(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金銭を投入する入金口と、投入した金銭を識別する識別部と、前記識別部によって識別された金銭を金種別または所定金種を混合して収納する収納庫と、前記収納庫への金銭振分時に各収納庫に振分された金銭を計数する振分計数部とを有した入金機構と、前記収納庫からの金銭繰出時に各収納庫から繰り出された金銭を計数する繰出計数部と、前記収納庫から繰り出された金銭を払い出す出金口とを有した出金機構とを備えた金銭処理装置であって、
精査による在高管理処理の指示があった場合、前記収納庫から金銭を繰り出し前記繰出計数部で計数し、前記収納庫から繰り出された金銭をさらに前記収納庫に搬送し前記振分計数部で計数する精査処理を行い、前記精査処理前の在高と前記精査処理後の在高とが不一致である場合、再度、前記精査処理を行い、最初の精査処理前の在高と最初の精査処理後の在高とか一致、または、最初の精査処理前の在高と再度の精査処理後の在高とが一致した場合に在高状態を確定とし、最初の精査処理前の在高と最初の精査処理後の在高が不一致となり、最初の精査処理前の在高と再度の精査処理後の在高とも不一致の場合に在高状態を不確定として更新する精査在高管理処理部を備えたことを特徴とする金銭処理装置。
最初の精査処理前の在高状態が不確定であって、最初の精査処理後の在高と再度の精査処理後の在高とが一致する場合に在高状態を確定として更新する設定に対する有効/無効を設定した在高状態設定情報を予め保持し、
前記精査在高管理処理部は、前記在高状態設定情報が有効に設定されている場合のみ、最初の精査処理前の在高状態が不確定であって、最初の精査処理後の在高と再度の精査処理後の在高とが一致する場合に在高状態を確定として更新することを特徴とする請求項1に記載の金銭処理装置。
前記精査在高管理処理部は、再度の精査処理を行っても前記繰出計数部が計数した値と前記振分計数部が計数した値とが一致しない場合、在高状態を不確定とすることを特徴とする請求項1または2に記載の金銭処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セルフレジやセミセルフレジなどの金銭処理装置では、金銭授受をお客自身が行うため、専門のレジ担当者と異なり、異物の付着した硬貨や著しく摩耗した硬貨の投入等が行われやすく、金銭が自動釣銭機内部に取り込まれた際、搬送不安定に伴う計数ミス等が発生するおそれがある。この計数ミスに伴って在高管理が不連続となり狂ってしまう場合がある。なお、特許文献1は、精査機能を有するが計数ミス時の在高管理には言及していない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、様々な状態の金銭が投入されて金銭の計数ミスが発生する場合であっても継続的な在高管理を可能とする金銭処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる金銭処理装置は、金銭を投入する入金口と、投入した金銭を識別する識別部と、前記識別部によって識別された金銭を金種別または所定金種を混合して収納する収納庫と、前記収納庫への金銭振分時に各収納庫に振分された金銭を計数する振分計数部とを有した入金機構と、前記収納庫からの金銭繰出時に各収納庫から繰り出された金銭を計数する繰出計数部と、前記収納庫から繰り出された金銭を払い出す出金口とを有した出金機構とを備えた金銭処理装置であって、精査による在高管理処理の指示があった場合、前記収納庫から金銭を繰り出し前記繰出計数部で計数し、前記収納庫から繰り出された金銭をさらに前記収納庫に搬送し前記振分計数部で計数する精査処理を行い、前記精査処理前の在高と前記精査処理後の在高とが不一致である場合、再度、前記精査処理を行い、最初の精査処理前の在高と最初の精査処理後の在高とか一致、または、最初の精査処理前の在高と再度の精査処理後の在高とが一致した場合に在高状態を確定とし、最初の精査処理前の在高と最初の精査処理後の在高が不一致となり、最初の精査処理前の在高と再度の精査処理後の在高とも不一致の場合に在高状態を不確定として更新する精査在高管理処理部を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、最初の精査処理前の在高状態が不確定であって、最初の精査処理後の在高と再度の精査処理後の在高とが一致する場合に在高状態を確定として更新する設定に対する有効/無効を設定した在高状態設定情報を予め保持し、前記精査在高管理処理部は、前記在高状態設定情報が有効に設定されている場合のみ、最初の精査処理前の在高状態が不確定であって、最初の精査処理後の在高と再度の精査処理後の在高とが一致する場合に在高状態を確定として更新することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、前記精査在高管理処理部は、再度の精査処理を行っても前記繰出計数部が計数した値と前記振分計数部が計数した値とが一致しない場合、在高状態を不確定とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、最初の精査処理または再度の精査処理によって在高状態が不確定となった場合、前記収納庫内の金銭を回収するか否かの指示を指示する精査時回収指示部を備え、前記精査在高管理処理部は、在高状態が不確定となった場合に、前記精査時回収指示部から回収指示を受けた場合に、精査処理を行った前記収納庫内の金銭を回収する回収処理を行い、前記在高状態を確定とすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、前記精査在高管理処理部は、在高状態が不確定となった場合に、装置異常を出力することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、前記装置異常の出力を行うか否かを異常出力設定情報として設定する異常出力設定部を備え、前記精査在高管理処理部は、前記異常出力設定情報が装置異常の出力を行う設定となっている場合に装置異常の出力を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、確定または不確定の前記在高状態と前記精査処理の経過情報とを含むログ情報を記録することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、前記繰出計数部から前記振分計数部までの間に設けられた一時保留部を備え、精査による在高管理処理の指示があった場合、前記収納庫から金銭を繰り出し前記繰出計数部で計数しつつ前記一時保留部に搬送し、前記一時保留部に搬送された金銭をさらに前記収納庫に搬送し前記振分計数部で計数する精査処理を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、在高状態が不確定時に前記精査による在高管理処理を行うか否かの不確定時設定情報を設定する不確定時設定部を備え、前記精査在高管理処理部は、前記不確定時設定情報が、在高状態が不確定時にのみ前記精査による在高管理処理を行う設定である場合、精査処理前に在高状態が不確定になっている場合のみ、前記精査による在高管理処理を行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる金銭処理装置は、上記の発明において、装置異常の出力があった場合に復旧処理の選択を促す復旧処理依頼部と、前記復旧処理が選択された場合に前記精査による在高管理処理を行うか前記収納庫内の金銭の回収による在高管理処理を行うかを予め設定する復旧動作設定部と、金銭の入金時に、前記識別部で識別した金銭の金種毎の枚数と前記振分計数部で計数した金種毎の枚数とを照合する入金照合制御部と、前記入金照合制御部の照合結果が不一致の場合、前記装置異常を出力し、前記復旧処理が選択された場合、前記復旧動作設定部によって予め設定された前記精査による在高管理処理または前記回収による在高管理処理を行う復旧動作制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、様々な状態の金銭が投入されて金銭の計数ミスが発生する場合であっても継続的な在高管理が可能となる。また、識別部で識別した金銭の金種毎の枚数と振分計数部で計数した金種毎の枚数とが不一致の場合、精査処理を行って在高管理を行うようにしているので、不正確な在高のまま運用されることがなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
(金銭処理装置の構造)
図1は、本発明の実施の形態である金銭処理装置10の自動釣銭機10aの構成を示す斜視図である。また、
