(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の保護具は、横方向の衝撃荷重に対してステムの曲げ変形を防止するもので、ステムに軸方向に作用する衝撃的な荷重が作用した場合のバルブ機構の破損については記載されていない。
バルブ機構は、マウンティングカップの缶内部側に取り付けられたハウジング内に設けられ、ハウジング内に挿入されるステムの端部を、スプリングによって缶の外側に突出する方向に付勢することによって、常時閉弁状態に保持されている。ステムを缶内方に押し込む方向に衝撃が作用すると、ステムの端部がバルブ機構のハウジングに噛み込んだり、スプリングが損傷し、閉弁方向に戻らなくなって、内容物が噴出し、周囲を汚損してしまう。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的は、ステムに対して軸方向に過大な衝撃が作用した際のバルブ機構の破損を防止し得る安全性の高いエアゾール容器
およびエアゾール容器のアクチュエー
タを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ステムにアクチュエータが取り付けられるエアゾール容器において、前記ステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する安全機構部が設けられ
、
前記安全機構部は、互いに嵌合する連結部であって、過大な外力によって嵌合が外れる構成となっていることを特徴とする。
本発明によれば、安全機構部を設けることにより、高所からの落下時等において、ステムを介して内部のバルブ機構に作用する衝撃を緩和することができ、バルブ機構の破損を防止することができる。
連結部は、構造部分に継ぎ目を設けて連結させればよく、生産が容易である。また、連結部が分離するだけなので、連結すれば繰り返し使用可能である。また、特殊な材料は不要で、安価で簡単な構成でバルブ機構への衝撃を回避することができる。
本発明は、次のように構成することができる。
1.容器胴部と蓋体とを固定するクリンチ部を覆う保護部材を有する。
保護部材を設けることで、衝撃によってクリンチ部の損傷による内容物の漏洩についても防止することができる。
2.前記アクチュエータは、前記ステムに嵌合する嵌合部から張り出すフランジ部を有し、フランジ部に前記安全機構部が設けられている。
フランジ部に設けることで、安価に製作でき、確実にバルブ機構への衝撃を緩和することができる。
【0006】
また、本発明のアクチュエータは、
エアゾール容器のステムに取り付けられるアクチュエータであって、
前記アクチュエータからステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する安全機構部が設けられ、
前記安全機構部は、互いに嵌合する連結部であって、過大な外力によって嵌合が外れる構成となっていることを特徴とする。
本発明の他の発明は、
ステムにアクチュエータが取り付けられるエアゾール容器において、
前記ステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する安全機構部が設けられ、
前記安全機構部は、過大な外力により破壊される脆弱部であることを特徴とする。
脆弱部は、安価に製作でき、確実にバルブ機構への衝撃を緩和することができる。
この発明は、次のように構成することができる。
1.前記アクチュエータは、一端がステムに固定される固定筒部を備え、
前記脆弱部は、前記固定筒部の内周に内向きに突出する係合爪によって構成され、該係合爪は、通常は固定筒部の先端面に係合し、過大な外力が作用すると、破壊される構成となっている。
2.前記アクチュエータは、一端がステムに固定される固定筒部と、該固定筒部の他端に設けられるフランジ部と、を備え、
前記脆弱部は、前記フランジ部に設けられたフランジ脆弱部によって構成され、過大な外力が作用した場合には、フランジ脆弱部が破壊される構成となっている。
また、他の発明は、
ステムにアクチュエータが取り付けられるエアゾール容器において、
前記ステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する安全機構部が設けられ、
前記アクチュエータは、一端がステムに固定される固定筒部を備え、
前記安全機構部は、過大な外力によって接触面が滑って力の伝達が緩和される摩擦接触部であり、
該摩擦接触部は前記固定筒部の内周面の一部を局部的に縮径した小径部によって構成されることを特徴とする。
摩擦接触部については、接触面圧あるいは接触面の摩擦係数等の性状によって摩擦力を調整することででき、安価に製作でき、確実にバルブ機構への衝撃を緩和することができる。
また、他の発明は、
ステムにアクチュエータが取り付けられるエアゾール容器において、
前記ステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防
止する安全機構部が設けられ、
前記アクチュエータは、一端がステムに固定される固定筒部と、該固定筒部の他端に設けられるフランジ部と、を備え、
前記安全機構部は、過大な外力による変形によって、力の伝達が緩和される変形部であり、
該変形部は前記フランジ部に設けられたフランジ変形部であることを特徴とする。
