(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非多孔質の溶融フッ素樹脂は、非多孔質テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、非多孔質テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)および非多孔質テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1記載の二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池(第1実施形態)
1−1.リチウムイオン二次電池
1−2.リチウム金属二次電池
1−3.変形例
2.二次電池(第2実施形態)
2−1.リチウムイオン二次電池
2−2.リチウム金属二次電池
2−3.変形例
3.二次電池の用途
3−1.電池パック(単電池)
3−2.電池パック(組電池)
3−3.電動車両
3−4.電力貯蔵システム
3−5.電動工具
【0017】
<1.二次電池(第1実施形態)>
まず、第1実施形態の二次電池に関して説明する。
【0018】
<1−1.リチウムイオン二次電池>
ここで説明する二次電池は、例えば、電極反応物質であるリチウムの吸蔵放出により負極の容量が得られるリチウムイオン二次電池である。
【0019】
図1および
図2のそれぞれは、本実施形態の二次電池の斜視構成を表している。ただし、
図1では、外装部材40の貼り合わせ前の状態を示していると共に、巻回電極体30と外装部材40とを互いに離間させている。
図2では、外装部材40の貼り合わせ後の状態を示している。
【0020】
図3は、
図1に示したA−A線に沿った外装部材40の断面構成を表している。
図4は、
図1に示したB−B線に沿った巻回電極体30の断面構成を表している。
【0021】
[全体構成]
この二次電池は、フィルム状の外装部材40を用いたラミネートフィルム型の二次電池である。ラミネートフィルム型の二次電池では、例えば、
図1〜
図3に示したように、窓部42を有する外装部材40の内部に、電池素子である巻回電極体30が収納されている。窓部42の詳細に関しては、後述する。
【0022】
巻回電極体30では、例えば、
図4に示したように、セパレータ35および電解質層36を介して正極33および負極34が積層されたのち、その正極33、負極34、セパレータ35および電解質層36が巻回されている。すなわち、外装部材40の内部に収納されている巻回電極体30は、正極33、負極34および電解質層36を含んでおり、その電解質層36は、後述する電解液を含んでいる。巻回電極体30の最外周部は、例えば、保護テープ37により保護されている。
【0023】
正極33には、正極リード31が取り付けられており、その正極リード31は、外装部材40の内部から外部に向かって導出されている。この正極リード31は、例えば、アルミニウム(Al)などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の形状は、特に限定されないが、例えば、薄板状または網目状である。
【0024】
負極34には、負極リード32が取り付けられており、その負極リード32は、外装部材40の内部から外部に向かって導出されている。負極リード32は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の形状は、例えば、正極リード31に関して説明した場合と同様である。
【0025】
なお、
図2では、正極リード31および負極リード32のそれぞれの図示を省略している。正極リード31および負極リード32のそれぞれは、例えば、
図1から明らかなように、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。
【0026】
[外装部材]
外装部材40は、上記したように、巻回電極体30を収納している。この外装部材40は、フィルム状であるため、柔軟性を有している。
【0027】
特に、外装部材40は、例えば、
図1〜
図3に示したように、上記した窓部42が設けられた外装本体41を含んでいる。
【0028】
(外装本体)
外装本体41は、外装部材40の本体であり、フィルム状の部材である。外装本体41の構成は、特に限定されないが、その外装本体41は、例えば、接着層を含む多層フィルム(ラミネートフィルム)である。
【0029】
具体的には、外装本体41は、例えば、内側から順に、接着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。この場合には、例えば、外装本体41のうちの接着層同士が巻回電極体30を介して互いに接着されることにより、外装部材40の内部に巻回電極体30が収納される。
【0030】
接着方法として熱融着法が用いられる場合の接着層は、例えば、融着層である。この融着層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの高分子化合物うちのいずれか1種類または2種類以上を含むフィルムである。金属層は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属箔である。表面保護層は、例えば、ナイロンおよびポリエチレンテレフタレートなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含むフィルムである。
【0031】
中でも、外装本体41は、例えば、内側から順に、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。十分な接着性および十分な気密性などが得られるからである。
【0032】
この外装本体41は、例えば、
図1〜
図3に示したように、巻回電極体30を一方(ここでは上方)から被覆する第1外装部材である外装部41Aと、その巻回電極体30を他方(ここでは下方)から被覆する第2外装部材である外装部41Bとを含んでいる。外装部41Aの形成材料と外装部41Bの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0033】
この場合には、例えば、外装部41A,41Bの間に巻回電極体30が挟まれた状態において、外装部41Aの一部と外装部41Bの一部とが互いに接着されることにより、その巻回電極体30が外装部材40の内部に収納されている。外装部41Aの一部は、例えば、その外装部41Aの外縁部であると共に、外装部41Bの一部は、例えば、その外装部41Bの外縁部である。
【0034】
これに伴い、外装本体41は、外装部材40の内部に巻回電極体30を収納するために外装部41A,41Bが互いに接着されていない非接着領域41Xと、その外装部材40を封止するために外装部41A,41Bが互いに接着されている接着領域41Yとを含んでいる。例えば、
図1および
図2に示したように、接着領域41Yは、外装部41A,41Bのそれぞれのうちの外縁領域であると共に、非接着領域41Xは、外装部41A,41Bのそれぞれのうちの外縁領域以外の領域(外縁領域により囲まれた中央領域)である。
【0035】
外装部41A,41Bは、例えば、互いに分離されていてもよいし、互いに連結(一体化)されていてもよい。外装部41A,41Bが互いに分離されている場合の外装本体41は、例えば、2枚のフィルムである。一方、外装部41A,41Bが互いに連結されている場合の外装本体41は、例えば、1枚のフィルムである。
【0036】
ここでは、例えば、外装部41A,41Bが互いに連結されているため、外装本体41は1枚のフィルムである。この1枚のフィルムは、もともと1枚のフィルムでもよいし、2枚のフィルムが連結された複合フィルムでもよい。これに伴い、外装本体41は、例えば、
図1に示した矢印Rの方向に折り畳み可能である。この場合には、外装本体41が折り畳まれることにより、上記したように、外装部41Aが上方から巻回電極体30を被覆すると共に外装部41Bが下方から巻回電極体30を被覆するため、その巻回電極体30が外装部材40の内部に収納される。
【0037】
なお、外装部41Aには、例えば、巻回電極体30を収納するための窪み部41Pが設けられている。これに伴い、外装部41Aは、例えば、窪み部41Pが設けられている箇所において、外側に向かって部分的に突出している。外装部41Aに窪み部41Pが設けられているのは、外装本体41に対して巻回電極体30を位置合わせしやすくなると共に、外装部材40の内部に巻回電極体30を収納しやすくなるからである。
【0038】
外装部材40の内部に巻回電極体30が収納された状態において、その外装部材40を封止するために、例えば、密着フィルム50が用いられている。具体的には、例えば、外装本体41(外装部41A,41B)と正極リード31との間に密着フィルム50が挿入されていると共に、同様に外装本体41と負極リード32との間に密着フィルム50が挿入されている。
【0039】
この密着フィルム50は、外装部材40の内部に外気が侵入することを防止するために、密着性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。密着性材料は、正極リード31および負極リード32のそれぞれに対して密着性を有する材料であり、例えば、ポリオレフィン樹脂などである。ポリオレフィン樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンなどである。
【0040】
(窓部)
窓部42は、主に、外装部材40の外部から内部に水が侵入することを抑制する機能(防水機能)を果たすと共に、その外装部材40の内部において発生したガスを外部に放出する機能(排気機能)を果たす。ここで説明する水は、例えば、二次電池の外部に存在する水および水蒸気などである。また、ガスは、例えば、電解液の分解反応などの副反応に起因して発生した炭酸ガス(二酸化炭素)などである。
【0041】
この窓部42は、上記したように、外装部材40の一部であると共に、
図3に示したように、内部環境E1および外部環境E2のそれぞれに露出している。
【0042】
内部環境E1は、巻回電極体30が収納されている環境(外装部材40の内部の環境)である。このため、内部環境E1は、外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されることにより形成される。一方、外部環境E2は、巻回電極体30が収納されていない環境(外装部材40の外部の環境)である。すなわち、窓部42は、外部環境E2から内部環境E1に水が侵入することを抑制しながら、その内部環境E1から外部環境E2にガスを放出する。
【0043】
外装部材40(外装本体41)が窓部42を有しているのは、その窓部42の防水機能を利用して、水に起因するサイクル特性などの低下を抑制しながら、その窓部42の排気機能を利用して、二次電池の膨れを抑制するためである。この場合には、安全弁などの機械、器具および装置などを用いる必要がないため、サイクル特性などの低下を容易に抑制することができると共に、二次電池の膨れを容易に抑制することもできる。
【0044】
上記した防水機能および排気機能を発揮することができれば、窓部42の数、位置および構成は、特に限定されない。
【0045】
具体的には、窓部42の数は、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。ここでは、窓部42の数は、例えば、1個である。
【0046】
また、窓部42の位置は、任意でよい。ここでは、窓部42は、例えば、外装本体41(外装部41A)のうちの窪み部41Pに設けられている。より具体的には、例えば、窪み部41Pが1つの上面41PTおよび4つの側面41PSを有している場合において、窓部42は、その上面41PTに設けられている。
【0047】
すなわち、窓部42は、例えば、外装本体41のうちの非接着領域41Xに設けられている。
【0048】
また、例えば、外装本体41に開口部41Kが設けられており、フィルム状の窓部材である窓フィルム43が開口部41Kを被覆(閉塞)することにより、窓部42が形成されている。すなわち、窓部42は、例えば、後述する窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)を含むと共に開口部41Kを閉塞する窓フィルム43を含んでいる。
図1および
図2のそれぞれでは、窓フィルム43を識別しやすくするために、その窓部43に網掛けを施している。
【0049】
開口部41Kは、内部環境E1と外部環境E2とを互いに連通させる貫通口である。開口部41Kの開口形状は、特に限定されないため、例えば、円形でもよいし、楕円形でもよいし、矩形でもよいし、それら以外の形状でもよい。ここでは、開口部41Kの開口形状は、例えば、楕円形である。なお、開口部41Kの大きさ(面積)は、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0050】
窓フィルム43は、上記した防水機能および排気機能のそれぞれを有するフィルムである。これに伴い、窓フィルム43は、窓機能材料を含んでいる。「窓機能材料」とは、外装部材40の外部から内部に水が侵入することを抑制することができると共に、その外装部材40の内部から外部にガスを放出できる材料である。より具体的には、窓機能材料は、防水機能を担保するために、水を十分に透過させないバリア膜として機能する材料であると共に、排気機能を担保するために、二酸化炭素などのガスを十分に透過させることができる気体透過性を有する材料である。すなわち、窓機能材料は、水およびガスに関して選択透過性を有する材料である。
【0051】
この窓機能材料は、非多孔質の溶融フッ素樹脂のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この非多孔質の溶融フッ素樹脂は、主に、1個または2個以上の細孔を有していないと共に、溶融加工および溶融成型することができる程度の溶融性を有するフッ素樹脂の総称である。
【0052】
非多孔質の溶融フッ素樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、非多孔質テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、非多孔質テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)および非多孔質テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系高分子化合物である。これらの特定の種類のフッ素系高分子化合物は、上記した防水機能および排気機能のそれぞれを十分に発揮することができるからである。
【0053】
なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリプロピレン(PP)などの非フッ素系の高分子化合物では、溶融フッ素樹脂と比較して上記した水およびガスに関する選択透過性が低すぎるため、その非フッ素系の高分子化合物は、上記した防水機能および排気機能の双方を発揮できない。また、多孔質PFA、多孔質FEPおよび多孔質ETFEなどは、溶融フッ素樹脂に該当しても、多孔質であるため、上記した防水機能および排気機能の双方を発揮できない。
