(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴム質重合体(r)存在下、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a1)、および(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)を含む単量体混合物(a)をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体(A)10〜60質量部、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)、およびシアン化ビニル系単量体(b3)を含む単量体混合物(b)を共重合してなるビニル系共重合体(B)40〜90質量部からなる透明熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、重量平均分子量が30万以上のポリジメチルシロキサンガム(C)を15ppm以上40ppm以下含有する透明熱可塑性樹脂組成物。
ゴム質重合体(r)存在下、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a1)、および(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)を含む単量体混合物(a)をグラフト共重合してグラフト共重合体(A)を得る工程、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)、およびシアン化ビニル系単量体(b3)を含む単量体混合物(b)を共重合してビニル系共重合体(B)を得る工程、少なくとも前記グラフト共重合体(A)、前記ビニル系共重合体共重合体(B)及び重量平均分子量が30万以上のポリジメチルシロキサンガム(C)を混合する工程、を備える透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記グラフト共重合体(A)10〜60質量部、前記ビニル系共重合体(B)40〜90質量部からなる透明熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、前記ポリジメチルシロキサンガム(C)を15ppm以上40ppm以下含有する透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
ゴム質重合体(r)および重量平均分子量が30万以上のポリジメチルシロキサンガム(C)存在下、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a1)、および(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)を含む単量体混合物(a)をグラフト共重合してポリジメチルシロキサンガム(C)含有グラフト共重合体(A’)を得る工程、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)、およびシアン化ビニル系単量体(b3)を含む単量体混合物(b)を共重合してビニル系共重合体(B)を得る工程、少なくとも前記ポリジメチルシロキサンガム(C)含有グラフト共重合体(A’)および前記ビニル系共重合体共重合体(B)を混合する工程、を備える透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリジメチルシロキサンガム(C)含有グラフト共重合体(A’)に含まれるグラフト共重合体(A)10〜60質量部、前記ビニル系共重合体(B)40〜90質量部からなる透明熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、前記ポリジメチルシロキサンガム(C)を15ppm以上40ppm以下含有する透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる透明熱可塑性樹脂組成物は、後述するビニル系共重合体(B)に後述するグラフト共重合体(A)を配合し、さらに特定のポリジメチルシロキサンガム(C)を特定量含有する。グラフト共重合体(A)を配合することにより、透明熱可塑性樹脂組成物の成形性を向上させ、成形品の耐衝撃性、透明性、色調を向上させることができる。また、ビニル系共重合体(B)を配合することにより、透明熱可塑性樹脂組成物の成形性を向上させ、成形品の透明性、色調を向上させることができる。さらに、特定のポリジメチルシロキサンガム(C)を特定量含有することにより、成形品の耐衝撃性を向上させることができ、特に、特定の粘度のポリジメチルシロキサンガムを用いることで、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性、金型汚染性を向上させることができる。
【0013】
本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(r)存在下において、少なくとも、芳香族ビニル系単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)とを含む単量体混合物(a)を、グラフト共重合して得られるものである。すなわち、グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(r)に、少なくとも、芳香族ビニル系単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)とを含む単量体混合物(a)がグラフト共重合された共重合体である。前記の単量体混合物(a)は、後述する(a1)〜(a2)と共重合可能な他の単量体をさらに含有してもよい。
【0014】
ゴム質重合体(r)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)(SBR)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、天然ゴムなどが挙げられる。ゴム質重合体(r)として、上記材料を2種以上用いてもよい。ゴム質重合体(r)のなかでも、成形品の耐衝撃性、透明性、色調をより向上させる観点から、ポリブタジエン、SBR、天然ゴムが好ましく、ポリブタジエンが最も好ましい。
【0015】
グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(r)の含有量は、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(r)およびビニル系単量体混合物(a)の総量に対して、20質量%以上80質量%以下が好ましい。ゴム質重合体(r)の含有量が20質量%以上であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。ゴム質重合体(r)の含有量は、35質量%以上がより好ましい。一方、ゴム質重合体(r)の含有量が80質量%以下であれば、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の耐衝撃性、透明性をより向上させることができる。ゴム質重合体(r)の含有量は60質量%以下がより好ましい。
【0016】
ゴム質重合体(r)の質量平均粒子径は、0.15μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.25μm以上であり、また、その上限としては、0.4μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.35μm以下である。ゴム質重合体(r)の質量平均粒子径が0.15μm以上とすることにより、成形品の耐衝撃性の低下を抑制できる。また、ゴム質重合体(r)の質量平均粒子径が0.4μm以下とすることにより、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の透明性、色調が低下することを抑制できる。ここで、質量平均粒子径は、ゴム質重合体(r)のラテックスを水媒体で希釈、分散させた後、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置により粒子径分布を測定し、その粒子径分布から算出した質量平均粒子径である。
【0017】
ビニル系単量体混合物(a)の成分として用いられる芳香族ビニル系単量体(a1)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどが挙げられる。芳香族ビニル系単量体(a1)として、これらを2種以上含有してもよい。芳香族ビニル系単量体(a1)の中でも、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の透明性、剛性をより向上させる観点から、スチレンが好ましい。
【0018】
ビニル系単量体混合物(a)中の芳香族ビニル系単量体(a1)の含有量は、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の剛性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(a)の合計100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(a)中の芳香族ビニル系単量体(a1)の含有量は、成形品の耐衝撃性および透明性を向上させる観点から、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
ビニル系単量体混合物(a)の成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)としては、例えば、炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが好ましい。炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルは、さらに水酸基やハロゲン基などの置換基を有してもよい。炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)として、これらを2種以上含有してもよい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)の中でも、成形品の透明性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。なお、「(メタ)」とは、「メタ」があってもよく、なくてもよい。例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を示す。
