(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮空気を生成するための圧縮機と、前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、前記圧縮機から抽気される抽気空気の流量を調整する調整弁と、を備えたガスタービンの制御装置であって、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記調整弁を開くとともに、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力と相関のある指標に基づいて前記調整弁の開度を制御するように構成され、
前記負荷遮断直前の前記ガスタービンの出力が第1出力よりも大きい第2出力の場合における前記調整弁の第2開度が、前記負荷遮断直前の前記ガスタービンの出力が前記第1出力である場合の前記調整弁の第1開度よりも大きくなるように、前記ガスタービンの負荷遮断時における前記開度を全開状態と全閉状態との間で調節可能であり、
前記ガスタービンの負荷遮断信号の非検出時に前記指標の現在値を前記指標の前回値として保持しておき、前記負荷遮断信号の検出時に前記前回値を前記負荷遮断直前の前記指標として取得するように構成された指標取得部を備える
ことを特徴とするガスタービンの制御装置。
前記指標が、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力、または、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記圧縮機の入口案内翼の開度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービンの制御装置。
前記ガスタービンの高温部の温度測定値に対応した前記調整弁の要求開度と、前記指標に基づいて決定された前記調整弁の前記開度と、のうち最小開度を選択するように構成された最小開度選択部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のガスタービンの制御装置。
前記調整弁は、前記抽気空気を前記圧縮機の吸気側に返送する循環ラインに設けられた循環弁、または、前記圧縮機からの前記抽気空気の前記タービンへの供給量を調節するための少なくとも一つの抽気弁のうち少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のガスタービンの制御装置。
複数の前記調整弁の各々の開閉タイミング及び開度を他の調整弁とは独立して制御するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のガスタービンの制御装置。
圧縮空気を生成するための圧縮機と、前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、前記圧縮機から抽気する抽気空気の流量を調整する調整弁と、を備えたガスタービンの制御方法であって、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記調整弁を開くとともに、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力と相関のある指標に基づいて前記調整弁の開度を制御するとともに、
前記負荷遮断直前の前記ガスタービンの出力が第1出力よりも大きい第2出力の場合における前記調整弁の第2開度が、前記負荷遮断直前の前記ガスタービンの出力が前記第1出力である場合の前記調整弁の第1開度よりも大きくなるように、前記ガスタービンの負荷遮断時における前記開度を全開状態と全閉状態との間で調節するとともに、
前記ガスタービンの負荷遮断信号の非検出時に前記指標の現在値を前記指標の前回値として保持しておき、前記負荷遮断信号の検出時に前記前回値を前記負荷遮断直前の前記指標として取得する
ことを特徴とするガスタービンの制御方法。
前記指標が、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力、または、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記圧縮機の入口案内翼の開度であることを特徴とする請求項9又は10に記載のガスタービンの制御方法。
前記ガスタービンの高温部の温度測定値に対応した前記調整弁の要求開度と、前記指標に基づいて決定された前記調整弁の前記開度と、のうち最小開度を選択するステップを備えることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一項に記載のガスタービンの制御方法。
前記調整弁は、前記抽気空気を前記圧縮機の吸気側に返送する循環ラインに設けられた循環弁、または、前記圧縮機からの前記抽気空気の前記タービンへの供給量を調節するための少なくとも一つの抽気弁のうち少なくとも何れかであることを特徴とする請求項9乃至13の何れか一項に記載のガスタービンの制御方法。
