(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の電波到達距離内において相互に通信可能であり、自身の識別情報を含む、屋内における測位のための無線標識を送信する複数のビーコンであって、当該複数のビーコンの各々は少なくとも1つの他のビーコンの前記電波到達距離内に配置される複数のビーコンと、当該複数のビーコンの少なくとも1つと通信可能な制御装置とを含む無線標識システムの制御方法であって、
前記制御装置は、ビーコンの識別情報と前記無線標識を送信する電波強度の設定値とを含む設定の変更指示を送信し、
当該変更指示を受信したビーコンは、受信した変更指示に含まれるビーコンの識別情報が自身を示す場合、自身が保持する電波強度の設定値を、前記受信した変更指示に含まれる前記電波強度の設定値に変更し、前記受信した変更指示に含まれるビーコンの識別情報が自身を示すものでない場合、前記受信した変更指示を他のビーコンに転送する、
無線標識システムの制御方法。
所定の電波到達距離内において相互に通信可能であり、自身の識別情報を含む、屋内における測位のための無線標識を送信する複数のビーコンであって、当該複数のビーコンの各々は少なくとも1つの他のビーコンの前記電波到達距離内に配置される複数のビーコンと、当該複数のビーコンの少なくとも1つと通信可能な制御装置とを含む無線標識システムであって、
前記制御装置は、ビーコンの識別情報と前記無線標識を送信する電波強度の設定値とを含む設定の変更指示を送信し、
当該変更指示を受信したビーコンは、受信した変更指示に含まれるビーコンの識別情報が自身を示す場合、自身が保持する電波強度の設定値を、前記受信した変更指示に含まれる前記電波強度の設定値に変更し、前記受信した変更指示に含まれるビーコンの識別情報が自身を示すものでない場合、前記受信した変更指示を他のビーコンに転送する、
無線標識システム。
所定の電波到達距離内において他のビーコンと通信可能であり、自身の識別情報を含む、屋内における測位のための無線標識を送信するビーコンであって、当該ビーコンは少なくとも1つの他のビーコンの前記電波到達距離内に配置され、相互に通信可能な複数のビーコンの少なくとも1つと通信可能な制御装置によって制御されるビーコンであって、
前記制御装置が送信した、ビーコンの識別情報と前記無線標識を送信する電波強度の設定値とを含む設定の変更指示を受信した場合、受信した変更指示に含まれるビーコンの識別情報が自身を示すとき、自身が保持する電波強度の設定値を、前記受信した変更指示に含まれる前記電波強度の設定値に変更し、前記受信した変更指示に含まれるビーコンの識別情報が自身を示すものでないとき、前記受信した変更指示を他のビーコンに転送する、
ビーコン。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態に示す構成に限定されない。
【0016】
<システム構成>
図1は、実施形態に係るシステムの構成を示す図である。なお、本実施形態では、屋内における測位等のために送受信される無線標識のほか当該無線標識の送信装置をビーコンと呼ぶ。本実施形態に係るシステムは、ビーコン1(
図1では、ビーコン1aからビーコン1c)と、制御装置2と、モバイル装置3と、情報提供サーバ4とを含み、モバイル装置3及び情報提供サーバ4はインターネット等のネットワーク5を介して接続されている。
【0017】
ビーコン1は、識別情報及び送信日時を含む無線標識を送信する。また、本実施形態に係るビーコン1は、電波の到達距離内に設置された他のビーコン1と相互に通信を行う機能を有し、全体としてマルチホップ無線ネットワークを形成する。また、複数のビーコンの各々は少なくとも1つの他のビーコンの電波到達距離内に配置されるものとする。なお、相互に通信可能とした複数のビーコンをビーコンメッシュとも呼ぶ。また、
図1では3つのビーコン1を例示したが、ビーコン1の数は3つには限定されない。
【0018】
制御装置2は、複数のビーコン1の動作を一元的に制御する装置である。制御装置2は、例えば、複数のビーコン1のいずれかを一意に特定する識別情報と変更後の電波強度とを含む設定情報を、周辺のビーコン1に送信する。一方、ビーコン1は、設定情報を周辺のビーコン1へ中継すると共に、自身を示す識別情報を含む設定情報を受信した場合、当該設定情報に基づいて、自身が送信する無線標識の電波強度を変更する。
