(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802013
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】位置制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 3/12 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
G05D3/12 305V
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-173160(P2016-173160)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-41173(P2018-41173A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 憲之
【審査官】
山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−033206(JP,A)
【文献】
特開2009−087291(JP,A)
【文献】
特開2005−209139(JP,A)
【文献】
特開2004−110284(JP,A)
【文献】
特開平11−231941(JP,A)
【文献】
特開平09−093998(JP,A)
【文献】
特開昭62−171016(JP,A)
【文献】
特開2014−153842(JP,A)
【文献】
特開平06−150171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の位置を検出し、少なくとも検出位置と、前記検出位置に含まれる誤差の状態を示す状態情報と、を出力する1以上の位置検出器と、
前記検出位置と指令位置とに基づいて、モータをフィードバック制御する位置制御装置と、
を備え、
前記位置制御装置は、前記状態情報に応じて、前記フィードバック制御で使用する制御ゲインの値を変更する制御ゲイン切替部を有し、
各位置検出器は、前記検出位置の算出に使用する処理パラメータを補正することで内挿誤差を補正する自己補正機能を有しており、
前記状態情報は、前記自己補正機能の進行状態を示す情報であり、
前記制御ゲイン切替部は、前記自己補正機能が進行している場合は、前記自己補正機能が進行していない場合に比して、前記制御ゲインの値を高くする、
ことを特徴とする位置制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置制御システムであって、
前記各位置検出器は、前記処理パラメータの補正回数をカウントするカウンタを有しており、当該カウンタによるカウント値が規定の閾値以上の場合に、前記自己補正機能が進行していると判断する、ことを特徴とする位置制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の位置制御システムであって、
前記各位置検出器は、前記検出位置が増減しない状態が規定時間、継続した場合に、前記カウンタのカウント値をリセットする、ことを特徴とする位置制御システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の位置制御システムであって、
前記制御ゲイン切替部は、前記カウント値の増減に応じて、前記制御ゲインの値を段階的に増減する、ことを特徴とする位置制御システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の位置制御システムであって、
前記制御ゲイン切替部は、前記モータが停止状態になったタイミングで、前記制御ゲインの値を切り替える、ことを特徴とする位置制御システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の位置制御システムであって、
前記1以上の位置検出器は、モータの位置を検出する第1の位置検出器と、前記モータにより移動させられる制御対象物の位置を検出する第2の位置検出器と、を含み、
前記位置制御装置は、
前記第2の位置検出器の検出位置と位置指令との差分値と、位置比例ゲインと、に基づいて指令速度を算出する速度比例演算部と、
前記第1の位置検出器の検出位置から算出された検出速度と前記指令速度との差分値と、速度比例ゲインと、速度積分ゲインと、に基づいてトルク指令を算出するトルク指令演算部と、
を含み、
前記制御ゲイン切替部は、前記第1の位置検出器の状態情報および前記第2の位置検出器の状態情報に基づいて、前記制御ゲインを変更する、
