(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4工程では、前記第2レーザー光により不純物が活性化する深さを1μm以上4μm以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(半導体ウエハ)の主面から深い領域をレーザーアニールにより活性化する方法の1つに、比較的波長の長い例えば赤外(IR:infrared)レーザー等の長波長レーザーを用いる方法が挙げられる。波長の長いレーザーを用いるほど、レーザー光の侵入深さが深く、半導体基板のより深い領域にレーザー光が到達する。このため、長波長レーザーを用いることで、比較的波長の短い例えばグリーン(Green)レーザー等の短波長レーザーを用いた場合よりも深い領域の活性化が可能である。
【0003】
また、レーザーアニールにより所定領域を活性化する別の方法として、長波長レーザーを用いて半導体基板の主面から相対的に深い領域を活性化させた後に、短波長レーザーを用いて半導体基板の同一主面から相対的に浅い領域を活性化させる方法が知られている。半導体基板の主面から相対的に深い領域とは、例えばフィールドストップ(FS:Field Stop)領域である。半導体基板の主面から相対的に浅い領域とは、例えばコレクタ領域やカソード領域である。
【0004】
波長の異なる2つのレーザーを用いた従来のレーザーアニールについて、RC−IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor:逆導通型の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を作製(製造)する場合を例に説明する。
図10A,10Bは、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。ここでは、長波長レーザーとしてIRレーザーを用い、短波長レーザーとしてGreenレーザーを用いる。
【0005】
まず、
図10Aに示すように、n
-型ドリフト領域101となるn
-型の半導体基板110のおもて面側に、RC−IGBTのおもて面素子構造およびおもて面電極109を形成する。RC−IGBTのおもて面素子構造とは、IGBT領域121に配置されるIGBTのMOSゲートと、FWD(Free Wheeling Diode:還流ダイオード)領域122に配置されるFWDのp型アノード領域である。IGBT領域121およびFWD領域122は、同一の半導体基板110に並列に配置される。
【0006】
IGBTのMOSゲートは、p型ベース領域102、n
+型エミッタ領域103、p
+型コンタクト領域104、トレンチ105、ゲート絶縁膜106およびゲート電極107からなる。p型ベース領域102は、FWDのp型アノード領域を兼ねる。おもて面電極109は、エミッタ電極およびアノード電極を兼ねる。次に、半導体基板110の裏面から異なる条件でイオン注入を複数回行い、n型FS領域111、p
+型コレクタ領域112およびn
+型カソード領域113をそれぞれ形成する。
【0007】
次に、半導体基板110の裏面から相対的に深いn型FS領域111にIRレーザーのレーザー光131を照射して、n型FS領域111を活性化させる。次に、
図10Bに示すように、半導体基板110の裏面から相対的に浅いp
+型コレクタ領域112およびn
+型カソード領域113にGreenレーザーのレーザー光132を照射して、p
+型コレクタ領域112およびn
+型カソード領域113を活性化させる。その後、半導体基板110の裏面に裏面電極(不図示)を形成することで、RC−IGBTが完成する。
【0008】
レーザーアニールにより所定領域を活性化する別の方法として、半導体レーザー発振器から射出した第1のレーザー光を半導体基板に照射し続けた状態で、固体レーザー発振器から射出した第2のレーザー光を半導体基板の同一主面に照射する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1(第0011,0022段落)参照。)。下記特許文献1では、第1のレーザー光の波長は950nm以下であり、第2のレーザー光の波長は緑色の波長域であり、第1,2のレーザー光を照射する領域はほぼ重なっている。
【0009】
また、レーザーアニールにより所定領域を活性化する別の方法として、半導体基板のイオン注入面に対して、YAG2ωレーザー(YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザーの第2高
