特許第6801524号(P6801524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱マテリアル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000002
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000003
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000004
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000005
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000006
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000007
  • 特許6801524-サージ防護素子及びその製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801524
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】サージ防護素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 1/20 20060101AFI20201207BHJP
   H01T 4/12 20060101ALI20201207BHJP
   H01T 21/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H01T1/20 F
   H01T4/12 G
   H01T21/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-41819(P2017-41819)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-147728(P2018-147728A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】黛 良享
(72)【発明者】
【氏名】杉本 良市
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信智
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−038491(JP,U)
【文献】 実開平03−092391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/20
H01T 4/12
H01T 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性管と、
前記絶縁性管の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極とを備え、
一対の前記封止電極が、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部を有し、
一対の前記突出電極部の対向面の中央部に平坦面を有する中央平坦部が形成されていると共に、前記対向面に前記中央平坦部を囲んだ環状溝が形成され、
前記環状溝内に、前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層が設けられ
前記放電活性層が、前記環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に分散配置させて設けられていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項2】
請求項に記載のサージ防護素子において、
前記環状溝が、複数形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサージ防護素子において、
前記中央平坦部が円形状に形成され、その半径が前記対向面の半径の30%以上とされていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のサージ防護素子を製造する方法であって、
前記突出電極部の対向面に前記環状溝を形成する溝形成工程と、
前記環状溝内に前記放電活性層を形成する放電活性層形成工程とを有し、
前記放電活性層形成工程で、前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を前記環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に付着させる工程と、
前記イオン源材料を熱処理して前記放電活性層を形成する工程とを有し
前記放電活性層形成工程で、前記放電活性層を前記環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に分散配置させて設けることを特徴とするサージ防護素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷等で発生するサージから様々な機器を保護し、事故を未然に防ぐのに使用するサージ防護素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器用の電子機器が通信線との接続する部分、電源線、アンテナ或いはCRT、液晶テレビおよびプラズマテレビ等の画像表示駆動回路等、雷サージや静電気等の異常電圧(サージ電圧)による電撃を受けやすい部分には、異常電圧によって電子機器やこの機器を搭載するプリント基板の熱的損傷又は発火等による破壊を防止するために、サージ防護素子が接続されている。
【0003】
従来、例えば特許文献1に示すように、一対の封止電極から対向状態に突出した一対の突出電極部を備え、絶縁性管の内面に放電補助部が形成されたアレスタ型のサージ防護素子が記載されている。このサージ防護素子では、一対の突出電極部の対向面に略直方体状の多数の穴部が略マトリクス状に配置形成され、各穴部内面に、イオン源材料として五酸化バナジウム−酸化亜鉛−酸化バリウム−二酸化テルル系ガラスが含有された被膜が形成されている。
