(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802008
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20201207BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20201207BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H04N7/18 J
E02F9/26 C
B60R1/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-164312(P2016-164312)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-33015(P2018-33015A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】今野 徹
【審査官】
鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/164712(WO,A1)
【文献】
特開2006−121587(JP,A)
【文献】
特開2007−104373(JP,A)
【文献】
特開2012−124610(JP,A)
【文献】
特開2003−091720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/00
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の周囲を撮影する複数の監視カメラと、
前記複数の監視カメラのそれぞれによって撮影された複数のカメラ画像を合成して合成俯瞰画像を生成し、そしてまた1以上の区画ラインによって前記合成俯瞰画像を複数の領域に区画して、前記複数の領域のうち所定領域のサイズを拡大すると共に前記複数の領域のうち前記所定領域以外の領域のサイズを前記所定領域の拡大に応じて変更することにより前記合成俯瞰画像と同サイズの変換画像を生成する画像処理手段と、
前記合成俯瞰画像と前記変換画像とを選択的に表示するモニタとを備え、
前記合成俯瞰画像の中央部には前記機体の平面図形が配置され、
前記区画ラインは、前記平面図形の前後方向片側端部を通って左右方向に延びる第1区画ラインと、前記平面図形の左右方向片側端部を通って前後方向に延びる第2区画ラインとから構成され、
前記所定領域は前記平面図形を含む領域である建設機械。
【請求項2】
前記機体の左前部分にはキャブが配置され、前記第1区画ラインは前記平面図形の前側端部を通り、前記第2区画ラインは前記平面図形の左側端部を通る、請求項1記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の周囲を撮影する複数の監視カメラと、各監視カメラによって撮影されたカメラ画像を表示するモニタとを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、下部走行体及び下部走行体に搭載された上部旋回体から構成される機体と、上部旋回体に装着された作業腕装置とを備える。運転員が搭乗するキャブは、上部旋回体の左前部分に配置されることが一般的であるので、運転員は、機体の前方及び機体の左側方については比較的広い範囲を視認することができる一方、機体の後方及び機体の右側方についてはほとんど視認することができない。このため、近年の油圧ショベルには、機体の後方を撮影する後方監視カメラを機体の後部に備えると共に、機体の右側方を撮影する右側方監視カメラを機体の右側部に備え、各監視カメラによって撮影されたカメラ画像がキャブ内のモニタに表示されるものが存在する。これによって運転員は、機体の後方及び機体の右側方に障害物や他の作業員等が存在するか否か等の安全確認をモニタを通じて行うことができる。また、カメラ画像のモニタ表示については、各カメラ画像がそのままモニタに並べて表示されるもののほか、各カメラ画像を合成することにより機体の上方から機体周囲を俯瞰した合成俯瞰画像がモニタに表示されるものが存在する(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−74929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機体周囲の画像(特に機体周囲の合成俯瞰画像)がモニタに表示される建設機械では、障害物や他の作業員等をモニタのカメラ画像から運転員が確実に認識できるようにすることが課題となっている。この課題を解決するためには、従来よりも大型のモニタを用いてカメラ画像をモニタに大きく表示することが考えられる。しかし、キャブ内のモニタは運転席の前方に配置されるので、モニタを大型化すると運転員の前方視認性が悪化する懸念があり、モニタの大型化には限界がある。
