(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801422
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】コイル部品を備えた電子回路
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20201207BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20201207BHJP
H01F 41/10 20060101ALI20201207BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20201207BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20201207BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H01F17/04 Z
H01F27/29 P
H01F41/10 C
H01F41/04 B
H01F27/06 103
H01F27/02 120
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-241001(P2016-241001)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2018-98335(P2018-98335A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小間屋 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 洋介
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−067519(JP,A)
【文献】
特開2004−203931(JP,A)
【文献】
特開2005−005644(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0026444(US,A1)
【文献】
特開2010−165862(JP,A)
【文献】
特開平10−172822(JP,A)
【文献】
実開平1−173913(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−17/08
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/29
H01F 41/04
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載されたコイル部品であって、巻芯部及び鍔部を有するコアと、前記鍔部に設けられた端子電極と、前記巻芯部に巻回され、端部が前記端子電極に接続されたワイヤと、前記巻芯部の少なくとも一部を覆う保護樹脂とを含むコイル部品と、
前記コイル部品の少なくとも一部を覆うよう前記基板に塗布された防湿コート樹脂と、を備え、
前記保護樹脂の少なくとも一部及び前記防湿コート樹脂の少なくとも一部は、前記基板と前記コイル部品の前記巻芯部との間に位置し、
前記保護樹脂の熱膨張係数は、前記防湿コート樹脂の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする電子回路。
【請求項2】
前記コイル部品は、前記鍔部に接続された天板をさらに含み、
前記保護樹脂の別の一部及び前記防湿コート樹脂の別の一部は、前記巻芯部と前記天板との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記鍔部は、前記巻芯部が設けられた内側面と、前記内側面の反対側に位置する外側面と、前記天板と対向する上面と、前記上面の反対側に位置する下面とを有し、
前記鍔部の前記上面は、前記天板が接続される上段面と、前記上段面からセットバックされ前記天板との間にスペースを形成する下段面とを有し、
前記端子電極は、前記鍔部の前記下段面、前記外側面及び前記下面に亘って連続的に形成され、前記下段面に形成された部分に前記ワイヤの継線部が接続され、
前記保護樹脂のさらに別の一部は、前記天板の上面及び前記鍔部の前記外側面に位置することを特徴とする請求項2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記保護樹脂の熱膨張係数が250(1/℃)以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記ワイヤは、前記巻芯部に巻回されたコイル部と、前記端子電極と接する前記継線部と、前記コイル部と前記継線部との間に位置し、前記コアと接しない架空線部とを含み、
