特許第6801710号(P6801710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801710
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/14 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B01D3/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-514737(P2018-514737)
(86)(22)【出願日】2017年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2017016973
(87)【国際公開番号】WO2017188440
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-90602(P2016-90602)
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野谷 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】劉 玉平
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜太郎
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−130918(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/049559(WO,A1)
【文献】 特開2015−223580(JP,A)
【文献】 特開昭50−022503(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0284824(US,A1)
【文献】 特開昭61−204001(JP,A)
【文献】 特表平11−508818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
留出液排出口が一端側に設けられ、缶出液排出口が他端側に設けられ、前記留出液排出口から前記缶出液排出口に向かって底面が鉛直下方に傾斜する気液接触流路と、
前記気液接触流路のうち前記留出液排出口と前記缶出液排出口との間に設けられた原料液導入口と、
前記原料液導入口から前記缶出液排出口までの間に設けられた前記気液接触流路中の液体を加熱する回収部と、
前記原料液導入口から前記留出液排出口までの間に設けられた前記気液接触流路中の気体を冷却する濃縮部と、
前記気液接触流路の底面から立設し、前記原料導入口側から前記缶出液排出口側に延在する複数の第1のリブと、
前記気液接触流路の底面から立設し、前記原料導入口側から前記留出液排出口側に延在する複数の第2のリブと、
前記第1のリブ上から前記第2のリブ上に亘って載置され、気体の流れを蛇行させる蛇行流路を形成する蛇行流路形成部と、
を備える分離装置。
【請求項2】
前記第1のリブにおける前記原料導入口側の端部または前記端部近傍に設けられる原料液分配機構を備える請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記原料液分配機構は、隣接する前記第1のリブ間に設けられる多孔質体、前記第1のリブにおける前記原料導入口側の端部に設けられる整流板、もしくは、前記第1のリブにおける所定の箇所から前記原料導入口側の端部に向かって幅が漸減する漸減部のいずれか1を含む請求項2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記蛇行流路形成部は、多孔質体で構成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項5】
前記蛇行流路形成部は、前記留出液排出口と前記缶出液排出口とを結ぶ仮想直線と交差する方向に延在した1または複数の邪魔板で構成される請求項1から3のいずれか1項に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低沸点成分と高沸点成分とを含んで構成される原料液を、留出液と缶出液とに分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコール飲料や石油化学製品等の蒸留、アンモニアの除去、二酸化炭素の回収のための装置として、棚段塔が開発されている。棚段塔は、円筒型の塔内に、鉛直方向に所定の間隔で複数の棚が設けられ、各棚間(段)で気体と液体との接触(気液接触)を段階的に行なわせるようにした装置である。棚段塔では、相対的に低沸点成分が多く含まれる気相が上の段に送られ、相対的に高沸点成分が多く含まれる液相が下の段へ流れ落ちる。棚段塔は、各段において気液平衡が成立するように構成されている。
【0003】
このような棚段塔においては、棚の構造上、棚間の距離(段の高さ)を、少なくとも数十cm(例えば、60cm程度)確保する必要がある。したがって、棚段塔は、分離性能を向上させるために、段数を増加させると、装置自体が鉛直方向に高くなってしまうという課題がある。また、棚段塔は、塔内の構造が複雑で装置自体に多大なコストを要してしまうという課題もある。
【0004】
