(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反射膜間ギャップを介して対向する2つの反射膜、及び、前記反射膜間ギャップのギャップ量を変更する静電アクチュエーターを備える波長可変干渉フィルターと、電力供給部からの複数の供給電圧により駆動され、前記静電アクチュエーターに駆動電圧を印加する電圧制御部と、を備える光学モジュールと、
前記光学モジュールを制御するモジュール制御部と、を具備し、
前記電圧制御部は、前記複数の供給電圧のいずれかが所定の閾値未満となった場合に、前記駆動電圧を低下させる
ことを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。第1実施形態では、本発明に係る光学モジュール及び電子機器の一例として、プリンター10(インクジェットプリンター)について説明する。
[プリンターの概略構成]
図1は、第1実施形態のプリンター10の外観の構成例を示す図である。
図2は、本実施形態のプリンター10の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プリンター10は、供給ユニット11と、搬送ユニット12と、キャリッジ13と、キャリッジ移動ユニット14と、制御ユニット15(
図2参照)と、を備える。このプリンター10は、例えばパーソナルコンピューター等の外部機器30から入力された印刷データに基づいて、各ユニット11,12,14及びキャリッジ13を制御し、媒体Aに画像を印刷する。また、本実施形態のプリンター10は、媒体Aに印刷された画像の分光測定を行い、測定結果に基づく処理を行う(例えば色較正用のカラーパッチの分光測定の測定結果に基づいて色較正処理を行う)。
以下、プリンター10の各構成について具体的に説明する。
【0020】
供給ユニット11は、画像形成対象となる媒体A(本実施形態では、白色紙面を例示)を、画像形成位置に供給するユニットである。この供給ユニット11は、例えば媒体Aが巻装されたロール体111(
図1参照)、ロール駆動モーター(図示略)、及びロール駆動輪列(図示略)等を備える。そして、制御ユニット15からの指令に基づいて、ロール駆動モーターが回転駆動され、ロール駆動モーターの回転力がロール駆動輪列を介してロール体111に伝達される。これにより、ロール体111が回転し、ロール体111に巻装された紙面がY方向(副走査方向)における下流側(+Y方向)に供給される。
なお、本実施形態では、ロール体111に巻装された紙面を供給する例を示すがこれに限定されない。例えば、トレイ等に積載された紙面等の媒体Aをローラー等によって1枚ずつ供給する等、如何なる供給方法によって媒体Aが供給されてもよい。
【0021】
搬送ユニット12は、供給ユニット11から供給された媒体Aを、Y方向に沿って搬送する。この搬送ユニット12は、搬送ローラー121と、搬送ローラー121と媒体Aを挟んで配置され、搬送ローラー121に従動する従動ローラー(図示略)と、プラテン122と、を含んで構成されている。
搬送ローラー121は、図示略の搬送モーターからの駆動力が伝達され、制御ユニット15の制御により搬送モーターが駆動されると、その回転力により回転駆動されて、従動ローラーとの間に媒体Aを挟み込んだ状態でY方向に沿って搬送する。また、搬送ローラー121のY方向の下流側(+Y側)には、キャリッジ13に対向するプラテン122が設けられている。
【0022】
キャリッジ13は、媒体Aに対して画像を印刷する印刷部16と、媒体A上の所定の測定領域R(
図3参照)の分光測定を行う分光器17と、を備えている。
印刷部16は、例えば下面(媒体Aに対向する面)側に形成されたノズルからインクを吐出して画像を形成する、所謂、インクジェットヘッドである。この印刷部16は、例えば、複数色のインクに対応したインクカートリッジ161と、各ノズルに設けられ対応する色のインクカートリッジ161からインクが供給される圧力室と、圧力室に設けられるピエゾ素子と、を備え、ピエゾ素子の駆動によってノズルから吐出されたインク滴により、媒体Aにインクドットが形成される。
分光器17は、後に詳述するが、一対の反射膜間のギャップ量に応じた波長の光を透過させる波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルターのギャップ量を制御するフィルター制御部18とを含み構成され、光学モジュールに相当する。
【0023】
キャリッジ13は、キャリッジ移動ユニット14によって、Y方向と交差する主走査方向(本発明における一方向であり、X方向)に沿って移動可能に設けられている。
また、キャリッジ13は、フレキシブル回路131により制御ユニット15に接続され、制御ユニット15からの指令に基づいて、印刷部16による印刷処理(媒体Aに対する画像形成処理)及び、分光器17による分光測定処理を実施する。
【0024】
キャリッジ移動ユニット14は、本発明における移動機構を構成し、制御ユニット15からの指令に基づいて、キャリッジ13をX方向に沿って往復移動させる。
このキャリッジ移動ユニット14は、例えば、キャリッジガイド軸141と、キャリッジモーター142と、タイミングベルト143と、を含んで構成されている。
キャリッジガイド軸141は、X方向に沿って配置され、両端部がプリンター10の例えば筐体に固定されている。キャリッジモーター142は、タイミングベルト143を駆動させる。タイミングベルト143は、キャリッジガイド軸141と略平行に支持され、キャリッジ13の一部が固定されている。そして、制御ユニット15の指令に基づいてキャリッジモーター142が駆動されると、タイミングベルト143が正逆走行され、タイミングベルト143に固定されたキャリッジ13がキャリッジガイド軸141にガイドされて往復移動する。
【0025】
制御ユニット15は、モジュール制御部に相当し、
図2に示すように、I/F151と、ユニット制御回路152と、メモリー153と、CPU(Central Processing Unit)154と、を含んで構成される。
I/F151は、外部機器30から入力される印刷データをCPU154に入力する。
ユニット制御回路152は、制御部152Aと、電力供給部152Bと、を備える。
制御部152Aは、CPU154からの指令信号に基づいて、各ユニット11〜14(フィルター制御部18を含む)をそれぞれ制御する。
電力供給部152Bは、各ユニット11〜14、(フィルター制御部18を含む)に電力を供給する。
【0026】
メモリー153は、プリンター10の動作を制御する各種プログラムや各種データを記憶している。各種データとしては、例えば、印刷データとして含まれる色データに対する各インクの吐出量を記憶した印刷プロファイルデータ等が挙げられる。また、光源部171の各波長に対する発光特性や、受光部173の各波長に対する受光特性(受光感度特性)等が記憶されていてもよい。
【0027】
CPU154は、メモリー153に記憶された各種プログラムを読み出し実行することで、供給ユニット11、搬送ユニット12、及びキャリッジ移動ユニット14の駆動制御、印刷部16の印刷制御、分光器17の分光測定制御、及び分光器17による測定データに基づく処理(色較正処理等)を実施する。
【0028】
[分光器の構成]
図3は、分光器17の概略構成を示す断面図である。
分光器17は、
図3に示すように、光源部171と、波長可変干渉フィルター5を含む光学フィルターデバイス172と、受光部173と、導光部174と、フィルター制御部18(
図2参照)と、を備えている。
この分光器17は、光源部171から媒体A上に照明光を照射し、媒体Aで反射された光成分を、導光部174により光学フィルターデバイス172に入射させる。そして、光学フィルターデバイス172は、この反射光から所定波長の光を出射(透過)させて、受光部173により受光させる。また、光学フィルターデバイス172は、制御ユニット15の制御に基づいて、透過波長(出射波長)を選択可能であり、可視光における各波長の光の光量を測定することで、媒体A上の測定領域Rの分光測定が可能となる。
【0029】
[光源部、受光部及び導光光学系の構成]
光源部171は、光源171Aと、集光部171Bとを備える。この光源部171は、光源171Aから出射された光を媒体Aの測定領域R内に、媒体Aの表面に対する法線方向から照射する。
光源171Aとしては、可視光域における各波長の光を出射可能な光源が好ましい。このような光源171Aとして、例えばハロゲンランプやキセノンランプ、白色LED等を例示でき、特に、キャリッジ13内の限られたスペース内で容易に設置可能な白色LEDが好ましい。集光部171Bは、例えば集光レンズ等により構成され、光源171Aからの光を測定領域Rに集光させる。なお、
