特許第6801833号(P6801833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6801833熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6801833
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/68 20060101AFI20201207BHJP
   B21B 37/58 20060101ALI20201207BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B21B37/68 Z
   B21B37/58 B
   B21B38/00
【請求項の数】11
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2020-550187(P2020-550187)
(86)(22)【出願日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】JP2020023099
【審査請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-134680(P2019-134680)
(32)【優先日】2019年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-85279(P2020-85279)
(32)【優先日】2020年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛人
(72)【発明者】
【氏名】須江 龍裕
(72)【発明者】
【氏名】山口 英仁
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 由紀雄
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−167327(JP,A)
【文献】 特開昭63−225107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法であって、
隣り合う圧延機間に設置されたラインセンサカメラで走行する熱間圧延鋼帯の表面を撮像する撮像ステップと、
蛇行量算出装置により、該撮像ステップで撮像された撮像画像に基づく1次元の輝度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出ステップと、
レベル制御演算装置により、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けるまで、前記蛇行量算出ステップで算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記ラインセンサカメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含み、
前記撮像ステップにおける前記ラインセンサカメラによる撮像を5msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算ステップによる前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行うことを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
【請求項2】
前記ラインセンサカメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機に設けられた荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から操作側及び駆動側の差荷重を求める差荷重算出ステップを含み、
前記レベリング制御演算ステップでは、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けるまで、前記差荷重算出ステップで検出された操作側及び駆動側の差荷重と、前記蛇行量算出ステップによって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量とに基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けてから前記下流側直近にある圧延機を抜けるまで、前記差荷重算出ステップで検出された操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
【請求項3】
操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法であって、
隣り合う圧延機間に設置された赤外線カメラで走行する熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する撮像ステップと、
蛇行量算出装置により、該撮像ステップで撮像された赤外線の強度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出ステップと、
レベル制御演算装置により、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けるまで、前記蛇行量算出ステップで算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記赤外線カメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含み、
前記撮像ステップにおける前記赤外線カメラによる撮像を1msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算ステップによる前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行うことを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
【請求項4】
前記赤外線カメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機に設けられた荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から操作側及び駆動側の差荷重を求める差荷重算出ステップを含み、
前記レベリング制御演算ステップでは、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けるまで、前記差荷重算出ステップで検出された操作側及び駆動側の差荷重と、前記蛇行量算出ステップによって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量とに基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けてから前記下流側直近にある圧延機を抜けるまで、前記差荷重算出ステップで検出された操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出することを特徴とする請求項3に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
【請求項5】
前記赤外線カメラに用いられる赤外線の波長は、1.5μm超1000μm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
【請求項6】
操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置であって、
隣り合う圧延機間に設置された、走行する熱間圧延鋼帯の表面を撮像するラインセンサカメラと、
該ラインセンサカメラで得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置と、
走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けるまで、前記蛇行量算出装置によって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記ラインセンサカメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算装置とを備え、
前記ラインセンサカメラによる撮像を5msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算装置による前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行うことを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
【請求項7】
前記複数の圧延機の各々は、操作側及び駆動側の圧延荷重を検出する荷重検出器を備え、
前記レベリング制御演算装置は、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けるまで、前記ラインセンサカメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機に設けられた前記荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、前記蛇行量算出装置によって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量とに基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けてから前記下流側直近にある圧延機を抜けるまで、前記荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる差荷重に基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出することを特徴とする請求項6に熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
【請求項8】
操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置であって、
隣り合う圧延機間に設置された、走行する熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線カメラと、
該赤外線カメラで得られた赤外線の強度部分から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置と、
走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けるまで、前記蛇行量算出装置によって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記赤外線カメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算装置とを備え、
前記赤外線カメラによる撮像を1msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算装置による前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行うことを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
【請求項9】
前記複数の圧延機の各々は、操作側及び駆動側の圧延荷重を検出する荷重検出器を備え、
前記レベリング制御演算装置は、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けるまで、前記赤外線カメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機に設けられた前記荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、前記蛇行量算出装置によって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量とに基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けてから前記下流側直近にある圧延機を抜けるまで、前記荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる差荷重に基づいて、前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出することを特徴とする請求項8に熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
【請求項10】
前記赤外線カメラに用いられる赤外線の波長は、1.5μm超1000μm以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
【請求項11】
請求項6乃至10のうちいずれか一項に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置を有することを特徴とする熱間圧延設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱間圧延鋼帯の製造ライン(ホットストリップミル)では、加熱されたスラブが粗圧延工程や仕上圧延工程などの製造工程を経て、所定の板幅及び板厚の鋼板が製造される。
