特許第6801523号(P6801523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801523
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20201207BHJP
   F02D 41/20 20060101ALI20201207BHJP
   G06F 9/38 20060101ALI20201207BHJP
   G06F 15/78 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F02D45/00 372
   F02D45/00 376
   F02D41/20
   G06F9/38 370C
   G06F15/78 515
   G06F15/78 599
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-41626(P2017-41626)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-145871(P2018-145871A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 裕介
【審査官】 坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−080432(JP,A)
【文献】 特開2016−176368(JP,A)
【文献】 特開2015−010832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−45/00,
F02M 39/00−71/04,
G06F 9/38,15/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力パルスが入力されることに応じて当該入力パルスのエッジ方向を判定してオンエッジ又はオフエッジの割り込み要求を通知するタイマプロセッサ(9)と、
前記タイマプロセッサから割り込み要求が通知されると、割り込み処理を実行するメインプロセッサ(8)と、
前記メインプロセッサ及び前記タイマプロセッサがアクセス可能な共有記憶部(10)と、を備え、
前記タイマプロセッサは、入力パルスのエッジ時刻をオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とに区分して前記共有記憶部に記憶させ、入力パルスのエッジが発生した回数を示すエッジ回数を前記共有記憶部に記憶させ、
前記メインプロセッサは、前記タイマプロセッサからオンエッジ又はオフエッジの割り込み要求が通知されると、前記共有記憶部に記憶されているエッジ回数を取得し、オンエッジ時刻又はオフエッジ時刻によるイベント通知を行う電子制御装置。
【請求項2】
内燃機関(2)へのインジェクタ(3)からの燃料噴射を制御するための噴射パルスを出力する出力部(5)を備え、
前記タイマプロセッサは、前記出力部から出力された噴射パルスがフィードバック入力されることに応じて割り込み要求を通知する請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記タイマプロセッサは、センサから出力されたパルスが入力パルスとして入力されることに応じて割り込み要求を通知する請求項に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の排ガス規制や燃費向上のため、例えばディーゼルエンジンでは短い期間で多くの噴射を行う多段噴射への要求が高まっている。燃料噴射を制御する電子制御装置のマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)では、多段噴射の制御を精密に行うため、噴射パルスを入力パルスとしてフィードバック入力し、噴射パルスのエッジ時刻を捕捉して割り込み処理を行う。単位期間あたりの噴射回数が増えると、噴射パルスのエッジの間隔が短くなるので、割り込み処理の間隔が短くなり、単一のプロセッサでは処理負荷が高くなる。このような事情から、演算処理用のプロセッサとイベント処理用のプロセッサとを別々に設けたマイコンを使用する構成が供されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−121442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では更に短い期間でより多くの噴射を行う多段噴射への要求が強まっている。例えばソレノイドインジェクタを使用する従来の構成では、オン時間及びオフ時間が共に100[μs]以上の噴射パルスを要求していたのに対し、例えばピエゾインジェクタを使用する最近の構成では、オン時間が70[μs]であり、オフ時間が100[μs]の噴射パルスを要求している。更に次世代の構成では、オン時間が70[μs]であり、オフ時間が50[μs]の噴射パルスを要求することも想定されている。