【0054】
ここで、高分子化合物が非多孔質であるか否かに関しては、例えば、以下の手順により確認可能である。具体的には、高分子化合物のフィルムを入手したのち、電子顕微鏡などを用いてフィルムの断面を観察する。観察時の倍率は、任意に設定可能である。この結果、フィルムの内部に1個または2個以上の細孔が観察される場合、そのフィルムを形成している高分子化合物は多孔質である。この細孔の状態は、特に限定されないため、例えば、略円形状の空隙でもよいし、所定の方向に延在する管状の経路でもよい。これに対して、フィルムの内部に1個または2個以上の細孔が観察されない場合、そのフィルムを形成している高分子化合物は非多孔質である。
【0055】
窓フィルム43の平面形状は、特に限定されないため、例えば、円形でもよいし、楕円形でもよいし、矩形でもよいし、それら以外の形状でもよい。すなわち、窓フィルム43の平面形状は、開口部41Kの開口形状と同じでもよいし、開口部41Kの開口形状と異なる形状でもよい。ここでは、窓フィルム43の平面形状は、例えば、開口部41Kの開口形状と同じである。このため、窓フィルム43の平面形状は、例えば、楕円形である。
【0056】
窓フィルム43が開口部41Kを閉塞することができれば、その窓フィルム43の大きさ(面積)は、特に限定されない。すなわち、窓フィルム43の面積は、開口部41Kの開口面積と同じでもよいし、開口部41Kの開口面積より大きくてもよい。
【0057】
中でも、窓フィルム43が窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)を含んでいることに伴い、その窓フィルム43の面積は、開口部41Kの面積より大きいことが好ましい。外装本体41に窓フィルム43を固定するために、接着剤を用いて外装本体41に窓フィルム43を貼り付けることができるからである。
【0058】
具体的には、例えば、
図3に示したように、窓フィルム43の面積は、開口部41Kの面積より大きくなっているため、その窓フィルム43は、開口部41Kを閉塞するように接着剤44を介して外装本体41に貼り付けられている。非多孔質の溶融フッ素樹脂を含んでいる窓フィルム43は、一般的に、その非多孔質の溶融フッ素樹脂に特有の耐粘着性などに起因して、他の物体(ここでは外装本体41)に接着されにくい性質を有している。しかしながら、非多孔質の溶融フッ素樹脂との相性(接着性)に優れた接着剤44を選択することにより、その接着剤44を用いて窓フィルム43を外装本体41に十分に接着させることができる。
【0059】
窓フィルム43の設置位置は、特に限定されない。このため、窓フィルム43は、外装本体41の内側(内部環境E1)に配置されていてもよいし、外装本体41の外側(外部環境E2)に配置されていてもよい。
【0060】
中でも、
図3に示したように、窓フィルム43は、外装本体41の内側に配置されていることが好ましい。二次電池の内部においてガスが発生しても、窓フィルム43が意図せずに剥離および脱落することは抑制されるからである。この窓フィルム43は、例えば、接着剤44を介して外装本体41の内側面に接着されている。
【0061】
詳細には、二次電池の内部においてガスが発生すると、内圧の上昇に起因して内部環境E1から外部環境E2に向かって窓フィルム43が押される。この場合には、例えば、後述するように、窓フィルム43が外装本体41の外側に配置されていると(
図6参照)、窓フィルム43が初めから外部環境E2に位置しており、その窓フィルム43の外側に何も存在していない。よって、内圧の上昇具合によっては、接着剤44が外装本体41および窓フィルム43のうちの一方または双方から剥離すると、その窓フィルム43が外装本体41から剥離する可能性がある。また、窓フィルム43が外装本体41から剥離すると、その窓フィルム43が二次電池から脱落する可能性もある。
【0062】
これに対して、窓フィルム43が外装本体41の内側に配置されていると(
図3参照)、窓フィルム43が内部環境E1に位置しており、その窓フィルム43の外側に外装本体41が存在している。この場合には、窓フィルム43と外装本体41とが互いに重なっている場所において、その外装本体41により内部環境E1に留まるように窓フィルム43が押さえられる。よって、接着剤44が外装本体41および窓フィルム43のそれぞれから剥離しにくくなるため、その窓フィルム43が外装本体41から剥離しにくくなる。また、内圧の上昇に起因して窓フィルム43が外装本体41から剥離しても、その窓フィルム43が依然として内部環境E1に存在しやすくなるため、その窓フィルム43が二次電池から脱落しにくくなる。
【0063】
窓フィルム43の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm〜500μmであり、好ましくは10μm〜200μmである。窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)を含む窓フィルム43を用いることにより、その窓フィルム43の物理耐久性などを確保しつつ、十分な防水機能および十分な排気機能が得られるからである。
【0064】
詳細には、窓フィルム43の厚さが10μmよりも小さいと、その窓フィルム43が薄すぎるため、ガスの発生時において窓フィルム43がガスを放出しやすくなる反面、その窓フィルム43が水を通しやすくなる可能性があると共に、内圧の上昇時などにおいて窓フィルム43が変形、破損および剥離しやすくなる可能性もある。一方、窓フィルム43の厚さが500μmよりも大きいと、その窓フィルム43が厚すぎるため、内圧の上昇時などにおいても窓フィルム43が変形、破損および剥離しにくくなると共に、その窓フィルム43が水を通しにくくなる反面、その窓フィルム43がガスを放出しにくくなる可能性がある。
【0065】
接着剤44は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリレートおよびスチレンブタジエンゴムなどの高分子化合物(接着性材料)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)などである。
【0066】
接着前における接着剤44の状態は、特に限定されないため、粉末状でもよいし、液体状でもよいし、フィルム状でもよいし、それらのうちの2種類以上が混在した状態でもよい。ただし、接着剤44の厚さを均一化すると共に、その接着剤44にピンホールが発生することを抑制するためには、接着前における接着剤44の状態は、液体状およびフィルム状のうちの一方または双方であることが好ましい。
【0067】
なお、接着剤44と窓フィルム43との接着性が十分でない場合には、例えば、その接着性を向上させるために、窓フィルム43の表面に前処理のうちのいずれか1種類または2種類以上が施されていてもよい。この前処理の種類は、特に限定されないが、例えば、薬剤処理、コロナ処理および紫外線照射(UV)処理などである。中でも、薬剤処理が好ましい。熱源および光源などの設備を用いずに、窓フィルム43と接着剤44との接着性を簡単に向上させることができるからである。
【0068】
もちろん、接着剤44と外装本体41との接着性が十分でない場合においても、例えば、上記した接着剤44と窓フィルム43との接着性が十分でない場合と同様に、その接着性を向上させるために外装本体41の表面に前処理のうちのいずれか1種類または2種類以上が施されていてもよい。前処理に関する詳細は、例えば、上記した通りである。
【0069】
[正極]
正極33は、例えば、
図4に示したように、正極集電体33Aと、その正極集電体33Aの両面に設けられた正極活物質層33Bとを含んでいる。ただし、正極活物質層33Bは、正極集電体33Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0070】
正極集電体33Aは、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この正極集電体33Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
【0071】
正極活物質層33Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵放出することが可能である正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層33Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0072】
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましく、より具体的には、リチウム含有複合酸化物およびリチウム含有リン酸化合物のうちのいずれか一方または双方であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0073】
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと1種類または2種類以上の他元素(リチウム以外の元素)とを構成元素として含む酸化物であり、例えば、層状岩塩型およびスピネル型などのうちのいずれかの結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、リチウムと1種類または2種類以上の他元素とを構成元素として含むリン酸化合物であり、例えば、オリビン型などの結晶構造を有している。
【0074】
他元素の種類は、任意の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。中でも、他元素は、長周期型周期表における2族〜15族に属する元素のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より具体的には、他元素は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)のうちのいずれか1種類または2種類以上の金属元素を含んでいることがより好ましい。高い電圧が得られるからである。
【0075】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(21)〜式(23)のそれぞれで表される化合物などである。
【0076】
Li
a Mn
(1-b-c) Ni
b M11
c O
(2-d) F
e ・・・(21)
(M11は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜eは、0.8≦a≦1.2、0<b<0.5、0≦c≦0.5、(b+c)<1、−0.1≦d≦0.2および0≦e≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0077】
Li
a Ni
(1-b) M12
b O
(2-c) F
d ・・・(22)
(M12は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0.005≦b≦0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0078】
Li
a Co
(1-b) M13
b O
(2-c) F
d ・・・(23)
(M13は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0≦b<0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0079】
なお、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(24)で表される化合物などでもよい。この化合物は、ニッケルを構成元素として含んでいると共に、そのニッケルの含有割合が相対的に大きいリチウムニッケル含有複合酸化物である。
【0080】
Li
x Co
y Ni
z M
1-y-z O
b-a X
e ・・・(24)
(Mは、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、インジウム(In)およびアンチモン(Sb)のうちの少なくとも1種である。Xは、ハロゲン元素である。x、y、z、aおよびbは、0.8<x≦1.2、0≦y≦1.0、0.5≦z≦1.0、0≦a≦1.0、1.8≦b≦2.2およびy<zを満たす。)
【0081】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物の具体例は、LiNiO
2 、LiCoO
2 、LiCo
0.98Al
0.01Mg
0.01O
2 、LiNi
0.5 Co
0.2 Mn
0.3 O
2 、LiNi
0.8 Co
0.15Al
0.05O
2 、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2 、Li
1.2 Mn
0.52Co
0.175 Ni
0.1 O
2 およびLi
1.15(Mn
0.65Ni
0.22Co
0.13)O
2 などである。
【0082】
なお、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物がニッケル、コバルト、マンガンおよびアルミニウムを構成元素として含む場合には、そのニッケルの原子比率は、50原子%以上であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0083】
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(25)で表される化合物などである。
【0084】
Li
a Mn
(2-b) M14
b O
c F
d ・・・(25)
(M14は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.9≦a≦1.1、0≦b≦0.6、3.7≦c≦4.1および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0085】
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物の具体例は、LiMn
2 O
4 などである。
【0086】
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物は、例えば、下記の式(26)で表される化合物などである。
【0087】
Li
a M15PO
4 ・・・(26)
(M15は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1種である。aは、0.9≦a≦1.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0088】
