(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
引き続きいくつかの具体例を説明する。
【0012】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザは、(a)第1軸の方向に延在するコア層と、前記第1軸に交差する第2軸の方向に延在する端面とを含み、基板の主面上の設けられた半導体メサと、(b)前記半導体メサの前記端面上に設けられ前記コア層に接触を成す第1半導体膜を含む反射層と、を備え、前記コア層は、超格子構造を有し、前記超格子構造は、量子井戸層及びバリア層を含み、前記反射層の前記第1半導体膜は、前記量子井戸層のバンドギャップに等しい又はより小さいバンドギャップを有する。
【0013】
量子カスケード半導体レーザによれば、量子井戸層のバンドギャップ以下の第1半導体膜とコア層との組み合わせは、第1半導体膜の膜厚に応じて変化する端面反射率を提供できる。
【0014】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記反射層の前記第1半導体膜の材料は、前記量子井戸層の材料における構成元素及び組成に関して実質的に同一である。
【0015】
量子カスケード半導体レーザによれば、第1半導体膜の材料が量子井戸層の材料と実質的に同じであるので、第1半導体膜と量子井戸層との界面において欠陥の発生を低減できる。例えば、第1半導体膜が量子井戸層と同じ成長条件を用いて成長されるとき、第1半導体膜の材料は、量子井戸層の材料における構成元素及び組成の点で実質的に同一になる。
【0016】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記反射層の前記第1半導体膜は、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体の少なくともいずれかを備える。
【0017】
量子カスケード半導体レーザによれば、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体は、第1半導体膜における光吸収、及び第1半導体膜を経由するリーク電流を低減できる。
【0018】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記反射層の前記第1半導体膜は、GaInAs及びGaInAsPの少なくともいずれかを備える。
【0019】
量子カスケード半導体レーザによれば、GaInAs及びGaInAsPは構成元素としてアルミニウムを含まず、これ故に、酸化による劣化を避けることができる。
【0020】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記反射層は、前記第1半導体膜より高い熱伝導率を有する材料からなる第2半導体膜を含み、前記第1半導体膜は前記第2半導体膜と前記半導体メサの前記端面との間に設けられる。
【0021】
量子カスケード半導体レーザによれば、第2半導体膜は、第1半導体膜を介して半導体メサの端面から伝わる熱の伝搬に寄与できる。
【0022】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記反射層の前記第2半導体膜は、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体の少なくともいずれかを備える。
【0023】
量子カスケード半導体レーザによれば、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体は、第2半導体膜における光吸収、及び第2半導体膜を経由するリーク電流を低減できる。
【0024】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記反射層の前記第2半導体膜はInPからなり、前記第2半導体膜は前記第1半導体膜に接合を成す。
【0025】
量子カスケード半導体レーザによれば、第1半導体膜に接合を成すInPは、コア層の端面からの熱を散逸させることを可能にする。
【0026】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザは、前記半導体メサの側面を埋め込む埋込領域を更に備え、前記埋込領域は、第1電流ブロック層を含み、前記半導体メサ及び前記埋込領域は、導波路メサを構成し、前記第1電流ブロック層の材料は、前記第1半導体膜の材料における構成元素及び組成に関して実質的に同一である。
【0027】
量子カスケード半導体レーザによれば、半導体メサの端面に加えて、半導体メサの側面を半導体で覆うことができる。
【0028】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記第1電流ブロック層及び前記第1半導体膜は、単一の半導体層を構成する。
【0029】
量子カスケード半導体レーザによれば、第1電流ブロック層及び第1半導体膜を一緒に形成できる。
【0030】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記埋込領域は、第2電流ブロック層を更に含み、前記第1電流ブロック層は、前記第2電流ブロック層と前記半導体メサの前記側面との間に設けられ、前記第2電流ブロック層の材料は、前記第2半導体膜の材料における構成元素及び組成に関して実質的に同一である。
【0031】
量子カスケード半導体レーザによれば、第2電流ブロック層は、半導体メサ側面からの放熱に寄与できる。例えば、第2電流ブロック層が第2半導体膜と同じ成長条件で成長されるとき、第2電流ブロック層は、構成元素及び組成の点で第2半導体膜に同一になる。
【0032】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記第2電流ブロック層及び前記第2半導体膜は、単一の半導体層を構成する。
【0033】