仕上圧延工程では、図14に示すように、複数台(例えば7台)の圧延機F1〜F7からなる仕上圧延設備1で熱間圧延鋼帯(以下、単に鋼帯という)10が同時に仕上圧延されるタンデム圧延を行い、所定の板厚の鋼板を製造する。
【0003】
タンデム圧延では、図15に示すように、鋼帯10の幅方向の板厚分布、鋼帯10の幅方向の温度差、及び鋼帯10の幅方向の曲がりによって、鋼帯10が幅方向に移動する蛇行と呼ばれる現象が生じることがある。各圧延機F1〜F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1から鋼帯10の幅方向の中心CL2までの距離を蛇行量δと呼ぶ。ここでは、鋼帯10が、各圧延機F1〜F7の操作側に蛇行している場合を「+」とし、各圧延機F1〜F7の駆動側に蛇行している場合を「−」とする。各圧延機F1〜F7の駆動側とは、搬送ロール(図示せず)のモータ(図示せず)に接続されている側を表し、各圧延機F1〜F7の操作側とは、駆動側と幅方向の反対側を表す。なお、図14及び図15における矢印は、圧延時における鋼帯10の進行方向を示している。
【0004】
ここで、鋼帯10の尾端部10aの蛇行が大きくなった場合、鋼帯10を幅方向に拘束するためのガイドと接触して、鋼帯10が折れ込み、その状態で圧延されることで絞りと呼ばれるトラブルが生じることがある。絞りが発生すると、鋼帯10を圧延する各圧延機F1〜F7のワークロール1a(図14参照)に疵が入りロール交換が必要になる。ロール交換のために一時的に操業を停止する必要があり、絞りが頻繁に発生する場合には、大きなダウンタイムとなる。そのため、鋼帯10の蛇行を低減し、絞りの発生を抑制することは熱間圧延鋼帯のタンデム圧延では重要な課題となっている。
【0005】
鋼帯の蛇行を防止する方法の一つとして、圧延機のレベリング量を変更する方法がある。レベリング量とは、圧延機の操作側と駆動側のロールギャップの開度差のことである。ここでは、操作側のロールギャップの開度が大きい場合を「+」、駆動側のロールギャップの開度が大きい場合を「−」とする。
例えば、圧延中に圧延機のレベリング量を+側に変更すると、操作側より駆動側の圧下量が相対的に大きくなるため、操作側よりも駆動側の鋼帯が長くなり、圧延機出側では鋼帯は操作側に蛇行する。逆に、圧延中に圧延機のレベリング量を−側に変更すると、駆動側より操作側の圧下量が相対的に大きくなるため、駆動側よりも操作側の鋼帯が長くなり、圧延機出側では鋼帯は駆動側に蛇行する。
【0006】
従来にあっては、このレベリング量を変更することにより鋼帯の蛇行を防止するものとして、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示すものが提案されている。
特許文献1に示す熱間仕上圧延における鋼板尾端蛇行制御方法は、タンデム圧延において、蛇行検出装置をスタンド間ほぼ中央に設置し、蛇行制御を行い、圧延材尾端が蛇行検出装置通過後は、差荷重方式にて蛇行制御を行うことにより高応答かつ安定した制御を達成すると共に、低温材でもセンサ方式蛇行制御を可能とするものである。
【0007】
また、特許文献2に示す被圧延材の蛇行制御方法は、圧延スタンドF5を被圧延材の尾端が通過すると、第1の制御ゲインよりも低い第2の制御ゲインでフィードバック制御を行って「センサ方式蛇行制御」を実施する。また、圧延スタンドF6を被圧延材の尾端が通過すると、第1の制御ゲインでフィードバック制御を行って「センサ方式蛇行制御」を実施すると共に、第3の制御ゲインよりも低い第4の制御ゲインでフィードバック制御を行って「差荷重方式蛇行制御」を実施する。更に、蛇行量検出センサを被圧延材の尾端が通過すると、「センサ方式蛇行制御」を終了すると共に、第3の制御ゲインでフィードバック制御を行って「差荷重方式蛇行制御」を実施する。また、圧延スタンドF7を被圧延材の尾端が通過すると、「差荷重方式蛇行制御」を終了するものである。
【0008】
更に、特許文献3に示す板材の蛇行制御方法は、パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から、板材のエッジを含む撮像視野を有する2次元撮像装置で板材表面を撮像する第1ステップと、撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、板材のエッジ位置を走査線毎に検出する第2ステップとを含む。また、板材の蛇行制御方法は、当該走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する第3ステップと、近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出する第4ステップと、交点の位置に基づき、蛇行量を算出する第5ステップとを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−144211号公報
【特許文献2】特開2013−212523号公報
【特許文献3】特開2004−141956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これら従来の特許文献1に示す熱間仕上圧延における鋼板尾端蛇行制御方法、特許文献2に示す被圧延材の蛇行制御方法及び特許文献3に示す板材の蛇行制御方法にあっては、以下の問題点があった。
【0011】
即ち、特許文献1に示す熱間仕上圧延における鋼板尾端蛇行制御方法の場合、鋼帯の蛇行を検出する蛇行検出装置は、光源とカメラとから構成されているが、そのカメラの種類については特許文献1には記載がない。従って、そのカメラの種類によっては蛇行検出に処理時間が長くかかり、測定周期が大きくなってしまうことがある。この場合、時々刻々と変化する蛇行量に対して、適切にレベリング量を変更できずに鋼帯の蛇行を適切に制御できない場合がある。
【0012】
また、特許文献2に示す被圧延材の蛇行制御方法の場合にあっても、蛇行量検出センサはカメラを備えているが、そのカメラの種類については特許文献2には記載がない。従って、そのカメラの種類によっては蛇行検出に処理時間が長くかかり、測定周期が大きくなってしまうことがある。この場合、時々刻々と変化する蛇行量に対して、適切にレベリング量を変更できずに鋼帯の蛇行を適切に制御できない場合がある。
【0013】
また、特許文献3に示す特許文献3に示す板材の蛇行制御方法の場合、2次元撮像装置で板材の蛇行量を測定しているが、2次元データは情報量が多く、画像データの転送、画像データからの蛇行量の演算に時間がかかり、測定周期が大きくなってしまって時々刻々と変化する蛇行量に対して適切にレベリング量を変更できずに鋼帯の蛇行を適切に制御できない場合がある。
【0014】
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、熱間圧延鋼帯の蛇行量の演算処理にかける時間を短くして蛇行量の算出周期を小さくし、時々刻々と変化する蛇行量に対して適切にレベリング量を調整できる熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法は、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法であって、隣り合う圧延機間に設置されたラインセンサカメラで走行する熱間圧延鋼帯の表面を撮像する撮像ステップと、蛇行量算出装置により、該撮像ステップで撮像された撮像画像に基づく1次元の輝度分布から前記前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出ステップと、レベル制御演算装置により、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けるまで、前記蛇行量算出ステップで算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記ラインセンサカメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含み、前記撮像ステップにおける前記ラインセンサカメラによる撮像を5msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算ステップによる前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行うことを要旨とする。
【0016】
また、本発明の別の態様に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法は、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法であって、隣り合う圧延機間に設置された赤外線カメラで走行する熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する撮像ステップと、蛇行量算出装置により、該撮像ステップで撮像された赤外線の強度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出ステップと、レベル制御演算装置により、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けるまで、前記蛇行量算出ステップで算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記赤外線カメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含み、前記撮像ステップにおける前記赤外線カメラによる撮像を1msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算ステップによる前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行うことを要旨とする。
【0017】
また、本発明の別の態様に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置は、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置であって、隣り合う圧延機間に設置された、走行する熱間圧延鋼帯の表面を撮像するラインセンサカメラと、該ラインセンサカメラで得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部の位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置と、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記ラインセンサカメラを抜けるまで、前記蛇行量算出装置によって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記ラインセンサカメラが設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算装置とを備え、前記ラインセンサカメラによる撮像を5msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算装置による前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行うことを要旨とする。
【0018】
また、本発明の別の態様に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置は、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有する複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置であって、隣り合う圧延機間に設置された、走行する熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線カメラと、該赤外線カメラで得られた赤外線の強度部分から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置と、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記赤外線カメラを抜けるまで、前記蛇行量算出装置によって算出された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、前記赤外線カメラ設置されている位置の下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を演算し、演算されたロール開度差を前記下流側直近にある圧延機に設けられた前記レベリング装置に送出するレベリング制御演算装置とを備え、前記赤外線カメラによる撮像を1msec以下の周期で行って、前記レベリング制御演算装置による前記下流側直近にある圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及び前記レベリング装置による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行うことを要旨とする。
【0019】