【0005】
他方、特許文献1には、合成俯瞰画像のうち任意の領域のみが拡大されてモニタに表示される技術が開示されている。しかし、特許文献1に開示された技術では、合成俯瞰画像のうち任意の領域以外の領域に障害物や他の作業員等が存在するか否かを、任意の領域のみが拡大された拡大表示からでは運転員は認識することはできない。また、特許文献1に開示された技術では、拡大表示又は拡大表示の解除のために運転員が手動でモニタを操作することを要するので、拡大表示又は拡大表示の解除のたびに運転員は操作レバーから手を離さなければならず、したがって作業性に劣る。
【0006】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、モニタを大型化することなく、機体の周囲に障害物や他の作業員等が存在するか否かを運転員が確実に認識することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下の建設機械である。すなわち、機体の周囲を撮影する複数の監視カメラと、前記複数の監視カメラのそれぞれによって撮影された複数のカメラ画像を合成して合成俯瞰画像を生成し、そしてまた1以上の区画ラインによって前記合成俯瞰画像を複数の領域に区画して、前記複数の領域のうち所定領域のサイズを拡大すると共に前記複数の領域のうち前記所定領域以外の領域のサイズを前記所定領域の拡大に応じて変更することにより前記合成俯瞰画像と同サイズの変換画像を生成する画像処理手段と、前記合成俯瞰画像と前記変換画像とを選択的に表示するモニタとを備え
、前記合成俯瞰画像の中央部には前記機体の平面図形が配置され、前記区画ラインは、前記平面図形の前後方向片側端部を通って左右方向に延びる第1区画ラインと、前記平面図形の左右方向片側端部を通って前後方向に延びる第2区画ラインとから構成され、前記所定領域は前記平面図形を含む領域である建設機械である。
【0008】
前記機体の左前部分にはキャブが配置され、前記第1区画ラインは前記平面図形の前側端部を通り、前記第2区画ラインは前記平面図形の左側端部を通るのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明が提供する建設機械では、所定領域が拡大された変換画像がモニタに表示されることによって、モニタを大型化することなく、変換画像において拡大された所定領域に相当する実際の作業領域に障害物や他の作業員等が存在するか否かを運転員が確実に認識することができる。また本発明の建設機械では、サイズが変更されているものの所定領域以外の領域も変換画像に含まれているので、変換画像において所定領域以外の領域に相当する実際の作業領域についても障害物や他の作業員等が存在するか否かを運転員が認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に従って構成された油圧ショベルの側面図。
【
図2】
図1に示す油圧ショベルの平面図(作業腕装置を省略してある。)。
【
図4】
図1に示す油圧ショベルの電気的構成の一部を示すブロック図。
【
図5】(a)合成俯瞰画像を示す模式図、(b)変換画像を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された建設機械の実施形態について、代表的な建設機械である油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1において全体を符号2で示す油圧ショベルは、下部走行体4及び下部走行体4に旋回自在に搭載された上部旋回体6から構成される機体8と、上部旋回体6に回動自在に装着された作業腕装置10とを備える。作業腕装置10は、ブーム12、アーム14及び作業具16を含む。ブーム12の基端は上部旋回体6の前部に、アーム14の基端はブーム12の先端に、作業具16はアーム14の先端にそれぞれ回動自在に連結されている。作業腕装置10はさらに、ブーム12を回動させるブームシリンダ18と、アーム14を回動させるアームシリンダ20と、作業具16を回動させる作業具シリンダ22とを含む。