量子カスケード半導体レーザによれば、第2電流ブロック層及び第2半導体膜を一緒に形成できる。
【0034】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザは、反射層上に設けられた絶縁層を更に含む。
【0035】
量子カスケード半導体レーザによれば、絶縁層は、反射層を保護すると共に、機械的な強度を補うことに寄与する。
【0036】
具体例に係る量子カスケード半導体レーザでは、前記基板は、前記第1軸に配列された第1端面及び第2端面を含み、前記基板の前記主面は、前記第1軸の方向に配列された第1エリア及び第2エリアを含み、前記半導体メサ及び前記反射層は、それぞれ、前記第1エリア及び前記第2エリア上に設けられ、前記第2エリアは、前記基板の前記第1端面の上縁に到達し、前記第1半導体膜は、前記端面上に設けられた第1部分と、前記第2エリア上に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分は、前記第1端面の前記上縁から離れた縁を有する。
【0037】
量子カスケード半導体レーザによれば、第2部分の縁が、第1端面の上縁から離れており、第1半導体膜のための半導体層は、基板の第1端面を形成する分離工程における破断力を受けない。
【0038】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、量子カスケード半導体レーザに係る本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係る分布帰還型量子カスケード半導体レーザを示す平面図である。
図2は、量子カスケード半導体レーザのためのコア層の一例を示す図面である。
図3は、
図1に示されるIII−III線に沿ってとられた断面を示す図面である。
【0040】
図1から
図3を参照しながれら、実施形態に係る量子カスケード半導体レーザ11を説明する。量子カスケード半導体レーザ11は、レーザ構造体13及び反射層15を備える。レーザ構造体13は、基板17及び半導体積層領域19を備える。基板17の第1端面17a及び第2端面17bは、第1軸Ax1の方向に配列される。基板17は、第1端面17a及び第2端面17b、並びに主面17cを含む。基板17は、例えば半導体基板であることができ、具体的には、n型InP基板であることができる。本実施例では、基板17は導電性を有する。半導体積層領域19は、第1メサ端面19a、第2メサ端面19b、及び半導体メサ19cを含む。第1メサ端面19a及び第2メサ端面19bは、第1軸Ax1に交差する第2軸Ax2の方向に延在する。第2軸Ax2は、基板17の主面17cに交差する方向に延在する。反射層15は、下地の半導体領域に接合を成す。本実施例では、反射層15は、第1メサ端面19a及び第2メサ端面19bの各々の上に設けられている。反射層15は、第1メサ端面19a及び第2メサ端面19bのいずれか一方に設けられるようにしてもよい。反射層15は、コア層に接触を成す第1半導体膜15aを含む。第1半導体膜15aは、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体の少なくともいずれかを備えることができる。第1半導体膜15aのアンドープ半導体及び半絶縁性半導体は、半導体メサ19cの第1メサ端面19a(必要な場合には、第2メサ端面19b)に接合を成す。
【0041】
基板17の主面17cは、第1エリア17d、第2エリア17e及び第3エリア17fを含む。第1エリア17d、第2エリア17e及び第3エリア17fは、第1軸Ax1及び第2軸Ax2に交差する第3軸Ax3の方向に延在しており、第3エリア17fは、第1エリア17dと第2エリア17eとの間に位置する。本実施例では、第3エリア17fは、第1エリア17d及び第2エリア17eに接している。
【0042】
第1エリア17dは、半導体メサ19cの第1メサ端面19aを第1端面17aに接続し、第2エリア17eは、半導体メサ19cの第2メサ端面19bを第2端面17bに接続する。第1半導体膜15aは、第1エリア17d(第2エリア17e)上の第1部分15aa及び第1メサ端面19a(第2メサ端面19b)上の第2部分15abを有する。第1部分15aaは、第1エリア17d(第2エリア17e)に沿って第1端面17a(第2端面17b)から半導体メサ19cの第1メサ端面19a(第2メサ端面19b)の下端へ延在する。
【0043】
図1及び
図2に示されるように、コア層27aは、超格子構造29を有し、この超格子構造29は量子井戸層29a及びバリア層29bを含む。反射層15の第1半導体膜15aは、量子井戸層29aのバンドギャップに等しい、又はより小さいバンドギャップを有する。
【0044】
量子カスケード半導体レーザ11によれば、量子井戸層29aのバンドギャップ以下の第1半導体膜15aとコア層27aとの組み合わせは、第1半導体膜15aの膜厚に応じて変化する端面反射率を提供できる。
【0045】
半導体メサ19cは、基板17上に成長される下部クラッド層27e、コア層27a、回折格子層27b、上部クラッド層27c、及びコンタクト層27dを備える。下部クラッド層27e、コア層27a、回折格子層27b、上部クラッド層27c、及びコンタクト層27dは、第1メサ端面19a及び第2メサ端面19bの一方から他方まで延在する。第1半導体膜15aは、下部クラッド層27e、コア層27a、回折格子層27b、上部クラッド層27c、及びコンタクト層27dの端面を覆う。また、第1半導体膜15aは、第1メサ端面19aの下端部に位置する第1基板端面17i(第2基板端面17j)を覆う。本実施例では、基板17は、下部クラッド層27e、コア層27a、回折格子層27b、上部クラッド層27c、及びコンタクト層27dを搭載するリッジ部17hを含み、リッジ部17hは第1基板端面17iから第2基板端面17jまで延在する。
【0046】