また、本発明の別の態様に係る熱間圧延設備は、前述の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備によれば、熱間圧延鋼帯の蛇行量の演算処理にかける時間を短くして蛇行量の算出周期を小さくし、時々刻々と変化する蛇行量に対して適切にレベリング量を調整できる熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図5図4に示す第2実施形態に係る蛇行制御装置の変形例を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の第4実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図10】比較例1に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図11】比較例2に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
図12】比較例1〜3に係る蛇行制御装置で蛇行制御を行った場合の圧延機F7での蛇行量の時間変化を示すグラフである。
図13】実施例1〜4に係る蛇行制御装置で蛇行制御を行った場合の圧延機F7での蛇行量の時間変化を示すグラフである。
図14】一般的な仕上圧延設備の概略構成図である。
図15】鋼帯の蛇行現象を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0023】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成が示されている。
熱間圧延鋼帯の熱間圧延設備では、加熱炉(図示せず)で加熱されたスラブが粗圧延工程、仕上圧延工程及び冷却工程を経て、所定の板幅及び板厚の鋼板が製造され、巻き取られる。つまり、熱間圧延設備は、加熱炉と、粗圧延機(図示せず)と、仕上圧延設備1(図1参照)と、冷却設備(図示せず)と、巻取設備(図示せず)とを備えている。
【0024】
仕上圧延工程では、図1に示す仕上圧延設備1で熱間圧延鋼帯(以下、単に鋼帯という)10が同時に仕上圧延されるタンデム圧延が行われる。仕上圧延設備1は、鋼帯10を仕上圧延する複数(本実施形態にあっては7台)の圧延機F1〜F7を備えている。各圧延機F1〜F7には、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置2と、操作側及び駆動側の圧延荷重を検出する荷重検出器3とが設けられている。鋼帯10は、図1における矢印で示す方向に走行する(搬送される)。なお、各圧延機F1〜F7における駆動側とは、搬送ロール(図示せず)の駆動モータがある側を意味し、操作側とはその反対側を意味する。
【0025】
各レベリング装置2は、各圧延機F1〜F7の操作側に取り付けられた圧下装置(図示せず)による圧下量と、各圧延機F1〜F7の駆動側に取り付けられた圧下装置(図示せず)による圧下量とを調整する。
また、荷重検出器3は、各圧延機F1〜F7の操作側と駆動側との双方に取り付けられて操作側及び駆動側のそれぞれの圧延荷重を検出する。
また、仕上圧延設備1には、鋼帯10の蛇行を制御する蛇行制御装置4が設けられている。蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部10a(図11参照)が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御するものである。
【0026】
ここで、「蛇行計方式の蛇行制御」は、後に述べるラインセンサカメラ5が設置されている位置の下流側直近にある制御対象の圧延機F7のレベリング量(圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差)を、ラインセンサカメラ5で撮像された撮像画像に基づいて算出された蛇行量に比例するように変更するものである。鋼帯10の蛇行が操作側に生じていれば、操作側が閉まるように(「−」側に)レベリング量を変更し、鋼帯10の蛇行が駆動側に生じていれば、駆動側が閉まるように(「+」側に)レベリング量を変更する。
【0027】
そして、蛇行制御装置4は、圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5を備えている。ラインセンサカメラ5は、一次元撮像装置で、CCDイメージングセンサ素子等で構成され、走行する鋼帯Sの表面を幅方向に走査するように撮像する。ラインセンサカメラ5は、その視野内に各圧延機F1〜F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1(図11参照)が入るように設置される。ラインセンサカメラ5は単数でも複数でもよい。
【0028】
また、蛇行制御装置4は、蛇行量算出装置6を備えている。蛇行量算出装置6は、ラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出する。鋼帯10の幅方向両端部の位置の検出方法は、ラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から求める方法であればどのような方法でもよいが、例えば、輝度値がある閾値よりも大きい場合には鋼帯10が存在する部分、輝度値がある閾値よりも小さい場合には鋼帯10が存在しない部分とし、鋼帯10の幅方向に分布する輝度値が閾値を超える位置を端部とする。そして、蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。具体的に述べると、蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
【0029】
このように、本実施形態に係る蛇行制御装置4にあっては、隣り合う圧延機F6、F7間に設置されたラインセンサカメラ5によって走行する鋼帯10の表面を撮像する。そして、ラインセンサカメラ5で撮像された撮像画像に基づく鋼帯走行方向と直交方向の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。
【0030】
これにより、鋼帯10の蛇行量の演算処理にかける時間を短くして蛇行量の算出周期を小さくすることができる。ラインセンサカメラ5と異なり、従来のように、2次元カメラを用いた場合、2次元データは情報量が多く、画像データの転送、画像データからの蛇行量の演算に時間がかかり、測定周期が大きくなってしまって時々刻々と変化する蛇行量に対して適切にレベリング量を変更できずに鋼帯の蛇行を適切に制御できない。よって、ラインセンサカメラ5とすることで、本発明で意図する下記の5msec以下の周期の制御が可能となる。なお、制御の周期は、5msec以下でもより短時間にすることが好ましい。
また、蛇行量の検出に際し、一次元撮像装置であるラインセンサカメラ5を使用することで2次元カメラよりも設備を安価にすることができる。
【0031】
更に、蛇行制御装置4は、レベリング制御演算装置7を備えている。レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10a(図11参照)が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出装置6で算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、ラインセンサカメラ5が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を次の(1)式により演算する。
S=αC(δ−δ)+S …(1)
【0032】
ここで、S:圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、S:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、α:制御区間Aにおける、蛇行量算出装置6によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、δ:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、蛇行量算出装置6によって測定された蛇行量、δ:制御区間Aにおける、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量である。
【0033】
そして、レベリング制御演算装置7は、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する。
そして、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0034】
なお、ラインセンサカメラ5による撮像を5msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を50mm以下にすることができ、鋼帯10の絞りの発生を防止することができる。また、ラインセンサカメラ5による撮像を5msec以下の周期で行うことで、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを更に低減することができる。
【0035】
次に、蛇行制御装置4による処理の流れを図2に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、鋼帯10の仕上圧延が開始され、鋼帯10の先端部が制御対象の圧延機F7を通過したら、ステップS1において、隣り合う圧延機F6、F7間に設置されたラインセンサカメラ5によって走行する鋼帯10の表面を撮像する(撮像ステップ)。
【0036】
次いで、ステップS2に移行し、ラインセンサカメラ5は撮像された撮像画像のデータを蛇行量算出装置6に転送し、蛇行量算出装置6は、撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出する。そして、蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する(蛇行量算出ステップ)。具体的には、蛇行量算出装置6は、検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
【0037】
次いで、ステップS3に移行し、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出ステップで算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、ラインセンサカメラ5が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0038】
その後、ステップS4において、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する(圧下量調整ステップ)。
これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0039】
ここで、2次元カメラを用いて撮像した撮像画像のデータの大きさと1次元撮像装置としてのラインセンサカメラ5で撮像した撮像画像データの大きさを比較すると、1次元の情報しか持たないラインセンサカメラ5の撮像画像データの方が小さい。このため、ステップS2において、ラインセンサカメラ5で撮像された撮像画像のデータを蛇行量算出装置6に転送するに際してデータの転送周期を小さくすることができる。また、ラインセンサカメラ5による撮像画像データが小さいため、ステップS2において、鋼帯10の蛇行量を算出するに際してその処理時間を短くすることができる。2次元カメラでは、ステップS2において、撮像画像のデータを蛇行量算出装置6に転送するに際して撮像画像データが大きいため、データの転送が遅く、ステップS2において、鋼帯10の蛇行量を算出するに際して演算に時間がかかってしまう。
【0040】
また、ラインセンサカメラ5と2次元カメラで同等の精度の蛇行量を測定しようとすると、画素数が大きくなる2次元カメラの方が高価になる。ラインセンサカメラ5の方が、同等の精度を得ようとしたときに安価に導入することができる。
【0041】
また、制御対象の圧延機F7のレベリング制御では、ステップS3において、レベリング制御演算装置7が圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を算出する。そして、ステップS4において、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。このとき、次の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差が計算されるまでは、ロール開度差は変更されることなく、レベリング装置2に送出される。しかしながら、鋼帯10の蛇行量は時々刻々と変化しているため、カメラの撮像周期を小さくして、鋼帯10の蛇行量に対して常にレベリング量(ロール開度差)を変化させることが好ましい。実際には、カメラによる撮像、データ転送、蛇行量の演算の周期に限界があるので、常にレベリング量を変化させることは難しいが、カメラによる撮像、データの転送、蛇行量の演算を、できるたけ早い周期で行い蛇行量に合わせてレベリング変更することが好ましい。
【0042】
本実施形態のように、ラインセンサカメラ5を用いた場合、データ転送、蛇行量の演算を高速で行えるため、2次元カメラを用いた場合よりも早い周期でレベリング量(ロール開度差)を変化させることができる。
レベリング量(ロール開度差)を変更する周期は、小さければ小さいほどよい。絞りが発生しやすい板厚の薄い条件において、鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6と圧延機F7との間を通過する時間は1秒にも満たない。そのため、わずかな時間に蛇行を抑制するためのレベリング量に制御する必要がある。
【0043】
