には、艶消剤(艶調整剤)としてフィラーを添加する。艶消剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ(α−アルミナ等)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリナイト、アルミノシリケート等の無機物の粒子、或いはポリカーボネート、ナイロン、ウレタン樹脂等の有機物の粒子を用いることができる。
【0031】
また、表面保護層4に含有される樹脂には、抗菌性及び防カビ性を付与するために抗菌剤及び防カビ剤が添加されている。
[抗菌剤]
抗菌剤としては、平均粒径が0.2μm以上0.6μm以下の金属粒が挙げられる。これは、粒径が大きいと凝集し易く、分散性が悪いためである。また、平均粒径は0.3μm以上0.5μm以下がより好ましい。この平均粒径は、レーザー回折散乱法によって測定される平均粒径である。また、上記金属粒としては銀系金属粒が好ましい。
また、抗菌剤は、表面保護層4の樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上1.0質量部以下添加されている。抗菌剤の添加量が0.05質量部より少ないと抗菌性の効果を十分に発揮できず、抗菌剤の添加量が1.0質量部より多いと発泡倍率が低下する。
【0032】
[防カビ剤]
防カビ剤としては、例えば水分散タイプの有機窒素硫黄ハロゲン系化合物を用いることが好ましい。
また、防カビ剤は、表面保護層4の樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上1.0質量部以下添加されており、0.2質量部以上0.4質量部以下添加されていることが好ましい。
このように、本実施形態における表面保護層4は、アクリル系樹脂とフィラーとを含有し、更に抗菌剤と防カビ剤とを含有する。
【0033】
[エンボス模様]
発泡壁紙10の最表層である表面保護層4の表面に対してエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施し、エンボス模様5を賦型(付与)する。エンボス加工では、例えば、発泡壁紙10を、深度15μm以上の凹部を有するエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、発泡壁紙10に凹凸形状を施すようにしても良い。硬度の計測方法としては、例えば、JIS K−6301 A型を用いることができる。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0034】
なお、表面保護層4の表面に凹凸形状を形成する方法としては、他にも、発泡抑制インキにより部分的に発泡させる方法や、熱風や赤外線により部分的に加熱発泡させるケミカルエンボス方法があるが、特にエンボスロールによる圧接によるメカニカルエンボスが発泡樹脂層2に対してシャープな凹凸を得ることができるので好ましい。また、エンボス工程におけるエンボス版の接触直前の発泡壁紙10の表面温度を160℃以上190℃以下、できれば170℃以上180℃以下に維持することが好ましい。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る発泡壁紙10は、紙基材1の上に、水性エマルジョン系樹脂、発泡剤及び無機フィラーを含有する樹脂塑性物による発泡樹脂層2と、水性エマルジョン系樹脂及びフィラーを含有し、更に抗菌剤及び防カビ剤を含有する表面保護層4と、がこの順で積層されている。従って、本実施形態に係る発泡壁紙10は、最上層である表面保護層4に抗菌剤及び防カビ剤が添加されているので、発泡樹脂層に抗菌剤及び防カビ剤を添加した従来の場合と比較して、耐汚染性と高い抗菌性及び防カビ性とが付与されている。
【0036】
また、防火性能を付与する観点から、本実施形態の発泡壁紙10の合計坪量は170g/m以下であることが望ましい。すなわち、紙基材1、発泡樹脂層2、及び表面保護層4の合計坪量は170g/m以下であることが好ましい。その場合の各層の坪量については、例えば、紙基材1の坪量が65g/m以下、発泡樹脂層2の坪量が85g/m以下、表面保護層4の坪量が20g/m以下であることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、本実施形態の実施例及び比較例を示す。なお、本実施形態は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、紙基材1(壁紙用裏打紙)として、坪量85g/mで厚み130μmの普通紙〔日本製紙(株):「WK685AP」〕からなる紙基材を用いた。
次に、発泡樹脂層2として、EVA樹脂〔住化ケムテックス製:「S−7400(HQ)」〕に充填剤(無機フィラー)80質量部及びカプセル発泡剤10質量部を加えたペースト材を坪量120g/mとなるようにコーティング法により紙基材上に塗布して発泡倍率が3倍の発泡樹脂層を形成した。
次に、絵柄模様層3として、アクリル樹脂系インキを坪量2g/mとなるようにグラビア印刷により発泡樹脂層上に絵柄印刷して絵柄模様層を形成した。
次に、表面保護層4として、アクリル樹脂に抗菌剤0.05質量部及び防カビ剤0.1質量部を加えたペースト材を坪量20/mとなるようにリップコーター法により絵柄模様層上に塗布して表面保護層を形成した。