量子カスケード半導体レーザは、キャリアとして単極のキャリア、例えば電子を利用し、伝導帯CBにおけるサブバンド間における電子の遷移は、発光を生じさせる。
図2を参照すると、量子カスケード半導体レーザ11では、コア層27aは、発光のための複数の発光層31(31U、31D)と、この発光層31にキャリアを注入するための複数の注入層33(33U、33D)とを含む。これら発光層31及び注入層33は交互に配列されており、発光層31及び注入層33の各々はGaInAs/AlInAsの超格子列を含むことが好ましい。サブバンド遷移のための超格子構造は、発光層31中には上準位UL、下準位LL1、及び緩和準位LL2の合計3つのサブバンド準位を提供できる。注入層33には、ミニバンド12が形成される。ミニバンド12のエネルギー幅は、上流側の下準位LL2を下流側の上準位ULに繋ぐために役立つ。具体的には、発光層31内の量子井戸層29a及びバリア層29bの組成及び膜厚を適切に選択して上準位と下準位1のエネルギ差を調節したコア層は、3〜20マイクロメートルの中赤外波長領域の発光を提供できる。量子井戸層29aは、例えばGaInAs、GaInAsPを備え、バリア層29bは、例えばAlInAs、AlGaInAsを備える。本実施例では、中赤外発光を可能にする量子井戸層29a及びバリア層29bは、それぞれ、GaInAs及びAlInAsを含む。これらの材料を超格子に用いるコア層27aによれば、量子カスケード半導体レーザ11が伝導帯サブバンド間遷移により3〜20マイクロメートルの中赤外波長領域におけるレーザ発振を可能にする。量子井戸層29a及びバリア層29bは、単位構造UCを構成する。
【0047】
図2に示されるように、コア層27aは、発光層31及び注入層33から成る複数の単位構造UCを含み、この単位構造UCが数十周期の多段に接続される。発光層31及び注入層33の各々は、超格子を含み、超格子では、数ナノメートル厚の薄膜の量子井戸層29aと、同じく数nm厚の薄膜で量子井戸層29aよりも高バンドギャップのバリア層29bとが交互に積層される。
【0048】
このコア層27aに電界を印加する。その印加によって発光層31U(低電位側の発光層31)の上準位ULに電子が注入されて、上準位UL上の電子は下準位LL1に遷移する。この遷移により、両準位間のエネルギ差に対応する波長の発光が生じる。発光層31U(低電位側の発光層31)の下準位LL1に遷移した電子は、LOフォノンを放出して、更にその下の緩和準位LL2へ高速に緩和する。緩和準位LL2の電子は、注入層33U(低電位側の注入層33)を経由して隣の単位構造UCの発光層31D(高電位側の発光層31)の上準位ULに注入される。この説明から理解されるように、緩和準位LL2は、下準位LL1に遷移した電子を高速に緩和させて下準位LL1のキャリアを枯渇させることによって、上準位ULと下準位LL1との間でのキャリアの反転分布を維持するために用いられる。また、
図2に示すように、注入層33は、密集した多数のサブバンド準位からなるミニバンド12と呼ばれる電子の輸送路として働くことができ、この輸送路を電子が通過して、次の発光層31D(高電位側の発光層31)にスムーズに注入される。発光層31D(高電位側の発光層31)に注入された電子は発光層31U(低電位側の発光層31)同様に発光遷移した後に、注入層33D(高電位側の注入層33)を経由して、更に高電位側の単位構造UCの発光層31に受け渡される。以下同様にして、多段に接続された単位構造UCの各々において発光遷移が繰り返される。量子カスケード半導体レーザは、各単位構造における発光が足し合わされた光を提供する。
【0049】
このようにコア層27aは、発光層31及び注入層33を多段接続した構造を含む。発光層31間に注入層33を設けることにより、電子が高電位側の発光層に連続的に受け渡されて、伝導帯サブバンド間遷移による発光を効率よく生成できる。この説明から理解されるように、量子カスケード半導体レーザは、バンドギャップ遷移ではなく伝導帯内におけるサブバンド遷移、具体的には伝導帯サブバンド間の電子遷移により発光を生成する。
【0050】
レーザ構造体13は、半導体メサ19cを含み、また半導体メサ19cとは別の半導体メサを備えることができる。レーザ構造体13は、コア層27aのための第1半導体膜25a、回折格子層27bのための第2半導体層25b、上部クラッド層27cのための第3半導体層25c、及びコンタクト層27dのための第4半導体層25dを含み、下部クラッド層27eのための第5半導体層25eを更に含むことができる。本実施例では、
図1及び
図3に示されるように、レーザ構造体13は半導体メサ19cを含み、半導体メサ19cは、下部クラッド層27e、コア層27a、回折格子層27b、上部クラッド層27c、及びコンタクト層27dを含むことができる。量子カスケード半導体レーザ11では、回折格子層27bと上部クラッド層27cとの界面は、周期的な屈折率変化を提供する回折格子GRを構成する。
【0051】
量子カスケード半導体レーザ11は、コンタクト層27d上に設けられた第1電極30aを備える。また、量子カスケード半導体レーザ11は、基板17の裏面17gに接合を成す第2電極30bを含む。第1電極30a及び第2電極30bは、例えばTi/Au、Ti/Pt/Au、またはGe/Auといった金属積層を備えることができる。必要な場合には、絶縁膜37が第1電極30aと電流ブロック層35aとの間に設けられ、第1電極30aは、具体的には、絶縁膜37の開口37aを介して半導体メサ19cの上面に接触を成す。この絶縁膜37は、SiO
2、SiON、SiN、アルミナ、BCB、ポリイミドといった誘電体絶縁膜を備えることができる。これらの膜は、スパッタ、化学的気相成長法(CVD)、スピンコートといった成膜法により形成されることができる。本実施例では、第1電極30aは、半導体メサ19cの第1側面19f及び第2側面19g上に設けられて、半導体メサ19cからの熱を受ける。また、第1電極30aは、第1側面19f及び第2側面19gからに引き続き基板17の主面17c上を延在する。第1電極30aは、第3エリア17f上に設けられて、半導体メサ19cからの熱を放出することに寄与できる。