図3においては、集光部171Bでは、1つのレンズ(集光レンズ)のみを表示するが、複数のレンズを組み合わせて構成されていてもよい。
【0030】
受光部173は、波長可変干渉フィルター5の光軸上に配置され、当該波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する。そして、受光部173は、制御ユニット15の制御に基づいて、受光量に応じた検出信号(電流値)を出力する。なお、受光部173により出力された検出信号は、I−V変換器(図示略)、増幅器(図示略)、及びAD変換器(図示略)を介して制御ユニット15に入力される。
【0031】
導光部174は、反射鏡174Aと、バンドパスフィルター174Bとを備えている。
この導光部174は、測定領域Rで、媒体Aの表面に対して45°で反射された光を反射鏡174Aにより、波長可変干渉フィルター5の光軸上に反射させる。バンドパスフィルター174Bは、可視光域(例えば380nm〜720nm)の光を透過させ、紫外光及び赤外光の光をカットする。これにより、波長可変干渉フィルター5には、可視光域の光が入射されることになり、受光部173において、可視光域における波長可変干渉フィルター5により選択された波長の光が受光される。
【0032】
[光学フィルターデバイスの構成]
図4は、分光器17が備える波長可変干渉フィルター5とフィルター制御部18とを模式的に示す図である。
光学フィルターデバイス172は、
図4に示すように、筐体6と、筐体6の内部に収納された波長可変干渉フィルター5とを備えている。
(波長可変干渉フィルターの構成)
波長可変干渉フィルター5は、波長可変型のファブリーペローエタロン素子であり、
図4に示すように、透光性の固定基板51及び可動基板52を備え、これらの固定基板51及び可動基板52が、接合膜により接合されることで、一体的に構成されている。
また、波長可変干渉フィルター5は、ギャップG(反射膜間ギャップ)を介して対向配置された固定反射膜54及び可動反射膜55と、ギャップGの寸法(ギャップ量)を調整する静電アクチュエーター56と、を備える。この静電アクチュエーター56は、それぞれ独立して駆動可能なバイアス用静電アクチュエーター57(以降、バイアス用アクチュエーター57と称す)と制御用静電アクチュエーター58(以降、制御用アクチュエーター58と略す)とを備えている。なお、バイアス用アクチュエーター57は第1静電アクチュエーターに相当し、制御用アクチュエーター58は第2静電アクチュエーターに相当する。
【0033】
(固定基板の構成)
固定基板51は、可動基板52に対向する面に固定反射膜54と、バイアス用アクチュエーター57を構成するバイアス用固定電極571と、制御用アクチュエーター58を構成する制御用固定電極581と、が設けられる。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、静電アクチュエーター56に電圧を印加した際の静電引力や、後述する各固定電極571,581の内部応力による固定基板51の撓みはない。
【0034】
固定反射膜54は、固定基板51に設けられた溝部の中心位置に設けられる。この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等、導電性の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO
2、低屈折層をSiO
2とした誘電体多層膜を用いてもよく、この場合、誘電体多層膜の最下層又は表層に導電性の金属合金膜が形成されていることで、固定反射膜54を電極として機能させることが可能となる。
そして、固定反射膜54には図示略の固定ミラー電極が接続されている。当該固定ミラー電極は、フィルター制御部18の後述するギャップ検出部183に接続される。
【0035】
バイアス用固定電極571は、固定反射膜54を囲う略円弧状に形成される。このバイアス用固定電極571は、フィルター制御部18の後述するバイアス駆動部182に接続される。
制御用固定電極581は、バイアス用固定電極571の外に略円弧状に形成される。この制御用固定電極581は、フィルター制御部18の後述するフィードバック制御部184に接続される。
【0036】
なお、本実施形態では、バイアス用固定電極571、制御用固定電極581、及び固定ミラー電極がそれぞれ独立して配置される例を示すがこれに限定されない。例えば、バイアス用固定電極571、制御用固定電極581、及び固定ミラー電極が共通電極として互いに接続されてもよい。この場合、フィルター制御部18において、共通電極をグラウンドに接続して、同電位に設定する。
【0037】
(可動基板の構成)
可動基板52は、可動部521と、可動部521の外に設けられ、可動部521を保持する保持部522とを備えている。
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。この可動部521には、可動反射膜55と、バイアス用アクチュエーター57を構成するバイアス用可動電極572と、制御用アクチュエーター58を構成する制御用可動電極582と、が設けられる。
【0038】
可動反射膜55は、可動部521の固定基板51に対向する面の中心部に、固定反射膜54とギャップGを介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。
そして、可動反射膜55には図示略の固定ミラー電極が接続されている。当該可動ミラー電極は、フィルター制御部18の後述するギャップ検出部183に接続される。
【0039】
バイアス用可動電極572は、所定のギャップを介してバイアス用固定電極571に対向する。このバイアス用可動電極572は、バイアス駆動部182に接続される。
制御用可動電極582は、所定のギャップを介して制御用固定電極581に対向する。この制御用可動電極582は、フィードバック制御部184に接続される。
【0040】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。これにより、固定反射膜54及び可動反射膜55の平行度を維持した状態で、ギャップGのギャップ量を変更することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点を中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0041】
(筐体の構成)
筐体6は、
図4に示すように、ベース61と、リッド62と、を備えている。これらのベース61及びリッド62は、例えばガラスフリット(低融点ガラス)を用いた低融点ガラス接合、エポキシ樹脂等による接着などにより接合される。これにより、内部に収容空間が形成され、この収容空間内に波長可変干渉フィルター5が収納される。
【0042】
ベース61は、例えば薄板上にセラミックを積層することで構成され、波長可変干渉フィルター5を収納可能な凹部611を有している。波長可変干渉フィルター5は、ベース61の凹部611の底面に、例えば固定材により固定されている。ベース61の凹部611の底面には、光通過孔612が設けられている。この光通過孔612は、波長可変干渉フィルター5の反射膜54,55と重なる領域を含むように設けられている。また、ベース61には、光通過孔612を覆うようにカバーガラス613が接合されている。
リッド62は、ガラス平板であり、ベース61の底面とは反対側の端面に接合される。
【0043】
[フィルター制御部の構成]
フィルター制御部18は、電圧制御部に相当し、
図4に示すように、電源電圧監視部181、バイアス駆動部182、ギャップ検出部183、フィードバック制御部184、及びマイコン(マイクロコントローラー)19を含んで構成される。
フィルター制御部18は、波長可変干渉フィルター5のギャップGの寸法を、制御部152Aからの波長設定指令に基づく値(目標波長に対応する値)に設定する。すなわち、フィルター制御部18は、波長設定指令に基づいて、静電アクチュエーター56を構成するバイアス用アクチュエーター57と制御用アクチュエーター58とのそれぞれの駆動電圧を調整し、波長可変干渉フィルター5の透過光の波長が目標波長となるようにギャップGの寸法を設定する。
【0044】
このフィルター制御部18は、電力供給部152Bから複数の電力が供給され駆動する。具体的には、電力供給部152Bによって、バイアス駆動部182に第1電源電圧Vaが、フィードバック制御部184に第2電源電圧Vbが、マイコン19に第3電源電圧Vcが印加される。なお、第1電源電圧Va、第2電源電圧Vb、及び第3電源電圧Vcは、複数の供給電圧に相当する。