複数の前記調整弁の各々の開閉タイミング及び開度を他の調整弁とは独立して制御することを特徴とする請求項9乃至14の何れか一項に記載のガスタービンの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるガスタービンの制御は、安定燃焼性を維持するために必要な最低燃料流量に基づいて燃料弁開度を決定するものであり、かかる構成のみによって、負荷遮断時において過回転のリスク低減と失火防止とを両立することが難しい場合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されるガスタービンでは、負荷遮断時、ガスタービンの過回転のリスクの大きさにかかわらず、圧縮機から圧縮空気を抽気する抽気弁を全開となるように制御している。このため、過回転を防止するために必要な程度以上に抽気してしまい、例えばガスタービン高温部の冷却のために圧縮空気を利用しているような場合に、ガスタービン高温部の冷却が不十分になってしまうことが考えられる。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、負荷遮断時において過回転のリスク低減と失火防止とを両立しながら、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて適切な制御を行うことができるガスタービンの制御装置および制御方法、並びにガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るガスタービンの制御装置は、
圧縮空気を生成するための圧縮機と、前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、前記圧縮機から抽気される抽気空気の流量を調整する調整弁と、を備えたガスタービンの制御装置であって、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記調整弁を開くとともに、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力と相関のある指標に基づいて前記調整弁の開度を制御するように構成される。
【0010】
上記(1)の構成によれば、ガスタービンの負荷遮断時に調整弁を開くことで、圧縮機からの抽気空気の流量が増加するので、燃焼器に供給される圧縮空気の流量が減少する。これにより、燃焼器における燃空比が高くなり、過回転を抑制しながら燃焼器での失火を防止できる。なお、燃空比とは、燃焼器に供給される圧縮空気に対する燃料の比率である。
ところで、負荷遮断直前のガスタービン出力が大きいほど、負荷遮断時にガスタービンが過回転に陥るリスクが大きくなる。この点、上記(1)の構成では、ガスタービンの負荷遮断直前におけるガスタービン出力と相関のある指標に基づいて調整弁の開度を制御するようにしたので、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて調整弁の開度制御を適切に行うことができる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記指標の増加に伴って前記調整弁の前記開度を大きくするように構成される。
【0012】
例えば、ガスタービンの負荷遮断前に高出力で運転している場合、負荷遮断時の回転数上昇は大きく、過回転のリスクは大きくなる。この場合、上記(2)の構成によれば、回転数の大幅上昇に対応し得るように、調整弁は比較的大きな開度で開かれ、圧縮機からの抽気量は多くなる。そのため、失火しないような燃空比を維持しながら負荷運転時に比べて燃料流量を大幅に低減することも可能となる。これにより、燃焼器で生成されタービンに流入する燃焼ガスのエネルギーを大幅に低減することができ、負荷遮断後の過回転を確実に防止できる。
一方、ガスタービンの負荷遮断前に低出力で運転している場合、負荷遮断時の回転数上昇は小さく、過回転のリスクは小さい。この場合、回転数の上昇幅は小さいため、調整弁は比較的小さな開度で開かれ、圧縮機からの抽気量は少ない。これにより、ガスタービンの運転状態の急激な変化を回避しながら、負荷遮断後の過回転を防止できる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記指標が、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力、または、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記圧縮機の入口案内翼の開度である。
【0014】
上記(3)の構成によれば、ガスタービンの出力そのものの値、または、ガスタービンの出力に相関のある入口案内翼の開度を指標として用いることにより、過回転リスクの大きさに応じた調整弁の開度制御を精度よく行うことができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記指標に応じて前記調整弁の開度を算出する弁開度算出部と、
前記弁開度算出部で算出された前記開度を大気温度により補正するように構成された弁開度補正部と、を備える。
【0016】
通常、大気温度によって圧縮機に流入する空気の質量流量は変化するので、上記(4)の構成のように弁開度算出部で算出された開度を大気温度により補正することで、大気温度によらず、過回転リスクに応じた所望の質量流量の抽気空気を圧縮機から排出することができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記ガスタービンの高温部の温度測定値に対応した前記調整弁の要求開度と、前記指標に基づいて決定された前記調整弁の前記開度と、のうち最小開度を選択するように構成された最小開度選択部をさらに備える。
【0018】