【0020】
ビニル系単量体混合物(a)中の(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)の含有量は、成形品の透明性を向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(a)の合計100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(a)中の(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)の含有量は、成形品の透明性をより向上させる観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
また、前述の芳香族ビニル系単量体(a1)と(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)と共重合可能な他の単量体は、前述の(a1)、(a2)以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。そのような他の単量体としては、具体的には、シアン化ビニル系単量体(a3)、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体などが挙げられ、これらを2種以上含有してもよい。
【0022】
ビニル系単量体混合物(a)中のシアン化ビニル系単量体(a3)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられる。シアン化ビニル系単量体(a3)として、これらを2種以上含有してもよい。シアン化ビニル系単量体(a3)の中でも、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、アクリロニトリルが好ましい。
【0023】
ビニル系単量体混合物(a)中のシアン化ビニル系単量体(a3)の含有量は、成形品の耐衝撃性を向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(a)の合計100質量%に対して、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(a)中のシアン化ビニル系単量体(a3)の含有量は、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の色調を向上させる観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
単量体混合物(a)の一成分として用いることが可能な不飽和脂肪酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。マレイミド系単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0025】
グラフト共重合体(A)はその一部がアセトンに可溶であることができ、該アセトン可溶分の重量平均分子量は特に制限はないが、50,000以上であることが好ましく、60,000以上がより好ましい。グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量が50,000以上であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量は120,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量が120,000以下であれば、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。
【0026】
ここで、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量は、アセトン中にグラフト共重合体(A)を投入して可溶分を溶解させ、グラフト共重合体(A)からアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより採取したアセトン可溶分について、約0.03gをテトラヒドロフラン約15gに溶解した約0.2質量%の溶液を作製する。この溶液を用いて測定したGPCクロマトグラムから、ポリメタクリル酸メチルを標準物質として換算することにより求めることができる。なお、GPC測定は、下記条件により測定することができる。
測定装置:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/分(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー(株)製)。
【0027】
グラフト共重合体(A)において、そのグラフト率には特に制限はないが、成形品の耐衝撃性を向上させる観点から、10%以上100%以下が好ましい。
【0028】
ここで、グラフト共重合体(A)のグラフト率は、以下の方法により求めることができる。まず、グラフト共重合体(A)約1gにアセトン80mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流する。この溶液を8000r.p.m(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過することにより、アセトン不溶分を得る。得られたアセトン不溶分を80℃で5時間減圧乾燥させた後、その質量(下記式ではn(g)とする)を測定し、下記式よりグラフト率を算出する。ここで、mは、用いたグラフト共重合体(A)のサンプル質量(g)であり、Xはグラフト共重合体(A)のゴム質重合体含有量(質量%)である。
グラフト率(%)={[(n)−((m)×X/100)]/[(m)×X/100]}×100。
【0029】
グラフト共重合体(A)のグラフト成分(アセトン不溶分)とゴム質重合体(r)との屈折率の差が0.03以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。グラフト共重合体(A)のグラフト成分(アセトン不溶分)とゴム質重合体(r)との屈折率の差を0.03以下に抑えることで、成形品の透明性、色調を向上させることができる。
【0030】
グラフト共重合体(A)のグラフト成分の屈折率は、主に原料となるビニル系単量体の組成に依存するため、ビニル系単量体の種類や組成比を適宜選択することにより、屈折率を所望の範囲にすることができる。特に、乳化重合法により、高分子量体転換率を95%以上にする場合、グラフト成分の組成は、ビニル系単量体混合物(a)の組成とほぼ同等となる。
【0031】
グラフト共重合体(A)のグラフト成分の屈折率は、ビニル系単量体の屈折率と含有量から推測することができる。例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルの共重合体の場合には、下記式によりグラフト共重合体(A)のグラフト成分の屈折率を推測することができる。
nD(G)=(1.595×MS/100)+(1.490×MM/100)+(1.510×MA/100)
ここで、nD(G)はグラフト共重合体(A)のグラフト成分の屈折率を表し、MSはスチレン含有量(質量%)を表し、MMはメタクリル酸メチル含有量(質量%)、MAはアクリロニトリル含有量(質量%)を表す。1.595はポリスチレンの屈折率を表し、1.490はポリメタクリル酸メチルの屈折率を表し、1.510はポリアクリロニトリルの屈折率を表す。なお、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリルの屈折率は、アッベ屈折率計にて測定することができる。
【0032】
また、グラフト共重合体(A)のグラフト成分の屈折率は、グラフト共重合体(A)をアセトンに溶解し、アセトン可溶分を濾過した残渣を乾燥することにより得られるグラフト成分について、アッベ屈折率計にて測定することができる。
【0033】
グラフト共重合体(A)の製造方法は、ゴム質重合体(r)の粒子径を所望の範囲に容易に調整することができること、重合時の除熱により重合安定性を容易に調整することができることから、乳化重合法を用いることがより好ましい。
【0034】
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、ゴム質重合体(r)とビニル系単量体混合物(a)の仕込み方法は、特に限定されない。例えば、これら全てを初期一括仕込みとしてもよいし、共重合体組成の分布を調整するために、ビニル系単量体混合物(a)の一部を連続的に仕込んでもよいし、ビニル系単量体混合物(a)の一部または全てを分割して仕込んでもよい。ここで、ビニル系単量体混合物(a)の一部を連続的に仕込むとは、ビニル系単量体混合物(a)の一部を初期に仕込み、残りを経時的に連続して仕込むことを意味する。また、ビニル系単量体混合物(a)を分割して仕込むとは、ビニル系単量体混合物(a)を、初期仕込みより後の時点で仕込むことを意味する。
【0035】
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、乳化剤として各種界面活性剤を添加してもよい。各種界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型などのアニオン系界面活性剤が特に好ましく、アニオン系界面活性剤を2種以上組み合わせてもよい。なお、ここで言う塩としては、たとえば、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0036】
カルボン酸塩型の乳化剤としては、例えば、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリル酸塩、ミスチリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ロジン酸塩、ベヘン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0037】
