(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記時計では、三番車の回転軸から小秒車の回転軸までの距離が、三番車の回転軸から四番車の回転軸までの距離と等しくなる位置にしか小秒車の回転軸を設けることができない。このため、小秒針のレイアウトの自由度が制限されるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、小秒針のレイアウトの自由度を向上できる時計用ムーブメントおよび機械式時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の時計用ムーブメントは、香箱車と、前記香箱車に連動して回転する複数の歯車を備える輪列と、前記輪列に連動して回転するガンギ車と、前記ガンギ車に連動して回転し、小秒針が取り付けられる小秒車と、を備え、前記ガンギ車は、前記輪列の歯車と噛み合う第1カナ、および、前記小秒車の歯車と噛み合う第2カナを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第2カナの歯数および小秒車の歯車の歯数の比が、第1カナの歯数および第1カナに噛み合う輪列の歯車の歯数の比と等しくなる範囲で、第2カナの歯数を任意の数に設定することで、小秒車の歯車のピッチ円直径を任意の大きさに設定できる。これにより、ガンギ車の回転軸から任意の位置に小秒車の回転軸を設けることができる。従って、小秒車が噛み合う歯車の回転軸から一定の位置にしか小秒車の回転軸を設けることができない場合と比べて、小秒針のレイアウトの自由度を向上できる。
【0008】
本発明の時計用ムーブメントにおいて、前記第1カナおよび前記第2カナは別体で設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、第1カナおよび第2カナを一体で設ける場合と比べて、第1カナおよび第2カナを容易に製造できる。
【0010】
本発明の時計用ムーブメントにおいて、前記第1カナおよび前記第2カナは一体で設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、ガンギ車の回転軸と、第1カナと、第2カナとを一体で形成できるため、例えば、第1カナおよび第2カナが別体で設けられており、第1カナが設けられたガンギ車の回転軸に、第2カナを取り付ける場合と比べて、ガンギ車の組み立て工程を簡略化できる。
【0012】
本発明の時計用ムーブメントにおいて、前記第1カナの歯数および前記第2カナの歯数は互いに異なることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、第2カナの歯数および小秒車の歯車の歯数の比が、第1カナの歯数および第1カナに噛み合う輪列の歯車の歯数の比と等しくなる範囲で、第2カナの歯数を任意の数に設定することができる。これにより、小秒車の歯車のピッチ円直径を任意の大きさに設定でき、ガンギ車の回転軸から任意の位置に小秒車の回転軸を設けることができる。
【0014】
本発明の時計用ムーブメントにおいて、前記第2カナの歯数は、前記第1カナの歯数よりも多いことが好ましい。
【0015】
本発明によれば、小秒車の歯車のピッチ円直径は、第1カナに噛み合う輪列の歯車のピッチ円直径よりも大きくなるため、ガンギ車の回転軸から小秒車の回転軸までの距離を、前記輪列の歯車の回転軸からガンギ車の回転軸までの距離よりも長くできる。
【0016】
本発明の時計用ムーブメントにおいて、平面視において、前記ガンギ車の回転軸は、前記第1カナと噛み合う前記輪列の歯車の回転軸、および、前記小秒車の回転軸の間に位置することが好ましい。
【0017】
すなわち、本発明では、平面視において、第1カナと噛み合う輪列の歯車の回転軸、ガンギ車の回転軸、および小秒車の回転軸は、同じ直線上に位置している。
小秒針の回転軸は、文字板の平面中心からできるだけ離れた位置に設けることが、デザイン上好ましい場合がある。一方、小秒車の歯車のピッチ円直径は、少なくとも小秒車が他の部品と干渉しない大きさに設定する必要がある。
本発明によれば、平面視において、第1カナと噛み合う輪列の歯車の回転軸、ガンギ車の回転軸、および小秒車の回転軸が、同じ直線上に位置していない場合と比べて、次の効果を得ることができる。すなわち、第1カナに噛み合う輪列の歯車の回転軸を文字板の平面中心に設けた際、小秒車の歯車のピッチ円直径が一定の場合に、小秒車の回転軸を、文字板の平面中心から遠い位置に設けることができる。
【0018】
本発明の機械式時計は、上記時計用ムーブメントと、前記小秒車に取り付けられた前記小秒針と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上記時計用ムーブメントと同様に、小秒針のレイアウトの自由度を向上できる。
