(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解液を注入する際、例えばチューブ又はノズル等といった電解液の供給管と、枠体の側面に設けられた注液口の周囲領域との間のシール(気密)が確保された状態で電解液を枠体内に注入することが考えられる。隣り合うバイポーラ電極間の各空間に電解液を注入するために、枠体の側面において、注液口はバイポーラ電極の積層方向に延在することになる。その結果、積層方向における枠体の側面の縁近くまで注液口が位置するため、積層方向における注液口の外側領域(枠体の側面の縁と注液口との間の領域)が狭くなる。よって、積層方向における注液口の外側に十分に広いシール面を確保することができない。そのため、例えば注液口の内部に供給管を挿入することによって、供給管と注液口の内壁との間のシールが確保されている。このような場合、供給管を注液口の内部に挿入するために、供給管と注液口との間の位置を調整する必要がある。
【0005】
本発明の一側面は、バイポーラ電極の積層方向における注液口の外側に十分に広いシール面を確保することができる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、電極板と、前記電極板の一方面に設けられた正極と、前記電極板の他方面に設けられた負極とを含むバイポーラ電極が積層された積層体と、前記バイポーラ電極の積層方向に延在する前記積層体の側面において前記電極板の縁部を保持する枠体と、を備え、前記枠体は、前記積層方向に延在する側面を有しており、前記枠体の前記側面は、本体領域と突出領域とを有しており、前記本体領域には、前記枠体内に電解液を注入するための注液口が設けられ、前記本体領域は、前記積層方向に交差する方向に延在する縁を有しており、前記突出領域は、前記積層方向において前記注液口から離れるように前記縁から突出している。
【0007】
この蓄電モジュールでは、バイポーラ電極の積層方向における注液口の外側に突出領域が位置している。この突出領域はシール面として機能する。そのため、バイポーラ電極の積層方向において注液口の外側に十分に広いシール面を確保することができる。
【0008】
前記枠体の前記側面は、前記積層方向から見て矩形形状を有しており、前記注液口は、前記矩形形状の一辺における中央に設けられてもよい。
【0009】
この場合、電解液の供給管を枠体の側面に押し付ける際に、供給管は矩形形状の一辺における中央に押し付けられる。そのため、矩形形状の一辺における供給管による圧力分布が一辺の中央に対して略対称になる。
【0010】
前記枠体は、前記電極板の前記縁部を保持する第1樹脂部と、前記積層方向から見て前記第1樹脂部の周囲に設けられ前記枠体の前記側面を有する第2樹脂部と、を備え、前記注液口は、前記第1樹脂部に設けられた第1開口と、前記第2樹脂部に設けられた第2開口と、を有しており、前記第1開口は、隣り合う前記バイポーラ電極間の空間及び前記第2開口と連通してもよい。
【0011】
この場合、電解液は第2開口から第1開口を経由して枠体内に注入される。
【0012】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、電極板と、前記電極板の一方面に設けられた正極と、前記電極板の他方面に設けられた負極とを含むバイポーラ電極を有する蓄電モジュールの製造方法であって、前記バイポーラ電極を積層して積層体を得る工程と、前記バイポーラ電極の積層方向に延在する前記積層体の側面において前記電極板の縁部を保持する枠体を形成する工程と、前記枠体に設けられた注液口から前記枠体内に電解液を注入する工程と、を含み、前記積層方向に延在する前記枠体の側面は、本体領域と突出領域とを有しており、前記本体領域には、前記注液口が設けられ、前記本体領域は、前記積層方向に交差する方向に延在する縁を有しており、前記突出領域は、前記積層方向において前記注液口から離れるように前記縁から突出しており、前記電解液を注入する工程では、前記電解液の供給管を前記突出領域に押し付けながら前記電解液を注入する。
【0013】
なお、積層工程前に枠体の一部を形成し、枠体形成工程において枠体の在部を形成してもよい。
【0014】
この製造方法では、電解液を注入する工程において、バイポーラ電極の積層方向における注液口の外側に突出領域が位置している。この突出領域はシール面として機能する。そのため、バイポーラ電極の積層方向において注液口の外側に十分に広いシール面を確保することができる。電解液の供給管を突出領域に押し付けることによって、供給管と注液口の周囲領域との間のシールを確保することができる。
【0015】
前記枠体は、前記電極板の前記縁部を保持する第1樹脂部と、前記積層方向から見て前記第1樹脂部の周囲に設けられ前記枠体の前記側面を有する第2樹脂部と、を備え、前記枠体を形成する工程では、射出成形により前記第2樹脂部を形成し、前記第2樹脂部の樹脂材料が前記積層方向に交差する方向に流れてもよい。
【0016】
この場合、第2樹脂部の樹脂材料が固化することによって枠体の側面が形成される。第2樹脂部を形成する際に、第2樹脂部の樹脂材料が積層方向における注液口の外側を流れることによって、突出領域が形成される。枠体の側面が突出領域を有していると、突出領域が無い場合に比べて、積層方向における突出領域の幅の分だけ第2樹脂部の樹脂材料が流れ易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、バイポーラ電極の積層方向における注液口の外側に十分に広いシール面を確保することができる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面にはXYZ直交座標系が示される。
【0020】
[蓄電装置の構成]
