特許第6801960号(P6801960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801960
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20201207BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201207BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
   B32B17/10
   B32B27/30 102
   !B60J1/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-553948(P2015-553948)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077864
(87)【国際公開番号】WO2016052672
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-202618(P2014-202618)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 博之
(72)【発明者】
【氏名】内村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章吾
(72)【発明者】
【氏名】水守 玲
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−206742(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/093655(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2012/091116(JP,A1)
【文献】 特開2008−303140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
B32B 27/30
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、
熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、
熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、
前記第2の層が、前記第1の層の一方の表面側に積層されており、
前記第3の層が、前記第1の層の前記一方の表面側とは反対の表面側に積層されており、
前記第1の層中の熱可塑性樹脂、前記第2の層中の熱可塑性樹脂、及び前記第3の層中の熱可塑性樹脂がそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と、前記第2の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに、前記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と、前記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差の絶対値がそれぞれ、0.5モル%以上8.5モル%以下であり、
前記第1の層のガラス転移温度が、前記第2の層のガラス転移温度、及び前記第3の層のガラス転移温度より低く、
前記第1の層の厚みは、前記第2の層の厚み、及び前記第3の層の厚みより薄く、
前記第1の層の厚みが180μm以上であるか、又は、前記第1の層の厚みの、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超える、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率、及び前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低い、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量、及び前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂、前記第2の層中のポリビニルアセタール樹脂、及び前記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂がそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の可塑剤、前記第2の層中の可塑剤、及び前記第3の層中の可塑剤がそれぞれ、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層の厚みの、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層の合計の厚みに対する比が0.2以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層の厚みの、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層の合計の厚みに対する比が0.24以上である、請求項6に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
合わせガラスを自動車等の車両のフロントガラスに使用する場合には、車両の事故等により、フロントガラスに車両の乗員の頭部が衝突することがある。乗員の頭部がフロントガラスに衝突した場合、乗員がフロントガラスを貫通し、車両の外部に飛び出してしまうことがある。乗員の安全を守るために、乗員の頭部がフロントガラスに衝突したとしても、乗員がフロントガラスを貫通しないことが好ましい。
【0004】
また、各国にて歩行者に対する頭部保護の法規制がスタートし、頭部保護の強化及び脚部の保護規制が追加されてきている。車両と歩行者の衝突に関して、歩行者が致命傷を負う部位で最も多いのが頭部である。日本国内においては、頭部への傷害を数値化する試験方法が定められている。歩行者の頭部がウインドシールド等に衝突したことを想定し、大人の頭部を模擬したダミー(頭部インパクター)を試験機から対象物に発射させ、頭部インパクターが受ける衝撃を測定し、頭部傷害値(HIC)として評価している。
【0005】
従来、HICが1000を超えるウインドシールドが多く存在している。一方で、近年、HICが1000以下であるウインドシールドが存在してきていることが公表されている。また、近年、歩行者保護用のエアバックを搭載した車両も開発され、大幅にHICが低下されている。
【0006】
例えば、下記の特許文献1には、HICが1000以下である合わせガラスが開示されている。また、下記の特許文献2には、衝突体との衝突時に衝突体がガラスから受ける反力を低減することができる合わせガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005/018969A1
【特許文献2】特開2005−112694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、HICの数値は、十分に低下できたと言える状況ではない。このため、歩行者への車両の衝突時に対して、歩行者への傷害が残る可能性は未だ高いと考えられる。
【0009】
また、特許文献1では、HICが1000以下である合わせガラスが開示されているが、中間膜の多様化によって、特許文献1に記載された構成とは異なる構成で、合わせガラスのHICを低くすることが求められている。
【0010】
特許文献2では、車室外側に配置される第1のガラス板と、第2のガラス板と、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置された中間膜とが、相互に貼り合わされることにより、合わせガラスが構成されている。その合わせガラスに頭部インパクターを衝突させた時の頭部インパクターの受ける反力が示されている。合わせガラスの場合、頭部インパクターがウインドシールドガラスに衝突したときに、上記反力の波形により、ガラス板の影響で1次ピークの荷重が発生し、その後、中間膜の影響による2次ピークの荷重が発生する。1次ピークの荷重は下げることが難しいが、2次ピークの荷重を下げることはできる。よって、特許文献2では、2次ピークを下げるような中間膜の特性を設定している。