絞りを防止するためには、鋼帯10の蛇行量を50mm以下にする必要がある。ラインセンサカメラ5の撮像周期を5msec以下にすると、蛇行量を50mm以下にすることができ、絞りの発生を防止できる。また、ラインセンサカメラ5の撮像周期を1msecとすると、蛇行量を30mm以下にすることができるため、蛇行発生のリスクがさらに低減する。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置について図3及び図4を参照して説明する。図3には、本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成が示されている。図4には、本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートが示されている。
【0045】
第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4と基本構成は同様であるが、第1実施形態に係る蛇行制御装置4が、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。これに対して、第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって鋼帯10の蛇行を制御する点で相違する。
【0046】
ここで、「差荷重方式の蛇行制御」は、制御対象の圧延機F7のレベリング量(圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差)を、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から検出された操作側及び駆動側の差荷重に比例するように変更するものである。操作側の圧延荷重が駆動側の圧延荷重よりも大きい場合、差荷重は「+」、駆動側の圧延荷重が操作側の圧延荷重よりも大きい場合、差荷重は「−」とする。そして、鋼帯10に幅方向の板厚偏差、幅方向の温度差がない場合、鋼帯10が圧延機F1〜Fnの中心を通板されていれば、差荷重は生じない。そして、鋼帯10の蛇行が操作側に生じたときに差荷重は「+」となり、鋼帯10の蛇行が駆動側に生じたときに差荷重は「−」となる。この「差荷重方式の蛇行制御」では、差荷重が「+」であれば操作側が閉まるようにレベリング量を変更し、差荷重が「−」であれば駆動側が閉まるようにレベリング量を変更する。
【0047】
蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5と同様に、圧延機F6と圧延機F7との間に設置され、一次元撮像装置で、CCDイメージングセンサ素子等で構成され、走行する鋼帯Sの表面を幅方向に走査するように撮像する。ラインセンサカメラ5は、その視野内に各圧延機F1〜F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1(図11参照)が入るように設置される。ラインセンサカメラ5は単数でも複数でもよい。
【0048】
また、蛇行制御装置4の蛇行量算出装置6は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4の蛇行量算出装置6と同様に、ラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出する。
そして、蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。具体的に述べると、蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
【0049】
このように、本実施形態に係る蛇行制御装置4にあっても、隣り合う圧延機F6、F7間に設置されたラインセンサカメラ5で走行する鋼帯10の表面を撮像する。そして、ラインセンサカメラ5で撮像された撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出して、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出することで鋼帯10の蛇行量を算出する。
これにより、鋼帯10の蛇行量の演算処理にかける時間を短くして蛇行量の算出周期を小さくすることができる。ラインセンサカメラ5と異なり、従来のように、2次元カメラを用いた場合、2次元データは情報量が多く、画像データの転送、画像データからの蛇行量の演算に時間がかかり、測定周期が大きくなってしまって時々刻々と変化する蛇行量に対して適切にレベリング量を変更できずに鋼帯の蛇行を適切に制御できない。
【0050】
また、蛇行量の検出に際し、一次元撮像装置であるラインセンサカメラ5を使用することで2次元カメラよりも設備を安価にすることができる。
また、蛇行制御装置4は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4と同様に、レベリング制御演算装置7を備えている。レベリング制御演算装置7は、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって鋼帯10の蛇行を制御する。
【0051】
このため、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を次の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する。
S=αC(δ−δ)+βD(ΔP−ΔP)+S …(2)
【0052】
ここで、S:圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、S:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、α:制御区間Aにおける、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量に対する制御ゲイン、β:制御区間Aにおける、圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δ:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量、ΔP:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、δ:制御区間Aにおける、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量、ΔP:制御区間Aにおける、圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0053】
また、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を次の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する。
S=βD(ΔP−ΔP)+S …(3)
【0054】
ここで、S:圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、S:鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けたときの、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、β:制御区間Bにおける、圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔP:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、ΔP:制御区間Bにおける、圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0055】
そして、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0056】
なお、ラインセンサカメラ5による撮像を5msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を50mm以下にすることができ、鋼帯10の絞りの発生を防止することができる。また、ラインセンサカメラ5による撮像を5msec以下の周期で行うことで、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを更に低減することができる。
【0057】
次に、蛇行制御装置4による処理の流れを図4に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS11において、鋼帯10の仕上圧延が開始され、鋼帯10の先端部が制御対象の圧延機F7を通過したら、隣り合う圧延機F6、F7間に設置されたラインセンサカメラ5で走行する鋼帯10の表面を撮像する(撮像ステップ)。
次いで、ステップS12に移行し、ラインセンサカメラ5は撮像画像のデータを蛇行量算出装置6に転送し、蛇行量算出装置6は、撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出する。そして、蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する(蛇行量算出ステップ)。
【0058】
次いで、ステップS13に移行し、レベリング制御演算装置7は、制御対象である圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から操作側及び駆動側の差荷重を求める(差荷重算出ステップ)。
次いで、ステップS14に移行し、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0059】
また、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0060】
その後、ステップS15に移行し、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する(圧下量調整ステップ)。
【0061】
つまり、レベリング装置2は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいては、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差が、(2)式により演算されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。また、レベリング装置2は、走行する鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいては、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差が、(3)式により演算されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。
これにより、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0062】
ここで、2次元カメラを用いて撮像した撮像画像のデータの大きさと1次元撮像装置としてのラインセンサカメラ5で撮像した撮像画像データの大きさを比較すると、1次元の情報しか持たないラインセンサカメラ5の撮像画像データの方が小さい。このため、ステップS12において、ラインセンサカメラ5で撮像された撮像画像のデータを蛇行量算出装置6に転送するに際してデータの転送周期を小さくすることができる。また、ラインセンサカメラ5による撮像画像データが小さいため、ステップS12において、ステップS2と同様に、鋼帯10の蛇行量を算出するに際してその処理時間を短くすることができる。
【0063】
また、ラインセンサカメラ5と2次元カメラで同等の精度の蛇行量を測定しようとすると、画素数が大きくなる2次元カメラの方が高価になる。ラインセンサカメラ5の方が、同等の精度を得ようとしたときに安価に導入することができる。
また、第2実施形態の場合も、前述したように、ラインセンサカメラ5を用いて、データ転送、蛇行量の算出を高速で行えるため、2次元カメラを用いた場合よりも早い周期でレベリング量(ロール開度差)を変化させることができ、時々刻々と変化している蛇行量に合わせてレベリング変更することができる。
【0064】
また、第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」のみによって鋼帯10の蛇行を制御する第1実施形態に係る蛇行制御装置4に対し、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。このため、第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4と比較して鋼帯10の蛇行量をより抑制することができる。
【0065】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る蛇行制御装置について図6及び図7を参照して説明する。図6には、本発明の第3実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成が示されている。図7には、本発明の第3実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートが示されている。
第3実施形態に係る蛇行制御装置4は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4と基本構成は同様であり、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。
【0066】
