(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0033】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0034】
また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された専用機型の放射線画像撮影装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【0035】
[放射線画像撮影装置の概略的な構成]
以下、まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の概略的な構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の断面図である。
【0036】
なお、
図1以下の各図における放射線画像撮影装置1の各部材等の相対的な大きさや長さ等は、必ずしも現実の放射線画像撮影装置の構成を反映するものではない。また、以下では、上下方向や水平方向(左右方向)については、放射線画像撮影装置1を、
図1に示すように放射線が照射される側の面である放射線入射面Rが上方を向くように配置した状態を基準に説明する。従って、例えば、放射線画像撮影装置1を、放射線入射面Rが水平方向を向くように配置した場合には、下記の説明における上下方向は、この状態の放射線画像撮影装置1では水平方向ということになる。
【0037】
放射線画像撮影装置1は、
図1に示すように、放射線入射面Rを有するカーボン板等で形成された筐体2内に、シンチレーター3やセンサー基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されて構成されている。また、
図1では図示を省略するが、本実施形態では、筐体2には、画像データD等を無線方式で外部装置に送信する無線方式の通信手段であるアンテナ装置51(後述する
図3参照)が設けられている。
【0038】
また、
図1では図示を省略するが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、筐体2の側面等にコネクター52(後述する
図3参照)を備えており、コネクター52を介して有線方式で信号やデータ等を外部装置に送信することができるようになっている。そして、後述する
図3に示すように、アンテナ装置51やコネクター52等が接続された通信部50が放射線画像撮影装置1の通信手段として機能するようになっている。
【0039】
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の筐体2は、放射線画像撮影装置1を、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテやCR装置のカセッテを装填することが可能なブッキー装置(図示省略。撮影台等ともいう。)に装填して用いることができるようにするために、スクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズ(JISZ4
905)に準拠するサイズで形成されており、CRカセッテとの互換サイズとされている。
【0040】
すなわち、少なくとも筐体2の放射線入射方向(すなわち筐体2の放射線入射面Rの延在方向に直交する方向)の厚さ寸法が13〜16mmの寸法範囲内に収まるように形成されている。また、筐体2の大きさは、14×17インチや17×17インチ等の各種のサイズに形成される。なお、本発明は、このようなJIS規格サイズに準拠するサイズで形成されていない放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0041】
図1に示すように、筐体2内には、センサーパネルSPに対する基本強度メンバーであり、樹脂或いはマグネシウム等の軽量且つ堅牢な基台31が配置されており、基台31の放射線入射面R側すなわち上面側に、放射線を遮蔽するための鉛の薄板(
図1では図示省略。後述する
図14等参照)等が設けられており、それらを介してセンサー基板4が設けられている。そして、センサー基板4の上面側には、照射された放射線を可視光等の光に変換するシンチレーター3が0.1〜1mm厚のガラス材料であるシンチレーター基板34上に設けられ、シンチレーター3がセンサー基板4側に対向する状態で設けられている。
また、シンチレーターはCsI等の柱状結晶タイプであり、上記シンチレーター基板34上に直接蒸着されている。
【0042】
なお、別途シート状に製造されたシンチレーターを、シンチレーター基板34と貼合しても良い。この場合には、接着時や、剥離及び再貼合時等に、シンチレーターAssyに剥離帯電等による残留電荷を生じないように組立注意必要(個々の部品自体を除電する、組立冶具を構成する各パーツを共通GND処理する等)で、更に、シンチレーターAssy完了後にも完成品に対して除電を行うことが好ましい。
【0043】
また、基台31の下面側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基台31の下面側には、放射線センサー25が取り付けられている。本実施形態では、このようにして、基台31やセンサー基板4、シンチレーター基板34等でセンサーパネルSPが形成されており、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0044】
なお、センサーパネルSPのより詳しい構成については、後で説明する。また、
図1や後述する
図3では、放射線センサー25は1つだけ記載されているが、後述するように複数設けることが望ましい。また、放射線センサー25の放射線画像撮影装置1への取り付け方等については、後で詳しく説明する。
【0045】
本実施形態では、センサー基板4は0.1〜1mm厚のガラス基板で構成されており、
図2に示すように、センサー基板4の上面(すなわちシンチレーター3に対向する面)4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、センサー基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0046】
そして、複数の放射線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列された領域全体、すなわち
図2に一点鎖線で示される領域が被写体の放射線画像情報を生成可能な検出部Pとされている。すなわち、検出部Pとは、センサー基板4上で複数の放射線検出素子7が二次元状に配列された矩形状の領域である。本実施形態では、放射線検出素子7はフォトダイオードが用いられているが、例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。
【0047】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。
図3は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図である。
【0048】
各放射線検出素子7の第1電極7aには、スイッチ素子であるTFT8のソース電極8s(
図3の「S」参照)が接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dおよびゲート電極8g(
図3の「D」および「G」参照)は信号線6および走査線5にそれぞれ接続されている。
【0049】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させる。また、走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0050】
また、本実施形態では、
図2や
図3に示すように、センサー基板4上で1列の各放射線検出素子7ごとに1本の割合で各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はセンサー基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に接続されている。
【0051】
そして、結線10は入出力端子11(パッドともいう。
図2参照)を介してバイアス電源14(
図3参照)に接続されており、バイアス電源14から結線10や各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bに逆バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0052】
一方、各走査線5は、それぞれ入出力端子11を介して走査駆動手段15のゲートドライバー15bにそれぞれ接続されている。走査駆動手段15では、配線15cを介して電源回路15aからゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧が供給されるようになっており、ゲートドライバー15bで走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間でそれぞれ切り替えるようになっている。
【0053】
また、各信号線6は、各入出力端子11を介して読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。本実施形態では、読み出し回路17は、主に増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。また、本実施形態では、後述する
図4に示すように、増幅回路18は、オペアンプ18aとコンデンサー18b等を並列に接続されたチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aの出力側から、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値が出力されるようになっている。