ことを特徴とする位置制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等に搭載される位置制御システムに関し、特に、位置検出器の検出値を基に、駆動系をフィードバック制御するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械に搭載される位置制御システムの概略構成について、図を参照して説明する。
図7は、従来の一般的な送り軸の位置制御システムの概略構成を示すブロック図である。位置制御装置116は、上位装置たる位置指令演算器101からの指令位置Pcと、位置検出器109から出力されるモータ検出位置Pmとの差分を、減算器102にて算出し、位置誤差Pdifとする。速度指令演算器103は、位置誤差Pdifを、位置比例ゲインKpで増幅し、指令速度Vcを出力する。一方で、位置検出器109のモータ検出位置Pmを微分器115にて微分し、モータ検出速度Vmとし、指令速度Vcとの差分を減算器104にて算出し、速度偏差とする。トルク指令演算器105は、この速度偏差を速度比例ゲインPvで比例演算して、速度偏差比例成分を算出する。また、トルク指令演算器106は、速度偏差を速度積分ゲインIvで積分演算して、速度偏差積分成分を算出する。算出された速度偏差比例成分および速度偏差積分成分は、加算器107にて加算され、トルク指令Tcとなる。電流制御部108は、トルク指令Tcに対して各種フィルタリング処理をした後、モータ110を制御するための電流を送出する。
【0003】
図7に示す位置制御システムでは、制御対象物114は、ボールねじ112の機構によって駆動されており、ボールねじ112は、カップリング111を介してモータ110に結合されている。各種制御ゲインKp、Pv、Ivを高いレベルに設定すれば、フィードバック制御の応答性、追従性が良くなり、制御対象物114の動的精度が向上する。しかし、各種制御ゲインKp、Pv、Ivを高いレベルにし過ぎると、工作機械としての加工時の振動外乱やボールねじ112の機構の固有振動数による振動、位置検出器109の固有誤差(内挿誤差等)などの要因により、フィードバック制御系が発振しやすくなってしまう。
【0004】
ボールねじ112の機構の固有振動数に対しては、その周波数帯でフィードバック制御系の感度を下げるように、電流制御部108内のフィルタ(ノッチフィルタ)を設定すればよい。これにより、ボールねじ112の機構の固有振動数の周波数帯以外の周波数帯域では、各種制御ゲインKp、Pv、Ivを高いレベルに維持することができる。しかし、位置検出器109の固有誤差(内挿誤差等)が原因で発生するフィードバック制御系の発振については、回転速度によって固有誤差が発生する周波数が変化するため、ノッチフィルタでその影響を除去することができない。
【0005】
そこで、近年の位置検出器の中には、特許文献1,2に示すように、駆動状態において、自身の内挿誤差を自己補正するものがある。特許文献1,2には、従来技術における課題として、次のことが述べられている。位置検出器の信号オフセット誤差等は、経時変化や設置環境によって変動する。位置検出器の信号オフセット等の変動に起因した内挿誤差によって発生する速度リップルが、機械共振周波数と一致する条件で、共振による異音が発生する。更には、フィードバック制御上の速度フィードバックのループ利得(Pv、Ivに相当)に比例して、この異音現象も大きくなるため、ループ利得を上げられず、機械の動的性能を低下させる要因となっている。
【0006】
その課題を解決するために、前述したごとく、これらの位置検出器は、駆動状態において、自身の内挿誤差を自己補正している。補正にあっては、駆動状態で変化する検出信号のオフセット成分を、フィルタ処理や平均化処理によって算出、除去する構成のため、初期化起動時のオフセット補正値に対し、経時変化や環境変化で変動したオフセット成分を補正するまでに、一定の時間を要することになる。あるいは、モータに内蔵された位置検出器が、駆動状態が長らく継続して高温環境となっていた場合には、高温環境下で最適に自己補正されていることとなる。この状態で、オペレータ(工作機械の操作者)が休憩等のため、非常停止ボタンなどを押下し、一定時間放置された場合を想定すると、モータは徐々にクールダウンし、位置検出器の雰囲気環境も常温に近くなる。その間は、位置検出器は駆動状態でないため、自己補正機能は働かず、オフセット補正値は最後に補正したデータが保持されたままとなる。そして、モータの駆動を再開すべく非常停止を解除すると、常温環境にもかかわらず、オフセット補正値は高温環境下で最適なものから再開することになる。
【0007】