硫酸エステル塩型の乳化剤としては、例えば、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。
【0038】
スルホン酸塩型の乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物などが挙げられる。
【0039】
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、必要に応じて開始剤を添加してもよい。開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系化合物、水溶性の過硫酸カリウムなどが挙げられ、これらを2種以上組み合わせてもよい。また、開始剤としてレドックス系重合開始剤を用いてもよい。
【0040】
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。過酸化物のなかでも、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサンが特に好ましく用いられる。
【0041】
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。アゾ系化合物のなかでも、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリルが特に好ましく用いられる
グラフト共重合体(A)を製造するために用いられる開始剤の添加量は、特に制限はないが、グラフト共重合体(A)の重量平均分子量を前述の範囲に調整しやすいという観点から、ゴム質重合体(r)とビニル系単量体混合物(a)との合計100質量部に対して、0.1質量部以上0.5質量部以下が好ましい。
【0042】
グラフト共重合体(A)を製造する場合、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用することにより、グラフト共重合体(A)の重量平均分子量およびグラフト率を所望の範囲に容易に調整することができる。連鎖移動剤としては、例えば、(i)n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンなどのメルカプタン、(ii)テルピノレンなどのテルペンなどが挙げられ、これらを2種以上組み合わせてもよい。連鎖移動剤のなかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
【0043】
グラフト共重合体(A)を製造するために用いられる連鎖移動剤の添加量は、特に制限はないが、グラフト共重合体(A)の重量平均分子量および分散度、グラフト率を前述の範囲に調整しやすいという観点から、グラフト共重合体(A)を製造するために用いられる連鎖移動剤の添加量は、ゴム質重合体(r)とビニル系単量体混合物(a)の合計100質量部に対して0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であり、0.7質量部以下が好ましく、より好ましくは0.6質量部以下である。
【0044】
グラフト共重合体(A)を乳化重合により製造する場合、重合温度に特に制限はないが、グラフト共重合体(A)の重量平均分子量および分散度を前述の範囲に調整しやすいという観点、乳化安定性の観点から、40℃以上70℃以下が好ましい。
【0045】
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、グラフト共重合体ラテックスに凝固剤を添加して、グラフト共重合体(A)を回収することが一般的である。凝固剤としては、酸または水溶性塩が好ましく用いられる。
【0046】
凝固剤として用いる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸などが挙げられる。凝固剤として用いる水溶性塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられ、これらを2種以上組み合わせてもよい。成形品の色調を向上させる観点から、透明熱可塑性樹脂組成物中に乳化剤を残存させないことが好ましい。このため、乳化剤としてアルカリ脂肪酸塩を用い、酸凝固させ、次いで、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリで中和することにより、乳化剤を除去することが好ましい。
【0047】
本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物を構成するビニル系共重合体(B)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)と、シアン化ビニル系単量体(b3)とを含む単量体混合物(b)を共重合して得られるものである。すなわち、ビニル系共重合体(B)は、芳香族ビニル系単量体(b1)と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)と、シアン化ビニル系単量体(b3)とを含む単量体混合物(b)の共重合体である。前記のビニル系単量体混合物(b)は、さらに、前述の(b1)〜(b3)と共重合可能な他の単量体をさらに含有してもよい。
【0048】
芳香族ビニル系単量体(b1)としては、芳香族ビニル系単量体(a1)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0049】
ビニル系単量体混合物(b)中の芳香族ビニル系単量体(b1)の含有量は、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の剛性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。一方、ビニル系単量体混合物(b)中の芳香族ビニル系単量体(b1)の含有量は、成形品の耐衝撃性および透明性を向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量%に対して、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0050】
ビニル系単量体混合物(b)の成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)として例示したものが挙げられ、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
【0051】
ビニル系単量体混合物(b)中の(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)の含有量は、成形品の透明性を向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。一方、ビニル系単量体混合物(b)中の(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)の含有量は、成形品の透明性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量%に対して、85質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0052】
ビニル系単量体混合物(b)の成分として用いられるシアン化ビニル系単量体(b3)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられ、シアン化ビニル系単量体(b3)として、これらを2種以上含有してもよい。シアン化ビニル系単量体(b3)の中でも、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、アクリロニトリルが好ましい。
【0053】
ビニル系単量体混合物(b)中のシアン化ビニル系単量体(b3)の含有量は、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量%に対して、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。一方、ビニル系単量体混合物(b)中のシアン化ビニル系単量体(b3)の含有量は、成形品の色調を向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量%に対して、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0054】
また、前述の芳香族ビニル系単量体(b1)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)、シアン化ビニル系単量体(b3)と共重合可能な他の単量体は、前述の(b1)〜(b3)以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。他の単量体として、具体的には、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体などが挙げられ、これらを2種以上含有してもよい。不飽和脂肪酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。マレイミド系単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0055】
ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量は70,000以上であることが好ましく、80,000以上であることがより好ましい。ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量を70,000以上とすることにより、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量は200,000以下が好ましく、150,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量を200,000以下とすることにより、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。重量平均分子量が70,000以上200,000以下の範囲にあるビニル系共重合体(B)は、例えば、後述する開始剤や連鎖移動剤を用いること、重合温度を後述の好ましい範囲にすることなどにより、容易に製造することができる。