【0013】
図1及び
図2を参照して説明する。上部旋回体6は、上部旋回体6の左前部分に配置されたキャブ24と、キャブ24の後方に配置された機器収容室26と、機器収容室26の後方に配置されたカウンタウエイト28とを含む。また、上部旋回体6には機体8の周囲を撮影する複数の監視カメラが装着されている。図示の実施形態では
図2に示すとおり、機体8の周囲を撮影する複数の監視カメラは、キャブ24の右前下端に装着された前方監視カメラ30と、カウンタウエイト28の左右方向中央における後上端に装着された後方監視カメラ32と、上部旋回体6の前後方向中央における右端に装着された右側方監視カメラ34と、上部旋回体6の前後方向中央における左端に装着された左側方監視カメラ36とから構成されている。機体8の前方を撮影する前方監視カメラ30が撮影する範囲は
図2に符号Fで示す領域であり、機体8の後方を撮影する後方監視カメラ32が撮影する範囲は
図2に符号B示す領域であり、機体8の右側方を撮影する右側方監視カメラ34が撮影する範囲は
図2に符号Rで示す領域であり、機体8の左側方を撮影する左側方監視カメラ36が撮影する範囲は
図2に符号Lで示す領域である。各領域F,B,R,Lは上部旋回体6の周縁及び
図2に示す点線で区画される領域であるが、各監視カメラ30,32,34,36が撮影する範囲(各領域F,B,R,L)は互いに重複してもよい。なお、本明細書における前後方向及び左右方向は、
図1及び
図2に示すキャブ24内に搭乗した運転員から見た前後方向及び左右方向である。
【0014】
図3に示すとおり、キャブ24内には運転員用の座席38が設置されている。座席38の左右両側には、前後方向及び左右方向からなる十字方向を含む360°全方向に揺動自在な一対のジョイスティック40が配置されている。座席38の前方には、前後方向に揺動自在な一対の走行レバー42が配置されている。座席38の右前方には、各種画像を表示するモニタ44が配置されている。モニタ44の画面46には、各監視カメラ30,32,34,36によって撮影されたカメラ画像に後述する画像処理手段50が画像処理を施した処理画像(後述する合成俯瞰画像52及び変換画像60)と、燃料残量、作動油温度及びエンジン冷却水温度等の機械情報画像と、油圧ショベル2の保守点検の際に点検員が使用する保守点検用の操作画像とが選択的に表示される。画面46の下方には、画面46に表示される画像を操作するための複数個のスイッチ48が配置されている。
【0015】
本発明に従って構成された油圧ショベル2は、各監視カメラ30,32,34,36によって撮影された各カメラ画像に画像処理を施す画像処理手段50を備えるのが重要である。
図4に示すとおり、コンピュータから構成され得る画像処理手段50は、各監視カメラ30,32,34,36に電気的に接続され、各監視カメラ30,32,34,36によって撮影された各カメラ画像の画像情報が各監視カメラ30,32,34,36から画像処理手段50に入力される。また、画像処理手段50はキャブ24内のモニタ44にも電気的に接続され、各監視カメラ30,32,34,36によって撮影された各カメラ画像に画像処理を施した画像情報が画像処理手段50からモニタ44に出力される。
【0016】
画像処理手段50が実行する画像処理のステップを説明すると、まず画像処理手段50は、各監視カメラ30,32,34,36によって撮影された各カメラ画像を合成することにより、
図5に示すとおり、機体8の上方から機体8の周囲を俯瞰した合成俯瞰画像52を生成する。画像処理手段50にはあらかじめ機体8の平面図形54が記憶されており、合成俯瞰画像52の中央部には機体8の平面図形54が配置される。
【0017】
次いで画像処理手段50は、1以上の区画ラインによって合成俯瞰画像52を複数の領域に区画する。区画ラインは、平面図形54の前後方向片側端部を通って左右方向に延びる第1区画ラインと、平面図形54の左右方向片側端部を通って前後方向に延びる第2区画ラインとから構成されているのが好ましい。図示の実施形態では
図5(a)に示すとおり、第1区画ライン56は平面図形54の前側端部を通って左右方向に延びており、第2区画ライン58は平面図形54の左側端部を通って前後方向に延びている。そして合成俯瞰画像52は、第1区画ライン56及び第2区画ライン58によって、第1領域Aと、第2領域Bと、第3領域Cと、第4領域Dとに区画されている。
