特許第6801915号(P6801915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801915
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】脚支持部材の関節固定機構
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20060101AFI20201207BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20201207BHJP
   F16C 11/06 20060101ALI20201207BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G03B17/56 B
   H04N5/222 100
   F16C11/06 Z
   F16C11/10 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-127702(P2016-127702)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-4753(P2018-4753A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390041173
【氏名又は名称】平和精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】樋田 信行
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/021870(WO,A1)
【文献】 特開2015−010712(JP,A)
【文献】 特開2008−281609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
F16C 11/06
F16C 11/10
H04N 5/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影機材用三脚の脚ベース部と脚支持部材の間に設けられる、角度調整用の関節部を備えた脚支持部材の関節固定機構であって、
前記関節部は、下部内側にテーパー部が設けられ、そのテーパー部の上部に継手を備えた関節固定部材と、
下端部が前記脚ベース部に接続され、上端部が前記関節固定部材の前記継手により接続されたポール部材と、
前記関節固定部材の下方に設けられ、内側に空間を有し、上部中央に前記ポール部材が挿通する挿通孔を有するとともに、挿通孔の周囲に関節固定部材のテーパー部と嵌合する嵌合テーパー部を有し、側面から外側に突出する操作部が形成されたスリーブと、
前記スリーブの空間内において、前記ポール部材の中心軸の周りに巻かれ、前記スリーブを上方に押し上げるためのコイルばねとを備え、
関節固定部材のテーパー部とスリーブの嵌合テーパー部の嵌合により関節部が固定された状態から、スリーブを押し下げて、関節固定部材のテーパー部とスリーブの嵌合テーパー部の嵌合を解除させることにより、関節部の固定を解除させることを特徴とする脚支持部材の関節固定機構。
【請求項2】
前記スリーブの空間に収容され、底部を有する円柱形状で、その底部の中心に前記ポール部材が挿通する挿通孔を有し、その挿通孔の周囲には前記コイルばねの下端部を受けるコイルばね下端受け部を有し、上部側面に外側に向けて突出し軸方向に延びる嵌合部を有する回転カム部材と、
前記スリーブの空間に収容され、前記ポール部材と前記脚ベース部に固定され、前記回転カム部材を回転自在に挿嵌し、周縁部の上部に外側に向けて突出する突起部と、周縁部の上端部に前記回転カム部材の回転を補助する山部を有する円柱状の固定カム部材と、
前記スリーブの空間に収容されるとともに前記スリーブに固定され、側面に前記回転カム部材の前記嵌合部と前記固定カム部材の前記突起部により上下方向に摺動可能に支持される複数の切欠き部と、その切欠き部と隣り合う切欠き部の間の上部周縁部に前記回転カム部材の回転を抑止する爪部を有する円柱状のスライドカム部材とを備え、
前記関節固定部材の前記テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部の嵌合により前記関節部が固定された状態から、前記スリーブを押し下げることにより、前記スライドカム部材の前記切欠き部から前記回転カム部材の前記嵌合部が外れるとともに、前記嵌合部が前記固定カム部材の前記山部の斜面に沿って回転し、その状態で前記スリーブを離すことにより、前記嵌合部が前記スライドカム部材の前記爪部に引掛かり、前記スリーブが下がった状態で固定され、前記関節固定部材の前記テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部の嵌合が解除されて前記関節部の固定が解除され、