前記保護樹脂は、前記架空線部及び前記継線部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品を備えた電子回路に関し、特に、防湿コート樹脂が塗布された電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム型コアを用いた表面実装型のコイル部品は、ノイズ対策用の電子部品として多くの電子機器に使用されている。近年においては、コイル部品を含む電子回路全体の信頼性をより高めるため、コイル部品などが実装された基板に防湿コート樹脂が塗布されることがある(特許文献1参照)。防湿コート樹脂を塗布すると、基板に搭載された電子部品が水分から保護されるため、電子回路全体の信頼性が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−159610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防湿コート樹脂が塗布された電子回路は、通常の電子回路に比べ、温度変化を繰り返すことによってコイル部品を接続するハンダにクラックが入りやすく、場合によってはコイル部品自体が基板から脱落することもあった。
【0005】
したがって、本発明は、防湿コート樹脂が塗布された電子回路におけるコイル部品の接続不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、防湿コート樹脂が塗布された電子回路においてコイル部品の接続不良が生じやすい理由について鋭意研究を行った。その結果、コンデンサのように回路素子が素体で覆われる電子部品とは異なり、コイル部品はワイヤが素体から露出した状態で使用されるため、基板との間にある程度の隙間を確保する必要があり、この隙間に入り込んだ防湿コート樹脂が熱膨張することが接続不良の原因であることを見いだした。
【0007】
本発明はこのような技術的知見に基づき成されたものであって、本発明による電子回路は、基板と、前記基板に搭載されたコイル部品であって、巻芯部及び鍔部を有するコアと、前記鍔部に設けられた端子電極と、前記巻芯部に巻回され、端部が前記端子電極に接続されたワイヤと、前記巻芯部の少なくとも一部を覆う保護樹脂とを含むコイル部品と、前記コイル部品の少なくとも一部を覆うよう前記基板に塗布された防湿コート樹脂と、を備え、前記保護樹脂の少なくとも一部は、前記基板と前記コイル部品の前記巻芯部との間に位置し、前記保護樹脂の熱膨張係数は、前記防湿コート樹脂の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基板と巻芯部の間の空間に防湿コート樹脂よりも熱膨張係数の小さい保護樹脂が設けられていることから、この空間に防湿コート樹脂が入り込む余地が少なくなる。これにより、この空間に入り込んだ防湿コート樹脂の熱膨張によってコイル部品が押し上げられ、その結果、ハンダクラックやコイル部品の脱落が生じるという現象を防止することができる。
【0009】
本発明において、前記コイル部品は、前記鍔部に接続された天板をさらに含み、前記保護樹脂の別の一部は、前記巻芯部と前記天板との間に位置することが好ましい。これによれば、天板と巻芯部に挟まれた空間に熱膨張係数の大きい防湿コート樹脂が入り込む余地が少なくなる。これにより、この空間に入り込んだ防湿コート樹脂の熱膨張によって天板が押し上げられ、その結果、コアから天板が剥離するという現象を防止することができる。
【0010】
この場合、前記鍔部は、前記巻芯部が設けられた内側面と、前記内側面の反対側に位置する外側面と、前記天板と対向する上面と、前記上面の反対側に位置する下面とを有し、前記鍔部の前記上面は、前記天板が接続される上段面と、前記上段面からセットバックされ前記天板との間にスペースを形成する下段面とを有し、前記端子電極は、前記鍔部の前記下段面、前記外側面及び前記下面に亘って連続的に形成され、前記下段面に形成された部分に前記端子電極の前記継線部が接続され、前記保護樹脂のさらに別の一部は、前記天板の上面及び前記鍔部の前記外側面に位置する構成であっても構わない。このように、鍔部の上面側にワイヤが継線される構造であれば、コイル部品の大部分を保護樹脂で覆うことが可能となる。
【0011】
本発明において、前記保護樹脂の熱膨張係数が250(1/℃)以下であることが好ましい。これによれば、熱膨張によるハンダクラックの発生やコイル部品の脱落を確実に防止することが可能となる。
【0012】