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物の具体例は、LiFePO
4 、LiMnPO
4 、LiFe
0.5 Mn
0.5 PO
4 およびLiFe
0.3 Mn
0.7 PO
4 などである。
【0089】
なお、リチウム含有複合酸化物は、下記の式(27)で表される化合物などでもよい。
【0090】
(Li
2 MnO
3 )
x (LiMnO
2 )
1-x ・・・(27)
(xは、0≦x≦1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、xは完全放電状態の値である。)
【0091】
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物および導電性高分子などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムおよび二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンおよび硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンなどである。ただし、正極材料は、上記以外の他の材料でもよい。
【0092】
正極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリイミドなどである。
【0093】
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
【0094】
[負極]
負極22は、例えば、
図4に示したように、負極集電体34Aと、その負極集電体34Aの両面に設けられた負極活物質層34Bとを含んでいる。ただし、負極活物質層34Bは、負極集電体34Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0095】
負極集電体34Aは、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この負極集電体34Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
【0096】
負極集電体34Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体34Aに対する負極活物質層34Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層34Bと対向する領域において、負極集電体34Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極集電体34Aの表面に微粒子が形成されるため、その負極集電体34Aの表面に凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
【0097】
負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵放出することが可能である負極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層34Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0098】
充電途中において意図せずにリチウム金属が負極34に析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量は、正極33の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量は、正極33の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
【0099】
負極材料は、例えば、炭素材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。リチウムの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層34Bの導電性が向上するからである。
【0100】
炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は、0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛における(002)面の面間隔は、0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂およびフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗片状のうちのいずれでもよい。
【0101】
また、負極材料は、例えば、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料(金属系材料)である。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0102】
金属系材料は、単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。ただし、合金には、2種類以上の金属元素からなる材料に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この金属系材料の組織は、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物およびそれらの2種類以上の共存物などである。
【0103】
上記した金属元素および半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。
【0104】
中でも、ケイ素およびスズのうちの一方または双方が好ましい。リチウムを吸蔵放出する能力が優れているため、著しく高いエネルギー密度が得られるからである。
【0105】
ケイ素およびスズのうちの一方または双方を構成元素として含む材料は、ケイ素の単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、スズの単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。ここで説明する単体とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)を意味しており、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
【0106】
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0107】
ケイ素の合金およびケイ素の化合物のそれぞれの具体例は、SiB
4 、SiB
6 、Mg
2 Si、Ni
2 Si、TiSi
2 、MoSi
2 、CoSi
2 、NiSi
2 、CaSi
2 、CrSi
2 、Cu
5 Si、FeSi
2 、MnSi
2 、NbSi
2 、TaSi
2 、VSi
2 、WSi
2 、ZnSi
2 、SiC、Si
3 N
4 、Si
2 N
2 O、SiO
v (0<v≦2)、およびLiSiOなどである。なお、SiO
v におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
【0108】
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0109】
スズの合金およびスズの化合物の具体例は、SnO
w (0<w≦2)、SnSiO
3 、LiSnOおよびMg
2 Snなどである。
【0110】
特に、スズを構成元素として含む材料は、例えば、第1構成元素であるスズと共に第2構成元素および第3構成元素を含む材料(Sn含有材料)であることが好ましい。第2構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セシウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル、タングステン、ビスマスおよびケイ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。Sn含有材料が第2および第3構成元素を含んでいることで、高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
【0111】
中でも、Sn含有材料は、スズとコバルトと炭素とを構成元素として含む材料(SnCoC含有材料)であることが好ましい。このSnCoC含有材料では、例えば、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0112】
SnCoC含有材料は、スズとコバルトと炭素とを含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応することが可能な反応相であるため、その反応相の存在に基づいて優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、1°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部が含まれている相を含んでいる場合もある。
【0113】
X線回折により得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断できる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0114】
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素のうちの少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて確認可能である。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。炭素のうちの少なくとも一部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、金原子の4f軌道(Au4f)のピークは、84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、その表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとして、そのピークをエネルギー基準とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することで、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0115】
このSnCoC含有材料は、構成元素がスズ、コバルトおよび炭素だけである材料(SnCoC)に限られない。このSnCoC含有材料は、例えば、スズ、コバルトおよび炭素に加えて、さらにケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
【0116】
SnCoC含有材料の他、スズとコバルトと鉄と炭素とを構成元素として含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意である。一例を挙げると、鉄の含有量を少なめに設定する場合は、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、鉄の含有量が0.3質量%〜5.9質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%〜70質量%である。また、鉄の含有量を多めに設定する場合は、炭素の含有量が11.9質量%〜29.7質量%、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%〜48.5質量%、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%〜79.5質量%である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。なお、SnCoFeC含有材料の物性(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料の物性と同様である。
【0117】
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物および高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムおよび酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンおよびポリピロールなどである。
【0118】
中でも、負極材料は、以下の理由により、炭素材料および金属系材料の双方を含んでいることが好ましい。
【0119】
金属系材料、特に、ケイ素およびスズのうちの一方または双方を構成元素として含む材料は、理論容量が高いという利点を有する反面、充放電時において激しく膨張収縮しやすいという懸念点を有する。一方、炭素材料は、理論容量が低いという懸念点を有する反面、充放電時において膨張収縮しにくいという利点を有する。よって、炭素材料および金属系材料の双方を用いることで、高い理論容量(言い替えれば電池容量)を得つつ、充放電時の膨張収縮が抑制される。
【0120】
負極活物質層34Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子(粉末)状の負極活物質を負極結着剤などと混合したのち、その混合物を有機溶剤などに分散させてから負極集電体34Aに塗布する方法である。気相法は、例えば、物理堆積法および化学堆積法などである。より具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法およびプラズマ化学気相成長法などである。液相法は、例えば、電解鍍金法および無電解鍍金法などである。溶射法とは、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を負極集電体34Aに噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法を用いて、有機溶剤などに分散された混合物を負極集電体34Aに塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。この焼成法としては、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法およびホットプレス焼成法などを用いることができる。
【0121】
この二次電池では、上記したように、充電途中において負極34にリチウムが意図せずに析出することを防止するために、リチウムを吸蔵および放出することが可能である負極材料の電気化学当量は、正極の電気化学当量よりも大きくなっている。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、その完全充電時の開回路電圧が4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