【0004】
このイオン源材料は、放電電圧の制御と電極保護の目的のために突出電極部の対向面に設けられている。また、上記多数の穴部は、イオン源材料の保持と塗布の均一化とを得るための凹凸として形成されている。すなわち、イオン源材料を突出電極部の対向面に形成した穴部に付着させ、アンカー効果を利用して脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3151069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、イオン源材料を突出電極部の対向面に形成した多数の穴部に付着させているが、穴部間に凸部となる薄い壁が対向面全体に多数存在することによって放電位置がばらつき、放電開始電圧が不安定になると共に、薄い壁がサージ印加時に発生するアーク熱により溶融飛散し易いという不都合があった。このため、飛散物の影響で絶縁不良や放電開始電圧の低下を誘発してしまう問題があった。
また、例えば突出電極部の対向面の中央に1つの穴部を形成し、この穴部内にイオン源材料を付着させると、穴部の外側でアーク放電が発生し、やはり放電位置がばらついて放電開始電圧が不安定になってしまう。なお、イオン源材料は、放電の発生を促進する効果を有するが、イオン源材料を付着させた部分自体は電極表面がイオン源材料で覆われているため、アーク放電が発生し難い。
さらに、イオン源材料は、結晶化及び電極への付着力向上の目的で熱処理を施す必要があり、熱処理時にイオン源材料の塊が大きいほど、熱処理時に熱分解による脱水反応により蒸気等のガスが発生し、イオン源材料の膨れが生じる。この膨れの影響により、イオン源材料の密度が低下し、結晶化度が低下してしまう問題があった。このように結晶化度が低い場合、繰り返しサージによるイオン源材料の脱落や飛散、及びアーク放電に対する耐性を低下させる原因になっていた。また、熱処理時の温度を高く設定するほど結晶化度は向上するが、一度膨れてしまうと、密度が低下してイオン源材料の結晶化を阻害してしまう不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、放電開始電圧の安定化を図ることができ、さらに作製時にイオン源材料の膨れを抑制可能なサージ防護素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るサージ防護素子は、絶縁性管と、前記絶縁性管の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極とを備え、一対の前記封止電極が、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部を有し、一対の前記突出電極部の対向面の中央部に平坦面を有する中央平坦部が形成されていると共に、前記対向面に前記中央平坦部を囲んだ環状溝が形成され、前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層が、前記環状溝内に設けられていることを特徴とする。
【0009】
このサージ防護素子では、一対の突出電極部の対向面の中央部に平坦面を有する中央平坦部が形成されていると共に、前記対向面に中央平坦部を囲んだ環状溝が形成され、封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層が、環状溝内に設けられているので、放電活性層が設けられている環状溝でアーク放電が生じ難いため、対向面中央の中央平坦部でアーク放電が集中して発生する。したがって、中央平坦部の外側ではアーク放電が発生し難く、平坦な中央平坦部にアーク放電を集めることができるため、アーク放電による溶融飛散が抑制されると共に、放電位置が中央に集中して電極間の放電距離のばらつきが低減されることで、放電特性のばらつきも抑制される。
【0010】
第2の発明に係るサージ防護素子は、第1の発明において、前記放電活性層が、前記環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に設けられていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、放電活性層が、環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に設けられているので、環状溝内で放電活性層が充填されていない空間に蒸気や不純物成分が抜けて放電活性層の膨れを抑制することができる。すなわち、環状溝内に部分的に付着させたイオン源材料を熱処理して放電活性層を形成する際に、イオン源材料が環状溝内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層の結晶化度が向上する。
【0011】
第3の発明に係るサージ防護素子は、第1又は第2の発明において、前記環状溝が、複数形成されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、環状溝が複数形成されているので、中央平坦部の外側に多くの放電活性層を設けることができる。
【0012】
第4の発明に係るサージ防護素子は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記中央平坦部が円形状に形成され、その半径が前記対向面の半径の30%以上とされていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、中央平坦部が円形状に形成され、その半径が対向面の半径の30%以上とされているので、対向面の中央に十分に広い平坦面を得ることができ、アーク放電の集中に対してより高い信頼性を得ることができる。
【0013】