図2は、自動釣銭機10aの制御系の構成を示すブロック図である。ここで例示する金銭処理装置10では、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗においてPOSレジスタ装置10bに自動釣銭機10aが接続される。
図1及び
図2に示すように、自動釣銭機10aの上面は平坦面が形成され、この平坦面には上位装置であるPOSレジスタ装置10bが配置される。自動釣銭機10aは、硬貨の入出金を行う硬貨処理装置1と紙幣の入出金を行う紙幣処理装置2とを有する。硬貨処理装置1及び紙幣処理装置2は、直方体状を成す装置本体に覆われ、それぞれが隣接して配置される。
【0021】
硬貨処理装置1は装置本体の前端上面の右側に硬貨入金口31を備える。硬貨処理装置1の装置本体の前面左側には、硬貨出金口38が形成され、硬貨出金口38から排出された硬貨は受け皿40で受け止められる。また、装置本体の前面右側には、硬貨返却口39を備える。一方、紙幣処理装置2の装置本体の前面上部には、紙幣入金口41及び紙幣出金口42が設けられる。
【0022】
硬貨処理装置1は前端上面の左側に表示部3及び操作入力部4を備える。表示部3及び操作入力部4は、紙幣処理装置2の表示部及び操作入力部でもある。制御部5及び記憶部6は、自動釣銭機10a内に設けられる。
【0023】
硬貨処理装置1は、各種センサ群11及びアクチュエータ群12を有する。また、紙幣処理装置2は、各種センサ群21及びアクチュエータ群22を有する。
【0024】
制御部5は、入出金制御部5a、入金照合制御部5b、復旧動作制御部5c、精査在高管理処理部5d、及び回収在高管理処理部5eを有する。入出金制御部5aは、POSレジスタ装置10bから入金許可指令が与えられた後に金銭が投入された場合に、入金許可指令に従って金銭の入金処理を行い、かつPOSレジスタ装置10bから出金指令が与えられた場合に、出金指令に従って金銭の出金処理を行うものである。また、入出金制御部5aは、これらの入金処理及び出金処理を実行している間、実施した入金処理及び出金処理の内容を入出金情報6aとして逐次、記憶部6に格納する処理も行う。
【0025】
また、操作入力部4は、後述する復旧動作設定部4a、異常出力設定部4b、精査時回収指示部4c、不確定時設定部4dを有する。さらに、記憶部6は、後述するログ情報6b、復旧動作設定情報6c、異常出力設定情報6d、在高管理設定情報6e、不確定時設定情報6fを有する。
【0026】
(硬貨処理装置の内部構成)
図3は、
図1に示した硬貨処理装置1の内部構成を模式的に示す平面図である。
図3において、硬貨入金口31は、投入された硬貨を装置本体の内部に受け入れるための開口である。硬貨入金口31に投入された硬貨は、POSレジスタ装置10b側からの入金許可指令を受け、図示せぬ投入検出センサによって検出された後、入金搬送部32によって搬送される。入金搬送部32内に設けられた検銭部33は、識別部として機能し、硬貨の真贋及び金種を判定するとともに金種毎の枚数を計数する。搬送された硬貨が正貨である場合、一時保留部34に保留される。一方、搬送された硬貨が正貨でない場合、切換ゲートG及び硬貨出金口38を介して受け皿40に返却される。なお、POSレジスタ装置10bあるいは図示しない返却レバーからの返却指示があった場合、一時保留部34に保留された硬貨は、切換ゲートG1を介して硬貨返却口39に返却される。
【0027】
その後、一時保留部34は搬送路として機能し、一時保留部34に保留された硬貨は、切換ゲートG1を介して搬送路である硬貨振分部35に出力されて搬送される。硬貨振分部35によって搬送される硬貨は、金種に応じて硬貨収納庫36に収納されることになる。この際、硬貨振分部35と各硬貨収納庫36との間には振分計数部S1が設けられる。
【0028】
装置本体の内部には、硬貨収納庫36として、1円硬貨収納庫36a、50円硬貨収納庫36b、5円硬貨収納庫36c、100円硬貨収納庫36d、10円硬貨収納庫36e、500円硬貨収納庫36fの6つが設けてある。そして、各硬貨収納庫36は、投入された硬貨を金種ごとに個別に収納するようにしている。硬貨振分部35は、金種に応じた硬貨の直径に従って小さい順に各々の硬貨収納庫に収納する。1円硬貨収納庫36a、50円硬貨収納庫36b、5円硬貨収納庫36c、100円硬貨収納庫36d、10円硬貨収納庫36e、500円硬貨収納庫36fの硬貨振分部35との間には振り分けられた硬貨の計数する振分計数部S1a〜S1fがそれぞれ設けられる。