上記(5)の構成によれば、ガスタービンの運転に際して最も優先すべき事項の一つである高温部の冷却(例えばタービン翼の冷却)に必要な空気流量を確保した上で、過回転および失火を抑制することができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記調整弁は、前記抽気空気を前記圧縮機の吸気側に返送する循環ラインに設けられた循環弁、または、前記圧縮機からの前記抽気空気の前記タービンへの供給量を調節するための少なくとも一つの抽気弁のうち少なくとも何れかである。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
複数の前記調整弁の各々の開閉タイミング及び開度を他の調整弁とは独立して制御するように構成される。
【0021】
上記(7)の構成によれば、調整弁が複数設けられる場合、それぞれの調整弁の開閉タイミング及び開度が他の調整弁とは独立して制御されるので、ガスタービンの負荷遮断時の対応によるガスタービンの運転への影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
(8)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るガスタービンは、
圧縮空気を生成するための圧縮機と、
前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、
前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、
前記圧縮機から抽気される抽気空気の流量を調整する調整弁と、
前記調整弁の開度を制御するように構成された、上記(1)乃至(7)の何れかの制御装置と、
を備える。
【0023】
上記(8)の構成によれば、過回転を抑制しながら燃焼器での失火を防止でき、且つ、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて調整弁の開度制御を適切に行うことができる制御装置を備えているので、信頼性の高いガスタービンを提供することができる。
【0024】
(9)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るガスタービンの制御方法は、
圧縮空気を生成するための圧縮機と、前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、前記圧縮機から抽気する抽気空気の流量を調整する調整弁と、を備えたガスタービンの制御方法であって、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記調整弁を開くとともに、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力と相関のある指標に基づいて前記調整弁の開度を制御する。
【0025】
上記(9)の方法によれば、ガスタービンの負荷遮断時に調整弁を開くことで、圧縮機からの抽気空気の流量が増加するので、燃焼器に供給される圧縮空気の流量が減少する。これにより、燃焼器における燃空比が高くなり、過回転を抑制しながら燃焼器での失火を防止できる。
また、ガスタービンの負荷遮断直前におけるガスタービン出力と相関のある指標に基づいて調整弁の開度を制御するようにしたので、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて調整弁の開度制御を適切に行うことができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の方法において、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記指標の増加に伴って前記調整弁の前記開度を大きくする。
【0027】
上記(10)の方法によれば、ガスタービンの出力と相関のある指標が大きい場合、調整弁を比較的大きな開度で開くことによって、燃焼器で生成されタービンに流入する燃焼ガスのエネルギーを大幅に低減することができ、負荷遮断後の過回転を確実に防止できる。これに対し、ガスタービンの出力と相関のある指標が小さい場合、調整弁は比較的小さな開度で開かれるので、ガスタービンの運転状態の急激な変化を回避しながら、負荷遮断後の過回転を防止できる。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)の方法において、
前記指標が、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記ガスタービンの出力、または、前記ガスタービンの負荷遮断直前における前記圧縮機の入口案内翼の開度である。
【0029】
上記(11)の方法によれば、ガスタービンの出力そのものの値、または、ガスタービンの出力に相関のある入口案内翼の開度を指標として用いることにより、過回転リスクの大きさに応じた調整弁の開度制御を精度よく行うことができる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れかの方法において、
前記ガスタービンの負荷遮断時、前記指標に応じて前記調整弁の開度を算出するステップと、
前記開度を算出するステップで算出された前記調整弁の前記開度を大気温度により補正するステップと、
を備える。
【0031】
上記(12)の方法によれば、ガスタービン出力と相関のある指標に基づいて算出された開度を大気温度により補正することで、大気温度によらず、過回転リスクに応じた所望の質量流量の抽気空気を圧縮機から排出することができる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(12)の何れかの方法において、