【0054】
図3に示すように、読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、
図3では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。
【0055】
各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、走査駆動手段15のゲートドライバー15bからある走査線5にオン電圧が印加されて各TFT8がオン状態とされると、これらの各TFT8を介して各放射線検出素子7内から信号線6に電荷がそれぞれ放出される。そして、前述したように、各読み出し回路17の増幅回路18では、放射線検出素子7からコンデンサー18bに流れ込んだ電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aから相関二重サンプリング回路19側に出力される。
【0056】
相関二重サンプリング回路19は、各放射線検出素子7から増幅回路18に電荷が流れ込む前後の増幅回路18からの出力値の増加分をアナログ値の画像データDとして下流側に出力する。そして、出力された各画像データDがアナログマルチプレクサー21を介してA/D変換器20に順次送信され、A/D変換器20でデジタル値の画像データDに順次変換されて記憶手段23に出力されて順次保存される。このようにして画像データDの読み出し処理が行われるようになっている。
【0057】
また、各放射線検出素子7のリセット処理では、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して(例えば後述する
図6中の「R」参照)、各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6に電荷を放出させて、電荷を下流側に流す。このようにすることで、各放射線検出素子7内に残存する電荷を各放射線検出素子7内から除去して、各放射線検出素子7がリセットされるようになっている。
【0058】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0059】
そして、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17を制御して上記のように画像データDの読み出し処理を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作等を制御するようになっている。
【0060】
また、
図3に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置51やコネクター52等が接続された通信部50が接続されており、さらに、走査駆動手段15や読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各機能部に必要な電力を供給するバッテリー24、放射線センサー25が接続されている。
【0061】
[放射線画像撮影装置における放射線の照射開始の検出処理について]
ここで、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出処理について説明する。
【0062】
本実施形態では、制御手段22は、前述したように、少なくとも、各放射線検出素子7や図示しない放射線検知用画素からのデータに基づいて放射線の照射開始を検出する第1の検出方式と、放射線センサー25の出力値に基づいて放射線の照射開始を検出する第2の検出方式とにより放射線の照射開始を検出するように構成されている。
【0063】
具体的には、本実施形態では、制御手段22は、第2の検出方式として、前述した放射線センサー25(
図1や
図3等参照)から出力される値に基づいて放射線の照射開始を検出することができるようになっている。
【0064】
すなわち、放射線センサー25として、例えば放射線が照射されると出力される電流値や電圧値等が大きくなるような半導体センサー等を用いることが可能である。そして、例えば、放射線センサー25から出力される値に予め閾値を設けておき、制御手段22は、放射線センサー25から出力される値が閾値以上になった時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
【0065】
次に、本実施形態で採用されている第1の検出方式について説明する。なお、以下では、第1の検出方式として、前述した特許文献5に記載されたリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出する方式について説明する。しかし、この他にも、第1の検出方式として、例えば前述した特許文献6〜8に記載されている検出方法を採用することも可能であり、また、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づいて放射線の照射開始を検出する方法であれば、他の検出方法を採用することも可能である。
【0066】
リークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出する方式では、まず、放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前から、ゲートドライバー15b(
図3参照)から各走査線5にオフ電圧を印加し、各TFT8をオフ状態とした状態で各読み出し回路17に読み出し動作を行わせて、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行わせるように構成される。
【0067】
ゲートドライバー15b各走査線5にオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態では、
図4に示すように、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。すなわち、増幅回路18のコンデンサー18bには、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークした電荷qの合計値が蓄積される。
【0068】
そのため、この状態で読み出し回路17で読み出し動作を行うと、増幅回路18のオペアンプ18aの出力側からは、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークした電荷qの合計値に応じた電圧値が出力される。そのため、各TFT8を介してリークした電荷qの合計値に相当するデータが読み出される。このようにして読み出されたデータがリークデータdleakである。
【0069】
そして、このように構成した場合、放射線画像撮影装置1に放射線の照射が開始されると、各TFT8を介して各放射線検出素子7内から信号線6にリークする電荷qが増加する。そのため、放射線画像撮影装置1に放射線の照射が開始された時点で(例えば
図5の時刻t1参照)、読み出されるリークデータdleakの値が急激に増加することが分かっている。
【0070】
そこで、このリークデータdleakの値が増加することを利用して、例えば
図5に示すように、読み出されたリークデータdleakが設定された閾値dleak_th以上になったことを
検出することで、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0071】
なお、リークデータdleakを用いて放射線の照射開始を検出するように構成する場合、上記のようにゲートドライバー15bから各走査線5にオフ電圧を印加し、各TFT8をオフ状態のままとすると、各放射線検出素子7内に暗電荷が蓄積され続ける状態になってしまう。
【0072】
そのため、例えば後述する
図6の左側の部分に示すように、リークデータdleakの読み出し処理(図中では「L」と記載)と次のリークデータdleakの読み出し処理との間に各放射線検出素子7のリセット処理(図中では「R」と記載)を行うように構成することが可能である。
【0073】
各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合、
図6に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(
図3参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行うように構成してもよく、また、図示を省略するが、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行うように構成することも可能である。
【0074】
[放射線の照射開始の検出後の処理について]
そして、本実施形態では、制御手段22は、上記の第1の検出方式(各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づく検出方式)と第2の検出方式(放射線センサー25の出力値に基づく検出方式)のいずれかの方式により放射線の照射開始を検出した場合、或いは両方の方式により放射線の照射開始を検出した場合には、全てのTFT8をオフ状態として放射線検出素子7内に電荷が蓄積される状態に移行させるようになっている。
【0075】
すなわち、制御手段22が、例えば第1の検出方式で、読み出したリークデータdleakが閾値dleak_th以上になったことにより放射線の照射開始を検出した場合には、
図6に示すように、照射開始を検出した時点(同図における「検出」参照)でゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加し、全てのTFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が各放射線検出素子7内に蓄積される状態である電荷蓄積状態に移行させるようになっている。