他方、各種制御ゲインKp、Pv、Ivを決定する所謂サーボ調整は、調整する軸を駆動させながら実施するのが一般的であり、位置検出器109の内挿誤差を自己補正する機能が働いた状態で実施されることとなる。すると、位置検出器109の固有誤差が少ない状態となるために、各種制御ゲインKp、Pv、Ivが高く設定され易くなる。或いは、調整軸を駆動させながらサーボ調整する方法に変化はないものの、位置検出器109の自己補正機能をOFFし、位置検出器109の内挿誤差等の固有誤差が大きい状態で、敢えてサーボ調整を行うこともある。これは、内挿誤差によって発生する速度リップルが大きい状態でも、機械共振周波数と一致する条件での共振による異音を発生させない程度に、各種制御ゲインKp、Pv、Ivを低く設定しようとするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−33206号公報
【特許文献2】特開2003−14440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した背景技術では、位置検出器が駆動状態で自己補正され、内挿誤差等の固有誤差が小さくなっている時にサーボ調整されると、各種制御ゲインが高く設定されることを説明した。この場合、初期化起動後に位置検出器の自己補正が効き始めるまでの間は、位置検出器の内挿誤差等が大きい状態であるために、機械共振による異音が発生する課題があった。さらには、初期化起動後で自己補正が十分に有効となった状態であっても、駆動状態が長く継続して位置検出器の雰囲気環境温度が暖機されて高くなった際に、オペレータが休憩等のために非常停止した場合にも同様の現象が発生する。つまり、非常停止により、クールダウンされ位置検出器の雰囲気環境温度も常温に近くなるが、位置検出器は駆動状態でないため、自己補正機能による補正値は高い温度で補正された値のままとなっており、オペレータが非常停止を解除して駆動させようとした時には、補正値がずれていることとなり、機械共振による異音が発生してしまっていた。或いは、上述のように過渡的に自己補正が効いていないことを想定し、内挿誤差によって発生する速度リップルが大きい状態であっても、機械共振周波数と一致する条件での共振による異音を発生させないということを優先して、各種制御ゲインを低く設定しまうこともあった。この場合は、フィードバック制御の応答性、追従性が悪くなり、モータに結合したボールねじ機構によって駆動される制御対象の動的精度が低下してしまうことになっていた。
【0010】
以上の課題を踏まえ、本発明では、位置検出器の誤差要因による機械共振での異音を発生させることなく、且つ、位置制御装置のフィードバック制御上の各種制御ゲインを低下させることなく、制御対象の動的性能を向上させることができる位置制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の位置制御システムは、対象物の位置を検出し、少なくとも検出位置と、前記検出位置に含まれる誤差の状態を示す状態情報と、を出力する1以上の位置検出器と、前記検出位置と指令位置とに基づいて、モータをフィードバック制御する位置制御装置と、を備え、前記位置制御装置は、前記状態情報に応じて、前記フィードバック制御で使用する制御ゲインの値を変更する制御ゲイン切替部を有
し、各位置検出器は、前記検出位置の算出に使用する処理パラメータを補正することで内挿誤差を補正する自己補正機能を有しており、前記状態情報は、前記自己補正機能の進行状態を示す情報であり、前記制御ゲイン切替部は、前記自己補正機能が進行している場合は、前記自己補正機能が進行していない場合に比して、前記制御ゲインの値を高くする、ことを特徴とする。
【0013】
この場合、前記各位置検出器は、前記処理パラメータの補正回数をカウントするカウンタを有しており、当該カウンタによるカウント値が規定の閾値以上の場合に、前記自己補正機能が進行していると判断する、ことが望ましい。
【0014】
また、この場合、前記各位置検出器は、前記検出位置が増減しない状態が規定時間、継続した場合に、前記カウンタのカウント値をリセットする、ことも望ましい。
【0015】
また、前記制御ゲイン切替部は、前記カウント値の増減に応じて、前記制御ゲインの値を段階的に増減する、ことも望ましい。
【0016】
他の好適な態様では、前記制御ゲイン切替部は、前記モータが停止状態になったタイミングで、前記制御ゲインの値を切り替える。
【0017】