図1は、蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示す蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は例えばバイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0021】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層され得る。積層方向から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向(Z方向)において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向に直列に接続される。積層方向において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0022】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0023】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向に拘束する拘束部材16を備え得る。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)とを備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔16A1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔16B1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔16A1及び挿通孔16B1は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0024】
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔16A1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向に拘束荷重が付加される。
【0025】
図2は、
図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。同図に示す蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極32が積層された積層体30を備える。バイポーラ電極32の積層方向から見て積層体30は例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。積層方向において、積層体30の一端には、内側面に負極38が配置された電極板34(負極側終端電極)が配置され、他端には、内側面に正極36が配置された電極板34(正極側終端電極)が配置される。負極側終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極側終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(
図1参照)に接続される。
【0026】
蓄電モジュール12は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。枠体50は、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。側面50sは、バイポーラ電極32の積層方向から見て例えば矩形形状を有している。この場合、側面50sは4つの矩形面から構成される。枠体50は、電極板34の縁部34aを保持する第1樹脂部52と、積層方向から見て第1樹脂部52の周囲に設けられる第2樹脂部54とを備え得る。
【0027】
枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方面(正極36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。バイポーラ電極32の積層方向から見て、各第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第1樹脂部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方面(負極38が形成される面)の外側に延在する面において溶着している。その結果、第1樹脂部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、積層体30の両端に配置された電極板34の縁部34aも第1樹脂部52に埋没した状態で保持されている。これにより、積層方向に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1樹脂部52とによって気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。
【0028】
枠体50の外壁を構成する第2樹脂部54は、バイポーラ電極32の積層方向において積層体30の全長にわたって延在する筒状部である。第2樹脂部54は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する第1樹脂部52の外側面を覆っている。第2樹脂部54は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する内側面において第1樹脂部52の外側面に溶着されている。
【0029】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質の塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方面における負極38の形成領域は、電極板34の一方面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0030】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ40は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0031】
枠体50(第1樹脂部52及び第2樹脂部54)は、例えば絶縁性の樹脂を用いた射出成形によって矩形の筒状に形成されている。枠体50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0032】