再度前記スリーブを押し下げることにより、前記スライドカム部材の前記爪部から前記回転カム部材の前記嵌合部が外れるとともに、前記嵌合部が前記固定カム部材の前記山部の斜面に沿って回転し、その状態で前記スリーブを離すことにより、前記切欠き部が前記突起部及び前記嵌合部に支持されて前記スライドカム部材が上昇して前記スリーブが上昇し、前記関節固定部材の前記テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部が嵌合して前記関節部が固定されることを特徴とする請求項1に記載の脚支持部材の関節固定機構。
【請求項3】
前記関節部の固定を解除した状態において、前記関節固定部材に設けられた前記テーパー部のテーパー角度の範囲で前記関節固定部材を首振り可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の脚支持部材の関節固定機構。
【請求項4】
前記関節固定部材に設けられた前記テーパー部が、関節ロック用テーパー部と傾斜角度規制用テーパー部を有しており、
前記関節部の固定状態において、前記関節ロック用テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部が嵌合して固定され、
前記関節部の固定を解除した状態において、前記傾斜角度規制用テーパー部のテーパー角度の範囲で前記関節固定部材を首振り可能とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の脚支持部材の関節固定機構。
【請求項5】
前記関節固定部材と前記ポール部材を接続する前記継手が、直角に交差させた二本のピンにより接合される自在継手、又は前記関節固定部材に設けられたソケット部と、前記ポール部材の上端部に設けられた球状部からなる球継手であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の脚支持部材の関節固定機構。
【請求項6】
前記脚支持部材の中間部に、前記脚支持部材の長さを調整するための伸縮機構が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の脚支持部材の関節固定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚支持部材の関節固定機構に関し、詳しくは、撮影機材用三脚の脚ベース部と脚支持部材の間に設けられた角度調整用の関節部を備えた脚支持部材の関節固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやビデオカメラ等の撮影機材を用いて撮影を行う場合、撮影機材を安定して保持するための支えとして三脚が用いられる。このような撮影用の三脚においては、3本の脚部の一端が脚ベース部に接続され、撮影の際に適宜広げて使用される。
【0003】
また、近年では、比較的脚部が短い簡易型の三脚を備え、脚ベース部と雲台等の撮影機材取付部の間に長尺の脚支持部材を設けたタイプの三脚も用いられている。このような短い脚部を備えた三脚は、持ち運びが容易であり、撮影時に広い設置面積を必要としない点で優れている。
【0004】
また、これまでに、上記脚部が短い簡易型の三脚において、長尺の脚支持部材の基部に関節部を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この提案の三脚によれば、関節部にボールジョイントを備えるとともに、関節部の上部に粘性カップリングを有する衝撃吸収部材を設けることにより関節部の動きにより生じる振動を減少させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−510857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の三脚に設けられた関節部では、角度調整等に伴う振動は減少させることができるが、常に関節部が動く構造のため却って撮影機材が不安定な状態になるという問題があった。また、このような不安定な状態で重量の重い撮影機材を支えた場合、倒れて撮影機材を破損させる等の危険性もあった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、撮影機材用の三脚において、脚支持部材に関節部を備え、その関節部の固定及び固定解除を一つの動作で行うことができ、関節部の固定時には撮影機材を安定した状態で支えることができ、固定解除時には自由な角度調整が可能な脚支持部材の関節固定機構を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の脚支持部材の関節固定機構は以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、本発明の脚支持部材の関節固定機構は、撮影機材用三脚の脚ベース部と脚支持部材