【0045】
また、フィルター制御部18は、各電源電圧Va,Vb,Vcのいずれか低下した場合に、静電アクチュエーター56の駆動電圧を所定値以下に低下させる、後述する停止処理を実施する。なお、所定値とは、フィルター制御部18の誤作動が発生して駆動電圧が変動した場合でもプルインが発生しない駆動電圧範囲の上限値である。なお、本実施形態では、フィルター制御部18は、駆動電圧を0Vに変更する。
【0046】
(バイアス駆動部の構成)
バイアス駆動部182は、第1電源電圧Vaにより駆動され、マイコン19から入力されたバイアス信号に基づいて、バイアス用アクチュエーター57にバイアス電圧V1を印加する。バイアス駆動部182は、例えば、可変ゲインアンプを備え、バイアス信号に基づいてゲインを設定することにより、バイアス信号に応じたバイアス電圧V1をバイアス用アクチュエーター57に印加する。このバイアス駆動部182は、第1駆動部に相当し、バイアス電圧V1は、第1駆動電圧に相当する。
なお、バイアス駆動部182は、第1電源電圧Vaが少なくともVda(バイアス電圧閾値Vdaとも称す)以上の場合に正常に駆動される。
【0047】
(ギャップ検出部の構成)
ギャップ検出部183は、反射膜54,55間の静電容量からギャップGの寸法を検出し、検出信号をフィードバック制御部184に出力する。具体的には、ギャップ検出部183は、図示略のC−V変換回路を有し、反射膜54,55間の静電容量を電圧値(検出信号)に変換する。このようなC−V変換回路としては、例えば、スイッチト・キャパシタ回路等が挙げられる。
なお、ギャップ検出部183は、検出信号としては、アナログ信号を出力してもよく、デジタル信号を出力してもよい。デジタル信号を出力する場合、C−V変換回路からの検出信号(アナログ信号)をADC(Analog to Digital Converter)に入力し、デジタル値に変換する。
【0048】
(フィードバック制御部の構成)
フィードバック制御部184は、第2電源電圧Vbにより駆動される、マイコン19から入力されたギャップGの目標値と、ギャップ検出部183から入力される検出値とに基づき、制御用アクチュエーター58に対してフィードバック電圧V2を印加する。このフィードバック制御部184は、第2駆動部に相当し、フィードバック電圧V2は、第2駆動電圧に相当する。ここで、目標値は、目標波長に対応する値にギャップGの寸法が設定された際のギャップ検出部183による検出値である。フィードバック制御部184は、目標値と検出値との差分値が0となるように、フィードバック電圧V2を調整するフィードバック制御を実施する。
【0049】
図5は、フィードバック制御部184を構成するPID(Proportional-Integral-Differential)制御器20の概略構成を示す図である。
フィードバック制御部184は、目標値と検出値とが入力され、検出値の変化に応じた出力を得るPID制御器20(
図5参照)と、PID制御器20からの出力に基づいて、制御用アクチュエーター58にフィードバック電圧V2を印加する駆動回路(図示省略)と、を含み構成される。
図5に例示するように、フィードバック制御部184は、アナログ回路によって構成されるPID制御器20を用いることができる。
【0050】
具体的には、PID制御器20は、差動増幅回路201と、差動増幅回路201の出力側に並列に接続された比例回路202、積分回路203、及び微分回路204と、積分回路203の出力側に接続された第1増幅回路205と、微分回路204の出力側に接続された第2増幅回路206と、比例回路202、第1増幅回路205、及び第2増幅回路206の出力側に接続された加算回路207と、を有する。
【0051】
差動増幅回路201は、マイコン19からの目標値と、ギャップ検出部183の検出値との差分値を増幅して出力する。
比例回路202は、差動増幅回路201からの出力(電圧)を、可変抵抗の抵抗値Raに応じた増幅率で増幅する。以下、抵抗値Raを比例パラメーターRaとも称す。
積分回路203は、差動増幅回路201からの出力の時間積分に対応する電圧を出力する。第1増幅回路205は、積分回路203の出力(電圧)を、可変抵抗の抵抗値Rbに応じた増幅率で増幅する。以下、抵抗値Rbを積分パラメーターRbとも称す。
微分回路204は、差動増幅回路201からの出力の微分値(電圧値)を出力する。第2増幅回路206は、微分回路204の出力(電圧)を、可変抵抗の抵抗値Rcに応じた増幅率で増幅する。以下、抵抗値Rcを微分パラメーターRcとも称す。
加算回路207は、比例回路202、第1増幅回路205、及び第2増幅回路206のそれぞれの出力(電圧値)を加算し、増幅する。
【0052】
上述のように構成されるフィードバック制御部184は、駆動パラメーターに相当する各パラメーターRa,Rb,Rcを、マイコン19からのパラメーター設定指令に応じて変更可能である。すなわち、マイコン19は、目標値を含む目標指令の他に、各パラメーターRa,Rb,Rcの値を目標波長に応じた値に設定する旨の設定指令を、フィードバック制御部184に出力する。フィードバック制御部184は、設定指令に基づいて、各パラメーターRa,Rb,Rcを設定する。以下、各パラメーターRa,Rb,Rcをフィードバックパラメーターとも称す。
【0053】
(電源電圧監視部の構成)
図6は、電源電圧監視部181の概略構成を示す図である。また、
図7は、電源電圧監視部181の動作の一例を示す図であり、電力供給部152Bからの各電源電圧の変化に対する、電源電圧監視部181からの出力値を示す図である。
電源電圧監視部181は、電力供給部152Bからの第1電源電圧Va、第2電源電圧Vb、及び第3電源電圧Vcがそれぞれに設定された閾値未満となったことを示す検知信号(第1検知信号Vta、第2検知信号Vtb、及び第3検知信号Vtc)をマイコン19に出力する(
図4参照)。
【0054】
図6に一例を示すように、電源電圧監視部181は、第1コンパレーター181A、第2コンパレーター181B、及び第3コンパレーター181Cを含み構成される。
第1コンパレーター181Aから出力される第1検知信号Vtaは、
図7に示すように、バイアス駆動部182に印加される第1電源電圧Vaが、Vda(バイアス電圧閾値Vdaとも称す)未満に低下した際に、LowレベルからHighレベルに変化する。このバイアス電圧閾値Vdaは、バイアス駆動部182が正常に駆動する電圧範囲の下限値以上に設定される。すなわち、第1コンパレーター181Aは、バイアス駆動部182が正常に駆動している間に、第1電源電圧Vaの低下し、第1電源電圧Vaがバイアス電圧閾値Vda未満となったことを検知できる。
【0055】
第2コンパレーター181Bから出力される第2検知信号Vtbは、フィードバック制御部184に印加される第2電源電圧VbがVdb(フィードバック電圧閾値Vdbとも称す)未満となった際に、LowレベルからHighレベルに変化する。フィードバック電圧閾値Vdbは、フィードバック制御部184が正常に駆動する電圧範囲の下限値以上に設定される。
【0056】
第3コンパレーター181Cから出力される第3検知信号Vtcは、マイコン19に印加される第3電源電圧Vcの値がVdc(マイコン電圧閾値Vdcとも称す)未満となった際に、LowレベルからHighレベルに変化する。マイコン電圧閾値Vdcは、マイコン19の動作下限レベルV
Limc(
図11等参照)よりも大きい値に設定されている。これにより、第3電源電圧Vcがマイコン19の動作下限レベルV
Limc未満となる前に、第3電源電圧Vcの低下を検知し、マイコン19に通知することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、電源電圧監視部181が、マイコン19と同様に第3電源電圧Vcにより駆動される構成を例示している。ここで、
図7に示すように、第3電源電圧Vcは、第1電源電圧Va及び第2電源電圧Vbよりも小さい。したがって、第1コンパレーター181A及び第2コンパレーター181Bでは、オペアンプの入力側に抵抗を配することにより、オペアンプへの入力電圧を低下させている。すなわち、本実施形態では、バイアス電圧閾値Vda及びフィードバック電圧閾値Vdbは、抵抗を介してオペアンプに入力される入力電圧に対して設定されている。
【0058】
(マイコンの構成)
マイコン19は、駆動制御部に相当し、記憶部191を備え、例えばギャップ検出部183で検出される検出信号(電圧信号)とギャップGの寸法との関係(ギャップ相関データ)が記憶されている。また、記憶部191は、波長可変干渉フィルター5の目標波長(目標値)とフィードバックパラメーターとの関係が記憶されている。