【0076】
そして、制御手段22は、
図6に示すように、電荷蓄積状態に移行してから例えば所定時間が経過した後で、本画像としての画像データDの読み出し処理を開始させるようになっている。
【0077】
本実施形態では、画像データDの読み出し処理では、
図6に示すように、放射線の照射開始を検出した時点或いはその直前にオン電圧が印加された走査線5(
図6の場合は走査線5のラインL4)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(
図6の場合は走査線5のラインL5)からオン電圧の印加を開始させ、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を順次印加させて本画像としての画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0078】
なお、画像データDの読み出し処理の仕方はこれに限定されず、図示を省略するが、本画像としての画像データDの読み出し処理を、例えば、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次行うように構成することも可能である。
【0079】
[より改良された放射線の照射開始の検出方法について]
上記の第1の検出方式は、例えば以下のように改良することが可能である。なお、以下においても、主に、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明する。また、これらの改良された検出方法については、本願出願人が先に提出した特開2012−176155号公報等にも記載されており、詳しくは同公報等を参照されたい。
【0080】
リークデータdleakに基づく検出方法を採用する場合、放射線画像撮影装置1の検出部P(
図2や
図3参照)には、通常、数千本から数万本の信号線6が配線されており、各信号線6にそれぞれ読み出し回路17が設けられているため、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの数は、数千個から数万個の数になる。
【0081】
そして、それらの全てのリークデータdleakについて、各読み出し処理ごとに、上記のように閾値dleak_th以上になったか否かを判断する処理を行うように構成すると、放射線の照射開始の検出処理が非常に重くなる。そこで、例えば、以下のようにして、判断の対象となるデータの数を減らして検出処理を行うように構成することが可能である。
【0082】
具体的には、本実施形態では、前述した読み出しIC16(
図3参照)には、例えば、128個や256個の読み出し回路17が内蔵されている。すなわち、1個の読み出しIC16内の128個や256個等の読み出し回路17にそれぞれ信号線6が接続されており、1回のリークデータdleakの読み出し処理で、1個の読み出しIC16から信号線6ごとに128個や256個等のリークデータdleakが読み出される。
【0083】
そこで、例えば、1回のリークデータdleakの読み出し処理で1つの読み出しIC16から出力される256個等のリークデータdleakの平均値や合計値、中間値、最大値等(以下、これらをまとめて統計値という。)を算出する。そして、各読み出しIC16ごとに1つずつ算出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が、それぞれ当該統計値dleak_st(z)について設定された閾値dthA以上になったか否かを判断するように構成することが可能である。なお、zは読み出しIC16の番号である。
【0084】
このように構成すると、例えば検出部Pに信号線6が4096本設けられており、1個の読み出しIC16に128個の読み出し回路17が内蔵されている(すなわち1個の読み出しIC16に128本の信号線6が接続されている)とすると、読み出しIC16の数は、全部で4096÷128=32個になる。
【0085】
そのため、上記のように構成すれば、例えば4096個分のリークデータdleakについて閾値dleak_th以上になったか否かを判断しなければならなかった検出処理が、32個の統計値dleak_st(z)(z=1〜32)について判断を行うだけでよくなり、検出処理を軽くすることが可能となる。
【0086】
[差分法]
また、さらに検出処理における上記の判断処理を軽くするために、制御手段22で、1回のリークデータdleakの読み出し処理で各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakから算出した例えば32個の統計値dleak_st(z)の中から、最大値を抽出し、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)の最大値が閾値以上になったか否かを判断するように構成することも可能である。
【0087】
このように構成すれば、32個の統計値dleak_st(z)の中から抽出された1個の最大値が閾値以上になったか否かだけを判断すればよくなり、検出処理が非常に軽くなる。
【0088】
しかし、通常、読み出しIC16ごとの読み出し特性が異なるため、仮に各放射線検出素子7から信号線6にリークする電荷q(
図4参照)の合計値が信号線6ごとに同じであったとしても、他の読み出しIC16よりもリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が常に大きくなる読み出しIC16もあれば、他の読み出しIC16よりもリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が常に小さくなる読み出しIC16もある。
【0089】
そして、このような状況で、例えば
図7に示すように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が、検出部Pの中央部分に照射野Fが絞られた状態で照射される場合を考える。
【0090】
このとき、他の読み出しIC16よりもリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が常に大きくなる読み出しIC16に接続されている信号線6aが照射野F外に存在すると、例えば
図8に示すように、照射野F内に存在する信号線6が接続されている読み出しIC16γから出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)(図中のγ参照)が放射線の照射によって上昇しても、照射野F外に存在する信号線6aが接続されている読み出しIC16δから出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)(図中のδ参照)以上にならない場合が生じ得る。
【0091】
そして、このような場合に、各読み出しIC16におけるリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の中から最大値を抽出すると、図中δで示されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が抽出されるが、抽出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)は、放射線の照射によっても変動しない。そのため、抽出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の最大値が閾値以上にならなくなり、結局、放射線の照射を検出することができなくなってしまう。
【0092】
そこで、このような問題を回避するために、例えば、以下のような移動平均(Moving Average)を用いる方法を採用することが可能である。
【0093】
すなわち、各読み出し処理ごとに、各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)に基づいて、その移動平均dlst_ma(z)をそれぞれ算出する。
具体的には、リークデータdleakの読み出し処理の際に読み出しIC16から出力されるリークデータdleakの統計値dleak_st(z)を算出するごとに、
図9に示すように、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む所定回数(例えば10回)分の過去の各読み出し処理の際に算出された、読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の平均(すなわち移動平均dlst_ma(z))を算出するように構成する。
【0094】
なお、この場合、移動平均dlst_ma(z)の算出方法としては、単純移動平均や加重移動平均、或いは指数移動平均等の公知の方法を用いることが可能である。
【0095】
そして、下記(1)式に従って、読み出しIC16ごとに、今回の読み出し処理で算出したリークデータdleakの統計値dleak_st(z)と、算出した移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を算出するように構成する。
Δd(z)=dleak_st(z)−dlst_ma(z) …(1)
【0096】
このようにして、制御手段22で、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出しIC16から出力されたリークデータdleakから上記のように統計値dleak_st(z)を算出すると同時に、それぞれに対応する移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を、各読み出しIC16ごとにそれぞれ算出する。