変形部については、構造部分の厚さ等によって剛性を変えることができるので、アクチュエータの構造に変更が生じず、製作が容易で、また、確実にバルブ機構への衝撃を緩和することができる。
また、他の発明は、
ステムにアクチュエータが取り付けられるエアゾール容器において、
前記ステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する安全機構部が設けられ、
前記安全機構部は、前記ステムのストロークを規制するストッパによって力の伝達を遮断する構成で、
前記ストッパは、
容器本体とマウンティングカップとを固定するクリンチ部を覆う保護部材であり、
該保護部材は、中央にアクチュエータの固定筒部が通る穴を有し、前記マウンティングカップ、前記クリンチ部及び前記容器本体の肩部を覆うワッシャ状の天板部と、前記天板部の内径端部から前記マウンティングカップ側に延びる内筒部と、前記天板部の外径端部から前記容器本体の肩部に向かって延びて前記クリンチ部を側方から覆う外筒部とを有し、
前記内筒部のマウンティングカップ側の端部には、前記マウンティングカップの中央突出部の中央端壁の外周角部に係合する係合段部が設けられ、
一方、前記天板部の前記クリンチ部と対向する対向面には、前記クリンチ部12の外周側に弾性的に係合する円筒状の係合筒部と、前記クリンチ部の頂部に当接する当接筒部とが設けられることを特徴とする。
ストッパ機構は、ステムのストロークを規制するだけなので、特別の構成が不要で信頼性が高い。
また、他の発明は、
ステムにアクチュエータが取り付けられるエアゾール容器において、
前記ステムに外力が伝達される経路の一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過し前記エアゾール容器のバルブ機構を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する安全機構部が設けられ、
前記安全機構部は、前記ステムのストロークを規制するストッパによって力の伝達を遮断する構成で、
前記ストッパは、
アクチュエータとマウンティングカップの中央突出部の間に装着される厚肉円筒形状の部材で、中央にアクチュエータの固定筒部が挿通される貫通孔を有し、一端がマウンティングカップの中央
突出部の角部に係合し、外力作用時に、アクチュエータの継手部材のフランジ部が、ストッパに当接してステムのストロークを規制する構成で、
前記ストッパの外径はマウンティングカップの中央突出部の径より大きく、その上端面が継手部材のフランジ部と面接触することを特徴とする。
ストッパ機構は、ステムのストロークを規制するだけなので、特別の構成が不要で信頼性が高
い。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、安全機構部を設けることにより、高所からの落下時等において、ステムに作用する衝撃を緩和することができ、バルブ機構部の破損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態1に係るエアゾール容器を概念的に示すもので、
図1(A)は閉弁状態、
図1(B)は開弁状態を示している。
エアゾール容器1の全体構成は、内容物が収容される容器本体10と、マウンティングカップ11と、マウンティングカップ11に取り付けられるバルブ機構2と、マウンティングカップ11から突出し、バルブ機構2を開弁操作すると共に流路が設けられたステム3と、ステム3に取り付けられるアクチュエータ4と、容器本体10とマウンティングカップ11とを固定するクリンチ部12を覆う保護部材8と、を備えている。本実施形態1は、アクチュエータ4からステムに至る外力が伝達される経路Rの一部に、内容物の吐出操作に必要な力を超過しバルブ機構2を破損し得る過大な外力に対して、バルブ機構の破損を防止する方向に力の伝達を緩和する安全機構部として
脆弱部7を設けたものである。
エアゾール容器1は、内部に充填された液化ガスや圧縮ガス等の噴射剤のガス圧によって、内容物を噴出する容器であり、エアゾール容器1に封入される噴射剤と内容物の形態としては、原液が内袋に収容され、内袋外周と容器本体内周との間に噴射剤が収容された隔離型でもよいし、二相系、三相系の容器、ステムが下向きで使用される場合には、ディップチューブを有さない二相系、三相系の容器も適用可能である。本実施形態ではディップチューブ26を有する形態を例示している。
【0010】
[容器本体、マウンティングカップ]
容器本体10は有底円筒状で、その縮径された開口端部にマウンティングカップ11がクリンチ部12によって固定されている。容器本体10の底部は、胴部に底蓋を巻締固定してもよいし、一体成形された構成でもよい。
マウンティングカップ11は、容器本体10の開口部を覆うドーム状の蓋部13と、蓋部13の外周縁から立ち上がる固定筒部14と、蓋部13の中央部に突出する中央突出部15と、を備え、固定筒部14の端部がクリンチ部12によって容器本体10の開口端部に密封状態で固定されている。クリンチ部12は、容器本体10の縮径された開口端部と固定筒部14の開口端部をガスケット(不図示)を介して重ねて内側から外方に断面円形状に折り返して密封された部分である。
[バルブ機構]