本発明において、前記ワイヤは、前記巻芯部に巻回されたコイル部と、前記端子電極と接する継線部と、前記コイル部と前記継線部との間に位置し、前記コアと接しない架空線部とを含み、前記保護樹脂は、前記架空線部及び前記継線部の少なくとも一部を覆うことが好ましい。これによれば、応力によって断線の生じやすい架空線部や、物理的な衝撃によって剥離の生じやすい継線部が保護されることから、基板への実装時または実装後に生じうるコイル部品へのストレスを緩和することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防湿コート樹脂が塗布された電子回路におけるコイル部品の接続不良を防止することができる。これにより、コイル部品が搭載された電子回路の信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電子回路200の一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、コイル部品10が搭載される基板100の一部を示す上面図である。
【
図3】
図3は、コイル部品10の外観を示す略斜視図である。
【
図4】
図4は、コイル部品10の分解斜視図である。
【
図5】
図5はワイヤW1,W2の端部近傍における状態を説明するための図であり、(a)はy方向から見た図、(b)はz方向から見た図である。
【
図6】
図6は、コイル部品10の変形例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電子回路200の一部を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態による電子回路200は、基板100と、基板100に搭載されたコイル部品10と、基板100に塗布された防湿コート樹脂70を備えている。
【0018】
コイル部品10は表面実装型のコモンモードフィルタであり、その具体的な構成については、
図3〜
図5を参照しながら追って詳述する。基板100の表面には、
図2に示すように、コイル部品10の実装領域10Aが定義されている。実装領域10Aには、それぞれコイル部品10の端子電極31〜34と接続すべきランドパターンP1〜P4が設けられており、ランドパターンP1〜P4にはそれぞれ対応する配線パターンL1〜L4が接続されている。配線パターンL1,L2は一対の差動信号線路INを構成し、配線パターンL3,L4は一対の差動信号線路OUTを構成する。そして、実装領域10Aにコイル部品10を搭載すれば、差動信号線路INと差動信号線路OUTの間にコモンモードフィルタが挿入されることになるため、差動信号に重畳するコモンモードノイズを除去することができる。
【0019】
図1に示すように、基板100の表面にはコイル部品10を覆う防湿コート樹脂70が塗布されている。これにより、コイル部品10を構成するワイヤW1,W2や端子電極31〜34が防湿コート樹脂70によって覆われるため、水分に起因する腐食などが生じにくくなり、電子回路200の信頼性が高められる。
【0020】
しかしながら、防湿コート樹脂70が基板100とコイル部品10との間の空間に入り込んだ場合、高温になると防湿コート樹脂70の熱膨張によってコイル部品10が押し上げられ、ハンダ60にクラックが入ったり、場合によってはコイル部品10自体が基板100から脱落してしまうおそれがある。これは、防湿コート樹脂70として一般に使用される材料の熱膨張係数が比較的大きいためである。また、コンデンサのように回路素子が素体で覆われる電子部品とは異なり、コイル部品10はワイヤW1,W2が素体から露出した状態で使用されるため、基板100との間に形成される隙間が大きい。このため、防湿コート樹脂70の熱膨張に起因するハンダクラックや部品の脱落は、コイル部品10において顕著に生じ、その他の電子部品においてはほとんど生じない。
【0021】
このような問題を解決すべく、本実施形態による電子回路200においては、基板100とコイル部品10との間に保護樹脂50が設けられている。保護樹脂50の材料としては、防湿コート樹脂70よりも熱膨張係数の小さい材料であれば特に限定されず、エポキシ系樹脂などを用いることができる。このような保護樹脂50を設けることにより、基板100とコイル部品10との間の空間に防湿コート樹脂70が入り込む余地が少なくなることから、防湿コート樹脂70の熱膨張によって生じる接続不良を防止することができる。
【0022】
また、本実施形態においてはコイル部品10が天板40を備えており、コア20と天板40の間にも保護樹脂50が設けられている。これにより、コア20と天板40の間の空間に防湿コート樹脂70が入り込む余地が少なくなることから、防湿コート樹脂70の熱膨張によって生じる天板40の剥離を防止することができる。
【0023】
