特許第6801859号(P6801859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6801859デマンドレスポンス対応型電源制御システム、制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801859
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】デマンドレスポンス対応型電源制御システム、制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20201207BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20201207BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20201207BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20201207BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/38 110
   H02J3/46
   H02J3/14
   H02J13/00 311T
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-146746(P2016-146746)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-19485(P2018-19485A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】川幡 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大内 良孝
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−131419(JP,A)
【文献】 特開2012−165513(JP,A)
【文献】 特開2015−186290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
H02J 13/00
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び電源に接続され、電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に接続されて前記蓄電池の残量及び前記負荷の消費電力を少なくとも含む電力情報を取得する管理手段と、を具備し、前記電源あるいは前記蓄電池からの電力を前記負荷へ電力供給する電源装置が複数でグループ化された電源装置グループと、
電力使用量抑制要求と、前記管理手段の取得した前記電力情報と、を受信し、受信した前記電力使用量抑制要求及び前記電力情報に基づいて前記電源装置グループとして前記電力使用量抑制要求を達成するよう前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことのないよう前記電源装置グループの前記蓄電池各々を制御し、前記電力使用量抑制要求に対する前記電源装置グループの達成状況を前記電力使用量抑制要求を送信した送信元に送信する制御装置と、
を具備することを特徴とするデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電力使用量抑制要求に対して、前記蓄電池各々の放電量の制御を行うことを特徴とする請求項1記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、デマンドレスポンスアグリゲータから送信された前記電力使用量抑制要求を受信することを特徴とする請求項1又は2記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記電源装置のグループの各電源装置における前記蓄電池の放電量を調整して前記電力使用量抑制要求の達成可否を判断し、該判断の結果に基づいて前記電源装置グループとして前記電源の使用量を制御することを特徴とする請求項2記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記電力使用量抑制要求に対して、前記負荷の消費電力の抑制が可能な場合は、前記蓄電池各々の制御を行うことに加えて前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項6】
前記電力使用量抑制要求を達成する前記蓄電池各々の制御は、少なくとも制御する前記蓄電池数及び複数の前記蓄電池の残量に関して決められた条件を満たすように行われることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、一定周期で各蓄電池の制御を再調整することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記電力使用量抑制要求より所定量分大きい電力量を抑制するように制御することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のデマンドレスポンス対応型電源制御システム。
【請求項9】
負荷及び電源に接続され、電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に接続されて前記蓄電池の残量及び前記負荷の消費電力を少なくとも含む電力情報を取得する管理手段と、を具備し、前記電源あるいは前記蓄電池からの電力を前記負荷へ電力供給する電源装置が複数でグループ化された電源装置グループから前記電力情報と、
電力使用量抑制要求と、
を受信し、受信した前記電力使用量抑制要求及び前記電力情報に基づいて前記電源装置グループとして前記電力使用量抑制要求を達成するよう前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことのないよう前記電源装置グループの前記蓄電池各々を制御し、前記電力使用量抑制要求に対する前記電源装置グループの達成状況を前記電力使用量抑制要求を送信した送信元に送信することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
前記電力使用量抑制要求に対して、前記負荷の消費電力の抑制が可能な場合は、前記蓄電池各々の制御を行うことに加えて前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことを特徴とする請求項9記載の制御装置。
【請求項11】
前記電力使用量抑制要求を達成する前記蓄電池各々の制御は、少なくとも制御する前記蓄電池数及び複数の前記蓄電池の残量に関して決められた条件を満たすように行われることを特徴とする請求項9又は10記載の制御装置。