【0029】
各硬貨収納庫36に収納された硬貨は、出金搬送部37に繰り出されるが、この際、1円硬貨収納庫36a、50円硬貨収納庫36b、5円硬貨収納庫36c、100円硬貨収納庫36d、10円硬貨収納庫36e、500円硬貨収納庫36fと出金搬送部37との間に設けられた各繰出計数部S2a〜S2fは、繰り出された硬貨を計数する。繰り出された硬貨は、切換ゲートG2を介して一時保留部34に搬送することができる。一時保留部34は、各硬貨収納庫36に格納された硬貨を一旦空にして各硬貨収納庫36の収納枚数数を再計数する精査処理のための精査庫としても機能する。なお、出金搬送部37の下流であって切換ゲートG2の手前に硬貨の金種を識別する識別センサS3を設けることが好ましい。精査処理時に識別センサS3が硬貨処理装置1内に収納しない異金種を検出した場合、この異金種の硬貨を、切換ゲートG2を介して硬貨出金口38に排出する。釣銭払出時に識別センサS3が異金種を検出した場合、この異金種の硬貨を、切換ゲートG2を介して一時保留部34に保留し、その後、硬貨返却口39あるいは別途設けた不明庫等に排出する。
【0030】
その後、POSレジスタ装置10b側からの出金指令に応じた金種の硬貨は、各硬貨収納庫36から、繰出計数部S2、出金搬送部37、及び切換ゲートG2を介して一括して搬出され、硬貨出金口38から装置本体の外部に払い出される。
【0031】
(紙幣処理装置の内部構成)
図4は、
図1に示した紙幣処理装置2の内部構成を概念的に示す側面図である。
図4に示すように、紙幣処理装置2では、紙幣入金口41から搬送される紙幣は、識別部としての紙幣鑑別センサ44によって鑑別及び計数された後、金種に応じて紙幣収納庫51内の千円紙幣収納庫53、混合庫54に収納される。千円紙幣収納庫53には使用頻度の高い千円紙幣が収納される。混合庫54には五千円紙幣及び1万円紙幣が混合して収納される。精査庫52は、精査処理時の一時保留部として用いられる。紙幣出金口42は、千円紙幣収納庫53及び混合庫54から搬出された紙幣を装置本体の外部に払い出すための開口であり、装置本体の前面下部に設けてある。なお、回収庫55は、千円紙幣収納庫53または混合庫54の残収納枚数を超過した場合に、超過した紙幣が収納される。
【0032】
ここで、千円紙幣収納庫53と精査庫52との間、及び混合庫54と精査庫52との間は、紙幣搬送路50が配置される。また、紙幣搬送路50上で、精査庫52との出入り口に切換ゲートG31、千円紙幣収納庫53との出入り口に切換ゲートG32、混合庫54との出入り口に切換ゲートG33が配置される。また、切換ゲートG31,G32,G33近傍には、紙幣の通過を検出する画像センサとしてのセンサS31,S32,S33が配置されている。また、精査庫52、千円紙幣収納庫53、混合庫54から紙幣搬送路50への繰り出しを行うモータM31,M32,M33が設けられている。また、紙幣搬送路50を搬送駆動するモータM50を有する。さらに、紙幣搬送路50上に、搬送される紙幣の金種及び通過を検出する画像センサとしてのセンサS50,S51が配置されている。センサS31,S32,S33,S50,S51は、硬貨処理装置1の振分計数部S1及び繰出計数部S2に対応する。
【0033】
(入金照合制御部による入金照合制御処理)
図2に示した入金照合制御部5bは、金銭の入金時に、識別部(検銭部33または紙幣鑑別センサ44)で識別した金銭の金種毎の枚数と、振分計数部S1またはセンサS31,S32,S33,S50,S51で計数した金種毎の枚数とを照合する。
【0034】
(復旧動作制御部による復旧動作制御処理)
ここで、
図5に示したフローチャートを参照して、復旧動作制御部5cによる復旧動作制御処理手順について説明する。なお、以下の説明では硬貨処理装置1に対する処理として説明するが、紙幣処理装置2に対する処理も同様である。
【0035】
まず、復旧動作制御部5cは、入金照合制御部5bによる照合結果が一致であるか否かを判断する(ステップS101)。すなわち、復旧動作制御部5cは、入金照合制御部5bが行う、識別部(検銭部33)で識別した金種毎の枚数と振分計数部S1で計数した金種毎の枚数との照合結果が一致しているか否かを判断する。
【0036】