他の好適な態様では、前記1以上の位置検出器は、モータの位置を検出する第1の位置検出器と、前記モータにより移動させられる制御対象物の位置を検出する第2の位置検出器と、を含み、前記位置制御装置は、前記第2の位置検出器の検出位置と位置指令との差分値と、位置比例ゲインと、に基づいて指令速度を算出する速度比例演算部と、前記第1の位置検出器の検出位置から算出された検出速度と前記指令速度との差分値と、速度比例ゲインと、速度積分ゲインと、に基づいてトルク指令を算出するトルク指令演算部と、を含み、前記制御ゲイン切替部は、前記第1の位置検出器の状態情報および前記第2の位置検出器の状態情報に基づいて、前記制御ゲインを変更する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の位置制御システムによれば、位置検出器の誤差の状況に合わせて、位置制御装置のフィードバック制御上の各種制御ゲインを切り替えることができるので、機械共振による異音の発生を抑制しつつも、各種制御ゲインを最適に維持することができる。異音が発生しにくいということは、工作機械等の機械を使用するオペレータの作業環境の向上や、異音(振動)による機械各要素や工具寿命の低下を防止するといった効果を奏する。更に、各種制御ゲインを低下させることなく適した状態を維持できるため、送り駆動系の動的性能が向上し、例えば、工作機械であれば加工物の仕上がり寸法が良くなる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態である位置制御システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の位置検出器109から出力されるシリアル通信データフレームの一例を示す図である。
【
図3】位置検出ステータス情報の各ビットの内容と値とを示す表である。
【
図4】位置検出器の内部処理の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図3とは別の位置検出ステータス情報の各ビットの内容と値とを示す表である。
【
図6】
図1とは別の位置制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図7】従来の位置制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施する上で、最良の形態を、以下、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態である位置制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、
図7と同一構成要素には同一符号を付す。また、
図7と同様の処理については、説明を省略する。位置検出器109からは、後述するように、位置データ(Pm)と、位置検出ステータス(ST)を含む情報(以下「検出結果データDR」という)が出力される。位置検出器109から出力される検出結果データDRは、
図7で説明した減算器102と微分器115へ送出されるのとは別に、制御ゲイン切替部117へも送られる。制御ゲイン切替部117では、位置検出器109から出力される検出結果データDRのデータ内にある特定の情報をもとに、速度指令演算器103やトルク指令演算器105,106で用いる制御ゲインKp,Pv,IVを切り替える指令を行う。
【0021】
図2は、位置検出器109から出力される検出結果データDRを構成するシリアル通信データフレームの一例を示す図である。位置検出器109から出力される通信データフレーム(検出結果データDR)は、先頭から、シンクコード(SYNC)、スタートフラグ(SF)、ディスティネーションアドレス(DA)、ソースアドレス(SA)、位置データ(Pm)、位置検出ステータス(ST)、巡回冗長検査(CRC)コード、エンドフラグ(EF)の順で構成してある。これらの構成要素のうち、位置データ(Pm)は、モータ検出位置Pmに相当するデータである。また、位置検出ステータス(ST)は、位置検出器109自身の検出状態などを示す情報である。
【0022】
図3は、位置検出ステータス(ST)情報の各ビットの内容と値とを示す表である。本実施例では、位置検出ステータス(ST)情報は、2バイト長で示してあり、検出状態などを16の各ビットに対し割り当てている。ただし、リザーブと表示してあるビットは、予備であり、特に何らかの検出状態を意味するものでなく、常に0(=OFF)となっている。例えば、温度状態に異変をきたし、そのレベルがワーニング状態にある時、bit10,bit14が1(=ON)となるため、位置検出ステータス(ST)を4桁の16進数で表示すると、h’4400となる。
【0023】