そこで、水平方向に延在した筺型の流路の下部に、毛管力によって液体を推進させる複数の溝流路を設けておく技術が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、溝流路に原料液を導入するとともに、溝流路の一部を加熱することで、原料液を蒸留する。また、特許文献1の技術では、溝流路の上方に形成され、原料液が加熱されることで生成された気体が流通する気体層の高さを、数mm程度まで低くするとともに、溝流路の液相の表面で気液接触させる。これにより、気液平衡に到達する時間を大幅に短縮することができ、棚段塔と比較して、装置を小型化したとしても、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を維持、または、向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−106916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した、流路の高さを低くした分離装置において、分離性能をさらに向上させる技術の開発が希求されている。
【0007】
そこで本開示は、このような課題に鑑み、分離性能をさらに向上させることが可能な分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る分離装置は、留出液排出口が一端側に設けられ、缶出液排出口が他端側に設けられ、留出液排出口から缶出液排出口に向かって底面が鉛直下方に傾斜する気液接触流路と、気液接触流路のうち留出液排出口と缶出液排出口との間に設けられた原料液導入口と、原料液導入口から缶出液排出口までの間に設けられた気液接触流路中の液体を加熱する回収部と、原料液導入口から留出液排出口までの間に設けられた気液接触流路中の気体を冷却する濃縮部と、気液接触流路の底面から立設し、原料導入口側から缶出液排出口側に延在する複数の第1のリブと、気液接触流路の底面から立設し、原料導入口側から留出液排出口側に延在する複数の第2のリブと、第1のリブ上から第2のリブ上に亘って載置され、気体の流れを蛇行させる蛇行流路を形成する蛇行流路形成部と、を備える。
また、第1のリブにおける原料導入口側の端部または端部近傍に設けられる原料液分配機構を備えてもよい。
また、原料液分配機構は、隣接する第1のリブ間に設けられる多孔質体、第1のリブにおける原料導入口側の端部に設けられる整流板、もしくは、第1のリブにおける所定の箇所から原料導入口側の端部に向かって幅が漸減する漸減部のいずれか1を含んでもよい。
【0009】
また、前記蛇行流路形成部は、多孔質体で構成されているとしてもよい。
【0010】
また、前記蛇行流路形成部は、前記留出液排出口と前記缶出液排出口とを結ぶ仮想直線と交差する方向に延在した1または複数の邪魔板で構成されるとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、分離性能をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、第1の実施形態の分離装置の斜視図である。
図1B図1Bは、第1の実施形態の分離装置の第1の側面図である。
図1C図1Cは、第1の実施形態の分離装置の第2の側面図である。
図2】分離装置の分解斜視図である。
図3A図3Aは、気液接触ユニットおよび多孔質体を説明する図である。
図3B図3Bは、熱媒体ユニットを説明する図である。
図4A図4Aは、気液接触流路における液体および気体の流れについて説明する第1の図である。
図4B図4Bは、気液接触流路における液体および気体の流れについて説明する第2の図である。
図4C図4Cは、気液接触流路における液体および気体の流れについて説明する第3の図である。
図4D図4Dは、気液接触流路における液体および気体の流れについて説明する第4の図である。
図5A図5Aは、気液接触流路における液体層および気体層について説明する図である。
図5B図5Bは、加熱流路における低沸点成分の濃度分布の代表例1を説明する図である。
図5C図5Cは、加熱流路における低沸点成分の濃度分布の代表例2を説明する図である。
図6】冷却流路における低沸点成分の濃度分布の代表例を説明する図である。
図7A図7Aは、第1の実施形態の気液接触ユニットを説明する図である。
図7B図7Bは、図7AのVIb矢示図である。
図8A図8Aは、第2の実施形態の気液接触ユニットを説明する図である。
図8B図8Bは、図8AのVIIb矢示図である。
図8C図8Cは、図8Aの部分上面図である。
図9】気液接触ユニットの部分上面図を示す。
図10A図10Aは、第3の実施形態の気液接触ユニットの第1の上面図である。
図10B図10Bは、第3の実施形態の気液接触ユニットの第2の上面図である。
図10C図10Cは、第3の実施形態の気液接触ユニットの第3の上面図である。
図11A図11Aは、第4の実施形態の気液接触ユニットを説明する第1の図である。
図11B図11Bは、第4の実施形態の気液接触ユニットを説明する第2の図である。
図11C図11Cは、第4の実施形態の気液接触ユニットを説明する第3の図である。
図12A図12Aは、第5の実施形態にかかる分離装置を構成する各モジュールについて説明する第1の図である。
図12B図12Bは、第5の実施形態の分離装置を構成する各モジュールについて説明する第2の図である。
図13A図13Aは、実施例および比較例の留出液中のメタノールの濃度(重量%(wt%))を示す図である。
図13B図13Bは、実施例および比較例のメタノール回収率(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(第1の実施形態:分離装置100)
図1Aは、第1の実施形態の分離装置100の斜視図である。図1Bは、第1の実施形態の分離装置100の第1の側面図である。図1Cは、第1の実施形態の分離装置100の第2の側面図である。本実施形態の図1A図1Cを始めとする以下の図では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸を図示の通り定義している。