調波、波長:500nm)とGaAs(ヒ化ガリウム)系の半導体レーザ(波長:808nm)とを同時に照射する方法が提案されている(例えば、下記特許文献2(第0057段落)参照。)。下記特許文献2では、異なる波長の2種類のレーザーのレーザー光を同時に照射することで、基板おもて面のMOSゲートに悪影響を与えずに、半導体基板の裏面から深い位置に所定領域を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のレーザーアニール(
図10A,10B参照)では、次の問題が生じる。
図8,9は、従来の半導体装置のレーザーアニール後のキャリア濃度分布を示す特性図である。
図8,9には、
図10Bの切断線AA−AA’におけるキャリア濃度分布を示す。FWD領域122にn
+型カソード領域113を形成するには半導体基板110の裏面から高ドーズ量でイオン注入を行う必要があるが、高ドーズ量でイオン注入を行うと、半導体基板110の裏面の表面層の結晶性が崩れてアモルファス化してしまう。長波長レーザーのレーザー光131は、アモルファス化した領域よりも深い領域に照射することとなる。
【0012】
アモルファス化した領域およびアモルファス化した領域よりも深い領域に長波長レーザーのレーザー光131を照射する場合、レーザー光131の吸収率が低下、または、レーザー光131の反射率が高くなる。これによって、アモルファス化した領域よりも半導体基板110の裏面から深い領域にまで熱が伝わらずに、
図8に示すように所定領域(ここではn型FS領域111)を活性化しにくくなる。このため、n型FS領域111のキャリア濃度がn
-型ドリフト領域101のキャリア濃度よりも低くなり、n型FS領域111の所定のキャリア濃度が得られない。
【0013】
この問題は、より高エネルギー(例えば5.8J/cm
2以上程度)で長波長レーザーのレーザー光131を照射することで解決される。すなわち、
図9に示すように、高エネルギーのレーザー光131によりn型FS領域111が活性化され、n型FS領域111のキャリア濃度がn
-型ドリフト領域101のキャリア濃度よりも高くなる。しかしながら、長波長レーザーのレーザー光131を高エネルギーで照射するほど、半導体基板110の裏面が高温度になって発熱する。
【0014】
上記特許文献1,2においても、波長の異なる2種類のレーザーのレーザー光を半導体基板の一方の主面から同一領域に同時に照射するため、半導体基板の裏面が高温度になって発熱する。具体的には、半導体基板の裏面の表面温度が例えば200℃〜300℃程度まで上昇してしまうため、例えば、半導体基板110のおもて面の表面層が変質したり、半導体基板110のおもて面を覆うレジスト膜のパターン変形(レジスト焼け)や、粘着テープの変形・発泡・糊残りなど、半導体基板110のおもて面側の各部に悪影響が及ぶ。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、より低エネルギーでのレーザーアニールにより所定領域を活性化させることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、半導体基板の一方の主面から不純物をイオン注入して第1半導体領域を形成する第1工程を行う。次に、前記半導体基板の一方の主面から不純物をイオン注入して、前記第1半導体領域よりも浅い領域に、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2半導体領域を形成する第2工程を行う。次に、前記半導体基板の一方の主面から第1レーザー光を照射して前記第2半導体領域を活性化させるとともに、前記半導体基板の一方の主面の表面層を溶融して再結晶化する第3工程を行う。次に、前記第3工程の後、前記第1レーザー光よりも波長の長い第2レーザー光を前記半導体基板の一方の主面から照射して前記第1半導体領域を活性化させる第4工程を行う。