【0011】
しかし、特許文献2に記載のように中間膜の特性を設定した合わせガラスでは、HICが効果的に低くならないことがある。
【0012】
本発明の目的は、HICを効果的に低くすることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、上記の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含み、JIS R3202に準拠した2枚のクリアガラスの間に中間膜を挟み込んで合わせガラスを得たときに、得られる合わせガラスの23℃での曲げ弾性率が5000MPa以上、10000MPa以下である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0014】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、前記第2の層が、前記第1の層の一方の表面側に積層されており、前記第3の層が、前記第1の層の前記一方の表面側とは反対の表面側に積層されている。
【0015】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層のガラス転移温度が、前記第2の層のガラス転移温度、及び前記第3の層のガラス転移温度より低く、前記第1の層の厚みは、前記第2の層の厚み、及び前記第3の層の厚みより薄く、前記第1の層の厚みが180μm以上であるか、又は、前記第1の層の厚みの、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超える。
【0016】
本発明の広い局面によれば、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、前記第2の層が、前記第1の層の一方の表面側に積層されており、前記第3の層が、前記第1の層の前記一方の表面側とは反対の表面側に積層されており、前記第1の層のガラス転移温度が、前記第2の層のガラス転移温度、及び前記第3の層のガラス転移温度より低く、前記第1の層の厚みは、前記第2の層の厚み、及び前記第3の層の厚みより薄く、前記第1の層の厚みが180μm以上であるか、又は、前記第1の層の厚みの、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超える、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の熱可塑性樹脂、前記第2の層中の熱可塑性樹脂、及び前記第3の層中の熱可塑性樹脂がそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率、及び前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低い。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量、及び前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量よりも多い。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂、前記第2の層中のポリビニルアセタール樹脂、及び前記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂がそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂である。
【0021】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の可塑剤、前記第2の層中の可塑剤、及び前記第3の層中の可塑剤がそれぞれ、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含む。
【0022】
前記第1の層の厚みの、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層の合計の厚みに対する比は好ましくは0.2以上、より好ましくは0.24以上である。
【0023】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含み、JIS R3202に準拠した2枚のクリアガラスの間に中間膜を挟み込んで合わせガラスを得たときに、得られる合わせガラスの23℃での曲げ弾性率が5000MPa以上、10000MPa以下であるので、HICを効果的に低くすることができる。
【0025】
また、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、上記第2の層が、上記第1の層の一方の表面側に積層されており、上記第3の層が、上記第1の層の上記一方の表面側とは反対の表面側に積層されており、上記第1の層のガラス転移温度が、上記第2の層のガラス転移温度、及び上記第3の層のガラス転移温度より低く、上記第1の層の厚みは、上記第2の層の厚み、及び上記第3の層の厚みより薄く、上記第1の層の厚みが180μm以上であるか、又は、上記第1の層の厚みの、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超えるので、HICを効果的に低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、HIC測定装置を説明するため図である。
図6図6は、HIC測定装置を説明するため図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0028】
本発明に係る合わせガラス用中間膜(本明細書において、「中間膜」と略記することがある)は、好ましくは、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含み、JIS R3202に準拠した2枚のクリアガラスの間に中間膜を挟み込んで合わせガラスを得たときに、得られる合わせガラスの23℃での曲げ弾性率が5000MPa以上、10000MPa以下である。
【0029】
本発明に係る中間膜は、好ましくは、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、上記第2の層が、上記第1の層の一方の表面側に積層されており、上記第3の層が、上記第1の層の上記一方の表面側とは反対の表面側に積層されており、上記第1の層のガラス転移温度が、上記第2の層のガラス転移温度、及び上記第3の層のガラス転移温度より低く、上記第1の層の厚みは、上記第2の層の厚み、及び上記第3の層の厚みより薄く、上記第1の層の厚みが180μm以上であるか、又は、上記第1の層の厚みの、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超える。
【0030】
本発明では、上述した構成が備えられているので、頭部傷害値(HIC)を効果的に低くすることができる。本発明では、乗員及び歩行者が合わせガラスに衝突しても、乗員及び歩行者がダメージを受けにくい。
【0031】
HICをより一層低くする観点からは、上記合わせガラスの曲げ弾性率は好ましくは5500MPa以上、より好ましくは7500MPa以上、好ましくは9000MPa以下、より好ましくは8500MPa以下、更に好ましくは8000MPa以下である。
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び参考例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0034】