【0016】
分離装置100は、原料液を、留出液と缶出液とに分離する装置である。原料液は、低沸点成分(例えば、メタノール)と、低沸点成分より沸点が高い高沸点成分(例えば、水)とを含んで構成される。留出液は、原料液より低沸点成分が高濃度の液である。缶出液は、原料液より高沸点成分が高濃度の液である。
【0017】
本実施形態の分離装置100は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成される。図1A図1Cに示すように、分離装置100は、本体部110と、原料液導入部120と、第1熱媒体導入部130と、第1熱媒体排出部132と、第2熱媒体導入部140と、第2熱媒体排出部142と、留出液排出部150と、缶出液排出部160とを含んで構成される。
【0018】
原料液導入部120は、原料液を本体部110に導入する(図1A中、白抜き矢印で示す)。本実施形態において、本体部110は、一端側から他端側(図1A中、留出液排出部150側から缶出液排出部160側)に向かって鉛直下方に、例えば、水平面に対して2.5度程度傾斜している。したがって、本体部110に導入された原料液は、一端側から他端側に向かって流れる。すなわち、本体部110に導入された原料液は、缶出液排出部160に向かって流れる。本体部110の傾斜角度は、原料液の性質によって適宜変更してもよい。
【0019】
第1熱媒体導入部130は、低沸点成分の沸点以上の熱媒体を本体部110の回収部の流路に導入する(図1A中、黒い塗りつぶしの矢印で示す)。そして、回収部の流路を通過した熱媒体は、第1熱媒体排出部132を通じて外部に排出される。したがって、第1熱媒体導入部130、第1熱媒体排出部132、および、回収部の流路は、回収部として機能する。
【0020】
第2熱媒体導入部140は、低沸点成分の沸点未満の熱媒体を本体部110の濃縮部の流路に導入する(図1中A、ハッチングの矢印で示す)。そして、濃縮部の流路を通過した熱媒体は、第2熱媒体排出部142を通じて外部に排出される。したがって、第2熱媒体導入部140、第2熱媒体排出部142、濃縮部の流路は、濃縮部として機能する。
【0021】
そうすると、本体部110において原料液が蒸留されて、留出液と、缶出液とに分離される。そして、本体部110において分離された留出液は、留出液排出部150の留出液排出口152を通じて外部に排出される。また、本体部110において分離された缶出液は、缶出液排出部160の缶出液排出口162を通じて外部に排出される。
【0022】
なお、本実施形態において、第1熱媒体導入部130は、缶出液排出部160側から順に、第1熱媒体導入部130a、130b、130c、130dに区画されている。第1熱媒体導入部130a、130b、130c、130dは、缶出液排出部160に近づくに従って、回収部の流路に導入する熱媒体の温度を高くしている。また、第2熱媒体導入部140は、留出液排出部150側から順に、第2熱媒体導入部140a、140b、140c、140dに区画されている。第2熱媒体導入部140a、140b、140c、140dは、留出液排出部150に近づくに従って、濃縮部の流路に導入する熱媒体の温度を低くしている。これにより、本体部110内における留出液と、缶出液との分離効率を向上することが可能となる。
【0023】
以下、本体部110の具体的な構成について説明する。図2は、分離装置100の分解斜視図である。なお、図2中、理解を容易にするために、第1熱媒体導入部130、第2熱媒体導入部140、多孔質体、熱媒体ユニット220の一端部側に設けられたアングル228を省略する。
【0024】
図2に示すように、本体部110は、気液接触ユニット210と、熱媒体ユニット220とが予め定められた間隔離隔して交互に複数積層された構造である。また、気液接触ユニット210の図2中X軸方向の端部は、第1熱媒体導入部130、第1熱媒体排出部132、第2熱媒体導入部140、第2熱媒体排出部142によって封止されている。さらに、最も上に配される熱媒体ユニット220は、その上面が天面112で封止されている。ここで、気液接触ユニット210と熱媒体ユニット220の底面によって区画される空間が気液接触流路212となる。熱媒体ユニット220と気液接触ユニット210の底面によって区画される空間が熱媒体流路222となる。
【0025】
本実施形態の分離装置100では、気液接触流路212と熱媒体流路222とが並行して設けられる。また、分離装置100は、気液接触流路212と熱媒体流路222とが交互に積層された構造である。また、気液接触流路212には、後述する多孔質体(図2においては図示を省略)が設けられている。
【0026】
図3Aは、気液接触ユニット210および多孔質体250を説明する図である。図3Bは、熱媒体ユニット220を説明する図である。図3Aに示すように、気液接触ユニット210は、原料液導入口214が底面に形成されている。原料液導入口214は、原料液導入部120から導入された原料液を受け入れる。また、気液接触ユニット210には、複数のリブ216aと、複数のリブ216bとを備えている。リブ216aは、原料液導入口214側から缶出液排出部160側に延在する。リブ216bは、原料液導入口214側から留出液排出部150側に延在する。したがって、原料液導入口214から気液接触流路212に導入された原料液等の液体は、リブ216a、216bによって区画された流路である区画流路DRを流れる。つまり、区画流路DRにおいて、液体の層である液体層が形成される。なお、以下、リブ216a、216bを併せて、リブ216と呼ぶ場合もある。
【0027】