【0019】
モバイル装置3は、ビーコン1から無線標識を受信し、例えば地下や建物内において自身の位置を特定する。なお、本実施形態では、位置の算出は情報提供サーバ4が行うものとするが、モバイル装置3が行うようにしてもよい。また、
図1には1つのモバイル装置3を示しているが、モバイル装置3の数も1つには限定されない。
【0020】
情報提供サーバ4は、例えば、モバイル装置3から無線標識に含まれるビーコン1の識別情報及び送信日時、モバイル装置3における無線標識の受信日時、並びにモバイル装置3の識別情報といったデータのセットを、ネットワーク5を介して複数取得し、例えば三点測位によりモバイル装置3の位置情報を算出する。また、情報提供サーバ4は、算出した位置情報を、ネットワーク5を介してモバイル装置3に出力する。なお、情報提供サーバ4は、モバイル装置3の位置に応じて、周辺の店舗のキャンペーンに関する情報や緊急時の誘導を行うための情報等を出力するようにしてもよい。
【0021】
<ビーコンの機能構成>
図2は、実施形態に係るビーコン1の一例を示す機能ブロック図である。なお、ビーコン1は、地下鉄等の駅構内や地下街、建築物内等に、相互に通信可能な所定の電波到達距離以下の間隔で複数設置される。例えば、設置場所に応じて、10m程度といった間隔で設置するものとする。ビーコン1は、標識情報送信部11と、記憶部12と、相互通信部13とを備える。標識情報送信部11は、記憶部12に保持されている情報に基づいて、当該ビーコン1を一意に識別するための識別情報、例えば送信時を示す日時情報等を含む無線標識を送信し、受信側の装置に対して近接通知を行う。具体的には、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等の技術を利用することができ、無線標識のブロードキャスト通信を行うようにしてもよい。
【0022】
記憶部12は、不揮発性メモリであり、例えばマイクロプロセッサが有するフラッシュメモリのようなEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory
)等によって構成される。また、記憶部12は、予め定められた当該ビーコン1の識別情報や、標識情報送信部11が無線標識を送信する際の電波強度の設定値等を記憶する。
図3は、ビーコン1の記憶部12に記憶される情報の一例を示す表である。
図3の表は、当該ビーコン1を一意に識別するための「識別情報」と、当該ビーコン1が無線標識を送信する際の「電波強度」の値(dBm)とを保持している。
【0023】
相互通信部13は、他のビーコン1や、制御装置2との間で双方向に情報の送受信を行う。例えば、BLEにおけるGATTのようなプロファイルに基づいて相互通信を行うようにしてもよい。相互通信部13は、コネクション型の通信を行う。また、相互通信部13は、他のビーコン1の識別情報を含む設定情報を受信した場合、当該設定情報を周辺のビーコン1へ中継する。一方、自身を示す識別情報を含む設定情報を受信した場合、当該設定情報を記憶部12に保持させると共に、当該設定情報に基づいて、自身が送信する無線標識の電波強度を変更する。また、相互通信部13は、制御装置2からの要求に応じて、記憶部12に保持されている情報を、ビーコンメッシュのネットワークを介して制御装置2へ応答するようにしてもよい。また、ビーコン1は相互に死活情報を送受信し、周辺のビーコン1に障害が発生した場合にはその旨を制御装置2に送信するようにしてもよい。
【0024】
<制御装置の機能構成>
図4は、実施形態に係る制御装置2の一例を示す機能ブロック図である。制御装置2は、例えば一般的なコンピュータであり、ビーコン通信部21と、記憶部22と、情報取得部23と、電波強度変更部24とを備える。なお、