前記第3工程では、前記第1レーザー光のエネルギーを1J/cm2以上2J/cm2以下とし、前記第1レーザー光のパルス幅を50ns以上300ns以下とする。前記第4工程では、前記第2レーザー光のエネルギーを4.8J/cm2以上8J/cm2以下とし、前記第2レーザー光のパルス幅を前記第1レーザー光のパルス幅より長く、かつ10μs以上とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第3工程では、前記第1レーザー光により不純物が活性化する深さを1μm未満とすることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第4工程では、前記第2レーザー光により不純物が活性化する深さを1μm以上4μm以下とすることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1レーザー光の波長は、500nm以上550nm以下であることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2レーザー光の波長は、800nm以上であることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、第5,6工程をさらに含む。前記第5工程では、第1導電型の前記半導体基板の他方の主面側に所定の素子構造を形成する。前記第6工程では、前記第3工程の前に、前記半導体基板の一方の主面から第2導電型不純物をイオン注入して、前記第1半導体領域よりも浅い領域に、前記半導体基板の一方の主面に平行な方向に前記第2半導体領域に並列に配置された第2導電型の第3半導体領域を形成する。前記第1工程では、第1導電型不純物をイオン注入して第1導電型の前記第1半導体領域を形成する。前記第2工程では、第1導電型不純物をイオン注入して第1導電型の前記第2半導体領域を形成する。前記第3工程では、前記第1レーザー光を照射して前記第2半導体領域および前記第3半導体領域を活性化させることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、イオン注入のドーズ量を5×10
11/cm
2以上1×10
14/cm
2以下とすることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程では、イオン注入のドーズ量を1×10
14/cm
2以上1×10
16/cm
2以下とすることを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第6工程では、イオン注入のドーズ量を1×10
12/cm
2以上1×10
15/cm
2以下とすることを特徴とする。
【0027】
上述した発明によれば、半導体基板の裏面から浅く、かつ相対的に不純物濃度の高い第2半導体領域を形成するためのイオン注入でアモルファス化した部分が短波長レーザーによるレーザーアニールで溶融され再結晶化される。このため、その後、半導体基板の裏面からの長波長レーザーによる第1半導体領域のレーザーアニール時に、長波長レーザーのレーザー光の吸収率低下や高反射率化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、より低エネルギーでのレーザーアニールにより所定領域を活性化させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
(実施の形態)
まず、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法により作製(製造)される半導体装置の一例として、RC−IGBTの構造について説明する。
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法により製造される半導体装置の一例を示す断面図である。
図1に示す実施の形態にかかる半導体装置は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)と同一のn
-型半導体基板(半導体チップ)10に、当該IGBTに逆並列に接続された還流用ダイオード(FWD)を配置したRC−IGBTである。
【0032】
具体的には、n
-型ドリフト領域1となる同一n
-型半導体基板(半導体チップ)10に、IGBT領域21およびFWD領域22が並列に配置されている。IGBT領域21には、IGBTが配置される。FWD領域22には、FWDが配置される。IGBT領域21において、n
-型半導体基板10のおもて面側には、p型ベース領域2、n
+型エミッタ領域3、p
+型コンタクト領域4、トレンチ5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなる一般的なトレンチゲート型のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)が設けられている。
【0033】
おもて面電極9は、n
+型エミッタ領域3およびp
+型コンタクト領域4に接し、これらn
+型エミッタ領域3およびp
