(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二枚貝は摂食した栄養成分を全て消化、吸収するわけではなく、必要以上に摂食した栄養成分は、粘液により「偽糞」と呼ばれる固形物の状態にされて排出される。排出された偽糞は、海底に落ちた後、水生生物(例えば、カニ等の甲殻類や、小魚等の小動物や、ゴカイ等の底生生物)の餌となる。
特許文献1に記載された方法では、偽糞が過剰に排出された場合、海中(特に海底)に栄養成分が溜まって富栄養化が起こり、海中(特に海底)の環境を劣化させてしまうことが懸念される。また、特許文献2に記載された方法では、竹炭マットを敷設するための労力が必要となることや、波や海流の影響によって竹炭マットの位置がずれたり、たるんだりすることや、竹炭マットの上に浮遊物質や砂などが堆積した場合には、排泄物(偽糞)を効率的に吸着することができずにその効果が低減する等の問題がある。
したがって、本発明の目的は、水生生物を蝟集することができる粒体、及び、二枚貝からの排泄物(偽糞)を効率的に処理することができ、水域を浄化することができるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水生生物を蝟集するための成分を、多孔質の粒体に含浸させてなるコア体、および、該コア体の表面に形成された、水硬性組成物からなる被覆層を含む水生生物蝟集用粒体によれば、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] 水生生物を蝟集するための成分を、多孔質の粒体に含浸させてなるコア体、および、該コア体の表面に形成された、水硬性組成物からなる被覆層を含むことを特徴とする水生生物蝟集用粒体。
[2] 上記水生生物を蝟集するための成分が、アミノ酸、ペプチド、またはタンパク質である前記[1]に記載の水生生物蝟集用粒体。
[3] 上記コア体の粒度が50mm以下であり、かつ、上記被覆層の厚さが0.1〜10mmである前記[1]又は[2]に記載の水生生物蝟集用粒体。
【0007】
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水生生物蝟集用粒体、および、上記水生生物蝟集用粒体の近傍領域内に配置した二枚貝を含むことを特徴とする水域浄化システム。
[5] 上記二枚貝が、垂下手段によって水中に配置されている前記[4]に記載の水域浄化システム。
[6] 上記垂下手段が、垂下用支持体、および、上記二枚貝を上記垂下用支持体に固定するためのセメント系接着剤を含む前記[5]に記載の水域浄化システム。
[7] 上記二枚貝が、水底に配置されている前記[4]に記載の水域浄化システム。
[8] 上記二枚貝が、ホタテ貝、牡蠣、ムラサキイガイ、アコヤガイ、ハマグリ、シジミ、アサリまたはヒオウギ貝である前記[4]〜[7]のいずれかに記載の水域浄化システム。
[9] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水生生物蝟集用粒体、セメント、および水を含む、セメント組成物。
[10] 少なくとも表面形成部分が、前記[9]に記載のセメント組成物からなる、セメント質硬化体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水生生物蝟集用粒体によれば、水生生物を蝟集することができる。
また、本発明の水域浄化システムによれば、水生生物を蝟集することによって、二枚貝からの排泄物(偽糞)を効率的に処理して、水域を浄化し、水域の富栄養化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の水生生物蝟集用粒体について、
図1を参照にしながら詳しく説明する。
本発明の水生生物蝟集用粒体1は、水生生物を蝟集するための成分(以下、「蝟集成分」ともいう。)を、多孔質の粒体に含浸させてなるコア体2、および、該コア体の表面に形成された、水硬性組成物からなる被覆層3を含むものである。
蝟集成分とは、水生生物を蝟集することができる成分をいう。具来的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、トリプトファン、オルニチン等のアミノ酸や、これらのアミノ酸を構成成分として含む、ペプチドもしくはタンパク質等が挙げられる。
蝟集成分は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、例えば、2種以上の蝟集成分を含むものとして、煮汁等を用いることができる。
【0011】
多孔質の粒体としては、蝟集成分を含浸させることができる材料からなるものであればよく、無機質の材料と有機質の材料のいずれも使用することができる。
本発明では、多孔質の粒体を用いることで、蝟集成分の含浸可能量を増大させ、かつ、含浸に要する時間を短くすることができる。
無機質の材料としては、例えば、頁岩、軽石、火山性ゼオライト、珪藻土、シラス、バーミキュライト、炭酸カルシウム含有物質(石灰岩、貝殻、鶏卵の殻等)等やこれらの焼成物;オートクレーブにより水熱合成したケイ酸カルシウム化合物の粉砕品および破砕品;アルミニウム粉により発泡させたケイ酸カルシウム化合物の粉砕品および破砕品;真珠岩や黒曜石を粉砕した後に、焼成して発泡させた焼成物;煉瓦や陶磁器等の破砕物等が挙げられる。