図3は、コイル部品10の外観を示す略斜視図である。また、
図4は、コイル部品10の分解斜視図である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、コイル部品10は、巻芯部21及び鍔部22,23を有するコア20と、鍔部に設けられた4つの端子電極31〜34と、コア20の巻芯部21に巻回され、端部がそれぞれ対応する端子電極31〜34に接続された2本のワイヤW1,W2と、コア20を覆う天板40とを備えている。
【0025】
コア20は、フェライトなどの磁性体からなる一体構造のドラム状コアであり、巻芯部21の軸方向はx方向である。巻芯部21のx方向における両側には、それぞれ鍔部22,23が設けられている。鍔部22,23は、それぞれ巻芯部21が設けられた内側面22i,23iと、内側面22i,23iの反対側に位置する外側面22o,23oと、段差形状を有する上面22t,23tと、上面22t,23tの反対側に位置する下面22b,23bを有する。内側面22i,23i及び外側面22o,23oはいずれもyz平面を構成し、上面22t,23t及び下面22b,23bはいずれもxy平面を有する。
【0026】
鍔部22の上面22tは、y方向の中央部に位置する上段面22t
1と、上段面22t
1からセットバックされた2つの下段面22t
2を有しており、上段面22t
1は下段面22t
2からz方向に突出している。同様に、鍔部23の上面23tは、y方向の中央部に位置する上段面23t
1と、上段面23t
1からセットバックされた2つの下段面23t
2を有しており、上段面23t
1は下段面23t
2からz方向に突出している。上段面22t
1,23t
1は、天板40が接続される面である。
【0027】
天板40は、コア20側を向く下面41と、下面41の反対側に位置する上面42を有している。天板40の下面41及び上面42はいずれもxy平面を構成し、基板100への実装時においては、天板40の上面42を吸着面として用いることにより、コイル部品10をハンドリングすることができる。また、天板40の材料として磁性材料を用いれば、コア20と天板40によって閉磁路を構成することができる。但し、天板40を磁性材料によって構成することは必須でない。天板40の接続方法については特に限定されず、例えば接着剤を用いればよい。
【0028】
コア20に天板40が接続されると、天板40の下面41と鍔部22,23の下段面22t
2,23t
2との間にスペースSが形成される。スペースSのz方向における高さは、下段面22t
2,23t
2と上段面22t
1,23t
1のz方向における高さの差によって定義される。後述するように、このスペースSには、端子電極31〜34の一部及びワイヤW1,W2の端部が収容される。
【0029】
端子電極31〜34は、それぞれ上部31t〜34t、下部31b〜34b及び側部31s〜34sを有している。端子電極31,32の上部31t,32tは、鍔部22の下段面22t
2を覆う部分であり、端子電極33,34の上部33t,34tは、鍔部23の下段面23t
2を覆う部分である。端子電極31,32の下部31b,32bは、鍔部22の下面22bを覆う部分であり、端子電極33,34の下部33b,34bは、鍔部23の下面23bを覆う部分である。端子電極31,32の側部31s,32sは、鍔部22の外側面22oを覆う部分であり、端子電極33,34の側部33s,34sは、鍔部23の外側面23oを覆う部分である。これにより、端子電極31〜34は、鍔部22又は23の下段面22t
2,23t
2、外側面22o,23o及び下面22b,23bに亘って連続的に形成されることになる。
【0030】
ワイヤW1,W2は、銅などの芯材に絶縁被覆が施された被覆導線であり、コア20の巻芯部21に同一ターン数で巻回されている。ワイヤW1の一方の端部は端子電極31の上部31tに接続され、ワイヤW1の他方の端部は端子電極33の上部33tに接続される。また、ワイヤW2の一方の端部は端子電極32の上部32tに接続され、ワイヤW2の他方の端部は端子電極34の上部34tに接続される。これにより、ワイヤW1,W2の端部はいずれも鍔部22,23と天板40との間に形成されたスペースSに収容されるため、外部から物理的な衝撃が加わりにくい構造となっている。ワイヤW1,W2と端子電極31〜34の接続は、溶接や熱圧着などにより行うことができるが、本実施形態において使用するコイル部品10は、実装面である下面22b,23bとは反対側の上面22t,23t側でワイヤW1,W2が継線されるため、基板と継線部の干渉を考慮する必要が無く、したがって、より接続強度の大きい溶接を用いることが好ましい。
【0031】
このような構成により、コイル部品10は表面実装型のコモンモードフィルタとして用いることができる。