バルブ機構2は、マウンティングカップ11に組付けられるもので、マウンティングカップ11の中央突出部15内周に一端が嵌合固定されるハウジング21によって弁室22が構成されている。ステム3は、中央突出部15の中央端壁15aに設けられた挿通孔に挿通され、弁室22側の端部には大径に膨出した弁体部31が設けられている。マウンティングカップ11の中央端壁15aとハウジング21の先端面21aとの間には、ワッシャ状のガスケット23によって密封され、さらに、ガスケット23の内周はステム3の外周に摺動自在に密封状態で接触している。
弁室22内の弁体部31は、ステム3の移動と共にガスケット23に対して軸方向に接離する構成で、ガスケット23の弁体接触部が弁座として機能する。弁室22内のステム3の弁体部31とハウジング21の底壁部21bとの間に、弁体部31を前記ガスケット23に向かって(閉弁方向)付勢する付勢手段としてのスプリング24が装着され、このスプリング24の付勢力とガス圧によって弁室内に流入している内容物から圧力によって、弁体部31がガスケット23の内周縁部に押し付けて閉弁状態に保持されている。
また、ステム3には、外部に露出する先端側開口部側から弁体部31の手前位置まで軸方向に所定寸法延びる吐出流路3aが設けられており、ステム3の側面の弁体部31の手前位置には、吐出流路3aに連通するステム孔3bが開口している。このステム孔3bは、閉弁状態ではガスケット23に閉塞されており、ステム3が弁室側に押し込まれ、弁体部31がガスケット23から離間すると、弁室22側に開き、吐出流路3aを通じて内容物が吐出される構成となっている。なお、ハウジング21の底壁部21bには、ニップル部25が突出しており、ニップル部25にディップチューブ26の一端が接続され、内容物はガス圧によって、ディップチューブ26を弁室22内に充填されている。
図示例のバルブ構成は例示的に示したにすぎず、バルブ構成としては、ステム3を動作させて開閉する種々の構成を適用することができる。
このバルブ機構2については、上記構成に限定されるものではなく、ステム3の押し込
みによって開弁するような種々の構成を適用することができる。
【0011】
[アクチュエータ]
アクチュエータ4は、内容物を放出させるための作動部のことであり、霧やジェット状に噴射させるためのボタンと、泡沫状に噴射させるためのスパウトが含まれる。本実施形態のアクチュエータ4は、アクチュエータ本体5と、アクチュエータ本体5に取り付けられる押し部材6とを備えている。
アクチュエータ本体5は、ステム3に固定される継手部材51と、継手部材51を介してステム3に接続されるノズル部52とを有している。
継手部材51は、一端がステム3に固定される固定筒部511と、固定筒部511の他端に設けられるフランジ部512と、を備え、固定筒部511の他端部にノズル部52の一端が接続されている。
押し部材6は押し板部61と、押し板部61の周縁からノズル部52を取り囲むように容器本体10側に延びるスカート部62と、を有し、スカート部62の端部が、継手部材51のフランジ部512の外径端部に固定されている。
また、ノズル部52は、L字状に曲がっており、吐出端が押し部材6のスカート部62から外方に露出しており、内容物をステム3の軸方向に対して押し部材6の側方から吐出するようになっている。
図示例では、ノズル部52がL字形状に曲がっているが、ノズル部52がステム3の軸
方向に延びる形態でもよい。ノズル部52にはオリフィスを設けてもよいし、内容物を霧状に吐出するか、直線状の噴流として吐出するか、内容物の吐出形態、吐出方向に応じて、各種形態を選択できる。
なお、本実施形態では、アクチュエータ―4は、アクチュエータ本体5に対して手動操作用の押し部材6が一体となった構成を例示しているが、このような一体構成に限定されるものではなく、別体構成となっていてもよい。たとえば、無人飛行体に搭載される場合のように自動吐出する場合には、駆動装置によって、アクチュエータ4を介してステム3が押し込まれるので、その場合には、押し部材6はアクチュエータ本体と別体構成となる。
【0012】
[
脆弱部7(安全機構部)]
脆弱部は、ステム3に外力が伝達される経路の一部に設けられる。
外力が伝達される経路は、アクチュエータ4への外力作用部から、ステム3に至るアクチュエータ4の構造部分を通じて伝達される経路で、外力作用部の位置及びアクチュエータの構成によって異なる。外力は、ステム3に作用する軸方向荷重成分を有する力を想定しており、本実施形態のアクチュエータ4の場合、押し部材6の押し板部61に外力が作用したとき、外力の伝達経路Rは、押し部材6の押し板部61、スカート部62、継手部材51のフランジ部512及び固定筒部511を介して、ステム3に至る経路である。
本実施形態1では、
脆弱部7は、継手部材51の固定筒部511とステム3の嵌合部に設けられている。
脆弱部7は、固定筒部511の内周に内向きに突出する係合爪71によって構成されている。この係合爪71は、周方向に間隔をあけて部分的に設けられるもので、通常は固定筒部511の先端面に係合し、押し部材6からの押し込み力をステム3に伝達している。そして、内容物の吐出操作に必要な力を超過しバルブ機構2を破損し得る過大な外力が作用すると、
破壊されバルブ機構2の破損を防止する方向に力の伝達を緩和して、バルブ機構2を保護する構成となっている。