ここで、本実施形態の位置検出器109は、自身の内挿誤差を補正する自己補正機能を有している。bit0に割り当てた自己補正状態とは、その自己補正機能の実行状態を示すフラグである。bit0は、システム起動時は0(=OFF)で起動し、その後の駆動により、自己補正機能が進行した段階で1(=ON)のステータスに移行する。換言すれば、この位置検出ステータス(ST)のbit0は、検出位置Pmに含まれる誤差の状態を示す状態情報として機能する。制御ゲイン切替部117は、位置検出器109から出力される検出結果データDRのデータ内にある特定の情報をもとに、速度指令演算器103やトルク指令演算器105,106へ制御ゲインを切り替える指令を行うことを前述したが、ここでいう「特定の情報」とは、位置検出ステータス(ST)のbit0の値(状態情報)のことである。制御ゲイン切替部117は、位置検出ステータス(ST)のbit0が1(=ON)となるのを検知したら、制御ゲインの値を、bit0が0(=OFF)の場合に比して、高くする。より具体的に説明すると、制御ゲイン切替部117は、位置検出器109の自己補正機能が進行していない状態で使用する第一制御ゲインKp_1、Pv_1、Iv_1と、自己補正機能が進行した状態で使用する第二制御ゲインKp_2、Pv_2、Iv_2と、を記憶している。第二制御ゲインKp_2、Pv_2、Iv_2は、第一制御ゲインKp_1、Pv_1、Iv_1よりも高く設定されている(Kp_2>Kp_1,Pv_2>Pv_1,Iv_2>Iv_1)。制御ゲイン切替部117は、各種制御ゲインKp,Pv,Ivとして、位置検出ステータス(ST)のbit0が「0」のときは、第一制御ゲインKp_1、Pv_1、Iv_1を設定し、bit0が「1」のときは、第二制御ゲインKp_2、Pv_2、Iv_2を設定する。
【0024】
次に、位置検出器109が自己補正の進行状態(実行状態)を位置検出ステータス(ST)のbit0へ反映する手段について説明する。
図4は、本発明の位置検出器109の内部処理の一例を示すブロック図である。
図4に示す構成における自己補正機能自体は、特許文献1の
図1、及び、
図2にて示されたデジタル低域通過フィルタを用いて、検出信号DS,DCの直流成分(オフセット値)を除去する技術と類似のものであり、説明を省略する。デジタル低域通過フィルタ404a,404bは、検出信号DS,DCのオフセット成分を算出する。このデジタル低域通過フィルタ404a,404bで算出されたオフセット成分は、現在の速度が、所定の有効範囲にあるときにのみ有効に利用できる。なお、この有効範囲は、デジタル低域通過フィルタ404a,404bのカットオフ周波数およびサンプル周波数から定まる。オフセット設定手段410は、現在の速度が、所定の有効範囲内であるか否かを判断する。現在の速度が、所定の有効範囲内である場合、オフセット設定手段410は、記憶器405a,405bに、設定信号SETを出力する。記憶器405a,405bは、オフセット値SOF,COFを記憶しているが、SET信号を受信した場合は、デジタル低域通過フィルタ404a,404bにて算出されたオフセット値を、新たなオフセット値SOF,COFとして更新する。
【0025】
以上のオフセットを補正する自己補正機能に対し、本発明の位置検出器109では、カウント演算手段411を追加している。カウント演算手段411では、オフセット設定手段410から出力される設定信号SETの出力回数、すなわち、オフセット値SOF,COFの補正指令の出力回数をカウントする。また、カウント演算手段411には、オフセット値SOF,COFの補正回数の適正値を記憶する記憶器が内蔵されている。カウント演算手段411では、設定信号SETの出力回数のカウント値と、適正値とを比較し、カウント値が適正値に達した際に、位置検出ステータス(ST)のbit0を1(=ON)にするON信号を出力する。通信データフレーム生成手段413では、カウント演算手段411からのbit0のON信号を受信したら、シリアル通信データフレーム内の位置検出ステータス情報のbit0を1(=ON)としたシリアル通信データフレームを生成し、送・受信手段414へ送信する。位置検出ステータス(ST)のbit0が1(=ON)となったことを、制御ゲイン切替部117が検知して以降の処理は、前述の通りである。なお、オフセット値SOF,COFの補正回数の適正値、つまり、何回オフセット値SOF,COFを補正するのが適正なのかについては、本発明を使用する側で、自由に決定されるものである。例えば、位置検出器109のオフセット成分による最大誤差を想定し、駆動状態でオフセット値SOF,COFを補正する自己補正機能が何回働けば、実使用レベルとして支障なくなるか、との観点で、事前に評価、実験して求めた回数を設定してもよい。
【0026】