また、マイコン19は、
図4に示すように、電圧低下検知部192、バイアス指令部193、及びフィードバック指令部194として機能する。
【0059】
電圧低下検知部192は、電源電圧監視部181からの各検知信号Vta,Vtb,Vtcに基づいて、電力供給部152Bから供給された各電源電圧Va,Vb,Vcの少なくともいずれかが、閾値未満となったことを検知する。すなわち、電圧低下検知部192は、電力供給部152Bの各電源電圧Va,Vb,Vcの少なくともいずれかが閾値未満に低下した場合、電圧エラーが発生していることを検知する。
【0060】
バイアス指令部193は、目標波長に対応したバイアス電圧V1を算出し、当該バイアス電圧V1をバイアス用アクチュエーター57に印加する旨のバイアス指令を、バイアス駆動部182に出力する。また、バイアス指令部193は、電圧エラーが検知された場合に、バイアス電圧V1を所定値以下に低下させる。
【0061】
フィードバック指令部194は、目標波長に対応するギャップGの寸法の目標値を算出し、当該目標値を含む目標指令をフィードバック制御部184に出力する。また、フィードバック指令部194は、各パラメーターRa,Rb,Rcを設定する旨の設定指令を、フィードバック制御部184に出力する。
また、フィードバック指令部194は、電圧エラーが検知された場合に、フィードバック電圧V2を所定値以下に低下させるように、目標指令及び設定指令をフィードバック制御部184に出力する。
【0062】
[波長可変干渉フィルターの駆動方法]
図8は、プリンター10による分光測定処理の一例を示すフローチャートである。また、
図9は、電圧エラーが発生した際の波長可変干渉フィルターの駆動方法の一例を示すフローチャートである。また、
図10は、フィードバックパラメーターの一例を示す図である。また、
図11〜
図14は、電圧エラーが発生した場合の各電源電圧Va,Vb,Vcの変化と、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2との関係を示す図である。
プリンター10では、外部機器30や操作入力部(図示略)から分光測定処理の開始指示が入力されると、制御ユニット15は、分光器17の光源部171を点灯させ、フィルター制御部18に分光測定処理を開始させる。フィルター制御部18は、所定の測定対象波長域(例えば可視光域)における所定間隔(例えば20nm間隔)毎の波長に対応する駆動電圧を、順次、静電アクチュエーター56に印加させ、受光部173による受光量を分光測定結果として取得する。
なお、以下の説明では、目標波長(測定波長)λは、波長変数i(i=1〜16の整数)に対応付けられているものとする。例えば、波長変数i=1,2,・・・,16は、それぞれ目標波長λ=700,680,・・・,400nmに対応付けられているものとする。
【0063】
(分光測定処理)
プリンター10では、外部機器30や操作入力部(図示略)から分光測定処理の開始指示が入力されると、制御ユニット15は、分光器17の光源部171を点灯させ、フィルター制御部18に分光測定処理を開始させる。フィルター制御部18は、所定の測定対象波長域(可視光域)における所定間隔(20nm間隔)毎の波長に対応する駆動電圧を、順次、静電アクチュエーター56に印加させ、受光部173による受光量を分光測定結果として取得する。
【0064】
図8に示すように、マイコン19は、制御ユニット15からの分光測定開始を指示する測定開始指令を受け、分光測定処理を開始させる(ステップS1)。
まず、マイコン19は、記憶部191の波長変数iを1とし、波長変数iを初期化する(ステップS2)。
【0065】
次に、フィードバック指令部194は、各パラメーターRa,Rb,Rc(フィードバックパラメーター)を、波長変数iに対応する値に設定する旨の設定指令を、フィードバック制御部184に出力する(ステップS3)。
各パラメーターRa,Rb,Rcは、目標波長λ、すなわち波長変数iに対して予め設定されている(
図10の通常時の値を参照)。例えば、波長変数i=1の場合(本実施形態では目標波長λ=700nmの場合)、比例パラメーターRa=32K(Ω)であり、積分パラメーターRb=100K(Ω)であり、微分パラメーターRc=95K(Ω)である。記憶部191は、波長変数iと、フィードバックパラメーターの設定値とが対応付けられたデータテーブルを記憶しており、フィードバック指令部194は、当該データテーブルを参照して、設定指令を出力する。フィードバック制御部184は、設定指令に基づいて各パラメーターRa,Rb,Rcを変更する。
【0066】
次に、マイコン19は、静電アクチュエーター56の印加電圧を調整し、波長可変干渉フィルター5の透過光の波長(ギャップGの寸法)を、目標波長λ(波長変数i)に応じた値に設定する(ステップS4)。
具体的には、バイアス指令部193は、波長変数i(目標波長λ)に対応するバイアス電圧V1を算出し、当該バイアス電圧V1に設定する旨のバイアス指令をバイアス駆動部182に出力する。バイアス駆動部182は、バイアス指令に基づいて、バイアス用アクチュエーター57にバイアス電圧V1を印加する。
また、フィードバック指令部194は、波長変数i(目標波長λ)に対応する目標指令をフィードバック制御部184に出力する。フィードバック制御部184は、目標指令に基づいて、制御用アクチュエーター58のフィードバック電圧V2を調整する。なお、目標指令は、ギャップGの寸法が目標波長λに対応する値に設定された際の、ギャップ検出部183の検出値に一致する目標値を含む。記憶部191は、波長変数iと目標値とが対応付けられたデータテーブルを記憶しており、フィードバック指令部194は、当該データテーブルを参照して目標値を取得し、目標指令を出力する。
これにより、波長可変干渉フィルター5のギャップGの寸法が、目標波長λに対応する値に設定される。
【0067】
ステップS4において、ギャップGの寸法が目標波長λに対応する値に設定されると、制御ユニット15は、受光部173の受光量を測定結果として取得する(ステップS5)。
次に、マイコン19は、波長変数iに1を加算し(ステップS6)、波長変数iが最大値imax(本実施形態ではimax=16)よりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。
全目標波長λに対する測定結果が取得されておらず、ステップS7においてNOと判定された場合、マイコン19は、ステップS3以降の処理を実行する。
【0068】
一方、全目標波長λに対する測定結果が取得されており、ステップS7においてYESと判定された場合、測定終了の指示を受けているか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8でNOと判定されると、マイコン19はステップS2以降の処理を実行する。一方、ステップS8でYESと判定されると、マイコン19は、本フローチャートに示す分光測定処理を終了する。
【0069】
(電圧エラー検知時の停止処理)
フィルター制御部18は、分光測定処理の実施時に、電源電圧監視部181によって電圧エラーが検知されると、割り込み処理として、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vとし、波長可変干渉フィルター5の駆動を停止させる停止処理を実施する。
例えば、
図11に示すように、各電源電圧Va,Vb,Vcがそれぞれに設定された各電圧閾値Vda,Vdb,Vdcよりも大きい、すなわち電源電圧が正常の場合、
図8に示す分光測定処理が実施される。一方、
図11に示すように、例えば、マイコン19に印加される第3電源電圧Vcがマイコン電圧閾値Vdcよりも小さくなると、第3コンパレーター181Cから出力される第3検知信号VtcがLowからHighに変化し、電圧低下検知部192によって電圧エラーが検知される。
【0070】
図9に示すように、電圧低下検知部192によって電圧エラーが検知されると(ステップS21)、マイコン19は、波長変数iを目標波長の内の最大波長に対応するi=1に設定する(ステップS22)。
図11に示す例では、波長変数iが13に設定されている際に電圧エラーが検知されたため、波長変数i=14に対応する測定が行われずに、波長変数iが1に設定される。
【0071】
次に、フィードバック指令部194は、波長変数i=1に対応する各パラメーターRa,Rb,Rc(
図10参照)に設定する旨の設定指令を、フィードバック制御部184に出力する(ステップS23)。
本実施形態では、静電アクチュエーター56への印加電圧が0Vの場合の各パラメーターRa,Rb,Rcを、波長変数i=1に対応する値とする(