有機質の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の合成樹脂を発泡させたもの;天然および人工ゴム;木質材料の破砕物等が挙げられる。
上記木質材料における木の種類は、特に限定されるものではない。また、木質材料として、木材の切削時に発生するおがくずや、合板作成時に発生する端切れ材や、建設廃材や、間伐などで発生する木材等の破砕物等を使用することができる。
【0012】
多孔質の粒体は、粒度(粒体が球状である場合は粒径、棒状の場合は長手寸法)を調整せずに使用してもよく、目的に応じて粒度が特定の範囲内となるように調整して使用してもよい。該粒度は、粒体の形状によっても異なるが、含浸を行う際に蝟集成分を粒体の内部にまで十分に浸漬させる観点からは、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。また、該粒度は、後述する成形を行う場合、成形の容易性の観点から、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
【0013】
多孔質の粒体に、蝟集成分を含浸させることで、多孔質の粒体の複数の孔から、蝟集成分が含浸し、内部に蝟集成分を有するコア体2を得ることができる。
多孔質の粒体に、蝟集成分を含浸させる方法としては、例えば、蝟集成分と水を含む液状物に上記粒体を一定時間浸漬する方法や、該液状物と上記粒体を、ミキサーを用いて混練する方法等が挙げられる。中でも、短時間で上記液状物を十分に浸漬させる観点から、ミキサーを用いて混練する方法が好ましい。
上記ミキサーについては特に限定されるものではなく、粒体の混合において一般的に使用されるミキサー(例えば、モルタルやコンクリートの練り混ぜに使用されるミキサー)を用いればよい。
具体的には、縦型ミキサー、横型ミキサー、ナウターミキサー、傾胴ミキサー、強制ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。縦型ミキサーとしては、例えば、ホバート社製の「ホバートミキサー」、ヘンシェル社製の「ヘンシェルミキサー」等が挙げられる。横型ミキサーとしては、例えば、レディゲ社製の「レディゲミキサー」等が挙げられる。
また、ペール缶等の容器に上記粒体と上記液状物を投入して、ハンドミキサー等を用いて混練して含浸させてもよい。
【0014】
蝟集成分と水を含む液状物は、上述の蝟集成分と水を、用途に応じて適宜配合割合を調整して混合してなる水溶液又は懸濁液である。該液状物として、食品加工業や水産加工業において排出される煮汁等を使用することも可能である。
また、上記液状物には、その他の成分として、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、ケイ素、硫黄等の、無機肥料の主要成分や、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルト、モリブデン等の、無機肥料の微量成分等が、水生生物の蝟集に影響のない範囲内の量で含まれていてもよい。
【0015】
上記液状物の配合量は、上記液状物の固形分濃度によっても異なるが、含浸後に粒体を成形することが容易であり、かつ、成形後のコア体2が崩壊しない観点から、上記粒体100質量部に対して、好ましくは10〜400質量部、より好ましくは50〜300質量部である。
【0016】
蝟集成分を含浸させた粒体を、そのまま本発明におけるコア体2として使用してもよいが、蝟集成分が十分に含浸された水生生物蝟集用粒体1を得る観点から、蝟集成分を含浸させた粒体を成形してなる成形物(成形造粒物)を、コア体2として使用することが好ましい。
上記成形物(成形造粒物)を製造する方法としては、転動造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒等の各種造粒方法を用いることができる。また、造粒に用いられる装置としては、パンペレタイザー、ミキサー、ディスクペレッター等を用いることができる。
また、成形を行う際に、必要に応じてバインダーを添加しても良い。
コア体2の粒度は、好ましくは0.1〜50mm、より好ましくは0.5〜20mm、特に好ましくは1〜15mmである。該粒度が0.1mm以上であれば、コア体に含浸される蝟集成分の量を増やすことができる。該粒度が50mm以下であれば、成形が容易になる。
【0017】
被覆層3を形成する水硬性組成物としては、無機系の材料が好ましく、例えば、セメント、石膏類等が挙げられる。上記セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のJISに規定されている各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、スラグセメント、エコセメント、及びアルミナセメント等が挙げられる。
中でも、汎用性の点から、普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントが好ましい。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