【0052】
図3を参照すると、量子カスケード半導体レーザ11は、電流ブロック層35を備え、電流ブロック層35は、本実施例では半導体メサ19cの側面19f、19g上に設けられる第1部分35aを含み、また第1側面19f及び第2側面19gの下端から第3エリア17fの側縁まで延在する第2部分35bを含むことができる。本実施例では、第1部分35aは第1側面19f及び第2側面19gを覆う。
量子カスケード半導体レーザ11は、
図3に示される埋め込みヘテロ構造を有することができる。電流ブロック層35は、半導体メサ19cの側面19f、19g上に設けられて、電流を半導体メサ19cに閉じ込める。電流ブロック層35は、高抵抗半導体を備え、高抵抗半導体は、例えばアンドープ又は半絶縁性半導体であることができる。好ましくは、半絶縁性半導体は、III−V族化合物半導体に遷移金属(例えばFe、Ti、Cr、Co)を添加して形成される。例えばFeドーパントを含むInPは、電子に対して例えば10
5Ω・cm以上の高い比抵抗を半導体に提供でき、電流ブロック層35として良好に機能する。可能な場合には、アンドープ半導体を電流ブロック層に適用できる。
図3に示される埋め込みヘテロ構造では、電流ブロック層35は、メサ側面上の第1部分35aだけでなく、基板17の主面17c上の第2部分35bを備える。電流ブロック層35は、適切な厚さHCBを有することができる。例えば、電流ブロック層35が、半導体メサ19cの高さにまで成長されて、素子表面を平坦化するのに必要な高さにHCBを設定することができる。
電流ブロック層35:アンドープ又は半絶縁性のInP、GaInAsP、AlGaInAs、AlInAs、GaInAs。
【0053】
本実施例では、電流ブロック層35は、半導体メサ19cの側面上に設けられた第1部分35aとして、第1半導体膜15aを含むことができる。
【0054】
電流ブロック層35は、第1半導体膜15aと同じ半導体材料を備えることができる。電流ブロック層35及び第1半導体膜15aは、同じ成膜工程において一括に形成される。同一工程における形成によれば、製造工程を簡素化でき、その結果、生産性向上、生産コストの低減を提供できる。
【0055】
電流ブロック層35は、本実施例では半導体メサ19cの側面上に設けられた第1部分35aとして、第1半導体膜15aを含むことができる。電流ブロック層は、半導体メサ19cの側面上に設けられて、電流を半導体メサ19cに閉じ込める。電流ブロック層35は、高抵抗半導体を備え、高抵抗半導体は、例えばアンドープ又は半絶縁性半導体であることができる。
【0056】
引き続く説明における電流ブロック層35は、第1半導体膜15aと同じ半導体材料を備えることができる。第1半導体膜15aが、半導体メサ19cの第1側面19f及び第2側面19g上に設けられて、半導体メサ19cのコア層27aの側面が高屈折率の半導体層により覆われる。これにより、導波光は半導体メサ19c内に、より拡散して分布するようになるため、導波路内の光密度が低下する。その結果、空間ホールバーニングや、CODの発生等を抑制でき、量子カスケードレーザの出力特性や信頼性の改善が得られる。第1半導体膜15aは、第1側面19f及び第2側面19gに接合を成す。第1半導体膜15aは、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体の少なくともいずれかを備えることができる。半導体メサ19cの第1メサ端面19aに接合を成すアンドープ半導体及び半絶縁性半導体は、第1メサ端面19aと第1半導体膜15a(反射層15)との界面におけるリーク電流、及び、第1半導体膜15a(反射層15)における自由キャリアによる光吸収を低減できる。また、第1側面19f及び第2側面19gに沿って延在するアンドープ及び半絶縁性の半導体は、第1側面19f及び第2側面19gと第1半導体膜15a(電流ブロック層35)との界面における、リーク電流、及び、第1半導体膜15a(電流ブロック層35)における自由キャリアによる光吸収を回避できる。
【0057】
(実施例)
図1、
図2及び
図3を参照しながら、量子カスケード半導体レーザ11の実施例を説明する。量子カスケード半導体レーザ11は、本体領域と、本体領域の両側に設けられた外部領域を含む。本体領域は、デバイスの中央部に位置し、埋め込みヘテロ構造を有しレーザ発振のための、半導体メサ19cと電流ブロック層35から構成される導波路メサ構造を含む。導波路メサ構造の半導体のメサ端面は、反射層15で覆われる。半導体メサ19cの第1メサ端面19a上の第1半導体膜15aが、レーザ共振器の端面として機能する。本実施例では、反射層15は、共振器ミラー構造のために、半導体メサ19cの第1メサ端面19a及び第2メサ端面19b上に設けられる。
【0058】
基板17は、例えば半導体基板であることができ、半導体基板は、例えばn型InP基板である。基板17は導電性を有することができる。中赤外の量子カスケード半導体レーザを構成する半導体層は、InP半導体と同じ格子定数又はこれに近い格子定数を有しており、InP基板は、この上に成長される下部クラッド層27e、コア層27a、回折格子層27b、上部クラッド層27c、及びコンタクト層27dのための半導体層に良好な結晶成長を提供できる。これらの半導体層は、例えば有機金属気相成長法又は分子線エピタキシーにより成長される。また、InPは中赤外の光に対して実質的に透明である。InPは、下部クラッド層として用いられる。
【0059】
上部クラッド層27c及び下部クラッド層27eは、例えばn型InPを備えることができる、また、InPは2元混晶であって、基板のInPに格子整合する。従って、上部クラッド層27c、及び下部クラッド層27eがInPから成ると、InP基板の下地に良好なクラッド層の結晶成長が可能となる。InPのクラッド層は、InPの熱伝導性の点で、コア層のために良好な放熱性を確保する。