の間に設けられる、角度調整用の関節部を備えた脚支持部材の関節固定機構であって、前記関節部は、下部内側にテーパー部が設けられ、そのテーパー部の上部に継手を備えた関節固定部材と、下端部が前記脚ベース部に接続され、上端部が前記関節固定部材の前記継手により接続されたポール部材と、前記関節固定部材の下方に設けられ、内側に空間を有し、上部中央に前記ポール部材が挿通する挿通孔を有するとともに、挿通孔の周囲に関節固定部材のテーパー部と嵌合する嵌合テーパー部を有し、側面から外側に突出する操作部が形成されたスリーブと、前記スリーブの空間内において、前記ポール部材の中心軸の周りに巻かれ、前記スリーブを上方に押し上げるためのコイルばねとを備え、関節固定部材のテーパー部とスリーブの嵌合テーパー部の嵌合により関節部が固定された状態から、スリーブを押し下げて、関節固定部材のテーパー部とスリーブの嵌合テーパー部の嵌合を解除させることにより、関節部の固定を解除させることを特徴とする。
【0010】
第2に、上記第1の発明の脚支持部材の関節固定機構において、前記スリーブの空間に収容され、底部を有する円柱形状で、その底部の中心に前記ポール部材が挿通する挿通孔を有し、その挿通孔の周囲には前記コイルばねの下端部を受けるコイルばね下端受け部を有し、上部側面に外側に向けて突出し軸方向に延びる嵌合部を有する回転カム部材と、前記スリーブの空間に収容され、前記ポール部材と前記脚ベース部に固定され、前記回転カム部材を回転自在に挿嵌し、周縁部の上部に外側に向けて突出する突起部と、周縁部の上端部に前記回転カム部材の回転を補助する山部を有する円柱状の固定カム部材と、前記スリーブの空間に収容されるとともに前記スリーブに固定され、側面に前記回転カム部材の前記嵌合部と前記固定カム部材の前記突起部により上下方向に摺動可能に支持される複数の切欠き部と、その切欠き部と隣り合う切欠き部の間の上部周縁部に前記回転カム部材の回転を抑止する爪部を有する円柱状のスライドカム部材とを備え、前記関節固定部材の前記テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部の嵌合により前記関節部が固定された状態から、前記スリーブを押し下げることにより、前記スライドカム部材の前記切欠き部から前記回転カム部材の前記嵌合部が外れるとともに、前記嵌合部が前記固定カム部材の前記山部の斜面に沿って回転し、その状態で前記スリーブを離すことにより、前記嵌合部が前記スライドカム部材の前記爪部に引掛かり、前記スリーブが下がった状態で固定され、前記関節固定部材の前記テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部の嵌合が解除されて前記関節部の固定が解除され、再度前記スリーブを押し下げることにより、前記スライドカム部材の前記爪部から前記回転カム部材の前記嵌合部が外れるとともに、前記嵌合部が前記固定カム部材の前記山部の斜面に沿って回転し、その状態で前記スリーブを離すことにより、前記切欠き部が前記突起部及び前記嵌合部に支持されて前記スライドカム部材が上昇して前記スリーブが上昇し、前記関節固定部材の前記テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部が嵌合して前記関節部が固定されることが好ましい。
【0011】
第3に、上記第1又は第2の発明の脚支持部材の関節固定機構において、前記関節部の固定を解除した状態において、前記関節固定部材に設けられた前記テーパー部のテーパー角度の範囲で前記関節固定部材を首振り可能とすることが好ましい。
【0012】
第4に、上記第1から第3の発明の脚支持部材の関節固定機構において、前記関節固定部材に設けられた前記テーパー部が、関節ロック用テーパー部と傾斜角度規制用テーパー部を有しており、前記関節部の固定状態において、前記関節ロック用テーパー部と前記スリーブの前記嵌合テーパー部が嵌合して固定され、前記関節部の固定を解除した状態において、前記傾斜角度規制用テーパー部のテーパー角度の範囲で前記関節固定部材を首振り可能とすることが好ましい。
【0013】
第5に、上記第1から第4の発明の脚支持部材の関節固定機構において、前記関節固定部材と前記ポール部材を接続する前記継手が、直角に交差させた二本のピンにより接合される自在継手、又は前記関節固定部材に設けられたソケット部と、前記ポール部材の上端部に設けられた球状部からなる球継手であることが好ましい。
【0014】
第6に、上記第1から第5の発明の脚支持部材の関節固定機構において、前記脚支持部材の中間部に、前記脚支持部材の長さを調整するための伸縮機構が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脚支持部材の関節固定機構によれば、撮影機材用の三脚において、脚支持部材に関節部を備え、その関節部の固定及び固定解除を一つの動作で行うことができ、関節部の固定時には撮影機材を安定した状態で支えることができ、固定解除時には自由な角度調整が可能な脚支持部材の関節固定機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の脚支持部材の関節固定機構を備えた撮影機材用三脚の斜視図である。