前記ガスタービンの高温部の温度測定値に対応した前記調整弁の要求開度と、前記指標に基づいて決定された前記調整弁の開度と、のうち最小開度を選択するステップを備える。
【0033】
上記(13)の方法によれば、ガスタービンの運転に際して最も優先すべき事項の一つである高温部の冷却(例えばタービン翼の冷却)に必要な空気流量を確保した上で、過回転および失火を抑制することができる。
【0034】
(14)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(13)の何れかの方法において、
前記調整弁は、前記抽気空気を前記圧縮機の吸気側に返送する循環ラインに設けられた循環弁、または、前記圧縮機からの前記抽気空気の前記タービンへの供給量を調節するための少なくとも一つの抽気弁のうち少なくとも何れかである。
【0035】
(15)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(14)の何れかの方法において、
複数の前記調整弁の各々の開閉タイミング及び開度を他の調整弁とは独立して制御する。
【0036】
上記(15)の方法によれば、調整弁が複数設けられる場合、それぞれの調整弁の開閉タイミング及び開度が他の調整弁とは独立して制御されるので、ガスタービンの負荷遮断時の対応によるガスタービンの運転への影響を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、ガスタービンの負荷遮断時に調整弁を開くことで、圧縮機からの抽気空気の流量が増加するので、燃焼器に供給される圧縮空気の流量が減少する。これにより、燃焼器における燃空比が高くなり、過回転を抑制しながら燃焼器での失火を防止できる。
また、ガスタービンの負荷遮断直前におけるガスタービン出力と相関のある指標に基づいて調整弁の開度を制御するようにしたので、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて調整弁の開度制御を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0040】
最初に、
図1を例示しながら幾つかの実施形態に係るガスタービン1の全体構成について説明する。ここで、
図1は、一実施形態に係るガスタービン1の概略構成を示す図である。
【0041】
幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機3と、圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器4と、燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービン5と、を備える。
また、このガスタービン1は、圧縮機3から抽気される抽気空気の流量を調整する調整弁10と、をさらに備える。
【0042】
上記ガスタービン1において、圧縮機3に取り込まれた空気は、圧縮機車室内に設けられた入口案内翼2、複数の静翼及び動翼を通過して圧縮され、これによって高温高圧の空気(圧縮空気)が生成される。
燃焼器4には、燃料と、圧縮機3からの高温高圧の空気とが供給される。この燃焼器4では、燃焼器車室内で燃料および空気を混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させる。ガスタービン1の部分負荷運転時または全負荷運転時、燃焼器4に供給される燃料の流量はガスタービン1の運転状態や負荷などによって決定される。例えば燃料流量は、ガスタービン1の負荷、回転数(回転速度)、あるいは燃焼ガス温度の少なくとも何れかに基づいて決定される。
タービン5には燃焼器4からの燃焼ガスが導入される。この燃焼ガスが、タービン車室内に配置された複数の静翼及び動翼を通過することで、タービン車室および圧縮機車室を貫通するように設けられたロータが回転するようになっている。ガスタービン1が発電に用いられる場合には、ロータの回転によって、ロータに連結された発電機(不図示)で発電が行われる。
タービン5の下流側には、タービン車室に連通する排気ダクト6が接続されている。タービン5を駆動した後の排ガスは、排気ダクト6を通って外部へ排出されるようになっている。
【0043】
上記ガスタービン1は、圧縮機3から抽気する少なくとも一つの抽気ライン20(20a〜20c)と、圧縮機3から抽気される抽気空気の流量を調整するための調整弁10と、をさらに備えている。
【0044】
抽気ライン20は、冷却ライン21(21a〜21c)に接続されている。冷却ライン21は、抽気ライン20を介して圧縮機3からの抽気空気の少なくとも一部を、冷却用空気としてタービン5に導くように配設される。この冷却ライン21には、オリフィス22(22a〜22c)が設けられている。
【0045】
また、抽気ライン20は、循環ライン23又は排気ライン24(24a〜24c)の少なくとも一方に接続されている。
循環ライン23は、圧縮機3からの抽気空気の少なくとも一部を圧縮機3の入口側に返送するように配設される。
排気ライン24は、圧縮機3から抽気された空気の少なくとも一部をタービン5の下流側、すなわち
図1では排気ダクト6に導くように配設される。
【0046】
調整弁10は、循環ライン23に設けられた循環弁11、または、排気ライン24に設けられた抽気弁12(12a〜12c)の少なくとも何れかを含む。
循環弁11は、循環ライン23を通って圧縮機3の入口側に返送される抽気空気の循環量を調整するように構成される。