【0060】
回折格子層27bは、量子カスケードレーザに単一モード発振の為の分布帰還構造を提供できる。回折格子は、第1軸Ax1の方向に延在しており、回折格子構造は、フォトリソグラフィ及びエッチングにより形成される。ブラッグ波長は、回折格子の周期PRDに応じて設定され、ブラッグ波長に対応した光が選択的に回折格子により反射されると共に共振器内で増幅される。この構造は、単一モード発振を可能にする。大きな結合係数を回折格子に提供するために、例えば高屈折率のアンドープ又はn型のGaInAsを用いることができる。
【0061】
コンタクト層27dは、第1電極30aに良好なオーミックコンタクトを提供できる。コンタクト層27dは、例えばn型GaInAsを備えることができ、GaInAsは、低いバンドギャップである共にInPに格子整合可能である。コンタクト層27dは、必要な場合に設けられる。
【0062】
必要な場合には、コア層27aと回折格子層27bとの間に、及び/又はコア層27aと下部クラッド層27eとの間に光閉じ込め領域を設けることができる。光閉じ込め領域の追加により、コア領域への導波光の閉じ込めを強化することができる。光閉じ込め領域は、クラッド層より高い屈折率を有する半導体材料からなり、InPに格子整合可能な材料であることが望ましい。光閉じ込め領域は、例えばアンドープやn型のGaInAsを備えることができる。
【0063】
反射層15を構成する第1半導体膜15aは、半導体の構成元素の酸化に起因する共振器端面(導波路の端面)の劣化を避けることができる。第1半導体膜15aのバンド間吸収による光の吸収を防ぐために、第1半導体膜15aは、コア層27aに係る発光のフォトンエネルギーより高いバンドギャップエネルギーを有する半導体材料を備える。反射層15自身の酸化を避けるために、第1半導体膜15aは、構成元素としてアルミニウムを含まないIII−V族化合物半導体、例えばGaInAsやGaInAsPを備えることができる。高抵抗のGaInAsやGaInAsPは、遷移金属(例えば、Fe)の添加により提供される。第1半導体膜15aはメサ端面19a、19b、及び第3エリア17f上に成長され、第1半導体膜15aの膜厚は、例えば第1エリア17d上において0.5〜10マイクロメートルの範囲にある。
【0064】
第1半導体膜15aは、コア層27a内の量子井戸層のバンドギャップに等しい又はより小さい半導体材料からなる。また、第1半導体膜15aが大気と接触する構造では、第1半導体膜15aは、構成元素としてアルミニウムを含まないIII−V族化合物半導体からなることが望ましく、例えばGaInAsやGaInAsPを含み、このような材料は、コア層の量子井戸層の材料と実質的に同じであることができる。半導体メサ19cの端面(19a、19b)に接する第1半導体膜15aがアルミニウムを含む場合、大気中の酸素及び/又は水分と反応する可能性がある。この反応に起因して、第1半導体膜15aに結晶欠陥が生成される。このような結晶欠陥は、非発光再結合として働く。非発光再結合の増加は、閾値電流の増加及び光出力の低下になる。また、非発光再結合中心は、静電放電(Electro−Static Discharge:ESD)及び光学損傷(catastrophic optical damage:COD)による端面破壊を引き起こす原因であって、信頼性を損なう源になり得る。従って、第1半導体膜15aには、アルミニウムを含まないIII−V族化合物半導体、例えばGaInAsやGaInAsPを用いるのが好ましい。第1半導体膜15aは、高抵抗の半導体材料で形成されることが望ましく、例えば、アンドープ又は半絶縁性の半導体を備えることが好ましい。半絶縁性半導体では、例えばFe、Ti、Cr、Coといった遷移金属をホストIII−V族化合物半導体に添加されて、この添加によりIII−V族化合物半導体の禁制帯中に深い準位が形成される。深い準位は、電子をトラップすることができ、これにより半絶縁性を提供できる。添加される遷移金属は、多くの場合に鉄(Fe)である。この遷移金属をドープすることにより、電子に対して例えば10
5Ω・cm以上の高抵抗性が提供できる。或いは、アンドープ半導体の高抵抗性を受け入れることができるデバイスでは、第1半導体膜15aは、アンドープ半導体を備えることができる。高比抵抗の第1半導体膜15aは、デバイスの動作時において反射層15を経由して流れるリーク電流を低減できる。反射層15は、量子井戸層29aの半導体と同じ組成の半導体にFeといった遷移金属を不純物として添加して形成され、例えばこの半導体は、GaInAs及び/又はGaInAsPを含むことができる。
【0065】
pn接合を有する半導体レーザ、例えば光通信用半導体レーザの発光は、半導体メサ内のコア層の量子井戸層の伝導帯と価電子帯との間における電子のバンド間遷移を利用する。この発光機構は、量子井戸層のバンドギャップにほぼ等しい波長の光を生成する。共振器のために、半導体メサの端面の反射層は、反射層に固有のバンド遷移により出射光を吸収することを防ぐために、量子井戸層のバンドギャップより高いバンドギャップの材料からなる。
【0066】
光通信用半導体レーザより長い波長の光を生成する量子カスケード半導体レーザにも、端面上の反射層は適用可能である。高バンドギャップを有する半導体の反射層は、半導体メサのコア層の屈折率より低い。高バンドギャップを有する半導体の反射層を半導体メサの端面に適用する構造では、量子カスケード半導体レーザのメサ端面が低屈折率の半導体層で覆われる。発明者の知見によれば、低屈折率の半導体層による被覆によれば、端面反射率は、高い屈折率の半導体層による被覆に比べて実効的に小さい。
【0067】