また、必要に応じて、石灰石微粉末、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、カルシウムアルミネート、ドロマイト等の混和材;ビニロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、カーボン、ガラス、鉄等からなる繊維;上述した多孔質の粒体に用いられる無機質や有機質の材料等を、被覆層3の材料として用いてもよい。
また、被覆の性状に影響を及ぼさない範囲内で、一般的にコンクリートやモルタルで用いられている細骨材等を用いてもよい。
【0019】
また、水硬性組成物には、硬化性状を調整するための材料として、一般的にセメントまたはコンクリートに用いられている、硬化促進剤、凝結遅延剤、収縮低減剤、AE剤、減水剤、高性能減水剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤等の添加物を、被覆の性状に影響を及ぼさない範囲内で用いてもよい。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、水硬性組成物は、水を含む。水は、通常、コア体2に水硬性組成物を被覆する直前に、水以外の材料と混合されて、水硬性組成物の構成材料となる。
【0020】
コア体2を水硬性組成物で被覆することにより、本発明の水生生物蝟集用粒体1を得ることができる。
コア体2を水硬性組成物で被覆する方法としては、(i)コア体2をコーティング装置に投入して、該装置を回転させながら、水硬性組成物を投入して被覆する方法、
(ii)コア体2をコーティング装置に投入して、該装置を回転させながら、予め水硬性組成物(水以外の材料と水を練り混ぜてなるスラリー)をコーティング装置に投入する方法、(iii)水硬性組成物を構成する水以外の材料をコーティング装置に投入して、該装置を回転させながら、コア体2を投入して、更に水を投入する方法等が挙げられる。
中でも、作業の容易性の観点から(i)の方法が好ましい。
上記コーティング装置としては、パンコーティング装置や、転動コーティング装置等が挙げられる。中でも、作業効率の観点からパンコーティング装置が好ましい。
水硬性組成物からなる被覆層3の厚さは、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜7mm、特に好ましくは1〜5mmである。該厚さが上記数値範囲内であれば、水生生物蝟集用粒体からの蝟集成分の溶出量を適切な量にすることができる。
コア体2を水硬性組成物で被覆し、次いで、該水硬性組成物を十分硬化させることで、本発明の水生生物蝟集用粒体1を得ることができる。
【0021】
被覆層3の形成に使用される水硬性組成物の量は、コア体100質量部に対して、好ましくは100〜1200質量部、より好ましくは300〜1100質量部、さら好ましくは600〜1000質量部、さらに好ましくは700〜950質量部、特に好ましくは800〜900質量部である。該量が100質量部以上であれば、コア体2を水硬性組成物で十分に被覆することができる。該量が1200質量部以下であれば、被覆層3の形成が容易となる。
また、水生生物蝟集用粒体1の粒度は、好ましくは0.2〜60mm、より好ましくは5〜40mm、特に好ましくは10〜30mmである。該粒度が0.2mm以上であれば水生生物蝟集用粒体に含まれる蝟集成分の量を増やすことができる。該粒度が60mm以下であれば、水生生物蝟集用粒体からの蝟集成分の溶出量を適切な量にすることができる。
【0022】
本発明の水生生物蝟集用粒体を、水中(例えば、海中)に静置することで、該粒体から蝟集成分が溶出および拡散して、水生生物を蝟集することができる。
水生生物蝟集用粒体は、単体で使用してもよいが、水生生物蝟集用粒体、セメント、及び水を含むセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体(モルタル、コンクリート)を、水中(例えば、海中)に静置する形態で使用してもよい。
セメントとしては、上述した被覆層3を形成する水硬性組成物に用いられるセメントと同様のものを使用することができる。
上記セメント組成物において、水生生物蝟集用粒体は、骨材の代替品として使用することができる。骨材の代替品として使用する場合、その配合割合は、骨材の全体積(代替品である水生生物蝟集用粒体を含む)中、好ましくは5〜30体積%、より好ましくは10〜25体積%である。
上記セメント質硬化体は、より効率的に蝟集成分を溶出する観点から、少なくともその表面形成部分が、水生生物蝟集用粒体、セメント、及び水を含むセメント組成物からなるものが好適である。
【0023】
本発明の水域浄化システムは、上述した水生生物蝟集用粒体、および、該粒体の近傍領域内に配置した二枚貝を含むものである。
本発明の水生生物蝟集用粒体または該粒体を含むセメント質硬化体を、単独の形態で、または、通水性を有する部分を備えた容器に収納した形態で水中(例えば、海中)等に静置することで、該粒体から蝟集成分が溶出および拡散する。溶出および拡散した蝟集成分は、二枚貝からの排泄物(偽糞)を摂取する水生生物(例えば、カニ等の甲殻類や、小魚等の小動物や、ゴカイ等の底生生物)を蝟集することができる。蝟集された水生生物が、水生生物蝟集用粒体の近傍領域内に配置された二枚貝からの排泄物(偽糞)を摂取することによって、水域を浄化することができる。