【0122】
完全充電時の開回路電圧(充電終止電圧)は、特に限定されないが、上記したように、4.2V以上であることが好ましい。中でも、完全充電時の開回路電圧は、4.25V以上であることが好ましく、4.35V以上であることがより好ましい。完全充電時の開回路電圧を著しく高くしても、上記した電解質塩と炭酸エチレンとの混合比の適正化に基づく利点が得られるため、優れた電池特性が得られるからである。なお、放電終止電圧は、特に限定されないが、例えば、3.0V以下である。
【0123】
[セパレータ]
セパレータ35は、例えば、
図4に示したように、正極33と負極34との間に配置されている。これにより、セパレータ35は、主に、正極33と負極34とを隔離すると共に、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。
【0124】
このセパレータ35は、例えば、合成樹脂およびセラミックなどの多孔質膜のうちのいずれか1種類または2種類以上であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
【0125】
特に、セパレータ35は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極33および負極34のそれぞれに対するセパレータ35の密着性が向上するため、巻回電極体30の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても抵抗が上昇しにくくなると共に、二次電池の膨れが抑制される。
【0126】
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンに限られない。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、有機溶剤などに高分子化合物が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。また、高分子化合物層を形成する場合には、例えば、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。この高分子化合物層は、例えば、無機粒子などの絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。無機粒子の種類は、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイトおよびタルクなどである。
【0127】
[電解質層]
電解質層36は、電解液と、高分子化合物とを含んでいる。ここで説明する電解質層36は、いわゆるゲル状の電解質であり、その電解質層36中では、高分子化合物により電解液が保持されている。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。なお、電解質層36は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0128】
電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。ただし、電解液は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0129】
(溶媒)
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。
【0130】
非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリル(モノニトリル)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0131】
環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどである。鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。鎖状カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
【0132】
この他、非水溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどでもよい。同様の利点が得られるからである。
【0133】
中でも、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。高い電池容量、優れたサイクル特性および優れた保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0134】
特に、溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、酸無水物、ジシアノ化合物(ジニトリル化合物)、ジイソシアネート化合物、リン酸エステルおよび炭素間三重結合を有する鎖状化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。電解液の化学的安定性が向上するからである。
【0135】
不飽和環状炭酸エステルとは、1個または2個以上の不飽和結合(炭素間二重結合または炭素間三重結合)を含む環状炭酸エステルである。この不飽和環状炭酸エステルは、例えば、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
【0136】
ハロゲン化炭酸エステルとは、1個または2個以上のハロゲンを構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。ハロゲン化炭酸エステルが2個以上のハロゲンを構成元素として含む場合、その2個以上のハロゲンの種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。環状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。鎖状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。
【0137】
スルホン酸エステルは、例えば、モノスルホン酸エステルおよびジスルホン酸エステルなどである。溶媒中におけるスルホン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
【0138】
モノスルホン酸エステルは、環状モノスルホン酸エステルでもよいし、鎖状モノスルホン酸エステルでもよい。環状モノスルホン酸エステルは、例えば、1,3−プロパンスルトンおよび1,3−プロペンスルトンなどのスルトンである。鎖状モノスルホン酸エステルは、例えば、環状モノスルホン酸エステルが途中で切断された化合物などである。ジスルホン酸エステルは、環状ジスルホン酸エステルでもよいし、鎖状ジスルホン酸エステルでもよい。
【0139】
酸無水物は、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物およびカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸および無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸および無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸および無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0140】
ジニトリル化合物は、例えば、NC−C
m H
2m−CN(mは、1以上の整数である。)で表される化合物である。このジニトリル化合物は、例えば、スクシノニトリル(NC−C
2 H
4 −CN)、グルタロニトリル(NC−C
3 H
6 −CN)、アジポニトリル(NC−C
4 H
8 −CN)およびフタロニトリル(NC−C
6 H
4 −CN)などである。溶媒中におけるジニトリル化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0141】
ジイソシアネート化合物は、例えば、OCN−C
n H
2n−NCO(nは、1以上の整数である。)で表される化合物である。このジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(OCN−C
6 H
12−NCO)などである。溶媒中におけるジイソシアネート化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0142】
リン酸エステルは、例えば、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルなどである。溶媒中におけるリン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0143】
炭素間三重結合を有する鎖状化合物は、1または2以上の炭素間三重結合(−C≡C−)を有する鎖状の化合物である。この炭素間三重結合を有する鎖状化合物は、例えば、炭酸プロパルギルメチル(CH≡C−CH
2 −O−C(=O)−O−CH
3 )およびメチルスルホン酸プロパルギル(CH≡C−CH
2 −O−S(=O)
2 −CH
3 )などである。溶媒中における炭素間三重結合を有する鎖状化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0144】
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
【0145】
リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4 )、過塩素酸リチウム(LiClO
4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C
6 H
5 )
4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH
3 SO
3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3 SO
3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl
4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li
2 SiF
6 )、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0146】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0147】
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0148】
ただし、ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液に含まれる溶媒とは、液状の材料だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も非水溶媒に含まれる。
【0149】
高分子化合物は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この他、高分子化合物は、共重合体でもよい。この共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などである。中でも、単独重合体としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましいと共に、共重合体としては、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0150】
なお、電解質層36に代えて、電解液がそのまま用いられてもよい。この場合には、電解液が巻回電極体30に含浸される。
【0151】
[動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。
【0152】
充電時には、正極33からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時には、負極34からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
【0153】
[製造方法]
ゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
【0154】
(第1手順)
正極33を作製する場合には、最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合することにより、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などに正極合剤を分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体33Aの両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層33Bを形成する。最後に、必要に応じて正極活物質層33Bを加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層33Bを圧縮成型する。この場合には、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
【0155】
負極34を作製する場合には、上記した正極33と同様の手順により、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成する。具体的には、最初に、負極活物質と、負正極結着剤および負極導電剤などとを混合することにより、負極合剤としたのち、有機溶剤などに負極合剤を分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極集電体34Aの両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層34Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて負極活物質層34Bを圧縮成型する。
【0156】
ゲル状の電解質層36を形成する場合には、最初に、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などとを混合することにより、前駆溶液を調製する。続いて、正極33に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。また、負極34に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。
【0157】