位置検出器109は、さらに、補正ステータスリセット手段412を有している。補正ステータスリセット手段412は、タイマー機能を内蔵している。また、補正ステータスリセット手段412は、内挿手段407から送出される位置データPOSの増減を監視し、モータ110が停止状態か否かが判断できる。なお、位置データPOSは、検出位置Pmとなるものである。補正ステータスリセット手段412は、位置データPOSが増減しない状態、すなわち、モータ110の停止状態の継続時間を常に監視する。補正ステータスリセット手段412は、モータ110の停止状態が一定時間継続した際に、カウント演算手段(CNT)411へ設定信号SETのカウント回数をリセットするリセット信号RSTaを指令し、加えて、通信データフレーム生成手段413へも自己補正状態の補正済みなどをリセットするリセット信号RSTbを指令する。カウント演算手段(CNT)411は、リセット信号RSTaを指令されたら、それまでにカウントしていた設定信号SETのカウント回数を0にする。通信データフレーム生成手段413は、リセット信号RSTbを指令されたら、自己補正状態の補正済みなどを意味するbit0などを0にする。制御ゲイン切替部117では、位置検出ステータス(ST)の自己補正状態を示す特定のビットが0(=OFF)となったことを確認したら、制御ゲインを初期状態とする指令を速度指令演算器103やトルク指令演算器105、106へ行うものである。
【0027】
補正ステータスリセット手段412にて、モータ110の停止状態がどの程度の時間継続したら、リセット信号RSTa,RSTbを指令するか、については、本発明の技術を利用する側で適宜決めてよいものである。好適には、次のような観点でその時間を決めるとよい。モータ110の運転により、モータ110内の銅損によるコイルエンド部の発熱等が、位置検出器109の周辺雰囲気温度を高温にした結果、その雰囲気温度で駆動される条件において、位置検出器109が最適な自己補正状態となっている場合がある。この状態から、非常停止状態が長く続き、常温と変わらないようになるまでの時間を、事前の実験などで確認し、その時間とするものである。モータ110のサイズや、工作機械等に装着されるモータ110の周辺環境などによっても、クールダウンするまでの時間が変化するため、より正確に確認したい場合には、より実態に即した状態で確認されることを推奨するものである。
【0028】
次に、他の実施形態について説明する。
図5は、位置検出ステータス情報の各ビットの内容と値とを示す表である。本実施例では、位置検出ステータス(ST)情報は、
図3と同様に2バイト長で示してあり、検出状態などを16の各ビットに対し割り当てている。カウント演算手段411には、適正値が複数、具体的には、10回,20回,30回,・・・,70回のように7段階分記憶されており、設定信号SETのカウント数が10回に達した際、bit0を1(=ON)にするON信号を出力する。更に、設定信号SETのカウント数が20回に達した際、bit1を1(=ON)にするON信号とbit0を0(=OFF)にするOFF信号とを出力する。同じく、30回に達した際、bit0を1(=ON)にするON信号を出力する。この時、bit1は1(=ON)したままである。同40回に達した際、bit2を1(=ON)にするON信号と、bit0,bit1を0(=OFF)にするOFF信号とを出力する。同様に続けた場合、同70回ではbit0,bit1,bit2はすべて1(=ON)となる。つまり、bit0,bit1,bit2の3ビット分の情報でカウンタを形成し、8段階分(オール0を含む)の状態を表すよう構成してある。
【0029】
これに対し、制御ゲイン切替部117では、8段階分の制御ゲインを有しており、段階ごとに速度指令演算器103やトルク指令演算器105、106へ制御ゲインを切り替える指令を行う。好適には、段階が上がるごとに、より高い制御ゲインへ切り替えるものである。すなわち、制御ゲイン切替部117は、カウント値の増減に応じて、制御ゲインの値を段階的に増減する。また、設定信号SETのカウント回数に対する適正値などは、本発明を使用する側で自由に決められてよい。
【0030】
また、これまでの説明は、内挿誤差を自己補正する技術として、オフセット値SOF,COFを補正する技術のみを例示した。しかし、補正するパラメータは、オフセット値に限らず、検出位置算出に使用する処理パラメータであれば、他のパラメータでもよい。例えば、自己補正のために、オフセット値に替えて、または、加えて、位置検出器からの二相信号の振幅値(振幅比)や位相(位相差)を補正してもよい。オフセット値、振幅比、位相差を補正する場合、bit0に自己補正状態Aとして、オフセット成分を除去する自己補正状態を設定し、bit1に自己補正状態Bとして、振幅比修正の自己補正状態を設定し、bit2に自己補正状態Cとして、位相差修正の自己補正状態を設定する。bit1やbit2に、1(=ON)が設定される手段は、例えば、特許文献2の
