特許第6801966号(P6801966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801966
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】装飾パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20201207BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20201207BHJP
   B29C 69/00 20060101ALI20201207BHJP
   B29K 105/20 20060101ALN20201207BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B29C45/14
   B29C69/00
   B29K105:20
   B29L9:00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-20369(P2016-20369)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-136770(P2017-136770A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和志
(72)【発明者】
【氏名】中村 晋也
(72)【発明者】
【氏名】平戸 雅浩
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−034635(JP,A)
【文献】 特開昭53−124136(JP,A)
【文献】 実開昭51−079544(JP,U)
【文献】 特開昭49−133458(JP,A)
【文献】 特開2005−144865(JP,A)
【文献】 特開平02−196654(JP,A)
【文献】 特開2016−068443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29C45/00−45/84
64/00−64/40
67/00−69/02
73/00−73/34
B29D 1/00−29/10
33/00
99/00
B32B1/00−43/00
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する外層と、前記開口部内への露出部を有する加飾層とが接合界面を介して積層状態に接合されているとともに、前記接合界面が前記開口部における前記外層の表面にまで延在しており、
前記外層及び前記加飾層は、それぞれ異なる金属からなり、
前記加飾層は、前記開口部内に突出するように凹凸変形させられた状態であり、前記開口部が形成されている面とは反対面に凹部が形成されていることを特徴とする装飾パネル。
【請求項2】
前記露出部の外周縁部における表面と前記開口部の内周縁部における前記外層の表面とが同一面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の装飾パネル。
【請求項3】
前記外層とは反対面に樹脂層が一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の装飾パネル。
【請求項4】
それぞれ異なる金属からなる外層と加飾層とが接合界面を介して積層状態に接合されてなる積層板を形成する積層板形成工程と、前記接合界面を変形させながら前記積層板に前記加飾層側から前記外層側に突出する凸部を形成する凸部形成工程と、前記凸部の少なくとも突出端部を前記凸部における前記接合界面が切断されるように除去することにより、前記外層に開口部を形成するとともに、その開口部内に前記加飾層を露出させる突出端部除去工程とを有することを特徴とする装飾パネルの製造方法。
【請求項5】
前記凸部形成工程において、前記外層と前記加飾層とをプレス成形により変形することにより前記凸部を形成することを特徴とする請求項4記載の装飾パネルの製造方法。
【請求項6】