【0056】
ここで、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量は、ビニル系共重合体(B)約0.03gをテトラヒドロフラン約15gに溶解した約0.2質量%の溶液を用いて測定したGPCクロマトグラムから、ポリメタクリル酸メチルを標準物質として換算することにより求めることができる。なお、GPC測定は、下記条件により測定することができる。
測定装置:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/分(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー(株)製)。
【0057】
ビニル系共重合体(B)は、該ビニル系共重合体(B)の屈折率と前述のグラフト共重合体(A)に含まれるゴム質重合体(r)との屈折率の差が0.03以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。ビニル系共重合体(B)の屈折率とゴム質重合体(r)の屈折率との差を0.03以下に抑えることにより、成形品の透明性、色調を向上させることができる。
【0058】
ビニル系共重合体(B)の屈折率は、主に原料となるビニル系単量体の組成に依存するため、ビニル系単量体の種類や組成比を適宜選択することにより、屈折率を所望の範囲にすることができる。なお、ビニル系共重合体(B)の屈折率は、ビニル系単量体の屈折率と含有量から推測することができ、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルの共重合体の場合には、下記式によりビニル系共重合体(B)の屈折率を推測することができる。
【0059】
nD(B)=(1.595×MS/100)+(1.490×MM/100)+(1.510×MA/100)
ここで、nD(B)はビニル系共重合体(B)の屈折率を表し、MSはスチレン含有量(質量%)を表し、MMはメタクリル酸メチル含有量(質量%)を表し、MAはアクリロニトリル含有量(質量%)を表す。1.595はポリスチレンの屈折率を表し、1.490はポリメタクリル酸メチルの屈折率を表し、1.510はポリアクリロニトリルの屈折率を表す。なお、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリルの屈折率は、いずれもアッベ屈折率計にて測定することができる。
【0060】
また、ビニル系共重合体(B)の屈折率は、アッベ屈折率計にて、測定することができる。
【0061】
ビニル系共重合体(B)の製造方法は特に制限はないが、得られる透明熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の透明性および色調の観点から、連続塊状重合法または連続溶液重合法が好ましく用いられる。ここで、連続塊状重合法とは、経時的に連続して単量体混合物を投入し、塊状重合したビニル系共重合体を経時的に連続して排出する方法であり、連続溶液重合法とは、経時的に連続して単量体混合物および溶媒を投入し、溶液重合したビニル系共重合体および溶媒からなる溶液を経時的に連続して排出する方法である。
【0062】
連続塊状重合法または連続溶液重合法によりビニル系共重合体(B)を製造する方法としては、任意の条件・方法が採用可能であり、例えば、ビニル系単量体混合物(b)を重合槽で重合した後、脱モノマー(脱溶媒・脱揮)する方法を挙げることができる。
【0063】
重合槽としては、例えば、パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ブルマージン翼、多段翼、アンカー翼、マックスブレンド翼、ダブルヘリカル翼などの撹拌翼を有する混合タイプの重合槽や、各種の塔式の反応器などを使用することができる。また、多管反応器、ニーダー式反応器および二軸押出機などを重合反応器として使用することもできる(例えば、高分子製造プロセスのアセスメント10「耐衝撃性ポリスチレンのアセスメント」高分子学会、1989年1月26日発行などを参照。)。
【0064】
ビニル系共重合体(B)を製造する際に、上述の重合槽または重合反応器を、2基(槽)以上使用してもよいし、必要に応じて2種以上の重合槽または重合反応器を組み合わせてもよい。ビニル系共重合体(B)の分散度を小さくする観点から、重合槽または重合反応器は2基(槽)以下であることが好ましく、1槽式の完全混合型重合槽がより好ましい。
【0065】
上述の重合槽または重合反応器で重合して得られた反応混合物は、通常、次に脱モノマー工程に供されることにより、モノマーおよび溶媒その他の揮発成分が除去される。脱モノマーを行う方法としては、例えば、ベントを有する一軸または二軸の押出機で加熱下、常圧または減圧下でベント穴より揮発成分を除去する方法、遠心型などのプレートフィン型加熱器をドラムに内蔵する蒸発器で揮発成分を除去する方法、遠心型などの薄膜蒸発器で揮発成分を除去する方法、多管式熱交換器を用いて予熱、発泡して真空槽へフラッシュして揮発成分を除去する方法などが挙げられる。脱モノマーを行う方法の中でも、特に、ベントを有する一軸または二軸の押出機で揮発成分を除去する方法が好ましく用いられる。
【0066】
ビニル系共重合体(B)を製造する場合、適宜開始剤や連鎖移動剤を使用してもよい。開始剤および連鎖移動剤としては、グラフト共重合体(A)の製造方法において例示したものと同じ開始剤および連鎖移動剤が挙げられる。
【0067】
ビニル系共重合体(B)を製造するために用いられる開始剤の添加量に特に制限はないが、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量を前述の範囲に調整しやすいという観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量部に対して、0.01質量部以上0.03質量部以下が好ましい。
【0068】
ビニル系共重合体(B)を製造するために用いられる連鎖移動剤の添加量は、特に制限はないが、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量を前述の範囲に調整しやすいという観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100質量部に対して、0.05質量部以上0.40質量部以下が好ましい。
【0069】
ビニル系共重合体(B)を連続塊状重合法または連続溶液重合法により製造する場合、重合温度に特に制限はないが、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量を前述の範囲に調整しやすいという観点から、120℃以上140℃以下が好ましい。
【0070】
ビニル系共重合体(B)を連続溶液重合法により製造する場合、溶媒の量は、生産性の点から、重合溶液中30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。溶媒としては、重合安定性の点から、エチルベンゼンまたはメチルエチルケトンが好ましく、エチルベンゼンが特に好ましく用いられる。
【0071】
本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、グラフト共重合体(A)10質量部以上60質量部以下およびビニル系共重合体(B)40質量部以上90質量部以下を配合して形成されることが好ましい。グラフト共重合体(A)が10質量部以上であり、ビニル系共重合体(B)が90質量部以下であることにより、成形品の耐衝撃性低下を抑制できる。グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、グラフト共重合体(A)を20質量部以上、ビニル系共重合体(B)を80質量部以下とすることがより好ましい。また、グラフト共重合体(A)が60質量部以下、ビニル系共重合体(B)が40質量部以上とすることにより、透明熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が上昇することを抑制しつつ、流動性の低下を抑制し、透明性、色調の低下も抑制できる。グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、グラフト共重合体(A)50質量部以下、ビニル系共重合体(B)50質量部以上配合することがより好ましい。
【0072】
本発明にかかる透明熱可塑性樹脂組成物は、ポリジメチルシロキサンガム(C)を、さらに含有する。
【0073】
本発明に用いられるポリジメチルシロキサンガム(C)は、下記する式(1)に示されるものである式(1)のR
1、R
2、R
3、R
4はいずれもCH
3(メチル)基である。式(1)のR
1、R
2、R
3、R
4が、フェニル基やアミノ基、水酸基、エポキシ基等の極性基で変性された構造を有する変性シリコーン化合物は透明熱可塑性樹脂組成物と相溶するため、成形品の耐衝撃性が劣る。
【0075】
本発明に用いられるポリジメチルシロキサンガム(C)とは、重量平均分子量が300,000以上のガム状のポリジメチルシロキサンをいう。なお、重量平均分子量が300,000以上であれば、ポリジメチルシロキサンは液状ではなくガム状となる。ポリジメチルシロキサンガム(C)の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、通常600,000である。
【0076】
ここで、ポリジメチルシロキサンガム(C)の重量平均分子量は、ポリジメチルシロキサンガム(C)約0.15gをテトラヒドロフラン約15gに溶解した約1.0質量%の溶液を用いて測定したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)クロマトグラムから、ポリスチレンを標準物質として換算することにより求めることができる。なお、GPC測定は、下記条件により測定することができる。
測定装置:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/分(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー(株)製)。
【0077】