抽気弁12は、抽気ライン10の圧力を調節することによって、オリフィス22の前後差圧を調整し、タービン5に供給される冷却用空気の流量を調整するようになっている。
これらの循環弁11又は抽気弁12は、ガスタービン1の負荷遮断時、圧縮機3からの抽気流量を調整するための調整弁10として用いることもできる。なお、ガスタービン1の負荷運転時には、通常、循環弁11および抽気弁12(12a〜12c)は閉じられており、所定流量の冷却空気がオリフィス22を介してタービン5に送られるようになっている。この冷却空気の流量を変更する際には、循環弁11又は抽気弁12の少なくとも一方を開度制御することによって、冷却ライン21上のオリフィス22の前後差圧が変化してタービン5に供給される冷却用空気の流量が調節される。
【0047】
図1に示す実施形態では、抽気ライン20は、圧縮機3の高圧段(出口側)から抽気する高圧抽気ライン20aと、圧縮機3の中圧段(中間)から抽気する中圧抽気ライン20bと、圧縮機3の低圧段(入口側)から抽気する低圧抽気ライン20cと、を含む。
また、冷却ライン21は、高圧抽気ライン20aに接続され、タービン5の高圧段(入口側)に空気を導入する高圧冷却ライン21aと、中圧抽気ライン20bに接続され、タービン5の中圧段(中間)に空気を導入する中圧冷却ライン21bと、低圧抽気ライン20cに接続され、タービン5の低圧段(出口側)に空気を導入する低圧冷却ライン21cと、を含む。これらの各冷却ライン21a〜21cには、それぞれ、高圧オリフィス22a、中圧オリフィス22b、低圧オリフィス22cが設けられている。
循環ライン23は、高圧抽気ライン20a、中圧抽気ライン20bおよび低圧抽気ライン20cの全てに接続されている。
排気ライン24は、高圧抽気ライン20aおよび高圧冷却ライン21aに接続された高圧排気ライン24aと、中圧抽気ライン20bおよび中圧冷却ライン21bに接続された中圧排気ライン24bと、低圧抽気ライン20cおよび低圧冷却ライン21cに接続された低圧排気ライン24cと、を含む。この場合、高圧排気ライン24a、中圧排気ライン24bおよび低圧排気ライン24cのそれぞれに、高圧抽気弁12a、中圧抽気弁12bおよび低圧抽気弁12cが設けられている。
【0048】
上述したようなガスタービン1では、負荷運転中に負荷を切り離す運用(負荷遮断)を実施することがある。この場合、負荷遮断後に、燃焼器4において失火せず、且つ、ガスタービン1の回転数がオーバースピードトリップ規定値(例えば110%)以下であれば、負荷遮断が適切に実施されたとみなせる。
【0049】
しかしながら、負荷遮断後における失火防止と過回転のリスク低減はトレードオフの関係にあり、これらを両立することが難しい場合がある。一般的なガスタービン1では、負荷遮断時、例えば燃焼器4への燃料を絞ることにより回転数の上昇を抑制する。すなわち、燃焼器4では、無負荷運転においてもガスタービン1の回転数が設定範囲内に維持されるような燃料流量に設定される。しかしながら、ガスタービン1によっては、過回転を抑制可能な程度の燃料流量に設定された場合、燃空比が大きくなりすぎて燃焼器4の失火によりガスタービン1が停止してしまう可能性がある。なお、燃空比とは、燃焼器4に供給される圧縮空気に対する燃料の比率である。通常、燃焼器4に供給される空気流量は、回転数と入口案内翼2の開度(IGV開度)で決まるが、圧縮機3はタービン5と同軸となっており、回転数で空気流量を操作することは難しい。一方、IGV開度は通常、負荷遮断時に全閉に制御されるが、既に入口案内翼2を通過して圧縮された空気は燃焼器4に投入されてしまう。そのため、燃焼器4の燃料流量を増加させずに燃空比を増大させることは難しい。
【0050】
そこで、以下の実施形態では、負荷遮断時において過回転のリスク低減と失火防止とを両立し、さらにはガスタービン1の過回転のリスクの大きさに応じて適切な制御を行うことができる制御装置30について説明する。
図2は、一実施形態に係るガスタービン1の制御装置30の構成図である。
なお、以下の説明において、ガスタービン1の各部位については
図1に示した符号を付している。
【0051】
図2に例示するように、幾つかの実施形態に係る制御装置30は、主としてガスタービン1の調整弁10の開度を制御するものであって、ガスタービン1の負荷遮断時、調整弁10を開くとともに、ガスタービン1の負荷遮断直前におけるガスタービン1の出力と相関のある指標(以下、出力指標と称する)に基づいて調整弁10の開度を制御するように構成される。
この制御装置30は、ガスタービン1の負荷遮断時、出力指標の増加に伴って調整弁10の開度を大きくするように構成されてもよい。
なお、出力指標として、ガスタービン1の負荷遮断直前におけるガスタービン出力、または、ガスタービン1の負荷遮断直前における圧縮機3の入口案内翼2の開度を用いてもよい。
【0052】
上記構成によれば、ガスタービン1の負荷遮断時に調整弁10を開くことで、圧縮機3からの抽気空気の流量が増加するので、燃焼器4に供給される圧縮空気の流量が減少する。これにより、燃焼器4への燃料投入量を増加させることなく、燃焼器4における燃空比を高めることができ、過回転を抑制しながら燃焼器4での失火を防止できる。
ところで、負荷遮断直前のガスタービン出力が大きいほど、負荷遮断時にガスタービン1が過回転に陥るリスクが大きくなる。この点、上記構成では、ガスタービン1の負荷遮断直前における出力指標に基づいて調整弁10の開度を制御するようにしたので、ガスタービン1の過回転のリスクの大きさに応じて調整弁10の開度制御を適切に行うことができる。