【請求項12】
一定周期で各蓄電池の制御を再調整することを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記電力使用量抑制要求より所定量分大きい電力量を抑制するように制御することを特徴とする請求項9〜12の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
負荷及び電源に接続され、電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に接続されて前記蓄電池の残量及び前記負荷の消費電力を少なくとも含む電力情報を取得する管理手段と、を具備し、前記電源あるいは前記蓄電池からの電力を前記負荷へ電力供給する電源装置が複数でグループ化された電源装置グループから前記電力情報を受信するステップと、
電力使用量抑制要求を受信するステップと、
受信した前記電力使用量抑制要求及び前記電力情報に基づいて前記電源装置グループとして前記電力使用量抑制要求を達成するよう前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことのないよう前記電源装置グループの前記蓄電池各々を制御するステップと、
前記電力使用量抑制要求に対する前記電源装置グループの達成状況を前記電力使用量抑制要求を送信した送信元に送信するステップと、を具備することを特徴とする制御方法。
【請求項15】
前記電力使用量抑制要求に対して、前記負荷の消費電力の抑制が可能な場合は、前記蓄電池各々の制御を行うことに加えて前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことを特徴とする請求項14記載の制御方法。
【請求項16】
前記電力使用量抑制要求を達成する前記蓄電池各々の制御は、少なくとも制御する前記蓄電池数及び複数の前記蓄電池の残量に関して決められた条件を満たすように行われることを特徴とする請求項14又は15に記載の制御方法。
【請求項17】
一定周期で各蓄電池の制御を再調整することを特徴とする請求項14〜16の何れか一項に記載の制御方法。
【請求項18】
前記電力使用量抑制要求より所定量分大きい電力量を抑制するように制御することを特徴とする請求項14〜17の何れか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ蓄電池を含む複数の電源装置を有する、電力を消費する側である需要家がデマンドレスポンスに対応可能なデマンドレスポンス対応型電源制御システム、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を供給する側である電気事業者、系統運用者が、電力需給が逼迫した際に需要家に対して電力使用量の抑制を要請するデマンドレスポンス(DR:Demand Response)が知られている。
【0003】
デマンドレスポンスには、時間帯別料金等の電気料金ベースのものと、電気事業者または系統運用者が需要家と契約を締結し、卸電力価格が高騰又は電力需給が逼迫した際に負荷による電力使用量の抑制を要請し、その対価として電気事業者または系統運用者がインセンティブ(報酬)を支払うインセンティブベースのものとに分けられる。
【0004】
また、デマンドレスポンスにおいては、電気事業者、系統運用者と需要家との間にこの両者間を仲介するデマンドレスポンスアグリゲータを配置することが一般的に知られている。電気事業者、系統運用者からの電力使用量抑制要求を受けたデマンドレスポンスアグリゲータは、管理する対象の複数の需要家の各々へ電力使用量抑制要求をし、各需要家における電力使用量が電力使用量抑制要求で指示される電力使用量内に抑えられているか否かを監視し、その結果を電気事業者、系統運用者へ知らせるサービスを提供している(例えば、特許文献1及び2等参照)。なお、デマンドレスポンスアグリゲータとしての役割を電気事業者、系統運用者自身で担う場合もあり、その場合にはデマンドレスポンスアグリゲータは設置されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−077051号公報
【特許文献2】特開2016−039758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気事業者または系統運用者やデマンドレスポンスアグリゲータからの電力使用量抑制要求は各需要家毎で行われるため、需要家によっては電力の使用を抑制することができずにインセンティブを得られない場合がある。例えば、ある需要家Aにおいては電力使用量抑制要求に対して余裕もって消費電力の抑制を実施することができる一方で、別の需要家Bにおいては要求された削減量がわずかに足りずに消費電力の抑制を実施することができないことがある。需要家Bは、電力使用量抑制要求に対して応じようとしたにもかかわらずインセンティブを得られず、こういった状況が続くと需要家Bとしては電力使用量抑制要求に応じてもインセンティブへの期待ができないため、電力使用量抑制要求に対して応じなくなってしまう問題がある。一方で、電力使用量抑制要求を、その要求が達成されたか否かのみで判断される場合、需要家Aが電力使用量抑制要求で要求される削減量を大きく上回るほどの消費電力の抑制を実施しても、それで得られるインセンティブはぎりぎりで要求される削減量を達成した需要家の場合のインセンティブと変わらないこととなる。そのため、需要家Aは要求される削減量を大きく上回るほどの消費電力の抑制を行うことへのメリットがないことから、電力使用量抑制要求に対して必要以上に消費電力の抑制を行わないようになってしまう問題がある。
【0007】
また、電気事業者または系統運用者やデマンドレスポンスアグリゲータなどは、複数の需要家に電力使用量抑制要求の指令を送信しなくてはならず、各需要家との契約数が多くなると共に電力使用量抑制要求を各需要家に送信しなくてはならず負荷が生じるという問題がある。
【0008】
本発明のデマンドレスポンス対応型電源制御システム、制御装置及び制御方法はこのような事情に鑑み、複数の需要家における電力使用量抑制要求に対する達成度を向上することを目的とする。また、本発明のデマンドレスポンス対応型電源制御システム、制御装置及び制御方法は、消費電力の抑制を促進することを目的とする。また、本発明のデマンドレスポンス対応型電源制御システム、制御装置及び制御方法は、契約数や電力使用量抑制要求の指令数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、負荷及び電源に接続され、電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に接続されて前記蓄電池の残量及び前記負荷の消費電力を少なくとも含む電力情報を取得する管理手段と、を具備し、前記電源あるいは前記蓄電池からの電力を前記負荷へ電力供給する電源装置が複数でグループ化された電源装置グループと、電力使用量抑制要求と、前記管理手段の取得した前記電力情報と、を受信し、受信した前記電力使用量抑制要求及び前記電力情報に基づいて前記電源装置グループとして前記電力使用量抑制要求を達成するよう前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことのないよう前記電源装置グループの前記蓄電池各々を制御し、前記電力使用量抑制要求に対する前記電源装置グループの達成状況を前記電力使用量抑制要求を送信した送信元に送信する制御装置と、を具備することを特徴とするデマンドレスポンス対応型電源制御システムにある。