復旧動作制御部5cは、照合結果が一致している場合(ステップS101,Yes)には、そのまま本処理を終了する。一方、照合結果が一致していない場合(ステップS101,No)には、装置異常出力を行う(ステップS102)。さらに、操作入力部4の復旧ボタンを押下したか否かを判断する(ステップS103)。復旧ボタンは、装置異常の出力があった場合に復旧処理の選択を促す復旧処理依頼部である。復旧ボタンが押下されていない場合(ステップS103,No)には、ステップS103の判断処理を繰り返す。一方、復旧ボタンが押下されている場合(ステップS103,Yes)には、記憶部6内の復旧動作設定情報6cが精査在高管理処理を示しているか、回収在高管理処理を示しているかを判断する(ステップS104)。この復旧動作設定情報6cは、復旧動作設定部4aによって、復旧ボタンが押下されたときに行うべき処理が設定されている。
【0037】
復旧動作設定情報6cが精査在高管理処理を示している場合(ステップS104,精査在高管理処理)には、精査在高管理処理部5dによる精査在高管理処理を行って(ステップS105)、本処理を終了する。一方、復旧動作設定情報6cが回収在高管理処理を示している場合(ステップS104,回収在高管理処理)には、回収在高管理処理部5eによる回収在高管理処理を行って(ステップS106)、本処理を終了する。
【0038】
(精査在高管理処理)
さらに、
図6に示したフローチャートを参照してステップS105における精査在高管理処理部5dの精査在高管理処理手順について説明する。
図6に示すように、精査在高管理処理部5dは、精査処理を実行する(ステップS201)。その後、繰出計数部S2が計数した金種毎の繰出数と振分計数部S1が計数した金種毎の振分数とが一致するか否かを判断する(ステップS202)。一致しない場合(ステップS202,No)には、精査処理のリトライ済であるか否かを判断する(ステップS203)。精査処理のリトライ済でない場合(ステップS203,No)には、ステップS201に移行して再度、精査処理を行う。
【0039】
一方、繰出計数部S2が計数した金種毎の繰出数と振分計数部S1が計数した金種毎の振分数とが一致する場合(ステップS202,Yes)には、さらに、最初の精査処理前後、または最初の精査処理前とリトライ後との在高が一致するか否かを判断する(ステップS204)。最初の精査処理後である場合には、最初の精査処理前後の在高が一致するか否かが判断される。この精査処理前後の在高が一致するか否かは、精査処理前後の硬貨収納庫36の枚数の一致/不一致(枚数一致/不一致)と、硬貨出金口38からの硬貨の異金種の排出あるいは紙幣出金口42から判読不可能な紙幣の排出(出金口排出)があったか否かと、紙幣処理装置2において残収納枚数超過によって回収庫55への収納(回収庫収納)があったか否かとの結果をもとに判断する。
【0040】
すなわち、枚数一致で出金口排出または回収庫収納がない場合、在高は一致すると判断する。また、枚数一致で出金口排出または回収庫収納がある場合、在高は不一致と判断する。さらに、枚数不一致で出金口排出または回収庫収納がない場合、在高は不一致と判断する。また、枚数不一致で出金口排出または回収庫収納がある場合、枚数の差と、出金口排出の枚数と回収庫収納の枚数の和とが一致する場合、在高は一致と判断し、枚数の差と、出金口排出の枚数と回収庫収納の枚数の和とが一致しない場合、在高は不一致と判断する。すなわち、在高の一致/不一致の判断は、収納庫外への排出を考慮し、精査処理前後の収納庫内枚数の一致/不一致をもとに在高の一致/不一致を判断する。
【0041】
例えば、硬貨の異金種検知または紙幣の判読不能発生による出金口への排出が発生した場合、精査処理後の収納庫枚数+排出枚数と、精査処理前の収納庫枚数とは一致するため、在高は一致すると判断する。また、精査処理中に紙幣の重送が発生し、複数枚の紙幣が出金口に排出されてしまった場合、精査処理後の収納庫枚数+排出枚数と、精査処理前の収納庫枚数とは、重送した枚数分が計数されず一致しないため、在高は不一致と判断する。
【0042】
図6において、精査処理前後の在高が一致しない場合(ステップS204,No)、精査処理のリトライ済であるか否かを判断する(ステップS205)。精査処理のリトライ済でない場合(ステップS205,No)には、ステップS201に移行して再度、精査処理を行う。
【0043】
一方、最初の精査処理前後、または最初の精査処理前とリトライ後との在高が一致する場合(ステップS204,Yes)、在高状態を確定に設定して(ステップS206)、ステップS105にリターンする。