図1にはラップトップ型のコンピュータを示したが、据え置き型のコンピュータであってもよい。ビーコン通信部21は、ビーコン1と双方向の通信を行う。すなわち、上述した設定変更情報を送信したり、ビーコン1から死活情報やビーコン1が保持する設定情報を受信したりする。記憶部22は、例えばHDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって構成され、複数のビーコン1の動作設定等を記憶する。
【0025】
図5は、記憶部22に記憶される情報の一例を示す表である。
図5の表は、ビーコン1を一意に特定する「識別情報」と、当該ビーコン1の設定を変更するタイミングを示す「スケジュール」と、当該スケジュールに基づいて変更する電波強度の変更後の値を示す「電波強度」とを保持している。
図5の例に係るビーコン1は、例えば地下鉄の構内に設置されるものであり、識別情報がID001のビーコン1は、地下鉄の営業時間外である1時から5時までの間には省電力モードで動作するように設定されている。また通勤により混雑が始まる平日の7時に識別情報がID001のビーコン1の電波強度を変更すると共に、混雑が終わる9時半に当該ビーコン1の電波強度を再度変更するための設定がなされている。なお、当該ビーコン1は、土日祝日には別の電波強度が設定される。また、記憶部22は、ビーコンの識別情報と対応付けて、各ビーコンの設置場所を示す位置情報等(図示せず)を予め記憶しておくようにしてもよい。
【0026】
情報取得部23は、例えば、記憶部22に記憶されているビーコン1の設定を変更するスケジュールに関する情報を取得したり、インターネットや専用回線等のネットワーク5を介して、図示していないサーバ装置から緊急地震速報等の情報を取得する。また、電波強度変更部24は、予め定められた時刻や曜日等のスケジュールや緊急地震速報、制御装置2を操作するユーザからの入力に基づいて、ビーコン通信部21に設定変更情報を送信させ、ビーコン1の設定を変更させる。また、電波強度変更部24は、各々のビーコン1から設定情報を取得し、予め定められた動作情報が設定されているか確認するようにしてもよい。なお、設定変更情報は、
図3に示したようなビーコン1の識別情報と、設定変更後の電波強度とを含む。また、設定変更情報を一意に識別するための識別情報を含むようにして、ビーコン1は同一の設定変更情報を1回のみブロードキャスト通信するようにし
てもよい。また、設定変更情報がビーコンメッシュのネットワーク上を転送される回数を示すホップ数を含むようにして、ビーコン1は設定変更情報を転送するたびにホップ数をデクリメントし、所定の回数だけビーコン1間を転送されたら設定変更情報がネットワーク上から削除されるようにしてもよい。
【0027】
<モバイル装置の機能構成>
図6は、実施形態に係るモバイル装置3の一例を示す機能ブロック図である。モバイル装置3は、例えばスマートフォンやスレートPC等のコンピュータであり、標識情報受信部31と、記憶部32と、情報送受信部33と、情報表示部34とを備える。なお、標識情報受信部31、情報送受信部33、情報表示部34は、例えばモバイル装置3にインストールされたアプリケーションソフトウェア(プログラムとも呼ぶ)が、モバイル装置3の通信機能を利用して実現する。
【0028】
標識情報受信部31は、ビーコン1が送信する無線標識を受信し、記憶部32に記憶させる。記憶部32は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。例えば、RAM(Random
Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリのようなEEPROM等によって構成される。また、情報送受信部33は、記憶部32に記憶されている無線標識、当該無線標識の受信日時及びモバイル装置3を一意に特定するための識別情報を、ネットワーク5を介して情報提供サーバ4に送信する。なお、モバイル装置3を一意に特定するための識別情報は、スマートフォン等のOS(Operating System)が提供するIDを利用するようにしてもよいし、情報提供サーバがモバイル装置3のアプリケーションソフトウェアに対して独自の識別情報を発行するようにしてもよい。また、情報送受信部33は、情報提供サーバ4が算出した位置情報や、その他の情報を、ネットワーク5を介して受信し、記憶部32に記憶させる。その他の情報としては、周辺の店舗の情報や、緊急時の避難経路を示す情報等、モバイル装置の位置や周辺の状況に基づいて情報提供サーバから提供される情報が挙げられる。そして、情報表示部34は、記憶部32に記憶された位置情報やその他の情報をモバイル装置3が備えるモニタに表示させる。