図1に示される記憶器20,21(振幅比を記憶する記憶器および位相差を記憶する記憶器)への信号SET(振幅比および位相差の値更新を指令する信号)の回数をカウントする演算回路を別途追加し、その回数が夫々の適正値に達したら、bit1やbit2に1(=ON)をセットする指令を出力するようにする。そして、制御ゲイン切替部117では、bit0,bit1,bit2のON、或いは、OFFの状況に応じて、制御ゲインの切替指令を行う。本例では、bit0,bit1,bit2は、夫々、別の意味合いを有するが、適正な制御ゲインを段階的にカウントアップするよう切り替え可能としている。
【0031】
次に、他の実施形態について説明する。他の実施形態では、図示はしないが、
図1における微分器115が出力するモータ検出速度Vmを、制御ゲイン切替部117へも入力する。制御ゲイン切替部117では、モータ検出速度Vmが0、即ち、停止状態となったタイミングでのみ、制御ゲインの切替指令を行う。
【0032】
次に、他の実施形態について、
図6を参照して説明する。
図6は、他の位置制御装置の概略構成を示すシステムブロック図の一例であり、
図1と同一構成要素には同一符号を付す。また、
図1と同様の処理については、説明を省略する。この場合、モータ110の位置を検出する位置検出器109に加え、更に、制御対象物114の位置を検出する検出ヘッド118が設けられている。この場合、位置検出器109は、第1の位置検出器として、検出ヘッド118は、第2の位置検出器として機能する。
【0033】
位置検出器109から送出される検出結果データDRは、減算器102へ送られることなく、微分器115へ送られ、フィードバック制御上の速度ループにのみ組み込まれる。その代わり、第2の位置検出器たるリニアエンコーダの検出ヘッド118から送出される制御対象物の検出結果データDR2が、減算器102へ送られ、フィードバック制御上の位置ループに組み込まれる。他方で、この制御対象物の検出結果データDR2のデータは、制御ゲイン切替部117にも送られている。検出ヘッド118から出力されるシリアル通信データフレームも、
図2に一例として示したシリアル通信データフレームと同様に、位置検出ステータス(ST)情報を有しており、リニアエンコーダシステムとしての自己補正状態を表す特定のビットを割り当ててある。
【0034】
制御ゲイン切替部117では、基本的に、位置検出器109の自己補正状態がONとなった場合に、トルク指令演算器105、106へ制御ゲインPv,Ivの切替指令を行い、検出ヘッド118の自己補正状態がONとなった場合に、速度指令演算器103へ制御ゲインKpの切替指令を行うものである。ここで、位置検出器109の自己補正状態がONとなるタイミングと、検出ヘッド118の自己補正状態がONとなるタイミングとは、一致するとは限らない。そこで、制御ゲイン切替部117が行う上述の2通りの制御ゲイン切替指令のタイミングについては、位置検出器109と検出ヘッド118双方の自己補正がONとなってから、同時に2通りの制御ゲイン切替指令を行ってもよい。或いは、フィードバック制御の安定性の観点から、制御ゲインを高い値に切り替える際には、トルク指令演算器105,106への切替指令を先に行い、逆に、制御ゲインを初期状態に戻す等の低い値に切り替える際には、速度指令演算器103への切替指令を先に行ってもよい。
【0035】
以上、本発明の実施例による形態の数例を説明したが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではない。位置検出器109の自己補正状態のON、或いは、OFFをきっかけに、制御ゲインを切り替える例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、位置検出器109にサーミスタを内蔵してあり、位置検出器109自身の温度状態によって変化する内挿誤差のレベルを、サーミスタの出力値で判断し、位置検出ステータス(ST)の特定のビットに割り当て、制御ゲイン切替部117では、その特定のビット情報に基づいて、制御ゲインを切り替えるような構成であっても、本発明とすることができる。要するに、位置検出器109が、自身の内挿誤差の状態を自ら申告し、位置制御装置116側ではその状態に対して制御ゲインを切り替える構成とすれば、基本的な本発明の要件を満たすものである。
【符号の説明】
【0036】
101 位置指令演算器、102,104 減算器、103 速度指令演算器、105,106 トルク指令演算器、107 加算器、108 電流制御部、109 位置検出器、110 モータ、111 カップリング、112 ボールねじ、114 制御対象物、115 微分器、116 位置制御装置、117 制御ゲイン切替部、118 検出ヘッド、404a,404b デジタル低域通過フィルタ、405a,405b 記憶器、407 内挿手段、410 オフセット設定手段、411 カウント演算手段、412 補正ステータスリセット手段、413 通信データフレーム生成手段、414 受信手段。