図1に示す中間膜1は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の第1の表面2a側に積層された第2の層3と、第1の層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b側に積層された第3の層4とを備える。第1の層2は、中間層である。第2の層3及び第3の層4は、例えば、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層2は、第2の層3と第3の層4との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜1は、第2の層3と第1の層2と第3の層4とがこの順で積層された多層構造を有する。
【0035】
第2の層3の第1の層2側とは反対側の表面3aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。第3の層4の第1の層2側とは反対側の表面4aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。
【0036】
第1の層2は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。第2の層3は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。第3の層4は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。
【0037】
多層の中間膜の場合には、上記第1の層の上記第1の表面側に上記第2の層が配置されていればよい。上記第1の層の上記第2の表面側に上記第3の層が配置されていることが好ましい。上記第1の層の上記第2の表面側に上記第3の層が配置されていることにより、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。さらに、中間膜の両側の表面で、合わせガラス部材などに対する接着性を調整することができる。
【0038】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0039】
図2に示す中間膜31は、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜31は、第1の層である。中間膜31は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜31は、合わせガラス用中間膜である。中間膜31は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。
【0040】
以下、本発明に係る中間膜を構成する上記第1の層(単層の中間膜を含む)、上記第2の層及び上記第3の層の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0041】
(熱可塑性樹脂)
上記中間膜は熱可塑性樹脂を含む。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることが可能である。上記熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0043】
中間膜中の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材又は他の中間膜に対する本発明に係る合わせガラス用中間膜の接着力がより一層高くなる。上記熱可塑性樹脂(1)は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(2)は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(3)は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%である。
【0045】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上、特に好ましくは1300以上、最も好ましくは1500以上、好ましくは3000以下、より好ましくは2700以下、更に好ましくは2400以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0046】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、1500以上、3000以下であることが特に好ましい。
【0047】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0048】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、3又は4であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0049】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは17モル%以上、更に好ましくは19モル%以上、好ましくは28モル%以下、より好ましくは27モル%以下、更に好ましくは26モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上及び上記下限以下であると、歩行者及び乗員に与えるダメージをより一層低くできる。
【0051】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは28モル%以上、より好ましくは28.5モル%以上、更に好ましくは29モル%以上、特に好ましくは29.5モル%以上、好ましくは32モル%以下、より好ましくは31モル%以下、更に好ましくは30.5モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械的強度がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0052】
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。
【0053】
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは1.5モル%以上、特に好ましくは2モル%以上、最も好ましくは3.1モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは8.5モル%以下、より好ましくは7モル%以下、更に好ましくは6モル%以下、特に好ましくは5モル%以下、最も好ましくは4.8モル%以下である。
【0054】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0055】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.3モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは0.7モル%以上、特に好ましくは1.1モル%以上、好ましくは8モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは2モル%以下、特に好ましくは1.8モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の機械的強度がより一層高くなる。
【0056】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.3モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは0.8モル%以上、好ましくは2モル%以下、より好ましくは1.8モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の機械的強度がより一層高くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度と異なることが好ましく、0.1モル%以上異なることがより好ましく、0.2モル%以上異なることが更に好ましい。