但し、第1実施形態に係る蛇行制御装置4が、隣り合う圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5で、走行する鋼帯10の表面を撮像するのに対し、第3実施形態に係る蛇行制御装置4は、隣り合う圧延機F6と圧延機F7との間に設置された赤外線カメラ20で、走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する点で相違している。
【0067】
また、第1実施形態に係る蛇行制御装置4が、蛇行量算出装置6で、ラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。これに対して、第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、蛇行量算出装置21で、赤外線カメラ20で得られた赤外線の強度部分から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する点で装置している。
【0068】
第3実施形態に係る蛇行制御装置4における赤外線カメラ20は、走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する。鋼帯10は、仕上圧延設備1では、加熱炉(図示せず)で加熱されていることから高温(600℃〜1000℃)になっており、所定の熱量を有する自発光型の測定対象物となっている。ここで、赤外線は、蒸気によって散乱されにくく、鋼帯10と赤外線カメラ20との間に蒸気が有る場合でも、鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像することができる。このため、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、赤外線の強度分布を適切かつ迅速に撮像することができる。
また、赤外線の強度分布は、鋼帯10の温度分布に対応している。仕上圧延設備1での鋼帯10の温度は前述したように600℃〜1000℃であり、例えば、400℃以上の場所が鋼帯10の存在する場所と定義した場合、赤外線カメラ20の撮像画像におけるその400℃以上に対応する赤外線の強度のところが鋼帯10が存在する場所となる。
【0069】
なお、赤外線カメラ20に用いられる波長は、1.5μm超1000μm以下であることが好ましい。赤外線の波長が1.5μm以下、または1000μm超えでは、本発明の意図する高い測定精度が得られず、鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができない。赤外線カメラ20に用いられる赤外線の波長は、1.5μm超1000μm以下では、測定精度を後述する実施例のようにより高くすることができる。赤外線カメラ20に用いられる波長は、3.0μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
赤外線カメラ20の設置台数は単数でも複数であってもよい。但し、所定の赤外線カメラ20の視野範囲内に圧延機F6,F7の幅方向の中心CL1(図15参照)が入るように設置する。
【0070】
また、蛇行量算出装置21は、赤外線カメラ20で撮像された赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出する。つまり、蛇行量算出装置21は、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向の操作側の端部と駆動側の端部とを検出する。鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置の検出に際しては、例えば、赤外線の強度が所定の閾値(前述の400℃に対応する強度の値)以上の場合には鋼帯10が存在する部分、赤外線の強度が所定の閾値よりも小さい場合には鋼帯10が存在しない部分とし、赤外線の強度が所定の閾値のところをエッジ位置、即ち鋼帯10の幅方向の操作側の端部と駆動側の端部と特定する。
【0071】
また、蛇行量算出装置21は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
このように、第3実施形態に係る蛇行制御装置4によれば、赤外線カメラ20で走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像し、蛇行量算出装置21で赤外線カメラ20で撮像された赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出する。
これにより、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、赤外線の強度分布を適切にかつ迅速に撮像し、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができる。
【0072】
また、第3実施形態に係る蛇行制御装置4によれば、蛇行量算出装置21により、検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、圧延機F6〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
これにより、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、適切かつ迅速に検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を適切かつ迅速に算出することができる。
そして、この蛇行量の算出、即ち、鋼帯10の蛇行量の測定に際しては、測定周期が1msec程度の高周期での測定が可能となり、圧延機F6と圧延機F7との間を鋼帯10が通過する時間が1秒に満たない場合であっても、自動でレベリング制御を行えることになる。
【0073】
更に、蛇行制御装置4は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4と同様に、レベリング制御演算装置7を備えている。レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10a(図15参照)が圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出装置21で算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、赤外線カメラ20が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を前述と同様の(1)式により演算する。
そして、レベリング制御演算装置7は、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する。
【0074】
そして、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
なお、赤外線カメラ20による撮像を1msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを更に低減することができる。
【0075】
次に、第3実施形態に係る蛇行制御装置4による処理の流れを図7に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、鋼帯10の仕上圧延が開始され、鋼帯10の先端部が制御対象の圧延機F7を通過したら、ステップS21において、隣り合う圧延機F6、F7間に設置された赤外線カメラ20によって走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する(撮像ステップ)。
【0076】
次いで、ステップS22に移行し、赤外線カメラ20は撮像した赤外線の強度分布のデータを蛇行量算出装置21に転送し、蛇行量算出装置21は、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出する。そして、蛇行量算出装置21は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する(蛇行量算出ステップ)。具体的には、蛇行量算出装置21は、検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
【0077】
次いで、ステップS23に移行し、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出ステップで算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、赤外線カメラ20が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0078】
その後、ステップS24において、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する(圧下量調整ステップ)。
これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0079】
撮像ステップにおいて、隣り合う圧延機F6、F7間に設置された赤外線カメラ20によって走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像し、蛇行量算出ステップにおいて、蛇行量算出装置21は、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。
これにより、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、赤外線の強度分布を適切にかつ迅速に撮像し、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができる。
【0080】
また、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、適切かつ迅速に検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を適切かつ迅速に算出することができる。
そして、この蛇行量の算出、即ち、鋼帯10の蛇行量の測定に際しては、測定周期が1msec程度の高周期での測定が可能となり、圧延機F6と圧延機F7との間を鋼帯10が通過する時間が1秒に満たない場合であっても、自動でレベリング制御を行えることになる。
【0081】
このため、赤外線カメラ20による撮像を1msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを低減することができる。
【0082】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る蛇行制御装置について図8及び図9を参照して説明する。図8には、本発明の第4実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成が示されている。図9には、本発明の第4実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートが示されている。
第4実施形態に係る蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と基本構成は同様であり、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって鋼帯10の蛇行を制御する。
【0083】
但し、第2実施形態に係る蛇行制御装置4が、隣り合う圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5で、走行する鋼帯10の表面を撮像するのに対し、第4実施形態に係る蛇行制御装置4は、隣り合う圧延機F6と圧延機F7との間に設置された赤外線カメラ20で、走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する点で相違している。
【0084】
また、第2実施形態に係る蛇行制御装置4が、蛇行量算出装置6で、ラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。これに対して、第4実施形態に係る蛇行制御装置4は、蛇行量算出装置21で、赤外線カメラ20で得られた赤外線の強度部分から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する点で装置している。
【0085】
第4実施形態に係る蛇行制御装置4における赤外線カメラ20は、第3実施形態に係る赤外線カメラ20と同様に、走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する。このため、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、赤外線の強度分布を適切かつ迅速に撮像することができる。
なお、赤外線カメラ20に用いられる波長は、第3実施形態に係る赤外線カメラ20と同様の理由により、1.5μm超1000μm以下であることが好ましい。そして、赤外線カメラ20に用いられる波長は、3.0μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
赤外線カメラ20の設置台数は単数でも複数であってもよい。但し、所定の赤外線カメラ20の視野範囲内に圧延機F6,F7の幅方向の中心CL1(図15参照)が入るように設置する。
【0086】