発明者の検討によれば、量子カスケード半導体レーザは、光通信用半導体レーザより長い波長の光を生成できる伝導帯のサブバンド遷移を利用する。サブバンド遷移による発光の波長は、コア層の量子井戸層の伝導帯と価電子帯との間における電子遷移のフォトンエネルギーに対応する光波長に比べて長く、これ故に、コア層の量子井戸層は、量子カスケード半導体レーザのサブバンド遷移からの光を吸収できない。量子カスケード半導体レーザのコア層の超格子は、量子井戸層に加えて、量子井戸層より高いバンドギャップと低い屈折率のバリア層を含む。超格子における量子井戸層及びバリア層の平均屈折率は、量子井戸層の半導体材料の屈折率より小さい。
【0068】
サブバンド間遷移で生じる中赤外光のフォトンエネルギーは、コア層の量子井戸層のIII−V族化合物半導体のバンドギャップエネルギーより遥かに小さい。サブバンド間遷移で生じる中赤外光は、コア層の量子井戸層のバンドギャップエネルギー以下のバンドギャップエネルギーを有するIII−V族化合物半導体を備える反射層によって吸収されない。一方、反射層のIII−V族化合物半導体の屈折率は、コア層の超格子における平均屈折率より大きい。
【0069】
また、反射層の構成元素がコア層の量子井戸層の構成元素を含むとき、メサ端面のコア層上への結晶成長が容易になる。また、反射層の組成が量子井戸層の組成と同じであるとき、メサ端面への結晶成長における構成欠陥の生成が抑制される。
【0070】
コア層の量子井戸層のバンドギャップ以下の半導体の反射層をメサ端面上に設けることは、コア層の量子井戸層の伝導帯と価電子帯とのバンド遷移を利用するpn接合半導体レーザでは可能ではなく、量子カスケード半導体レーザに特有なことである。
【0071】
以下の構造を有する量子カスケード半導体レーザのモデル(
図1に示された構造を有する7.23マイクロメートル帯の分布帰還型量子カスケード半導体レーザのモデル)を用いて、平面波近似により共振器端面の反射率を計算する。
本実施例の素子構造(反射膜の厚みに対する端面反射率の依存性を「構造P」として参照)。
真空中での発振波長;7.23マイクロメートル。
基板:n−InP。
コア層:GaInAs量子井戸/AlInAsバリア層から成る超格子列、GaInAs及びAlInAsはInPに格子整合する。
上側クラッド層:n型InP。
下側クラッド層:n型InP。
回折格子層:n型GaInAs。
コンタクト層:n型GaInAs。
第1半導体膜:FeドープGaInAs。
【0072】
別の構造(端面膜の厚みに対する反射率の依存性を「構造C」として参照)。
メサ端面上の端面膜:InP。
【0073】
図4は、構造P及び構造Cにおける反射率の膜厚依存性を示す。
図4の横軸は、端面上の膜の厚さ(横軸の厚さは、発振波長RAMDと、発振波長RAMDにおける第1半導体膜の屈折率nとの比(RAMD/n)により規格化されている)を示し、縦軸は、端面の反射率を示す。
【0074】
計算された反射率(構造P及び構造C)は、横軸の膜厚に対して、0.5x(RAMD/n)の周期で変化する。
【0075】
構造Cの反射率は、何れの膜厚においても、反射膜の膜厚ゼロにおける反射率の値26.9%以下であり、膜厚0.25x(RAMD/n)における反射率が最も低い。
【0076】
構造Pの反射率は、何れの膜厚においても、反射膜の膜厚ゼロにおける反射率の値26.9%以上である。第1半導体膜の膜厚0.25x(RAMD/n)における反射率が、膜厚ゼロにおける値より大きく、31.5%である。
【0077】
構造Pによれば、メサ端面上の第1半導体膜により、高い反射率を共振器のための端面に提供できる。この反射率の増加により、閾値電流の低減を実現できる。例えば半導体メサの後端面上に第1半導体膜を設けて高反射を得ることができる。これにより、後端面のみが高反射化された構造では、前端面及び後端面の反射率の差により、半導体レーザの単一モード動作が容易になる。
【0078】
コア層の量子井戸層と同じGaInAsP、GaInAs等の半導体材料を反射層の第1半導体膜に適用すると、メサ端面のコア端面において第1半導体膜を構成する原子は、コア層の量子井戸層と第1半導体膜との界面において量子井戸層の原子に結合して、量子井戸層及び第1半導体膜は結晶学的に一体化される。これにより、ダングリングボンドを生成することが無いため、界面欠陥の発生を抑制できる。量子井戸層と第1半導体膜のための半導体材料は、例えばGaInAsとGaInAsとの組み合わせのように同じ元素(Ga、In、As)を含む組成で構成されていればよく、それらの導電型は互いに一致していなくても良い。また、反射層の第1半導体膜にアンドープ又は半絶縁性の半導体を用いることにより、自由電子による光吸収を低減できる。好ましくは、反射層の第1半導体膜の半導体材料のバンドギャップ範囲は、当該量子カスケード半導体レーザの発振波長に対応するバンドギャップ値と同等以下である。
【0079】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る量子カスケード半導体レーザを模式的に示す断面図である。
図5の断面は、第1実施形態に係る量子カスケード半導体レーザを示す
図1の断面に対応する。量子カスケード半導体レーザ11aでは、反射層15が複数の半導体膜を備える。具体的には、反射層15は、第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bを含むことができる。半導体メサ19cの第1メサ端面19a上において、第2半導体膜15bは第1半導体膜15a上に設けられる。
【0080】
第1半導体膜15aは、量子井戸層のバンドギャップと同じ又はより小さい半導体材料を備え、例えば量子井戸層と同じGaInAs及び/又はGaInAsPを備えることができる。これらの半導体材料は、3元混晶または4元混晶であって、3元混晶及び4元混晶の熱伝導率は、2元混晶の熱伝導率より小さい。これ故に、第1半導体膜15aの熱伝導率は、2元混晶の熱伝導率より小さい。第1半導体膜15aの材料に起因する熱伝導率の限界を補うために、第2半導体膜15bの材料は、第1半導体膜15aの材料の構成元素数より少ない構成元素を備えることがよい。具体的には、4元混晶の第1半導体膜15aは、2元混晶又は3元混晶の第2半導体膜15bと組み合わされることができる。3元混晶の第1半導体膜15aは、2元混晶の第2半導体膜15bと組み合わされることができる。典型的な二元混晶はInPである。InPは、高い熱伝導を有するものであって、これを第2半導体膜15bに用いれば、半導体メサ19cの第1メサ端面19aの被覆が放熱性の悪化及び/又は端面における温度上昇を引き起こし、特性劣化や端面破壊が生じることを回避できる。InPの熱伝導率はGaInAs及びGaInAsPの熱伝導率より1桁程度高い値である。第1半導体膜15aはアンドープまたは半絶縁性の半導体からなる。また、第2半導体膜15bがアンドープまたは半絶縁性の半導体からなることが好ましく、二元混晶の一例は、FeドープInPである。