図2】本発明の脚支持部材の関節固定機構の構造を示した分解斜視図である。
図3】本発明の脚支持部材の関節固定機構の概略断面図であり、(A)は関節部を固定した状態を示し、(B)は関節部の固定を解除した状態を示している。
図4】固定を解除した首振り状態の関節固定機構の概略断面図である。
図5】関節ロック用テーパー部と傾斜角度規制用テーパー部を設けた関節固定部材の断面図である。
図6】本発明の他の実施形態の脚支持部材の関節固定機構の概略部分断面図であり、(A)は関節部を固定した状態を示し、(B)は関節部の固定を解除した状態を示し、(C)は固定を解除した首振り状態を示している。
図7】回転カムの嵌合部、固定カムの突起部と山部、スライドカムの切欠き部と爪部を模式的に表した概略図である。
図8】関節固定機構の回転カム、固定カム及びスライドカムの動作状態を示す概略説明図である。
図9】関節固定機構の回転カム、固定カム及びスライドカムの動作状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の脚支持部材の関節固定機構の一実施形態について、図面に基づいて以下に詳述する。図1は本発明の脚支持部材の関節固定機構を備えた撮影機材用三脚の斜視図であり、図2は脚支持部材の関節固定機構の構造を示した分解斜視図である。また、図3は脚支持部材の関節固定機構の概略断面図であり、(A)は関節部を固定した状態を示し、(B)は関節部の固定を解除した状態を示している。
【0018】
本実施形態の脚支持部材の関節固定機構は、図1に示すように、脚ベース部2と脚支持部材3と撮影機材取付部31を備えた撮影機材用三脚1において、脚ベース部2と脚支持部材3の間に設けられる角度調整用の関節部4を備えている。そして、関節部4は、図2図3(A)、(B)に示すように、関節固定部材5と、ポール部材6と、スリーブ7及びコイルばね8から構成されており、スリーブ7の内側には、関節部4の固定及び解除を制御するための回転カム部材9、固定カム部材10及びスライドカム部材11が収容されている。
(関節固定部材)
関節固定部材5は、下部に設けられたスリーブ7との嵌合状態により、関節部4を固定又は固定解除して、上部に接続された脚支持部材3を固定及び首振可能な状態とするための部材である。関節固定部材5は、上部に脚支持部材3が接続され、下部の内側にはテーパー部51が形成されている。また、テーパー部51の上部には、関節固定部材5をポール部材6に対して首振り自在に接続するための継手52が設けられている。
【0019】
継手52は、関節固定部材5がポール部材6に対して首振り可能な状態に接続できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、図2図4の実施形態に示すような直角に交差させた二本のピンにより接合する自在継手や、図6に示すような、関節固定部材5の内部にソケット部521を設けるとともに、ポール部材6の上端部に球状部522のボールスタットを成形して、球状部522とソケット部521を球面接触させて首振り自在に接続した球継手等を用いることができる。
【0020】
テーパー部51は、通常、図3図4に示すように一定のテーパー角度を有し、テーパー部51とポール部材6の側面との当接により、関節固定部材5及びこれに接続された脚支持部材3、撮影機材取付部31を一定の角度で首振り可能としている。
【0021】
テーパー部51のテーパー角度は、関節固定部材5の首振り角度を考慮して適宜設定することができるが、通常、垂直のポール部材6の中心軸に対して20°程度が考慮される。
【0022】
また、本実施形態のテーパー部51においては、図5に示すように、関節ロック用テーパー部511と傾斜角度規制用テーパー部512を設けることもできる。
【0023】
具体的には、図6(A)〜(C)に示すように、継手52の下部に傾斜角度規制用テーパー部512が設けられ、その下部に関節ロック用テーパー部511が設けられている。これにより、図6(A)に示す関節部の固定状態においては、関節ロック用テーパー部511とスリーブ7の嵌合テーパー部72が嵌合して固定させることが可能となり、図6(B)に示す関節部の固定を解除した状態においては、図6(C)に示すように、傾斜角度規制用テーパー部512のテーパー角度の範囲で関節固定部材5を首振り可能とすることができる。
【0024】
このように、関節ロック用テーパー部511と傾斜角度規制用テーパー部512を設けることにより、スリーブ7における嵌合テーパー部72のテーパー角度を首振りの角度、即ち、傾斜角度規制用テーパー部512のテーパー角度に合わせる必要がなくなるため設計の自由度を大きくすることができる。