【0029】
<情報提供サーバの機能構成>
図7は、実施形態に係る情報提供サーバ4の一例を示す機能ブロック図である。情報提供サーバ4は、いわゆるサーバのような据え置き型のコンピュータであり、通信部41と、記憶部42と、位置情報算出部43と、関連情報抽出部44とを備える。通信部41は、インターネット等のネットワーク5を介してモバイル装置3との間で情報を送受信する。上述のように、通信部41は、モバイル装置3から無線標識及びモバイル装置3の識別情報を受信し、記憶部42に記憶させる。また、記憶部42は、例えばHDDやSSD、フラッシュメモリ等によって構成され、モバイル装置3から受信した情報や、当該情報に基づいて算出したモバイル装置3の位置を示す情報を記憶するほか、ビーコン1が設置された位置の周辺に関する情報を予め記憶しているものとする。
【0030】
図8は、記憶部42に記憶される、ビーコン1が設置された位置の周辺に関する情報の一例を示す表である。
図8の表は、位置情報と、配信日時と、配信内容を含む。位置情報は、ビーコン1が設置された駅構内や地下街、建築物内の位置をさらに詳細に特定する情報であり、所定の座標や区画等によって表される。また、配信期間は、当該情報をモバイル装置3に送信する期間を示す情報が登録される。配信内容は、例えば駅や地下街、建築物に関する情報であり、具体的には店舗等のキャンペーンや改装に関する情報であってもよい。また、モバイル装置3のユーザが所定のサービスに入会している場合にのみ情報を配信できるよう、配信対象のモバイル装置3の識別情報と紐づく情報をさらに有していてもよい。
【0031】
また、位置情報算出部43は、例えばあるモバイル装置3から、ビーコン1に係る無線
標識を受信し、例えば三点測位等、既存の屋内測位技術を用いてモバイル装置3の位置情報を算出する。関連情報抽出部44は、モバイル装置3の位置情報を用いて、
図8に示した情報の中からモバイル装置3の周辺に関する情報を抽出し、通信部41を介してモバイル装置3に送信する。
【0032】
<装置構成>
制御装置2、モバイル装置3、及び情報提供サーバ4は、
図9に示すようなコンピュータである。
図9は、コンピュータの一例を示す装置構成図である。例えば、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001、主記憶装置1002、補助記憶装置
1003、通信IF(Interface)1004、入出力IF(Interface)1005、ドライブ装置1006、通信バス1007を備えている。CPU1001は、プログラムを実行することにより本実施の形態で説明する処理を行う。主記憶装置1002は、CPU1001が読み出したプログラムやデータをキャッシュしたり、CPUの作業領域を展開したりする。主記憶装置は、具体的には、RAMやROM等である。補助記憶装置1003は、CPU1001により実行されるプログラムや、本実施の形態で用いる設定情報などを記憶する。補助記憶装置1003は、具体的には、HDDやSSD、フラッシュメモリ等である。主記憶装置1002、補助記憶装置1003は、各装置の記憶部として働く。通信IF1004は、他のコンピュータ装置との間でデータを送受信する。通信IF1004は、具体的には、有線又は無線のネットワークカードやBluetooth(登録商標)用のア