第1半導体膜15aの膜厚:一例として、0.5〜10マイクロメートル。
第2半導体膜15bの膜厚:一例として、0.5〜10マイクロメートル。
【0081】
好ましくは、良好な熱伝導性を反射層15に提供するためには、第1半導体膜15aの厚さを第2半導体膜15bの厚さより薄くする。第1半導体膜15aは、高い反射率の点で反射率の向上に寄与し、第2半導体膜15bは、高い熱伝導率の点で放熱性の向上に寄与できる。
材料の組み合わせの例示。
第1半導体膜15a、第2半導体膜15b。
GaInAsP、GaInAs及び/又はInP。
GaInAs、InP。
GaInAs及び/又はGaInAsP、InP。
多層の反射層は、反射率の可変範囲の拡大、良好な熱伝導性、及び所望の機械的な強度を提供できる。多層の反射層は、素子放熱性の悪化及び端面温度上昇を効果的に抑制できる。
【0082】
図6は、構造Q(二層の半導体膜)における反射率の膜厚依存性を示す。
図6は、第1半導体膜15aにGaInAsを用い、その厚さを0.25x(RAMD/n)(RAMDは発振波長、nは発振波長RAMDにおけるGaInAsの屈折率)で固定した場合において、更に第2半導体膜15bにInPを用い、その厚さを変化させた時の端面反射率の第2半導体膜厚に対する依存性を計算した結果を示す。
図6の横軸は、反射層の第2半導体膜の厚さ(横軸の厚さは、発振波長RAMDと、発振波長RAMDにおける第2半導体膜(InP膜)の屈折率nとの比(RAMD/n)により規格化されている)を示し、縦軸は、反射率を示す。構造Qは、0.25x(RAMD/n)厚のGaInAs膜の第1半導体膜15a、及びInPの第2半導体膜15bを含む。構造Pだけでなく構造Qを用いた場合も、
図4の構造Cにおける反射特性の屈折率の可変範囲より大きい。大きな反射率を得るためには、厚さ0.5x(RAMD/n)付近の第2半導体膜厚を反射層に適用する。小さい反射率を得るためには、厚さ0.25x(RAMD/n)及び0.75x(RAMD/n)付近の第2半導体膜厚を反射層に適用する。メサ端面における反射率26.9%から離れた反射率をメサ端面に提供できる。
【0083】
図7は、
図5に示されるVII−VII線に沿ってとられた断面を示す図面である。量子カスケード半導体レーザ11aは、
図7に示されるように、埋め込みヘテロ構造を有することができる。具体的には、量子カスケード半導体レーザ11aは、電流ブロック層35を備え、電流ブロック層35は、本実施例では半導体メサ19cの側面上に設けられる第1部分35aを含み、また第1側面19f及び第2側面19gの下端から第3エリア17fの側縁まで主面17c上を延在する第2部分35bを含むことができる。本実施例では、第1部分35aは第1側面19f及び第2側面19gを覆う。電流ブロック層35は、半導体メサ19cの側面上に設けられて、電流を半導体メサ19cに閉じ込める。電流ブロック層35は、高抵抗半導体を備え、高抵抗半導体は、例えばアンドープ又は半絶縁性半導体であることができる。好ましくは、高抵抗半導体は、III−V族化合物半導体に遷移金属を添加(例えばFe、Ti、Cr、Co)して。半絶縁性半導体を得ることができる。例えばFeドーパントを含むInPは、電子に対して例えば10
5Ω・cm以上の高抵抗特性を半導体に提供でき、電流ブロック層35として良好に機能する。可能な場合には、アンドープ半導体を電流ブロック層に適用できる。
電流ブロック層35:一例として、アンドープ又は半絶縁性のInP、GaInAsP、AlGaInAs、AlInAs、GaInAs。
【0084】
本実施例では、電流ブロック層35は、半導体メサ19cの側面上に設けられた第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bを含むことができる。電流ブロック層35は、反射層15と同じ半導体材料を備えることができ、また反射層15と同じ積層構造を有することができる。電流ブロック層35は、第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bと同じ成膜工程において一括に形成される。この形成によれば、製造工程を簡素化でき、その結果、生産性向上、生産コストの低減を提供できる。
【0085】
図7に示される埋め込みヘテロ構造では、電流ブロック層35の第1部分35aは、第1半導体膜15aの第1部分15aa及び第2半導体膜15bの第1部分15baを含むことができ、また電流ブロック層35の第2部分35bは、第1半導体膜15aの第2部分15ab及び第2半導体膜15bの第2部分15bbを備えることができる。
【0086】
引き続く説明における電流ブロック層35は、第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bと同じ半導体材料を備えることができる。電流ブロック層35は、第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bと同じ成膜工程において一括に形成される。一括形成によれば、製造工程を簡素化でき、その結果、生産性向上、生産コストの低減を提供できる。
【0087】