二次電池を組み立てる場合には、最初に、溶接法などを用いて正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、溶接法などを用いて負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層したのち、その正極33、負極34およびセパレータ35を巻回させることにより、巻回電極体30を形成する。続いて、巻回電極体30の最外周部に、保護テープ37を貼り付ける。最後に、窓部42が設けられた外装部材40を用いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40の外縁部同士を貼り合わせることにより、その外装部材40の内部に巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31と外装部材40との間に密着フィルム50を挿入すると共に、負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム50を挿入する。
【0158】
これにより、ゲル状の電解質層36を備えたラミネートフィルム型の二次電池が完成する。
【0159】
(第2手順)
第1手順と同様の手順により正極33および負極34のそれぞれを作製したのち、二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。
【0160】
続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層してから巻回させることにより、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製したのち、その巻回体の最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、窓部42が設けられた外装部材40を用いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40のうちの一辺の外縁部を除いた残りの外縁部同士を貼り合わせることにより、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。
【0161】
続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを混合することにより、電解質用組成物を調製する。続いて、袋状の外装部材40の内部に電解質用組成物を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。最後に、モノマーを熱重合させることにより、高分子化合物を形成する。この高分子化合物により電解液が保持されるため、ゲル状の電解質層36が形成される。よって、ラミネートフィルム型の二次電池が完成する。
【0162】
(第3手順)
二次電池を組み立てる場合には、最初に、高分子化合物層が形成されたセパレータ35を用いることを除いて、上記した第2手順と同様の手順により、巻回体を作製したのち、窓部42が設けられた袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。
【0163】
続いて、外装部材40の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。続いて、外装部材40に加重をかけながら加熱することにより、高分子化合物層を介してセパレータ35を正極33に密着させると共に、高分子化合物層を介してセパレータ35を負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物層のそれぞれに含浸すると共に、その高分子化合物層のそれぞれがゲル化するため、電解質層36が形成される。よって、ラミネートフィルム型の二次電池が完成する。
【0164】
この第3手順では、第1手順と比較して、二次電池の膨れが抑制される。また、第3手順では、第2手順と比較して、溶媒およびモノマー(高分子化合物の原料)などが電解質層36中に残存しにくくなるため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35のそれぞれと電解質層36とが互いに密着しやすくなる。
【0165】
[作用および効果]
このラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池によれば、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されており、窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)を含む窓部42(窓フィルム43)が外装部材40(外装本体41)に設けられている。よって、以下で説明する理由により、優れた電池特性を得ることができる。
【0166】
外装部材40に窓部42が設けられていない場合には、二次電池の内部において電解液の分解反応などの副反応に起因して二酸化炭素などのガスが発生すると、そのガスの逃げ場がないため、二次電池の内部においてガスが蓄積される。この場合には、内圧の上昇に応じて、内部環境E1から外部環境E2に向かって突出するように外装部材40が変形するため、二次電池が膨れてしまう。
【0167】
これに対して、外装部材40に窓部42が設けられている場合には、上記したように、二次電池の内部においてガスが発生しても、窓部42の排気機能を利用してガスが外部に放出されるため、その二次電池の膨れが抑制される。しかも、外装部材(外装本体41)に開口部41Kが設けられていると、その開口部41Kを通じて二次電池の内部に水が侵入することが懸念されるが、窓部42の防水機能を利用して水の侵入が抑制されるため、その水に起因するサイクル特性などの低下も抑制される。よって、安全弁などの機械、器具および装置などの設備を用いずに、窓部42を利用して二次電池の膨れが抑制されると共にサイクル特性などの低下が抑制されるため、優れた電池特性が得られる。
【0168】
特に、窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)が非多孔質PFA、非多孔質FEPおよび非多孔質ETFEなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいれば、窓部42が水の侵入をより抑制しやすくなると共に、その窓部42がガスをより放出しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0169】
また、外装本体41に開口部41Kが設けられており、窓機能材料を含む窓フィルム43が開口部41Kを被覆することにより窓部42が形成されていれば、その開口部41K(窓フィルム43)を通じてガスが十分に放出されるため、より高い効果を得ることができる。
【0170】
この場合には、窓フィルム43が開口部41Kの面積よりも大きな面積を有しており、その窓フィルム43が外装本体41に接着剤44を介して貼り付けられていれば、その外装本体41に窓フィルム43が強固に固定される。よって、窓部42の防水機能および排気機能が安定に発揮されるため、さらに高い効果を得ることができる。
【0171】
また、窓フィルム43の厚さが10μm〜500μmであれば、その窓フィルム43の物理耐久性などを確保しつつ、十分な防水機能および十分な排気機能が得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0172】
<1−2.リチウム金属二次電池>
ここで説明する二次電池は、リチウム金属の析出溶解により負極34の容量が得られるラミネートフィルム型のリチウム金属二次電池である。この二次電池は、負極活物質層34Bがリチウム金属により形成されていることを除いて、上記したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
【0173】
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属が用いられているため、高いエネルギー密度が得られる。負極活物質層34Bは、組み立て時から既に存在してもよいが、組み立て時には存在しておらず、充電時において析出したリチウム金属により形成されてもよい。また、負極活物質層34Bを集電体として利用することにより、負極集電体34Aを省略してもよい。
【0174】
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極33からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して負極集電体34Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電時には、負極活物質層34Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって電解質層36中に溶出すると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して正極21に吸蔵される。
【0175】
このラミネートフィルム型のリチウム金属二次電池によれば、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されており、窓機能材料を含む窓部42(窓フィルム43)が外装部材40(外装本体41)に設けられている。よって、上記したリチウムイオン二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。リチウム金属二次電池に関する他の作用および効果は、リチウムイオン二次電池に関する作用および効果と同様である。
【0176】
<1−3.変形例>
本実施形態の二次電池の構成は、適宜、変更可能である。
【0177】
(変形例1)
具体的には、窓フィルム43は、例えば、接着剤44を用いない方法のうちのいずれか1種類または2種類以上を用いて外装本体41に接着されていてもよい。この接着剤44を用いない方法は、例えば、熱融着法および超音波溶接法などである。この場合においても、窓フィルム43が外装本体41に固定されるため、同様の効果を得ることができる。
【0178】
(変形例2)
また、例えば、
図2に対応する
図5に示したように、窪み部41Pのうちの上面41PTに代えて、側面41PSに窓部42が設けられていてもよい。開口部41Kの開口形状および開口面積などは、任意に設定可能であると共に、窓フィルム43の平面形状および面積などは、任意に設定可能である。ここでは、例えば、開口部41Kの開口形状および窓フィルム43の平面形状のそれぞれが略矩形(4つの角部が丸みを帯びた矩形)であると共に、窓フィルム43の面積が開口部41Kの開口面積よりも大きくなっている。この場合においても、窓部24が防水機能および排気機能を発揮することにより、同様の効果を得ることができる。
【0179】
(変形例3)
また、例えば、
図3に対応する
図6に示したように、外装本体41の内側(内部環境E1)に代えて、その外装本体41の外側(外部環境E2)に窓フィルム43が配置されていてもよい。この窓フィルム43は、例えば、接着剤44を介して外装本体41の外側面に接着されている。この場合においても、窓部24が防水機能および排気機能を発揮することにより、同様の効果を得ることができる。
【0180】
ただし、上記したように、窓フィルム43が外装本体41の外側に配置されていると、ガスの発生(内圧の上昇)に起因して窓フィルム43が剥離する可能性があると共に、その窓フィルム43が二次電池から脱落する可能性がある。よって、窓フィルム43が剥離および脱落することを抑制するためには、その窓フィルム43は外装本体41の内側(内部環境E1)に配置されていることが好ましい。
【0181】
(変形例4)
また、例えば、
図3に対応する
図7に示したように、窓フィルム43の上に保護層46が設けられていてもよい。この「窓フィルム43の上」とは、窓フィルム43の外側を意味している。
【0182】
保護層46は、主に、窓フィルム43の表面を物理的に保護する機能を果たす。この保護層46は、例えば、通気性を有する材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。通気性を有する材料の種類は、特に限定されないが、例えば、多孔質の樹脂、セラミックおよびメッシュフィルタなどである。多孔質の樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびゼオライトなどである。保護層46の厚さは、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0183】
保護層46が窓フィルム43を保護することができれば、その保護層46の大きさ(面積)は、特に限定されない。すなわち、保護層46の面積は、窓フィルム43の露出面積(開口部41Kに露出している窓フィルム43の面積)と同じでもよいし、窓フィルム43の露出面積より大きくてもよい。
【0184】
ここでは、保護層46は、例えば、窓フィルム43の露出面積よりも大きい面積を有しており、接着剤45を介して外装本体41に接着されている。この接着剤45は、例えば、窓フィルム43を利用した通気性を確保するために、開口部41Kを塞がないように設けられていることが好ましい。
図7では、例えば、保護層46が接着剤45を介して窓フィルム43に接着されないようにした場合を示している。接着剤45に関する詳細は、例えば、接着剤44に関する詳細と同様である。
【0185】
この場合には、保護層46により窓フィルム43が物理的に保護されるため、その窓フィルム43が外力に起因して変形、破損および剥離することは抑制される。しかも、通気性を有する材料は、ガスを通しやすい性質を有しているため、窓フィルム43の上に保護層46が設けられていても、その保護層46を経由してガスが外部に放出される。よって、窓部42の排気機能が担保されながら、窓フィルム43の物理耐久性が向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0186】
ここでは具体的に図示しないが、例えば、
図6に示したように、窓フィルム43が外装本体41の外側に配置されている場合において、その窓フィルム43の上に保護層46が設けられていてもよい。この保護層46は、例えば、接着剤45を介して外装本体41などに接着される。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0187】
<2.二次電池(第2実施形態)>
次に、第2実施形態の二次電池に関して説明する。以下では、第1実施形態の二次電池の構成要素を随時引用する。
【0188】
<2−1.リチウムイオン二次電池>
ここで説明する二次電池は、リチウムイオン二次電池である。この二次電池は、外装本体41に開口部41Kが設けられていないと共に、外装部材40が窓部42に代えて窓部47を有していることを除いて、第1実施形態の二次電池と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