第4実施形態に係る蛇行制御装置4によれば、赤外線カメラ20で走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像し、蛇行量算出装置21で赤外線カメラ20で撮像された赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出する。
これにより、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、赤外線の強度分布を適切にかつ迅速に撮像し、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができる。
【0087】
また、第4実施形態に係る蛇行制御装置4によれば、蛇行量算出装置21により、検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、圧延機F6〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
これにより、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、適切かつ迅速に検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を適切かつ迅速に算出することができる。
【0088】
そして、この蛇行量の算出、即ち、鋼帯10の蛇行量の測定に際しては、測定周期が1msec程度の高周期での測定が可能となり、圧延機F6と圧延機F7との間を鋼帯10が通過する時間が1秒に満たない場合であっても、自動でレベリング制御を行えることになる。
また、蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と同様に、レベリング制御演算装置7を備えている。レベリング制御演算装置7は、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって鋼帯10の蛇行を制御する。
【0089】
このため、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置21によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する。
【0090】
また、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する。
【0091】
そして、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0092】
なお、赤外線カメラ20による撮像を1msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを低減することができる。
【0093】
次に、第4実施形態に係る蛇行制御装置4による処理の流れを図9に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS31において、鋼帯10の仕上圧延が開始され、鋼帯10の先端部が制御対象の圧延機F7を通過したら、隣り合う圧延機F6、F7間に設置された赤外線カメラ20で走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する(撮像ステップ)。
次いで、ステップS32に移行し、赤外線カメラ20は撮像した赤外線の強度分布のデータを蛇行量算出装置21に転送し、蛇行量算出装置21は、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出する。そして、蛇行量算出装置21は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する(蛇行量算出ステップ)。
【0094】
次いで、ステップS33に移行し、レベリング制御演算装置7は、制御対象である圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から操作側及び駆動側の差荷重を求める(差荷重算出ステップ)。
次いで、ステップS34に移行し、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置21によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0095】
また、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0096】
その後、ステップS35に移行し、圧延機F7に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差がレベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する(圧下量調整ステップ)。
【0097】
つまり、レベリング装置2は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいては、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差が、(2)式により演算されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。また、レベリング装置2は、走行する鋼帯10の尾端部10aが赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいては、当該制御対象の圧延機F7のロール開度差が、(3)式により演算されたロール開度差となるように、圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。
これにより、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0098】
撮像ステップにおいて、隣り合う圧延機F6、F7間に設置された赤外線カメラ20によって走行する鋼帯10の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像し、蛇行量算出ステップにおいて、蛇行量算出装置21は、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を検出し、その検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を算出する。
これにより、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、赤外線の強度分布を適切にかつ迅速に撮像し、赤外線の強度分布から鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができる。
また、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われる場合であっても、適切かつ迅速に検出された鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて鋼帯10の蛇行量を適切かつ迅速に算出することができる。
【0099】
そして、この蛇行量の算出、即ち、鋼帯10の蛇行量の測定に際しては、測定周期が1msec程度の高周期での測定が可能となり、圧延機F6と圧延機F7との間を鋼帯10が通過する時間が1秒に満たない場合であっても、自動でレベリング制御を行えることになる。
このため、赤外線カメラ20による撮像を1msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を1msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを低減することができる。
【0100】
また、第4実施形態に係る蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」のみによって鋼帯10の蛇行を制御する第3実施形態に係る蛇行制御装置4に対し、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部10aが赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。このため、第4実施形態に係る蛇行制御装置4は、第3実施形態に係る蛇行制御装置4と比較して鋼帯10の蛇行量をより抑制することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
先ず、第1実施形態乃至第4実施形態に係る蛇行制御装置4において、制御対象となる圧延機は上流側から数えて7番目の圧延機F7としてあるが、ラインセンサカメラ5あるいは赤外線カメラ20が設置されている位置の下流側直近にある圧延機であれば、圧延機F7以外の圧延機F6、圧延機F5、圧延機F4などであってもよい。
また、第1実施形態乃至第4実施形態に係る蛇行制御装置4において、圧延機の数が7つであるが、この圧延機の数は7つ以外であってもよい。この場合であっても、制御対象となる圧延機は、ラインセンサカメラ5あるいは赤外線カメラ20が設置されている位置の下流側直近にある圧延機であればよい。
【0102】
また、第1実施形態乃至第4実施形態に係る蛇行制御装置4において、制御区間Aは、走行する鋼帯10の尾端部10aが制御対象となる圧延機F7よりひとつ前の圧延機F6を抜けたときから開始しているが、圧延機F7よりひとつ前の圧延機F6を抜けたときから開始する場合に限らず、例えば、圧延機F7よりふたつ前の圧延機F5を抜けたときや圧延機F7より三つ前の圧延機F4を抜けたときなどとしてもよい。また、制御区間Aは、走行する鋼帯10の尾端部10aが任意の圧延機間の特定ポイントを通過した時から開始するようにしてもよい。
【0103】
また、第2実施形態に係る蛇行制御装置4を、図5に示すように変形してもよい。これについて具体的に述べると、図5に示す蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と基本構成は同様である。しかし、第2実施形態に係る蛇行制御装置4が、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御する。これに対して、図5に示す蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4による制御区間Aにおける「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」の併用、制御区間Bにおける「差荷重方式の蛇行制御」のみによる圧延機F7のレベリング量の調整に加えて、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間A−1において、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用する。また、鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F6を抜けるまでの制御区間B−1において、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F6のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御する。
【0104】
このため、図5に示す蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と異なり、圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5に加えて、圧延機F5と圧延機F6との間にもラインセンサカメラ5を設置している。圧延機F5と圧延機F6との間に設置されたラインセンサカメラ5は、圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5と同様の性能を有し、一次元撮像装置で、CCDイメージングセンサ素子等で構成され、走行する鋼帯Sの表面を幅方向に走査するように撮像する。ラインセンサカメラ5は、その視野内に各圧延機F1〜F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1(図15参照)が入るように設置される。このラインセンサカメラ5は単数でも複数でもよい。
【0105】
また、図5に示す蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と異なり、圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づいて鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出する蛇行量算出装置6に加えて、圧延機F5と圧延機F6との間に設置されたラインセンサカメラ5で得られた撮像画像に基づく一次元輝度分布から鋼帯10の幅方向両端部の位置を検出する蛇行量算出装置6を備えている。この加えられた蛇行量算出装置6は、その検出された鋼帯10の幅方向両端部の位置から鋼帯10の幅方向中央の位置を算出し、各圧延機F1〜F7の幅方向の中心から、算出された鋼帯10の幅方向中央の位置までの距離を鋼帯10の蛇行量として算出する。
【0106】