【0013】
[保護部材]
保護部材8は、中央にステム3及びアクチュエータ4の固定筒部511が通る穴81aを有し、マウンティングカップ11、クリンチ部12及び容器本体10の肩部を覆うワッシャ状の天板部81と、天板部81の内径端部からマウンティングカップ側に延びる円筒
状の内筒部82と、天板部81の外径端部から容器本体10の肩部に向かって延びてクリンチ部12を側方から覆う外筒部83とを有している。内筒部82のマウンティングカップ11側の端部には、マウンティングカップ11の中央突出部15の中央端壁15aの外周角部に係合する係合段部82aが設けられている。
一方、天板部81のクリンチ部12と対向する対向面には、クリンチ部12の外周側に弾性的に係合する円筒状の係合筒部84と、クリンチ部12の頂部に当接する当接筒部85とが設けられている。当接筒部85の先端には、径方向外向きに所定量だけ張り出す張り出し片85aが設けられ、張り出し片85aがクリンチ部12の頂部に当接する。係合筒部84の下端部には、径方向内方に突出してクリンチ部12の下縁に係合する係合突起84aが設けられ、当接筒部85の先端部の張り出し片85aがクリンチ部12の頂部に当接した状態で、係合突起84aがクリンチ部12の下縁に係合し、保護部材8を容器に対して径方向および軸方向にガタツキなく固定される。
この保護部材8の天板部81及び内筒部82は、落下時等の衝撃に耐えられるように厚肉に構成され、クリンチ部12に対して衝撃を分散して伝達されるようになっている。一方、クリンチ部12に当接する当接筒部85及び張り出し片85aは、天板部81によって分散して伝達される荷重を緩和するように薄肉に設定されている。
また、外筒部83は、係合筒部84片及びクリンチ部12の外周側を保護し、さらに天板部81の剛性を高める機能を有する。外筒部83と係合筒部84の間には所定の隙間が形成され、外筒部に衝撃が加わって変形したとしても、係合筒部84に干渉しないようになっている。
保護部材8の装着は、アクチュエータ4を装着する前に行われる。装着作業は、クリンチ部12の頂部に係合筒部84の係合突起84aを当接させ、押し込むことによりなされる。押し込むことにより、係合筒部84が弾性変形して係合突起84aの内径が拡径してクリンチ部12を乗り越え、クリンチ部12の下縁に係合すると共に、当接筒部85の張り出し片85aがクリンチ部12の頂部に当接してクリンチ部12を軸方向に挟み込むようにして固定される。この状態で、内筒部82の係合段部82aもマウンティングカップ11の中央突出部15の中央端壁15aの角部に係合する。
【0014】
次に、本実施形態1のエアゾール容器の
脆弱部7の作用について説明する。
図2は、ステム3が下向きになった状態で高所から地面Gに落下した状態を模式的に示している。
図2(A)は
脆弱部7の
破壊前、
図2(B)は
破壊後の状態、
図2(C)は
脆弱部が無い場合の落下時の状態を示している。
脆弱部が無い場合には、
図2(C)に示すように、スプリング24がハウジング21の底壁部21bに押し込まれて圧潰されてしまい、ステム孔3bがハウジング21内に露出した状態となって、内容物が噴出する。
これに対して、本実施形態の場合には、過大な力が作用すると、
図2(A)の
破壊前の状態から、スプリング24が収縮して一瞬開弁状態となり、さらにスプリング24の収縮量が大きくなってその弾性復元力が所定の力に達すると、係合爪71が破壊され、スプリング24のばね力によって弁体部31がすぐに押し戻されて閉弁状態が維持される。したがって、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があったとしてもその量は僅かである。
脆弱部7が破壊された後は、固定筒部511はさらにステム3に対してすべって相対移動し、
図2(B)に示すように、押し部材6のスカート部62の端部62aが保護部材8の天板部81が衝突し、アクチュエータ4の相対移動は停止する。保護部材8の天板部81は剛性が大きく、アクチュエータ4に対して容器全体の重量が作用するので、衝撃が大きい場合は、アクチュエータ4が損傷し、保護部材8は損傷しない。
【0015】
また、図示例では、ステム3が重力方向に完全に下向きになった状態で落下した場合を例示しているが、斜めに落下した場合、ステム3に対する軸方向の衝撃荷重だけでなく、保護部材8が無いと、クリンチ部12が地面に衝突して損傷し、内容物が漏れ出すおそれがある。本実施形態では、
脆弱部7によるバルブ機構2の保護だけでなく、保護部材8に
よってクリンチ部12の損傷も防止することができる。すなわち、斜めに落下すると、保護部材8の天板部81と外筒部83の角部が地面に衝突するが、天板部81は剛性が高いので、衝撃がクリンチ部12に局部的に作用せず、全体に分散すると共に、係合筒部84が弾性変形によっても干渉され、クリンチ部12の損傷が防止される。
また、保護部材8が無いと、落下時の衝撃によってステム3及びアクチュエータ4の固定筒部511に曲げモーメントが作用し、ステム3に過大曲げ応力が作用するが、本実施形態では、保護部材8の内筒部82によって曲げ変形が規制されるので、ステム3の変形を防止することができる。
したがって、エアゾール容器1自体に特に損傷が無ければ、新しいアクチュエータ4に交換するだけで、エアゾール容器1を再使用することができ、修復作業も簡単で、内容物およびエアゾール容器1が無駄にならない。