【0044】
また、精査処理のリトライ済である場合(ステップS205,Yes)には、装置異常を出力し(ステップS207)、さらに、在高を更新する(ステップS208)。在高を更新するのは、精査処理のリトライ済である場合(ステップS205,Yes)が、最初の精査処理前後の在高が一致せず、かつ、最初の精査処理前とリトライ後との在高が一致していないが、リトライ前後の在高が一致している状態であるからである。
【0045】
このため、その後、リトライ前後の在高が一致し、かつ、精査処理前の在高状態が不確定であるか否かを判断する(ステップS209)。リトライ前後の在高が一致し、かつ、精査処理前の在高状態が不確定である場合(ステップS209,Yes)には、在高状態を確定にし(ステップS206)、ステップS105にリターンする。このステップS209の判断処理を行うのは、在高状態が不確定で精査在高管理処理を開始し、リトライをしているのであれば、在高状態を確定としてもよいという考え方に基づく。ここで、在高状態が確定とは、自動釣銭機10aの密閉空間から外部に貨幣の入出がない状態である。また、在高状態が不確定とは、自動釣銭機10aに対して人手が介在した回収を行った場合であり、この場合、詰まり紙幣などを自動釣銭機10a該に出すのか戻すのかの指示に対応しない処理を行う可能性があり、この場合、現在の在高と自動販売機10a内の貨幣とが一致しない場合が生じるためである。したがって、在高状態が不確定で開始された場合、リトライをしてリトライ前後の在高が一致する場合には確定と判断する設定が可能である。
【0046】
なお、ステップS209の判断処理を行うか否かは、予め、在高状態設定情報6eとして設定される。在高状態設定情報6eは、最初の精査処理前の在高状態が不確定であって、リトライ前後の在高が一致する場合に、在高状態を確定として更新する設定に対する有効/無効を設定したものである。
【0047】
一方、リトライ前後の在高が一致し、かつ、精査処理前の在高状態が不確定でない場合(ステップS209,No)には、さらに、在高の不一致があった収納庫に対する回収指示があったか否かを判断する(ステップS210)。この回収指示は、精査時回収指示部4cによって指示される。なお、この回収指示に替わって、予め精査時の回収を行うか否かを設定しておいてもよい。
【0048】
回収指示があった場合(ステップS210,Yes)には、在高の不一致があった収納庫に対する自動回収処理を行い(ステップS211)、その後、在高状態を確定とし(ステップS206)、ステップS105にリターンする。自動回収処理によって在高状態を確定とするのは、在高不一致の収納庫内の貨幣が回収庫等に自動回収されるため、在高の不一致部分が解消されるからである。
【0049】
一方、回収指示がない場合(ステップS210,No)には、在高状態を不確定とし(ステップS212)、ステップS105にリターンする。
【0050】
また、精査処理のリトライ済である場合(ステップS203,Yes)には、装置異常を出力する(ステップS213)。さらに、回収指示があったか否かを判断する(ステップS210)。回収指示があった場合(ステップS210,Yes)には、回収処理を実行し(ステップS211)、その後、在高状態を確定にして(ステップS206)、ステップS105にリターンする。一方、回収指示がない場合(ステップS210,No)には、在高状態を不確定にして(ステップS212)、ステップS105にリターンする。
【0051】
なお、ステップS207,S213の装置異常の出力を行うか行わないかは、記憶部6の異常出力設定情報6dに設定されている。この設定は、操作入力部4の異常出力設定部4bによって設定される。ステップS207,S213の装置異常の出力の設定は、少なくとも精査処理が2回行われており、これらの精査処理のログが後述するログ情報6b内に管理されているため、在高状態が不確定であっても継続して金銭処理装置10を運用する場合、敢えて装置異常の出力を行わない方が好ましいからである。
【0052】
(回収在高管理処理)
さらに、
図7に示したフローチャートを参照してステップS106における回収在高管理処理部5eの回収在高管理処理手順について説明する。