図10のエラー検知時における太枠内を参照)。なお、本実施形態に限定されず、静電アクチュエーター56への印加電圧が0の場合の各パラメーターRa,Rb,Rcの値を、別に設定してもよい。
【0072】
ステップS23によって、各パラメーターRa,Rb,Rcの値が波長変数i=1に対応する値に変更されると、マイコン19は、バイアス電圧V1を0Vとする旨のバイアス指令、及び、フィードバック電圧V2を0Vとする旨の目標指令を出力する(ステップS24)。
ここで、フィードバック電圧V2を0Vとする旨の目標指令は、静電アクチュエーター56の印加電圧が0Vの際、すなわち初期状態におけるギャップ検出部183の検出値を目標値として含む指令信号である。
バイアス駆動部182は、バイアス指令に基づいて、バイアス用アクチュエーター57の印加電圧であるバイアス電圧V1を0Vとする。
また、フィードバック制御部184は、ギャップ検出値が初期状態に対応する目標値となるようにフィードバック制御を行い、最終的に、制御用アクチュエーター58の印加電圧であるフィードバック電圧V2を0Vとする。
【0073】
なお、波長可変干渉フィルター5のギャップGの寸法が初期状態で安定した後、制御ユニット15による電力供給を停止させてもよい。例えば、マイコン19は、ギャップ検出値が初期状態に対応する値で安定したことを検出した場合、電力供給を停止させる旨の供給停止指令を、制御ユニット15に出力する。制御ユニット15の電力供給部152Bは、供給停止指令に基づいて電力供給を停止させる。
【0074】
また、上記停止処理では、
図11に示すように、マイコン19に印加される第3電源電圧Vcが低下した場合について説明したが、これに限らない。
例えば、
図12に示すようにバイアス駆動部182に印加される第1電源電圧Vaがバイアス電圧閾値Vda未満となった場合や、
図13に示すように、フィードバック制御部184に印加される第2電源電圧Vbが、フィードバック電圧閾値Vdb未満となった場合も、同様に、電圧低下検知部192によって電圧低下が検知される。
【0075】
また、第1電源電圧Va、第2電源電圧Vb及び第3電源電圧Vcの2以上が同時に低下した場合、電圧低下検知部192によって最初に電圧低下が検知されたタイミングで、上記停止処理が実施される。例えば、
図14に示すように、第1電源電圧Va、第2電源電圧Vb及び第3電源電圧Vcが同時に低下した場合、第3電源電圧Vcがマイコン電圧閾値Vdcよりも小さくなったタイミングにて、電圧低下検知部192によって電圧低下が検知される。
【0076】
[第1実施形態の作用効果]
上述のように構成される第1実施形態では、以下の作用効果を得ることができる。
各電源電圧Va,Vb,Vcの低下が所定の閾値未満となり、電圧エラーが発生した際に、フィルター制御部18のバイアス駆動部182、フィードバック制御部184、及びマイコン19等の誤作動が生じるおそれがある。当該誤作動が生じると、例えば、静電アクチュエーター56に大きな駆動電圧が印加され、各反射膜54,55が接触し(プルイン)、波長可変干渉フィルター5が劣化するおそれがある。また、上述の誤作動により、例えば、フィードバック制御部184によるフィードバック制御が適切に機能せず発振が生じるおそれがある。
これに対して、フィルター制御部18は、各電源電圧Va,Vb,Vcの低下がそれぞれに対応する所定の閾値未満となり、電圧エラーが検知された時点で、静電アクチュエーター56の駆動電圧を低下させる。これにより、誤作動によるプルインや発振等の不都合を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の劣化を抑制できる。
【0077】
また、フィルター制御部18は、電圧エラーが発生した場合に、駆動電圧(バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2)を、所定値(誤作動によるプルインや発振が生じない値)以下に変更する。これにより、電源電圧がさらに低下した場合にフィルター制御部18に誤作動が発生してもプルインや発振等の不具合を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の劣化を抑制できる。
なお、本実施形態のように駆動電圧を0Vとすることにより、例えば、マイコン19の第3電源電圧Vcがマイコン19の動作下限レベルV
Limcを下回る前に、制御ユニット15に電力供給を停止させる等の処理を行わせることができる。
【0078】
また、フィルター制御部18は、フィードバックパラメーターを変更した後に、フィードバック電圧V2を低下させる。このような構成では、フィードバック電圧V2を低下させる際に、変更後のフィードバックパラメーターに基づいて適切なフィードバック制御を実施できる。
また、フィルター制御部18は、マイコン19の制御に基づいて、駆動電圧を低下させる。したがって、上述のフィードバックパラメーターの変更後に、駆動電圧を低下させる等の制御を実施でき、より適切に波長可変干渉フィルター5を停止させることができる。
【0079】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、電圧エラーが検知された場合に、フィルター制御部18は、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2が0Vとなるように停止処理を実施していた。これに対して、第2実施形態では、フィルター制御部18は、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vに向かって段階的に低下させる点で、第1実施形態と相違する。
なお、以降の説明にあたり、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0080】
図15は、電圧エラーが発生した場合の各電源電圧の変化と、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2との関係を示す図である。また、
図16は、第2実施形態における停止処理の一例を示すフローチャートである。また、
図17は、フィードバックパラメーターの一例を示す図である。
フィルター制御部18は、分光測定処理の実施時に電圧エラーが検知されると、割り込み処理として、
図15及び
図16に示すように、所定時間経過毎に、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vに向かって段階的に低下させる停止処理を実施する。
【0081】
本実施形態では、マイコン19は、バイアス電圧V1を所定量ずつKステップで段階的に減少させ、エラー検知時の電圧値から0Vに変更する。一方、マイコン19は、バイアス電圧V1の変更に応じて、フィードバック電圧V2をK−1ステップで段階的に減少させる。なお、
図15では、ステップ数K=4であり、ステップ数K(ステップ変数kの最大値)が固定値である場合を例示する。
【0082】
例えば、
図15に示すように、マイコン19に印加される第3電源電圧Vcがマイコン電圧閾値Vdcよりも小さくなると、
図16に示すように、電圧低下検知部192によって電圧エラーが検知される(ステップS31)。
電圧エラーが検知されると、マイコン19は、波長変数iをK−1に、ステップ変数kを1に設定する(ステップS32)。ここで、ステップ変数kは、段階的に電圧を低下させる際の各ステップに対応する変数である。また、本実施形態では、波長変数iは、最初に3に設定される。
【0083】
次に、フィードバック指令部194は、各パラメーターRa,Rb,Rcを、波長変数i(
図15ではi=1〜3)に対応する値(
図17の電圧エラー発生時における太枠内を参照)に設定する旨の設定指令を、フィードバック制御部184に出力する(ステップS33)。
フィードバック制御部184は、設定指令に応じて、各パラメーターRa,Rb,Rcの値を変更する。なお、本実施形態でも、静電アクチュエーター56への印加電圧が0の場合の各パラメーターRa,Rb,Rcを波長変数i=1に対応する値とするが、波長変数i=1に限定されず、静電アクチュエーター56への印加電圧が0Vの場合の各パラメーターRa,Rb,Rcの値を別に設定してもよい。
【0084】
次に、マイコン19は、バイアス指令、及び目標指令を出力する(ステップS34)。
バイアス駆動部182は、バイアス指令に基づくバイアス電圧V1を、バイアス用アクチュエーター57に印加する。
また、フィードバック制御部184は、目標値に基づいてフィードバック制御を行い、最終的に、制御用アクチュエーター58の印加されるフィードバック電圧V2を、目標値に応じた値に調整する。