【0005】
割り込み処理を実行する構成では、必ずしもエッジが発生したタイミングで割り込み処理を開始する訳ではなく、他の割り込み要因や割り込み禁止処理等の兼ね合いにより、エッジが発生したタイミングから遅れて割り込み処理を開始する場合があり、割り込み遅延が発生する場合がある。そのため、エッジの間隔が短い入力パルスのエッジを捕捉して割り込み処理を行う構成では、割り込み遅延時間が入力パルスのオン時間よりも長くなると、オンエッジの割り込み処理を開始する前にオフエッジが発生することになる。その結果、オフエッジの発生によりエッジ時刻が書き換わってしまい、エッジ時刻を正確に計測することができず、エッジ時刻を正確に計測できないことに起因して不具合が発生することになる。このような問題は、上記したような噴射パルスをフィードバック入力する電子制御装置に限らず、エッジの間隔が短い入力パルスを入力する電子制御装置であれば発生し得る。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力パルスのエッジ時刻を正確に計測することができ、エッジ時刻を正確に計測できないことに起因する不具合の発生を未然に回避することができる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、タイマプロセッサ(9)は、入力パルスが入力されることに応じて当該入力パルスのエッジ方向を判定してオンエッジ又はオフエッジの割り込み要求を通知する。メインプロセッサ(8)は、タイマプロセッサから割り込み要求が通知されると、割り込み処理を実行する。共有記憶部(10)は、メインプロセッサ及びタイマプロセッサがアクセス可能である。タイマプロセッサは、入力パルスのエッジ時刻をオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とに区分して共有記憶部に記憶させ、入力パルスのエッジが発生した回数を示すエッジ回数を共有記憶部に記憶させる。メインプロセッサは、タイマプロセッサからオンエッジ又はオフエッジの割り込み要求が通知されると、共有記憶部に記憶されているエッジ回数を取得し、オンエッジ時刻又はオフエッジ時刻によるイベント通知を行う。
【0008】
割り込み遅延時間が入力パルスのオン時間よりも長くなり、オンエッジの割り込み処理理を開始する前にオフエッジが発生すると、そのオフエッジの発生によりエッジ時刻が書き換わってしまう。このようなエッジ時刻が書き換わることに対し、入力パルスのエッジ時刻をオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とに区分して共有記憶部に記憶させるようにした。区分して記憶されているオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とを参照することで、入力パルスのエッジ時刻を正確に計測することができ、エッジ時刻を正確に計測できないことに起因する不具合の発生を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態を示す機能ブロック図
図2】タイミングチャート(その1)
図3】タイミングチャート(その2)
図4】タイミングチャート(その3)
図5】フローチャート
図6】タイミングチャート(その4)
図7】タイミングチャート(その5)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
電子制御装置1は、車両のエンジン2(内燃機関に相当する)へのインジェクタ3からの燃料噴射を制御する装置である。電子制御装置1は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、それら各種センサから入力する各種センサ信号に含まれる各種情報を適宜用い、燃料噴射を制御する。エンジン2は、例えば複数の気筒を有するディーゼルエンジン、ガソリンエンジン又はガスエンジン等である。
【0011】
電子制御装置1は、マイコン4と、出力回路5(出力部に相当する)、入力回路6と、噴射IC7とを有する。マイコン4は、演算処理用のプロセッサとイベント処理用のプロセッサとを別々に設けたマイコンであり、演算処理用のプロセッサにおいて燃料の噴射タイミングや噴射量等を演算して燃料噴射を制御する。出力回路5は、マイコン4から出力指令を入力すると、燃料噴射を制御するための噴射パルス(入力パルスに相当する)を噴射IC7に出力する。出力回路5から出力された噴射パルスは、噴射IC7に入力されると共に、入力回路6を介してマイコン4に入力される。即ち、マイコン4は、出力回路5から出力された噴射パルスをフィードバック入力する。噴射IC7は、出力回路5から噴射パルスを入力すると、インジェクタ電流をインジェクタ3に供給する。インジェクタ3は、噴射IC7からインジェクタ電流が供給されると、図示しないアクチュエータにより噴射弁を開弁して燃料をエンジン2に噴射する。噴射IC7は、インジェクタ3に供給するインジェクタ電流の電流値を切り替えることで、インジェクタ3からエンジン2に噴射される燃料の噴射量を切り替える。