【0057】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0058】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは61.5モル%以上、より好ましくは61.7モル%以上、更に好ましくは62モル%以上、好ましくは69モル%以下、より好ましくは68.2モル%以下、更に好ましくは68モル%以下、特に好ましくは67モル%以下、最も好ましくは64.9モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0059】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは65モル%以上、より好ましくは67モル%以上、更に好ましくは67.2モル%以上、特に好ましくは68.1モル%以上、好ましくは71.7モル%以下、より好ましくは71.5モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0060】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0061】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0062】
(可塑剤)
上記中間膜は可塑剤を含む。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤(1)と上記可塑剤(2)と上記可塑剤(3)とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0064】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0065】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0066】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0067】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0068】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0069】
【化1】
【0070】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基であることが好ましく、炭素数6〜10の有機基であることがより好ましい。
【0071】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0072】
上記熱可塑性樹脂(1)(上記ポリビニルアセタール樹脂(1))100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは80重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、中間膜の機械的強度がより一層高くなり、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。特に、上記含有量(1)が35重量部以下であると、合わせガラスの耐貫通性が効果的に高くなる。
【0073】
上記熱可塑性樹脂(2)(上記ポリビニルアセタール樹脂(2))100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)及び上記熱可塑性樹脂(3)(上記ポリビニルアセタール樹脂(3))100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは35重量部以上、より好ましくは37重量部以上、更に好ましくは38重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは42重量部以下、特に好ましくは41重量部以下、最も好ましくは39.9重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)がそれぞれ上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)がそれぞれ上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0074】
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、合わせガラスの耐貫通性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましい。HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0075】
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値、並びに上記含有量(1)と上記含有量(3)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは2重量部以上、より好ましくは5重量部以上、更に好ましくは8重量部以上、特に好ましくは8.1重量部以上、最も好ましくは9重量部以上である。上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値、並びに上記含有量(1)と上記含有量(3)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは22重量部以下、より好ましくは20重量部以下、更に好ましくは15重量部以下、特に好ましくは12重量部以下である。
【0076】
(他の成分)
上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
単層の中間膜である場合に、該中間膜(第1の層)は、接着力調整剤を含むことが好ましい。上記第2の層及び上記第3の層は接着力調整剤を含むことが好ましい。接着力調整剤として、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩又はマグネシウムの塩であることが好ましい。上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の接着力を容易に制御することができることから、接着力調整剤は、マグネシウムの塩又はカリウムの塩であることが好ましく、カルボン酸のマグネシウムの塩又はカルボン酸のカリウムの塩であることがより好ましい。カルボン酸のマグネシウムの塩は特に限定されないが、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、及び2−エチルヘキサン酸マグネシウム等が挙げられる。上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層中のマグネシウム元素の含有量は200ppm以下であることが好ましく、150ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、80ppm以下であることが特に好ましい。上記マグネシウム元素は、マグネシウムの塩に由来するマグネシウムとして含まれてもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来するマグネシウムとして含まれてもよい。カルボン酸のカリウムの塩は特に限定されないが、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸カリウム、及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層中のカリウム元素の含有量は400ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、250ppm以下であることが更に好ましく、200ppm以下であることが特に好ましく、180ppm以下であることが最も好ましい。上記カリウム元素は、カリウム塩に由来するカリウムとして含まれてもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来するカリウムとして含まれてもよい。なお、上記カリウム元素や上記マグネシウム元素の含有量は、ICP発光分析装置(島津製作所社製「ICPE−9000」)により測定することができる。