【0189】
[構成]
図8は、本実施形態の二次電池の斜視構成(貼り合わせ後の状態)を表しており、
図1および
図2のそれぞれに対応している。ただし、
図8では、
図2と同様に、正極リード31および負極リード32のそれぞれの図示を省略している。
【0190】
図9は、
図8に示したC−C線に沿った外装部材40の断面構成を表している。
図10は、
図8に示したD−D線に沿った外装部材40の断面構成を表している。
【0191】
窓部47は、主に、窓部42と同様の機能(防水機能および排気機能)を果たす。この窓部47は、例えば、
図8に示したように、外装本体41のうちの非接着領域41Xに代えて接着領域41Yに設けられており、窓フィルム43に代えて窓フィルム48を含んでいる。
【0192】
具体的には、例えば、外装部41A,41Bにより窓フィルム48が挟まれた状態において、その外装部41A,41Bが互いに接着されることにより、窓部47が形成されている。すなわち、窓部47は、例えば、窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)を含むと共に外装部41A,41Bの間に介在する窓フィルム48を含んでいる。
図8では、窓部47(窓フィルム48)を識別しやすくするために、その窓部47に網掛けを施している。
【0193】
この窓部47は、
図9および
図10に示したように、内部環境E1および外部環境E2のそれぞれに露出している。外装部材40に窓部47が設けられているのは、外装部材40に窓部42が設けられている場合と同様の理由による。すなわち、窓部47の防水機能および排気機能を利用して、安全弁などの機械、器具および装置などの設備を用いずに、サイクル特性などの低下が抑制されると共に、二次電池の膨れが抑制される。
【0194】
上記した防水機能および排気機能を発揮することができれば、窓部47の数、位置および構成は、特に限定されない。
【0195】
窓部47の数は、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。ここでは、窓部47の数は、例えば、1個である。
【0196】
また、窓部47の位置は、接着領域41Yのうちのいずれかの位置であれば、任意でよい。ここでは、窓部47は、例えば、外装部材40の内部から外部に正極リード31および負極リード32のそれぞれが導入される側における接着領域41Yの一部に設けられている。
【0197】
窓フィルム48は、例えば、窓フィルム43と同様に、窓機能材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。窓フィルム48の平面形状は、特に限定されないため、例えば、円形でもよいし、楕円形でもよいし、矩形でもよいし、それら以外の形状でもよい。ここでは、窓フィルム48の平面形状は、例えば、矩形である。
【0198】
この窓フィルム48は、例えば、接着剤49を介して外装本体41(外装部41A)に接着されていると共に、同様に接着剤49を介して外装本体41(外装部41B)に接着されている。接着剤49に関する詳細は、例えば、接着剤44に関する詳細と同様である。
【0199】
なお、窓フィルム48が存在していない領域では、上記したように、外装部41Aの接着層と外層部41Bの接着層とが互いに接着されている。これにより、外装部材40は封止されている。
【0200】
窓フィルム48の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm〜500μmであり、好ましくは10μm〜200μmである。窓フィルム43の厚さを規定した場合と同様に、窓フィルム48の物理耐久性などを確保しつつ、十分な防水機能および十分な排気機能が得られるからである。
【0201】
なお、接着剤49と窓フィルム48との接着性が十分でない場合には、例えば、上記した接着剤44と窓フィルム43との接着性が十分でない場合と同様に、その接着性を向上させるために、窓フィルム48の表面に前処理のうちのいずれか1種類または2種類以上が施されていてもよい。前処理に関する詳細は、例えば、上記した通りである。
【0202】
もちろん、接着剤49と外装本体41との接着性が十分でない場合には、例えば、上記した接着剤44と外装本体41との接着性が十分でない場合と同様に、その接着性を向上させるために、外装本体41の表面に前処理のうちのいずれか1種類または2種類以上が施されていてもよい。
【0203】
[製造方法]
この二次電池は、例えば、接着剤49を用いて外装本体41(外装部41A,41B)に窓フィルム48を貼り付けることにより、窓部48が設けられた外装部材40を用いることを除いて、第1実施形態の二次電池と同様の手順により製造される。
【0204】
[作用および効果]
このラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池によれば、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されており、窓機能材料を含む窓部47(窓フィルム48)が外装部材40に設けられている。この場合には、第1実施形態の二次電池と同様の理由により、窓フィルム48の防水機能を利用して、水に起因するサイクル特性などの低下が抑制されると共に、その窓フィルム48の排気機能を利用して、二次電池の膨れが抑制される。よって、優れた電池特性を得ることができる。
【0205】
特に、窓機能材料を含む窓フィルム48を介して外装部41A,41Bが互いに接着されることにより窓部48が形成されていれば、外装本体41に開口部などを設けなくても窓部48が形成されるため、より高い効果を得ることができる。
【0206】
また、窓フィルム48の厚さが10μm〜500μmであれば、その窓フィルム48の物理耐久性などを確保しつつ、十分な防水機能および十分な排気機能が得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0207】
本実施形態の二次電池に関する他の作用および効果は、第1実施形態の二次電池に関する作用および効果と同様である。
【0208】
<2−2.リチウム金属二次電池>
ここで説明する二次電池は、ラミネートフィルム型のリチウム金属二次電池である。この二次電池は、負極活物質としてリチウム金属が用いられていることを除いて、上記したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
【0209】
このラミネートフィルム型のリチウム金属二次電池によれば、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されており、窓機能材料を含む窓部47(窓フィルム48)が外装部材40に設けられている。よって、上記したリチウムイオン二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。リチウム金属二次電池に関する他の作用および効果は、リチウムイオン二次電池に関する作用および効果と同様である。
【0210】
<2−3.変形例>
本実施形態の二次電池の構成は、適宜、変更可能である。具体的には、窓フィルム48は、例えば、窓フィルム43と同様に、接着剤49を用いない方法のうちのいずれか1種類または2種類以上を用いて外装本体41に貼り付けられていてもよい。この接着剤49を用いない方法に関する詳細は、例えば、上記した通りである。この場合においても、窓フィルム48が外装本体41に固定されるため、同様の効果を得ることができる。
【0211】
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例に関して説明する。
【0212】
二次電池の用途は、その二次電池を駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして利用可能である機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、例えば、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、必要に応じて主電源から切り替えられる電源でもよい。二次電池を補助電源として用いる場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
【0213】
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、二次電池の用途は、上記以外の用途でもよい。
【0214】
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器などに適用されることが有効である。これらの用途では優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることにより、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源である。この電池パックは、後述するように、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用することが可能である。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
【0215】
ここで、二次電池のいくつかの適用例に関して具体的に説明する。なお、以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、その適用例の構成は、適宜変更可能である。
【0216】
<3−1.電池パック(単電池)>
図11は、単電池を用いた電池パックの斜視構成を表している。
図12は、
図11に示した電池パックのブロック構成を表している。なお、
図11では、電池パックが分解された状態を示している。
【0217】
ここで説明する電池パックは、1つの本技術の二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。この電池パックは、例えば、
図11に示したように、ラミネートフィルム型の二次電池である電源111と、その電源111に接続される回路基板116とを備えている。この電源111には、正極リード112および負極リード113が取り付けられている。
【0218】
電源111の両側面には、一対の粘着テープ118,119が貼り付けられている。回路基板116には、保護回路(PCM:Protection・Circuit・Module )が形成されている。この回路基板116は、タブ114を介して正極112に接続されていると共に、タブ115を介して負極リード113に接続されている。また、回路基板116は、外部接続用のコネクタ付きリード線117に接続されている。なお、回路基板116が電源111に接続された状態において、その回路基板116は、ラベル120および絶縁シート121により保護されている。このラベル120が貼り付けられることにより、回路基板116および絶縁シート121などは固定されている。
【0219】
また、電池パックは、例えば、
図12に示したように、電源111と、回路基板116とを備えている。回路基板116は、例えば、制御部121と、スイッチ部122と、PTC素子123と、温度検出部124とを備えている。電源111は、正極端子125および負極端子127を介して外部と接続されることが可能であるため、その電源111は、正極端子125および負極端子127を介して充放電される。温度検出部124は、温度検出端子(いわゆるT端子)126を用いて温度を検出する。
【0220】
制御部121は、電池パック全体の動作(電源111の使用状態を含む)を制御する。この制御部121は、例えば、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでいる。
【0221】
この制御部121は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることにより、電源111の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、充電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることにより、充電電流を遮断する。
【0222】
一方、制御部121は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることにより、電源111の電流経路に放電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、放電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることにより、放電電流を遮断する。
【0223】
なお、過充電検出電圧は、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
【0224】
スイッチ部122は、制御部121の指示に応じて、電源111の使用状態、すなわち電源111と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部122は、例えば、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。なお、充放電電流は、例えば、スイッチ部122のON抵抗に基づいて検出される。
【0225】
温度検出部124は、電源111の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部121に出力する。この温度検出部124は、例えば、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。なお、温度検出部124により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部121が充放電制御を行う場合、残容量の算出時において制御部121が補正処理を行う場合などに用いられる。
【0226】
なお、回路基板116は、PTC素子123を備えていなくてもよい。この場合には、別途、回路基板116にPTC素子が付設されていてもよい。
【0227】
<3−2.電池パック(組電池)>
図13は、組電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。
【0228】
この電池パックは、例えば、筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。この筐体60は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。
【0229】
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御する。この制御部61は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源62は、2種類以上の本技術の二次電池を含む組電池であり、その2種類以上の二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