+型コンタクト領域4に電気的に接続されている。また、おもて面電極9は、層間絶縁膜8によってゲート電極7と電気的に絶縁されている。p型ベース領域2、トレンチ5、層間絶縁膜8およびおもて面電極9は、IGBT領域21からFWD領域22にわたって設けられている。n
+型エミッタ領域3およびp
+型コンタクト領域4は、FWD領域22には設けられていない。
【0034】
すなわち、FWD領域22において、n
-型半導体基板10のおもて面の表面層には、IGBT領域21と同様に、p型ベース領域2、トレンチ5、層間絶縁膜8およびおもて面電極9が設けられている。p型ベース領域2は、FWD領域22においてp型アノード領域として機能する。おもて面電極9は、エミッタ電極およびアノード電極を兼ねる。
図1には、IGBT領域21にIGBTの複数の単位セル(素子の構成単位)が並列に配置され、FWD領域22にFWDの複数の単位セルが並列に配置された状態を示す。
【0035】
n
-型半導体基板10の裏面の表面層には、n型フィールドストップ(FS)領域(第1半導体領域)11が設けられている。n型FS領域11は、IGBT領域21からFWD領域22にわたって設けられている。n型FS領域11は、IGBTのオフ時にp型ベース領域2とn
-型ドリフト領域1とのpn接合から伸びる空乏層の伸びを抑制する機能を有する。また、n
-型半導体基板10の裏面の表面層には、n
-型半導体基板10の裏面からn型FS領域11よりも浅い位置に、p
+型コレクタ領域(第3半導体領域)12およびn
+型カソード領域(第2半導体領域)13がそれぞれ選択的に設けられている。
【0036】
p
+型コレクタ領域12はIGBT領域21に設けられ、n
+型カソード領域13はFWD領域22に設けられている。p
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13は、n型FS領域11に接する。また、p
+型コレクタ領域12とn
+型カソード領域13とは互いに接し、かつn
-型半導体基板10の主面に平行する方向に並列に配置されている。n
-型半導体基板10の、p型ベース領域2、n型FS領域11、p
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13以外の部分がn
-型ドリフト領域1である。
【0037】
裏面電極14は、n
-型半導体基板10の裏面全面に設けられp
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13に接し、これらp
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13に電気的に接続されている。裏面電極14は、コレクタ電極およびカソード電極を兼ねる。
【0038】
次に、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図2は、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。
図3A,3Bは、実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図4は、実施の形態にかかる半導体装置のレーザーアニール後のキャリア濃度分布を示す特性図である。
図4には、
図3Bの切断線A−A’におけるキャリア濃度分布を示す。まず、一般的な方法により、n
-型ドリフト領域1となるn
-型半導体基板(半導体ウエハ)10のおもて面側に、MOSゲート、層間絶縁膜8およびおもて面電極9などのおもて面素子構造を形成する(ステップS1)。
【0039】
次に、n
-型半導体基板10を薄化する(ステップS2)。n
-型半導体基板10の薄化工程は、以下の工程が含まれる。n
-型半導体基板10のおもて面に表面保護膜を形成する。表面保護膜は、例えばレジストを塗布し、n
-型半導体基板10のおもて面側のおもて面素子構造をレジスト膜(不図示)で保護する。次に、n
-型半導体基板10のおもて面に、後述するバックグラインド時にn
-型半導体基板10のおもて面を異物等から保護するバックグラインドテープ(粘着テープ:不図示)を貼り付ける。次に、n
-型半導体基板10のおもて面素子構造の凹凸に応じて凹凸が発生したバックグラインドテープを平坦化する。次に、n
-型半導体基板10を裏面側から裏面全面にわたって研削(バックグラインド)し、n
-型半導体基板10の厚さを一様に薄くする。
【0040】
次に、n
-型半導体基板10の中央部のみを裏面側から研削していき(例えばいわゆるTAIKO(登録商標)プロセス)、n
-型半導体基板10の外周の厚さを変えずに、n