【0097】
そして、算出した差分Δd(z)(上記の例では32個の差分Δd(z))の中から最大値Δdmaxを抽出し、差分Δd(z)の最大値Δdmaxが閾値Δdth以上になったか否かを判断するように構成することが可能である。なお、このような検出方法に基づく放射線の照射開始の検出方法を、以下、差分法という。
【0098】
このように構成すれば、読み出しIC16ごとに読み出し特性にばらつきがあったとしても、同じ読み出しIC16において同じ読み出し特性の下で読み出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)と移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を算出することで、読み出しIC16ごとの読み出し特性によるばらつきが相殺される。
【0099】
すなわち、各読み出しIC16ごとに仮に
図8に示したような読み出し特性のばらつきがあったとしても、
図10に示すように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない限り、上記の読み出しIC16γ、16δを含むいずれの読み出しIC16においても、算出される差分Δd(z)の値がほぼ0になる(
図10における放射線の照射開始前のγ、δ参照)。
【0100】
そのため、上記差分Δd(z)が、読み出しIC16ごとに、純粋にリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が過去のデータから増加したか否かのみを反映する値になり、それに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することで、
図8に示したような問題が発生することを的確に防止することが可能となる。
【0101】
また、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると(
図11中の時刻T1参照)、少なくともいずれかの読み出しIC16で、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakに基づく統計値dleak_st(z)が、移動平均dst_ma(z)よりも格段に大きくなり、
図11に示すように、差分Δd(z)の最大値Δdmaxが確実に閾値Δdth以上になる。そのため、放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。
【0102】
なお、前述したように、本実施形態では、移動平均dlst_ma(z)を算出する場合、
図9に示したように、今回のリークデータdleakの読み出し処理の直前の読み出し処理を含む所定回数(例えば10回)分の過去の各読み出し処理の際に算出された読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)について移動平均dlst_ma(z)を算出するように構成することが可能である。
【0103】
しかし、このように構成する代わりに、
図12に示すように、今回のリークデータdleakの読み出し処理から所定回数(例えば10回や50回等)前の読み出し処理を含む所定回数(例えば10回)分の過去の各読み出し処理の際に算出された読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)について移動平均dlst_ma(z)を算出するように構成することも可能である。
【0104】
[積算法]
一方、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量率が非常に小さい場合、上記のようにして算出される読み出しIC16ごとのリークデータdleakの平均値等の統計値dleak_st(z)が小さくなる。そして、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されても、統計値dleak_st(z)が閾値dthA以上にならない場合が生じ得る。
【0105】
また、上記の差分法を採用する場合も同様に、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合の読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)と移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)が小さくなり、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されても差分Δd(z)が閾値Δdth以上にならなくなる場合が生じ得る。
【0106】
しかし、それでは、上記の差分法を採用しても、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されているにもかかわらず放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出することができなくなる場合が生じ得ることになってしまう。
【0107】
そこで、例えば、読み出しIC16ごとに、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)と移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)の時間的な積算値(積分値ともいう。)ΣΔdを算出するように構成する。そして、この積算値ΣΔdが閾値ΣΔdth以上になった読み出しIC16があるか否かを判断するように構成することが可能である。なお、この検出方法に基づく放射線の照射開始の検出方法を、以下、積算法という。
【0108】
このように構成すると、図示を省略するが、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されないうちは、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)がゆらいで移動平均dlst_ma(z)よりも大きくなったり小さくなったりする。そのため、それらの差分Δd(z)の積算値ΣΔdは0に近い値で推移する。
【0109】
しかし、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)は移動平均dlst_ma(z)よりも有意に大きな値になるため、それらの差分Δd(z)は、正の値になる場合が多くなる。そのため、上記のように構成すれば、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、積算値ΣΔdが増加していき、閾値ΣΔdth以上になる。
【0110】
そのため、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が非常に小さい場合でも、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0111】
なお、この積算法では、差分Δd(z)を積算する回数を制限しないと、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されなくても、差分Δd(z)の積算を重ねるうちに積算値ΣΔdが閾値ΣΔdth以上になってしまい、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたと誤検出されてしまう。そこで、積算法を採用する場合には、差分Δd(z)の積算回数を所定の回数に制限することが望ましい。
【0112】
[本発明に特有の構成等について]
次に、放射線画像撮影装置1における本発明に特有の構成等について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用についてもあわせて説明する。
【0113】
本実施形態では、
図13に示すように、前述したセンサー基板4やシンチレーター基板34等で形成されたセンサーパネルSPが、その両端部が筐体2の側面の内部部分にそれぞれ保持される状態で筐体2内に収納されている。なお、
図13は、
図1と直交方向の断面図である。
【0114】
具体的には、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の筐体2は、放射線入射面Rを有する角筒状の本体部2Aの両方の側面の開口部に、蓋部材2B、2Cが嵌め込まれるようにして形成される。そして、蓋部材2B、2Cの内側には、本体部2Aへの挿入部2B1、2C1がそれぞれ設けられており、挿入部2B1、2C1にはそれぞれ凹部が形成されている。また、挿入部2B1、2C1の凹部にそれぞれ、断面が略コ字状の緩衝部材2B2、2C2が嵌め込まれている。
【0115】
そして、センサーパネルSPを筐体2の本体部2Aに挿入した後、本体部2Aの開口に蓋部材2B、2Cを嵌め込む際、蓋部材2B、2Cの内側に設けられた緩衝部材2B2、2C2に、センサーパネルSPの両端部を嵌め込むようにすることで、センサーパネルSPの両端部が筐体2の側面の内部部分にそれぞれ保持される状態でセンサーパネルSPが筐体2内に収納されるようになっている。
【0116】
そのため、本実施形態の放射線画像撮影装置1では、センサーパネルSPは、その端部が、緩衝部材2B2、2C2や緩衝材35(
図1参照)を介して筐体2の内部に支持されているだけであり、センサーパネルSPの他の部分は筐体2には保持されていない。すなわち、センサーパネルSPは、緩衝部材2B2、2C2や緩衝材35に支持されている端部以外は、いわば浮いている状態になっている。
【0117】
そして、このように構成すると、例えば放射線画像撮影装置1を落下させる等して筐体2に大きな衝撃が加わっても、センサーパネルSPには、その衝撃が緩衝部材2B2、2C2や緩衝材35を介して伝わるため、センサーパネルSPがさほど大きなダメージを受けずに済むというメリットがある。