図7に示すように、回収在高管理処理部5eは、回収処理を実行する(ステップS301)。この回収処理は、ステップS211と同じ自動回収処理である。その後、回収在高管理処理部5eは、在高状態を確定にし(ステップS302)、ステップS106にリターンする。
【0053】
(単独精査在高管理処理)
上述した精査在高管理処理は、復旧動作制御処理の一環として行うものであったが、これに限らず、単独で精査在高管理処理を行うようにしてもよい。
図8は、精査在高管理処理部5dによる単独精査在高管理処理手順を示すフローチャートである。精査在高管理処理部5dは、まず、操作入力部4の図示しない精査ボタンが直接押下されたか否かを判断する(ステップS401)。精査ボタンが押下されていない場合(ステップS401,No)には、ステップS401の判断処理を繰り返す。一方、精査ボタンが押下された場合(ステップS401,Yes)には、さらに、在高状態は確定であるか否かを判断する(ステップS402)。
【0054】
在高状態が確定である場合(ステップS402,Yes)には、無駄な精査在高管理処理を行わず、そのまま終了する。一方、在高状態が不確定である場合(ステップS402,No)には、精査在高管理処理を行って(ステップS403)、本処理を終了する。
【0055】
なお、ステップS402の判断処理を行うか否かは、不確定時設定情報6fに保持される。この不確定時設定情報6fは、不確定時設定部4dによって設定される。
図8に示したフローチャートでは、不確定時設定情報6fに、不確定時に精査在高管理処理を行う設定がなされている場合を示している。また、ステップS401では、操作入力部4の精査ボタンが押下されたか否かを判断しているが、これに限らず、POSレジスタ装置10bなどの外部装置を含めて、精査実行を指示する通信コマンドを受信したか否かを判断するようにしてもよい。
【0056】
(ログ情報)
復旧動作制御部5cは、記憶部6内のログ情報6b内に在高状態と精査処理の経過情報とを含めて記録するようにしている。
図9は、ログ情報6bの一例を示す図である。
図9に示すように、ログ情報6bには、ログとして必要な日時や装置情報に加えて、精査処理前収納庫枚数情報D11、精査処理前回収庫枚数情報D12、紙幣精査リトライ情報D13、硬貨精査リトライ情報D14、精査処理後収納庫枚数情報D21、精査処理後回収庫枚数情報D22、在高状態情報D23が記録されている。
【0057】
精査処理前収納庫枚数情報D11には、精査処理前の千円紙幣収納庫53及び混合庫54に収納された紙幣の金種毎の枚数と、硬貨収納庫36に収納された硬貨の金種毎の枚数とが記録されている。精査処理前回収庫枚数情報D12には、精査処理前の回収庫55に収納された金種毎の枚数が記録されている。
【0058】
紙幣精査リトライ情報D13は、精査処理時間情報内に、紙幣処理装置2の精査処理のリトライ情報が記録され、リトライがない場合には「0」ビットが記録され、リトライがあった場合には「1」ビットが記録される。硬貨精査リトライ情報D14は、精査処理時間情報内に、硬貨処理装置1の精査処理のリトライ情報が記録され、リトライがない場合には「0」ビットが記録され、リトライがあった場合には「1」ビットが記録される。
【0059】
精査処理後収納庫枚数情報D21には、精査処理後の千円紙幣収納庫53及び混合庫54に収納された紙幣の金種毎の枚数と、硬貨収納庫36に収納された硬貨の金種毎の枚数とが記録されている。精査処理後回収庫枚数情報D22には、精査処理後の回収庫55に収納された金種毎の枚数が記録されている。在高状態情報D23には、在高状態の確定/不確定の情報が記録されている。
【0060】
したがって、復旧動作制御部5cは、精査処理前収納庫枚数情報D11、精査処理前回収庫枚数情報D12、精査処理後収納庫枚数情報D21、精査処理後回収庫枚数情報D22を用いて、在高が不一致の収納庫を検出することができる。
【0061】
本実施の形態では、特に、識別部で識別した金銭の金種毎の枚数と振分計数部で計数した金種毎の枚数とが不一致の場合、精査在高管理処理あるいは回収在高管理処理を行って在高管理を行うようにしているので、不正確な在高のまま運用されることがなくなる。
【0062】
また、在高状態が不確定であっても在高管理のため情報がログ情報6bとして記録されているので、在高管理可能な状態で、繁忙時、不確定のまま金銭処理装置10を運用し続けることができる。
【0063】
なお、入金照合制御部5b、復旧動作制御部5c等は、POSレジスタ装置10b側に設けてもよい。