ンテナ等である。入出力IF1005は、入出力装置と接続され、ユーザから入力を受け付けたり、ユーザへ情報を出力したりする。入出力装置は、具体的には、キーボード、マウス、ディスプレイ等のセンサー類、又はタッチパネル等である。ドライブ装置1006は、フレキシブルディスク、光学ディスク等の記憶媒体に記録されたデータを読み出したり、記憶媒体にデータを書き込んだりする。以上のような構成要素が、通信バス1007で接続されている。なお、これらの構成要素は複数設けられていてもよいし、一部の構成要素(例えば、ドライブ装置1006)を設けないようにしてもよい。また、入出力装置がコンピュータと一体に構成されていてもよい。そして、ドライブ装置で読み取り可能な可搬性の記憶媒体や、USBメモリのような補助記憶装置、ネットワークIFなどを介して、本実施の形態で実行されるプログラムが提供されるようにしてもよい。そして、CPU1001がプログラムを実行することにより、上記のようなコンピュータを制御装置2、モバイル装置3、及び情報提供サーバ4として働かせる。なお、システムの装置構成は
図1の例には限られず、一部の機能は、インターネットやイントラネット等のネットワークを介して接続された複数のコンピュータによって分担して処理されるようにしたり、並列に処理されるようにしたりしてもよい。
【0033】
また、ビーコン1は、例えばマイクロコントローラとアンテナとを有し、これらが協働することにより上述した機能を実現する。
【0034】
<定期処理>
図10は、制御装置2が、予め定められたスケジュールに基づいて、ビーコンメッシュが形成する電波環境を変更する処理の一例を示す処理フローである。本処理は、所定の間隔で繰り返し実行されるものとする。制御装置2の情報取得部23は、制御装置2がカウントする時刻情報と、記憶部22に記憶されているスケジュールの情報とを用いて、設定変更を行うタイミングが到来したか否か判断する(
図10:S1)。本ステップでは、例えば
図5の表のスケジュールのフィールドに保持された日時が到来した場合、所定のタイミングになったと判断する。なお、所定のタイミングが到来するまで、S1の処理は、所定の間隔で繰り返されるものとする。
【0035】
また、所定のタイミングが到来したと判断された場合(S1:YES)、制御装置2の電波強度変更部24は、周辺に位置するビーコン1に対して設定変更情報を送信する(S
2)。本ステップでは、例えば、設定変更情報の識別情報、設定を変更するビーコンの識別情報、新たに設定する電波強度の値、ホップ数を示す値を含むものとする。また、本実施形態に係るビーコン1は周辺の他のビーコン1と相互通信を行うネットワークを形成し、設定変更情報を転送する。したがって、本ステップにおいて制御装置2は直接すべてのビーコン1と通信を行う必要はない。
【0036】
一方、制御装置2の周辺に位置するビーコン1の相互通信部13は、設定変更情報を受信し、記憶部12に記憶させる(S3)。なお、本ステップでは、後述する通り他のビーコン1から転送された設定変更情報を受信する場合もある。また、相互通信部13は、設定変更情報に含まれるビーコンの識別情報が自身を示すものであるか判断し(S4)、自身宛てである場合(S4:YES)、相互通信部13は、記憶部22に記憶されている電波強度の設定を変更する(S5)。S4では、設定変更情報に含まれるビーコンの識別情報が自身の識別情報である場合、当該設定変更情報は自身宛てであると判断する。また、S5においては、
図3に示した表の電波強度のフィールドに保持されている値を設定変更情報に含まれる電波強度の値に変更する。当該電波強度の値は、設定変更情報を送受信する相互通信部13のコネクション型通信でなく、標識情報送信部11が無線標識を送信する際の電波強度に適用される。なお、設定変更情報に当該設定変更情報の識別情報が含まれる場合、当該識別情報を記憶部22に所定期間保持しておき、すでに識別情報が同一の設定変更情報を受信しているときは当該設定変更情報を破棄するようにしてもよい。
【0037】
一方、設定変更情報が自身宛てでない場合(S4:NO)、相互通信部13は、周囲に配置された他のビーコン1へ設定変更情報を転送する(S6)。なお、設定変更情報がホップ数を含む場合、転送の際にホップ数をデクリメント(−1)する。そして、ホップ数が0等の所定値になった場合、当該設定変更情報を破棄するようにしてもよい。このようにして、本システムでは、電波の到達範囲に存在するビーコン1へと順に設定変更情報が転送され、目的のビーコン1の設定を変更することができる。
【0038】
このような定期処理によれば、相互に通信を行うことができるビーコンメッシュの特性を活かして電波強度を一元的に制御することができる。すなわち、複数のビーコンについて個々に近接して設定を行ったり、予め配線を行ったりする必要はなくなり、電波強度を制御するための手間を削減することができる。