前記凸部形成工程において、内表面にキャビティ凹部を形成した射出成形金型内に、前記キャビティ凹部に前記外層が対向した状態で前記積層板を配置し、前記射出成形金型内に注入される樹脂の圧力で前記積層板を前記キャビティ凹部内に押し付け変形させることにより前記凸部を形成することを特徴とする請求項4記載の装飾パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内装部材、家具、建築資材、電気機器などの表面に用いて好適な装飾パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内装部材、家具、建築資材、電気機器などの表面に、木目調の模様や象嵌模様などの意匠を施す場合がある。この場合、伝統工芸品としては、木目金、象嵌などの技術が継承されてきているが、工業製品として量産できる技術が求められている。
金属体等の表面に所定のデザインパターンを装飾する技術として、例えば、特許文献1、特許文献2に記載の技術がある。
特許文献1には、表面化粧材の所望の位置に象嵌部材を臨ませる窓孔を形成し、その窓孔に象嵌部材を装填し、これらの背面に射出成形により樹脂層を形成して裏打処理を施したものが開示されている。
【0003】
特許文献2には、材質の異なる複数の金属板を積層して接合して多層状金属体を形成し、その表面に所定のパターン形状の凹部を形成し、その凹部の高さと非パターン部分の表面高さとを揃えて平面化することが開示されている。この場合、多層状金属体の表面を刻印して厚さ方向にずらすことにより凹部を形成した後、非パターン部分を除去して高さを揃える方法、多層状金属体の表面の一部をレーザ等により除去して凹部を形成し、非パターン部分を押圧して高さを揃える方法、多層状金属体の表面を刻印して厚さ方向にずらすことにより反対側に凸部を形成し、その凸部を除去して表面を面一にする方法等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−326897号公報
【特許文献2】特開2009−196299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のように、表面化粧材の窓孔に象嵌部材を装填するのでは、窓孔の周縁と表面化粧材との間にわずかな隙間が生じ易く、また、使用時等に象嵌部材が脱落するおそれがある。一方、特許文献2の方法は、パターン部分と非パターン部分とを同一表面に形成することができると考えられるが、複雑な模様を工業的に再現性良く繰り返し形成することは難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、脱落や剥離等を生じることなく、意匠性に優れる種々の模様を工業的に生産することを可能にした装飾パネル及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の装飾パネルは、開口部を有する外層と、前記開口部内への露出部を有する加飾層とが接合界面を介して積層状態に接合されているとともに、前記接合界面が前記開口部における前記外層の表面にまで延在しており、前記外層及び前記加飾層は、それぞれ異なる金属からなり、前記加飾層は、前記開口部内に突出するように凹凸変形させられた状態であり、前記開口部が形成されている面とは反対面に凹部が形成されている
【0008】
この装飾パネルは、外層の開口部内に加飾層の一部が露出しており、この点では特許文献1や2に記載の構造と類似しているが、外層と加飾層との接合界面が開口部における外層の表面にまで延びて設けられており、外層における開口部の内周面と開口部内の加飾層の露出部の外周面とが接合状態とされている。したがって、その剥離や加飾層の露出部の脱落が防止される。また、加飾層を多層構造として、その各層を露出部に露出させることにより、多重の模様を付すことができる。
【0009】
本発明の装飾パネルにおいて、前記露出部の外周縁部における表面と前記開口部の内周縁部における前記外層の表面とが同一面に形成されているとよい。
この場合、開口部の部分に段差等がなく、露出部の外周縁部における表面と開口部の内周縁部における外層の表面とが同一面に形成されているので、意匠性にも優れている。
【0010】
本発明の装飾パネルにおいて、前記外層とは反対面に樹脂層が一体に形成されているとよい。装飾パネル全体の剛性を樹脂層により付与することができ、うねりや反りの発生を防止することができる。これにより、外層と加飾層とを薄肉にすることが可能で、その成形を容易にできるため、工業的な生産に適している。
【0011】