【0230】
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて、電源62の使用状態、すなわち電源62と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
【0231】
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定すると共に、その電流の測定結果を制御部61に出力する。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度の測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合、残容量の算出時において制御部61が補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定すると共に、アナログ−デジタル変換された電圧の測定結果を制御部61に供給する。
【0232】
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66のそれぞれから入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御する。
【0233】
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に充電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れると、充電電流を遮断する。
【0234】
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れると、放電電流を遮断する。
【0235】
なお、過充電検出電圧は、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
【0236】
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどを含んでいる。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値、製造工程段階において測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握できる。
【0237】
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度検出素子69は、例えば、サーミスタなどを含んでいる。
【0238】
正極端子71および負極端子72のそれぞれは、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62は、正極端子71および負極端子72を介して充放電される。
【0239】
<3−3.電動車両>
図14は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。
【0240】
この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
【0241】
この電動車両は、例えば、エンジン75およびモータ77のうちのいずれか一方を駆動源として用いて走行することが可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合には、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して、エンジン75の駆動力(回転力)が前輪86および後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力が発電機79に伝達されるため、その回転力を利用して発電機79が交流電力を発生すると共に、その交流電力がインバータ83を介して直流電力に変換されるため、その直流電力が電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合には、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換されるため、その交流電力を利用してモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86および後輪88に伝達される。
【0242】
なお、制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達されるため、その回転力を利用してモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換されるため、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
【0243】
制御部74は、電動車両全体の動作を制御する。この制御部74は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2種類以上の本技術の二次電池を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続されていると共に、その外部電源から電力供給を受けることにより、電力を蓄積させてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御すると共に、スロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0244】
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合を例に挙げたが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0245】
<3−4.電力貯蔵システム>
図15は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。
【0246】
この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅および商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
【0247】
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続されることが可能である。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続されることが可能である。
【0248】
なお、電気機器94は、例えば、1または2種類以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビおよび給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機および風力発電機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクおよびハイブリッド自動車などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所および風力発電所などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0249】
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御する。この制御部90は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2種類以上の本技術の二次電池を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信することが可能である。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、外部と通信しながら、家屋89における電力の需要と供給とのバランスを制御することにより、高効率で安定したエネルギー供給を可能とする。
【0250】
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて電気機器94および電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、その電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
【0251】
電源91に蓄積された電力は、必要に応じて使用することが可能である。このため、例えば、電気使用料が安い深夜において、集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、電気使用料が高い日中において、その電源91に蓄積された電力を用いることができる。
【0252】
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
【0253】
<3−5.電動工具>
図16は、電動工具のブロック構成を表している。
【0254】
ここで説明する電動工具は、例えば、電動ドリルである。この電動工具は、例えば、工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
【0255】
工具本体98は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御する。この制御部99は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2種類以上の本技術の二次電池を含んでいる。この制御部99は、動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給する。
【実施例】
【0256】
本技術の実施例に関して説明する。
【0257】
(実験例1−1〜1−15)
以下の手順により、外装本体41のうちの非接着領域41Xに窓部42(開口部41Kおよび窓フィルム43)を設けることにより、
図1〜
図5および
図7に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0258】
正極33を作製する場合には、最初に、正極活物質(LiNi
0.5 Co
0.2 Mn
0.3 O
2 )97質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)2質量部と、正極導電剤(カーボンブラック)1質量部とを混合することにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体33A(12μm厚の帯状アルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層33Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層33Bを圧縮成型した。
【0259】
負極34を作製する場合には、最初に、負極活物質(粒状黒鉛粉末,メジアン径D50=20μm)95質量部と、負極結着剤(スチレンブタジエンゴム共重合体のアクリル変性体)1.5質量部と、負極結着剤(微粒子ポリフッ化ビニリデン,メジアン径D50=0.3μm)2質量部と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)1.5質量部とを混合することにより、負極合剤とした。続いて、純水に負極合剤を投入したのち、その純水を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体34A(15μm厚の帯状銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層34Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層34Bを圧縮成型した。
【0260】
電解液を調製する場合には、溶媒(炭酸エチレン、炭酸エチルメチルおよび炭酸ビニレン)に電解質塩(LiPF
6 )を加えたのち、その溶媒を撹拌することにより、その溶媒中において電解質塩を溶解させた。この場合には、溶媒の混合比(質量比)を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル:炭酸ビニレン=30:69:1とした。また、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/dm
3 (=1mol/l)とした。
【0261】
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体33Aにアルミニウム製の正極リード31を溶接すると共に、負極集電体34Aに銅製の負極リード32を溶接した。
【0262】
続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に高分子化合物(ポリフッ化ビニリデン)を溶解させることにより、その有機溶剤中において高分子化合物が溶解された溶液を得たのち、基材層(12μm厚の微多孔性ポリエチレンフィルム)の両面に溶液を塗布した。続いて、基材層を水浴中に浸漬させることにより、その溶液を相分離させたのち、その基材層を温風乾燥した。これにより、基材層の両面に高分子化合物層が形成されたため、セパレータ35が得られた。
【0263】
続いて、セパレータ35を介して正極33および負極34を積層させることにより、積層体とした。続いて、積層体を長手方向に巻回させたのち、その積層体の最外周部に保護テープ37を貼り付けることにより、巻回電極体30を作製した。
【0264】
続いて、巻回電極体30を挟むようにフィルム状の外装部材40を折り畳んだのち、その外装部材40のうちの3辺の外周縁部同士を熱融着した。この外装部材40は、25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが外側からこの順に積層されたアルミラミネートフィルムである。外装部材40を熱融着する場合には、正極リード31と外装部材40との間に密着フィルム50を挿入すると共に、負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム50を挿入した。
【0265】
この場合には、外装本体41のうちの非接着領域41Xに設けられた開口部41Kを被覆するように、窓機能材料を含む窓フィルム43を接着剤44を介して外装本体41に貼り付けることにより、窓部42が設けられた外装部材40を用いた。また、窓フィルム43に接着剤46を介して保護層46を貼り付けることにより、その保護層46が設けられた外装部材40を用いた。
【0266】
なお、比較のために、窓部42が設けられていない外装部材40を用いた。また、比較のために、窓フィルム43が窓機能材料以外の材料を含んでいる外装部材40を用いた。
【0267】
窓部42の有無、開口部41Kの構成(位置および寸法(cm×cm))、窓フィルム43の構成(材質および厚さ(μm))および保護層46の構成(有無および材質)は、表1に示した通りである。