【0039】
<設定確認処理>
図11は、制御装置2が所定のタイミングで実施する設定確認処理の一例を示す処理フローである。制御装置2は、定期的に、又は設定変更情報の送信から所定期間経過後等、所定のタイミングで、ビーコン1の各々に対し指示通りの設定になされているか確認するようにしてもよい。具体的には、例えば、
図10の接続子Aを介して
図11のS11へ遷移し、
図11に示すような設定確認処理を行うようにしてもよい。
【0040】
制御装置2のビーコン通信部21は、周辺に位置するビーコン1に対し、各々が保持している設定情報の送信を要求する旨のデータを送信する(
図11:S11)。一方、ビーコン1は、要求を受信すると共に、周囲のビーコン1に当該要求を転送する(S12)。そして、ビーコン1は、要求に応答して自身が記憶部22に保持している電波強度の設定値を制御装置2へ送信する(S13)。なお、ビーコン1は、他のビーコン1から応答を受信した場合、当該応答を周囲のビーコン1又は制御装置2へ転送するものとする。また、当該応答についても識別情報を設定して複数回の転送を防止したり、ホップ数を設定して当該応答に係る設定情報がビーコンメッシュのネットワーク上に存在する期間を定めるようにしたりしてもよい。
【0041】
また、制御装置2のビーコン通信部21は、応答に係る設定情報を受信し(S14)、
所定の設定どおりであるか判断する(S15)。S15では、制御装置2の記憶部22に記憶されている情報と比較し、一致しているか判断する。具体的には、
図5に示したような情報を検索して、ある識別情報が示すビーコン1が処理時点において設定されるべき電波強度を取得し、ビーコン1が応答した設定値と一致しているか判断する。そして、設定どおりであると判断された場合(S15:YES)、処理を終了する。なお、設定どおりであるか否かは、例えば制御装置2が管理するすべてのビーコン1について確認するものとする。一方、設定どおりでないと判断された場合(S15:NO)、接続子Bを介して
図10のS2に戻り、設定どおりでないと判断されたビーコン1に対して設定変更情報を送信する。
【0042】
以上のような設定確認処理により、制御装置2はビーコンメッシュが意図した動作設定になっているか確認するようにしてもよい。このようにすれば、動作設定についての制御の正確性を向上させることができる。
【0043】
<効果>
本実施形態に係る処理によれば、予め定められたスケジュールに基づいてビーコンの動作を制御することができる。例えば、地下鉄の駅の改札に設けられるビーコンは、通勤による混雑時には電波の減衰が大きくなるため、多くの数のビーコンを設置させなければ、無線標識をモバイル装置に受信させることができない場合がある。しかしながら、混雑しない時間帯にも設置したすべてのビーコンを稼働させるのは消費電力の無駄になる。また、地下鉄の営業時間外に多くのビーコンから無線標識が送信され続ける場合も、消費電力が無駄になるといえる。また、例えば商業施設等の建築物の吹き抜けになったエスカレータホール等では、低い電波強度で動作するビーコンを多く設置することで、モバイル装置の存在する階数をより正確に特定できるようになる。しかしながら、商業施設の営業時間外においては、無線標識が送信され続ける場合も、消費電力の無駄になる。そこで、上述した実施形態では、ビーコンを設置した場所が混雑する時間帯や、閑散とする時間帯に応じて予め動作設定を行うように制御する。
図12は、地下街におけるビーコンの動作制御の一例を示す図である。
図12の上段(1)は、営業時間帯において動作するビーコンを、インドアマップ中に破線の円で示している。
図12の下段(2)は、営業時間外におけるインドアマップを示している。
図12の例では、営業時間外においては、すべてのビーコンが無線標識の送信を停止している。なお、
図12の(2)の状態においても、コネクション型の通信を行う相互通信部13は動作しており、ビーコン1は制御装置2からの要求に応じて無線標識の送信を再開することができる。このように、定期処理によれば、複数のビーコンが形成する電波環境を適切に制御することができるようになる。