本発明に用いるポリジメチルシロキサンガム(C)の重量平均分子量は、300,000以上である。重量平均分子量が300,000以上であれば、成形品の耐衝撃性に加え、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性は向上、金型汚染性、すなわち金型の汚れにくさ、は改善させることができる。
【0078】
本発明形態の透明熱可塑性樹脂組成物は、前述のグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、ポリジメチルシロキサンガム(C)を15ppm以上40ppm以下含有する。なお、ppmは[質量]/[質量]の百万分率である。ポリジメチルシロキサンガム(C)の含有量は、好ましくは20ppm以上35ppm以下である。グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、ポリジメチルシロキサンガム(C)の含有量が15ppm未満の場合、成形品の耐衝撃性が低下する。一方、グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、ポリジメチルシロキサンガム(C)の含有量が40ppmを超える場合、成形品の透明性、金型汚染性が低下する。
【0079】
ここで用いられるポリジメチルシロキサンガム(C)は、ゴム質重合体(r)とビニル系共重合体(B)の界面に存在すると考えられる。透明熱可塑性樹脂組成物に衝撃が加えられた際、ポリジメチルシロキサンガム(C)がゴム質重合体(r)とビニル系共重合体(B)の界面に存在することによって界面の滑り性が向上し、衝撃をゴム質重合体(r)粒子に集中させることができる。また、成形時に生じる残留応力を低減していると考えられる。これらにより成形品の耐衝撃性が向上すると考えられる。さらに、ポリジメチルシロキサンガム(C)の重量平均分子量を300,000以上とすることにより、透明熱可塑性樹脂組成物製造時のポリジメチルシロキサンガム(C)の表面ブリードや、ゴム内部への吸収を抑制することができる。その結果、透明熱可塑性樹脂組成物の流動性及び金型汚染性を向上させることができると考えられる。
【0080】
本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物には、効果を損なわない範囲で、前述のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)以外のポリマーや、例えば、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、アルミナ、アルミナ繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ステンレス繊維、ウィスカ、チタン酸カリウム繊維、ワラステナイト、アスベスト、ハードクレー、焼成クレー、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウムおよび鉱物などの無機充填材;ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系または含リン有機化合物系などの酸化防止剤;フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系またはサリシレート系などの紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤;高級脂肪酸、酸エステル、酸アミド系または高級アルコールなどの滑剤および可塑剤;モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤;各種難燃剤;難燃助剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤;リン酸、リン酸一ナトリウム、無水マレイン酸、無水コハク酸などの中和剤;核剤;アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤;カーボンブラック、顔料、染料などの着色剤、ブルーイング剤などを配合することができる。
【0081】
次に、本発明にかかる透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明にかかる透明熱可塑性樹脂組成物は、例えば、前述のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および必要に応じてその他成分を溶融混練することにより得ることができる。本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、ビニル系共重合体(B)を連続塊状重合し、さらに連続的にグラフト共重合体(A)および必要に応じてその他成分を溶融混練する方法がより好ましい。
【0082】
図1において、好ましく用いられる透明熱可塑性樹脂組成物の製造装置の一実施様態の概略図を示す。
図1に示すように、透明熱可塑性樹脂組成物の製造装置では、ビニル系共重合体(B)を製造するための反応槽1と、得られたビニル系共重合体(B)を所定温度に加熱するための予熱機2と、二軸押出機型脱モノマー機3とが、この順に連結されている。さらに、透明熱可塑性樹脂組成物の製造装置では、二軸押出機型脱モノマー機3に対してサイドフィードするように、グラフト共重合体(A)を供給するための二軸押出機型フィーダー5が接続されている。反応槽1は撹拌機(ヘリカルリボン翼)7を有し、二軸押出機型脱モノマー機3は未反応の単量体などの揮発成分を除去するためのベント口8を有する。
【0083】
反応槽1から連続的に供給される反応生成物は、予熱機2で所定の温度に加熱され、次いで、二軸押出機型脱モノマー機3に供給される。二軸押出機型脱モノマー機3において、一般的には、150〜280℃程度の温度かつ、常圧または減圧下において、ベント口8から未反応単量体などの揮発成分が系外に除去される。この揮発成分の除去は、一般的には、揮発成分が所定量、例えば10質量%以下、より好ましくは5質量%以下になるまで行われる。また、除去された揮発成分は、反応槽1に再び供給されることが好ましい。
【0084】
二軸押出機型脱モノマー機3の途中の下流側に近い位置に設けられた開口部を通して、二軸押出機型フィーダー5から、グラフト共重合体(A)が供給される。二軸押出機型フィーダー5は、加熱装置を有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を半溶融もしくは溶融状態において二軸押出機型脱モノマー機3に供給することにより、良好な混合状態とすることができる。グラフト共重合体(A)の加熱温度は、100〜220℃が一般的である。二軸押出機型フィーダー5としては、例えば、スクリュー、シリンダーおよびスクリュー駆動部からなり、シリンダーが加熱・冷却機能を有する二軸の押出機型フィーダーを挙げることができる。
【0085】
二軸押出機型脱モノマー機3の二軸押出機型フィーダー5と接続される位置においては、その後の未反応単量体を除去する操作によるゴム成分の熱劣化を抑制するために、未反応単量体の含有量が10質量%以下、より好ましくは5質量%以下まで低減されていることが好ましい。
【0086】
二軸押出機型脱モノマー機3の二軸押出機型フィーダー5と接続される位置以降の下流域である溶融混練域4内で、ビニル系共重合体(B)とグラフト共重合体(A)とが溶融混練され、吐出口6から透明熱可塑性樹脂組成物が系外に吐出される。溶融混練域4に水注入口9を設け、所定量の水を添加することが好ましく、注入された水および未反応単量体などの揮発成分はさらに下流に設けられた最終ベント口10から系外に除去される。
【0087】
本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物は、特定のポリジメチルシロキサンガム(C)を含有することを特徴とするが、ポリジメチルシロキサンガム(C)の添加方法に制限はない。例えば、前述の、ビニル系共重合体(B)を連続塊状重合し、さらに連続的にグラフト共重合体(A)を混連する際、グラフト共重合体(A)と同時にポリジメチルシロキサンガム(C)を添加しても良い。その際は、ポリジメチルシロキサンガム(C)はガム状であることから、例えば、事前に(メタ)アクリル酸エステル単量体に溶解させ、ポリジメチルシロキサンガム(C)の(メタ)アクリル酸エステル単量体溶液として添加しても良い。
【0088】
また、ポリジメチルシロキサンガム(C)をグラフト共重合体の重合時に添加することもできる。例えば、ゴム質重合体(r)存在下、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a1)、および(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)を含む単量体混合物(a)をグラフト共重合する際、事前に、単量体混合物(a)にポリジメチルシロキサンガム(C)を溶解させ、ポリジメチルシロキサンガム(C)含有グラフト共重合体(A’)を製造しても良い。その際は、ビニル系共重合体(B)を連続塊状重合し、さらに連続的に混連するグラフト共重合体(A)をポリジメチルシロキサンガム(C)含有グラフト共重合体(A’)に変更して配合することで、透明熱可塑性樹脂組成物にポリジメチルシロキサンガム(C)を含有することができる。
【0089】
本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物は、任意の成形方法により成形することができる。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、ガスアシスト成形などが挙げられ、射出成形が好ましく用いられる。射出成形時のシリンダー温度は210℃以上320℃以下が好ましく、金型温度は30℃以上80℃以下が好ましい。
【0090】
本発明にかかる透明熱可塑性樹脂組成物は、任意の形状の成形品として広く用いることができる。成形品としては、例えば、フィルム、シート、繊維、布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、他の材料との複合体などが挙げられる。
【0091】
本発明にかかる透明熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性に優れ、高度な透明性、良好な色調を兼ね備え、さらに金型汚染性の良好な透明熱可塑性樹脂組成物を得ることができることから、家電製品、通信関連機器、一般雑貨および医療関連機器などの用途として有用である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。まず、評価方法について説明する。