【0012】
このように噴射パルスをフィードバック入力する構成において噴射パルスのエッジ時刻を計測する方法について説明する。噴射パルスのエッジが発生したタイミングで演算処理用のプロセッサが割り込み処理を実行する構成では、必ずしもエッジが発生したタイミングで割り込み処理を開始する訳ではなく、他の割り込み要因や割り込み禁止処理等の兼ね合いにより、エッジが発生したタイミングから遅れて割り込み処理を開始する場合があり、割り込み遅延が発生する場合がある。
【0013】
ここで、単位期間あたりの噴射回数の要求が比較的少なく、即ち噴射パルスのオン時間が比較的長く設計されており、割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも短ければ、何ら不具合は懸念されない。即ち、図2に示すように、噴射パルスのオン時間及びオフ時間が共に100[μs]以上であり、割り込み遅延時間の最大値である最大割り込み遅延時間が100[μs]であれば、ポートレベルとエッジ時刻とを割り込み処理で取得することで、エッジ時刻を正確に計測することができる。尚、最大割り込み遅延時間は、最大の高負荷状態であっても、これ以上の時間は割り込み遅延が起きないと定義された時間である。又、演算処理用のプロセッサがオンエッジの割り込み処理を実行することで、その内部でドライバからアプリケーションへのオンイベント通知を行え、演算処理用のプロセッサがオフエッジの割り込み処理を実行することで、その内部でドライバからアプリケーションへのオフイベント通知を行える。
【0014】
しかしながら、単位期間あたりの噴射回数の要求が比較的多く、即ち噴射パルスのオン時間が比較的短く設計されており、割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも長くなると、オンエッジの割り込み処理を開始する前にオフエッジが発生し、以下に示す不具合が懸念される。即ち、図3に示すように、噴射パルスのオン時間が70[μs]であり、オフ時間が100[μs]であり、最大割り込み遅延時間が100[μs]であれば、オフエッジの発生によりポートレベルが反対となり、エッジ時刻が書き換わってしまうので、エッジ時刻を正確に計測することができない。又、演算処理用のプロセッサがオンエッジの割り込み処理を実行することで、オンイベント通知を行えるが、演算処理用のプロセッサがオフエッジの割り込み処理を実行せず、オフエッジの割り込み処理の抜けが発生してしまうので、オフイベント通知を行えない。
【0015】
この点を考慮し、マイコン4は、噴射パルスのオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とを区分して管理する。即ち、マイコン4は、上記した演算処理用のプロセッサとしてのCPU8(メインプロセッサに相当する)と、上記したイベント処理用のプロセッサとしてのTPU9(タイマプロセッサに相当する)と、SDM10(共有記憶部に相当する)と、I/O10とを有し、それらが内部バス11を介して相互接続されて構成されている。TPU9は、CPU8よりも応答性が高いプロセッサであり、CPU8と非同期で動作する。
【0016】
TPU9は、エッジ時刻を1つだけ保持可能なレジスタ13を有し、出力回路5から出力された噴射パルスを入力回路6を介してフィードバック入力し、その入力した噴射パルスのエッジの発生を検知すると、そのエッジの発生を検知した時刻をエッジ時刻としてレジスタ13に書き込む。即ち、TPU9は、噴射パルスのオンエッジの発生を検知すると、その時刻をオンエッジ時刻としてレジスタ13に書き込み、噴射パルスのオフエッジの発生を検知すると、その時刻をオフエッジ時刻としてレジスタ13に書き込む。この場合、レジスタ13が保持可能なエッジ時刻が1つだけであるので、TPU9は、噴射パルスのエッジの発生を検知する毎にレジスタ13のエッジ時刻を書き換える。
【0017】
CPU8は、上記したように演算処理用のプロセッサであり、TPU9から割り込み要求が通知されると、割り込み処理を実行する。CPU8は、割り込み処理を実行することで、その内部でドライバからアプリケーションへのイベント通知を行う。又、CPU8は、後述するエッジ回数を保持可能な第1のRAM14とエッジ方向を保持可能な第2のRAM15とに対してアクセス可能である。SDM10は、CPU8及びTPU9の両方がアクセス可能であり、各種エッジ情報を記憶する。即ち、SDM10は、オンエッジ時刻を記憶するオンエッジ時刻記憶領域16aと、オフエッジ時刻を記憶するオフエッジ時刻記憶領域16bと、エッジ回数を記憶するエッジ回数記憶領域16cとを有する。
【0018】