また、図5に示す蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と異なり、制御区間Aにおいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、制御区間Bにおいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算するレベリング制御演算装置7に加えて、制御区間A−1において、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差を後述の(4)式により演算し、制御区間B−1において、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差を後述の(5)式により演算するレベリング制御演算装置7を備えている。
【0107】
つまり、この加えられたレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間A−1において、圧延機F6に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差を次の(4)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F6に設けられたレベリング装置2に送出するレベリング制御演算装置7を備えている。
S=αA−1C(δ−δ)+βA−1D(ΔP−ΔP)+S …(4)
【0108】
ここで、S:圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差、S:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けたときの、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差、αA−1:制御区間A−1における、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量に対する制御ゲイン、βA−1:制御区間A−1における、圧延機F6に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δ:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けたときの、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量、ΔP:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けたときの、圧延機F6に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、δ:制御区間A−1における、蛇行量算出装置6によって算出された蛇行量、ΔP:制御区間A−1における、圧延機F6に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0109】
また、レベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F6を抜けるまでの制御区間B−1において、圧延機F6に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差を次の(5)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F6に設けられたレベリング装置2に送出する。
S=βB−1D(ΔP−ΔP)+SB−1 …(5)
【0110】
ここで、S:圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差、SB−1:鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けたときの、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差、β−1:制御区間B−1における、圧延機F6に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔP:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けたときの、圧延機F6に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、ΔP:制御区間B−1における、圧延機F6に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0111】
そして、圧延機F6に設けられたレベリング装置2は、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、制御対象の圧延機F6の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F6の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、制御対象の圧延機F6のレベリング量が鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
また、圧延機F7に設けられたレベリング装置2も、レベリング制御演算装置7から送出されたロール開度差に基づいて、制御対象の圧延機F7の操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機F7の駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、制御対象の圧延機F7のレベリング量も鋼帯10の蛇行量に比例して変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0112】
なお、圧延機F5と圧延機F6との間に設置されたラインセンサカメラ5による撮像を5msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行う。これにより、鋼帯10の蛇行量を50mm以下にすることができ、鋼帯10の絞りの発生を防止することができる。また、ラインセンサカメラ5による撮像を5msec以下の周期で行うことで、鋼帯10の蛇行量を30mm以下にすることができ、蛇行発生のリスクを更に低減することができる。
また、圧延機F6と圧延機F7との間に設置されたラインセンサカメラ5による撮像も5msec以下の周期で行って、レベリング制御演算装置7による制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差の演算及びレベリング装置2による操作側及び駆動側の圧下量の調整を5msec以下の周期で行う。
【0113】
この図5に示す蛇行制御装置4の場合、第2実施形態に係る蛇行制御装置4による制御区間Aにおける「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」の併用、制御区間Bにおける「差荷重方式の蛇行制御」のみによる圧延機F7のレベリング量の調整に加えて、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間A−1において、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用する。また、鋼帯10の尾端部10aがラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F6を抜けるまでの制御区間B−1において、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F6のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御する。このため、図5に示す蛇行制御装置4は、第2実施形態に係る蛇行制御装置4と比較して鋼帯10の蛇行量をより抑制することができる。
【0114】
また、第4実施形態に係る蛇行制御装置4も、図5に示す蛇行制御装置4と同様の趣旨で変形してもよい。つまり、第4実施形態の変形例に係る蛇行制御装置4は、第4実施形態に係る蛇行制御装置4による制御区間Aにおける「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」の併用、制御区間Bにおける「差荷重方式の蛇行制御」のみによる圧延機F7のレベリング量の調整に加えて、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間A−1において、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用する。また、鋼帯10の尾端部10aが赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F6を抜けるまでの制御区間B−1において、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F6のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御する。
【実施例】
【0115】
本発明者らは、比較例1〜3及び実施例1〜6に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備1を用いて鋼帯10を仕上圧延し、それぞれについて鋼帯10の蛇行量を測定した。鋼帯10の幅は1200mm、仕上圧延設備1の入側の鋼帯10の板厚は21mm、仕上圧延設備1の出側の鋼帯10の板厚は1.7mmとした。また、仕上圧延設備1の出側での鋼帯10の圧延速度を1000mpmとした。
比較例1に係る蛇行制御装置は、図10に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから2次元カメラ8を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」によって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0116】
つまり、比較例1に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから2次元カメラ8を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出装置6で算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、2次元カメラ8が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、比較例1に係る蛇行制御装置4の2次元カメラ8による撮像周期は、20msecとした。
【0117】
また、比較例2に係る蛇行制御装置は、図11に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから2次元カメラ8を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部が2次元カメラ8を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0118】
つまり、比較例2に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから2次元カメラ8を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0119】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が2次元カメラ8を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、比較例2に係る蛇行制御装置4の2次元カメラ8による撮像周期は、20msecとした。
【0120】
また、比較例3に係る蛇行制御装置は、図3に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0121】
つまり、比較例3に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0122】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、比較例3に係る蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5による撮像周期は、20msecとした。
【0123】
次に、実施例1に係る蛇行制御装置は、図1に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」によって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
つまり、実施例1に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出装置6で算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、ラインセンサカメラ5が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、実施例1に係る蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5による撮像周期は、5msecとした。
【0124】
また、実施例2に係る蛇行制御装置は、図3に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0125】
つまり、実施例2に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0126】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、実施例2に係る蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5による撮像周期は、5msecとした。