【0010】
かかる態様では、制御装置が電源装置グループの電力量情報に基づいて電力使用量抑制要求に対応するように複数の電源装置の蓄電池各々を制御することで、各需要家が個別に電力使用量抑制要求に対応できない場合であっても、電力使用量抑制要求を達成することができる。特に、特定の需要家において、電力使用量抑制要求を超えて消費電力の抑制を実施することができる場合には、電力使用量抑制要求に対応できない需要家の分を補うことができるため、電力使用量抑制要求に対する達成度を向上することができると共に、消費電力の抑制を促進することができる。また、電力使用量抑制要求を各電源装置に送信する場合に比べて、電源装置グループに電力使用量抑制要求を送信すれば良いため、需要家との契約数や電力使用量抑制要求を送信する負荷を低減することができる。
【0011】
ここで、前記制御装置は、前記電力使用量抑制要求に対して、前記蓄電池各々の放電量の制御を行うことが好ましい。これによれば、制御装置が蓄電池各々の放電量の制御を行うだけで、負荷の消費電力を削除することなく、電力使用量抑制要求を達成することができ、需要家の利便性を向上することができる。
【0012】
また、前記制御装置は、デマンドレスポンスアグリゲータから送信された前記電力使用量抑制要求を受信することが好ましい。これによれば、デマンドレスポンスアグリゲータからの電力使用量抑制要求にも対応することができる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記電源装置のグループの各電源装置における前記蓄電池の放電量を調整して前記電力使用量抑制要求の達成可否を判断し、該判断の結果に基づいて前記電源装置グループとして前記電源の使用量を制御することが好ましい。これによれば、電力使用量抑制要求の達成可否を判断して制御することができるため、達成不可能にもかかわらず使用量の制御を行うなどの無駄な制御を行うことがない。
また、前記制御装置は、前記電力使用量抑制要求に対して、前記負荷の消費電力の抑制が可能な場合は、前記蓄電池各々の制御を行うことに加えて前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことが好ましい。
また、前記電力使用量抑制要求を達成する前記蓄電池各々の制御は、少なくとも制御する前記蓄電池数及び複数の前記蓄電池の残量に関して決められた条件を満たすように行われることが好ましい。
また、前記制御装置は、一定周期で各蓄電池の制御を再調整することが好ましい。
また、前記制御装置は、前記電力使用量抑制要求より所定量分大きい電力量を抑制するように制御することが好ましい。
【0014】
本発明の態様は、負荷及び電源に接続され、電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に接続されて前記蓄電池の残量及び前記負荷の消費電力を少なくとも含む電力情報を取得する管理手段と、を具備し、前記電源あるいは前記蓄電池からの電力を前記負荷へ電力供給する電源装置が複数でグループ化された電源装置グループから前記電力情報と、電力使用量抑制要求と、を受信し、受信した前記電力使用量抑制要求及び前記電力情報に基づいて前記電源装置グループとして前記電力使用量抑制要求を達成するよう前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことのないよう前記電源装置グループの前記蓄電池各々を制御し、前記電力使用量抑制要求に対する前記電源装置グループの達成状況を前記電力使用量抑制要求を送信した送信元に送信することを特徴とする制御装置にある。
【0015】
かかる態様では、制御装置が電源装置グループの電力情報に基づいて電力使用量抑制要求に対応するように複数の電源装置の蓄電池各々を制御することで、各需要家が個別に電力使用量抑制要求に対応できない場合であっても、電力使用量抑制要求を達成することができる。特に、特定の需要家において、電力使用量抑制要求を超えて消費電力の抑制を実施することができる場合には、電力使用量抑制要求に対応できない需要家の分を補うことができるため、電力使用量抑制要求に対する達成度を向上することができると共に、消費電力の抑制を促進することができる。また、電力使用量抑制要求を各電源装置に送信する場合に比べて、電源装置グループに電力使用量抑制要求を送信すれば良いため、需要家との契約数や電力使用量抑制要求を送信する負荷を低減することができる。
また、前記電力使用量抑制要求に対して、前記負荷の消費電力の抑制が可能な場合は、前記蓄電池各々の制御を行うことに加えて前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことが好ましい。
また、前記電力使用量抑制要求を達成する前記蓄電池各々の制御は、少なくとも制御する前記蓄電池数及び複数の前記蓄電池の残量に関して決められた条件を満たすように行われることが好ましい。
また、一定周期で各蓄電池の制御を再調整することが好ましい。
また、前記電力使用量抑制要求より所定量分大きい電力量を抑制するように制御することが好ましい。
【0016】
本発明の態様は、負荷及び電源に接続され、電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に接続されて前記蓄電池の残量及び前記負荷の消費電力を少なくとも含む電力情報を取得する管理手段と、を具備し、前記電源あるいは前記蓄電池からの電力を前記負荷へ電力供給する電源装置が複数でグループ化された電源装置グループから前記電力情報を受信するステップと、電力使用量抑制要求を受信するステップと、受信した前記電力使用量抑制要求及び前記電力情報に基づいて前記電源装置グループとして前記電力使用量抑制要求を達成するよう前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことのないよう前記電源装置グループの前記蓄電池各々を制御するステップと、前記電力使用量抑制要求に対する前記電源装置グループの達成状況を前記電力使用量抑制要求を送信した送信元に送信するステップと、を具備することを特徴とする制御方法にある。
【0017】