また、安全機構部を、本実施形態1のような
脆弱部7の構成とすれば、継手部材51及びノズル部を含めたアクチュエータ本体5と押し部材6を一体に成形でき、低コストで製作できるというメリットがある。
【0016】
次に、他の実施形態について説明する。以下の説明では、主として上記実施形態1と異なる点について説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0017】
[実施形態2]
図3(A)は、本実施形態2に係るエアゾール容器の要部構成、
図3(B)は安全機構部を構成する小径部の平面図である。
本実施形態2は、継手部材51の固定筒部511とステム3の嵌合部に、実施形態1のような
脆弱部ではなく、通常の開弁操作時には力を伝達し、過大な外力が作用した場合には、接触面が滑って力の伝達を緩和する摩擦接触部を構成する小径部207を設けたものである。
小径部207は、固定筒部511の内周面の一部を局部的に縮径した構成で、
破壊されないように全周的に内向きに突出させた構成となっている。もっとも、全周的に突出する形状ではなく、周方向に間欠的な凸部を設けた構成でもよく、たとえば、軸方向の幅を大きくしておけば、
破壊されないような構成とすることができる。
この小径部207は、通常は固定筒部511の先端面に係合し、押し部材6からの押し込み力をステム3に伝達し、開弁操作を行うことができる。
次に、
図3(C)、(D)を参照して、この小径部の落下時の作用について説明する。
図3(C)は小径部207の拡径前、
図3(D)は小径部207の拡径後の状態を示している。
本実施形態2の場合には、地面に衝突して過大な力が作用すると、スプリング24が収縮して一瞬開弁状態となり、さらにスプリング24の収縮量が大きくなってそのばね力が拡径した小径部207の最大静止摩擦力に達すると、接触面がすべり、スプリング24のばね力によって弁体部31がすぐに押し戻されて閉弁状態が維持される。本実施形態2の場合も、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があったとしてもその量は僅かである。
本実施形態2の場合も、継手部材51及びノズル部52を含めたアクチュエータ本体5と押し部材6を一体に成形でき、低コストで製作できるというメリットがある。
なお、静止摩擦力を大きくすればよいので、小径部207を設けずに、固定筒部511の内周面に高摩擦部としておくだけでもよく、要するに、ステム3に嵌合する固定筒部511との接触部の少なくとも一部に、通常の開弁操作に必要な力は滑らずに力は伝達され、過大な力が作用すると滑る大きさに設定された摩擦接触部に設定しておけばよい。
【0018】
[実施形態3]
図4(A)は、本実施形態3に係るエアゾール容器の要部構成、
図4(B)は安全機構部を構成するフランジ脆弱部の平面図である。
本実施形態2は、力の伝達経路Rとなる継手部材51のフランジ部512に、安全機構部を構成する
脆弱部としてのフランジ脆弱部307を設けたものである。フランジ脆弱部307は、通常の開弁操作時の操作力は力を伝達し、過大な外力が作用した場合には、フランジ脆弱部307が破壊されて力の伝達を緩和する構成となっている。
図示例では、
図4(B)に示すように、フランジ部512は、周方向に分割構成されており、各分割フランジ部5121に、局部的に薄肉となったフランジ脆弱部307が設けられている。
図4(B)の構成は模式的な表示であり、各分割フランジ部5121のフランジ脆弱部307は、点で示されているが、幅を有している。すなわち、フランジ脆弱部307は、厚さ及び幅寸法の両方が局部的に小さくして脆弱にしている。また、フランジ脆弱部307はフランジ部512と異なる素材、例えば接着力の弱い接着剤や脆性材料で構成されてもよい。
このフランジ部512の構成としては、必ずしも分割構成としないで、ワッシャ状のフランジ部512に環状の溝を設けてもよいし、ワッシャ状のフランジ部に円弧状の長孔を間欠的に設けてもよいし、スコア線を種々の複数設けてもよいし、刻み線を設けて脆弱な構成とすることもできるし、要するに、脆弱とする種々の構成を採用することができる。
本実施形態3の場合も、通常の開弁操作時にはフランジ脆弱部307は
破壊されることなく、押し部材6からの押し込み力をステム3に伝達し、開弁操作を行うことができる。
次に、
図4(C)、(D)を参照して、このフランジ脆弱部307の落下時の作用について説明する。
図4(C)はフランジ脆弱部307の
破壊前、
図3(D)はフランジ脆弱部307の
破壊後の状態を示している。
本実施形態3の場合には、地面に衝突して過大な力が作用すると、スプリング24が収縮して一瞬開弁状態となり、さらにスプリング24の収縮量が大きくなってばね力が、フランジ脆弱部307に作用するせん断応力が破断応力に達すると、フランジ脆弱部307が破断し、スプリング24のばね力によって弁体部31が押し戻されて閉弁状態が維持される。本実施形態3の場合も、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があったとしてもその量は僅かである。
フランジ脆弱部307が