【0019】
本発明の機械式時計において、前記小秒車の回転軸は、文字板の平面中心に対して6時方向側に位置していることが好ましい。
本発明によれば、文字板の平面中心に対して6時方向側に、小秒針の表示領域が設けられたデザインの時計にも対応できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。
[時計の構成]
図1は、機械式時計である時計1を示す平面図である。
時計1は、円筒状の外装ケース11を備え、外装ケース11の内周側に、円盤状の文字板12が配置されている。外装ケース11の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラス13で塞がれており、裏面側の開口は図示しない裏蓋で塞がれている。
【0022】
また、時計1は、外装ケース11内に収容された時計用ムーブメントとしてのムーブメント2(
図2参照)、小秒針21、分針22、時針23、日車24を備えている。
各指針21〜23は、文字板12の表面側に配置され、ムーブメント2は、文字板12の裏面側に配置されている。各指針21〜23は、ムーブメント2が備える回転軸361,712,722に取り付けられ、ムーブメント2により駆動される。分針22、時針23は、文字板12の平面中心に設けられた回転軸712,722に取り付けられ、小秒針21は、文字板12の平面中心に対して6時方向側に設けられた回転軸361に取り付けられている。
【0023】
また、文字板12には、カレンダー小窓12Aが設けられており、カレンダー小窓12Aから、日車24の数字が視認可能となっている。日車24の数字は、年月日の「日」を表す。
外装ケース11の側面には、リューズ14が設けられている。リューズ14が操作されることにより、操作に応じた入力を行うことができる。
【0024】
[ムーブメントの構成]
図2は、時計1のムーブメント2を裏蓋側から見た平面図である。
図2における図面上側は、3時方向側であり、図面下側は、9時方向側であり、図面右側は、12時方向側であり、図面左側は、6時方向側である。なお、
図2において、輪列受けや、回転錘51(
図4参照)、ベアリング52(
図4参照)などについては、図示を省略している。
図3は、ムーブメント2の要部の平面図である。
図4は、ムーブメント2の要部の断面図である。
図4における図面上側は、裏蓋側であり、図面下側は、文字板12側である。
ムーブメント2は、
図2に示すように、基本輪列30と、小秒車36と、アンクル37と、テンプ38と、手動巻上機構40と、自動巻上機構50とを備えている。
【0025】
[基本輪列]
基本輪列30は、
図2に示すように、地板61の裏蓋側に設けられた、香箱車31、二番車32、三番車33、四番車34、ガンギ車35、アンクル37、テンプ38を備えている。ここで、ガンギ車35およびアンクル37は脱進機を構成し、テンプ38は調速機を構成する。
【0026】
[香箱車]
香箱車31は、平面視において文字板12の平面中心に対して1時方向側に設けられた香箱真311と、香箱歯車312と、香箱蓋313と、香箱歯車312および香箱蓋313で囲まれた空間に収納された図示しないゼンマイとを備えている。ゼンマイは、後述する手動巻上機構40または自動巻上機構50によって香箱真311が回転されることで巻き上げられる。香箱歯車312は、巻き上げられたゼンマイが巻き戻されると、香箱真311を軸にして回転する。
【0027】
[二番車]
二番車32は、平面視において回転軸323が文字板12の平面中心に対して10時方向側に設けられている。二番車32は、香箱歯車312に噛み合う二番カナ321と、二番歯車322とを備え、香箱歯車312に連動して回転する。回転軸323と二番カナ321とは一体で形成されている。
【0028】
[三番車]
三番車33は、平面視において回転軸333が文字板12の平面中心に対して10時方向側に設けられている。また、三番車33の回転軸333は、二番車32の回転軸323に対して、文字板12の平面中心側に位置している。三番車33は、二番歯車322に噛み合う三番カナ331と、三番歯車332とを備え、二番車32に連動して回転する。回転軸333と三番カナ331とは一体で形成されている。
本実施形態では、三番歯車332のモジュールは、0.1014mmであり、歯数は「60」である。
ここで、モジュールは、歯車の歯の大きさを表すもので、ピッチ円直径を、歯数で割った値である。値が大きいほど、歯が大きい。
ピッチ円は、噛み合う2つの歯車の基礎円の共通接線と、当該2つの歯車の回転中心間を結ぶ線分との交点(ピッチ点)を通り、歯車の回転中心を中心とする円である。このピッチ円の直径が、ピッチ円直径である。
【0029】
[四番車]