また、多孔質体250は、気液接触ユニット210のリブ216の上面に載置される。または、多孔質体250は、区画流路DRの一部に充填される。もしくは、多孔質体250は、気液接触ユニット210のリブ216の上面に載置され、さらに、区画流路DRの一部に充填されてもよい。多孔質体250をリブ216の上面に載置した場合は、多孔質体250の底面がリブ216の上面に接触し、多孔質体250の上面が熱媒体ユニット220の底面に接触する。つまり、気液接触ユニット210と熱媒体ユニット220との間に多孔質体250が配される。気液接触流路212は、区画流路DR(液体層)および多孔質体250内の微細な蛇行流路(気体層)で構成される。多孔質体250を区画流路DRに充填する場合は、回収部の区画流路DRの原料液導入口214側の全流路に充填する。多孔質体250については、後に詳述する。
【0028】
また、図3Bに示すように、熱媒体ユニット220は、リブ216と交差する方向(本実施形態では、直交する方向)に延在した複数のリブ226を備えている。リブ226によって区画された流路のうち、原料流路MRは、気液接触ユニット210と積層された際に原料液導入口214に対応する位置に設けられる流路である。原料流路MRには、原料液導入部120から原料液が導入される。したがって、原料液は、原料流路MR、原料液導入口214を通じて気液接触流路212に導入される。
【0029】
また、リブ226によって区画された流路のうち回収部の流路Raには、第1熱媒体導入部130から熱媒体が導入される。回収部の流路Raを流れた熱媒体は、第1熱媒体排出部132aに排出される。同様に、第1熱媒体導入部130bから導入された熱媒体は、回収部の流路Rbを流れた後、第1熱媒体排出部132bから排出される。第1熱媒体導入部130cから導入された熱媒体は、回収部の流路Rcを流れた後、第1熱媒体排出部132cから排出される。第1熱媒体導入部130dから導入された熱媒体は、回収部の流路Rdを流れた後、第1熱媒体排出部132dから排出される。
【0030】
また、第2熱媒体導入部140aから導入された熱媒体は、濃縮部の流路Caを流れた後、第2熱媒体排出部142aから排出される。同様に、第2熱媒体導入部140bから導入された熱媒体は、濃縮部の流路Cbを流れた後、第2熱媒体排出部142bから排出される。第2熱媒体導入部140cから導入された熱媒体は、濃縮部の流路Ccを流れた後、第2熱媒体排出部142cから排出される。第2熱媒体導入部140dから導入された熱媒体は、濃縮部の流路Cdを流れた後、第2熱媒体排出部142dから排出される。
【0031】
また、熱媒体ユニット220におけるリブ226と直交する方向(区画流路DRの延在方向)の両端部には、下方に立設するアングル228が設けられている。アングル228は、区画流路DRから外部(留出液排出口152)への気体の漏出を防止する。また、アングル228は、区画流路DRから、当該区画流路DRの下段に位置する区画流路DRへの缶出液の流入を防止する。
【0032】
ここで、気液接触流路212の寸法関係について説明する。区画流路DRの底面の幅W(リブ216同士の基端間の距離)は、例えば、1mm程度である。区画流路DRの高さHl(リブ216の高さ)は、例えば、3mm程度である。また、図2に示す、リブ216の先端と熱媒体流路222の底面との距離Hgは、例えば、100μm〜10mm程度(ここでは、1mm)である。さらに、気液接触流路212の流通方向の長さLは、例えば、300mmである。
【0033】
(気液接触流路212における液体および気体の流れ)
続いて、気液接触流路212における液体および気体の流れについて具体的に説明する。図4Aは、気液接触流路212における液体および気体の流れについて説明する第1の図である。図4Bは、気液接触流路212における液体および気体の流れについて説明する第2の図である。図4Cは、気液接触流路212における液体および気体の流れについて説明する第3の図である。図4Dは、気液接触流路212における液体および気体の流れについて説明する第4の図である。図4A図4D中、液体の流れを白抜き矢印で示し、気体の流れを黒い塗りつぶしの矢印で示す。なお、図4A図4D中、理解を容易にするために、熱媒体流路222、多孔質体250を省略する。
【0034】
上記したように、本体部110(気液接触流路212の底面212a)は、留出液排出部150側から缶出液排出部160側に向かって鉛直下方に傾斜している。このため、図4Aに示すように、原料液導入口214から導入された原料液は、自重で缶出液排出口162に向かって気液接触流路212(区画流路DR)を流れる。
【0035】
原料液導入口214から缶出液排出口162の間には、回収部の流路Rが積層されている。このため、缶出液排出口162へ向かって流れる間に、原料液は、気液接触流路212のうち回収部の流路Rで加熱される流路(以下、単に「加熱流路HR」と称する)を通過する。そうすると、図4Bに示すように、原料液は、加熱流路HRを通過する際に、低沸点成分の沸点以上に加熱される。これにより、原料液から、低沸点成分を多く含む気体が生成される。
【0036】
上述したように、加熱流路HRにおいて原料液が加熱されると、原料液から気体が生成される。加熱流路HRは、全域に亘って回収部の流路Rよって加熱されている。したがって、加熱流路HRにおいては、缶出液排出口162に向かうに従って気体の生成量が増加する。このため、加熱流路HRにおいて、原料液導入口214側と、缶出液排出口162側とで圧力差が生じる。つまり、加熱流路HRにおいては、缶出液排出口162側の方が、原料液導入口214側よりも圧力が高くなる。これにより、加熱流路HRにおいて生成された気体は、液体の流れと逆方向、すなわち、原料液導入口214(留出液排出口152)に向かって流れる。
【0037】