本発明の装飾パネルの製造方法は、それぞれ異なる金属からなる外層と加飾層とが接合界面を介して積層状態に接合されてなる積層板を形成する積層板形成工程と、前記接合界面を変形させながら前記積層板に前記加飾層側から前記外層側に突出する凸部を形成する凸部形成工程と、前記凸部の少なくとも突出端部を前記凸部における前記接合界面が切断されるように除去することにより、前記外層に開口部を形成するとともに、その開口部内に前記加飾層を露出させる突出端部除去工程とを有する。
【0012】
積層板に凸部を形成して、その凸部の突出端部を除去する、という単純な加工により製造することができ、意匠性に優れる装飾パネルの工業的生産を容易にすることができる。
この場合、積層板に凸部を形成する方法としては、外層と加飾層とをプレス成形により変形することにより前記凸部を形成する方法、内表面にキャビティ凹部を形成した射出成形金型内に、前記キャビティ凹部に前記外層が対向した状態で前記積層板を配置し、前記射出成形金型内に注入される樹脂の圧力で前記積層板を前記キャビティ凹部内に押し付け変形させることにより前記凸部を形成する方法、などがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外層の開口部内における加飾層の露出部の脱落や剥離等を生じることなく、意匠性に優れる種々の模様を工業的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の装飾パネルの断面図である。
図2図1の装飾パネルの開口部付近の平面図である。
図3図1の装飾パネルの開口部付近の拡大断面図である。
図4図1の装飾パネルの第1実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
図5図4の製造方法により順次製造される装飾パネルの変化を工程順に示す断面図である。
図6】第1実施形態の製造方法の変形例を工程順に示す断面図である。
図7図1の装飾パネルの第2実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
図8図7の製造方法により順次製造される装飾パネルの変化を工程順に示す断面図である。
図9】本発明の実施形態の装飾パネルにおいて加飾層を複数層にした断面図である。
図10図9の装飾パネルの開口部付近の平面図である。
図11】装飾パネルの別の形態を示す断面図である。
図12図11の装飾パネルの製造方法を示すフローチャートである。
図13図12の製造方法により順次製造される装飾パネルの変化を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[装飾パネルの第1実施形態]
第1実施形態における装飾パネル10は、図1に示すように、外面側から、外層11、加飾層12、接着材層13、樹脂層14を順次積層した構造とされている。例えば、外層11は厚さ50μmの銅からなる層であり、加飾層12は厚さ450μmからなるアルミニウムからなる層である。接着材層13としては、カバ等の木材、あるいはドープセメントなどが用いられる。接着材層13として木材を用いる場合は、木材の表面の凹凸あるいは微小孔に樹脂層14の樹脂の一部が埋め込まれることによりアンカー効果を有する。ドープセメントは、熱可塑性樹脂を溶剤に溶かした接着剤である。なお、樹脂層14を除く外層11、加飾層12、接着材層13からなる積層板をパネル用積層板(本発明の積層板)10´と称す。
【0016】
樹脂層14は、後述するようにパネル用積層板10´に射出成形のインサート成形により一体化されたもので、装飾パネル10全体に強度を付与し、装飾パネル10を板状の他、所望の立体形状に保持する機能を有する。この樹脂層14の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形に適した合成樹脂が用いられ、装飾パネル10に求められる強度等の要件に応じて適宜の厚さに設定される。
【0017】
このような積層構造を有する装飾パネル10において、外層11の一部に開口部15が形成され、その開口部15内に、外層11の下の層である加飾層12の一部が露出して、露出部16が形成されている。この場合、外層11と加飾層12との接合界面17が開口部15の内周縁で外層11の表面にまで延びている。後述するように、この開口部15は、凹凸変形したパネル用積層板10´の一部を切断して除去することにより形成される。このため、図3の拡大断面図に示すように、外層11と加飾層12との接合界面17が開口部15における外層11の表面にまで延びており、図2に示すように、開口部15の内周縁部に、外層11と加飾層12との接合界面17の切断端17aとともに外層11の切断端面11aが露出している。そして、開口部15内の加飾層12とその周辺の外層11の表面とが同一面に形成されている。