-型半導体基板10の中央部のみを半導体装置として用いる製品厚さにする。次に、n
-型半導体基板10のおもて面からバックグラインドテープを剥離する。なお、レジスト膜を保護膜として用いることに代えて、n
-型半導体基板10のおもて面を保護テープで保護してもよい。また、TAIKOプロセスに代えて、支持基板によってn
-型半導体基板10を補強した状態でn
-型半導体基板10全体の厚さを薄くするWSS(Wafer Support System)プロセスを用いてもよい。
【0041】
次に、バックグラインド後にn
-型半導体基板10の裏面に残るダメージ層を薬液によるエッチングによって除去する。次に、SC−1溶液(NH
4OHとH
2O
2とH
2Oとの混合溶液)などによりn
-型半導体基板10の裏面を洗浄する。なお、ステップS2のn
-型半導体基板10を薄化する処理は、上記の工程に限定されることなく、n
-型半導体基板10を裏面側から厚さを調整して所望の厚さに薄化できればよい。
【0042】
次に、n
-型半導体基板10の裏面全面に例えばリン(P)等のn型不純物をイオン注入し、n型FS領域11を形成する(ステップS3)。このn型FS領域11を形成するためのイオン注入は、ドーズ量を例えば5×10
11/cm
2以上1×10
14/cm
2以下程度とし、加速エネルギーを例えば0.6MeV以上3MeV以下程度としてもよい。
【0043】
次に、n
-型半導体基板10の裏面全面に例えばボロン(B)等のp型不純物をイオン注入し、n
-型半導体基板10の裏面からn型FS領域11よりも浅い領域にp
+型コレクタ領域12を形成する(ステップS4)。このp
+型コレクタ領域12を形成するためのイオン注入は、ドーズ量を例えば1×10
12/cm
2以上1×10
15/cm
2以下程度とし、加速エネルギーを例えば5keV以上50keV以下程度としてもよい。次に、n
-型半導体基板10の裏面に、n
+型カソード領域13の形成領域に対応する部分が開口したマスク、例えばレジストマスク(不図示)を形成する(ステップS5)。
【0044】
次に、レジストマスクをマスクとしてn
-型半導体基板10の裏面に例えばリン等のn型不純物をイオン注入し、p
+型コレクタ領域12の、レジストマスクの開口部に露出する部分をn型に反転させてn
+型カソード領域13を形成する(ステップS6)。このn
+型カソード領域13を形成するためのイオン注入は、ドーズ量を例えば1×10
14/cm
2以上1×10
16/cm
2以下程度とし、加速エネルギーを例えば5keV以上150keV以下程度としてもよい。n
+型カソード領域13を形成するためのイオン注入は高ドーズ量で行うため、このイオン注入によりn
-型半導体基板10の裏面の表面層の結晶性が崩れてアモルファス化する。
【0045】
n型FS領域11を形成するためのイオン注入は、後述する長波長レーザー(長波長レーザー発振器)を用いたレーザーアニールよりも前に行えばよい。p
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13を形成するための各イオン注入は、後述する短波長レーザー(短波長レーザー発振器)を用いたレーザーアニールよりも前に行えばよい。また、p
+型コレクタ領域12を形成するためのイオン注入は、p
+型コレクタ領域12の形成領域に対応する部分にのみ選択的に行ってもよい。次に、n
+型カソード領域13の形成に用いたマスクを除去する(ステップS7)。例えばステップS5の処理で形成したマスクがレジストマスクの場合は、灰化(アッシング)処理を行う。
【0046】
次に、
図3Aに示すように、n
-型半導体基板10の裏面からn
-型半導体基板10の裏面全体に短波長レーザーのレーザー光31を照射し、p
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13を例えば1000℃以上の温度で活性化させる(レーザーアニール:ステップS8)。n
-型半導体基板10の裏面に短波長レーザーのレーザー光31を照射することで、p
+型コレクタ領域12およびn
+型カソード領域13を形成するためのイオン注入でアモルファス化した部分(n
-型半導体基板10の裏面の表面層)が溶融され固化されることで再結晶化される。短波長レーザーのレーザー光31のエネルギーは、例えば1J/cm
2以上2J/cm
2以下程度である。
【0047】
短波長レーザーとは、例えば1000nm以上1100nm以下程度のレーザー光31を照射可能なレーザー発振器より得られる500nm以上550nm以下程度の第2高調波であることがよい。具体的には、短波長レーザーは、例えばYAGやYLFの第2高調波(グリーン(Green))レーザーである。