四番車34は、平面視において回転軸343が文字板12の平面中心に設けられている。四番車34は、
図2〜
図4に示すように、三番歯車332に噛み合う四番カナ341と、四番歯車342とを備え、三番車33に連動して回転する。回転軸343と四番カナ341とは一体で形成されている。
本実施形態では、四番カナ341のモジュールは、三番歯車332と同じ0.1014mmであり、歯数は「9」である。また、三番車33の回転軸333と四番車34の回転軸343との距離D1(
図4参照)は、3.50mmである。
また、四番歯車342のモジュールは、0.0606mmであり、歯数は「96」である。
このように、本実施形態では、二番車32、三番車33、四番車34は、香箱車31に連動して回転する輪列を構成する。
【0030】
ここで、地板61の文字板12側には、平面視において文字板12の平面中心に回転軸(指針軸)712,722が設けられた分車71および筒車72(
図4参照)と、図示しない日の裏車とが設けられている。
分車71は、前記回転軸712、分歯車711、回転軸712と一体で形成された分カナ713を備える。分歯車711は、三番カナ331に噛み合い、分車71は、三番車33に連動して回転する。日の裏車の歯車は、分カナ713に噛み合い、日の裏車は、分車71に連動して回転する。筒車72は、前記回転軸722、および、回転軸722と一体で形成された筒歯車721を備える。筒歯車721は、日の裏車のカナに噛み合い、筒車72は、日の裏車に連動して回転する。
なお、分車71の回転軸712には、分針22が取り付けられ、筒車72の回転軸722には、時針23が取り付けられる。
【0031】
[ガンギ車]
ガンギ車35は、平面視において文字板12の平面中心に対して6時方向側に設けられた回転軸351と、第1カナとしての第1ガンギカナ352(
図3、
図4参照)と、第2カナとしての第2ガンギカナ353(
図3、
図4参照)と、ガンギ歯車354とを備えている。回転軸351と第1ガンギカナ352とは一体で形成されている。第2ガンギカナ353は、第1ガンギカナ352とは別体で設けられ、第1ガンギカナ352の文字板12側に、所定間隔離間して設けられている。すなわち、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353は別部品で構成されている。ガンギ歯車354は、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353とは別部品で構成され、第2ガンギカナ353の文字板12側に設けられている。なお、ガンギ車35は、第1ガンギカナ352が設けられた回転軸351に、第2ガンギカナ353、ガンギ歯車354が取り付けられることで組み立てられる。
【0032】
第1ガンギカナ352は、四番歯車342と噛み合い、ガンギ車35は、四番車34に連動して回転する。
本実施形態では、第1ガンギカナ352のモジュールは、四番歯車342と同じ0.0606mmであり、歯数は「8」である。また、四番車34の回転軸343とガンギ車35の回転軸351との距離D2(
図4参照)は、3.15mmである。
第2ガンギカナ353は、
図2〜
図4の例では、第1ガンギカナ352よりも歯数が多く、かつ、ピッチ円直径が大きい。第2ガンギカナ353のモジュールは、0.0746mmであり、歯数は「10」である。
【0033】
[アンクルおよびテンプ]
図2に示すように、アンクル37は、ガンギ歯車354に噛み合う2つの爪石を備え、テンプ38の回転往復運動に応じて、ガンギ歯車354を送り、ガンギ車35の回転速度を制御する。これにより、香箱車31、二番車32、三番車33、四番車34、小秒車36の回転速度が制御される。
【0034】
[小秒車]
小秒車36は、平面視において文字板12の平面中心に対して6時方向側に設けられ、小秒針21が取り付けられる回転軸(指針軸)361を備える。小秒車36の回転軸361は、ガンギ車35の回転軸351に対して、文字板12の平面中心側とは反対側に位置している。そして、小秒車36の回転軸361は、文字板12の平面中心とガンギ車35の回転軸351とを結ぶ直線上に位置している。すなわち、平面視において、ガンギ車35の回転軸351は、四番車34の回転軸343および小秒車36の回転軸361の間に位置している。
また、小秒車36は、第2ガンギカナ353に噛み合う小秒歯車362を備え、ガンギ車35に連動して回転する。
図2〜
図4の例では、小秒歯車362のピッチ円直径は、四番歯車342のピッチ円直径よりも大きい。小秒歯車362のモジュールは、第2ガンギカナ353と同じ0.0746mmであり、歯数は「120」である。また、ガンギ車35の回転軸351と小秒車36の回転軸361との距離D3(
図4参照)は、4.85mmである。