破壊された後は、固定筒部511はさらにステム3に対してすべって相対移動するので、ノズル部52が変形し、押し部材6のスカート部62の端部62aが保護部材8の天板部81に衝突し、アクチュエータ4の相対移動は規制される。この場合も、保護部材8の天板部81は剛性が大きく、アクチュエータ4に対して容器全体の重量が作用するので、衝撃が大きい場合は、アクチュエータ4が損傷し、保護部材8は損傷しない。
また、安全機構部を、本実施形態3のようなフランジ脆弱部307によって構成すれば、アクチュエータ4の内部構造に変更が生じず、低コストで製作できるというメリットがある。
【0019】
[実施形態4]
次に、本発明の実施形態4について説明する。
図5(A)は、本実施形態4に係るエアゾール容器の要部構成、
図5(B)は安全機構部を構成するフランジ変形部の平面図である。
本実施形態4は、外力の伝達経路Rの途中にある継手部材51のフランジ部512に、安全機構部を構成するフランジ変形部407を設けたものである。フランジ変形部407は、通常の開弁操作時の操作力は力を伝達し、過大な外力が作用した場合に変形してステム3への力の伝達を緩和するものである。
構成的には、
図5(B)に示すように、フランジ部512は、周方向に分割構成されており、それぞれの分割フランジ部5121に、実施形態3のフランジ脆弱部307と同様のフランジ変形部407が設けられている。
図5(B)の構成は模式的な表示であり、各分割フランジ部5121のフランジ変形部407は、フランジ脆弱部307と異なり、幅を有するように記載しており、フランジ脆弱部307よりも破断強度を高くしている。この破断強度は、フランジ変形部407の厚さ及び幅寸法によって調整される。
このフランジ部512の構成としては、必ずしも分割構成としないで、ワッシャ状のフランジ部に環状の溝を設けてもよいし、ワッシャ状のフランジ部に円弧状の長孔を間欠的に設けてもよいし、スコア線を種々の複数設けてもよいし、刻み線を設けて変形する構成とすることもできるし、要するに、変形するような種々の構成を採用することができる。
本実施形態4の場合も、通常の開弁操作時にはフランジ変形部407は
破壊されることなく、押し部材6からの押し込み力をステム3に伝達し、開弁操作を行うことができる。
次に、
図5(C)、(D)を参照して、このフランジ変形部407の落下時の作用について説明する。
図5(C)はフランジ変形部407の変形前、
図5(D)はフランジ変形部407の変形後の状態を示している。
本実施形態4の場合には、地面Gに衝突して過大な力が作用すると、スプリング24が収縮して一瞬開弁状態となり、さらにスプリング24の収縮量が大きくなってばね力が、フランジ変形部407に作用する曲げ応力が大きくなって、フランジ変形部407が大きく変形し、スプリング24のばね力によって弁体部31が押し戻されて閉弁状態が維持される。本実施形態4の場合も、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があったとしてもその量は僅かである。
フランジ変形部407が変形した後は、固定筒部511はさらにステム3に対してすべって相対移動するので、ノズル部52が変形し、押し部材6のスカート部62の端部62aが保護部材8の天板部81に衝突し、アクチュエータ4の相対移動が規制される。この場合も、保護部材8の天板部81は剛性が大きく、アクチュエータ4に対して容器全体の重量が作用するので、衝撃が大きい場合は、アクチュエータ4が損傷し、保護部材8は損傷しない。
また、安全機構部をフランジ変形部407によって構成すれば、アクチュエータ4の内部構造に変更が生じず、低コストで製作できるというメリットがある。
【0020】
[実施形態5]
次に、本発明の実施形態5について説明する。
図6(A)は、本実施形態5に係るエアゾール容器の要部構成、
図6(B)は安全機構部を構成するフランジ連結部の平面図である。
本実施形態5は、外力の伝達経路Rとなる継手部材51のフランジ部512に、安全機構部を構成するフランジ連結部507を設けたものである。フランジ連結部507は、通常の開弁操作時の操作力が作用する場合には、連結状態を維持して力を伝達し、過大な外力が作用した場合に連結状態が外れてステム3への力の伝達を緩和するものである。
構成的には、
図6(A),(B)に示すように、フランジ部152は、周方向に分割構成されており、それぞれの分割フランジ部5121に、フランジ連結部507が設けられている。フランジ連結部507は、凸状の第1連結端部5071と、凹状の第2連結端部5072とを有し、径方向に互いに連結され、軸方向にせん断方向の力が作用しても、連結状態が維持されるようになっている。
このフランジ部512の構成としては、必ずしも分割構成としないで、第1連結端部5071と第2連結端部5072を環状構成としてもよいし、軸方向に嵌合するように構成してもよい。
本実施形態5の場合も、通常の開弁操作時にはフランジ連結部507は分離することなく、押し部材6からの押し込み力をステム3に伝達し、開弁操作を行うことができる。
次に、
図6(C)、(D)を参照して、このフランジ連結部507の落下時の作用について説明する。
図6(C)はフランジ連結部507の分離前、
図6(D)はフランジ連結部507の分離後の状態を示している。