言い換えれば、外層11の表面における開口部15の内周縁は、外層11と加飾層12との接合界面17の切断端17aによって形成されており、その周囲に、外層11の厚さにほぼ等しい幅で外層11の切断端面11aが露出している。
【0018】
[装飾パネルの製造方法の第1実施形態]
前述の装飾パネル10を製造する場合、二通りの方法がある。まず、その第1実施形態について説明する。
この実施形態の製造方法は、図4のフローチャートに示すように、積層板形成工程、凸部形成工程、突出端部除去工程、樹脂一体化工程の順で装飾パネル10を製造する。
図5は、その製造方法による断面の変化を順に示したものである。以下、工程順に説明する。
【0019】
(積層板形成工程)
まず、図5(a)に示すように、外層11、加飾層12、接着材層13を積層してパネル用積層板10´を製造する。この段階では、いずれも平板状であり、接着剤等によって積層状態に接合される。前述した外層11が銅で、加飾層12がアルミニウムからなる場合、拡散接合によっても接合することができる。
なお、外層11、加飾層12、接着材層13は、実施形態の組合せだけでなく、木材、金属、樹脂のいずれの組合せも可能であり、これらの接合手段としても、接着、融着、ろう付、メッキ、スパッタ、蒸着等を用いることができる。
【0020】
(凸部形成工程)
次いで、図5(a)の二点鎖線で示すように、プレス成形により、外層11の表面に成形用凹部51が形成された凹型52を当接するとともに、その成形用凹部51と対向するように成形用凸部55が形成された凸型56を接着材層13に当接し、接着材層13側から外層11側へ板圧方向(積層方向)に押圧して、図5(b)に示すように接着材層13側に凹部21、反対の外層11側に凸部22を成形する。このとき、前述した特許文献2のように刻印して板厚方向に沿う境界面で各層をずらすのではなく、パネル用積層板10´が凹凸変形するように成形する。これにより、外層11と加飾層12との接合界面17が凹凸変形させられた状態となる。このため、凸部22の外周の側面も外層11の表面によって形成される。また、凸部22の突出高さHは好ましくは外層11の厚さt1以上となるように成形する。
【0021】
(突出端部除去工程)
次いで、外層11の表面に形成された凸部22の突出端部22aをフライス加工等によって図5(c)に矢印で示すように、その周囲の外層11の外表面と同一面となるように除去する。
図3に拡大して示したように、この凸部22を除去すると、外層11に開口部15が形成され、その開口部15内に下の層の加飾層12が露出される。また、先の凸部形成工程において、凸部22の外周の側面も外層11の表面によって形成するように凸部22を形成しておいたので、凸部22の周囲の外層11の表面に沿って矢印で示す位置から凸部22を除去すると、外層11が厚さ方向に切断されるとともに、外層11と加飾層12との接合界面17も切断される。したがって、外層11の表面には、外層11の切断端面11aと接合界面17の切断端17aとが露出する。
【0022】
加飾層12については、凸部成形工程で形成される凸部22の高さHが外層11の厚さt1と同じ高さであった場合は、突出端部切断工程により、凸部22を周囲の外層11の外表面と同一面となるように除去すると、開口部15内で加飾層12の上を覆っていた外層11が除去されて、加飾層12の表面が露出する。また、凸部形成工程で形成される凸部22の高さHが外層11の厚さt1を超える高さであり、突出端部除去工程により、凸部22を周囲の外層11の外表面と同一面となるように、その凸部22の高さの全体を除去する場合は、加飾層12も厚さの途中位置で切断され、開口部15内には加飾層12の切断面が露出される。図3は、この後者の場合を示しており、したがって、加飾層12の露出部16は、加飾層12の切断端面でもある。
【0023】
いずれの場合も、外層11と加飾層12との接合界面17が開口部15の内周縁で外層11の表面にまで延びるように形成され、開口部15の内周縁部に、その接合界面17の切断端17aともに外層11の切断端面11aが露出しており、外層11の切断端面11aと開口部15内の加飾層12の露出部16の表面とが同一面に形成されている。