【0044】
<緊急時処理>
図13は、制御装置2が例えば緊急地震速報のような災害等に関する緊急情報に基づいてビーコンメッシュが形成する電波環境を変更する処理の一例を示す処理フローである。なお、本処理は
図10の定期処理と対応する処理を含むため、差異を中心に説明し、対応する処理の説明は省略する。
【0045】
制御装置2の情報取得部23は、インターネットや専用回線等のネットワーク5を介して、図示していないサーバ装置から災害等の緊急情報が送信されるまで待機し(
図13:S21)、緊急情報を受信した場合(S21:YES)、設定変更情報を送信する(S22)。S22では、例えば、地下街や建築物内において、避難経路を構成する比較的大きな通路に設置されたビーコン1の電波強度を大きくして地下街や建築物内の全体への無線標識の送信をカバーさせると共に、避難経路から外れた袋小路等に設置されたビーコン1の無線標識の送信を停止させる。なお、S23以降の処理は、
図10に示したS3以降の処理と同様である。
【0046】
S22のように制御することで、例えばモバイル装置3にインストールされたアプリケーションソフトウェアが周辺の地図に進行方向を表示する等して、適切に避難経路へユーザを誘導することができるようになる。
図14は、地下街におけるビーコンの動作制御の一例を示す図である。
図14の上段(1)は、営業時間帯において動作するビーコンを、インドアマップ中に破線の円で示している。
図14の下段(2)は、緊急時におけるインドアマップを示している。
図12の例では、緊急時においては、主要な避難経路上に配置されたビーコン1が、電波強度を増大させて稼働するようになっている。なお、モバイル装置3にインストールされたアプリケーションソフトウェアは、
図14に示したようなインドアマップ中に現在地と進行方向を表示させたり、
図14の(2)に示すように非常口の位置を表示させたりしてもよい。このように、緊急時処理によっても、相互に通信を行うことができるビーコンメッシュの特性を活かし、複数のビーコンについて個々に近接して設定を行ったり、予め配線を行ったりすることなく、電波強度を制御するための手間を削減することができる。
【0047】
<死活監視処理>
図15は、制御装置2が行うビーコン1の死活監視処理の一例を示す処理フローである。制御装置2は、定期的に、又はユーザの操作に基づく所定のタイミングで、ビーコン1の各々が正常に稼働しているか否かを確認するようにしてもよい。
【0048】
制御装置2のビーコン通信部21は、周辺に位置するビーコン1に対し、死活確認のための応答をするように要求する(
図15:S31)。一方、ビーコン1は、要求を受信すると共に、周囲のビーコン1に当該要求を転送する(S32)。そして、ビーコン1は、自身の識別情報を含む応答を制御装置2へ送信する(S33)。なお、ビーコン1は、他のビーコン1から応答を受信した場合、当該応答を周囲のビーコン1又は制御装置2へ転送するものとする。また、死活監視処理に用いる要求や応答についても識別情報を設定して複数回の転送を防止したり、ホップ数を設定して当該応答に係る設定情報がビーコンメッシュのネットワーク上に存在する期間を定めるようにしたりしてもよい。
【0049】
また、制御装置2のビーコン通信部21は、応答を受信し(S34)、例えば管理するビーコンのいずれかから所定期間内に応答がない場合、所定の対応を行う(S15)。S15では、例えば管理者に対してアラームを発信してもよいし、障害が発生したビーコンの周囲に配置されたビーコンの電波強度を上げるように制御してもよい。
【0050】
以上のような死活監視処理により、制御装置2はビーコンが正常に動作しているか確認するようにしてもよい。このようにすれば、複数のビーコンの管理が容易になる。
【0051】
<位置情報等取得処理>
図16は、モバイル装置3が位置情報等を取得する処理の一例を示す処理フローである。ビーコン1の標識情報送信部11は、定期的に無線標識を送信する(
図16:S41)。無線標識は、例えばビーコン1の識別情報、及び無線標識の送信日時を示す情報を含む。また、無線標識は様々な通信規格に則り送信することができるが、例えば上述のようにBLEのブロードキャスト通信を行うようにしてもよい。