本実施形態5の場合にも、地面Gに衝突して過大な力が作用すると、スプリング24が収縮して一瞬開弁状態となり、さらにスプリング24の収縮量が大きくなってばね力が、フランジ連結部507に作用するせん断力が分離に要するせん断力より大きくなるとフランジ連結部507が分離し、スプリング24のばね力によって弁体部31が押し戻されて閉弁状態が維持される。本実施形態5の場合も、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があっ
たとしてもその量は僅かである。
フランジ連結部507が分離した後は、固定筒部511はさらにステム3に対してすべって相対移動し、外力の伝達経路に位置するノズル部52が変形し、押し部材6のスカート部62の端部62aが保護部材8の天板部81に衝突し、アクチュエータ4の相対移動が規制される。この場合も、保護部材8の天板部81は剛性が大きく、アクチュエータ4に対して容器全体の重量が作用するので、衝撃が大きい場合は、アクチュエータ4が損傷し、保護部材8は損傷しない。
また、安全機構部をフランジ連結部507によって構成すれば、アクチュエータ4の内部構造に変更が生じず、低コストで製作できるというメリットがある。
さらに、アクチュエータの損傷が再使用に影響が無い範囲であれば、分離したフランジ連結部507を再度連結すれば、再使用が可能となる。再使用する場合には、ノズル部52の変形が復元可能なように、ノズル部52をゴム等の可撓性の材料によって構成すればよい。
なお、上記実施形態1乃至5においては、固定筒部511の嵌合部、あるいはフランジ部512に安全機構部を設けた例について説明したが、押し部材6に設けてもよいし、押し部材6とフランジ部512の連結部に設けることもできる。
【0021】
[実施形態6]
次に、本発明の実施形態6について説明する。
図7(A)は、本実施形態6に係るエアゾール容器の要部構成である。
本実施形態6は、アクチュエータ4の押し部材6のスカート部62が当接する保護部材8をストッパとして利用し、ステム3のストロークを規制することによって、力の伝達を遮断して、ステム3の端部がバルブ機構2のハウジング21への噛み込み等による破損を防止するものである。図中、Sは、ストローク規制量であり、開弁状態における押し部材6のスカート部62の端部62aと保護部材8の天板部81との間の距離によって設定される。
ステム3のストローク規制量Sは、ステム3がバルブ機構2を損傷させない最大ストローク以下で、吐出に必要なストローク以上に設定する。吐出に必要なストロークは、ステム3のステム孔3bがガスケット23で隠される位置から、弁室22側に完全に露出する位置である。また、最大ストロークは、たとえば、スプリング24の最収縮位置、あるいはステム3の端部がハウジング21の底壁に当接する位置等によって設定される。
次に、
図7(B)、(C)を参照して、この保護部材8によるステム3のストッパの規制作用について説明する。
図7(B)はストローク規制前、
図7(C)はストローク規制後の状態を示している。
本実施形態6の場合に、地面Gに衝突して過大な力が作用すると、スプリング24が収縮して開弁状態となり、所定のストロークに達すると、
図7(C)に示すように、押し部材6のスカート部62の端部62aが保護部材8の天板部81に衝突し、アクチュエータ4の相対移動は停止する。衝突後、容器は衝突の反作用によって跳ね返り、スプリング24のばね力によって弁体部31が押し戻されて閉弁状態が維持される。本実施形態6の場合も、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があったとしてもその量は僅かである。
保護部材8の天板部81は剛性が大きく、アクチュエータ4に対して容器全体の重量が作用するので、衝撃が大きい場合は、アクチュエータ4が損傷し、保護部材8は損傷しない。
本実施形態6の場合には、実施形態1〜実施形態5のような
脆弱部、変形部、連結部等が無いので、信頼性が高く、アクチュエータ4は製造が容易である。
なお、ストロークを規制すればよいので、押し部材6のスカート部62ではなく、継手部材52のフランジ部512をストッパ部としてもよいし、別途ストッパを設けてもよい。
【0022】
[実施形態7]
次に、本発明の実施形態7について説明する。
図8(A)は、本実施形態7に係るエアゾール容器の要部構成の断面図である。
本実施形態7は、実施形態6と異なり、保護部材8は使用せず、アクチュエータ4とマウンティングカップ11の中央突出部15の間に、ストッパ708を装着したものである。このストッパ708は厚肉円筒形状で、中央にステム及びアクチュエータの固定筒部が挿通される貫通孔708aを有し、一端がマウンティングカップ11の中央
突出部の角部に係合し、外力作用時に、アクチュエータ4の継手部材51のフランジ部512が、ストッパ708に当接してステムのストロークを規制する構成となっている。図中、Sは、ストローク規制量であり、開弁状態におけるフランジ部521とストッパ708の上端面との間の距離によって設定される。このストッパ708の外径はマウンティングカップ11の中央突出部15の径より大きく、その上端面が継手部材52のフランジ部521との面接触するようになっている。
保護部材8は、アクチュエータ4のストロークを、開弁に要する最低限のストロークに規制するものである。このストロークSは、初期のクリアランスを、ステム3の最大ストローク以下で、吐出に必要なストローク以上に設定する。