図3は、
図2の蓄電モジュールを示す概略斜視図である。
図4は、
図3の蓄電モジュールの一部を拡大した平面図である。
図3及び
図4に示されるように、蓄電モジュール12の枠体50は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する側面50sを有する。側面50sはバイポーラ電極32の積層方向から見て外側に位置する面である。よって、第2樹脂部54が枠体50の側面50sを有することになる。
【0033】
枠体50の側面50sは、本体領域50s1と突出領域50s2とを有している。本体領域50s1と突出領域50s2の形状はそれぞれ例えば矩形である。本体領域50s1には、枠体50内に電解液を注入するための注液口50aが設けられている。注液口50aは、電解液の注入後にシール材(不図示)によって封止される。注液口50aの形状は例えば矩形であるが、円形等の他の形状であってもよい。注液口50aはバイポーラ電極32の積層方向が長手方向となるように延在している。注液口50aは、バイポーラ電極32の積層方向から見た側面50sの矩形形状の一辺における中央に設けられるが、中央からずれて配置されてもよい。本体領域50s1は、バイポーラ電極32の積層方向に交差する方向(Y方向)に延在する縁Eを有している。突出領域50s2は、バイポーラ電極32の積層方向において注液口50aから離れるように縁Eから突出している。本実施形態では、一対の突出領域50s2が注液口50aを挟むように配置されている。突出領域50s2は、縁Eに沿って注液口50aの全長を越えて注液口50aの両外側にはみ出る長さで設けられている。
【0034】
図4に示されるように、注液口50aは、第1樹脂部52に設けられた第1開口52aと、第2樹脂部54に設けられた第2開口54aとを有し得る。第1開口52aは、隣り合うバイポーラ電極32間の内部空間V(
図2参照)及び第2開口54aと連通している。第1樹脂部52には複数の第1開口52aが設けられており、第2樹脂部54には、複数の第1開口52aを覆うように広がる単一の第2開口54aが設けられている。第1開口52aは各第1樹脂部52に設けられてもよいし、隣り合う第1樹脂部52間に設けられてもよい。各第1開口52aの形状は例えば円形であり、第2開口54aの形状は例えば矩形である。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の蓄電モジュール12は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含むバイポーラ電極32が積層された積層体30と、バイポーラ電極32の積層方向に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50とを備える。枠体50は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する側面50sを有している。側面50sは、本体領域50s1と突出領域50s2とを有している。本体領域50s1には、枠体50内に電解液を注入するための注液口50aが設けられる。本体領域50s1は、バイポーラ電極32の積層方向に交差する方向に延在する縁Eを有している。突出領域50s2は、バイポーラ電極32の積層方向において注液口50aから離れるように縁かEら突出している。
【0036】
蓄電モジュール12では、バイポーラ電極32の積層方向における注液口50aの外側に突出領域50s2が位置している。突出領域50s2は、電解液を枠体50内に注入する際、後述する電解液の供給管110(
図7参照)と、枠体50の側面50sに設けられた注液口50aの周囲領域(本体領域50s1における注液口50aに隣接する部分及び突出領域50s2)との間のシール面として機能する。そのため、バイポーラ電極32の積層方向において注液口50aの外側に十分に広いシール面を確保することができる。これにより、電解液の供給管110を注液口50aに挿入する必要がなくなるので、供給管110と注液口50aとの間の位置を調整する必要もなくなる。
【0037】
枠体50の側面50sは、バイポーラ電極32の積層方向から見て矩形形状を有しており、注液口50aは、当該矩形形状の一辺における中央に設けられてもよい。この場合、電解液の供給管110を枠体50の側面50sに押し付ける際に、供給管110は矩形形状の一辺における中央に押し付けられる(
図7参照)。そのため、矩形形状の一辺における供給管110による圧力分布が一辺の中央に対して略対称になる。注液口50aが矩形形状の一辺における中央からずれて配置される場合、中央に対して注液口50aの位置と対称となる位置に、供給管110と同等の圧力を付与可能な治具(不図示)を配置すればよい。これにより、矩形形状の一辺における供給管110及び治具による圧力分布が略対称になる。
【0038】
枠体50は、電極板34の縁部34aを保持する第1樹脂部52と、バイポーラ電極32の積層方向から見て第1樹脂部52の周囲に設けられ枠体50の側面50sを有する第2樹脂部54とを備えてもよい。注液口50aは、第1樹脂部52に設けられた第1開口52aと、第2樹脂部54に設けられた第2開口54aとを有しており、第1開口52aは、隣り合うバイポーラ電極32間の内部空間V及び第2開口54aと連通している。この場合、電解液は第2開口54aから第1開口52aを経由して枠体50内に注入される。
【0039】
[蓄電装置の製造方法]
図5〜
図7は、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法における各工程の一例を示す概略断面図である。以下、
図2に示される蓄電モジュール12の製造方法の一例を説明する。
【0040】
(積層工程)
まず、
図5に示されるように、例えばセパレータ40を介してバイポーラ電極32を積層して積層体30を得る。本実施形態では、積層工程前に、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aに第1樹脂部52が例えば射出成形により形成されている。
【0041】
(枠体形成工程)
次に、第2樹脂部54を例えば射出成形により形成する(
図2参照)。