【0032】
図5はワイヤW1,W2の端部近傍における状態を説明するための図であり、(a)はy方向から見た図、(b)はz方向から見た図である。図面の見やすさを考慮して、
図5(a),(b)においてはいずれも天板40を省略している。
【0033】
図5に示すように、ワイヤW1,W2は、継線部A、架空線部B及びコイル部Cからなる3つの部分を有する。継線部Aは、端子電極31〜34と接する部分であり、溶接や熱圧着などによって端子電極31〜34に固定された部分である。コイル部Cは、巻芯部21に巻回された部分である。そして、架空線部Bは、継線部Aとコイル部Cとの間に位置し、コア20と接することなく空中に架線された部分である。そして、本実施形態において使用するコイル部品10では、架空線部Bが露出しないよう、架空線部Bの全体が保護樹脂50によって覆われている。これにより、最も断線が生じやすい架空線部Bを保護樹脂50によって保護することができる。
【0034】
また、本実施形態においては、保護樹脂50がスペースSにも入り込んでおり、スペースSに入り込んだ保護樹脂50によって継線部Aの一部も保護樹脂50によって覆われている。これにより、端子電極31〜34からの剥離が生じやすい継線部Aが保護樹脂50によって保護される。
【0035】
保護樹脂50は、防湿コート樹脂70よりもヤング率が低いことが好ましい。これによれば、コイル部品10を基板100に実装した後、温度変化によって防湿コート樹脂70からワイヤW1,W2の架空線部Bにかかる応力が十分に緩和されることから、架空線部BにおけるワイヤW1,W2の断線を防止することができる。
【0036】
保護樹脂50の材料としては、上述の通りエポキシ系樹脂などを用いることができ、ディスペンサなどを用いて未硬化の保護樹脂50を供給した後、熱硬化させればよい。未硬化の保護樹脂50の供給は、ワイヤW1,W2の継線が完了した後に行う必要があり、天板40の接続が完了した後に行うことが特に好ましい。天板40の接続が完了した後に保護樹脂50の供給を行えば、保護樹脂50によってコア20と天板40との間のギャップが広がることがなく、また、天板40の下面41の表面張力によって保護樹脂50の広がりを抑えることが可能となる。
【0037】
尚、本発明において保護樹脂50が架空線部Bの全体を覆うことは必須でなく、架空線部Bの一部のみを覆っていても構わない。しかしながら、架空線部Bは最も断線の生じやすい部分であることから、架空線部Bの全体を保護樹脂50で覆うことが好ましい。
【0038】
また、本発明によるコイル部品10が天板40を備えることは必須ではないが、天板40を用い、且つ、天板40をコア20に接続した後に保護樹脂50を塗布すれば、過剰な保護樹脂50が表面張力によって天板40の下面41に留まることから、保護樹脂50の塗布位置の制御が容易となる。
【0039】
保護樹脂50の塗布範囲は、巻芯部21の下部を覆う限り、特に限定されない。つまり、基板100に実装した状態において、基板100と巻芯部21との間に保護樹脂50の少なくとも一部が位置すれば足りる。したがって、
図6に示すように、端子電極31〜34の下部31b〜34bを除くコイル部品10の大部分、つまり、天板40の上面42、天板40の下面41と巻芯部21の間、鍔部22,23の外側面22o,23oなどを覆うよう設けても構わない。端子電極31〜34の下部31b〜34bを保護樹脂50から露出させているのは、端子電極31〜34の下部31b〜34bは基板との接続部だからである。
【0040】
以上説明したように、本実施形態による電子回路200は、防湿コート樹脂70の熱膨張に起因するハンダクラックの発生やコイル部品10の脱落を防止することができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、コイル部品がコモンモードフィルタである場合を例に説明したが、本発明の対象がこれに限定されるものではなく、他の種類のコイル部品に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 コイル部品
10A 実装領域
20 コア
21 巻芯部
22,23 鍔部
22b,23b 下面
22i,23i 内側面
22o,23o 外側面
22t,23t 上面
22t
1,23t
1 上段面
22t
2,23t
2 下段面
31〜34 端子電極
31b〜34b 下部
31s〜34s 側部
31t〜34t 上部
40 天板
41 下面
42 上面
50 保護樹脂
60 ハンダ
70 防湿コート樹脂
100 基板
A 継線部
B 架空線部
C コイル部
L1〜L4 配線パターン
P1〜P4 ランドパターン
S スペース
W1,W2 ワイヤ