【0127】
また、実施例3に係る蛇行制御装置は、図3に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0128】
つまり、実施例3に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0129】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、実施例3に係る蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5による撮像周期は、1msecとした。
【0130】
次に、実施例4に係る蛇行制御装置は、図5に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F5を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間A−1において、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F6を抜けるまでの制御区間B−1において、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F6のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0131】
また、実施例4に係る蛇行制御装置は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0132】
つまり、実施例4に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F5を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間A−1において、圧延機F6に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(4)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F6に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0133】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F6を抜けるまでの制御区間B−1において、圧延機F6に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F6における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(5)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F6に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0134】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてからラインセンサカメラ5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置6によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0135】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部がラインセンサカメラ5を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、実施例4に係る蛇行制御装置4のラインセンサカメラ5による撮像周期は、2台とも1msecとした。
【0136】
次に、実施例5に係る蛇行制御装置は、図6に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」によって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
つまり、実施例5に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量算出装置21で算出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、赤外線カメラ20が設置されている位置の下流側直近にある圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象となる圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、実施例5に係る蛇行制御装置4の赤外線カメラ20による撮像周期は、1msecとした。また、赤外線カメラ20に用いられる赤外線の波長帯は、8〜14μmであった。
【0137】
また、実施例6に係る蛇行制御装置は、図8に示されており、この蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用し、鋼帯10の尾端部が赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」のみによって圧延機F7のレベリング量を調整して鋼帯10の蛇行を制御した。
【0138】
つまり、実施例6に係る蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けてから赤外線カメラ20を抜けるまでの制御区間Aにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量算出装置21によって算出された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(2)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0139】
また、このレベリング制御演算装置7は、走行する鋼帯10の尾端部が赤外線カメラ20を抜けてから圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、圧延機F7に設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差を圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
そして、実施例6に係る蛇行制御装置4の赤外線カメラ20による撮像周期は、1msecとした。また、赤外線カメラ20に用いられる赤外線の波長帯は、8〜14μmであった。
【0140】
表1に、比較例1〜3及び実施例1〜6の蛇行制御条件と蛇行制御結果とを示す。
【0141】
【表1】
【0142】
比較例1では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置した2次元カメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は96mmであった。
比較例2では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置した2次元カメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は80mmであった。
また、比較例3では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置したラインセンサカメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は76mmであった。
【0143】
また、実施例1では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置したラインセンサカメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は40mmであった。
また、実施例2では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置したラインセンサカメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は32mmであった。
また、実施例3では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置したラインセンサカメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は25mmであった。
【0144】
更に、実施例4では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置したラインセンサカメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は12mmであった。
また、実施例5では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置した赤外線カメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は20mmであった。
また、実施例6では、圧延機F6と圧延機F7との間に設置した赤外線カメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は10mmであった。
【0145】
本実施例1〜6の場合、圧延機F6と圧延機F7との間に設置したラインセンサカメラでの鋼帯10の尾端部の蛇行量は最も大きくて40mmであり、比較例1〜3と比較して鋼帯10の尾端部の蛇行量が減少していることが確認された。
また、実施例1と実施例2とを比較すると、制御区間Aにおいて、「蛇行計方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用した方が、「蛇行計方式の蛇行制御」のみを行った場合よりも鋼帯10の尾端部の蛇行量が減少していることが確認された。
更に、実施例2と実施例3とを比較すると、ラインセンサカメラ5の撮像周期を5msecから1msecに早めた方が鋼帯10の尾端部の蛇行量が減少していることが確認された。
また、実施例3と実施例4とを比較すると、制御区間A及びBで圧延機Fのレベリング量を制御するのみならず、制御区間A−1及びB−1においても圧延機F6のレベリングの制御を行う方が鋼帯10の尾端部の蛇行量が減少していることが確認された。
【0146】
また、比較例1〜3に係る蛇行制御装置で蛇行制御を行った場合の圧延機F7での蛇行量の時間変化を図12に示す。また、実施例1〜4に係る蛇行制御装置で蛇行制御を行った場合の圧延機F7での蛇行量の時間変化を図13に示す。なお、図12及び図13において、T1は鋼帯10の尾端部が圧延機F5を抜けたときの時刻、T2は鋼帯10の尾端部が圧延機F6を抜けたときの時刻、T3は鋼帯10の尾端部が圧延機F6と圧延機F7との間(カメラのある位置)を抜けたときの時刻、T4は鋼帯10の尾端部が圧延機F7を向けたときの時刻を示す。
【0147】
図12及び図13から理解できるように、実施例1〜4に係る蛇行制御装置で蛇行制御を行った場合の圧延機F7での蛇行量の時間変化は、比較例1〜3に係る蛇行制御装置で蛇行制御を行った場合の圧延機F7での蛇行量の時間変化よりも小さいことが確認された。
なお、比較例1〜3及び実施例1〜6において、蒸気で鋼帯10の幅方向両端部のエッジが完全に覆われた場合、可視光カメラの2次元カメラを用いた比較例1、2及びラインセンサカメラを用いた比較例3及び実施例1〜4にあっては、鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置の検出が困難で蛇行量の測定データにノイズあることが分かった。これに対し、赤外線カメラ20を用いた実施例5、6にあっては、鋼帯10の幅方向両端部のエッジ位置の検出が適切かつ迅速に行え、蛇行量の測定データにノイズは少なく、蛇行量が明確に測定できた。
【符号の説明】
【0148】
1 仕上圧延設備
2 レベリング装置
3 荷重検出器
4 蛇行制御装置
5 ラインセンサカメラ
6 蛇行量算出装置
7 レベリング制御演算装置
8 2次元カメラ
10 熱間圧延鋼帯
10a 尾端部
20 赤外線カメラ
21 蛇行量算出装置
22 レベリング制御装置
F1〜Fn 圧延機
【要約】
熱間圧延鋼帯の蛇行量の演算処理にかける時間を短くして蛇行量の算出周期を小さくし、時々刻々と変化する蛇行量に対して適切にレベリング量を調整できる熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備を提供する。鋼帯の蛇行制御方法は、隣り合う圧延機(F6),(F7)間に設置されたラインセンサカメラ(5)で走行する鋼帯(10)の表面を撮像する撮像ステップ(ステップS1)と、撮像画像に基づく1次元の輝度分布から鋼帯(10)の幅方向両端部の位置を検出して鋼帯(10)の蛇行量を算出する蛇行量算出ステップ(ステップS2)と、算出された鋼帯(10)の蛇行量に基づいて、ラインセンサカメラ(5)の下流側直近にある圧延機(F7)における操作側及び駆動側のロール開度差を演算するベリング制御演算ステップ(ステップS3)とを含む。撮像ステップにおけるラインセンサカメラ(5)による撮像を5msec以下の周期で行う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15