【0118】
一方、このような構成では、センサーパネルSPに筐体2から振動が伝わった場合、その後、筐体2の振動が収まっても、その内部でセンサーパネルSPの振動がしばらく続く状態(すなわち振動減衰時間が長い状態)になる場合があることが分かってきた。
【0119】
このようにセンサーパネルSPが振動すると、センサーパネルSPを構成するセンサー基板4やシンチレーター基板34等に内在している残留電荷が局所的に集中して電位バランスが乱れ、各放射線検出素子7等に与える影響の度合が振動により変化し、上記の第1の検出方式を採用した場合に、読み出されるリークデータdleak等の値がその影響(すなわち電位バランスの変動)で変化して閾値dleak_th以上になり、放射線が照射されていないにもかかわらず、放射線の照射が開始されたと誤検出してしまう場合がある。
【0120】
そして、
図1や
図13に示したような構成では、上記のように筐体2の内部でセンサーパネルSPの振動がしばらく続く状態になる場合があるため、上記のような振動等による放射線の照射開始の誤検出が生じ易く可能性がある。
【0121】
そこで、本実施形態では、以下に示すような特有の構成を採用することにより、放射線の照射開始の誤検出等が生じないようにするための工夫がなされている。
【0122】
なお、
図13では、角筒状の本体部2Aの開口部に蓋部材2B、2Cを嵌め込んで筐体2を形成する場合について説明したが、例えば上側部材と下側部材とを合わせて筐体とする、いわゆる弁当箱タイプの筐体であって、下側部材上に緩衝部材を設け、当該緩衝部材上にセンサーパネルSPを載せ、最後に上側部材を被せ、上下部材をネジ等で固定する組立方法でも、上記の本実施形態と同様の問題を有している。従って、筐体2が弁当箱タイプの放射線画像撮影装置にも、本発明を適用することができる。
【0123】
[特有の構成1]
図14に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPの端部付近のより詳しい構成を表す断面図を示す。
【0124】
なお、
図14では、センサーパネルSPの下面側のPCB33や電子部品32、バッテリー24、放射線センサー25等(
図1等参照)の図示が省略されている。また、
図14において、44は、入出力端子11に接続されているフレキシブル回路基板を表し、45は、接着剤37を介して外気中の湿気が内部空間IS内に流入すること等を防止するための防湿絶縁樹脂を表す。また、図示を省略するが、フレキシブル回路基板44上に、前述した読み出しIC16等が組み込まれており、また、このフレキシブル回路基板44を介してセンサー基板4上の走査線5や信号線6、バイアス線9等がセンサーパネルSP下側の電子機器32に接続される。
【0125】
図14に示すように、本実施形態では、走査線5や信号線6、放射線検出素子7、TFT8、バイアス線9等が上面4a上に形成されたセンサー基板4と、シンチレーター3を支持するシンチレーター基板34とが、放射線検出素子7とシンチレーター3とが対向する状態で配置されている。なお、
図14では、放射線検出素子7等が平坦化層36で充填され、シンチレーターと放射線検出素子との相対位置関係が一定となるように構成されており、振動による電位バランスや寄生容量等の変動を生じ難い構成(すなわち前述したマイクロフォニック影響を受け難い構成)としている。
【0126】
そして、センサー基板4とシンチレーター基板34との間隙部分の、放射線検出素子7やシンチレーター3の周囲の部分に塗布され、最終的に硬化処理された接着剤37により、センサー基板4とシンチレーター基板34とが貼り付けられ、相対位置関係が固定されるようになっている。なお、本実施形態では、センサー基板4とシンチレーター基板34との貼り付けの際、センサー基板4とシンチレーター基板34と接着剤37で囲まれた内部空間ISが減圧されるように、接着剤37の一部に減圧吸気用の開口を設け、然る後、当該開口に接着剤37を充填し最終的に硬化処理されるようになっている。本実施形態では、接着剤37として熱硬化性の樹脂や紫外線硬化性の樹脂等の既知の接着剤を用いることが可能であるが、硬化のプロセスが短時間で済むことから、紫外線処理により硬化する紫外線硬化性の接着剤を使用することが好ましい。
【0127】
また、シンチレーター基板34等の反りを防止するために、シンチレーター基板34の上面(すなわちシンチレーター3が形成された面とは反対側の面)に、反り防止層38を設けることができる。例えば、シンチレーター基板34と熱膨張或いは熱収縮の異なる材料を接着或いは塗布することによって、シンチレーター基板34の反りを抑制することができる。本発明の反り防止層38に用いられる材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロースアセテート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ、ポリアミドイミド、ビスマレイイミド、フッ素樹脂、アクリル、ポリウレタン、アラミド、ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、炭素繊維強化樹脂シート等が挙げられる。そして、これらのうちの1つの材料を用いて単独の層として反り防止層38を形成してもよく、また、複数の材料からなる層を積層して反り防止層38を形成してもよい。さらに、シンチレーター基板34と反り防止層38の間に接着層や導電層、防湿層等の他の機能層を設けることも可能である。
【0128】
本実施形態では、特有の構成1として、
図14に示すように、このシンチレーター基板34の上面側の、例えば、シンチレーター基板34と樹脂層38との間に、例えばITO(Indium Tin Oxide)等からなる導電層39が形成されている。しかし、これに限られるものではなく、構成される導電性材料としては有機系、無機系いずれでも構わない。有機系としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリアセン、ポリ(3,4−ジアルキルピロール)、ポリ(アニリンスルホン酸)等の導電性高分子や、カーボン等が挙げられる。無機系としては アルミニウム、銅、銀、ニッケル等の金属や、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2、MgO、ZnO等の金属酸化物やインジウム金属酸化物(In2O3)とスズ金属酸化物とからなるITO等が挙げられる。
【0129】
導電層39は、導電性材料を基板上に付与されたシート状、テープ状のものや、有機繊維の表面に極めて薄い金属をメッキして得られる導電布が挙げられる。シート状、テープ状の導電部材はシート表面上に接着層があってもよく、剥離帯電等の発生を防止するためにシンチレーター基板34や、反り防止層38と全面で接着されていることが好ましい。
【0130】
導電層39の作製方法としては、導電性材料を含む塗工剤をシート状やテープ状の基材状に塗布し皮膜を形成する溶液塗布方式や押し出しコーティング方式の他、導電性成分を溶融させた熱可塑性樹脂中に練り込み成形する練り込み方式、金属(ターゲット)を真空中で加熱蒸着させ基板表面上にコートする蒸着方式、スパッタ方式や、皮膜状の導電性物質を基材と貼り合わせるラミネート方式等が挙げられる。また、所望の形状に導電性材料を各種印刷方式を用いて印刷をしてもよい。
【0131】
これら導電部材の表面抵抗値は、一般に帯電防止用途の場合には10
9Ω/□〜10
5Ω/□、導電用途の場合には10
5Ω/□以下が好ましい。
【0132】
そして、導電層39には導電フィルム40が接続されており、この導電フィルム40が
図14では図示を省略するが、電子機器32(
図1や
図13参照)の基準GND(共通GND等ともいう。以下同じ。)に電気的に接続されるようになっている。具体的には、
図14に示すように、シンチレーター基板34の上面に導電層39を積層して形成する。そして、その上方に反り防止層38を貼り付ける等して配置する。
【0133】
そして、その際、センサーパネルSPを上方から見た
図15に示すように、例えば、反り防止層38の一部を切り欠いておき、導電層39を露出させる。そして、その部分に、図示しない導電性の両面テープ等を介して導電フィルム40を接着する等して取り付ける。
【0134】
また、導電層39そのものを延出させて導電フィルム40としてもよい。導電層39と導電フィルム40を一体として形成する場合、画像が形成されるシンチレータ上(すなわち導電層39部分)は導電性高分子等の放射線透過性の良い材料で構成することが好ましく、導電フィルム40部分は小面積で高い導電機能が求められるため例えば金属等を密にするように形成することが好ましい。このように、導電層39と導電フィルム40を一体的に形成する場合でも導電層39の部分と導電フィルム40の部分とで別々の材料を使用することも可能であり、或いは、例えば導電層39の部分と導電フィルム40の部分とをともに導電性高分子等で形成し、導電フィルム40の部分にはさらに金属等を導電性高分子中に配置したり、或いは金属層を設ける等して多層化するように構成することも可能である。また、導電層39や導電フィルム40に保護層や腐食防止層等の機能層を付与することも可能である。
【0135】
そして、導電フィルム40を延出させた舌状の部分を、基台31の、シンチレーター基板34等が設けられた側とは反対側に設けられた電子部品32が配設されたセンサーパネルSPの下面側に引き回して、電子部品32の基準GND電極等に接続する等して、導電フィルム40を介して導電層39を電子機器32の基準GNDに電気的に接続するように構成される。
【0136】
本実施形態では、センサーパネルSPを下側から見た
図16に示すように、センサーパネルSPの裏面側には、電子機器32やバッテリー24等のほか、前述したフレキシブル回路基板44を介してセンサー基板4の表面側の信号線6(