【0085】
ここで、バイアス指令部193は、ステップ変数kに基づいてバイアス電圧V1を取得し、当該バイアス電圧V1に応じたバイアス指令を出力する。
例えば、バイアス電圧V1を所定のステップ数Kで所定量ずつ段階的に減少させてもよい。この場合、エラー検知時の電圧値をVoとし、バイアス電圧V1の1ステップにおける低減量は、Vo/Kである。また、ステップ変数k(k=1〜K)に対応するバイアス電圧V1は、Vo−(Vo/K)×kである。
【0086】
上述のように、バイアス電圧V1を、エラー検知時の電圧値Voから所定量ずつ段階的に低減させる場合、フィードバック指令部194は、例えば、バイアス電圧V1に応じた目標指令を出力する。すなわち、フィードバック指令部194は、ステップ変数kに対応するバイアス電圧V1に最も近いバイアス電圧V1が対応付けられた波長変数iを取得する。そして、フィードバック指令部194は、取得した波長変数iに対応する目標指令を出力する。このため、例えば、バイアス電圧V1に対して、目標値が大きすぎたり、小さすぎたりすることにより、フィードバック制御が適切に機能しないという不具合を抑制できる。
【0087】
なお、エラー検知時の電圧値Voに関わらず、ステップ変数kに対応するバイアス電圧V1を予め算出しておき、バイアス電圧V1をステップ変数kに対応付けて記憶部191に記憶させておいてもよい。この場合、ステップ変数kに対応するフィードバック制御部184の目標値やフィードバックパラメーターも予め設定し、記憶部191に記憶させてもよい。この場合、バイアス電圧V1や目標値を算出する必要がなく、マイコン19の処理負荷の増大を抑制できる。
【0088】
次に、マイコン19は、ステップS34において、バイアス指令及び目標指令を出力した後、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS35)。
ここで、所定時間とは、マイコン19からバイアス指令及び目標指令が出力されてから、受光部173による受光量(測定値)を取得するのに十分な時間に設定されている。すなわち、所定時間は、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2が変更された後、波長可変干渉フィルター5のギャップGの寸法が安定する安定化時間と、測定値を取得するための測定時間と、を含む。
【0089】
マイコン19は、ステップS35でNOと判定されると同判定を繰り返し、YESと判定されると、波長変数iから1を減じ、かつ、ステップ変数kに1を加算する(ステップS36)。
次に、マイコン19は、波長変数i=1(ステップ変数k=K−1)か否かを判定する(ステップS37)。
波長変数iが1ではない場合(ステップS37:NO)、ステップS33に戻り、以降の処理を実施する。
【0090】
一方、ステップS37でYESと判定されると、マイコン19は、バイアス電圧V1=0に対応するバイアス指令及び目標指令を出力する(ステップS38)。
ここで、波長変数i=1(ステップ変数k=K−1)の場合、既に、フィードバック電圧V2が0Vとなっている。本実施形態では、マイコン19は、フィードバックパラメーターの各値を変更せずに、静電アクチュエーター56への印加電圧が0V、すなわちギャップGの寸法が初期値の場合に対応するバイアス指令及び目標指令を出力する。
【0091】
なお、第2実施形態では、バイアス電圧V1を4ステップで、フィードバック電圧V2を3ステップで0Vに低下させる、すなわち互いに異なるステップ数で0Vに低下させている。しかしながら、これに限らず、バイアス電圧V1とフィードバック電圧V2と同じステップ数で0Vに変更してもよい。
【0092】
[第2実施形態の作用効果]
上述のように構成される第2実施形態では、第1実施形態の作用効果に加え以下の作用効果を得ることができる。
フィルター制御部18は、電圧エラーが発生した場合に、駆動電圧を所定値以下に漸減させることにより、一度の駆動電圧の変更時における駆動電圧の変化量を小さくできる。これにより、一度の変更で駆動電圧を急変させることにより、ギャップ量(静電アクチュエーター56の駆動電圧)の制御不良が発生することを抑制できる。例えば、フィードバック電圧V2を大きく変更すると、フィードバック制御部184によるフィードバック制御が適切に実施されずに発振が生じたり、安定化時間が増大したりするおそれがある。これに対して、本実施形態では、上記制御不良の発生を抑制できる。
【0093】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について説明する。
第2実施形態では、電圧エラーが検知された場合に、フィルター制御部18は、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vとなるまで段階的に低下させていた。これに対して、第3実施形態では、フィルター制御部18は、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vに向かって段階的に低下させている際に、各電源電圧のいずれかが第2の閾値未満となったタイミングで、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vに変更する点で、第2実施形態と相違する。
なお、以降の説明にあたり、上記各実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0094】
図18は、電圧エラーが発生した場合の各電源電圧の変化と、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2との関係を示す図である。
図18に示すように、第3電源電圧Vcに対して、第1マイコン電圧閾値Vdc1と、第1マイコン電圧閾値Vdc1よりも小さい第2マイコン電圧閾値Vdc2とが設定されている。各電圧閾値Vdc1,Vdc2は、マイコンの動作下限レベルV
Limcよりも大きい値に設定されている。
図18に例示するように、フィルター制御部18は、第3電源電圧Vcが第1マイコン電圧閾値Vdc1未満かつ第2マイコン電圧閾値Vdc2以上の場合、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を段階的に低下させる。また、フィルター制御部18は、第3電源電圧Vcが第2マイコン電圧閾値Vdc2未満となったタイミングで、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を0Vとする。
【0095】
具体的には、第3電源電圧Vcが低下し、第1マイコン電圧閾値Vdc1よりも小さくなると、マイコン19は、
図16に示す第2実施形態の停止処理(以下、漸減処理とも称す)を分光測定処理に対する割り込み処理として実施する。
また、漸減処理を実施している際に、第3電源電圧Vcがさらに低下し、第2マイコン電圧閾値Vdc2よりも小さくなると、マイコン19は、
図8に示す第1実施形態の停止処理を漸減処理に対する割り込み処理として実施する。
【0096】
第3電源電圧Vcが各電圧閾値Vdc1,Vdc2よりも小さくなったことを検知するには、上記各実施形態と同様に、電源電圧監視部181に、各電圧閾値Vdc1,Vdc2に対応するコンパレーターを設ければよい。
【0097】
以上のように第3電源電圧Vcに対して二つの閾値を設定する場合について説明したが、第1電源電圧Va及び第2電源電圧Vbにも同様に二つの閾値(第1閾値と、第1閾値よりも小さい第2閾値)が設定されている。
なお、全ての電源電圧Va,Vb,Vcに二つの閾値を設定しなくともよいが、第3電源電圧Vcに二つの閾値を設定することにより、マイコン19の誤作動をより確実に抑制できる。
【0098】
[第3実施形態の作用効果]
上述のように構成される第3実施形態では、第1実施形態の作用効果に加え以下の作用効果を得ることができる。
本実施形態では、各電源電圧Va,Vb,Vcのそれぞれに、上述の第1閾値及び第2閾値が設定されている。各電源電圧Va,Vb,Vcがそれぞれに設定された第1閾値未満となった場合、すなわち電圧エラーが発生した場合、フィルター制御部18は、静電アクチュエーター56の駆動電圧を漸減させることにより、第2実施形態と同様に、フィルター制御部18による適切な制御の下で、駆動電圧を低下させることができる。
【0099】