かかる態様では、電源装置グループの電力情報に基づいて電力使用量抑制要求に対応するように複数の電源装置の蓄電池各々を制御することで、各需要家が個別に電力使用量抑制要求に対応できない場合であっても、電力使用量抑制要求を達成することができる。特に、特定の需要家において、電力使用量抑制要求を超えて消費電力の抑制を実施することができる場合には、電力使用量抑制要求に対応できない需要家の分を補うことができるため、電力使用量抑制要求に対する達成度を向上することができると共に、消費電力の抑制を促進することができる。また、電力使用量抑制要求を各電源装置に送信する場合に比べて、電源装置グループに電力使用量抑制要求を送信すれば良いため、需要家との契約数や電力使用量抑制要求を送信する負荷を低減することができる。
また、前記電力使用量抑制要求に対して、前記負荷の消費電力の抑制が可能な場合は、前記蓄電池各々の制御を行うことに加えて前記負荷の消費電力を抑制する制御を行うことが好ましい。
また、前記電力使用量抑制要求を達成する前記蓄電池各々の制御は、少なくとも制御する前記蓄電池数及び複数の前記蓄電池の残量に関して決められた条件を満たすように行われることが好ましい。
また、一定周期で各蓄電池の制御を再調整することが好ましい。
また、前記電力使用量抑制要求より所定量分大きい電力量を抑制するように制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電力使用量の電力使用量抑制要求に対して、複数の需用者によって広く対応することができる。特に、電力使用量抑制要求に対して需要家が個別に対応する場合、電力使用量抑制要求の対応を実施できない場合も生じるが、複数の需要家の電源装置がグループ化された電源装置グループによって対応することで、電力使用量抑制要求に対する達成度を向上することができる。また、電力使用量抑制要求を送信する要請者(電気事業者または系統運用者やデマンドレスポンスアグリゲータ)と需要家との契約数が増大するのを抑制して、要請者の電力使用量抑制要求を送信する数を減らして、処理を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係るデマンドレスポンス対応型電源制御システムのブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る電源装置のブロック図である。
図3】本発明の実施形態1に係る制御装置のブロック図である。
図4】本発明の実施形態1に係るデマンドレスポンス対応型電源制御システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るデマンドレスポンス対応型電源制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、デマンドレスポンス対応型電源制御システム1は、電気事業者又は系統運用者2(以下、まとめて電気事業者2と称する)から需給調整をまとめて取り引きするデマンドレスポンスアグリゲータ3と、蓄電池を含む電源装置10を有する複数の需要家であるユーザ4A〜4D(以降、まとめてユーザ4とも称する)と、デマンドレスポンスアグリゲータ3とユーザ4の各電源装置10との間に接続された制御装置5と、を具備する。
【0023】
ユーザ4の各々は、電気事業者2から供給された商用電源が接続された電源装置10と、電源装置10に接続された負荷20と、を具備する。
【0024】
ここで、ユーザ4の電源装置10の構成について、図2をさらに参照して説明する。なお、図2は、電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、電源装置10は、電気事業者2から供給された商用電源と負荷20との間に配置されたものであり、単体又は複数の電池セル11で構成された蓄電池11Aと、蓄電池11Aの電池セル11の状態を監視する監視装置(CMU:Cell Monitor Unit)12と、電源装置10の全体を制御する本実施形態の管理手段である管理装置(BMU:Battery Management Unit)13と、商用電源、蓄電池11A及び負荷20の接続を制御する充放電装置14と、を具備する。
【0026】
監視装置12は、電池セル11毎、又は、複数の電池セル11で構成された電池セル群毎に電圧、電流、温度等を監視する。また、監視装置12は、電池セル11の電圧、電流、温度等の異常を検知し、異常の発生を管理装置13に伝える。
【0027】
管理装置13は、蓄電池11Aの充放電の状態、蓄電池11Aの残量、蓄電池11Aに接続された負荷20の消費電力を検出する。また、管理装置13は、監視装置12の動作制御、充放電装置14の制御などの電源装置10の各回路の制御全般を行う。例えば、管理装置13は、蓄電池11Aの残量が所定の閾値よりも低下したことを検知したら、充放電装置14を制御して商用電源で蓄電池11Aを充電するように制御する。また、管理装置13は、蓄電池11Aが満充電であることを検知したら、充放電装置14による蓄電池11Aの充電を停止する。さらに、管理装置13は、商用電源からの負荷20への電力の供給と、蓄電池11Aからの負荷20への電力の供給とを、外部からの要求や停電等の外部の電力供給状況に応じて切り替えるように充放電装置14を制御する。
【0028】
また、管理装置13が取得した蓄電池11Aの充放電の状態、蓄電池11Aの残量、蓄電池11Aに接続された負荷20の消費電力は、電力情報として制御装置5に送信される。
【0029】
なお、電源装置10には、電気事業者2から供給される商用電源の他に、例えば、自然エネルギーによって発電する発電機、例えば、太陽光発電装置や風力発電装置などが接続されてもよい。
【0030】
このような蓄電池11Aを含む電源装置10は、2以上の複数の電源装置10がグループ化されて電源装置グループ10Aを構成する。本実施形態では、4つのユーザ4A〜4Dの電源装置10が1つの電源装置グループ10Aを構成している。なお、電源装置グループ10Aを構成する電源装置10の数は、2以上であれば特に限定されない。また、1つの制御装置5に接続される電源装置グループ10Aの数も特に限定されず、1つであっても、また2つ以上の複数であってもよい。ちなみに、電源装置グループ10Aを構成する各電源装置10は、同一の負荷20に接続されるものではなく、ユーザ4毎に異なる負荷20に接続されているものである。すなわち、一方のユーザ4Aの電源装置10に接続された負荷20に対して、他のユーザ4B、4C、4Dの電源装置10の蓄電池11Aからは電力が供給されるものではない。このような電源装置グループ10Aは、例えば、自治会毎、集合住宅毎、オフィスビル毎、住所毎、各種団体毎に形成される。例えば、電源装置グループ10Aがオフィスビルであるとすれば各ユーザ4A〜4Dは1〜4階とみることができる。オフィスビルに供給される商用電源からの電力が各階の分電盤を介して各階に設けられたコンセントに供給され、このコンセントに接続される電源装置10を介して負荷20へ電力供給されることとなる。なお、商用電源からの電力は、各階の分電盤を介して電源装置10へ送られ、各階の電源装置10から各階のコンセントへ接続される負荷へ電力を供給するようにしてもよい。また、自治会などでユーザが増減し得る戸建住宅の場合、各ユーザの電源装置10に対して個別に識別番号を設定して電源装置10が有するメモリに識別番号を格納しておき、制御装置5にも自治会の対象ユーザの電源装置10の識別番号をあらかじめ読み出し及び書き込み可能なメモリに登録しておき、電力情報を取得する際に電力情報ととともに識別番号を送信してもらうことで、制御装置5は自治会毎に対象の電源装置10(ユーザである各戸)を認識することができる。このような識別番号のような情報に基づくグループ分けであれば、1つの制御装置5で複数の自治会(グループ)に対するデマンドレスポンスに基づく制御・管理を行うことも可能となる。