図2等参照)と接続される基板46(以下、読み出し基板46という。)や、フレキシブル回路基板44を介してセンサー基板4の表面側の走査線5と接続される基板47(以下、ゲート基板47という。)等が設けられている。なお、読み出し基板46やゲート基板47も電子機器32に含まれる。
【0137】
また、電子機器32と読み出し基板46やゲート基板47等とがハーネス48を介してそれぞれ接続されている。なお、バッテリー24や電子機器32、読み出し基板46、ゲート基板47、
図16では図示を省略したアンテナ51やコネクター52(
図3参照)等を結ぶ配線等については、図示を省略した。
【0138】
そして、本実施形態では、例えば読み出し基板46やゲート基板47には、基準GND電極46a、47aが露出された部分が形成されており、それらの部分にネジ46b、47bで配線等を締め付けて固定できるようになっている。
なお、各基準GND電極46a、47aは、これらの各電極を同電位に保つべく、共通の導電パターン部(図示を省略)と接続されている。
【0139】
そこで、上記のようにシンチレーター基板34の上面に形成された導電層39に取り付けられた導電フィルム40(
図14参照)をセンサーパネルSPの下面側に引き回し、上記のように読み出し基板46やゲート基板47の基準GND電極46a、47aにネジ46b、47bで固定する等して取り付けることで、導電フィルム40を介して導電層39を電子機器32の基準GNDに電気的に接続するように構成することが可能である。
【0140】
前述したように、放射線画像撮影装置1に振動等が加わると、センサーパネルSPが振動し、センサーパネルSPを構成するセンサー基板4やシンチレーター基板34等に発生している残留電荷の、各放射線検出素子7等に与える影響の度合が振動により変化すること(すなわち全体分散から局所的に集中して電位バランスを乱すこと)が一因となり、その影響でリークデータdleak等の値が変化して閾値dleak_th以上になり、放射線の照射
が開始されたと誤検出してしまう場合があった。
【0141】
しかし、上記の特有の構成1のように構成し、シンチレーター基板34の上面に導電層39を形成し、導電フィルム40等を介して電子機器32の基準GNDに電気的に接続するように構成することで、シンチレーター基板34に残留電荷が存在しても、導電層39により分散され、局所的集中が発生いないため、電位バランスがくずれることがなく、読み出されるリークデータdleak等への影響を低減させることができる。
【0142】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、シンチレーター基板34の上面側に導電層39を形成し、当該導電層39が電子機器32の基準GNDに電気的に接続されるように構成した。そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づいて放射線の照射開始を検出する第1の検出方式と、放射線センサー25の出力値に基づいて放射線の照射開始を検出する第2の検出方式のいずれかの方式により、または両方の方式により放射線の照射開始を検出した場合には、スイッチ素子であるTFT8をオフ状態として電荷蓄積状態に移行させて放射線画像撮影を行うように構成した。
【0143】
そのため、シンチレーター基板34に、製造過程上で残留電荷が存在したままとなっても、導電層39により分散され、局所的集中が発生しないため、電位バランスがくずれることがなく、読み出されるリークデータdleak等への影響を低減させることができる。また、製造工程で発生する静電気や剥離帯電等によりシンチレーター基板34に内在残留してしまう電荷(静電気)の除去率も100%ではなくても、所定のレベルまでを許容することとなるので、製造歩留まりの向上も可能となる。
【0144】
また、導電層39は、放射線画像撮影装置1に照射された放射線がシンチレーター3に到達することを阻害しないため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータの値が的確に増加する。そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、第1の検出方式や第2の検出方式の少なくともいずれかで放射線の照射が開始されたことが検出されるため、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
なお、導電層39の厚さを変えても(すなわち、例えば厚さを50μm、100μm、150μmに変化させても)、上記の効果に差異は少なく、導電層を設けること自体が重要である知見も得られている。
【0145】
[特有の構成2]
一方、前述したように、センサーパネルSPには、放射線画像撮影装置1に照射された放射線がセンサーパネルSPの下面側の電子機器32に到達しないように、放射線を遮蔽するための鉛の薄板が設けられているが、例えば、その鉛の薄板を上記の導電層39と同様に活用して、センサー基板4に発生する静電気を除去するように構成することも可能である。
【0146】
具体的には、
図14に示すように、本実施形態では、センサー基板4とその下方の基台31との間に、緩衝材41と鉛の薄板42が設けられている。なお、100〜200μm厚の鉛の薄板42は、それ自体では容易に撓んでしまうため、本実施形態では、導電性PETの樹脂板43、43で鉛の薄板42を上下から挟んで鉛の薄板42の平面性を確保するように構成されている。
【0147】
そして、この特有の構成2では、
図14に示すように、この鉛の薄板42を、上記の導電層39の場合と同様にセンサーパネルSPの下面側に配設されている電子部品32の基準GNDに電気的に接続するように構成することが可能である。
【0148】
この場合、基準GND(例えば
図16に示した読み出し基板46やゲート基板47の基準GND電極46a、47a)には、前述した導電フィルム40と鉛板とがともに固定される、いわゆる共締の状態となり、センサーパネルSP全体にわたる電位バランスが安定化し、前述した局所的集中が生じ難くなる。
【0149】
なお、従来の放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPでは、鉛の薄板42が電子機器32の上側部分にのみ形成され、センサー基板4の端部部分には形成されない場合があった。しかし、そのように構成すると、センサー基板の端部部分に残留電荷が存在していた場合には、振動等によって局所的集中を起こし電位バランスを乱すことがあり、放射線照射開始の誤検出を招く虞れがあるが、
図14に示すように、鉛の薄板42をセンサー基板4の端部部分まで延設するように構成することで、当該リスクを低減できる。
【0150】
また、上記の特有の構成1や特有の構成2を採用しても、
図14に示すように、入出力端子11等(
図2参照)が形成された、センサー基板4の端部部分の上面4a側の部分の静電気は除去し難い。
【0151】
上記のフレキシブル回路基板44は、センサー基板4の端部に残留する残留電荷の局所集中の影響を受け易く、鉛の薄板42をセンサー基板4の端部部分まで延設するように構成することで、当該影響を抑制することが可能となる。
また、防湿絶縁樹脂45表面やフレキシブル回路基板44については、センサーパネルSPの製造工程で残留電荷が内在すると、低レベルの振動でも局所的集中により大きなノイズが信号値に重畳し易く、残留電荷が発生することがないように充分な(100%の)除電を行う必要がある。
【0152】
また、センサーパネルSPを筺体2の一方の開口より装填する際に、
図1に示されたように、両サイドの緩衝材35が、それぞれ角筒状筺体の内壁とこすられながら装填されるので、摩擦帯電による残留電荷を生じる可能性がある。特開2010−160044号公報の
図6及び
図7にも示されたように、当該緩衝材35と前述するフレキシブル回路基板は、互い違いに配置されているので、やはり、当該残留電荷の局所的集中の影響を受けてしまう。
【0153】
従って、同公報の
図7に示されるように、各緩衝材にまたがり、装填を円滑として摩擦帯電を生じ難くする滑り部材(PET等のシート)を設けることが好ましい。また、当該滑り部材を導電性とし、同公報の
図11のように上下に折り曲げ、フレキシブル回路基板を覆うようにすることで、残留電荷の局所的集中を防止でき好ましい。また、緩衝材自体も導電性とすることが好ましい。さらに、フレキシブル回路基板が、開口部に挿入する辺側に配置されている場合には、特開2010−276659号公報に開示された、1枚の導電性の滑りシートを上下方向に折り曲げて配置し、フレキシブル回路基板周辺部を覆うことで、残留電荷の局所的集中を防止でき好ましい。
【0154】
[特有の構成3]
また、例えば
図17に示すように、センサーパネルSPの基台31の下面側、すなわち例えばPCB基板33の下面側等に、センサーパネルSPに生じた加速度を検出する加速度センサー26を設けるように構成することも可能である。この場合、加速度センサー26は、例えば加速度を3次元的或いは平面的に検出する、いわゆる3次元センサーや2次元センサーでもよいが、少なくともセンサーパネルSPの上下方向の加速度を検出することができるものが用いられる。
【0155】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、前述したように、上記の第1の検出方式(各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づく検出方式)と第2の検出方式(放射線センサー25の出力値に基づく検出方式)のいずれかの方式により放射線の照射開始を検出した場合、或いは両方の方式により放射線の照射開始を検出した場合に、全てのTFT8をオフ状態として電荷蓄積状態(
図6参照)に移行させる。