図5を参照することによって理解されるとおり、第4領域Dは、平面図形54を含むと共に、運転員の死角となる機体8の後方及び機体8の右側方を含む。
【0018】
次いで画像処理手段50は、複数の領域のうち所定領域のサイズを拡大すると共に、複数の領域のうち所定領域以外の領域のサイズを所定領域の拡大に応じて変更することにより合成俯瞰画像52と同サイズの変換画像を生成する。図示の実施形態では、画像処理手段50は、第4領域Dのサイズを拡大すると共に、第4領域D以外の領域のサイズ(すなわち、第1領域Aのサイズ、第2領域Bのサイズ及び第3領域Cのサイズ)を第4領域Dの拡大に応じて変更することにより、合成俯瞰画像52と同サイズの変換画像60を生成する。詳述すると、合成俯瞰画像52の第4領域Dは、前後方向のサイズ及び左右方向のサイズが共に拡大され、変換画像60の第4領域D’に変更されている。他方、合成俯瞰画像52の第1領域Aは、第4領域Dの拡大に応じて前後方向のサイズ及び左右方向のサイズが共に縮小され、変換画像60の第1領域A’に変更されている。また、合成俯瞰画像52の第2領域Bは、第4領域Dの拡大に応じて前後方向のサイズが縮小されると共に左右方向のサイズが拡大され、変換画像60の第2領域B’に変更されている。また、合成俯瞰画像52の第3領域Cは、第4領域Dの拡大に応じて前後方向のサイズが拡大されると共に左右方向のサイズが縮小され、変換画像60の第3領域C’に変更されている。
【0019】
上述のとおり、本発明に従って構成された油圧ショベル2では、画像処理手段50が、各監視カメラ30,32,34,36によって撮影されたカメラ画像に画像処理を施して、合成俯瞰画像52及び変換画像60を生成する。合成俯瞰画像52と変換画像60とは、たとえばモニタ44のスイッチ48が操作されることにより、選択的にモニタ44の画面46に表示される。合成俯瞰画像52又は変換画像60が画面46に表示される際は、平面図形54の上部旋回体の向きは常に一定であり、すなわち、平面図形54のキャブは常に画面46の上側に位置し、平面図形54のカウンタウエイトは常に画面46の下側に位置する。また、実際の下部走行体4に対して実際の上部旋回体6が旋回されると、画面46に表示された合成俯瞰画像52又は変換画像60において、平面図形54の上部旋回体に対して平面図形54の下部走行体が回転される。
【0020】
図示の実施形態では、合成俯瞰画像52の第4領域DをD’に拡大した変換画像60がモニタ44の画面46に表示されることによって、モニタ44を大型化することなく、変換画像60において拡大された第4領域D’に相当する実際の作業領域(すなわち、運転員の死角となる機体8の後方及び機体8の右側方)に障害物や他の作業員等が存在するか否かを運転員が確実に認識することができる。また図示の実施形態では、サイズが変更されているものの、第4領域D’以外の領域(第1領域A’、第2領域B’及び第3領域C’)も変換画像60に含まれているので、変換画像60において第4領域D’以外の領域に相当する実際の作業領域についても障害物や他の作業員等が存在するか否かを運転員が認識することができる。このように、機体8の周囲を俯瞰した合成俯瞰画像52と同一の領域を変換画像60が含むので、運転員は変換画像60によって運転員の死角となる領域の安全確認だけでなく機体8の周囲の安全確認も行うことができる。したがって図示の実施形態では、油圧ショベル2による作業中に合成俯瞰画像と拡大画像の表示を運転員が切り換える必要がなく、運転員はジョイスティック40や走行レバー42から手を離さずに機体8の周囲の安全確認を行うことができるので、作業性の向上が図られる。また図示の実施形態では、合成俯瞰画像52と変換画像60とを作業現場の状況や運転員の好みに応じて切り換えることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
2:油圧ショベル(建設機械)
8:機体
24:キャブ
30:前方監視カメラ
32:後方監視カメラ
34:右側方監視カメラ
36:左側方監視カメラ
44:モニタ
50:画像処理手段
52:合成俯瞰画像
54:平面図形
56:第1区画ライン
58:第2区画ライン
60:変換画像
A:合成俯瞰画像の第1領域
B:合成俯瞰画像の第2領域
C:合成俯瞰画像の第3領域
D:合成俯瞰画像の第4領域
A’:変換画像の第1領域
B’:変換画像の第2領域
C’:変換画像の第3領域
D’:変換画像の第4領域