原料液導入口214から留出液排出口152の間には濃縮部の流路Cが積層されている。このため、加熱流路HRから留出液排出口152に向かって流れる気体は、気液接触流路212のうち濃縮部の流路Cで冷却される流路(以下、単に「冷却流路CR」と称する)を通過する。そうすると、図4Cに示すように、気体は、冷却流路CRを通過する際に、低沸点成分の沸点未満に冷却される。したがって、低沸点成分および高沸点成分が凝縮して液体となる。そして、冷却流路CRで生成された液体は、加熱流路HRに向かって流れる。つまり、本実施形態にかかる分離装置100では、濃縮部の流路Cによって凝縮された低沸点成分および高沸点成分が、加熱流路HRに戻る。このため、還流が遂行されることになり、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上することが可能となる。
【0038】
そして、図4Dに示すように、留出液排出部150に到達した気体であって、留出液排出部150において凝縮された液体が留出液として留出液排出口152を通じて外部に排出される。また、加熱流路HRにおいて蒸発しなかった液体が缶出液として缶出液排出口162を通じて外部に排出される。
【0039】
続いて、気液接触流路212における液体層および気体層について説明する。図5Aは、気液接触流路212における液体層および気体層について説明する図である。図5Bは、加熱流路における低沸点成分の濃度分布の代表例1を説明する図である。図5Cは、加熱流路における低沸点成分の濃度分布の代表例2を説明する図である。図6は、冷却流路における低沸点成分の濃度分布の代表例を説明する図である。なお、図5A図5C図6では、理解を容易にするために、気液接触流路212を傾斜させず、かつ、液体の層(液体層)と、気体の層(気体層)との高さ方向の距離を等しく示す。
【0040】
図5Aに示すように、気液接触流路212内では、液体層LLと、気体層GLとが形成される。液体層LLは、留出液排出口152側から缶出液排出口162へ液体が流れる層である。気体層GLは、液体層LLの上方において缶出液排出口162側から留出液排出口152側へ気体が流れる層である。そして、液体層LLと気体層GLとの境界において気液接触が生じ、気液接触流路212は気液平衡状態となる。
【0041】
なお、上述したように、本実施形態において、気液接触流路212の高さは、4mm程度と短い。このため、液体層LLおよび気体層GLの高さも4mm以下と短い。ここで、気体層GLの高さと、気液平衡に到達する速度との関係について図5B図5C図6を用いて説明する。図5B図5Cに示すように、加熱流路HR(回収部の流路R側)では、低沸点成分は、液体層LLから蒸発する。このため、液体層LLにおいては、気体層GLとの液面近傍の境界層δlにおいて、低沸点成分の濃度が低く、気体層GLから離隔するに従って低沸点成分の濃度が高くなる。したがって、液体層LLにおいて、低沸点成分は、壁面(底面)から気体層GLに向かう方向に拡散する。ここで、液体層LLの高さが小さいほど低沸点成分の濃度勾配が大きくなるため、物質移動速度が大きくなり、蒸発が促進される。一方、図6に示すように、冷却流路CR(濃縮部の流路C側)では、蒸気が冷却されることにより、低沸点成分が気体層GLから凝縮する。このため、気体層GLにおいては、液体層LLとの液面近傍の境界層δgにおいて、低沸点成分の濃度が低く、液体層LLから離隔するのに従って低沸点成分の濃度が高くなる。したがって、気体層GLにおいて、低沸点成分は、壁面(上面)から液体層LLに向かう方向に拡散する。ここでも、気体層GLの高さが短いほど低沸点成分の濃度勾配が大きくなるため、物質移動速度が大きくなり、凝縮が促進される。
【0042】
つまり、気体層GLおよび液体層LLの高さが短いほど、物質移動に要する時間が短くなるため、気液平衡に到達する時間も短くなる。つまり、気液平衡に到達する速度は、気体層GLおよび液体層LLの高さが短いほど大きくなる。このため、気体層GLおよび液体層LLの高さを短く(例えば、10mm以下)することで、気液平衡に到達するまでの時間を、従来の棚段塔と比較して、極めて短縮することが可能となる。
【0043】
しかし、気体層GLの高さには限界がある。そこで、本実施形態の分離装置100では、気体層GLに多孔質体250を設け、気体層GLを流れる気体の流れを蛇行させる。つまり、気液接触流路212における気体が流れる距離を留出液排出部150と缶出液排出部160とを結ぶ最短距離よりも長くする。
【0044】
一方で、蒸気量と気体層GLの体積は変わらないため、滞留時間は変わらない。つまり、多孔質体250内を流れるガスは蛇行しながら流速が一時的に速くなっている。これにより、境界層δgの厚さはさらに薄くなる。つまり、物質移動速度が速くなり、さらに気液平衡に到達する時間を短くしていると考えられる。したがって、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上させることが可能となる。
【0045】
また、多孔質体250を区画流路DRに充填する場合は原料液が全ての区画流路DRに流入し易くなる効果がある。区画流路DRを下り勾配としているため、原料液は区画流路DRに流入するが、原料液と流路に働く表面張力などの抵抗により、一部の流路には流入するが全ての区画流路DRに流入しない事が生じる。そこで、区画流路DRに充填した多孔質体250により原料液の流入を促進する。一方で、多孔質体250が液で満たされて飽和状態となると大きな抵抗となり、未だ流入していない流路へ原料液が流入する。この現象を繰り返して、最終的には全ての区画流路DRに原料液が流入される。これにより、原料液が流れる滞留時間が長くなり、十分に加熱されてほぼすべての低沸点成分を蒸発させる事となる。したがって、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上し、特に回収率を大きく向上させる事が可能となる。