言い換えれば、パネル用積層板10´の表面における開口部15の内周縁は、外層11と加飾層12との接合界面17の切断端17aによって形成されており、その周囲に、図2に示すように、外層11の厚さt1にほぼ等しい幅で外層11の切断端面11aが露出している。必要に応じてパネル用積層板10´の外表面を研磨や塗装してもよい。
【0024】
なお、この突出端部除去工程では、凸部22の周囲の外層11の表面に合わせるように凸部22の全体を外層11の表面位置で除去したが、凸部形成工程で形成される凸部22の高さHを外層11の厚さt1を超える高さとしておき、例えば図3の一点鎖線矢印で示す位置で凸部22の高さHの途中位置で切断するようにしてもよく、その場合は、開口部15の周囲に外層11が立ち上げられた状態に形成され、その頂部が外層11の切断端面11aであり、その内側に加飾層12の露出部16が露出した状態となり、これら外層11の切断端面11aと加飾層12の露出部16の表面とが同一面に形成される。
【0025】
(樹脂一体化工程)
次いで、図5(c)に示すように、パネル用積層板10´を射出成形金型内に外層11が射出成形金型60の内面に当接するように配置し、射出成形金型60内に樹脂を射出して、パネル用積層板10´の接着材層13に樹脂層14を形成すると、図1に示すように、樹脂層14が一体化した装飾パネル10が形成される。この場合、樹脂層14は、接着材層13の凹部21を埋めるようにして接着材層13と一体化する。
最後に、必要に応じて装飾パネル10の外表面を研磨や塗装してもよい。
【0026】
このように製造される装飾パネル10は、凸部形成工程において、外層11と加飾層12とが接合した状態で凹凸変形され、突出端部除去工程において、外層11と加飾層12との接合界面17も含めて凸部22を切断しており、加飾層12だけでなく、外層11の切断端面11aが接合界面17の切断端17aとともに開口部15の内周縁部に露出している。したがって、外層11と加飾層12との接合界面17は、開口部15の周縁における外層11の表面まで延びて形成されており、開口部15の内周縁における外層11の内周面と加飾層12の露出部16の外周面との間の接合状態が維持され、加飾層12の露出部16の剥離や脱落が防止される。
この場合、外層11の切断端面11aと開口部15内の加飾層12の露出部16の表面とが同一面内に配置されているので、開口部15の周縁部が平面に形成され、意匠性にも優れている。
また、樹脂層14が裏打ち状態に設けられているので、装飾パネル10全体の剛性が高められ、うねりや反りの発生を防止することができる。このため、外層11や加飾層12を薄肉にすることが可能で、その成形を容易にできるため、工業的な生産に適している。
【0027】
なお、図5に示す工程では、凸部22の高さHを外層11の厚さt1よりも大きく形成して、その凸部22を除去したが、図6(a)に示すように、凸部22の高さHを外層11の厚さt1よりも小さく形成しておくことも可能であり、その場合は、図6(b)に示すように、凸部22の周囲の外層11の表面位置で凸部22を除去しても加飾層12が露出しないので、図6(c)に示すように、凸部22の部分の外層11をレーザ加工等によりすべて除去して、加飾層12を露出させる。したがって、この場合は、開口部15の周囲の外層11に対してわずかな深さの表面凹部23が形成され、その表面凹部23の底面を形成するように加飾層12が露出される。
【0028】
そして、このように加飾層12が表面凹部23の底面を形成するように配置される場合は、次の樹脂一体化工程で、その表面凹部23が変形しないように、表面凹部23に嵌るキャビティ凸部(図示略)を射出成形金型の内表面に形成しておいて、そのキャビティ凸部と表面凹部23とを嵌め合せた状態で樹脂を射出してもよいし、表面凹部23を平坦なキャビティ面に当接させて、樹脂圧でキャビティ面に押圧することにより、加飾層12の露出部16を樹脂圧で押し出して、露出部16の表面が開口部15の周囲の外層11の表面と同一面となるように成形してもよい。
このようにして形成した装飾パネルにおいても、外層11と加飾層12との接合界面17が開口部15における外層11の表面にまで延びて形成され、開口部15の周縁が接合界面17の切断端によって形成される。
【0029】
[装飾パネルの製造方法の第2実施形態]
次に、図1の装飾パネルの製造方法の第2実施形態について説明する。