また、電圧エラーが発生した後に、さらに各電源電圧Va,Vb,Vcが低下してそれぞれに設定された第2閾値未満となった場合に、フィルター制御部18は、駆動電圧を所定値以下に変更する。これにより、電圧制御部の誤作動が生じる前に駆動電圧を所定値以下に低下させることができ、誤作動の影響を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の劣化を抑制できる。なお、本実施形態のように駆動電圧を0Vとすることにより、例えば、マイコン19の第3電源電圧Vcがマイコン19の動作下限レベルV
Limc未満となる前に、制御ユニット15に電力の供給を停止させる等の処理を行わせることもできる。
【0100】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0101】
(変形例1)
上記各実施形態では、バイアス電圧V1とフィードバック電圧V2とを低下させるタイミングを同時としていたが、これに限定されず、上記タイミングを異ならせてもよい。
図19は、変形例1において、電圧エラー発生時の各電源電圧の変化と、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2との関係を示す図である。
図19に示すように、電圧エラーが発生した場合に、バイアス電圧V1を維持したままフィードバック電圧V2を0Vとし、その後、バイアス電圧V1を0Vとしてもよい。
具体的には、例えば、フィードバック指令部194は、電圧エラー発生時における波長変数iに基づいて、バイアス電圧V1を変更せずにフィードバック電圧V2を0Vとした場合の目標値(ギャップGの寸法に対応するギャップ検出部183の検出値)を取得し、フィードバック制御部184に出力する。なお、目標値は、予め算出し、記憶部191に記憶しておいてもよい。その後、フィードバック電圧V2が0Vで安定し、ギャップ検出部183の検出値が変動しなくなったら、バイアス指令部193は、バイアス電圧V1を0Vとする旨のバイアス指令を出力し、かつ、フィードバック指令部194は、初期ギャップに対応する目標指令を出力する。
【0102】
このように、電圧エラーが発生した後、バイアス電圧V1を変更する前に、フィードバック電圧V2を変更することにより、フィルター制御部18の誤作動が発生する前に、すなわち、適切なフィードバック制御の下でフィードバック電圧V2を低下させることができる。
また、バイアス電圧V1を変更せずに、フィードバック電圧V2を変更させることにより、フィードバック制御部184によるギャップGの変更をより確実かつ迅速に行うことができる。
また、バイアス電圧V1を0Vとする際の目標値は、フィードバック電圧V2、すなわち波長変数iに応じて容易に算出することができ、マイコン19の処理負荷の増大を抑制できる。
【0103】
なお、上記処理において、フィードバック指令部194は、フィードバック電圧V2を0Vに変更した後、かつ、バイアス電圧V1を0Vとする前に、フィードバックパラメーターを、各電圧V1,V2が0Vの場合に対応する値(例えば、波長変数i=1に対応する値)に変更してもよい。また、フィードバック指令部194によるフィードバックパラメーターの変更タイミングは、フィードバック電圧V2を0Vに変更する前でもよい。
また、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2のそれぞれを漸減させてもよい。
【0104】
(変形例2)
図20は、変形例2において、電圧エラー発生時の各電源電圧の変化と、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2との関係を示す図である。
図20に示すように、電圧エラーが発生した場合に、バイアス電圧V1を所定値以下の0Vとした後に、フィードバック電圧V2を段階的に低減させながら0Vとしてもよい。
具体的には、例えば、バイアス指令部193は、バイアス電圧V1を0Vとする旨のバイアス指令を出力し、かつ、フィードバック指令部194は、目標指令を出力する。ここで、フィードバック指令部194は、バイアス電圧V1を0Vとし、フィードバック電圧V2を電圧エラー発生時の値に維持した場合に対応する、目標値を出力する。その、フィードバック指令部194は、例えば、安定化時間以上の所定時間が経過毎に、目標値を順次変更し、フィードバック電圧V2を段階的に低下させる。
【0105】
なお、フィードバック指令部194は、バイアス電圧V1が変更される前に、フィードバックパラメーターを変更してもよい。フィードバックパラメーターとしては、例えば、ステップ変数kや波長変数i=1に対応する値や、静電アクチュエーター56の印加電圧が0Vの場合に対応する値等を用いることができる。
【0106】
(変形例3)
上記第2実施形態では、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を段階的に低下させていたが、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2のいずれか一方を、電圧エラーの検知した際に0Vに変更しつつ、他方を漸減させてもよい。
図21は、変形例3において、電圧エラー発生時の各電源電圧の変化と、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2との関係を示す図である。
図21に示すように、電圧エラーが発生した場合に、バイアス電圧V1を0Vとし、かつ、フィードバック電圧V2を段階的に低下させている。すなわち、バイアス電圧V1が1ステップで0Vに変更される点を除き、第2実施形態の停止処理と同様の処理が実施される。
【0107】
例えば、フィードバック指令部194は、電圧エラーが検知されると、フィードバックパラメーターを変更する。その後、バイアス指令部193は、バイアス電圧V1を0Vとする旨のバイアス指令を出力し、かつ、フィードバック指令部194は、目標指令を出力する。フィードバック指令部194は、ステップ変数kに基づいてフィードバック電圧V2に対応する目標値を算出する。そして、フィードバック指令部194は、例えば、安定化時間以上の所定時間が経過毎に、目標値を順次変更し、フィードバック電圧V2を段階的に低下させる。これにより、エラー発生時にバイアス電圧V1を速やかに0Vに変更でき、かつ、適切なフィードバック制御の下でフィードバック電圧V2を漸減させることができる。また、バイアス電圧V1を0Vとするため、フィードバック電圧V2を漸減させる際の目標値の算出が容易である。
なお、フィードバック指令部194は、フィードバックパラメーターを波長変数i(ステップ変数k)に対応する値に設定してもよいし、静電アクチュエーター56への印加電圧が0Vの場合に対応する値に設定してもよい。
【0108】
(変形例4)
上記各実施形態において、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2が0Vとされた後、制御ユニット15は、マイコン19からの供給停止指令に基づいて、電力供給部152Bを停止させ、フィルター制御部18への電力供給を停止させるとしたが、これに限定されない。例えば、ユニット制御回路152は、電力供給部152Bとフィルター制御部18との接続状態を切り替えるスイッチを備え、当該スイッチをオフ状態とする構成としてもよい。
【0109】
図22は、制御ユニット15とフィルター制御部18との要部を模式的に示す図である。
図22に示すように、電力供給部152Bは、フィルター制御部18と電力供給用の配線で接続されている。電力供給用の配線は、第1電源電圧Vaを印加するための第1配線と、第2電源電圧Vbを印加するための第2配線と、第3電源電圧Vcを印加するための第3配線と、を含む。
【0110】
ユニット制御回路152は、第1スイッチ152C1と、第2スイッチ152C2と、第3スイッチ152C3と、を有し、制御部152Aの制御によってオン状態(接続状態)とオフ状態(非接続状態)とを切り替え可能に構成される。
第1スイッチ152C1は、第1配線と電力供給部152Bとの接続を切り替える。第1スイッチ152C1がオン状態でバイアス駆動部182に電力供給可能となる。
第2スイッチ152C2は、第2配線と電力供給部152Bとの接続を切り替える。第2スイッチ152C2がオン状態でフィードバック制御部184に電力供給可能となる。
第3スイッチ152C3は、第2配線と電力供給部152Bとの接続を切り替える。第3スイッチ152C3がオン状態でマイコン19に電力供給可能となる。
【0111】
制御部152Aは、マイコン19からの指令に基づいて、各スイッチ152C1,152C2,152C3の状態を制御する。例えば、マイコン19の電圧低下検知部192は、電源電圧監視部181からの検知信号(第1検知信号Vta、第2検知信号Vtb、及び第3検知信号Vtc)に基づいて電圧エラーを検知した場合、電力供給を停止させる旨の供給停止指令を制御部152Aに出力する。制御部152Aは、供給停止指令に基づいて各スイッチ152C1,152C2,152C3をオン状態からオフ状態に切り替え、電力供給部152Bとフィルター制御部18とが非接続状態となる。