第5の発明に係るサージ防護素子の製造方法は、第1から第4の発明のいずれかのサージ防護素子を製造する方法であって、前記突出電極部の対向面に前記環状溝を形成する溝形成工程と、前記環状溝内に前記放電活性層を形成する放電活性層形成工程とを有し、前記放電活性層形成工程で、前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を前記環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に付着させる工程と、前記イオン源材料を熱処理して前記放電活性層を形成する工程とを有していることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子の製造方法では、封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に付着させる工程と、イオン源材料を熱処理して放電活性層を形成する工程とを有しているので、イオン源材料が環状溝内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層の結晶化度が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法によれば、一対の突出電極部の対向面の中央部に平坦面を有する中央平坦部が形成されると共に、前記対向面に中央平坦部を囲んだ環状溝が形成され、封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層が、環状溝内に設けられるので、平坦な中央平坦部にアーク放電を集めることができ、放電特性のばらつきが抑制される。
また、放電活性層が、環状溝内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に設けられるので、熱処理時の膨れの発生が抑制される。
したがって、本発明に係るサージ防護素子では、アーク放電に対する耐性が向上し、サージ耐量特性が向上すると共に安定した放電が可能になる。その結果、放電開始電圧の変動幅を小さくできると共に、電極損傷が低減でき、素子の高寿命化(作動可能なサージ印加数の増大)に寄与することができる。
特に、本発明に係るサージ防護素子は、大電流サージ耐性が要求されるインフラ用(鉄道関連、再生エネルギー関連(太陽電池、風力発電等))の電源及び通信設備に好適である。また、サージ耐量が向上しているため、素子の小型化も可能になり、小型電子機器及び実装基板への応用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第1実施形態を示す軸方向の断面図である。
図2図1のA−A線矢視断面図である。
図3】第1実施形態において、封止電極を示す断面図である。
図4】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の実施例において、サージ印加回数に対する放電開始電圧を示すグラフである。
図5】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の実施例において、サージ印加回数に対する放電開始電圧の変化率を示すグラフである。
図6】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の比較例において、サージ印加回数に対する放電開始電圧を示すグラフである。
図7】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の比較例において、サージ印加回数に対する放電開始電圧の変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第1実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0017】
本実施形態のサージ防護素子1は、図1及び図2に示すように、絶縁性管2と、絶縁性管2の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極3とを備えている。
なお、本実施形態のサージ防護素子1は、絶縁性管2の内周面にイオン源材料で形成された放電補助部4を備えている。
【0018】
上記一対の封止電極3は、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部5を有している。
一対の突出電極部5の対向面の中央部には、平坦面を有する中央平坦部5aが形成されていると共に、前記対向面に中央平坦部5aを囲んだ環状溝5bが形成されている。
【0019】
上記環状溝5b内には、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層6が設けられている。
この放電活性層6は、環状溝5b内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に設けられている。
上記環状溝5bは、複数形成されている。なお、本実施形態では、中央平坦部5aが円形状に形成され、中央平坦部5aの外側に2つの同心円の環状溝5bが形成されている。
【0020】
なお、中央平坦部5aの半径が、前記対向面の半径の30%以上とされている。なお、中央平坦部5aの半径が、前記対向面の半径の30%未満であると、中央平坦部5aが小さく、環状溝5bが内側に寄ってしまうことで、環状溝5bの外側にもアーク放電が発生し易くなってしまう。
また、環状溝5bの深さhは、図3に示すように、隣接する環状溝5bとの間隔L以下に設定されている。
さらに、放電活性層6の付着面積は、環状溝5bの面積に対して20〜80%の範囲内に設定され、好ましくは30〜40%の範囲内に設定される。
【0021】
上記放電活性層6は、イオン源材料として、例えばSi,Oを主成分元素とし、Na,Cs,Cのうちの少なくとも一つを含んでいる。この放電活性層6は、例えばケイ酸ナトリウム溶液に炭酸セシウム粉末を加えて前駆体を作製し、この前駆体に対してケイ酸ナトリウムが軟化する温度以上かつ炭酸セシウムが融解及び分解する温度以上の温度で熱処理を行ったものである。
【0022】
上記放電補助部4は、導電性材料であって、例えば炭素材で形成された放電補助部である。
なお、本実施形態では、放電補助部4は、絶縁性管2の内周面に軸線Cに沿って直線状に形成されている。
また、図1では、放電補助部4を軸線Cに沿った1本のみ図示しているが、周方向に互いに間隔を空けて複数本形成しても構わない。