第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bが、半導体メサ19cの第1側面19f及び第2側面19g上に設けられて、半導体メサ19cのコア層27aの側面が高屈折率の第1半導体膜15aにより覆われる。これにより、導波光は半導体メサ19c内に、より拡散して分布するようになるため、導波路内の光密度が低下する。その結果、空間ホールバーニングや、CODの発生等を抑制でき、量子カスケードレーザの出力特性や信頼性の改善が得られる。第1半導体膜15aは、第1側面19f及び第2側面19gに接合を成すことができる。第1半導体膜15aは、アンドープ半導体及び半絶縁性半導体の少なくともいずれかを備えるので、第1側面19f及び第2側面19gに接合を成すアンドープ半導体及び半絶縁性半導体は、第1側面19f及び第2側面19gと第1半導体膜15aとの界面におけるリーク電流を低減できる。また、第1側面19f及び第2側面19gに沿って延在するアンドープ及び半絶縁性の半導体は、低いキャリア濃度を有するので、自由キャリアによる光吸収を回避できる。
【0088】
必要な場合には、絶縁膜37が第1電極30aと第2半導体膜15bとの間に設けられる。この絶縁膜37は、既に説明したように、SiO
2、SiON、SiN、アルミナ、BCB、ポリイミドといった誘電体絶縁膜を備えることができる。これらの膜は、スパッタ、化学的気相成長法(CVD)、スピンコートといった成膜法により成膜されることができる。量子カスケード半導体レーザ11aは、コンタクト層27d上に設けられた第1電極30aを備え、具体的には、半導体メサ19cの上面に絶縁膜37の開口37aを介して接触を成す。
【0089】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る量子カスケード半導体レーザを示す断面である。
図8の断面は、第1実施形態に係る量子カスケード半導体レーザを示す
図1に対応する。量子カスケード半導体レーザ11bは、反射層15上に設けられた絶縁膜39を更に備えることができる。この絶縁膜39は、SiO
2、SiON、SiN、アルミナ、BCB、ポリイミドといった誘電体絶縁膜を備えることができる。これらの膜は、スパッタ、化学的気相成長法(CVD)、スピンコートといった成膜法により成膜されることができる。第3実施形態に係る反射層15は、第1実施形態に示された第1半導体膜15aであることができ、或いは第2実施形態に示された第1半導体膜15a及び第2半導体膜15bの積層であることができる。
【0090】
反射層15を被覆する絶縁膜39は、振動、衝撃からの割れや欠けから反射層15を保護でき、量子カスケード半導体レーザ11bの機械的な強度を高めることができる。
【0091】
また、絶縁膜39は、電流ブロック層35と第1電極30aとの間に設けられる絶縁膜37と同一の工程で一括して形成するようにしてもよい。この形成により、製造工程を簡素化でき、生産性向上及び生産コストの低減を提供できる。
【0092】
本実施形態では、絶縁膜39は、第1メサ端面19a及び第2メサ端面19bの両方に設けられている。第1メサ端面19a及び第2メサ端面19bのいずれか一方に、絶縁膜39は設けられていてもよい。
【0093】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る量子カスケード半導体レーザを示す断面である。
図9の断面は、第1実施形態に係る量子カスケード半導体レーザを示す
図1に対応する。量子カスケード半導体レーザ11cでは、第1エリア17d(第2エリア17e)において、反射層15の端15cが、第1端面17a(第2端面17b)から離れている。この離間の距離DEは、例えば5〜50マイクロメートルであることができる。
【0094】
量子カスケード半導体レーザ11cの作製では、結晶成長によるエピ成長、フォトリソグラフィ及びエッチングによるメサ形成、結晶成長による反射層、及び電流ブロック層のための半導体膜の選択成長(及び加工)、保護膜の形成、及びメタライズによりウエハ生産物を形成すると共に、このウエハ生産物をへき開等により分割して、レーザバー及び半導体チップを形成する。この分割工程において、量子カスケード半導体レーザ11cでは、反射層15の端15cが、分割地点となる第1端面17a(第2端面17b)から離れているため、反射層15は、素子分割のための押圧に起因する損傷を受けない。そのため、この分割の際に、反射層のための半導体薄膜が押圧により破断されることなく、レーザバー及び/又は半導体チップが形成される。
【0095】
量子カスケード半導体レーザ11cの第1端面17a及び第2端面17bからから反射層15の端15cが離れている。また、第1メサ端面19aと第1端面17aとの距離は、例えば10〜100マイクロメートルであることができる。第1端面17a及び第2端面17bのいずれか一方から反射層15の端15cが離れているようにしてもよい。
【0096】
量子カスケード半導体レーザ11cは、反射層15の端15c及び反射層15の表面を覆う絶縁膜39を含む。本実施例では、絶縁膜39は、第1端面17a及び第2端面17bに接している。絶縁膜39が反射層15を覆うと反射層15の機械的強度が増加し、チップ分割時のダメージをより被りにくくなる。
【0097】
いくつかの実施形態を説明してきた。これらの実施形態において、半導体メサ19cの第1メサ端面19a及び第2メサ端面19b上に、同じ反射層15が設けられている。第1メサ端面19aの反射層15の材料及び/又は層数は、第2メサ端面19bの反射層15の材料及び/又は層数と異なっていてもよい。
【0098】
本実施形態に係る量子カスケード半導体レーザは、
図3及び
図7に示された埋込ヘテロ構造に代わりに、半導体メサ19cの第1側面19f及び第2側面19gに接触を成す絶縁層を、電流ブロック層として備えることができる。この絶縁層は、SiO
2、SiON、SiNといった誘電体膜であることができる。
【0099】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。