このように、マイコン19からの指令に基づいて、各スイッチ152C1,152C2,152C3をオフ状態に切り替えることにより、電力供給部152Bからフィルター制御部18への電力供給を停止させることができる。
【0112】
また、各電源電圧Va,Vb,Vcの低下は、フィルター制御部18内の回路のショートに起因する場合がある。この場合、フィルター制御部18の誤作動による波長可変干渉フィルター5の破損や、過電流によるフィルター制御部18の発熱や破損等のおそれがある。これに対して変形例4では、各スイッチ152C1,152C2,152C3をオフ状態として、電力供給部152Bとフィルター制御部18との接続を切断することができるため、波長可変干渉フィルター5やフィルター制御部18に上記不具合が発生することを、より確実に抑制することができる。
【0113】
なお、電圧エラーを検知した場合に、各スイッチ152C1,152C2,152C3をオフ状態とするとしたが、例えば、各電源電圧Va,Vb,Vcのうちいずれの電圧低下が発生しているかに応じて、各スイッチ152C1,152C2,152C3のいずれをオフ状態とするかを選択してもよい。例えば、バイアス駆動部182に印加される第1電源電圧Vaが低下した場合は、第1スイッチ152C1のみをオフ状態として第1電源電圧Vaの供給を停止させ、かつ、バイアス電圧V1=0Vの場合における上述の停止処理を実施してもよい。また、フィードバック制御部184に印加される第2電源電圧Vbが低下した場合も同様に、第2スイッチ152C2のみをオフ状態としてもよい。また、マイコン19に印加される第3電源電圧Vc以外が低下した場合、第1スイッチ152C1及び第2スイッチ152C2のみをオフ状態としてもよい。さらに、第3電源電圧Vcが低下した場合は、全スイッチ152C1,152C2,152C3をオフ状態としてもよい。
また、各スイッチ152C1,152C2,152C3をオフ状態とする前に、上記各実施形態及び変形例に記載する停止処理を実施してもよい。これにより、波長可変干渉フィルター5が初期状態となった後に、電力供給を停止させることができる。
【0114】
(変形例5)
上記各実施形態では、電圧エラーが発生した場合、マイコン19によるバイアス駆動部182及びフィードバック制御部184の制御に基づいて、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を低下させていたが、これに限定されない。例えば、電源電圧監視部181の検知信号に基づいて、バイアス駆動部182とバイアス用アクチュエーター57との接続や、フィードバック制御部184と制御用アクチュエーター58との接続をオフ状態とするスイッチ回路を備える構成としてもよい。このような構成では、マイコン19における停止処理による処理負荷の増大を抑制できる。
【0115】
図23は、変形例5に係るフィルター制御部18Aの概略構成を示す図である。また、
図24は、フィルター制御部18Aが備えるフィードバック制御部184Aの概略構成を示す図である。
図23に示すように、フィルター制御部18Aでは、電源電圧監視部181からの検知信号がフィードバック制御部184Aに入力される。
フィードバック制御部184Aは、
図24に示すように、PID制御器20と、駆動回路21と、スイッチ回路22と、を含む。
駆動回路21は、出力部に相当し、PID制御器20からの出力に基づいて、波長可変干渉フィルター5の制御用アクチュエーター58(
図23参照)に、フィードバック電圧V2を印加する。
【0116】
スイッチ回路22は、電源電圧監視部181からの検知信号に基づいて、駆動回路21と制御用アクチュエーター58との間の接続状態を切り替える。すなわち、スイッチ回路22は、各検知信号(第1検知信号Vta、第2検知信号Vtb、及び第3検知信号Vtc)がLowの場合は、駆動回路21と制御用アクチュエーター58とが接続されるオン状態とし、Highの場合は、駆動回路21と制御用アクチュエーター58とが接続されないオフ状態とする。
【0117】
なお、バイアス駆動部182にも同様のスイッチ回路を設けてもよい。また、電源電圧監視部181の検知信号をマイコン19に入力させてもよい。これにより、マイコン19は、電圧エラーが発生したことを検知することができ、例えば、電力供給の停止や分光測定処理を中止等の電圧エラーの検知に応じた処理を実施できる。
【0118】
(他の変形例)
上記第2実施形態では、バイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を段階的に低減させる際のステップ数Kを固定値とする場合について例示したが、ステップ数Kを変更してもよい。
例えば、バイアス電圧V1を、エラー検知時の電圧値Voから所定の低減量ΔV1で段階的に低減させてもよく、この場合、ステップ数Kは、電圧値Voを低減量ΔV1で割った際の商として得られる。なお、この場合、ステップ変数k(k=1〜K)に対応するバイアス電圧V1は、ΔV1×(K−k)である。また、フィードバック電圧V2もステップ数Kに応じた回数で段階的に低減される。このような構成では、エラー検知時の電圧値Voに応じてステップ数Kが変更されるものの、各ステップにおけるバイアス電圧V1及びフィードバック電圧V2を予め算出しておくことができる。
【0119】
上記各実施形態及び変形例では、電圧エラーが発生した際に、静電アクチュエーター56の駆動電圧を低下させ、0Vとする場合について例示したが、これに限定されない。例えば、駆動電圧を0Vよりも大きい所定値以下の値に変更してもよい。これにより、誤作動によってプルインや発振等の不具合が生じることを抑制できる。
【0120】
上記各実施形態及び変形例では、静電アクチュエーター56がバイアス用アクチュエーター57と、制御用アクチュエーター58とを備える構成を例示したが、これに限定されない。例えば、バイアス用アクチュエーター57と、制御用アクチュエーター58とのいずれかを備える構成でもよい。
【0121】
上記各実施形態において、キャリッジ13をX方向に沿って移動させるキャリッジ移動ユニット14を例示したがこれに限定されない。例えば、キャリッジ13を固定し、媒体Aをキャリッジ13に対して移動させる構成としてもよい。この場合、キャリッジ13の移動に伴う波長可変干渉フィルター5の振動を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の透過波長を安定化させることができる。
また、媒体AをY方向に沿って移動させる搬送ユニット12を例示したがこれに限定されない。例えば、キャリッジ13を媒体Aに対してY方向に沿って移動させる構成としてもよい。
【0122】
上記各実施形態では、印刷部16として、インクタンクから供給されたインクを、ピエゾ素子を駆動させて吐出させるインクジェット型の印刷部16を例示したが、これに限定されない。例えば、印刷部16としては、ヒーターによりインク内に気泡を発生させてインクを吐出する構成や、超音波振動子によりインクを吐出させる構成としてもよい。
また、インクジェット方式のものに限定されず、例えば熱転写方式を用いたサーマルプリンターや、レーザープリンター、ドットインパクトプリンター等、如何なる印刷方式のプリンターに対しても適用できる。
【0123】
上記各実施形態では、波長可変干渉フィルター5として、入射光から反射膜54,55間のギャップGに応じた波長の光を透過させる光透過型の波長可変干渉フィルター5を例示したが、これに限定されない。例えば、反射膜54、55間のギャップGに応じた波長の光を反射させる、光反射型の波長可変干渉フィルターを用いてもよい。
また、筐体6に波長可変干渉フィルター5が収納された光学フィルターデバイス172を例示したが、波長可変干渉フィルター5が直に分光器17に設けられる構成などとしてもよい。
【0124】
上記各実施形態において、光学モジュールとしての分光器17を備えたプリンター10を例示したが、これに限定されない。例えば、画像形成部を備えず、媒体Aに対する分光測定処理のみを実施する色むら分光測定装置であってもよい。また、例えば工場等において製造された印刷物の品質検査を行う品質検査装置に、上記光学モジュールを組み込んでもよく、その他、如何なる装置に本発明の光学モジュールを組み込んでもよい。
【0125】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせることで構成してもよく、また他の構造などに適宜変更してもよい。