【0046】
なお、多孔質体250の材質に限定はないが、熱伝導率が大きく、原料液に含まれる成分に対する耐食性を有するものがよい。多孔質体250は、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼、チタン)、合成樹脂、プラスチック(例えば、フッ素樹脂)、ガラス、セラミックス等で構成されるとよい。また、多孔質体250はスポンジであってもよい。
【0047】
また、多孔質体250に形成される蛇行流路の流路断面積は、毛細管現象によって液体層LLの液体を吸い込まない程度に大きいとよい。つまり、原料液の成分に基づいて、多孔質体250の流路断面積(孔径)が設計される。これにより、気体層GLの圧力損失が上昇してしまう事態を回避することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態にかかる分離装置100によれば、気体層GLに多孔質体250を設けることにより、気体の物質移動速度を向上させて、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上させるとともに処理量の増加が可能となる。また、分離装置100は、気液接触ユニット210と、熱媒体ユニット220とが交互に複数積層された構造であるため、原料液の処理量を増加させることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図7Aは、第1の実施形態の気液接触ユニット210を説明する図である。図7Bは、図7AのVIb矢示図である。図8Aは、第2の実施形態の気液接触ユニット310を説明する図である。図8Bは、図8AのVIIb矢示図である。図8C図8Aの部分上面図である。図9は、気液接触ユニット350の部分上面図を示す。
【0050】
図7A図7Bに示すように、上記第1の実施形態にかかる気液接触ユニット210は、リブ216aの底面と、原料液導入口214との間に立上部218が設けられている。したがって、原料液導入口214から原料液が導入されると、原料液は、立上部218を通って(乗り越えて)区画流路DRに到達する。この際、図7Bに示すように、原料液(図7B中、破線で示す)に表面張力が働き、中央に配される区画流路DR4と、他の区画流路DR1〜3、DR5〜7とで導入される原料液の量に差が生じる。具体的に説明すると、中央から両端に配されるDR1、DR7に向かうに従って、原料液の導入量が少なくなる。
【0051】
そこで、図8A図8Cに示すように、リブ216aの原料液導入口214側に整流板312を設けておく。整流板312は、気液接触ユニット310の底面(立上部218の基端部)から立設して設けられる。そうすると、原料液導入口214から導入された原料液は、整流板312間の流路を通って、区画流路DRに導入される。つまり、原料液は、整流板312間の流路に分配されてから区画流路DRに導入される。これにより、区画流路DR1〜DR7間の原料の導入量の差を低減することができ、区画流路DRごとの分離性能の偏りを低減することが可能となる。
【0052】
また、図8B図8Cに示すように、第2の実施形態では、整流板312間の距離Waが、区画流路DRの幅Wよりも短くなるように、整流板312が構成されている。このため、原料液は、狭い流路から広い区画流路DRに導かれる。したがって、区画流路DRに導入される際に、原料液の流速が遅くなり、区画流路DR1〜DR7間の原料の導入量の差をさらに低減することができる。
【0053】
また、区画流路DRの原料液導入口214側の端部の幅Wbを缶出液排出部160側より広くするようにリブ316aを構成した、図9に示す気液接触ユニット350としてもよい。これにより、区画流路DRの原料液の受け入れ口を広くすることができ、区画流路DR1〜DR7間の原料の導入量の差を低減することができる。
【0054】
(第3の実施形態)
上記第1の実施形態では、気体層GLに多孔質体250を設置することで、気体層GLを流れる気体の滞留時間を長くする構成を例に挙げて説明した。第3の実施形態では、液体層LLを形成する区画流路の形状を工夫することで液体の滞留時間を長くする。
【0055】
図10Aは、第3の実施形態の気液接触ユニット410の第1の上面図である。図10Bは、第3の実施形態の気液接触ユニット420の第2の上面図である。図10Cは、第3の実施形態の気液接触ユニット430の第3の上面図である。なお、図10A図10C中、理解を容易にするために、リブを黒い塗りつぶしで示す。
【0056】
例えば、図10Aに示す、気液接触ユニット410は、複数のリブ416aを備える。リブ416aは、留出液排出口152と缶出液排出口162とを結ぶ仮想直線K(リブ416aを設けない場合の原料液の流れ方向)と直交する方向に延在する。つまり、気液接触ユニット410は、リブ416aが所謂ラビリンス構造に配されたものである。また、図10Bに示す、気液接触ユニット420は、複数のリブ426aを備える。リブ426aは、仮想直線Kと交差する方向に延在する。また、図10Cに示す、気液接触ユニット430は、底面から柱形状の棒部材436aを複数立設させた構造である。
【0057】
上記気液接触ユニット410〜気液接触ユニット430によれば、液体層LLを流れる液体の流れを蛇行させることができる。つまり、気液接触流路212における液体が流れる距離を留出液排出部150から缶出液排出部160を結ぶ最短距離よりも長くする蛇行流路を形成することができる。
【0058】
これにより、液体層LLにおける液体の滞留時間を長くすることができる。したがって、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上させることが可能となる。