【0048】
好ましくは、短波長レーザーとして、YLFの第2高調波などのGreenレーザーを用いることがよい。Greenレーザーとは、緑色の波長域のレーザーを照射可能なレーザー発振器である。Greenレーザーの波長は、例えば500nm以上550nm以下程度であり、例えばアニール処理で一般的に用いられる532nmまたは527nmであってもよい。
【0049】
短波長レーザーにより不純物が活性化する深さは、例えば、p
+型コレクタ領域12またはn
+型カソード領域13を形成するためのイオン注入の飛程と同程度であってもよい。具体的には、短波長レーザーにより不純物が活性化する深さは、例えば1μm未満である。このため、短波長レーザーのパルス幅は、例えば50ns以上300ns以下程度であることがよく、より好ましくは100ns以上200ns以下程度であることがよい。また、不純物を活性化する深さは、p
+型コレクタ領域12またはn
+型カソード領域13などを形成するために注入された不純物が熱処理によって活性化した際の不純物濃度分布のピーク位置(最も不純物濃度が高い位置)を示す。なお、不純物を活性化する深さは、n
-型半導体基板10の裏面からの深さを示す。
【0050】
次に、
図3Bに示すように、n
-型半導体基板10の裏面からn
-型半導体基板10の裏面全体に長波長レーザーのレーザー光32を照射して、n型FS領域11を活性化させる(レーザーアニール:ステップS9)。長波長レーザーにより不純物が活性化する深さは、例えば、n型FS領域11を形成するためのイオン注入の飛程と同程度であってもよい。
【0051】
具体的には、長波長レーザーにより不純物が活性化する深さは、例えば1μm以上4μm以下程度であり、好ましくは1.0μm以上2.5μm以下程度である。したがって、長波長レーザーのレーザー光32をn
-型半導体基板10の裏面にステップS8の処理時よりも長時間照射することが重要となる。このため、長波長レーザーのパルス幅は例えば10μs以上程度とすることが好ましい。
【0052】
長波長レーザーとは、赤外の波長域(例えば800nm以上程度)のレーザー光32を照射可能なレーザー発振器である。好ましくは、長波長レーザーのレーザー光32の波長は、例えば1100nm以下程度であることがよい。なお、この長波長レーザーのレーザー光32の波長は、赤外の波長域を備えたレーザー発振器の一般的な波長である。具体的には、長波長レーザーは、例えばYAGレーザーやガスレーザ−(例えば炭酸ガス(CO
2)レーザー)等の赤外(IR)レーザー、または、半導体レーザーである。
【0053】
好ましくは、長波長レーザーとして、半導体レーザー(波長:808nm)を用いることがよい。その理由は、所望のパルス幅などの条件を容易に設定できるからである。このようにステップS8の処理の後にステップS9の処理を行うことで、n型FS領域11が所定温度(例えば1000℃以上)で活性化され、n型FS領域11のキャリア濃度をn
-型ドリフト領域1のキャリア濃度よりも高い所定のキャリア濃度にすることができる(
図4参照)。
【0054】
ステップS9の処理におけるアニール温度を所定温度にすることができる理由は、次の通りである。n
-型半導体基板10の裏面の表面層は上述したようにステップS8の処理において再結晶化され、アモルファス化した部分がほぼ存在しない。このため、その後のステップS9の処理時において、長波長レーザーのレーザー光32の吸収率低下や高反射率化が抑制される。これにより、長波長レーザーのレーザー光32の照射により生じた熱がn
-型半導体基板10の裏面から深い領域にまで伝わりやすくなるからである。これによって、n型FS領域11のキャリア濃度をIGBT領域21からFWD領域22にわたって所定のキャリア濃度にすることができる。また、短波長レーザーと長波長レーザーとのレーザー照射順序以外を同条件とした従来方法よりも低エネルギー(好ましくは例えば4J/cm
2以上8J/cm
2以下程度)で長波長レーザーを用いることができる。このため、当該従来方法よりも長波長レーザーのレーザー光32を高エネルギーで照射することにより生じる問題が抑制される。
【0055】
次に、n
-型半導体基板10のおもて面を保護していた表面保護膜を除去する(ステップS10)。次に、スパッタにより、n
-型半導体基板10の裏面全面に裏面電極14を形成する(ステップS11)。その後、半導体ウエハをダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、