【0078】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記第1の層のガラス転移温度は、上記第2の層及び上記第3の層のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。この場合に、HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記第1の層のガラス転移温度と上記第2の層のガラス転移温度との差の絶対値、及び上記第1の層のガラス転移温度と上記第3の層のガラス転移温度との差の絶対値は好ましくは25℃以上、30℃以上、より好ましくは32℃以上、好ましくは45℃以下、より好ましくは43℃以下、更に好ましくは35℃以下である。
【0079】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0080】
中間膜の厚みをTとする。合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記第1の層の厚みは、好ましくは0.14T以上、より好ましくは0.16T以上、好ましくは0.72T以下、より好ましくは0.67T以下である。
【0081】
中間膜の柔軟性を高め、中間膜の取扱いを容易にする観点からは、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.14T以上、より好ましくは0.16T以上、好ましくは0.43T以下、より好ましくは0.42T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0082】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、中間膜が上記第2の層と上記第3の層とを備える場合に、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みは、好ましくは0.28T以上、より好ましくは0.33T以上、好ましくは0.86T以下、より好ましくは0.84T以下である。また、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0083】
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記第1の層の厚みは、上記第2の層の厚み、及び上記第3の層の厚みよりも薄いことが好ましい。この場合に、上記第1の層の厚みと上記第2の層の厚みとの差の絶対値、及び上記第1の層の厚みと上記第3の層の厚みとの差の絶対値は好ましくは25μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは355μm以下、より好ましくは350μm以下である。
【0084】
HICをより一層低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記第1の層の厚みが、180μm以上であるか、又は、上記第1の層の厚みの、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超えることが好ましい。上記第1の層の厚みが、180μm以上であってもよく、上記第1の層の厚みの、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みに対する比が0.15を超えていてもよい。HICをより一層低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みに対する比は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.24以上である。上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みに対する比は、好ましくは0.7以下である。
【0085】
また、合わせガラスを自動車等の車両のフロントガラスに使用する場合、車両の事故等により、フロントガラスに車両の乗員の頭部が衝突することがある。乗員の頭部がフロントガラスに衝突した場合、乗員がフロントガラスを貫通し、車両の外部に飛び出してしまうことがある。乗員の安全を守るために、乗員の頭部がフロントガラスに衝突したとしても乗員がフロントガラスを貫通しないことが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いると、乗員がフロントガラスを貫通することを防止できる。中間膜の厚みが薄くても、乗員がフロントガラスを貫通することを防止できることから、上記第1の層の厚みは上記第2の層又は上記第3の層の厚みよりも薄いことが好ましく、10μm以上薄いことがより好ましく、20μm以上薄いことが特に好ましく、30μm以上薄いことが最も好ましい。同様に、中間膜の厚みが薄くても、乗員がフロントガラスを貫通することを防止できることから、第1の層の厚みは好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは100μmを超え、特に好ましくは150μm以上、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下、最も好ましくは200μm以下である。更に、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みは、好ましくは0.6T以上、より好ましくは0.65T以上、更に好ましくは0.7T以上、好ましくは0.9T以下、より好ましくは0.85T以下、更に好ましくは0.8T以下である。
【0086】
本発明に係る中間膜の製造方法としては特に限定されない。本発明に係る中間膜の製造方法としては、単層の中間膜の場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。本発明に係る中間膜の製造方法としては、多層の中間膜の場合に、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、例えば、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0087】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0088】
(合わせガラス)
図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0089】
図3に示す合わせガラス11は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜1とを備える。中間膜1は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0090】
中間膜1の第1の表面1aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。中間膜1の第2の層3の外側の表面3aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第3の層4の外側の表面4aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0091】
図4は、図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0092】
図4に示す合わせガラス41は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜31とを備える。中間膜31は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。中間膜31の第1の表面31aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜31の第1の表面31aとは反対の第2の表面31bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0093】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上記第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明の合わせガラス用中間膜である。