この実施形態の製造方法は、図7のフローチャートに示すように、積層板形成工程、樹脂一体化及び凸部形成工程、突出端部除去工程の順で装飾パネル10を製造する。図8が、その製造方法による断面の変化を工程順に示したものである。以下、工程順に説明する。
(積層板形成工程)
積層板形成工程では、前述の第1実施形態の製造方法と同様にして、パネル用積層板10´を形成する。
【0030】
(樹脂一体化及び凸部形成工程)
この第2実施形態の樹脂一体化及び凸部形成工程においては、射出成形金型60として、その内表面にキャビティ凹部61が形成されたものを用い、このキャビティ凹部61によってパネル用積層板10´に凸部22を形成する。
キャビティ凹部61の深さは、パネル用積層板10´の外層11の厚さt1以上に形成される。そして、図8(a)に示すように、パネル用積層板10´の外層11の表面を射出成形金型60の内面に当接させ、外層11の一部をキャビティ凹部61に対向させた状態に配置する。この状態で、図8(b)に示すように、パネル用積層板10´の接着材層13側に樹脂を射出し、そのときの射出圧によってキャビティ凹部61内にパネル用積層板10´を押し込むように変形させ、パネル用積層板10´の接着材層13側に凹部21、反対の外層側に凸部22を成形する。樹脂はパネル用積層板10´を変形させながら凹部21を埋めるようにして接着材層13と一体化する。凸部22の突出高さHは外層11の厚さt1以上となっており、射出成形金型60に形成しておいてキャビティ凹部61の深さによって調整することができる。
このようにして樹脂一体化及び凸部形成工程を経ると、パネル用積層板10´には、外層11側に凸部22が形成されるとともに、その反対面には樹脂層14が一体に形成されている。
射出成形金型60の表面に形成されたキャビティ凹部61は、射出成形金型60の表面の切削等によって形成してもよいし、金属薄板や樹脂フィルムに開口を設けた薄板を射出成形金型60の平坦な内面とパネル用積層板10´との間に挿入することで簡易的に形成してもよい。
【0031】
(突出端部除去工程)
このようにして凸部22を形成したパネル用積層板10´に対して、図8(c)の矢印で示すように、外層11の表面に形成された凸部22の突出端部22aをフライス加工等によって切断するように除去することにより、外層11に開口部15が形成されるとともに、その開口部15の内周縁部に、外層11と加飾層12との接合界面17の切断端17aともに外層11の切断端面11aが露出し、外層11の切断端面11aと開口部15内の加飾層12の表面とが同一面に形成された装飾パネル10が形成される。
この製造方法は、装飾パネル10の裏面に樹脂層14を一体に形成する場合に、凸部22の形成と樹脂の一体化とを同時に実施することができ、生産性に優れている。
【0032】
なお、前述の実施形態では、加飾層12を1枚の板材(アルミニウム板)により形成し、外層11の開口部15内に単一の加飾層12が露出するように構成したが、この加飾層12を複数枚の板材を積層状態に接合した多層構造とし、外層11の開口部15内に、その加飾層12の多層構造を露出させるようにしてもよい。
【0033】
図9及び図10に示す装飾パネル100は、加飾層12を、外層11に接合された第1加飾層12Eと、この第1加飾層12Eに接合された第2加飾層12Fとの2層構造としたものであり、凸部形成工程においては、外層11から離れている第2加飾層12Fが外層11の表面よりも突出するように成形し、その凸部22の突出端部22aを外層11の表面位置で切断するように除去することにより、開口部15内に外側から第1加飾層12E、第2加飾層12Fの順に露出させたものである。この場合、開口部15の外側に外層11の切断端面11aが配置され、その内側に外層11と第1加飾層12Eとの接合界面17の切断端17a、第1加飾層12Eの露出部16E、第1加飾層12Eと第2加飾層12Fとの接合界面18の切断端18a、第2加飾層12Fの露出部16Fが順に露出している。図9に示す例では、これら露出部16E,16Fは、加飾層12E,12Fの切断端面でもある。
この構成とすることにより、開口部15内に加飾層12によって多重の模様が形成され、さらに意匠性を向上させることができる。この図9及び図10に示す装飾パネル100の場合も、図7に示すように、樹脂一体化と凸部形成とを同時に実施してもよい。
【0034】