【0031】
制御装置5は、デマンドレスポンスアグリゲータ3から、商用電源からの電力の使用量の抑制要請である電力使用量抑制要求を受け取ると共に、各電源装置10の管理装置13から電力情報を受け取り、所定の処理を行って各種動作の制御を行うために必要な制御信号を生成して出力する。
【0032】
ここで、本実施形態の制御装置5について、さらに図3を参照して説明する。なお、図3は、制御装置5の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
図3に示すように、制御装置5はサーバとして機能するものであり、制御部31、記憶手段の一例である読み出し及び書き込み可能なメモリ32(Random Access Memory:以下、RAM32と称する)、各種プログラムなどを格納するための読み出し専用のメモリ33(Read Only Memory:以下、ROM33と称する)と、通信部34と、を備える。
【0034】
制御部31は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit:以下、CPUと称する)からなり、制御装置5での種々の処理を実行する。より具体的には、制御部31は、ROM33に書き込まれたプログラムを読み出して処理を実行することで、RAM32、通信部34の各々に対する各種制御を行って、通信部34に接続された管理装置13の動作を制御する制御信号や、デマンドレスポンスアグリゲータ3への電力使用量抑制要求に対する達成状況の報告などを行う。
【0035】
制御装置5は、通信部34を介してデマンドレスポンスアグリゲータ3からの電力使用量抑制要求を受信する。デマンドレスポンスアグリゲータ3から送信される電力使用量抑制要求は、少なくとも抑制を要求する電力の使用量と削除時間とを含む情報である。すなわち、電力使用量抑制要求は、電力の使用の抑制を行う時間帯、つまり、電力使用の抑制を開始する時刻及び電力使用の抑制を終了する時刻と、この2つの時刻の間における電力の使用量と、を含む情報である。
【0036】
また、制御装置5は、通信部34を介して各ユーザ4の電源装置10の管理装置13から蓄電池11Aの充放電の状態、蓄電池11Aの蓄電残量、負荷20の消費電力を少なくとも含む電力情報を受信する。なお、電力情報は、上述したものに限定されず、例えば、太陽光発電装置や風力発電装置が接続されている場合には、これら発電装置の発電量等を含むようにしてもよい。また、電力情報として、過去の時間帯における負荷20の消費電力の変動履歴を取得するようにしてもよい。
【0037】
制御装置5は、デマンドレスポンスアグリゲータ3から受信した電力使用量抑制要求と、各ユーザ4の管理装置13から受信した蓄電池情報とに基づいて、電力使用量抑制要求が制御装置5に接続された電源装置グループ10A全体で達成可能か判断する。すなわち、制御装置5は、電力使用量抑制要求に対して、各電源装置10で個別に対応するのではなく、電源装置グループ10Aに属する全ての電源装置10の充放電を制御することで達成可能か判断する。制御装置5は、予め設定された条件に基づき、受信した電力使用量抑制要求が電源装置グループ10Aにおいて達成可能と判断した場合には、各電源装置10に蓄電池11Aを制御する制御指令を送信する。制御指令を受信した管理装置13は、制御指令に基づいて電源装置10の制御を行って商用電源の使用量の抑制を実施する。
【0038】
なお、本実施形態では、制御装置5は、商用電源の使用量を抑制するために負荷20の消費電力を抑制することなく、蓄電池11Aの充放電を制御することで、商用電源から供給される電力の抑制に対する要求(電力使用量抑制要求)を達成するように電源装置グループ10Aの電源装置10を制御する。これにより、ユーザ4は、負荷20の消費電力を抑制することなく、商用電源の電力使用量抑制要求を達成することができるため、利便性を向上すると共にグループの各ユーザ4A〜4Dがインセンティブを受け取ることが可能となる。もちろん、これに限定されず、例えば、電源装置10が負荷20の消費電力の制御を可能な場合には、制御装置5は、蓄電池11Aの充放電の制御に加えて、負荷20の消費電力の抑制を行わせるように電源装置10を制御してデマンドレスポンスアグリゲータ3からの電力使用量抑制要求を達成するようにしてもよい。ただし、負荷20の消費電力を抑制される場合には、ユーザ4の利便性が低下してしまう。
【0039】
また、制御装置5は、電力使用量抑制要求に対する電源装置グループ10Aの達成状況を、通信部34を介してデマンドレスポンスアグリゲータ3に送信する。なお、通信部34は、例えば、インターネット網、公衆電話回線網などのネットワークを介して電源装置10の管理装置13やデマンドレスポンスアグリゲータ3と接続されている。
【0040】
また、制御装置5が判断する予め設定された条件とは、蓄電池11Aの充放電の状態、蓄電池11Aの残量、負荷20の消費電力等に基づいて設定することができる。
【0041】
ここで、電源装置グループ10Aを構成するユーザ4A〜4Dの各々の蓄電池11Aの充放電の状態、蓄電池11Aの容量、蓄電池11Aの充電電力、蓄電池11Aの残量、蓄電池11Aに接続された負荷20の消費電力の一例を下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、ユーザ4A、4Dの蓄電池11Aは充電していない待機中となっており、ユーザ4B、4Cの蓄電池11Aは商用電源を用いた充電中となっている。なお、各ユーザ4A〜4Dはいずれも放電1時間で最大1kW(蓄電池の容量の40%に相当)の出力が可能なものとしている。なお、充放電状態が放電中のユーザ(電源装置10の蓄電池11A)を充放電制御対象とすると、その制御方法としては放電停止となるため負荷への電力供給を停止となってしまうことから、それを避けるため、放電中のユーザ(電源装置10の蓄電池11A)は充放電制御の対象外とする。そのため、上記表では、制御の対象となり得る充放電状態のユーザを示すものとしている。