こうして、紙基材の上に積層体を形成した。そして、この後、所定の温度を加えて積層体に含まれる発泡剤を熱発泡すると同時にエンボスロールにより加圧してエンボス模様を付加した。
最後に、冷却処理及び乾燥処理を施して実施例1の発泡壁紙を作成した。抗菌剤としては、粒径0.3μm以上0.5μm以下の銀系金属粒((株)タイショーテクノス製)を用いた。また、防カビ剤としては、水分散タイプの有機窒素硫黄ハロゲン系化合物((株)タイショーテクノス製)を用いた。
【0038】
紙基材1として坪量85g/mかつ厚み130μmの普通紙(日本製紙(株):「WK685AP」)を用い、発泡樹脂層2としてEVA樹脂(住化ケムテックス製:「S−7400(HQ)」)100質量部に対して、防火性能を付与するために無機粉体(無機フィラー)80質量部、発泡厚みを得るために熱膨張性マイクロカプセル発泡剤(松本油脂製薬製:「FT−16」)10質量部を加えたペーストを合計坪量185g/mとなるようにコーティング法により塗布した後、表面保護層4としてアクリル樹脂(DIC(株):「ATC−354」)を合計坪量205g/mとなるようにリップコーター法により塗布し、発泡炉出口紙面温度150℃及びエンボスヒーター出口紙面温度180℃で加熱発泡を行い、同時にエンボスヒーター通過後直ちにエンボスロールにて加圧してエンボス模様5の付与を行い、その後冷却、乾燥して実施例1の発泡壁紙を作成した。
【0039】
(実施例2)
防カビ剤の添加量を0.3質量部とした以外は実施例1と同様にして実施例2の発泡壁紙を作製した。
【0040】
(比較例1)
防カビ剤の添加量を0.05質量部とした以外は実施例1と同様にして比較例1の発泡壁紙を作製した。
【0041】
(比較例2)
抗菌剤及び防カビ剤を実施例1と同じ添加量で発泡樹脂層に添加した以外は実施例1と同様にして比較例2の発泡壁紙を作製した。
【0042】
(評価)
<抗菌性>
実施例1,2及び比較例1,2の発泡壁紙について、壁紙工業会制定の規格「抗菌壁紙性能規定」に準拠した試験により抗菌性を評価した。評価基準としては、生菌数(CFU/cm)の値が0.63より低いものを「○」とし、0.63以上のものを「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0043】
<カビ抵抗性>
実施例1,2及び比較例1,2の発泡壁紙について、紙工業会制定の規格「抗菌壁紙性能規定」に準拠した試験によりカビ抵抗性を評価した。評価基準としては、肉眼及び顕微鏡下でカビの育成が認められないものを「○」とし、カビの育成が認められるものを「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0044】
<耐汚染性>
実施例1,2及び比較例1,2の発泡壁紙について、壁紙工業会制定の規格「耐汚染性能規定」に準拠した試験により耐汚染性を評価した。評価基準としては、4級以上を「○」とし、3級以下を「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から分かるように、実施例1及び実施例2の発泡壁紙では、抗菌性試験、カビ抵抗性試験及び汚染性試験の全てにおいて要求を満たすことが確認できた。一方、比較例2では、抗菌性試験及びカビ抵抗性試験において要求を満たさないことが確認できた。これにより、実施例1及び実施例2では、比較例2とは異なり、耐汚染性と、高い抗菌性及び防カビ性とを共に付与できることを確認した。
【0047】
また、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2では抗菌剤の添加量を0.05質量部としたが、別の評価結果で抗菌剤の添加量が0.05質量部より少ないと抗菌性の効果がでないことも確認できた。そして、抗菌剤の添加量が1.0部より多いと発泡樹脂層2での発泡倍率が低下することも確認できた。
以上のことから、抗菌剤の添加量は、0.05質量部以上1.0質量部以下の範囲内とすることが好ましいことも確認できた。
【0048】
また、比較例1のように防カビ剤の添加量が0.05質量部だとカビ抵抗性試験での要求を満たさないことから、防カビ剤の添加量が0.05質量部よりも少ないと防カビ性の効果がでないことも確認できた。そして、別の評価結果で防カビ剤の添加量が1.0質量部よりも多いと発泡樹脂層での発泡倍率が低下することも確認できた。
【0049】
以上のことから、防カビ剤の添加量は、0.1質量部以上1.0質量部以下の範囲内であることが好ましいことも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本実施形態に係る発泡壁紙は、戸建て住宅、集合住宅、店舗、事務所ビル等の建築物の壁面装飾等に利用可能である。
【0051】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。
例えば、上述の実施形態及び実施例では、絵柄模様層を備えた発泡壁紙について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、絵柄模様層を省略した発泡壁紙に適用することができると共に、絵柄模様層に換えてアンダーコート層を備えた発泡壁紙にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…紙基材
2…発泡樹脂層
3…絵柄模様層
4…表面保護層
5…エンボス模様
10…発泡壁紙
図1