【0035】
このような時計1では、四番車34は、1分間で1回転し、ガンギ車35は、四番車34が1分間で1回転する間に12回転し、小秒車36は、ガンギ車35が1分間で12回転する毎に1回転する。
【0036】
なお、
図2〜
図4の例では、ガンギ車35の回転軸351から小秒車36の回転軸361までの距離D3が、四番車34の回転軸343からガンギ車35の回転軸351までの距離D2よりも長いが、距離D3は、任意の長さに設定してよい。すなわち、距離D3は、距離D2より短くてもよいし、距離D2と同じでもよい。
距離D3を距離D2よりも短くする場合は、第2ガンギカナ353の歯数を第1ガンギカナ352の歯数よりも少なくし、かつ、第2ガンギカナ353のモジュールを第1ガンギカナ352のモジュールよりも小さくして、小秒歯車362のピッチ円直径を、四番歯車342のピッチ円直径よりも小さくすればよい。
また、距離D3を距離D2と同じにする場合は、第2ガンギカナ353の歯数およびモジュールを、第1ガンギカナ352の歯数およびモジュールと同じにし、小秒歯車362のピッチ円直径を、四番歯車342のピッチ円直径と同じにすればよい。
すなわち、時計1では、第2ガンギカナ353の歯数は、第2ガンギカナ353の歯数および小秒歯車362の歯数の比と、第1ガンギカナ352の歯数および四番歯車342の歯数の比とが等しくなる範囲で、任意の数に設定できる。
【0037】
[手動巻上機構]
図2に示すように、手動巻上機構40は、巻真41、きち車42、図示しないつづみ車、丸穴車44、角穴伝え車45,46,47、角穴車48を備えている。
つづみ車には、回転中心を通る四角い穴が設けられており、この穴に巻真41が挿通している。これにより、つづみ車は、巻真41と一体で回転する。
きち車42には、回転中心を通る円形の穴が設けられており、この穴に巻真41が回転可能に挿通している。巻真41が、ムーブメント2の中心方向に押し込まれた状態(0段位置)にある場合、きち車42は、つづみ車と噛み合い、つづみ車に連動して回転する。
【0038】
丸穴車44は、きち車42に噛み合い、きち車42に連動して回転する。丸穴車44が回転すると、角穴伝え車45,46,47が回転し、角穴車48が回転する。角穴車48が回転すると、香箱真311が角穴車48と一体で回転し、ゼンマイが巻き上げられる。
このような手動巻上機構40によれば、ユーザーがリューズ14を回転させることで、ゼンマイを巻き上げることができる。
【0039】
[自動巻上機構]
自動巻上機構50は、回転錘51(
図4参照)、ベアリング52(
図4参照)、偏心車53、爪レバー54、伝え車55を備える。
回転錘51は、平面視において、ベアリング52の回転軸を中心とする半円形状を有している。回転錘51はベアリング52の外輪521に取り付けられおり、外輪521は、回転錘51と一体で回転する。
偏心車53は、偏心歯車531と、偏心軸とを備えている。偏心歯車531は、ベアリング52の外輪521の外周に設けられた回転錘カナ522と噛み合い、偏心車53は、回転錘51に連動して回転する。
【0040】
爪レバー54は、伝え車55に引っ掛かる引き爪および押し爪を備えており、偏心車53の偏心軸に取り付けられている。爪レバー54は、偏心車53の回転に連動して、伝え車55に近づく方向および遠ざかる方向に進退運動する。
伝え車55は、爪レバー54の引き爪および押し爪が引っ掛かる伝え歯車551と、角穴車48に噛み合う伝えカナ552とを備えている。伝え車55は、爪レバー54の進退運動に連動して回転する。そして、角穴車48は、伝え車55に連動して回転する。角穴車48が回転すると、香箱真311が角穴車48と一体で回転し、ゼンマイが巻き上げられる。
このような自動巻上機構50によれば、例えば、ユーザーが腕に時計1を装着した状態で腕を振り、回転錘51を揺動させることで、ゼンマイを巻き上げることができる。
【0041】
[実施形態の作用効果]
時計1によれば、第2ガンギカナ353の歯数および小秒歯車362の歯数の比と、第1ガンギカナ352の歯数および四番歯車342の歯数の比とが等しくなる範囲で、第2ガンギカナ353の歯数を任意の数に設定することで、小秒歯車362のピッチ円直径を任意の大きさに設定できる。これにより、ガンギ車35の回転軸351から任意の位置に小秒車36の回転軸361を設けることができる。従って、小秒車36が噛み合う歯車の回転軸から一定の位置にしか小秒車36の回転軸361を設けることができない場合と比べて、小秒針21のレイアウトの自由度を向上できる。また、伝え車などを新たに設ける必要がないため、歯車の数が増えることもない。
【0042】