【0059】
なお、液体層LLに上記多孔質体250を設置する構成も考えられるが、気体と比較して液体は粘度が高い。このため、液体層LLに多孔質体250を設置する構成では、圧力損失が大きくなってしまい、処理速度が低下してしまう。したがって、上記気液接触ユニット410〜気液接触ユニット430に示すような構成とすることにより、処理速度の低下を防止しつつ、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上させることができる。
【0060】
(第4の実施形態)
上記第1の実施形態の気液接触ユニット210は、溝加工を施すことによって形成される。しかし、他の構成で、気液接触ユニットに複数の区画流路DRを形成することもできる。
【0061】
図11Aは、第4の実施形態の気液接触ユニット510を説明する第1の図である。図11Bは、第4の実施形態の気液接触ユニット520を説明する第2の図である。図11Cは、第4の実施形態の気液接触ユニット530を説明する第3の図である。図11Aに示すように、リブ216に代えて、隆起および陥没した板形状の部材512、すなわち、波板形状(コルゲート形状)の板部材を設置してもよい。そうすると、部材512によって、気液接触流路212が、複数の区画流路DRに区画される。複数の区画流路DRは、仮想直線Kに直交する方向(図11A中X軸方向)に並列している。また、部材512には、貫通孔514が設けられている。したがって、部材512の下方を流れる液体を部材512の上方に移動させることができる。また、部材512の上方を流れる液体を部材512の下方に移動させることができる。したがって、液体の拡散を促進することができる。また、図11Bに示すように、切欠き524が形成された部材512を設置した気液接触ユニット520であってもよい。
【0062】
さらに、図11Cに示すように、第1部材532、第2部材534が、図11C中Y軸方向において所定間隔離間して設けられた気液接触ユニット530であってもよい。第1部材532、第2部材534は、隆起および陥没した板形状の部材である。第1部材532、第2部材534は、仮想直線K上(図11C中Y軸方向)において、第1部材532の隆起部と、第2部材534の陥没部とが重なり合うように配置される。
【0063】
このように、リブ216に代えて、波板形状の部材512、532、534を配置することにより、気液接触ユニット510、520、530の製造コストを低減することが可能となる。
【0064】
(第5の実施形態)
上記第1の実施形態では、本体部110に、留出液排出部150および缶出液排出部160が接続された分離装置100について説明した。しかし、原料液に含まれる成分によっては、本体部110の長さLが足りない場合もある。また、原料液に3種類以上の成分が含まれている場合、これらをそれぞれ分離したいという要望もある。そこで、第5の実施形態では、本体部110、留出液排出部150、缶出液排出部160をモジュール化することで、原料液の成分に拘らず、原料液を効率よく分離できる分離装置について説明する。
【0065】
図12Aは、第5の実施形態の分離装置を構成する各モジュールについて説明する第1の図である。図12Bは、第5の実施形態の分離装置を構成する各モジュールについて説明する第2の図である。なお、図12A図12B中、理解を容易にするために、第1熱媒体導入部130、第1熱媒体排出部132、第2熱媒体導入部140、第2熱媒体排出部142を省略する。
【0066】
図12Aに示すように、第5の実施形態の分離装置600は、流路モジュール610と、導入モジュール620と、第1排出モジュール630と、第2排出モジュール640とを含んで構成される。流路モジュール610は、内部に気液接触流路212と熱媒体流路222とが積層されたモジュールである。導入モジュール620は、内部に気液接触流路212と熱媒体流路222とが積層されるモジュールである。また、導入モジュール620には、気液接触流路212に原料液を導入する原料液導入部622が設けられる。第1排出モジュール630は、内部に気液接触流路212と熱媒体流路222とが積層されるモジュールである。第1排出モジュール630には、気液接触流路212から液体を排出する液体排出部632が設けられる。第2排出モジュール640は、内部に気液接触流路212と熱媒体流路222とが積層されるモジュールである。第2排出モジュール640には、気液接触流路212から気体を排出する気体排出部642が設けられる。
【0067】
上記流路モジュール610、導入モジュール620、第1排出モジュール630、第2排出モジュール640を組み合わせて分離装置を構成することにより、様々な原料液を分離することができる。
【0068】
例えば、原料液に成分A、成分B、成分Cが含まれており、これら3つの成分A、B、Cの分離を試みる場合、図12Bのように、各モジュール610〜640を組み合わせるとよい。そうすると、導入モジュール620の原料液導入部から原料液(成分A、成分B、成分Cが含まれる)が導入され、原料液は、第2排出モジュール640、流路モジュール610、第1排出モジュール630を移動し、この間に成分A、Bが蒸発する。そして、残留した成分Cは、図12B中右端に設けられた第1排出モジュール630の液体排出部632から缶出液として排出される。一方、蒸発した成分A、Bは、図12B中左側に移動し、成分Bは、第2排出モジュール640の気体排出部642から留出ガスとして排出される。そして、成分Aは、導入モジュール620、第1排出モジュール630を通過する間に凝縮されて、左端に設けられた第1排出モジュール630の液体排出部632から留出液として排出される。