【0053】
例えば、ガスタービン1の負荷遮断前に高出力で運転している場合、負荷遮断時の回転数上昇は大きく、過回転のリスクは大きくなる。この場合、上記構成によれば、回転数の大幅上昇に対応し得るように、調整弁10は比較的大きな開度で開かれ、圧縮機3からの抽気量は多くなる。そのため、失火しないような燃空比を維持しながら負荷運転時に比べて燃料流量を大幅に低減することも可能となる。これにより、燃焼器4で生成されタービンに流入する燃焼ガスのエネルギーを大幅に低減することができ、負荷遮断後の過回転を確実に防止できる。
一方、ガスタービン1の負荷遮断前に低出力で運転している場合、負荷遮断時の回転数上昇は小さく、過回転のリスクは小さい。この場合、回転数の上昇幅は小さいため、調整弁10は比較的小さな開度で開かれ、圧縮機3からの抽気量は少ない。これにより、ガスタービン1の運転状態の急激な変化を回避しながら、負荷遮断後の過回転を防止できる。
【0054】
なお、上述した実施形態において、制御装置30は、負荷遮断時から設定時間(例えば数秒〜十数秒)が経過した後、調整弁10の開度を負荷遮断前の開度(例えば全閉)に戻すように制御する構成としてもよい(
図7参照)。この場合、設定時間は、過回転及び失火のリスクが大きい負荷遮断直後の時間帯に対応していてもよい。例えば、設定時間は、シミュレーションや燃焼器単体試験の結果等から設定することができる。
このように、過回転及び失火のリスクが大きい負荷遮断直後の時間帯は調整弁10を開く制御を行い、負荷遮断後に時間が経過して無負荷運転の状態が安定し、過回転及び失火のリスクが小さくなったら調整弁10の開度を戻す。これにより、負荷遮断後におけるガスタービン1の安定運転が可能となる。例えば、負荷遮断直後に調整弁10を開くことで冷却用空気が減少してしまう場合であっても、設定時間経過後に調整弁10の開度を戻すことにより、タービン5の冷却に与える影響を抑えることができる。
【0055】
ここで、
図2〜
図6を参照して、制御装置30の具体的な構成について説明する。
図2に例示するように、幾つかの実施形態に係る制御装置30は、調整弁10の開度を算出するための弁開度算出部31と、弁開度指令を生成するための弁開度指令出力部34と、を備えている。
この制御装置30は、弁開度補正部32または最小開度選択部33の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。
【0056】
弁開度算出部31は、ガスタービン1の負荷遮断時、負荷遮断直前における出力指標に応じて調整弁10の開度を算出するように構成される。
弁開度指令出力部34は、弁開度算出部31で算出された調整弁10の開度に基づく弁開度指令を生成し、この弁開度指令を調整弁10に出力するように構成される。
【0057】
図3Aは、一実施形態における調整弁10の基本的な制御を示すブロック線図である。
図3Bは、ガスタービン出力と調整弁開度との相関関係を示す図である。これらの図は、出力指標としてガスタービン1の負荷遮断直前におけるガスタービン出力を用いた場合の制御に関連した図である。
図3Aに示す実施形態において、弁開度算出部31(
図2参照)は、スイッチ311、関数演算器312、及びスイッチ313を有する。
スイッチ311には、ガスタービン出力の現在値が入力されるとともに、ガスタービン出力の前回値が入力される。スイッチ311が負荷遮断信号を検出しない場合には、ガスタービン出力の現在値は前回値としてスイッチ311に再度入力される。一方、スイッチ311が負荷遮断信号を検出した場合には、ガスタービン出力の前回値が関数演算器312に入力される。
関数演算器312では、
図3Bに示すようなガスタービン出力と調整弁開度との相関関係に基づいて、ガスタービン出力の前回値から調整弁10の開度を算出する。
スイッチ313には、関数演算器312で算出された調整弁10の開度が入力される。スイッチ313が負荷遮断信号を検出しない場合には、スイッチ313から開度をゼロとする開弁指令が出力される。スイッチ313が負荷遮断信号を検出した場合には、関数演算器312で算出された調整弁10の開度が出力され、弁開度指令出力部34(
図2参照)においてこの開度に基づいた開弁指令が生成される。
【0058】
上記構成によれば、ガスタービン出力の前回値に基づいて調整弁10の開度を決定するようにしたので、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて調整弁10の開度制御を適切に行うことができる。
また、ガスタービン1の出力そのものの値を指標として用いることにより、過回転リスクの大きさに応じた調整弁10の開度制御を精度よく行うことができる。
なお、ガスタービン1のタービン5が発電機を駆動するように構成されている場合、発電機出力をガスタービン出力として用いてもよい。
【0059】
図4Aは、一実施形態の変形例における調整弁10の基本的な制御を示すブロック線図である。
図4Bは、IGV開度と調整弁開度との相関関係を示す図である。これらの図は、出力指標として、ガスタービン1の負荷遮断直前における圧縮機3の入口案内翼2の開度(IGV開度)を用いた場合の制御に関連した図である。
スイッチ311には、IGV開度の現在値が入力されるとともに、IGV開度の前回値が入力される。スイッチ311が負荷遮断信号を検出しない場合には、IGV開度の現在値は前回値としてスイッチ311に再度入力される。一方、スイッチ311が負荷遮断信号を検出した場合には、IGV開度の前回値が関数演算器312に入力される。