なお、加飾層を3層以上に形成する場合、凸部形成工程において、加飾層の中の最も下層(外層から最も離れている層)の板材が外層11の表面よりも突出するように成形(加飾層内の各板材間の接合界面も凹凸変形するように成形)し、突出端部除去工程において、その凸部を例えば外層の表面位置で切断するように除去することにより、開口部内に加飾層の各層の接合界面の切断端を含めて各加飾層を露出することができる。
【0035】
[装飾パネルの別の形態]
前述の第1実施形態の装飾パネル10及び図9の装飾パネル100では、外層11と加飾層12との接合界面17の切断端17aも開口部15に露出させるように形成したが、次のようにしてもよい。
この別の形態の装飾パネル110は、図11に示すように、外層11の一部に設けられている開口部15に、その下の層の加飾層12の一部が露出しており、開口部15の周囲の外層11の表面と開口部15内の加飾層12の露出部16の表面とが同一面に形成されている点は第1実施形態と同様であるが、外層11と加飾層12との接合界面17は、外層11の開口部15の裏面の内周縁までであり、この開口部15の内周縁の下側(外層11の裏面側)の端縁にて加飾層12が屈曲形成されることにより開口部15内に突出形成されている。このため、外層11の開口部15の内周面に加飾層12の表面が接合されることなく、対向して配置されている。
【0036】
[別の形態の装飾パネルの製造方法]
この形態の装飾パネル110は、図12のフローチャートに示すように、積層板形成工程、開口部形成工程、樹脂一体化及び加飾層変形工程の順で製造される。図13が工程順の断面図を示す。
(積層板形成工程)
積層板形成工程では、前述の第1実施形態の製造方法と同様にして、パネル用積層板10´を形成する。
(開口部形成工程)
パネル用積層板10´の外層11の一部をレーザ加工等によって除去して開口部15を形成する。レーザの出力は、外層11を除去するが、加飾層12を加工しないように設定しておく。
【0037】
(樹脂一体化及び加飾層変形工程)
開口部15が形成された外層11の表面を射出成形金型65の内面に当接させ、パネル用積層板10´の接着材層13側に樹脂を射出してパネル用積層板10´と一体化する。このときの開口部15に対向する部分の射出成形金型65の内面は平坦面に形成されるが、外層11に開口部15が形成されているため、その開口部15の部分が空間となる。樹脂が射出されると、その射出圧によって外層11の開口部15内にパネル用積層板10´の加飾層12が押し込まれるように変形される。接着材層13は、加飾層12の変形に対応するように凹部21が形成される。
この樹脂一体化及び加飾層変形工程により、外層11の開口部15内に加飾層12の一部が突出した状態に露出し、開口部15の周囲の外層11表面と開口部15内の加飾層12の露出部16表面とがほぼ同一面に形成される。
【0038】
なお、このように樹脂の一体化と加飾層12の変形とを同時に行う樹脂一体化及び加飾層変形工程ではなく、樹脂の一体化と加飾層12の変形とを別の工程で行うようにしてもよい。
例えば、加飾層変形工程では、開口部形成工程の後に、プレス成形により、外層11の開口部15の周囲の表面を金型の平坦面に当接し、その開口部15の反対側をパンチにより板厚方向に押圧することにより、接着材層13に凹部21を形成するとともに、開口部15に加飾層12の一部を押し込むように変形する。そして、樹脂一体化工程において、接着材層13側に樹脂を射出して一体化することにより、装飾パネル110を製造するようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、いずれの実施形態も外層に形成された開口部は、その周縁が閉じているが、パネルの側縁部等に、その側縁を含んで切り欠くようにして形成された開口部とすることも可能である。
また、開口部内の加飾層の露出部の表面に、さらに凹凸模様を形成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,100,110…装飾パネル、10´…パネル用積層板(積層板)、11…外層、11a…切断端面、12,12E,12F…加飾層、13…樹脂層、15…開口部、16,16E,16F…露出部、17,18…接合界面、17a,18a…切断端、21…凹部、22…凸部、22a…突出端部、23…表面凹部、51…成形用凹部、52…凹型、55…成形用凸部、56…凸型、60,65…射出成形金型、61…キャビティ凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13