【0156】
なお、第1の検出方式における照射開始の判断に必要な処理時間を基本周期として設定し、第2の検出方式は、当該基本周期の間に、放射線センサー25自身の検出サイクルを複数回回せる(複数回の判断結果が算出される)よう構成し、複数回連続して照射開始と判断された場合にのみ、第2検出方式は照射開始と総合判断することで、放射線センサー25への単発的なノイズに対応することが可能となる。
【0157】
また、第2の検知方式で照射開始と判断された際に、第1の方式の状態に係らず直ちに電荷蓄積状態に移行させると、例えば、第1の検知方式による(リークデータdleak読み出しに続く)リセット処理途中であった場合等に、リセット終了ラインと未終了ラインとで差異を生じ、結果として放射線画像情報にムラが重畳することにもなり易いので、ムラ防止の観点から、本実施形態における放射線照射開始検出のサイクルを、第1の検出方式の基本周期時間(リークデータ読み出し時間とこれに続くリセット時間をも含んだ時間)に設定している。
【0158】
しかし、第1の検出方式すなわち各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づく検出方式で放射線の照射開始を検出したとしても、上記のように、放射線画像撮影装置1に振動等が加わったことによりリークデータdleak等の値が増加して閾値dleak_th以上になり放射線の照射開始が誤検出された可能性がある。
【0159】
そこで、この特有の構成3では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上になった時点から所定期間の間は、仮に第1の検出方式により、読み出されたリークデータdleak等の値が増加して閾値dleak_th以上になる等して放射線の照射開始が検出される状態であっても放射線の照射開始を検出しないように構成することが可能である。
【0160】
或いは、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上になった時点から所定期間の間は、そもそも第1の検出方式による放射線の照射開始の検出処理を行わないように構成することも可能である。
【0161】
なお、上記の「加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上になった時点」とは、例えば加速度センサー26が検出した加速度の絶対値を算出し、その絶対値が所定の閾値以上になった時点としてもよく、また、加速度センサー26が検出した加速度についてプラス側およびマイナス側にそれぞれ所定の閾値を設定しておき、検出したプラスの値の加速度がプラス側の所定の閾値以上になった時点、或いは検出したマイナスの値の加速度がマイナス側の所定の閾値以下になった時点としてもよい。
【0162】
このように構成すれば、加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上になり、センサーパネルSPに大きな加速度が生じた場合に、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づく検出方式(第1の検出方式)で放射線の照射開始を検出しても、放射線の照射開始として検出されず、或いは、加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上になってから所定期間の間、第1の検出方式による放射線の照射開始の検出処理が行われないため、放射線画像撮影装置1に振動等が加わったことにより放射線の照射開始を誤検出することを的確に防止することが可能となる。
【0163】
また、上記のように加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上になってから所定期間の間、第1の検出方式で放射線の照射開始を検出できない場合であっても、放射線センサー25の出力値に基づく検出方式(第2の検出方式)で放射線の照射開始が検出された場合には実際に放射線の照射が開始された可能性が高い。
【0164】
そのため、この特有の構成3では、このような場合には、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線の照射が開始されたと判断して、TFT8をオフ状態として電荷蓄積状態に移行させ、その後、画像データDの読み出し処理を行うように構成される(
図6参照)。
【0165】
なお、上記の第1の検出方式は、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づく検出方式であるため、各放射線検出素子7等に加速度が生じているか否かを加速度センサー26で検出するように構成することが望ましい。そのため、例えば、加速度センサー26を筐体2の内側等に取り付けるのではなく、
図17に示したように、センサーパネルSPの基台31の下面側等に取り付ける等して設けることが望ましい。
【0166】
そして、本発明者らの研究では、加速度センサー26を、例えばセンサーパネルSPの中心位置(後述する
図21のC参照)に配置するように構成すれば、加速度センサー26が1個だけ配置される場合でも、センサーパネルSPに生じた振動(すなわち加速度)を的確に検出することができることが分かっている。
【0167】
しかし、センサーパネルSPによっては(すなわち放射線画像撮影装置1によっては)、例えば筐体2の端部に加わった衝撃等による振動が緩衝部材2B2、2C2(
図17等参照)を介してセンサーパネルSPに伝達され、その振動がセンサーパネルSPの中心位置に設けた加速度センサー26で検出されるまでに時間がかかる可能性がある。
【0168】
そして、振動が加速度センサー26で検出されるまでに時間がかかると、放射線画像撮影装置1に振動等が加わったことによりリークデータdleak等の値が増加して閾値dleak_th以上になるタイミングと、加速度センサー26が振動(すなわち加速度)を検出するタイミングとがずれてしまう虞れがある。
【0169】
そして、上記のようにタイミングがずれると、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づく検出方式(第1の検出方式)で放射線の照射開始を検出した時点では、まだ加速度センサー26が検出した加速度の大きさが所定の閾値以上に大きくならないため、放射線の照射開始を誤検出してしまう虞れがある。すなわち、上記の特有の構成3が機能しなくなる虞れがある。
【0170】
そこで、上記のような虞れがある場合には、加速度センサー26をセンサーパネルSPの下面側の端部部分に設けるように構成することが可能である。この場合、例えば、加速度センサー26をセンサーパネルSPの四隅の部分にそれぞれ設けたり、或いは、例えば
図18に示すように、センサーパネルSPの四隅の部分と中心位置とにそれぞれ計5個の加速度センサー26を設けるように構成することも可能である。
【0171】
このように構成すれば、少なくとも、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動等が加わった部分に最も近い位置に設けられた加速度センサー26は、リークデータdleak等の値が増加して閾値dleak_th以上になるタイミングと同じタイミングで出力値が大きくなる。そのため、上記の特有の構成3を的確に機能させることが可能となる。
【0172】
[求められる放射線センサーの性能について]
なお、本実施形態では、上記の特有の構成1〜3を成立させるために、第2の検出方式を担当する放射線センサー25として、前述したように、振動等の外乱が生じた場合でも出力されるノイズが大きくならず、外乱により放射線の照射開始を誤検出しにくい放射線センサーが用いられる。
【0173】
また、例えば
図19(A)に示す場合に比べて、
図19(B)に示すように、ノイズ、すなわち放射線の照射を検出していない場合のセンサー内でのアンプ出力xの上下の振れ幅が小さい放射線センサー25を用いると、照射された放射線を的確に検出することが可能となる。
【0174】
すなわち、
図19(A)に示すようにアンプ出力xの上下の振れ幅(すなわちノイズ)が大きい場合には、図の上段に示すアンプ出力xに対する照射判定レベルを高い値にせざるを得ない。そのため、この状態で、図中矢印で示されるタイミングで放射線が照射されたとすると、照射される線量率(すなわち単位時間当たりの線量)が小さい放射線では、放射線が照射されたことによりアンプ出力xが上昇しても照射判定レベル以上にならない場合がある。
【0175】
そのため、このように線量率が小さい放射線(すなわちいわゆる弱い放射線)が照射された場合には、
図19(A)の下段に示すように、放射線センサー25からのデジタル出力dが発信されず、結局、放射線の照射開始を検出できなくなる場合がある。
【0176】
それに対し、
図19(B)に示すようなノイズが小さい放射線センサー25では、ノイズすなわちアンプ出力xの上下の振れ幅が小さい分だけ、図の上段に示すアンプ出力xに対する照射判定レベルを下げることが可能となる。そのため、図中矢印で示されるタイミングで放射線が照射されたとすると、線量率が小さい放射線が照射された場合でも、設定される照射判定レベルが低いため、放射線が照射されたことによりアンプ出力xが上昇して照射判定レベル以上になる。
【0177】
そのため、ノイズが小さい放射線センサー25を用いれば、このように線量率が小さい放射線が照射された場合でも、
図19(B)の下段に示すように、放射線センサー25からのデジタル出力dが的確に発信され、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0178】
[放射線センサーの配置について]
また、放射線センサー25は、