関数演算器312では、
図4Bに示すようなIGV開度と調整弁開度との相関関係に基づいて、IGV開度の前回値から調整弁10の開度を算出する。
スイッチ313には、関数演算器312で算出された調整弁10の開度が入力される。スイッチ313が負荷遮断信号を検出しない場合には、スイッチ313から開度をゼロとする開弁指令が出力される。スイッチ313が負荷遮断信号を検出した場合には、関数演算器312で算出された調整弁10の開度が出力され、弁開度指令出力部34(
図2参照)においてこの開度に基づいた開弁指令が生成される。
【0060】
上記構成によれば、IGV開度の前回値に基づいて調整弁10の開度を決定するようにしたので、ガスタービンの過回転のリスクの大きさに応じて調整弁10の開度制御を適切に行うことができる。
また、タービン出力に相関のあるIGV開度を出力指標として用いることにより、過回転リスクの大きさに応じた調整弁10の開度制御を精度よく行うことができる。
【0061】
図5は、他の実施形態における調整弁10の制御を示すブロック線図であり、
図3A及び
図4Aの基本制御に加えて、弁開度補正部32(
図2参照)による演算が付加された制御を示している。なお、
図5において弁開度算出部31(
図2参照)の制御は
図3A及び
図4Aと同じであるため、説明を省略する。
【0062】
図2に示すように、弁開度補正部32は、弁開度算出部31で算出された調整弁10の開度を大気温度により補正するように構成される。
図5に示す実施形態では、弁開度補正部32は、関数演算器321及び乗算器322を有する。
関数演算器321には大気温度が入力される。そして、関数演算器321は、大気温度と調整弁10の開度の補正係数との相関関係に基づいて、大気温度から補正係数を算出する。通常、圧縮機3に流入する空気の質量流量は大気温度によって変化する。そのため、関数演算器321では、例えば状態方程式を用いて、大気温度による質量流量の変動を吸収するような調整弁10の開度の補正係数を算出する。
負荷制御指令を検出したとき、乗算器322では、上述したスイッチ312から入力される調整弁10の開度と、関数演算器321から入力される補正係数とを乗算し、大気温度により補正された調整弁10の開度を出力する。そして、この補正された調整弁10の開度に基づいて、弁開度指令出力部34(
図2参照)において開弁指令が生成される。
【0063】
上記構成によれば、弁開度算出部31で算出された開度を大気温度により補正することで、大気温度によらず、過回転リスクに応じた所望の質量流量の抽気空気を圧縮機3から排出することができる。これにより、年間を通して大気温度差が大きいガスタービンプラントにおいても、調整弁10の開度設定の仕様を変更する必要がなくなり、調整弁10の開度制御を適切に行うことができる。
【0064】
図6は、さらに他の実施形態における調整弁10の制御を示すブロック線図であり、
図3A及び
図4Aの基本制御に加えて、最小開度選択部33(
図2参照)による演算が付加された制御を示している。なお、
図6において弁開度算出部31(
図2参照)の制御は
図3A及び
図4Aと同じであるため、説明を省略する。
【0065】
図2に示すように、最小開度選択部33は、ガスタービン1の高温部の温度測定値に対応した調整弁10の要求開度と、出力指標に基づいて決定された調整弁10の開度と、のうち最小開度を選択するように構成される。
図6に示す実施形態では、最小開度選択部33は、関数演算器331及び比較器332を有する。
関数演算器331には、ガスタービン1の高温部の温度測定値が入力される。ここでいう高温部とは、圧縮機3からの抽気空気によって冷却されるガスタービン1の冷却対象部位であって、特に、負荷遮断時の燃空比確保よりも優先されるべき冷却対象部位であってもよい。例えば、高温部はタービン翼である。この場合、高温部の温度測定値は、タービン5の翼温度に相関のある温度であってもよい。翼温度に相関のある温度としては、ディスクキャビティ温度、ブレードパス温度、あるいは排ガス温度等が挙げられる。そして、関数演算器331は、高温部の温度測定値に対応した調整弁10の要求開度、すなわち高温部の冷却に必要とされる冷却空気を供給可能な調整弁10の要求開度を算出する。
負荷制御指令を検出したとき、比較器332では、上述したスイッチ312から入力される調整弁10の開度と、関数演算器331から入力される調整弁10の要求開度とを比較し、これらのうち最小の開度を出力する。なお、比較器332では、スイッチ312から入力される開度の代わりに、
図5に示した乗算器322から出力される補正された開度が入力されてもよい。
【0066】
上記構成によれば、ガスタービン1の運転に際して最も優先すべき事項の一つである高温部の冷却(例えばタービン翼の冷却)に必要な空気流量を確保した上で、過回転および失火のリスクを低減することができる。
【0067】
上述した実施形態において、開度制御される調整弁10は、
図1において既に説明した循環弁11、または、少なくとも一つの抽気弁12a〜12cのうち少なくとも何れかであってもよい。
典型的なガスタービンプラントには、例えば圧縮機3のサージを防止する目的で圧縮機3の吸入側への抽気空気の返送量を調節するための循環弁10や、例えばタービン5の高温部の冷却を行うための抽気量を調整するための抽気弁12a〜12cが設けられたものがある。
そこで、負荷遮断時において過回転防止と失火防止とを両立するために用いる調整弁10として、ガスタービンプラントにおいて典型的に設けられている循環弁11や抽気弁12a〜12cを利用することで、既設のガスタービンプラントに対して上述した実施形態の構成を容易に適用できる。