【0023】
上記封止電極3は、例えば42アロイ(Fe:58wt%、Ni:42wt%)やCu等で構成されている。
封止電極3は、絶縁性管2の両端開口部に導電性融着材(図示略)により加熱処理によって密着状態に固定されている円板状のフランジ部7を有している。このフランジ部7の内側に、内方に突出していると共に絶縁性管2の内径よりも外径の小さな円柱状の突出電極部5が一体に設けられている。
【0024】
上記絶縁性管2は、アルミナなどの結晶性セラミックス材である。なお、絶縁性管2は、鉛ガラス等のガラス管で形成しても構わない。
上記導電性融着材は、例えばAgを含むろう材としてAg−Cuろう材で形成されている。
上記絶縁性管2内に封入される放電制御ガスは、不活性ガス等であって、例えばHe,Ar,Ne,Xe,Kr,SF,CO,C,C,CF,H,大気等及びこれらの混合ガスが採用される。
【0025】
このサージ防護素子1を製造する方法は、突出電極部5の対向面に環状溝5bを形成する溝形成工程と、環状溝5b内に放電活性層6を形成する放電活性層形成工程とを有している。
上記放電活性層形成工程では、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を環状溝5b内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に付着させる工程と、イオン源材料を熱処理して放電活性層6を形成する工程とを有している。
【0026】
上記溝形成工程では、例えば切削工具を突出電極部5の対向面に当てながら封止電極3を回転させることで、円環状の環状溝5bを容易に形成することができる。
上記放電活性層形成工程では、上述したように、例えばケイ酸ナトリウム溶液に炭酸セシウム粉末を加えて前駆体を作製し、この前駆体を環状溝5bに周方向に間隔を空けて複数箇所に塗布して付着させた後、前駆体に対してケイ酸ナトリウムが軟化する温度以上かつ炭酸セシウムが融解及び分解する温度以上の温度で熱処理を行うことで作製される。
【0027】
このように作製したサージ防護素子1では、過電圧又は過電流が侵入すると、まず放電補助部4と突出電極部5との間で初期放電が行われ、この初期放電をきっかけに、さらに放電が進展して、一方の突出電極部5の対向面中央の中央平坦部5aから他方の突出電極部5側の中央平坦部5aへアーク放電が行われる。
【0028】
このように本実施形態のサージ防護素子1では、一対の突出電極部5の対向面の中央部に平坦面を有する中央平坦部5aが形成されていると共に、前記対向面に中央平坦部5aを囲んだ環状溝5bが形成され、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層6が、環状溝5b内に設けられているので、放電活性層6が設けられている環状溝5bでアーク放電が生じ難いため、対向面中央の中央平坦部5aでアーク放電が集中して発生する。
【0029】
したがって、中央平坦部5aの外側ではアーク放電が発生し難く、平坦な中央平坦部5aにアーク放電を集めることができるため、アーク放電による溶融飛散が抑制されると共に、放電位置が中央に集中して電極間の放電距離のばらつきが低減されることで、放電特性のばらつきも抑制される。
【0030】
また、環状溝5b内で放電活性層6が充填されていない空間に蒸気や不純物成分が抜けて放電活性層6の膨れを抑制することができる。すなわち、環状溝5b内に部分的に付着させたイオン源材料を熱処理して放電活性層6を形成する際に、イオン源材料が環状溝5b内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝5b内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層6の結晶化度が向上する。
【0031】
特に、環状溝5bが複数形成されているので、中央平坦部5aの外側に多くの放電活性層6を設けることができる。
さらに、中央平坦部5aが円形状に形成され、その半径が対向面の半径の30%以上とされているので、前記対向面の中央に十分に広い平坦面を得ることができ、アーク放電の集中に対してより高い信頼性を得ることができる。
【0032】
また、本実施形態のサージ防護素子1の製造方法では、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を環状溝5b内で周方向に互いに間隔を空けて複数箇所に付着させる工程と、イオン源材料を熱処理して放電活性層6を形成する工程とを有しているので、イオン源材料が環状溝5b内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝5b内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層6の結晶化度が向上する。
【実施例】
【0033】
上記実施形態のサージ防護素子に基づいて作製した実施例について、500Vのサージ印加電圧を繰り返し印加した際のサージ印加回数に対する放電開始電圧Vs及び放電開始電圧Vsの変化率を、図4及び図5に示す。
なお、比較例として、突出電極部の対向面の中央部に円形状穴部を形成し、円形状穴部内に放電活性層を付着させたものを作製し、上記と同様に測定を行った結果を、図6及び図7に示す。
【0034】
これらの結果からわかるように、比較例では、放電開始電圧Vsが大きくばらついているのに対し、本発明の実施例では、放電開始電圧Vsのばらつきが抑制されている。また、比較例では、放電開始電圧Vsの変化率が、±25%を超えて大きく変化しているのに対し、本発明の実施例では、±25%以内に変化率が抑えられている。なお、図5及び図7では、放電開始電圧Vsの変化率が±25%の位置に星印を示し、太線を引いている。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…サージ防護素子、2…絶縁性管、3…封止電極、4…放電補助部、5…突出電極部、5a…中央平坦部、5b…環状溝、6…放電活性層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7