(ポール部材)
ポール部材6は、関節固定部材5と脚ベース部2を接続するための軸となる部材であり、円柱状で長尺の形状を有している。ポール部材6はスリーブ7を保持するとともに、下端部は脚ベース部2に対して垂直に固定されており、上端部は継手52を介して関節固定部材5と接続されている。
(スリーブ)
スリーブ7は、関節固定部材5の下方に設けられ、ポール部材6を軸として垂直方向に上下動させることにより、関節固定部材5の固定及び首振り動作を制御する部材である。スリーブ7は内部に空間75が形成されており、外周に突出する操作部74を備えている。また、上部中央部にはポール部材6を挿通させる挿通孔71が設けられるとともに、関節固定部材5の下部に設けられたテーパー部51又は関節ロック用テーパー部511と嵌合する嵌合テーパー部72が設けられている。
【0025】
嵌合テーパー部72のテーパー角度は、関節固定部材5のテーパー部51又は関節ロック用テーパー部511のテーパー角度により決定されるものであり、嵌合状態において嵌合テーパー部72とテーパー部51又は関節ロック用テーパー部511が面接触する角度に設定するのが望ましい。
【0026】
また、挿通孔71の空間75側の周囲には、ポール部材6の中心軸の周りに巻かれたコイルばね8を受けるためのばね上端受け部73が形成されている。
(コイルばね)
コイルばね8は、ポール部材6の中心軸の周りに巻かれてスリーブ7の空間75に収容される押しばねであり、コイルばね8の上端は、スリーブ7の空間75内においてばね上端受け部73で受けられており、スリーブ7を上方に押し上げている。
【0027】
即ち、通常、関節固定部材5のテーパー部51又は関節ロック用テーパー部511とスリーブ7の嵌合テーパー部72は、スリーブ7内のコイルばね8による下方からの押圧により嵌合し関節部4を固定状態としている。このような構成によれば、スリーブ7の上下動の強さはコイルばね8の特性により決定されるため、コイルばね8は、長さ及び強さ等を考慮して選択する必要がある。
【0028】
また、本実施形態の脚支持部材の関節固定機構においては、スリーブ7の空間75に収容された回転カム部材9、固定カム部材10及びスライドカム部材11によりスリーブ7の上下動の固定制御を行うことができる。
(回転カム部材)
回転カム部材9は、スリーブ7の上下動の操作に伴って、回転しながらスライドカム部材11との嵌合状態を変更させ、スリーブ7の上下の移動位置の保持状態を制御する部材である。回転カム部材9は、円柱状で底部を有するカップ状の形状を有しており、底部の中央部には、ポール部材6が挿通する挿通孔91が設けられ、挿通孔91の上部の周囲にはポール部材6の中心軸の周りに巻かれたコイルばね8の下端の挿通を阻止するばね下端受け部92が形成されている。また、回転カム部材9の上部側面には、後述するスライドカム部材11の切欠き部111に支持して上下方向に摺動させ、また、切欠き部111から外れて爪部112と嵌合する、外側に向けて突出して軸方向に延びる嵌合部93が設けられている。
(固定カム部材)
固定カム部材10は、回転カム部材9を回転自在に挿嵌し、回転カム部材9の回転動作を補助するための円筒状の部材であり、下部がポール部材6と脚ベース部2に固定されている。また、周縁部の上部には、外側に向けて突出する突起部101が設けられており、突起部101は、スライドカム部材11の切欠き部111において、スライドカム部材11を上下方向に摺動自在に支持している。また、周縁部の上端部には回転カム部材9の回転を補助する山部102が形成されている。
(スライドカム部材)
スライドカム部材11は、スリーブ7の空間75に収容されるとともに、スリーブ7に固定され、スリーブ7の上下動に伴って同様に上下動する部材である。
【0029】
スライドカム部材11とスリーブ7との固定は、スライドカム部材11の下部側面から外側に突出して設けられたねじ穴を有する取付部113と、スリーブ7の操作部74の下部に設けられた被取付部76とのねじ留めにより強固に固定されている。
【0030】
また、スライドカム部材11の側面には、軸方向に延びる複数の切欠き部111が設けられており、切欠き部111は、回転カム部材9の嵌合部93と固定カム部材10の突起部101により上下方向に摺動可能に支持されている。また、切欠き部111と隣り合う切欠き部111の間の上部周縁部には、回転カム部材9の嵌合部93を嵌合させて回転を抑止するための爪部112が設けられている。
(関節部の固定及び固定解除)
以下に、関節部4の固定及び固定解除の機序について図を用いて詳細に説明する。図7は、回転カム部材9の嵌合部93、固定カム部材10の突起部101と山部102、スライドカム部材11の切欠き部111と爪部112を模式的に表した概略図であり、図8図9は、図7の概略図を用いた関節固定機構の回転カム部材9、固定カム部材10及びスライドカム部材11の動作状態を示す概略説明図である。なお、図8は関節部4の固定解除の概略説明図であり、図9は関節部4の固定の概略説明図である。