図1に示すように基台31の下面に直接取り付けたり、或いは基台31の下面側に設けられたPCB基板33の下面に取り付ける等して配置することが可能である。また、上記の実施形態の構成においては、照射線量に対し、放射線センサー25に到達する線量は1/30程度に減弱される。照射線量に対し放射線センサー25に到達する線量割合を増加せしめるために、基台31に部分的に凹部を設けて放射線センサー25を固定したり、放射線センサー25に対応する鉛板42を部分的に切欠いたりしても良い。
【0179】
その際、放射線センサー25を1個だけ設ける場合には、例えば放射線画像撮影装置1を上側から見た図である
図20に示すように、放射線センサー25を放射線画像撮影装置1の検出部P(すなわちセンサー基板4上で複数の放射線検出素子7が二次元状に配列された矩形状の領域)の中心位置(すなわち矩形状領域の対角線の交点位置(後述する
図21のC参照))に配置するように構成することが理想的である。
撮影を行う放射線技師は、撮影可能領域の中心に放射線センサー25が設けられていることを意識して、患者をポジショニングすることができる。
【0180】
なお、CRカセッテと互換サイズの放射線画像撮影装置1の場合には、検出部Pの中心位置は強度が最も弱い領域であるので、放射線画像撮影装置1の強度(剛性)を向上させるための補強部品や、バッテリー等の機能部品と補強部品を兼ねる部品が取り付けられていることが多い。そのため、放射線センサー25を1個だけ設ける場合、図示を省略するが、放射線センサー25を、検出部Pの中心位置から所定方向に所定の距離だけずれた位置に配置するように構成することも可能である。
その際には、当該ズレ量を意識して放射線技師がポジショニングを行うことは困難な場面も想定され、放射線の照射開始を検出できなくなる場合も予測される。
【0181】
一方、放射線センサー25を複数配置するように構成すれば、例えば照射野が絞られた放射線が放射線画像撮影装置1に照射された場合に、放射線画像撮影装置1に放射線センサー25を1個だけ設ける場合に比べて、いずれかの放射線センサー25に放射線が照射される確率が高くなり、放射線の照射開始を検出できる可能性が高まるため、好ましい。
【0182】
そして、放射線センサー25を複数配置する場合、例えば、以下の点を考慮する必要がある。
【0183】
すなわち、患者によっては、例えば脊椎を金属部材で固定したり補強したりしている場合がある。そして、放射線画像撮影で胸部正面や腹部正面を撮影する場合、通常、脊椎が検出部Pの中央部に位置するように、患者と放射線画像撮影装置1との位置関係が調整される。
【0184】
また、例えば腰部正面の撮影を行う場合、放射線が当らないようにするために男性器を鉛板等の遮蔽板で覆う場合もある。この場合も、基本的に腰部の中央部分に遮蔽板が位置するようになるため、腰部正面の撮影を行う場合、遮蔽板が検出部Pの中央部に位置するように位置関係が調整される。
【0185】
そのような状況で、放射線センサー25が放射線画像撮影装置1の検出部Pの中心付近に配置されていると、照射された放射線が患者の脊椎部分の金属部材や腰部の中央部分の遮蔽板等で散乱されたり吸収されたりする。そのため、放射線センサー25に到達する放射線が弱くなり、放射線センサー25で放射線の照射開始を的確に検出することができなくなる虞れがある。
【0186】
そこで、放射線センサー25を複数配置する場合、放射線センサー25を検出部Pの中心からずれた位置に配置するように構成することが好ましい。この場合、複数の放射線センサー25を、検出部Pの中心からずれた位置にまとめて配置するように構成すると、全ての放射線センサー25が金属部材等で遮蔽されてしまい、放射線の照射開始を的確に検出することができなくなる虞れがある。
【0187】
そこで、複数の放射線センサー25を互いに離れた位置に配置するようにするために、例えば、
図21に示すように、矩形状の検出部Pを2本の対角線Aで4つの領域に仮想的に分割した各領域Pa、Pb、Pc、Pdを考えた場合、互いに隣り合わない2つの領域に放射線センサー25をそれぞれ配置するように構成することが可能である。
【0188】
そして、その場合、例えば
図21に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部Pが長方形状である場合には、複数の放射線センサー25を、長方形状の検出部Pの仮想的に分割された4つの領域のうち、長方形の短辺を含む2つの領域Pa、Pcにそれぞれ配置するように構成することが可能である。なお、
図21や後述する
図22では、放射線センサー25を2個設ける場合が示されているが、放射線センサー25を3個以上設けてもよい。
【0189】
例えば、被写体である患者が太っている場合には、胸部や腹部、腰部等の正面の撮影を行う際に、放射線画像撮影装置1を横向きに配置して(すなわち例えば
図21に示す縦向きの放射線画像撮影装置1を横向きにして)撮影が行われる場合がある。
【0190】
その際、複数の放射線センサー25が上記のように配置されていれば、当該放射線センサー25の配置方向(横方向)に照射野が絞られることはないので、両方の放射線センサー25で、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0191】
また、例えば、被写体である患者が太っていない場合には、放射線画像撮影装置1を
図21に示した縦向きのまま使用して撮影が行われることが多い。そして、このような場合に、例えば患者の脊椎が金属部材で固定等されていたり、或いは、腰部の中央部分が遮蔽板で覆われる等していると、複数の放射線センサー25が金属部材や遮蔽板等で遮蔽されてしまい、放射線の照射開始を的確に検出することができなくなる虞れがある。
【0192】
そこで、例えば
図22に示すように、複数の放射線センサー25を、矩形状の検出部Pを同形の矩形状の2つの領域(すなわち
図22の場合には縦長の2つの領域)Pe、Pfに仮想的に分割する中心線B上ではなく、中心線B上からずれた位置にそれぞれ配置するように構成することが可能である。
【0193】
このように構成すれば、放射線画像撮影装置1を縦向きに配置して撮影を行う場合に、例えば患者の脊椎部分の金属部材や腰部の中央部分の遮蔽板等の左右の位置に複数の放射線センサー25がそれぞれ位置するようになるため、金属部材や遮蔽板等で放射線センサー25が遮蔽されてしまうことを的確に防止することが可能となる。そして、複数の放射線センサー25のうちのいずれか或いは全てで、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0194】
CRカセッテ互換サイズの放射線画像撮影装置1の場合には、放射線技師は、被写体に対し縦長/横長の各設定において、それぞれ2つの放射線画像撮影装置1のセット方向が考えられるが、上記のように2個の放射線センサー25を配置することで、いずれの撮影においても、少なくとも1つの放射線センサー25で放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0195】
なお、
図21や
図22では、複数の放射線センサー25を、検出部Pの中心C(
図21参照)について対称な位置に配置する場合を示したが、必ずしもこのように構成する必要はなく、適宜の位置に配置するように構成することが可能である。
【0196】
また、上記の実施形態では、第1の検出方式として、主に、読み出されたリークデータdleakやそれに基づいて算出される値(差分Δd(z)等)に基づいて放射線の照射開始を検出する方式(前述した特許文献5等参照)について説明したが、前述したように、この他にも、第1の検出方式として、例えば前述した特許文献6〜8に記載されている検出方法等を採用することも可能であり、本発明が第1の検出方式としてそのような検出方法を採用した場合にも適用されることは言うまでもない。
【0197】
さらに、本発明が上記の実施形態や変形例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0198】
例えば、本実施形態においては、各放射線検出素子7や放射線検知用画素からのデータに基づいて放射線の照射開始を検出する第1の検出方式、および、放射線センサー25の出力値に基づいて放射線の照射開始を検出する第2の検出方式の両方式を常に有効化していたが、予め撮影対象となる部位や撮影対象となる関心領域の大きさ等が事前に判明している場合(例えば、胸部正面撮影等の体幹部の撮影であることが撮影オーダー情報により事前に判明しているような場合)には、一般的にエネルギー消費の大きい第1の検出方式は使用せず、後者の第2の検出方式のみ使用とすることで、内蔵バッテリーの消耗を抑制することも可能となる。
その際には、放射線センサーが複数回連続して照射開始と判断した場合に、直ちに電荷蓄積状態(
図6参照)に移行させることも可能となり、前述する基本周期よりも短い周期
設定も可能となる。
【0199】
また、放射線画像撮影装置1に、もう1つの加速度センサーを設け、或いは
図17や
図18に示した加速度センサー26を用いて、加速度センサーを落下高さ検知センサーとして用いるように構成することも可能である。すなわち、放射線画像撮影装置1を落下させた際の高さと装置に加わる加速度との関係を予め求めておき、また、落下高さ検知センサーが検知した加速度を放射線画像撮影装置1に記憶するように構成して、落下高さ検知センサーが検知した加速度から、放射線画像撮影装置1をどの高さから落下させたかを知ることができるように構成することも可能である。このデータ(落下高さに関するデータ)はメンテナンス等に有効活用可能である。
【0200】
なお、工場出荷後の輸送途中における落下や衝撃検知用として、ショックセンサーと併用することも可能である。なお、当該ショックセンサーは開梱設置時にサービスパーソンにより確認可能な位置に取り付けることが必要で、上記の加速度センサーとは異なり、
図17等に示す、開口部を覆う蓋部材2B或いは蓋部材2C近傍に設けられることが好ましい。