TPU9は、上記したように噴射パルスのエッジの発生を検知すると、そのエッジの発生を検知した時刻をエッジ時刻としてレジスタ13に書き込むことに加え、以下のように動作する。TPU9は、図4に示すように、噴射パルスのオンエッジ又はオフエッジの発生を検知する毎に(t1〜t4)、タイマプロセッサ処理を実行する。タイマプロセッサ処理の実行時間は噴射パルスのオン時間に対して十分に短い時間である。TPU9は、噴射パルスのオンエッジの発生を検知すると(t1)、タイマプロセッサ処理を開始し、タイマプロセッサ処理を実行中に、レジスタ13に保持されているエッジ時刻を参照し、その参照したエッジ時刻をオンエッジ時刻記憶領域16aに書き込み、エッジ回数記憶領域16cに保持されているエッジ回数をインクリメントし、タイマプロセッサ処理を終了する(t11)。又、TPU9は、噴射パルスのオンエッジの発生を検知すると、オンエッジの割り込み要求をCPU8に通知する。CPU8は、TPU9からオンエッジの割り込み要求が通知されると、オンエッジの割り込み処理を実行し、その内部でドライバからアプリケーションへのオンイベント通知を行う。
【0019】
続いて、TPU9は、噴射パルスのオフエッジの発生を検知すると(t2)、タイマプロセッサ処理を開始し、タイマプロセッサ処理を実行中に、レジスタ13に保持されているエッジ時刻を参照し、その参照したエッジ時刻をオフエッジ時刻記憶領域16bに書き込み、エッジ回数記憶領域16cに保持されているエッジ回数をインクリメントし、タイマプロセッサ処理を終了する(t12)。又、TPU9は、噴射パルスのオフエッジの発生を検知すると、オフエッジの割り込み要求をCPU8に通知する。CPU8は、TPU9からオフエッジの割り込み要求が通知されると、オフエッジの割り込み処理を実行し、その内部でドライバからアプリケーションへのオフイベント通知を行う。TPU9は、噴射パルスのオンエッジ又はオフエッジの発生を検知する毎に、上記した処理を繰り返す(t3,t13,t4,t14,…)。
【0020】
次に、上記した構成の作用について図5から図7を参照して説明する。
CPU8は、TPU9から割り込み要求が通知されると、割り込み処理を開始し、SDM10に記憶されているエッジ情報を取得する(S1)。この場合、CPU8がSDM10から取得するエッジ情報は、オンエッジ時刻記憶領域16aに記憶されているオンエッジ時刻と、オフエッジ時刻記憶領域16bに記憶されているオフエッジ時刻と、エッジ回数記憶領域16cに記憶されているエッジ回数とを含む。CPU8は、第1のRAM14に保持されているエッジ回数を読み出し、その読み出したエッジ回数とSDM10から取得したエッジ回数との差分を計算し、前回の割り込み処理から今回の割り込み処理までの期間で発生したエッジの回数の差分を計算する(S2)。又、CPU8は、SDM10から取得したエッジ回数を今回の割り込み処理でのエッジ回数として第1のRAM14に保持する(S3)。
【0021】
ここで、割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも短く、オンエッジの割り込み処理を開始した時点でオフエッジが未だ発生していなければ、前回の割り込み処理から今回の割り込み処理までの期間で発生したエッジの回数の差分は「1」となる。一方、割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも長く、オンエッジの割り込み処理を開始した時点でオフエッジが既に発生していれば、前回の割り込み処理から今回の割り込み処理までの期間で発生したエッジの回数の差分は「2」となる。
【0022】
CPU8は、計算した差分が「1」であるか否かを判定し、割り込み処理の抜けが発生するか否かを判定する(S4)。CPU8は、計算した差分が「1」であると判定し、割り込み処理の抜けが発生しないと判定すると(S4:YES)、第2のRAM15に保持されているエッジ方向を読み出し、その読み出したエッジ方向にしたがってイベント処理用のプロセッサへのイベント通知を行う(S5)。即ち、CPU8は、第2のRAM15から読み出したエッジ方向がオン方向であればオンイベント通知を行い、第2のRAM15から読み出したエッジ方向がオフ方向であればオフイベント通知を行う。CPU8は、第2のRAM15に保持されているエッジ方向を反転させ、今回の割り込み処理とは逆方向のイベント通知を次回の割り込み処理で行えるように準備し(S6)、割り込み処理を終了する。
【0023】
このようにCPU8は、計算した差分が「1」であると判定し、割り込み処理の抜けが発生しないと判定すると、イベント通知を1回だけ行い、割り込み処理を終了する。即ち、図6に示すように、噴射パルスのオン時間が70[μs]であり、オフ時間が100[μs]であり、割り込み遅延時間が70[μs]以下であり、割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも短ければ、CPU8は、噴射パルスのオフエッジが発生する前にオンエッジの割り込み処理を開始するので(t21)、割り込み処理の抜けが発生しないと判定し、割り込み処理においてイベント通知を1回だけ行う。