(関節部の固定解除)
まず、図3(A)、図8(1)の関節部4の固定状態から、スリーブ7の操作部74を下方に押し下げることにより、スリーブ7に固定されているスライドカム部材11も下方に下がる。そして、スライドカム部材11の下方への移動、即ち、切欠き部111の下方への移動に伴い、図8(2)に示すように、回転カム部材9の嵌合部93が切欠き部111から外れるとともに、切欠き部111の上端部が固定カム部材10の山部102の位置まで下がる。そして、さらに操作部74を下方に押し下げると、図8(3)に示すように、嵌合部93が固定カム部材10の山部102の斜面に沿って右側の谷部まで僅かに移動する。
【0031】
次に、その状態でスリーブ7の操作部74を離すと、スライドカム部材11はコイルばね8により僅かに上昇し、図8(4)に示すように、回転カム部材9の嵌合部93がスライドカム部材11の爪部112まで移動して引掛かかり、嵌合した状態で止まる。
【0032】
これにより、回転カム部材9の嵌合部93が切欠き部111から外れてスライドカム部材11上端部の爪部112と嵌合した状態、即ち、スリーブ7が降下した状態で保持された状態となり、図3(B)に示すように、関節固定部材5のテーパー部51又は関節ロック用テーパー部511とスリーブ7の嵌合テーパー部72の嵌合が解除されて関節部4の固定が解除される。
【0033】
また、関節部4の固定を解除した状態においては、図4に示すように、関節部4は、関節固定部材5に設けられたテーパー部51又は傾斜角度規制用テーパー部512のテーパー角度の範囲で関節固定部材5を首振り可能とすることができる。
(関節部の固定)
上記の関節部4の固定解除状態から再度固定状態にするには、図3(B)、図9(1)に示す固定解除状態から、スリーブ7の操作部74を押し下げる。これにより、図9(2)に示すように、スライドカム部材11も下方に下がり、回転カム部材9の嵌合部93からスライドカム部材11の爪部112が外れるとともに、切欠き部111の上端部が固定カム部材10の山部102の位置まで下がる。そして、さらに操作部74を下方に押し下げると、図9(3)に示すように、嵌合部93が固定カム部材10の山部102の斜面に沿って右側の谷部まで僅かに移動する。
【0034】
次に、その状態でスリーブ7の操作部74を離すことにより、スライドカム部材11はコイルばね8により僅かに上昇し、回転カム部材9の嵌合部93が爪部112の斜面に沿って切欠き部111の位置まで移動し、図9(4)に示すように、切欠き部111が突起部101及び嵌合部93に支持されてスライドカム部材11が上昇する。
【0035】
これにより、スリーブ7が上昇した状態で保持され、図3(A)に示すように、関節固定部材5のテーパー部51又は関節ロック用テーパー部511とスリーブ7の嵌合テーパー部72が嵌合して関節部4が固定される。
【0036】
このように、本実施形態の脚支持部材の関節固定機構によれば、撮影機材用の三脚においてスリーブ7の操作部74を押し下げる一つの動作で関節部4の固定及び固定解除を行うことができる。これにより、関節部4の固定時には撮影機材を安定した状態で支えることができ、固定解除時には、自由な角度調整が可能な脚支持部材の関節固定機構とすることができる。
【0037】
また、本発明の脚支持部材の関節固定機構においては、図1に示すように、関節部4と撮影機材取付部31の間に設けられた長尺の脚支持部材3の中間部に、脚支持部材3の長さを調整するための伸縮機構を設けることができる。この場合、ストッパー32の固定を解除して長さを調整した脚支持部材3はストッパー32により再度固定される。これにより、撮影機材の高さを所望の高さに維持することができ、安定した位置で撮影を行うことができる。
【0038】
以上、本発明を一実施形態に基づいて説明したが、本発明の脚支持部材の関節固定機構は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、図1に示すような比較的脚部が短い簡易型の撮影機材用三脚1の脚ベース部2と脚支持部材3の間に本発明の関節固定機構を備えた関節部4を設けたが、通常の脚部が長い三脚の脚ベース部2と撮影機材取付部31の間に設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 撮影機材用三脚
2 脚ベース部
3 脚支持部材
4 関節部
5 関節固定部材
51 テーパー部
511 関節ロック用テーパー部
512 傾斜角度規制用テーパー部
52 継手
6 ポール部材
7 スリーブ
72 嵌合テーパー部
8 コイルばね
9 回転カム部材
93 嵌合部
10 固定カム部材
101 突起部
102 山部
11 スライドカム部材
111 切欠き部
112 爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9