図1に示すRC−IGBTが完成する。
【0056】
以上、説明したように、実施の形態によれば、半導体基板の裏面から浅く、かつ相対的に不純物濃度の高い領域(コレクタ領域およびカソード領域)を短波長レーザーによるレーザーアニールで活性化した後に、半導体基板の裏面から深い領域(FS領域)を長波長レーザーによるレーザーアニールで活性化する。これにより、まず、半導体基板の裏面から浅い領域を形成するためのイオン注入でアモルファス化した部分が短波長レーザーによるレーザーアニールで溶融され再結晶化される。このため、その後、半導体基板の裏面からの長波長レーザーによるレーザーアニール時に、長波長レーザーのレーザー光の吸収率低下や高反射率化を抑制することができる。これによって、長波長レーザーのレーザー光により生じた熱が半導体基板の裏面から深い領域にまで伝わり、当該深い領域における温度が活性化のために必要な所定のアニール温度に達する。したがって、長波長レーザーによるレーザーアニールを従来よりも低エネルギーで行うことができる。このため、長波長レーザーを用いたレーザーアニールによる半導体基板のおもて面側の各部への悪影響を従来よりも抑制することができる。
【0057】
また、特に、FWDのカソード領域を形成するためのイオン注入は高ドーズ量で行われるため、FWD領域における半導体基板の裏面の表面層でアモルファス化が進みやすい。このため、従来方法では、IGBT領域におけるFS領域に比べてFWD領域におけるFS領域が活性化しにくいため、高エネルギーで長波長レーザーによるレーザーアニールを行う必要がある。それに対して、実施の形態によれば、上述したように短波長レーザーによるレーザーアニールにより半導体基板の裏面の表面層を再結晶化してアモルファス化した部分をほぼなくしてから、長波長レーザーによるレーザーアニールを行う。このため、FWD領域におけるFS領域も確実に活性化させることができる。
【0058】
また、高エネルギーでの長波長レーザーのレーザー光を照射すると、レーザー照射面の面荒れにより半導体基板の裏面の表面状態が悪化するが、実施の形態によれば、長波長レーザーのレーザー光を従来よりも低エネルギーで照射することができるため、長波長レーザーのレーザー光の照射面の面荒れを抑制することができる。また、実施の形態によれば、SR(Spreading Resistance:拡がり抵抗測定)等では発見されずに半導体基板内に残る欠陥を、長波長レーザーのレーザー光により半導体基板の裏面から深い領域まで伝わった熱により回復させることができる。また、実施の形態によれば、短波長レーザーによるレーザーアニールと、長波長レーザーによるレーザーアニールと、を異なるタイミングで行い、これらのレーザーアニールを実行する期間が重ならない。このため、例えば上記特許文献1,2のように両レーザーアニールの実行期間が重なる従来方法よりも、レーザーアニールによる半導体基板の発熱を抑制することができる。
【0059】
(実施例)
次に、長波長レーザーのレーザー光32のエネルギー値について検証した。
図5は、実施例のレーザーアニール後のキャリア濃度分布を示す特性図である。
図5には、
図3Bの切断線A−A’におけるキャリア濃度分布を示す。
図5の横軸はn
-型半導体基板10の裏面(深さ=0μm)からの深さであり、縦軸はn型のキャリア濃度である(
図6,7においても同様)。
図6は、従来例のレーザーアニール後のキャリア濃度分布を示す特性図である。
図6には、
図10Bの切断線AA−AA’におけるキャリア濃度分布を示す。
【0060】
上述した実施の形態にかかる半導体装置の製造方法(
図2,3A,3B参照)にしたがって作製したRC−IGBT(以下、実施例とする)の、n
-型半導体基板10の裏面側のキャリア濃度分布を
図5に示す。すなわち、実施例においては、短波長レーザーおよび長波長レーザーの順にレーザー光31,32を順に照射してn
-型半導体基板10の裏面側のレーザーアニールを行っている。
図5に示す複数の試料は、それぞれ長波長レーザーのレーザー光32のエネルギー値が異なる。
【0061】
比較として、実施例と同様の条件で従来の半導体装置の製造方法(
図10A,10B参照)にしたがって作製したRC−IGBT(以下、従来例とする)の、n
-型半導体基板110の裏面側のキャリア濃度分布を
図6に示す。すなわち、従来例では、長波長レーザーおよび短波長レーザーの順でレーザー光131,132を順に照射してn
-型半導体基板110の裏面側のレーザーアニールを行っている。
図6に示す複数の試料は、それぞれ長波長レーザーのレーザー光131のエネルギー値が異なる。