【0093】
(1)ゴム質重合体の質量平均粒子径
ゴム質重合体(r)のラテックスを水媒体で希釈、分散させた後、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置“LS 13 320”(ベックマン・コールター(株))により粒子径分布を測定した。その粒子径分布より、ゴム質重合体(r)の質量平均粒子径を算出した。
【0094】
(2)ゴム質重合体(r)の屈折率
150mlのメタノールを300rpmで攪拌した状態で、乳化状態のゴムラテックスを10ml添加し、その後10質量%に調整した硫酸を20ml加えることにより、ゴム質重合体(r)の析出物を得た。ゴム質重合体(r)の析出物を60℃で5時間減圧乾燥させた後、230℃に設定した加熱プレスにより加熱加圧し、厚み30±5μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを測定サンプルとして、1−ブロモナフタレンを少量滴下し、光源としてナトリウムランプD線を用い、測定温度を23℃とした条件下で、アッベ屈折率計を用いて屈折率を測定した。
【0095】
(3)グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分およびビニル系共重合体(B)重量平均分子量
グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分もしくはビニル系共重合体(B)のサンプル約0.03gをテトラヒドロフラン約15gに溶解し、約0.2質量%の溶液を用いて測定したGPCクロマトグラムから、ポリメタクリル酸メチルを標準物質として換算することにより求めることができる。なお、GPC測定は、下記条件により測定することができる。
機器:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/分(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー(株)製)。
【0096】
(4)グラフト共重合体(A)のグラフト率
グラフト共重合体(A)約1gにアセトン80mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流する。この溶液を8000r.p.m(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過することにより、アセトン不溶分を得る。得られたアセトン不溶分を80℃で5時間減圧乾燥させた後、その質量(下記式ではnとする)を測定し、下記式よりグラフト率を算出する。ここで、mは、用いたグラフト共重合体(A)のサンプル質量であり、Xはグラフト共重合体(A)のゴム質重合体含有量(質量%)である。
グラフト率(%)={[(n)−((m)×X/100)]/[(m)×X/100]}×100。
【0097】
(5)グラフト共重合体(A)のグラフト成分(アセトン不溶分)およびビニル系共重合体(B)の屈折率
(4)に記載の手順により得られたグラフト共重合体(A)のアセトン不溶分について、230℃に設定した加熱プレスにより、厚み30±5μmのフィルムを作成した。ビニル系共重合体(B)についても同様に厚み30±5μmのフィルムを作成した。得られたフィルムに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折率計を用いて以下の条件で屈折率を測定した。
光源:ナトリウムランプD線
測定温度:23℃。
【0098】
(6)ポリジメチルシロキサンガム(C)、液状シリコーン化合物(D)の重量平均分子量
ポリジメチルシロキサンガム(C)または、液状シリコーン化合物(D)約0.15gをテトラヒドロフラン約15gに溶解した約1.0質量%の溶液を用いて測定したGPCクロマトグラムから、ポリスチレンを標準物質として換算することにより求めることができる。なお、GPC測定は、下記条件により測定することができる。
測定装置:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/分(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー(株)製)。
【0099】
(7)透明性(ヘイズ、全光線透過率)
各実施例および比較例により得られた透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダー温度を230℃に設定した住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機内に充填し、金型温度60℃、成形サイクル20秒にて、角板成形品(縦50mm、横40mm、厚さ3mm)を成形した。東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して、得られた角板成形品のヘイズ、全光線透過率を測定した。
【0100】
(8)色調(YI値)
各実施例および比較例により得られた透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダー温度を230℃に設定した住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機内に充填し、金型温度60℃、成形サイクル20秒にて、角板成形品(縦50mm、横40mm、厚さ3mm)を成形した。得られた角板成形品各5個について、JIS K7103(1971年制定)に準拠してYI値を測定し、その数平均値を算出した。
【0101】
(9)耐衝撃性(シャルピー衝撃強度)
各実施例および比較例により得られた透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダー温度を230℃に設定した住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機内に充填し、金型温度60℃、成形サイクル30秒にて、厚さ4mmのダンベル試験片を成形した。得られたダンベル試験片各5個について、ISO179に準拠した方法でシャルピー衝撃強度を測定し、その数平均値を算出した。
【0102】
(10)メルトフローレート
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した透明熱可塑性樹脂組成物のペレットをISO−1133に準拠し、220℃、98Nの条件で測定した。この値が大きいほど高い流動性を示す。
【0103】
(11)金型汚染性
各実施例および比較例により得られた透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダー温度を280℃に設定した日精樹脂工業(株)製PS−60E成形機内に充填し、金型温度60℃、成形サイクル30秒にて、角板成形品(縦100mm、横120mm、厚さ3mm)を1000ショット射出成形後、下記の判定により金型汚染性の評価を行った。
金型表面に変化が見られない:○
金型表面に曇りが見られる:△
金型表面が汚れ、成形品の外観が悪い:×。
【0104】
(12)Nano−sims(二次イオン質量分析)
透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダー温度を230℃に設定した住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機内に充填し、金型温度60℃、成形サイクル30秒にて、厚さが4mm、中央平行部の幅が10mmのダンベル試験片を成形した。
【0105】
得られたダンベル試験片の中央部近傍(
図2の右写真を参照)をミクロトームを用い、凍結下で断面の切り出しを行った。切り出した断面の短辺の中点から断面重心方向に向かって2mm入った点を測定点とした(
図2の左図を参照)。
【0106】
下記条件により表面観察を実施した。
装置:NanoSIMS 50L (AMETEK社製)
1次イオン:Cs
+(16kV)
2次イオン極性:負(Negative)
データ点数:256×256pixels
測定領域:5μm×5μm
測定真空度5×10
−10mbar
測定元素:元素(同位体)[C]、2次イオン[
12C
―]
元素(同位体)[N]、2次イオン[
12C
14N
―] 。
【0107】
グラフト共重合体(A):
(製造例1)グラフト共重合体(A−1)
撹拌翼を備えた内容量5リットルの四つ口フラスコに、ポリブタジエンラテックス(ゴムの質量平均粒子径0.30μm、屈折率1.516)50質量部(固形分換算)、純水130質量部、ラウリン酸ナトリウム0.4質量部、ブドウ糖0.2質量部、ピロリン酸ナトリウム0.2質量部、硫酸第一鉄0.01質量部を仕込み、窒素置換後、60℃に温度調節し、撹拌しながら、スチレン3.0質量部、メタクリル酸メチル12.0質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.16質量部の単量体混合物を45分間かけて初期添加した。
【0108】
次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.3質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.6質量部および純水25質量部の開始剤混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行して、スチレン9.5質量部、メタクリル酸メチル25.5質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.36質量部の単量体混合物を3時間かけて連続添加した。単量体混合物追滴下後、1時間は開始剤混合物のみを連続添加し、さらに1時間何も添加せず、重合を保持して重合を終了させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを1.5質量%硫酸で凝固した後、水酸化ナトリウムで中和し、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)(単量体比率:スチレン25質量%、メタクリル酸メチル75質量%)を得た。得られたグラフト共重合体(A−1)のアセトン不溶分の屈折率は1.516であり、ゴム質重合体との屈折率の差は0.000であった。グラフト率は50%であった。また、アセトン可溶分の重量平均分子量は70,000であった。