【0044】
このようなユーザ4A〜4Dの電源装置10で本実施形態の電源装置グループ10Aが構成されており、この電源装置グループ10Aに対する電力使用量抑制要求に対して制御装置5が各種条件に基づいてユーザ4A〜4Dの電源装置10に処理を行わせる。なお、表1に示す状態では、各ユーザ4A〜4Dの負荷20には商用電源から電力が供給されている。
【0045】
ここで制御装置5が制御する条件としては、例えば、以下の3つが挙げられる。
【0046】
条件1は、電力使用量抑制要求に対して制御される電源装置10の数が最小となるようにすることである。このように、制御される電源装置10の数が最小となるように蓄電池11Aの充放電制御を行って商用電源の電力使用量を抑制することで、制御装置5の処理数を減らして制御装置5にかかる負荷を減らすことができる。すなわち、制御する電源装置10の数が増えると、制御装置5が制御信号を送信する処理数が増えて制御装置5にかかる負荷が増すため、電源装置グループ10Aを構成する電源装置10の数や、電源装置グループ10Aの数が制限されてしまう虞がある。制御される電源装置10の数が最小となるように電源装置10を制御することで、制御装置5の処理数が増大するのを抑制して、1つの制御装置5で対応できる電源装置グループ10Aを構成する電源装置10の数や電源装置グループ10Aの数を増加させることができる。
【0047】
条件2は、災害や停電などの不測の事態が発生した場合を考慮して、電源装置グループ10Aを構成する各電源装置10の蓄電池11Aに一定量の蓄電残量(例えば、30%)を確保しておくようにすることである。すなわち、各蓄電池11Aの蓄電残量が低すぎると、災害や停電などの商用電源の供給が得られない不測の事態が発生した場合に蓄電池11Aを十分に使用することができないため、常に蓄電池11Aに一定量の蓄電残量を確保しておくことで、災害や停電などの不測の事態においても蓄電池11Aの電力を電源装置に接続されている負荷に供給することができる。
【0048】
条件3は、電力使用量抑制要求への対応方法のうち、電力使用量抑制要求後の複数の電源装置10の蓄電池11Aの最小の蓄電残量が最も高くなるようにすることである。すなわち、電力使用量抑制要求に対応した後、複数の電源装置10のなかで最小となる蓄電池11Aの残量が最も高くなるようにすることで、グループ内の残量を平滑化することができる。
【0049】
なお、上述した条件1〜3は、電力使用量抑制要求に応じている間は、各ユーザ4A〜4Dの状態、すなわち、負荷20の使用電力等は変えられないよう制御されているものとする。また、電力使用量抑制要求通りに応える(余計な削除を行わない)ことを優先するものとする。条件1〜3を満足するパターンが複数ある場合には、条件4として、ユーザ4A〜4Dの蓄電残量の合計値が高い方を優先する。
【0050】
制御装置5は、電力使用量抑制要求に応えるように、上述した条件1〜3に基づいて各電源装置10内の蓄電池11Aの充放電状況に設定するための制御指令を各電源装置10へ送信する。なお、条件1〜3において、条件1の優先順位が最も高く、条件3の優先順位が最も低くなっている。ここで、デマンドレスポンスアグリゲータ3からの電源装置グループ10Aに対する電力使用量抑制要求の一例と、条件1〜3に基づいた制御方法とを実施例1〜3に基づいて説明する。
【0051】
(実施例1)
1kW、1時間の電力使用量抑制要求があった場合について説明する。つまり、これまでは4つのユーザ4A〜4Dが個別に0.25kW、1時間の電力使用量抑制要求を受けて、その達成に向けた電力使用量の抑制に対応していたところ、本実施形態では、4つのユーザ全体として1kW(0.25kW×4ユーザ)、1時間の電力使用量抑制要求の達成に向けて電力使用量の抑制を行うように、制御装置5がユーザ4A〜4Dそれぞれの電源装置10の蓄電池11Aの充放電を制御することとなる。1kW、1時間の電力使用量抑制要求に対して、条件1〜3を満足する制御方法は以下の対応A〜Bが考えられる。
【0052】
(対応A)
ユーザ4Aの蓄電池に1時間放電させる。
【0053】
ユーザ4Aの蓄電池11Aには1kWの負荷が接続されているため、蓄電池11Aから負荷20に電力を1時間供給することで、1kW、1時間の商用電源の使用抑制を実現することができる。この場合、1時間後には、ユーザ4Aの蓄電池11Aの蓄電残量は60%となる。つまり、対応Aでは、ユーザ4Aの蓄電池11Aの充放電の制御のみで対応することができるため、条件1を満たす。また、ユーザ4Aの蓄電池11Aは残量が60%であるため、条件2を満たす。なお、この対応Aでは、ユーザ4Bは充電が継続されて100%の蓄電残量(満充電)となり、ユーザ4Cも充電が継続されて70%の蓄電残量となり、待機中が継続されるユーザ4Dの蓄電池11Aの残量が50%となる。
【0054】
(対応B)
ユーザ4Bの充電を1時間停止する。
【0055】
ユーザ4Bの蓄電池11Aの充電電力が1kWであるため、蓄電池11Aへの充電を1時間停止することで、1kW、1時間の商用電源の使用抑制を実現することができる。そのため、1時間後には、ユーザ4Bの蓄電池11Aの蓄電残量は70%のまま維持される。また、ユーザ4Cの蓄電池11Aは充電が継続されているため、1時間後には、蓄電残量が70%となる。なお、待機中のユーザ4A、4Dは蓄電残量が維持されるので、それぞれ蓄電残量は100%、50%のままである。
【0056】
このような対応A、Bはいずれも4つのユーザ4A〜4Dにおける蓄電残量の最小値は50%である。対応A、Bに対して、電力使用量抑制要求に応じた後の電源装置グループ10Aの全ての蓄電池11Aの合計の残量が多くなる方を選択する(条件4)。4つのユーザ4A〜4Dの蓄電残量の合計値は、対応Aでは280%(60+100+70+50)に対して対応Bでは290%(100+70+70+50)となる。したがって、対応Bを行うように制御する。
【0057】
(実施例2)
1.5kW、1時間の電力使用量抑制要求があった場合には、条件1及び2を満足させる制御方法は以下の対応A〜Dが考えられる。
【0058】
(対応A)
ユーザ4A及びユーザ4Dの蓄電池11Aを放電させる。
【0059】
ユーザ4Aの蓄電池11Aには1kWの負荷が接続されているため、蓄電池11Aから負荷20に電力を1時間供給することで、商用電源の1kW、1時間の商用電源の使用量の抑制を実現することができる。また、ユーザ4Dの蓄電池11Aには、0.5kWの負荷20が接続されているため、蓄電池11Aから負荷20に電力を1時間供給することで、商用電源の0.5kW、1時間の商用電源の使用抑制を実現することができる。すなわち、合計1.5kW、1時間の電力抑制を実現できる。
【0060】
この結果、1時間経過後には、ユーザ4Aの蓄電池11Aの残量が60%、ユーザ4Dの蓄電池11Aの残量が30%になる。なお、充電を継続していたユーザ4B、4Cの蓄電残量はそれぞれ100%、70%となる。