【0062】
また、実施例および従来例ともに、レーザーアニールに用いる波長の異なるレーザーのレーザー光の照射順序以外は同条件である。具体的には、n型FS領域11,111を形成するためのイオン注入は、ドーズ量を1.0×10
12/cm
2とし、加速エネルギーを2.0MeVとした。p
+型コレクタ領域12,112を形成するためのイオン注入は、ドーズ量を1.0×10
13/cm
2とし、加速エネルギーを例えば20keVとした。n
+型カソード領域13,113を形成するためのイオン注入は、ドーズ量を例えば3×10
15/cm
2とし、加速エネルギーを30keVとした。長波長レーザーとしてIRレーザーを用い、短波長レーザーとしてGreenレーザーを用いた。Greenレーザーのレーザー光のエネルギーを1J/cm
2とした。IRレーザーおよびGreenレーザーともに、レーザーの繰り返し周波数を3kHz以下とした。IRレーザーのパルス幅は20μsecとした。また、レーザーのオーバーラップ率はIRレーザーおよびGreenレーザーともに、長軸50%、短軸50%とした。オーバーラップ率は特に指定しなくともよい。IRレーザーおよびGreenレーザーによるレーザーアニールには、住友重機械工業(登録商標)のレーザーアニール装置を用いた。
【0063】
図5に示す結果から、実施例においては、Si厚(n
-型半導体基板10の厚さ)120μmのデバイスに対しIRレーザーのレーザー光のエネルギーを5.3J/cm
2以上とした試料(符号41でマークしたキャリア濃度分布)でn型FS領域11が活性化していることが確認された。一方、従来例では、IRレーザーのレーザー光のエネルギーを5.8J/cm
2以上の高エネルギーとした試料(符号42でマークしたキャリア濃度分布)でn型FS領域111が活性化し、IRレーザーのレーザー光のエネルギーを低エネルギーとした場合には、n型FS領域111が活性化しきれていないことが確認された。すなわち、実施例は、長波長レーザーのレーザー光131のエネルギー値以外が実施例と同条件の従来例と比べて、長波長レーザーのレーザー光32のエネルギーを0.5J/cm
2程度低くすることができることが確認された。
【0064】
図5,6には本発明の長波長レーザーのレーザー光32のエネルギーの上述した好適な範囲(4J/cm
2以上8J/cm
2以下程度)のうち図示省略するデータもあるが、本発明は、イオン注入条件やレーザーアニール条件を変えた場合に、長波長レーザーのレーザー光32のエネルギーの当該好適な範囲でn型FS領域11が活性化され、かつ、同条件の従来例と比べて長波長レーザーのレーザー光32のエネルギーを低減させることができることが発明者によって確認されている。具体的には、本発明は、長波長レーザーのレーザー光32のエネルギー値以外の条件によらず、従来例と比べて、長波長レーザーのレーザー光32のエネルギーを9%(≒(1−5.3[J/cm
2]/5.8[J/cm
2])×100%)程度低減させることができる。また、実施例ではデバイスのSi厚を120μmで設定しているが、異なるSi厚でその厚さに応じた異なるエネルギー密度[J/cm
2]を使用しても同様の効果が得られる。
【0065】
上述した実施例および比較例において、長波長レーザーのレーザー光32,131のエネルギーを5.3J/cm
2とした場合のキャリア濃度分布を
図7に示す。
図7は、実施例および従来例のレーザーアニール後のキャリア濃度分布を比較した特性図である。
図7に示す結果から、長波長レーザーのレーザー光32,131のエネルギーを5.3J/cm
2とした場合、従来例では、長波長レーザーのレーザー光131のエネルギーが弱すぎて、n型FS領域111(特にFWD領域122におけるn型FS領域111)が活性化しきれないことが確認された。一方、実施例においては、長波長レーザーのレーザー光32が弱くても、n型FS領域11が活性化されていることが確認された。
【0066】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施の形態では、RC−IGBTを例に説明しているが、半導体基板(半導体チップ)の同一主面から異なる深さに領域を配置した様々な構造の半導体装置に適用可能である。具体的には、例えば、半導体基板にFS領域を備えたFWDのみを配置した構造の半導体装置や、回路部を構成する複数の半導体素子の1つ以上にFS領域を備えたFWDを含む構造の半導体装置に本発明を適用可能である。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。