【0052】
一方、モバイル装置3の標識情報受信部31は、無線標識を受信し、記憶部32に記憶させる(S42)。本ステップでは、例えば上述したBLEのブロードキャスト通信を受信する。また、モバイル装置3の情報送受信部33は、ビーコン1から受信した無線標識に含まれるビーコン1の識別情報及び送信日時を示す情報、当該無線標識の受信日時、並びに当該モバイル装置3を一意に特定するための識別情報を、ネットワーク5を介して情報提供サーバ4に送信する(S43)。本ステップでは、例えばインターネットを介し、所定のプロトコルで通信が行われる。また、位置情報の算出に用いるため、複数のビーコ
ン1から受信した無線標識を送信するようにしてもよい。
【0053】
また、情報提供サーバ4の通信部41は、無線標識の情報及びモバイル装置3の識別情報を受信し、記憶部42に記憶させる(S44)。また、情報提供サーバ4の位置情報算出部43は、既存の屋内測位技術を用いてモバイル装置3の位置情報を算出する(S45)。そして、情報提供サーバ4の関連情報抽出部44は、算出された位置情報をモバイル装置3へ送信する(S46)。位置情報は、予め定められた座標系における座標や、メッシュ状の区画等で表すことができる。また、本ステップでは、算出された位置情報に応じて周辺施設等に関する情報を送信するようにしてもよい。例えば、ユーザが入店した店舗からの案内等を送信することができる。
【0054】
一方、モバイル装置3の情報送受信部33は、情報提供サーバ4から位置情報等を受信し(S47)、受信した情報をモバイル装置3のモニタに表示させる(S48)。S48では、例えばモバイル装置3にインストールされたアプリケーションプログラムが、予め保持している駅構内や地下街、建築物内等のインドアマップ上に、S47で受信した位置情報を表示させる。また、モバイル装置3は、周辺施設等に関する情報を受信して表示するようにしてもよい。
【0055】
以上のような処理によれば、GPS(Global Positioning System)衛星の送信信号を
受信できない屋内等においても、位置情報を取得することができる。また、当該位置情報取得処理は、上述した定期処理や緊急時処理と並行して実行される。したがって、モバイル装置3が位置情報を取得するために十分、且つビーコンの消費電力の無駄を低減させることができる電波強度で無線標識が送信されるようになる。
【0056】
<変形例>
ビーコン1の相互通信部13は、例えば周囲のビーコン1の動作状況に応じて、自律的に設定を変更するようにしてもよい。例えば、各ビーコンは周辺のビーコンの死活監視を行うと共に、周辺のビーコンに障害が発生したことを検知した場合、電波強度を上げるようにしてもよい。
【0057】
また、制御装置2は、図示していないセンサ等を用いて、駅構内や地下街、建築物内といったビーコンを設置した場所の混雑状況を検知し、混雑状況に応じて動的に電波強度を変更するようにしてもよい。
【0058】
また、本システムは、ビーコンが無線標識を送信する電波強度以外の動作に関する設定値を変更するようにしてもよい。例えば、電波標識の送信に用いる周波数帯や、所定の通信プロトコルにおけるチャンネル、その他の様々な動作設定を変更することができる。
【0059】
以上本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【0060】
<その他>
本発明は上述の処理を実行するコンピュータプログラムを含む。さらに、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に属する。当該プログラムが記録された記録媒体については、コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0061】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外
し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、ハードディスクドライブやROM等がある。