【0109】
(製造例2)グラフト共重合体(A−2)
攪拌翼を備えた内容量5リットルの四つ口フラスコに、ポリブタジエンラテックス(ゴム質量平均粒子径0.30μm、屈折率1.516)50質量部(固形分換算)、純水130質量部、ラウリン酸ナトリウム0.4質量部、ブドウ糖0.2質量部、ピロリン酸ナトリウム0.2質量部、硫酸第一鉄0.01質量部を仕込み、窒素置換後、60℃に温度調節し、攪拌しながら、スチレン2.5質量部、アクリロニトリル2.0質量部、メタクリル酸メチル10.5質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.16質量部の単量体混合物を45分間かけて初期添加した。
【0110】
次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.3質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.6質量部および純水25質量部の開始剤混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行して、スチレン9.5質量部、メタクリル酸メチル25.5質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.36質量部の単量体混合物を3時間かけて連続追滴下した。単量体混合物滴下後、1時間は開始剤混合物のみを連続添加し、さらに1時間何も添加せず、重合を保持して重合を終了させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを1.5質量%硫酸で凝固した後、水酸化ナトリウムで中和し、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−2)(単量体比率:スチレン24質量%、アクリロニトリル4質量%、メタクリル酸メチル72質量%)。得られたグラフト共重合体(A−2)のアセトン不溶分の屈折率は1.516であり、ゴム質重合体との屈折率の差は0.000であった。グラフト率は47%であった。また、アセトン可溶分の重量平均分子量は72,000であった。
【0111】
(製造例3)グラフト共重合体(A−3)
撹拌翼を備えた内容量5リットルの四つ口フラスコに、ポリブタジエンラテックス(ゴムの質量平均粒子径0.30μm、屈折率1.516)50質量部(固形分換算)、純水130質量部、ラウリン酸ナトリウム0.4質量部、ブドウ糖0.2質量部、ピロリン酸ナトリウム0.2質量部、硫酸第一鉄0.01質量部を仕込み、窒素置換後、60℃に温度調節し、撹拌しながら、スチレン3.6質量部、アクリロニトリル0.6質量部、メタクリル酸メチル10.8質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.16質量部の単量体混合物を45分間かけて初期添加した。
【0112】
次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.3質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.6質量部および純水25質量部の開始剤混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行して、スチレン8.4質量部、アクリロニトリル1.4質量部、メタクリル酸メチル25.2質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.36質量部の単量体混合物を3時間かけて連続追滴下した。単量体混合物追滴下後、1時間は開始剤混合物のみを連続添加し、さらに1時間何も添加せず、重合を保持して重合を終了させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを1.5質量%硫酸で凝固した後、水酸化ナトリウムで中和し、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−3)(単量体比率:スチレン24質量%、アクリロニトリル4質量%、メタクリル酸メチル72質量%)を得た。得られたグラフト共重合体(A−3)のアセトン不溶分の屈折率は1.517であり、ゴム質重合体との屈折率の差は0.001であった。グラフト率は47%であった。また、アセトン可溶分の重量平均分子量は72,000であった。
【0113】
(製造例4)ポリシロキサンガム含有グラフト共重合体(A’−4)
初期に添加する単量体混合物に、後述する旭化成ワッカー株式会社製GENIOPLAST GUMを83.3ppm溶解させた以外は、製造例1と同様な方法で、パウダー状のポリシロキサンガム含有グラフト共重合体(A’−4)(単量体比率:スチレン25質量%、メタクリル酸メチル75質量%)を得た。得られたグラフト共重合体(A−1)のアセトン不溶分の屈折率は1.516であり、ゴム質重合体との屈折率の差は0.000であった。グラフト率は50%であった。また、アセトン可溶分の重量平均分子量は70,000であった。
上述のグラフト重合体の製造条件及び測定結果を、表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
ポリジメチルシロキサンガム(C):
・旭化成ワッカー株式会社製 GENIOPLAST GUM(C−1)(重量平均分子量 450,000)
・ダウ・東レ社製 BY16−140(C−2)(重量平均分子量 530,000)
・信越化学工業社製 KF96H(100万センチストークス)(C−3)(重量平均分子量:302,000)。
液状シリコーン化合物(D)(ポリジメチルシロキサンオイル):
・信越化学工業社製 KF96H(50万センチストークス)(D−1)(重量平均分子量 249,000)
・ダウ・東レ社製 SH200(3万センチストークス)(D−2)(重量平均分子量 94,000)。
液状シリコーン化合物(D)(変性シリコーンオイル):
・信越化学工業社製 KF54(D−3)(重量平均分子量 3,000)。
【0116】
[実施例1]
単量体蒸気の蒸発乾留用コンデンサーおよびヘリカルリボン翼を有する2m
3の完全混合型重合槽と、単軸押出機型予熱機と、2軸押出機型脱モノマー機と、脱モノマー機の下流(出口)側先端から1/3長手前のバレル部にサイドフィードするように接続された2軸押出機型フィーダーとからなる連続式塊状重合装置を用いて、以下の方法によりビニル系共重合体および透明熱可塑性樹脂組成物の製造を実施した。
【0117】
まず、スチレン23.5質量部、アクリロニトリル4.5質量部、メタクリル酸メチル72質量部、n−オクチルメルカプタン0.29質量部および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.015質量部からなる単量体混合物(b)を、150kg/時で完全混合型重合槽に連続的に供給し、重合温度を130℃、槽内圧を0.08MPaに保ちながら連続塊状重合させた。完全混合型重合槽出口における重合反応混合物の重合率は65±3%に制御した。
【0118】
次に、重合反応混合物を単軸押出機型予熱機により予熱した後、2軸押出機型脱モノマー機に供給し、未反応単量体を2軸押出機型脱モノマー機のベント口から減圧蒸発回収した。回収した未反応単量体は、連続的に完全混合型重合槽へ還流させた。2軸押出機型脱モノマー機の下流側先端より全長に対して1/3手前の所で見かけの重合率が99%以上となったスチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体150kg/時に、2軸押出機型フィーダーにより、フェノール系安定剤であるt−ブチルヒドロキシトルエン0.225kg/時、リン系安定剤であるトリ(ノニルフェニル)ホスファイト0.225kg/時、製造例1で製造したグラフト共重合体(A−1)の半溶融状態物64.3kg/時と80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液0.2576kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00322kg/時)を供給し、2軸押出機型脱モノマー機中でスチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体と溶融混練した。その溶融混練工程中、2軸押出機型脱モノマー機の下流側先端より全長に対して1/6手前の所で水2kg/時を供給した。この水およびその他の揮発分は、2軸押出機型脱モノマー機のさらに下流に設置したベント口より減圧蒸発させて除去した。その後、溶融混練物をストランド状に吐出させ、カッターにより切断して透明熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0119】
また、2軸押出機型フィーダーからの供給を止め、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体を吐出し、サンプリングした。得られた、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体および透明熱可塑性樹脂組成物の特性を上述した方法で評価した。
【0120】
[実施例2]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.4288kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0121】
[実施例3]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.6858kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00857kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0122】
[実施例4]
製造例1で製造したグラフト共重合体(A−1)に代えて製造例2で製造したグラフト共重合体(A−2)を用い、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.4288kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0123】