図6に示されるように、モールドM内に、流動性を有する第2樹脂部54の樹脂材料54Pを流し込むことによって、第2樹脂部54が形成される。その結果、
図3及び
図4に示されるように、第1樹脂部52及び第2樹脂部54を有する枠体50が形成される。モールドMは、枠体50の側面50sにおける本体領域50s1及び突出領域50s2(
図4参照)の外縁を形成する第1部分M1と、注液口50aの第2開口54aを形成するための入れ子である第2部分M2とを有する。第2樹脂部54の樹脂材料54Pは、バイポーラ電極32の積層方向に交差する方向に流れる。例えば、第2樹脂部54の樹脂材料54Pは、互いに対向配置された一対の第1部分M1間を流れた後、第2部分M2に衝突して、第2部分M2の周囲に沿って2つに分かれる。2つに分かれた第2樹脂部54の樹脂材料54Pは、それぞれ第1部分M1と第2部分M2との間を流れた後、合流して、一対の第1部分M1間を流れる。
【0042】
なお、本実施形態では積層工程前に枠体50の一部である第1樹脂部52を形成し、積層工程後に枠体50の残部である第2樹脂部54を形成しているが、積層工程後に枠体50の一部である第1樹脂部52を形成してもよい。
【0043】
(電解液注入工程)
次に、
図7に示されるように、枠体50に設けられた注液口50aから枠体50内に電解液を注入する。電解液は、電解液の供給管110を枠体50の側面50sにおける注液口50aの周囲領域に押し付けながら注入される。この周囲領域は、
図4に示される本体領域50s1における注液口50aに隣接する部分と突出領域50s2とを含む。
【0044】
電解液の注入は、注入装置100を用いて行われる。注入装置100は、供給管110と、供給管110及び枠体50を保持する治具120とを備える。供給管110は、供給管本体112と、供給管本体112の先端を取り囲むアタッチメント114と、アタッチメント114と枠体50の側面50sとの間に配置されるパッキン116とを有する。治具120は、側面50sとは反対側の枠体50の側面を支持する板状部材122と、板状部材122に対向配置された板状部材124と、板状部材122,124間を接続する一対の柱状部材126とを備える。板状部材124には供給管110が固定されている。各柱状部材126は、板状部材122に固定され、板状部材124を板厚方向に貫通するボルト108によって板状部材124に接続される。ボルト108の先端は柱状部材126の上面に設けられた挿通孔に挿入され螺合される。ボルト108を締めることによって、板状部材124に固定された供給管110のパッキン116を枠体50の側面50sに押し付けることができる。
【0045】
供給管本体112は、板状部材124を板厚方向に貫通する筒状部材である。アタッチメント114は、板状部材124に固定され、板状部材124と枠体50の側面50sとの間に配置される筒状部材である。供給管110の一端は注液口50aに位置しており、他端は板状部材124の外面(アタッチメント114が配置されていない方の面)に位置している。供給管110の他端は、配管によりバルブV1に接続される。バルブV1は、電解液を収容するタンクTを介して配管によりディスペンサDに接続される。タンクTはディスペンサDとバルブV1との間に配置される。供給管110の他端とバルブV1との間の配管は、途中で分岐しておりバルブV2にも接続される。バルブV2は、真空計Gを介して真空ポンプPに接続される。供給管110の他端は、蓄電モジュール12の耐圧試験機に接続可能であってもよい。
【0046】
電解液の注入は、注入装置100を用いて例えば以下のように行われる。まず、バルブV2を開けてバルブV1を閉じた状態で真空ポンプPを作動させる。これにより、枠体50内の内部空間V(
図2参照)から空気が排出される。その後、バルブV2を閉じてバルブV1を開けると、ディスペンサDから供給されタンクTに収容された電解液が枠体50内の内部空間Vに注入される。
【0047】
上記工程を経た後、シール材により注液口50aを封止することによって、
図2に示される蓄電モジュール12が製造される。その後、
図1に示されるように、導電板14を介して複数の蓄電モジュール12を積層する。積層方向の両端に位置する導電板14にはそれぞれ正極端子24及び負極端子26が予め接続されている。その後、積層方向の両端に、絶縁フィルム22を介して一対の拘束プレート16A,16Bをそれぞれ配置する。その後、ボルト18の軸部を拘束プレート16Aの挿通孔16A1に挿入し、拘束プレート16Bの挿通孔16B1に挿入する。その後、拘束プレート16Bから突出したボルト18の先端に、ナット20を螺合する。このようにして
図1に示される蓄電装置10が製造される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の蓄電モジュールの製造方法は、積層工程、枠体形成工程及び電解液注入工程を含む。この製造方法では、電解液注入工程において、バイポーラ電極32の積層方向における注液口50aの外側に突出領域50s2が位置している。突出領域50s2はシール面として機能する。そのため、バイポーラ電極32の積層方向において注液口50aの外側に十分に広いシール面を確保することができる。電解液の供給管110を突出領域50s2に押し付けることによって、供給管110と注液口50aの周囲領域との間のシールを確保することができる。
【0049】
枠体形成工程では、射出成形により第2樹脂部54を形成し、第2樹脂部54の樹脂材料54Pがバイポーラ電極32の積層方向に交差する方向に流れてもよい。この場合、第2樹脂部54の樹脂材料54Pが固化することによって枠体50の側面50sが形成される。第2樹脂部54を形成する際に、第2樹脂部54の樹脂材料54Pがバイポーラ電極32の積層方向における注液口50aの外側を流れることによって、突出領域50s2が形成される。枠体50の側面50sが突出領域50s2を有していると、突出領域50s2が無い場合に比べて、バイポーラ電極32の積層方向における突出領域50s2の幅の分だけ第2樹脂部54の樹脂材料54Pが流れ易くなる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。