【0094】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方が、ガラス板であることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
【0095】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0096】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0097】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0098】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。
【0099】
以下に参考例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら参考例のみに限定されない。
【0100】
以下の参考例及び比較例で用いたポリビニルブチラール(PVB)樹脂に関しては、ブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396−92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0101】
参考例1)
第1の層を形成するための組成物Xの作製:
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度2300、水酸基の含有率22モル%、アセチル化度13モル%、ブチラール化度65モル%)100重量部と、可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを混合し、第1の層を形成するための組成物Xを得た。
【0102】
第2の層及び第3の層を形成するための組成物Yの作製:
可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)39重量部に、酢酸マグネシウムと2−エチル酪酸マグネシウムとの混合物(酢酸マグネシウムの混合比:2−エチル酪酸マグネシウムとの混合比=50重量%:50重量%)を添加し、混合し、可塑剤溶液とした。なお、酢酸マグネシウムと2−エチル酪酸マグネシウムとの混合物は、第2の層及び第3の層中のマグネシウム元素の濃度が50ppmとなるように調整した。
【0103】
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度1700、水酸基の含有率30.6モル%、アセチル化度1.0モル%、ブチラール化度68.4モル%)100重量部と、可塑剤溶液全量とを混合し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物Yを得た。
【0104】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物Xと、第2の層及び第3の層を形成するための組成物Yとを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第2の層(厚み300μm)/第1の層(厚み200μm)/第3の層(厚み300μm)の積層構造を有する中間膜(厚み800μm)を作製した。
【0105】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜(多層)を、縦110cm×横110cmに切り出した。次に、2枚のクリアガラス(縦110cm×横110cm×厚み2.5mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、合わせガラスを得た。
【0106】
参考例2及び比較例1,2)
ポリビニルアセタール樹脂の種類及び含有量、並びに、可塑剤の種類及び含有量を下記の表1に示すように設定したこと以外は参考例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0107】
参考例3)
可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部に、酢酸マグネシウムと2−エチル酪酸マグネシウムとの混合物(酢酸マグネシウムの混合比:2−エチル酪酸マグネシウムとの混合比=50重量%:50重量%)を添加し、混合し、可塑剤溶液とした。なお、酢酸マグネシウムと2−エチル酪酸マグネシウムとの混合物は、第1の層中のマグネシウム元素の濃度が55ppmとなるように調整した。
【0108】
上記可塑剤溶液と、ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度2300、水酸基の含有率22モル%、アセチル化度13モル%、ブチラール化度65モル%)100重量部とを混合し、第1の層を形成するための組成物Xを得た。第1の層を形成するための組成物Xを単層で押出すことにより、厚み800μmの単層の中間膜(厚み800μm)を作製した。以降は参考例1と同様にして、合わせガラスを作製した。
【0109】
(評価)
(0)ガラス転移温度
得られた中間膜を、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に12時間保管した直後に、アイティー計測制御社製の粘弾性測定装置「DVA−200」を用いて、粘弾性を測定した。サンプルは縦8mm、横5mmで切り出し、せん断モードで5℃/分の昇温速度で−30℃から100℃まで温度を上昇させる条件、及び周波数1Hz及び歪0.08%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。
【0110】
(1)曲げ弾性率
合わせガラスを縦1.5cm、横10cmに切断し、サンプル1を作製した。得られたサンプル1を試験片とし、曲げ試験機を用いて、支点間距離80mm、測定温度22.5℃、降下速度を5mm/minの条件で発生する荷重とたわみとを測定した。曲げ弾性率は以下の式を用いて算出した。
【0111】
【数1】
【0112】
(2)HIC
合わせガラスを縦50cm、横110cmに切断し、サンプル2を作製した。図5及び図6に示した構造を有するHIC測定装置を用いてサンプルのHICを測定した。図に示すようにHIC装置は、合わせガラスの外周部分を固定するような構造を有している。頭部インパクターは、金属製のコアに半球状の樹脂製ヘッドスキンが取り付けられている。その中に3軸方向の加速度センサーが備え付けられている。頭部インパクターは、NCAP等自動車の認証試験の「歩行者保護性能試験」にて使用される人体の頭部を模したダミーである。図の装置より、合わせガラス中央に35km/hの速度で、頭部インパクターを射出して、合わせガラスに衝突させた。
【0113】
HICは、下記の式により算出される。式中のaはインパクトヘッドの合成加速度を表し、t2−t1は、時間間隔15msとする。具体的な試験方法は、国土交通省発行の「道路運送車両の保安基準:細目告示別添99 歩行者頭部保護の技術基準」に記載された内容で実施した。
【0114】
【数2】
【0115】
結果を下記の表1に示す。
【0116】
【表1】
【符号の説明】
【0117】
1…中間膜
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第1の層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
11…合わせガラス
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31…中間膜
31a…第1の表面
31b…第2の表面
41…合わせガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6