[実施例5]
製造例1で製造したグラフト共重合体(A−1)に代えて製造例3で製造したグラフト共重合体(A−3)を用い、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.4288kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0124】
[実施例6]
製造例1で製造したグラフト共重合体(A−1)に代えて製造例4で製造したグラフト共重合体(A’−4)を用い、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給しないこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0125】
[実施例7]
連続塊状重合に供された単量体混合物(b)を、スチレン23.5質量部、アクリロニトリル4.5質量部、メタクリル酸メチル72質量部、n−オクチルメルカプタン0.23質量部および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.015質量部に変更した。さらに、製造例1で製造したグラフト共重合体(A−1)の供給量を50kg/時とし、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.4000kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.005kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0126】
[実施例8]
ポリシロキサンガム(C−1)に代えてポリシロキサンガム(C−2)を用い、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−2)溶液の供給量を0.4288kg/時(ポリシロキサンガム(C−2)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0127】
[実施例9]
ポリシロキサンガム(C−1)に代えてポリシロキサンガム(C−3)を用い、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−3)溶液の供給量を0.4288kg/時(ポリシロキサンガム(C−3)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0128】
[比較例1]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給しないこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0129】
[比較例2]
連続塊状重合させた単量体混合物(b)を、スチレン23.5質量部、アクリロニトリル4.5質量部、メタクリル酸メチル72質量部、n−オクチルメルカプタン0.23質量部および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.015質量部に変更した。さらに、製造例1で製造したグラフト共重合体(A−1)の供給量を50kg/時とし、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給しないこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0130】
[比較例3]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.1714kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00214kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0131】
[比較例4]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.2229kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.00279kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0132】
[比較例5]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液の供給量を0.8572kg/時(ポリシロキサンガム(C−1)供給量0.01072kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0133】
[比較例6]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給せず、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させた液状シリコーン化合物(D−1)の供給量を0.4288kg/時(液状シリコーン化合物(D−1)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0134】
[比較例7]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給せず、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させた液状シリコーン化合物(D−2)の供給量を0.4288kg/時(液状シリコーン化合物(D−2)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0135】
[比較例8]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給せず、80倍のメタクリル酸メチルに溶解させた液状シリコーン化合物(D−3)の供給量を0.4288kg/時(液状シリコーン化合物(D−3)供給量0.00536kg/時)としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0136】
[比較例9]
80倍のメタクリル酸メチルに溶解させたポリシロキサンガム(C−1)溶液を供給せず、液状シリコーン化合物(D−3)の供給量を0.2143kg/時としたこと以外は実施例1と同様の方法により、透明熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
透明熱可塑性樹脂組成物の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
実施例1〜9の評価結果に示されるとおり、本実施形態の透明熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性に優れ、高度な透明性、良好な色調を兼ね備え、さらに金型汚染性の良好な透明熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を得ることができる。
【0140】
一方、比較例1および比較例2は、ポリジメチルシロキサンガム(C)の含有が無く耐衝撃性、流動性に劣るものであった。比較例3および比較例4は、ポリジメチルシロキサンガム(C)の含有量が15ppm未満のため、耐衝撃性、流動性が劣るものであった。比較例5は、ポリジメチルシロキサンガム(C)の含有量が40ppmを超えたため、透明性、金型汚染性が劣るものであった。比較例6および比較例7はポリジメチルシロキサンガム(C)の代わりに、ポリジメチルシロキサンの重量平均分子量が300,000未満である液状シリコーン化合物(D)(ポリジメチルシロキサンオイル)を用いたため流動性、金型汚染性が劣るものであった。比較例8は、ポリジメチルシロキサンガム(C)の代わりに、液状シリコーン化合物(D)(変性シリコーンオイル)を用いたため、透明性は優れるものの、耐衝撃性、流動性、金型汚染性が劣るものであった。比較例9は、ポリジメチルシロキサンガム(C)の代わりに、液状シリコーン化合物(D)(変性シリコーンオイル)を用い、含有量が40ppmを超えたため透明性は優れるものの耐衝撃性、金型汚染性が劣るものであった。
【0141】
図3は実施例2、
図4は比較例1、
図5は比較例7のそれぞれの[
12C/
12C
14N]画像を示す。右のバーは強度を表している(3が強度が高く、0が強度が低い)。低強度の領域はメタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体の存在量が多く、ゴムの存在が多くなるに従って強度は強くなる。すなわち、強度はゴムの分散状態(言い換えると、局在化の程度)を表している。
【0142】
図3では、ゴムが適度に局在化していることが判り、そのような樹脂組成物は、耐衝撃性と流動性に優れている。一方、
図4では、ゴムの局在化の度合いが少ないことが判り、そのような樹脂組成物は、耐衝撃性に劣っている。
図5では、ゴムの局在化が非常に大きく、そのような樹脂組成物は流動性が劣っている。
本発明は、耐衝撃性、流動性に優れ、高度な透明性、良好な色調を兼ね備え、さらに金型汚染性の良好な透明熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とし、ゴム質重合体(r)存在下、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a1)、および(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a2)を含む単量体混合物(a)をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体(A)10〜60質量部、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)、およびシアン化ビニル系単量体(b3)を含む単量体混合物(b)を共重合してなるビニル系共重合体(B)40〜90質量部からなる透明熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、重量平均分子量が30万以上のポリジメチルシロキサンガム(C)を15ppm以上40ppm以下含有する透明熱可塑性樹脂組成物とすることを本旨とする。