次に、
図8(B)、(C)を参照して、この保護部材8とアクチュエータ4の押し部材6との間のストッパ機構の作用について説明する。
図8(B)はストローク規制前、
図6(C)はストローク規制後の状態を示している。
アクチュエータ4が地面Gに衝突すると、その衝撃でスプリング24が収縮して開弁状態となり、所定のストロークに達すると、
図8(C)に示すように、アクチュエータ4の継手部材51のフランジ部512が、ストッパ708の端面に衝突して相対移動が規制される。衝突後、容器は衝突の反作用によって跳ね返り、スプリング24のばね力によって弁体部31が押し戻されて閉弁状態が維持される。本実施形態7の場合も、開弁状態は一瞬であるので、漏洩があったとしてもその量は僅かである。
ストッパ708は剛性が大きく、アクチュエータ4に対して容器全体の重量が作用するので、衝撃が大きい場合は、アクチュエータ4が損傷し、ストッパ708は損傷しない。
本実施形態7の場合も、実施形態1〜実施形態5のような
脆弱部、変形部、連結部等が無いので、信頼性が高く、アクチュエータ4自体は製造が容易である。
なお、本実施形態7のストッパ708とクリンチ部12のみを保護する保護部材とを併用することもできる。クリンチ部12のみを保護する保護部材とは、バルブの安全機構としては機能せず、クリンチ部12のみを保護する意味であり、実施形態6の保護部材8のアクチュエータ4が当接する天板部81がないタイプや、スリーブが適用可能である。実施形態6の天板部81がないタイプは、たとえば、
図7(A)において、天板部81のアクチュエータ4が当接する部分がなく、天板部81の内、外筒部82、係合筒部84及び当接筒部85が設けられる環状部分は残される構成となる。また、スリーブとは、クリンチ部12の周囲を取り囲むように配置される筒状部材であり、クリンチ部12に固定するようにしてもよいし、クリンチ部12から容器本体10の胴部の一部あるいは全部を覆うように構成し、容器本体10に固定するようにしてもよい。さらに、容器本体10の底部側を覆って収納するような構成となっていてもよく、要するに、クリンチ部12を保護するような構成であればよい。
【0023】
[実施形態8]
次に、本発明の実施形態8について説明する。
図9(A)は、本実施形態8に係るエアゾール容器の
脆弱部が
破壊される前の要部断面図、
図9(B)は
脆弱部が
破壊された状態の要部断面図である。
本実施形態8のアクチュエータ804は、上記した実施形態1乃至7と異なり、指で操作する押し部材が無く、不図示の駆動装置によって、アクチュエータ804をステム3の軸方向に押し込む方向に駆動し、内容物を自動吐出させる構成となっている。
アクチュエータ804は、ステム3に嵌合される固定筒部841と、この固定筒部841の一端から半径方向外方に向かって張り出すフランジ部842と、フランジ部842に
対して固定筒部841と反対方向に突出するノズル部843と、を備えた構成となっている。ノズル部843は、この例では固定筒部841及びフランジ部842と一体成形されているが、別体成形となっていてもよく、直線的に延びる構成ではなく、曲がっていてもよい。
駆動装置は、エアゾール容器10の容器本体11を固定し、フランジ部842を押し込む構成となっていてもよいし、フランジ部842を固定して、容器本体10を押し上げるような構成となっていてもよい。いずれの場合でも、フランジ部842に駆動用係合部材900が係合し、駆動力は駆動用係合部材900からフランジ部842、固定筒部841を介してステム3に伝達される。
また、落下時に外力が伝達される経路は、駆動用係合部材900側からフランジ部842、固定筒部841を介してステム3に伝達される第1の経路R1と、ノズル部841から固定筒部841を介してステム3に伝達される第2の経路R2の2経路となる。
本実施形態8では、安全機構部としての
脆弱部807を、実施形態1と同様に、固定筒部841の内周に設けた係合爪871によって構成している。
本実施形態の場合には、落下等によってアクチュエータ804に過大な力が作用すると、
図9(A)の
破壊前の状態から、スプリング24が収縮して一瞬開弁状態となり、さらにスプリング24の収縮量が大きくなってその弾性復元力が所定の力に達すると、係合爪871が破壊され、スプリング24のばね力によって弁体部31がすぐに押し戻されて閉弁状態が維持される。
脆弱部7が破壊された後は、固定筒部841はさらにステム3に対してすべって相対移動し、
図9(B)に示すように、フランジ部842が保護部材8の天板部81が衝突し、アクチュエータ4の相対移動は停止する。
安全機構部としては、固定筒部841の
脆弱部807の構成に限定されず、実施形態2の小径部、実施形態3のフランジ脆弱部、実施形態4のフランジ連結部を有するような構成としてよいし、また、実施形態5のように、保護部材8をストッパして利用して、ステムのストロークを規制するようにしてもよいし、実施形態6に記載ようにストッパ708を設けてストロークを規制するようにすることもできる。
以上、上記した各実施形態のエアゾール容器によれば、たとえば、工事現場や無人飛行体等の高所からの落下の衝撃等の過大な外力が作用した場合に、安全機構部の作用によって、バルブ機構の破損を防止することができる。