【0069】
また、原料液に含まれる成分C、Dを分離する場合、成分C、Dの沸点の差に基づいて、流路モジュール610の数を設定することもできる。例えば、成分C、Dの沸点の差が大きい場合、流路モジュール610の数は少なくなる。成分C、Dの沸点の差が小さい場合、流路モジュール610の数は多くなる。
【0070】
(実施例)
実施例1として、多孔質体250をリブ216の上面(気体層)に載置した分離装置100を用いて蒸留を行った。実施例2として、多孔質体250を区画流路DRの一部に充填した分離装置100を用いて蒸留を行った。比較例として蛇行流路形成部(多孔質体)を備えない分離装置を用いて蒸留を行った。なお、原料液としてメタノールと水との混合液を用いた。
【0071】
図13Aは、実施例および比較例の留出液中のメタノールの濃度(重量%(wt%))を示す図である。図13Bは、実施例および比較例のメタノール回収率(%)を示す図である。なお、図13A図13B中、実施例1を菱形で示し、実施例2を三角で示し、比較例を丸で示す。
【0072】
なお、メタノールの回収率は、下記式(1)を用いて算出した。
メタノールの回収率 = 100×D×X/(F×X) …式(1)
ここで、Fは原料液の供給流量(g/min)、Dは留出液の排出流量(g/min)、Xは原料液中のメタノールの濃度、Xは流出液中のメタノールの濃度を示す。
【0073】
図13Aに示すように、実施例1は、比較例より留出液中のメタノールの濃度が高いことが分かった。また、実施例2は、原料液の供給流量が7g/min以下である場合には、比較例より留出液中のメタノールの濃度が高いことが分かった。また、図13Bに示すように、実施例1、2は、比較例よりメタノールの回収率が高いことが分かった。
【0074】
したがって、分離装置100が蛇行流路形成部(多孔質体)を備える構成により、分離性能(留出液中の低沸点成分の濃度)を向上させることができることが確認された。また、分離性能の向上は、蛇行流路形成部内で流体が蛇行することに基づく物質移動速度の増加によって、加熱流路HRで発生した蒸気の凝縮量が増加したためであると考えられる。また、均一に区画流路DRに流入できた事により、回収部での原料液の滞留時間が長くなり、全ての低沸点成分を蒸発する事ができたためであると考えられる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
例えば、上記実施形態において、気液接触流路212の底面212aが留出液排出口152から缶出液排出口162に向かって鉛直下方に傾斜している構成について説明した。しかし、気液接触流路212の底面212aは、水平方向に延在していてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、気液接触流路212の長さL方向全域に亘って、多孔質体250が設けられる構成を例に挙げて説明した。しかし、多孔質体250は、気液接触流路212の長さL方向に間欠的に設けられていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、多孔質体250の内部流路断面積(孔の断面積の和)が、気液接触流路212の長さL方向全域に亘って一様である構成を例に挙げて説明した。しかし、留出液排出口152側と缶出液排出口162側とで孔の断面積の和を異ならせてもよい。例えば、缶出液排出口162側の方が、留出液排出口152側より孔の断面積の和を大きくしてもよい。つまり、冷却流路CRより加熱流路HRの方が孔の断面積の和を大きくしてもよい。これにより、流路断面積が大きくなり、気体の量が多い缶出液排出口162側で気体の圧力損失を低減することが可能となる。
【0079】
また、上記実施形態では、気体層GLを流れる気体の流れを蛇行させる蛇行流路を形成する蛇行流路形成部として、多孔質体250を気体層GLに設ける構成を例に挙げて説明した。しかし、蛇行流路形成部は、気体層GLを流れる気体の流れを蛇行させる蛇行流路を形成することができれば、構成に限定はない。例えば、蛇行流路形成部は、気体の流れ方向と交差する方向に延在した1または複数の邪魔板で構成されるとしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態において、気液接触流路212の寸法関係や傾斜角について説明した。しかし、原料液における低沸点成分と高沸点成分との割合、目的とする分離性能、原料液導入部120による原料液の導入流速(処理速度)に基づいて、気液接触流路212の寸法関係や傾斜角を適宜設定すればよい。
【0081】
また、上記実施形態において、低沸点成分および高沸点成分が、常温常圧で液体である場合を例に挙げて説明した。しかし、低沸点成分は、常温常圧で気体であってもよい。例えば、低沸点成分として、アンモニアや、二酸化炭素を含む原料液を分離する場合にも、上記実施形態の分離装置を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、低沸点成分と高沸点成分とを含んで構成される原料液を、留出液と缶出液とに分離する分離装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
GL 気体層
100 分離装置
130 第1熱媒体導入部(回収部)
132 第1熱媒体排出部(回収部)
140 第2熱媒体導入部(濃縮部)
142 第2熱媒体排出部(濃縮部)
152 留出液排出口
162 缶出液排出口
212 気液接触流路
214 原料液導入口
222 熱媒体流路(回収部、濃縮部)
250 多孔質体(蛇行流路形成部)
600 分離装置
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B