【0268】
窓フィルム43の材質は、以下の通りである。窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)としては、非多孔質PFA、非多孔質FEPおよび非多孔質ETFEを用いた。窓機能材料以外の材料としては、多孔質PFA、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。
【0269】
保護層46の形成材料(多孔質の樹脂)としては、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた。
【0270】
窓機能材料を含む窓フィルム43を接着剤44を介して外装本体41に貼り付ける場合には、最初に、窓フィルム43の表面に前処理を施した。この場合には、窓フィルム43の表面に前処理剤(株式会社テクノス製のフッ素樹脂表面処理剤フロロボンダーE)を吹き付けることにより、その窓フィルム43の表面を改質処理(いわゆるフロロボンダー処理)した。続いて、外装本体41の表面に前処理を施した。この場合には、外装本体41の表面に下塗り剤(セメダイン株式会社製のPPXプライマー)を塗布した。最後に、接着剤44(セメダイン株式会社製のPPX)を介して、窓フィルム43の前処理面と外装本体41の前処理面とを接着させた。
【0271】
窓機能材料以外の材料を含む窓フィルム43を接着剤44を介して外装本体41に貼り付ける場合には、窓機能材料を含む窓フィルム43を接着剤44を介して外装本体41に貼り付けた場合と同様の手順を用いた。
【0272】
最後に、外装部材40の内部に電解液を注入することにより、その電解液をセパレータ35に含浸させたのち、減圧環境中において外装部材40の残りの1辺の外周縁部同士を熱融着した。これにより、外装部材40の内部に巻回電極体30が封入されたため、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池(電池サイズ=80mm×60mm×40mm,電池容量=3000mAh)が完成した。
【0273】
二次電池の電池特性を評価するために、その二次電池の容量維持特性、膨れ特性、物理耐久特性および接着特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
【0274】
容量維持特性を調べる場合には、最初に、恒温槽を用いて、高温環境中(温度=60℃,湿度=90%)中において二次電池を保存(保存期間=7日間)した。続いて、恒温槽から二次電池を取り出したのち、その二次電池を充放電させることにより、放電容量(mAh)を測定した。最後に、容量維持率(%)=(放電容量/電池容量(=3000mAr))×100を算出した。
【0275】
なお、充電時には、0.2Aの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電した。放電時には、0.6Aの電流で電圧が2.5Vに到達するまで定電流放電した。
【0276】
膨れ特性を調べる場合には、最初に、常温環境中(温度=23℃)において二次電池を充電させたのち、マイクロメータを用いて充電状態の二次電池の厚さ(保存前の厚さ)を測定した。続いて、恒温槽内の高温環境中(温度=60℃,湿度=90%)において充電状態の二次電池を保存(保存期間=7日間)したのち、マイクロメータを用いて充電状態の二次電池の厚さ(保存後の厚さ)を測定した。最後に、厚さ変化率(%)=[(保存後の厚さ−保存前の厚さ)/保存前の厚さ]×100を算出した。
【0277】
なお、充電時には、1Aの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電した。
【0278】
物理耐久特性を調べる場合には、JIS K5400−5−4に準拠した引っ掻き試験を行うことにより、窓部42の最表面の擦過状態を目視で確認した。この結果、窓部42の最表面に傷が発生しなかった場合を「A」、窓部42の最表面に傷が発生した場合を「B」、窓部42の最表面に傷が発生しただけでなく、その窓部42が破損した場合を「C」とそれぞれ評価した。なお、窓部42の最表面とは、保護層46が設けられていない場合には窓フィルム43の表面であると共に、保護層46が設けられている場合には保護層46の表面である。
【0279】
接着特性を調べる場合には、JIS K7127:1999に準拠した接着試験を行うことにより、窓フィルム43の接着強度を確認した。この結果、窓フィルム43が剥離しなかった場合を「A」、窓フィルム43が剥離した場合を「C」とそれぞれ評価した。
【0280】
【表1】
【0281】
窓部42を設けなかった場合(実験例1−12)には、高い容量維持率は得られたが、厚さ変化率が増大した。この結果は、二次電池の内部において、電解液の分解反応に起因するガスが発生したため、内圧の上昇に応じて二次電池が膨れたことを表している。以下では、窓部42を設けなかった場合の結果を比較基準とする。
【0282】
これに対して、窓部42を設けた場合には、窓フィルム43の材質に応じて容量維持率および厚さ変化率のそれぞれが大きく変動した。
【0283】
詳細には、窓フィルム43の形成材料として窓機能材料以外の材料(多孔質PFAおよびPP)を用いた場合(実験例1−13,1−14)には、厚さ変化率は著しく減少したが、容量維持率も大幅に減少した。また、窓機能材料以外の材料(PET)を用いた場合(実験例1−15)には、高い容量維持率は維持されたが、厚さ変化率がほぼ同等であった。
【0284】
しかしながら、窓フィルム43の形成材料として窓機能材料(非多孔質PFA、非多孔質FEPおよび非多孔質ETFE)を用いた場合(実験例1−1〜1−11)には、開口部41Kの位置、窓機能材料の種類および窓フィルム43の厚さなどに依存せずに、容量維持率がほぼ維持されたまま、厚さ変化率が著しく減少した。この結果は、窓部42(窓機能材料を含む窓フィルム43)を用いると、二次電池の内部において発生したガスが外部に放出されるため、その二次電池が膨れにくくなると共に、二次電池の内部に水が侵入しにくくなるため、放電容量が低下しにくくなることを表している。
【0285】
しかも、窓機能材料を用いた場合(実験例1−1〜1−11)には、その窓機能材料以外の材料を用いた場合(実験例1−13〜1−15)と同程度の擦過状態が得られると共に、同程度の接着強度が得られた。すなわち、窓フィルム43の形成材料として窓機能材料を用いても、擦過状態および接着強度のそれぞれが悪化することはなかった。
【0286】
特に、窓機能材料を用いた場合(実験例1−1〜1−11)には、以下の傾向が得られた。第1に、窓フィルム43の厚さが10μm〜500μmであると、厚さ変化率が十分に減少した。この場合には、窓フィルム43の厚さが200μm以下であると、厚さ変化率がより減少した。第2に、保護層46を用いると、窓部42の最表面の擦過状態が著しく改善された。
【0287】
(実験例2−1〜2−4)
表2に示したように、外装本体41のうちの非接着領域41Xに代えて接着領域41Yに窓部47(窓フィルム48)を設けたことを除いて、実験例1−1〜1−15と同様の手順により、
図8〜
図10に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製したと共に、その二次電池の電池特性を評価した。
【0288】
窓機能材料を含む窓フィルム48を接着剤49を介して外装本体41(外装部41A,41B)に貼り付ける場合には、最初に、窓フィルム48の両面に前処理を施した。この場合には、窓フィルム48の両面に前処理剤(株式会社テクノス製のフッ素樹脂表面処理剤フロロボンダーE)を吹き付けることにより、その窓フィルム48の両面を改質処理(フロロボンダー処理)した。続いて、外装部41Aの表面および外装部41Bの表面のそれぞれに前処理を施した。この場合には、外装部41Aの表面に下塗り剤(セメダイン株式会社製のPPXプライマー)を塗布すると共に、外装部41Bに表面に同様の下塗り剤を塗布した。最後に、接着剤49(セメダイン株式会社製のPPX)を介して、窓フィルム48の前処理面と外装部41Aの前処理面とを互いに接着させると共に、同様の接着剤49を介して窓フィルム48の前処理面と外装部41Bの前処理面とを互いに接着させた。
【0289】
【表2】
【0290】
接着領域41Yに窓部47を設けた場合(表2)においても、非接着領域41Xに窓部42を設けた場合(表1)と同様の結果が得られた。すなわち、窓部47を設けたと共に、窓フィルム48の形成材料として窓機能材料を用いた場合(実験例2−1〜2−41)には、窓部47を設けなかった場合(実験例1−12)および窓フィルム48の形成材料として窓機能材料以外の材料を用いた場合(実験例1−13〜1−15)と比較して、高い容量維持率が得られると共に、厚さ変化率が著しく減少した。もちろん、窓部47を設けたと共に窓機能材料を用いた場合(実験例2−1〜2−4)には、窓部47を設けなかった場合(実験例1−12)および窓機能材料以外の材料を用いた場合(実験例1−13〜1−15)のそれぞれと同等の擦過状態および接着強度も得られた。
【0291】
表1および表2に示した結果から、フィルム状の外装部材の内部に巻回電極体が収納されており、その外装部材に窓機能材料(非多孔質の溶融フッ素樹脂)を含む窓部が設けられていると、その外装部材の物理耐久特性および接着特性を担保しながら、二次電池の容量維持特性および膨れ特性が改善された。よって、二次電池において優れた電池特性が得られた。
【0292】
以上、いくつかの実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は、一実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0293】
具体的には、例えば、電池素子が巻回構造を有する場合に関して説明したが、本技術の二次電池において電池素子が有する構造は、特に限定されない。具体的には、電池素子は、例えば、積層構造などの他の構造を有していてもよい。
【0294】
また、リチウムの吸蔵放出により負極の容量が得られる二次電池(リチウムイオン二次電池)およびリチウムの析出溶解により負極の容量が得られる二次電池(リチウム金属二次電池)に関して説明したが、本技術の二次電池において負極の容量が得られる原理は、特に限定されない。具体的には、例えば、リチウムを吸蔵放出可能な負極材料の容量を正極の容量よりも小さくすることにより、二次電池は、リチウムの吸蔵放出による容量とリチウムの析出溶解による容量との和により負極の容量が得られる二次電池などでもよい。
【0295】
また、電極反応物質としてリチウムを用いる場合に関して説明したが、これに限られない。電極反応物質は、例えば、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素でもよいし、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素でもよいし、アルミニウム(Al)などの他の軽金属でもよい。また、電極反応物質は、上記した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む合金でもよい。
【0296】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0297】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極、負極および電解液を含む電池素子と、
前記電池素子を収納すると共に、非多孔質の溶融フッ素樹脂を含む窓部を有するフィルム状の外装部材と
を備えた、二次電池。
(2)
前記非多孔質の溶融フッ素樹脂は、非多孔質テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、非多孔質テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)および非多孔質テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記外装部材は、開口部を有し、
前記非多孔質の溶融フッ素樹脂を含むフィルム状の窓部材が少なくとも前記開口部を被覆することにより、前記窓部が形成されている、
上記(1)または(2)に記載の二次電池。
(4)
前記窓部材は、前記開口部の面積よりも大きな面積を有していると共に、前記外装部材に接着剤を介して貼り付けられている、
上記(3)に記載の二次電池。
(5)
前記窓部材の上に、通気性を有する材料を含む保護層が設けられている、
上記(3)または(4)に記載の二次電池。
(6)
前記窓部材の厚さは、10μm以上500μm以下である、
上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(7)
前記外装部材は、
前記電池素子を一方から被覆する第1外装部材と、
前記電池素子を他方から被覆する第2外装部材と
を含み、
前記非多孔質の溶融フッ素樹脂を含むフィルム状の窓部材を介して、前記第1外装部材の一部と前記第2外装部材の一部とが互いに接着されることにより、前記窓部が形成されている、
上記(1)または(2)に記載の二次電池。
(8)
前記窓部材は、接着剤を介して前記第1外装部材および前記第2外装部材のそれぞれに貼り付けられている、
上記(7)に記載の二次電池。
(9)
前記窓部材の厚さは、10μm以上500μm以下である、
上記(7)または(8)に記載の二次電池。
(10)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池。
(11)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と、
前記制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(12)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
前記駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(13)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(14)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(15)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。
【0298】
本出願は、日本国特許庁において2016年12月16日に出願された日本特許出願番号第2016−244512を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0299】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲の趣旨やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。