【0024】
一方、CPU8は、計算した差分が「1」でないと判定し、割り込み処理の抜けが発生すると判定すると(S4:NO)、計算した差分が「2」であるか否かを判定し、割り込み処理の抜けが1回だけ発生するか否かを判定する(S7)。CPU8は、計算した差分が「2」であると判定し、割り込み処理の抜けが1回だけ発生すると判定すると(S7:YES)、第2のRAM15に保持されているエッジ方向を読み出し、その読み出したエッジ方向にしたがってイベント通知を行う(S8)。続けて、CPU8は、その読み出したエッジ方向とは反対方向のエッジ方向にしたがってイベント通知を行い(S9)、割り込み処理を終了する。
【0025】
このようにCPU8は、計算した差分が「2」であると判定し、割り込み処理の抜けが1回だけ発生すると判定すると、イベント通知を2回続けて行い、割り込み処理を終了する。尚、CPU8は、この場合は、異なる方向のイベント通知を2回続けて行うので、第2のRAM15に保持されているエッジ方向を反転させる必要はない。即ち、CPU8は、図7に示すように、噴射パルスのオン時間が70[μs]であり、オフ時間が100[μs]であり、割り込み遅延時間が100[μs]であり、割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも長ければ、CPU8は、噴射パルスのオフエッジが発生してからオンエッジの割り込み処理を開始するので(t31)、割り込み処理の抜けが1回だけ発生すると判定し、割り込み処理においてイベント通知を2回続けて行う。イベント通知を2回続けて行うことで、割り込み処理の抜けが1回だけ発生しても不具合が懸念されることはない。尚、CPU8は、計算した差分が「2」でないと判定すると(S7:NO)、ノイズによる影響があると判定し、割り込み処理を即座に終了する。
【0026】
以上に説明したように本実施形態によれば、次に示す効果を得ることができる。
電子制御装置1において、噴射パルスのエッジ時刻をオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とに区分してSDM10に記憶させるようにした。割り込み遅延時間が噴射パルスのオン時間よりも長くなり、オンエッジの割り込み処理を開始する前にオフエッジが発生すると、エッジ時刻が書き換わってしまうが、オンエッジ時刻とオフエッジ時刻とを区分してSDM10に記憶させるようにしたので、その区分して記憶されているオンエッジ時刻とオフエッジ時刻とを参照することで、オンエッジ時刻及びオフエッジ時刻を正確に計測することができる。
【0027】
又、電子制御装置1において、TPU9が噴射パルスのエッジ方向を判定してオンエッジ又はオフエッジの割り込み要求をCPU8に通知するようにした。TPU9が例えばノイズ等による不要な割り込み要求をCPU8に通知してしまうのを未然に回避することができ、CPU8の処理負荷を低減することができる。
【0028】
又、電子制御装置1において、TPU9からCPU8に割り込み要求が通知されると、CPU8がSDM10に記憶されているエッジ回数を取得してオンエッジ時刻又はオフエッジ時刻によるイベント通知を行うようにした。割り込み処理の抜けが発生する場合であっても、割り込み処理の抜けの発生に対して事前に対処することで、割り込み処理の抜けによる不具合の発生を未然に回避することができ、イベント通知を適切に行うことができる。
【0029】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0030】
本実施形態では、燃料噴射を制御する電子制御装置1に適用したが、他の動作を制御する電子制御装置に適用する構成でも良い。又、車載の用途に適用する構成に限らず、車載以外の用途に適用する構成でも良い。
【0031】
本実施形態では、燃料噴射を制御するための噴射パルスを入力パルスとしてフィードバック入力する構成を例示したが、例えばセンサから出力されたパルスを入力パルスとして入力する構成でも良い。その場合、噴射パルスをフィードバック入力する入力回路6とセンサから出力されたパルスを入力する入力回路とが同じであっても良いし別々であっても良い。又、センサから出力されたパルスを車載ネットワークを介して入力しても良いし車載ネットワークを介さずに直接入力しても良い。又、TPU9において、噴射パルスやセンサから出力されたパルスを入力パルスとして入力する構成に限らず、電子制御装置1の内部で発生したパルスを入力パルスとして入力する構成でも良く、即ち入力回路を省いた構成でも良い。
【符号の説明】
【0032】
図面中、1は電子制御装置、2はエンジン(内燃機関)、3はインジェクタ、5は出力回路(出力部)、6は入力回路、8はCPU(メインプロセッサ)、9はTPU(タイマプロセッサ)、10はSDM(共有記憶部)である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7