【0061】
(対応B)
ユーザ4Dの蓄電池11Aを放電させて、ユーザ4Bの蓄電池11Aの充電を停止する。
【0062】
この結果、1時間経過後には、ユーザ4Dの蓄電池11A残量が30%、ユーザ4Bの蓄電池11Aの残量が70%となる。なお、ユーザ4Aは待機のままなので蓄電残量は100%、ユーザ4Cは充電が継続されるので蓄電残量は70%となる。
【0063】
(対応C)
ユーザ4Aの蓄電池11Aを放電させて、ユーザ4Bの蓄電池11Aの充電を停止する。
【0064】
この結果、1時間経過後には、ユーザ4Aの蓄電池11Aの残量が60%、ユーザ4Bの蓄電池11Aの残量が70%となる。なお、ユーザCは充電が継続されるので蓄電残量は70%、ユーザDは待機のままなので蓄電残量は50%となる。
【0065】
(対応D)
ユーザ4Bの蓄電池11Aの充電を停止し、放電させる。
【0066】
この結果、1時間経過後には、ユーザ4Bの蓄電池11Aの残量が50%となる。なお、ユーザ4Aは待機のままなので蓄電残量は100%、ユーザ4Cは充電が継続されるので蓄電残量は70%、ユーザ4Dは待機のままなので蓄電残量は50%となる。
【0067】
この対応A〜Dのうち、条件3を考慮すると、対応C又はDとなる。このうち、電力使用量抑制要求に応じた後で、電源装置グループ10Aの全ての蓄電池11Aの合計の残量が多く残る方を選択する。4つのユーザ4A〜4Dの蓄電残量の合計値は、対応Cでは250%(60+70+70+50)に対して対応Dでは270%(100+50+70+50)となる。したがって、対応Dを行うように制御する。
【0068】
(実施例3)
2kW、1時間の電力使用量抑制要求があった場合には、条件1及び2を満足させる制御方法は以下の対応A〜Bが考えられる。
【0069】
(対応A)
ユーザ4Aの蓄電池11Aを放電させて、ユーザ4Bの蓄電池11Aの充電を停止する。
【0070】
この結果、1時間経過後には、ユーザ4Aの蓄電池11Aの蓄電残量が60%、ユーザ4Bの蓄電池11Aの蓄電残量が70%となる。なお、ユーザCは充電が継続されるので蓄電残量は70%、ユーザDは待機のままなので蓄電残量は50%となる。
【0071】
(対応B)
ユーザ4B及び4Cの蓄電池11Aを放電させる。
【0072】
この結果、1時間経過後には、ユーザ4Bの蓄電池11Aの残量が蓄電50%、ユーザ4Cの蓄電池11Aの残量が30%となる。なお、ユーザ4A、4Dは待機状態のままなので蓄電残量はそれぞれ100%、50%である。
【0073】
この対応A、Bのうち、条件3を満たす対応Aを行う。
【0074】
上述したように、実施例1〜3の電力使用量抑制要求に対して、条件1〜4により適した対応を選択して行うことで、電力使用量抑制要求に対して電源装置グループ10Aによって効率よく商用電源の使用量の低減を実施することができる。すなわち、ユーザ4A〜4Dが、個別に電力使用量抑制要求に対応しようとしても達成できない場合、達成できないユーザ4は、インセンティブを受け取ることができなくなってしまう。具体的には、例えば、実施例3のような電力使用量抑制要求に対して、そもそも1時間で1kWの出力しか出せない各ユーザ個別では電力使用量抑制要求を達成することができない。しかしながら、実施例3の電力使用量抑制要求に対して電源装置グループ10Aで対応することによって、ユーザ4の電源装置10が単独では実施できない電力使用量抑制要求も電源装置グループ10Aによって実施することができる。つまり、一定の電力使用量抑制要求に対して、一部しか消費電力を低減できないユーザ4の電源装置10が存在したとしても、実施できない残りの削除を、消費電力の削除に余裕がある他のユーザ4が補うことで、電力使用量抑制要求に対して電源装置グループ10A全体で達成することができる。したがって、本実施形態のデマンドレスポンス対応型電源制御システム1では、電力使用量抑制要求に対する達成度を向上することができる。なお、電力使用量抑制要求を達成したことに対するインセンティブの分配については、電源装置グループ10Aの各ユーザ4A〜4Dに均等に配布するようにしてもよく、また、電力使用量抑制要求に貢献した割合に応じて配布するようにしてもよい。電力使用量抑制要求への貢献度に応じてインセンティブを分配する場合には、制御装置5の制御部31が各管理装置13に送信する制御指令に基づいて決定すればよい。
【0075】
また、デマンドレスポンスアグリゲータ3は、制御装置5に対して電力使用量抑制要求を送信すればよく、デマンドレスポンスアグリゲータ3と各ユーザ4との契約が不要となる。すなわち、デマンドレスポンスアグリゲータ3と電源装置グループ10Aとの契約で、複数のユーザ4が電力使用量抑制要求に対応することができる。したがって、デマンドレスポンスアグリゲータ3が同時に電力使用量抑制要求を送信する数を減らして、デマンドレスポンスアグリゲータ3の負荷を低減して処理が滞るのを抑制することができる。
【0076】
ここで、本実施形態のデマンドレスポンス対応型電源制御システム1による電力使用量抑制要求に対応する制御方法について図4を参照して説明する。なお、図4は、デマンドレスポンス対応型電源制御システムの制御動作を示すフローチャートである。
【0077】
まず、ステップS1で、デマンドレスポンスアグリゲータ3から制御装置5が電力使用量抑制要求を受け付けた後、ステップS2で、制御装置5は、電源装置グループ10Aの各電源装置10内の管理装置13から受け取った蓄電池11Aの充放電の状態、蓄電池11Aの蓄電残量等の蓄電池情報や、電源装置10に接続された負荷20の消費電力等の情報などの電力情報から電力使用量抑制要求への対応が可能であるか判断する。ステップS3で、制御装置5が電力使用量抑制要求に対して電源装置グループ10Aによる対応が可能ではないと判断した場合には(ステップS3;No)、ステップS10で終了となる。
【0078】
ステップS3で、制御装置5が電力使用量抑制要求に対して電源装置グループ10Aによる対応が可能であると判断した場合には(ステップS3;Yes)、ステップS4で、上述した条件1〜4に基づいて電源装置グループ10Aの電源装置10から制御すべき電源装置10を選択し、ステップS5で、制御装置5が制御すべき電源装置10の蓄電池11Aに対する充放電を制御する制御信号を送信して、商用電源の電力使用量の低減を実施する。
【0079】
次に、ステップS6で、電力使用量抑制要求で要求された時間を経過したか否かや各電源装置10の蓄電池11Aに対して充電あるいは放電を最優先で実行するようあらかじめ設定された時刻になったか等により電力使用量抑制要求に対する対応を終了するか判断し、ステップS7で終了すると判断した場合には(ステップS7;Yes)、ステップS10で終了となる。また、ステップS7で終了しないと判断した場合には(ステップS7;No)、ステップS8で電源装置グループ10A全体での目標達成状況を確認する。ステップS9で、電力使用量抑制要求の目標を達成したと判断した場合には(ステップS9;Yes)、ステップS6〜ステップS8を繰り返す。また、ステップS9で、目標を達成していないと判断した場合には(ステップS9;No)、ステップS4〜ステップS8を繰り返す。