【0068】
図7は、各調整弁10の開閉タイミング及び開度を説明するための図である。
図1及び
図7を参照して、一実施形態に係る制御装置30は、複数の調整弁10の各々の開閉タイミング及び開度を他の調整弁10とは独立して制御するように構成されてもよい。
図1に示すように、調整弁10として循環弁11及び複数の抽気弁12a〜12cが用いられる場合、個々に弁開度決定基準を設け、それぞれの弁の開閉タイミング及び開度を制御可能とする。例えば、
図7に示すように、高圧系統ほど冷却要求が厳しいことから高圧抽気弁12aについては開時間を短くし、冷却空気の流量を大きくしてもよい。また、高圧抽気弁12aを閉じるタイミングで中圧抽気弁12bを開け、次いで低圧抽気弁12cを開けるようにしてもよい。また、循環弁11、高圧抽気弁12aおよび中圧抽気弁12bは所定時間経過後に閉じ、低圧抽気弁12cは開けた状態を維持してもよい。
【0069】
上記構成によれば、調整弁10が複数設けられる場合、それぞれの調整弁10の開閉タイミング及び開度が他の調整弁10とは独立して制御されるので、ガスタービン1の負荷遮断時の対応によるガスタービン1の運転への影響を最小限に抑えることができる。
【0070】
図1に例示するように、幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、圧縮機3と、燃焼器4と、タービン5と、調整弁10(例えば循環弁11又は抽気弁12a〜12c)と、上述した何れかの実施形態に記載の制御装置30と、を備える。
この構成により、過回転を抑制しながら燃焼器4での失火を防止でき、且つ、ガスタービン1の過回転のリスクの大きさに応じて調整弁10の開度制御を適切に行うことができる制御装置30を備えているので、信頼性の高いガスタービン1を提供することができる。
【0071】
次に、
図1を参照しながら、幾つかの実施形態に係るガスタービン1の制御方法について説明する。なお、ガスタービン1の構成については上述した構成と同じであるため省略する。
幾つかの実施形態に係るガスタービン1の制御方法は、ガスタービン1の負荷遮断時、調整弁10を開くとともに、ガスタービン1の負荷遮断直前における出力指標に基づいて調整弁10の開度を制御する。
この方法において、ガスタービン1の負荷遮断時、出力指標の増加に伴って調整弁10の開度を大きくしてもよい。
【0072】
上記方法によれば、ガスタービン1の負荷遮断時に調整弁10を開くことによって、燃焼器4への燃料投入量を増加させることなく、燃焼器4における燃空比を高めることができ、過回転を抑制しながら燃焼器4での失火を防止できる。
また、ガスタービン1の負荷遮断直前における出力指標づいて調整弁10の開度を制御することで、ガスタービン1の過回転のリスクの大きさに応じて調整弁10の開度制御を適切に行うことができる。
【0073】
一実施形態に係るガスタービン1の制御方法は、ガスタービン1の負荷遮断時、出力指標に応じて調整弁10の開度を算出するステップと、開度を算出するステップで算出された調整弁10の開度を大気温度により補正するステップと、を備える。
この方法によれば、出力指標に応じて算出された開度を大気温度により補正することで、大気温度によらず、過回転リスクに応じた所望の質量流量の抽気空気を圧縮機3から排出することができる。
【0074】
他の実施形態に係るガスタービン1の制御方法は、ガスタービン1の高温部の温度測定値に対応した調整弁10の要求開度と、出力指標に基づいて決定された調整弁10の開度と、のうち最小開度を選択するステップを備える。
この方法によれば、ガスタービン1の運転に際して最も優先すべき事項の一つである高温部の冷却(例えばタービン翼の冷却)に必要な空気流量を確保した上で、過回転および失火のリスクを低減することができる。
【0075】
上述した何れかの実施形態において、複数の調整弁10の各々の開閉タイミング及び開度を他の調整弁10とは独立して制御してもよい。
この方法によれば、調整弁10が複数設けられる場合、それぞれの調整弁10の開閉タイミング及び開度が他の調整弁10とは独立して制御されるので、ガスタービン1の負荷遮断時の対応によるガスタービン1の運転への影響を最小限に抑えることができる。
【0076】
上述したように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、ガスタービン1の負荷遮断時に調整弁10を開くことで、圧縮機3からの抽気空気の流量が増加するので、燃焼器4に供給される圧縮空気の流量が減少する。これにより、燃焼器4における燃空比が高くなり、過回転を抑制しながら燃焼器4での失火を防止できる。
また、ガスタービン1の負荷遮断直前におけるガスタービン出力と相関のある指標に基づいて調整弁10の開度を制御するようにしたので、ガスタービン1の過回転のリスクの大きさに応じて調整弁10の開度制御を適切に行うことができる。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態では、発電用ガスタービンプラント等において発電用に用いられるガスタービン1について具体的に説明したが、ガスタービン1の用途はこれに限定されるものではなく、他のプラントに適用されてもよいし、あるいはガスタービン単独で運用されてもよい。
【0078】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。