また、例えば、三番歯車332に小秒車36のカナが噛み合う構成では、平面視において、小秒車36のカナが四番歯車342に重ならないように、小秒車36を配置させる必要がある。これに対して、時計1では、小秒歯車362は、四番歯車342が噛み合う第1ガンギカナ352とは軸方向における位置が異なる第2ガンギカナ353に噛み合っているため、平面視において、小秒車36を、四番車34と重なる位置に配置させることもできる。
【0043】
第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353は別体で設けられているため、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353が一体で設けられている場合と比べて、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353を容易に製造できる。
また、例えば、小秒針21がなく、第2ガンギカナ353が設けられていないガンギ車を備える時計を製造する場合は、ガンギ車に第2ガンギカナ353を取り付けなければよいため、ガンギ車の部品を新たに製造する必要がない。
【0044】
小秒車36の回転軸361は、文字板12の平面中心からできるだけ離れた位置に設けることが、デザイン上好ましい場合がある。一方、小秒歯車362のピッチ円直径は、少なくとも小秒車36が他の部品と干渉しない大きさに設定する必要がある。
時計1では、平面視において、四番車34の回転軸343、ガンギ車35の回転軸351、および小秒車36の回転軸361は同じ直線上に位置している。このため、平面視において、回転軸343、回転軸351および回転軸361が同じ直線上に位置していない場合と比べて、次の効果を得ることができる。すなわち、小秒歯車362のピッチ円直径が一定の場合に、小秒車36の回転軸361を、文字板12の平面中心から遠い位置に設けることができる。
【0045】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0046】
前記実施形態では、ガンギ車35の第1ガンギカナ352に噛み合う車は、四番車34であるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1ガンギカナ352に噛み合う車は、香箱車31に連動して回転し、ガンギ車35を所定の速度で駆動させることができる車であればよい。
【0047】
前記実施形態では、ガンギ車35の回転軸351から小秒車36の回転軸361までの距離D3と、四番車34の回転軸343からガンギ車35の回転軸351までの距離D2とを異ならせる場合、第2ガンギカナ353の歯数およびモジュールの両方を、第1ガンギカナ352の歯数およびモジュールとは異なる値に設定しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、少なくとも第2ガンギカナ353の歯数およびモジュールのいずれかを第1ガンギカナ352とは異なる値に設定し、小秒歯車362のピッチ円直径を、四番歯車342のピッチ円直径と異なる長さに設定してもよい。ただし、歯数およびモジュールの両方を異なる値に設定した方が、小秒歯車362と四番歯車342とのピッチ円直径の差を大きくできる。
【0048】
前記実施形態では、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353は別体で設けられているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353は一体で設けられていてもよい。この場合、一体で設けられたカナのうち、四番歯車342に噛み合う部分が第1ガンギカナ352を構成し、小秒歯車362に噛み合う部分が第2ガンギカナ353を構成する。なお、四番歯車342および小秒歯車362の回転軸方向における高さが同じであり、四番歯車342に噛み合う部分と、小秒歯車362に噛み合う部分とが同じ場合は、同じ部分が、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353を構成する。
これによれば、回転軸351と、第1ガンギカナ352と、第2ガンギカナ353とを一体で形成できるため、例えば、第1ガンギカナ352および第2ガンギカナ353が別体で設けられており、第1ガンギカナ352が設けられた回転軸351に、第2ガンギカナ353を取り付ける場合と比べて、ガンギ車35の組み立て工程を簡略化できる。
【0049】
前記実施形態では、平面視において、小秒車36の回転軸361は、四番車34の回転軸343とガンギ車35の回転軸351とを結ぶ直線上に位置しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、平面視において、小秒車36の回転軸361は、ガンギ車35の回転軸351から見て、どの方向に位置してもよい。