【0080】
このようなデマンドレスポンス対応型電源制御システムの電力使用量抑制要求に対する制御方法では、電力使用量抑制要求に対して2以上の複数の電源装置10で構成された電源装置グループ10Aによって対応することで、ユーザ4個別には対応できない電力使用量抑制要求に対しても、対応することができる。したがって、大きな電力使用量抑制要求にも対応することができ、電力使用量抑制要求への対応可能回数も増えていくことから、インセンティブをより多く受け取ることができる。また、デマンドレスポンスアグリゲータ3は、制御装置5に対して電力使用量抑制要求を送信すればよく、デマンドレスポンスアグリゲータ3と各ユーザ4との契約が不要となる。したがって、デマンドレスポンスアグリゲータ3が同時に電力使用量抑制要求を送信する数を減らして、デマンドレスポンスアグリゲータ3の処理が滞るのを抑制することができる。
【0081】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0082】
例えば、管理装置13から制御装置5が受け取る電力量情報として、過去の時間帯における負荷20の消費電力の変動履歴が含まれていてもよい。この過去の時間帯における負荷20の消費電力の変動履歴に基づいて、電力使用量の抑制を行うユーザ4を選定するようにしてもよい。すなわち、電力使用量抑制要求によって電力使用量の抑制が要求された時間帯について、過去の負荷の消費電力の履歴と蓄電池11Aの蓄電残量等から蓄電池11Aに対する充放電を制御すべき最適なユーザ4を選定すればよい。
【0083】
具体的には、デマンドレスポンスアグリゲータ3から受け取った電力使用量抑制要求における消費電力を削減する時間帯が、過去の履歴から電源装置グループ10Aの各ユーザ4A〜4Dの負荷20での消費電力が多くなることが分かっている場合には、各ユーザ4A〜4Dの負荷20の消費電力の履歴と、各ユーザ4A〜4Dの電源装置10の蓄電池11Aの蓄電残量とから、電源装置グループ10Aとして、電力使用量抑制要求で抑制すべき電力使用量は蓄電池11Aからの電力供給で賄えるか判断すればよい。
【0084】
また、上述した実施形態1では、複数のユーザ4は、同じ状態ではない構成を例示したが、例えば、複数のユーザ4が同じ状態の場合、すなわち、上述した実施形態1で、ユーザ4Eがさらにあって、その蓄電池11Aの状態、容量、残量、負荷20等がいずれもユーザ4Bと同じであった場合には、実施例1ではユーザ4Bとユーザ4Eのどちらか一方の充電を停止すればよい。ここで、ユーザ4Bとユーザ4Eとのどちらを選択するかは、充放電制御行うためのアルゴリズムの中で先に見つかる方、例えば、ユーザ4A〜4Dをアルファベット順に状態を確認するのであれば、ユーザ4Bを優先し、ユーザ4Bの電源装置10の蓄電池11Aに対して充放電制御を行えばよい。
【0085】
さらに、実際には、電力使用量抑制要求に応じている間にも負荷20の消費電力は変化する。このため、一定周期、例えば、30分や1時間毎に電力使用量抑制要求に対する達成度(抑制できている電力使用量)と各ユーザ4の状況を確認し、その状況に応じて各ユーザ4の電源装置10の蓄電池11Aへの充放電制御を再設定してもよい。具体的には、再度、各ユーザ4の状態を確認し、残る時間で削除すべき電力量から、今充放電を制御している電源装置10に対して同じ充放電制御のままでよいと判断されればそのまま再設定することなく今充放電を制御している電源装置10に対して同じ充放電制御を継続する。一方、今充放電を制御している電源装置10に対して同じ充放電制御のままでは電力使用量抑制要求を達成できないと判断される、あるいは、電力使用量抑制要求より大きく超えて達成すると判断されると、電力使用量抑制要求を大きく超えることなく、かつ電力使用量抑制要求で要求されている電力使用量の抑制は達成できる最適な充放電制御の方法をあらためて見つけ、各ユーザ4の電源装置10の蓄電池11Aに対して、見つけた方法に従って充放電制御するよう制御装置5から制御信号を送るようにすればよい。
【0086】
また、上述した実施形態1では、電力使用量抑制要求通りに電力量を削除するものであるが、実際には、ある程度の余裕をもって削除を行うのが好ましい。すなわち、電力使用量抑制要求があった電力使用量に対して10%分多く抑制できる実現方法を実施する。これは最終的に確実に電力使用量抑制要求に応えられるようにするためである。
【0087】
したがって、実際の運用を考慮すると制御装置5は、実施形態1の条件1〜4に加えて、さらに、下記の条件5、6を満たすように制御するようにしてもよい。すなわち、充放電状態はユーザ4の状況によって変化するので、ユーザ4の状況を常に監視して一定周期で各ユーザ4の電源装置10の蓄電池11Aに対して充放電の再制御を行う(条件5)。また、デマンドレスポンスアグリゲータ3からの電力使用量抑制要求よりもあらかじめ決められた量の分は大きな電力使用量の抑制を行う(条件6)。
【0088】
また、上述した実施形態1のデマンドレスポンス対応型電源制御システム1には、制御装置5が1つだけ設けられている構成を例示したが、特にこれに限定されず、電源装置グループ10Aの数によって制御装置5を複数設けるようにしてもよい。すなわち、制御装置5が処理する電源装置グループ10Aの数が増大すれば、それだけ電源装置10に制御信号を送信するための処理数が増えるため、制御装置5を複数設けることで、1つの制御装置5の処理数を低減して、制御装置5の処理に関する負荷を抑制することができる。
【0089】
さらに、上述した実施形態1では、制御装置5が、デマンドレスポンスアグリゲータ3から電力使用量抑制要求を受信するようにしたが、特にこれに限定されず、制御装置5は、電気事業者2から直接、電力使用量抑制要求を受信してもよい。もちろん、デマンドレスポンスアグリゲータ3が多段に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、デマンドレスポンスに対応するシステムを構築する産業分野や、その保守、運用を行う産業分野において良好に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 デマンドレスポンス対応型電源制御システム
2 電気事業者又は系統運用者
3 デマンドレスポンスアグリゲータ
4、4A〜4D ユーザ
5 制御装置
10 電源装置
10A 電源装置グループ
11 電池セル
11A 蓄電池
12 監視装置
13 管理装置
14 充放電装置
20 負荷
31 制御部
32 RAM
33 ROM
34 通信部
図1
図2
図3
図4