水生生物蝟集用粒体の近傍領域内とは、水生生物蝟集用粒体から、好ましくは半径15m以内、より好ましくは10m以内、さらに好ましくは5m以内、特に好ましくは2m以内である。水生生物蝟集用粒体の半径15m以内に二枚貝を配置することで、蝟集された水生生物が、効率的に二枚貝からの排泄物(偽糞)を摂取することができる。
二枚貝としては、例えば、ホタテ貝、牡蠣、アサリ、ムラサキイガイ、ハマグリ、シジミ、アコヤガイ及びヒオウギ貝等が挙げられる。
また、蝟集成分は藻類等の栄養源にもなることから、藻場の形成を図ることができる。
【0024】
通水性を有する部分を備えた容器としては、容器に収容された水生生物蝟集用粒体が通過せず、蝟集成分が通過するものであれば特に限定されず、例えば、セルロース繊維、ポリアミド合成繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の有機繊維;ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ロックウール、スラグウール等の無機繊維;等の繊維を用いた織布または不織布からなる袋;鉄、プラスチック、木材、石材、陶磁器、セメント等の水硬性組成物を混合した組成物等を原料として形成した収納スペースを保持した容器などが挙げられる。通水性を有する部分は、容器の一部分でもよく、全体に通水性を有していてもよい。
【0025】
以下、本発明の水生生物蝟集用粒体を用いた、水域浄化システムについて、
図2〜3を参照しながら説明する。
なお、
図2〜3は、海水中における水域浄化システムを示しているが、該システムは淡水(例えば、湖沼、河川等の水)中や汽水中においても設置することが可能である。
図2は、水生生物蝟集用粒体12と、垂下手段によって海中17中に配置されている二枚貝14を含む水域浄化システム11を示す図である。
垂下手段は、二枚貝14を付着させて生育させるための垂下用支持体18と、垂下用支持体18を海中に固定するための保持体19を含むものである。
垂下用支持体18は、二枚貝を海中に垂下することができればよく、例えば、二枚貝が定着した採苗器をそのまま垂下する裸吊りの垂下用支持体;二枚貝を養殖カゴに入れて垂下するカゴ吊りの垂下用支持体;二枚貝に穴を開け、垂下ロープに設置したアゲピンに直接もしくはテグスを穴に通して複数個をまとめた状態で吊下げる耳吊りの垂下用支持体;ポケットのついたネットに二枚貝を入れて固定する垂下用支持体;二枚貝をセメント系接着剤でロープに固定した垂下用支持体等が挙げられる。
中でも、二枚貝14をセメント系接着材で垂下用支持体18(例えば、ロープ)に固定する垂下手段は、固定する二枚貝の間隔を調整することにより二枚貝が生長する空間を確保できるため、二枚貝が海中の栄養成分をより多く摂取することができ、好適である。
【0026】
セメント系接着剤としては、例えば、セメントを主成分とする水硬性組成物のスラリー等が挙げられる。水硬性組成物に用いるセメントとしては、JISに規定されている各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、スラグセメント、エコセメント、及びアルミナセメント等が挙げられる。中でも、作業性や強度発現性の点から、早強ポルトランドセメントまたは普通ポルトランドセメントが好適である。
これらセメントは、単独で用いることも可能であるが、必要に応じて、一般的にモルタルまたはコンクリートの製造に使用される骨材、石膏類、石灰石微粉末、ドロマイト、スラグ、シリカフューム、カルシウムアルミネート等の混和材を混合して用いることもできる。
水硬性組成物中のセメントの含有率は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは35〜80質量%である。
また、水硬性組成物は、硬化性状を調整するため、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、塩化物、水酸化物等の、セメント以外の材料を含んでいてもよい。
水硬性組成物中のセメント以外の材料の含有率は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜7質量%である。
水硬性組成物中の水の含有率は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%、より好ましくは25〜40質量%である。
【0027】
保持体19は、垂下用支持体18を水中に固定することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、一般的な垂下式養殖において使用される筏、延縄、ブイ等が挙げられる。
二枚貝14としては、ホタテ貝、牡蠣、ムラサキイガイ、アコヤガイまたはヒオウギ貝が好適である。
【0028】
垂下手段の下方にある海底16には、水生生物蝟集用粒体12が配置されている。垂下用支持体18に固定された二枚貝14から海中に排出される二枚貝の排泄物(偽糞)15は、水生生物蝟集用粒体12の周囲に堆積する。
水生生物蝟集用粒体12から、蝟集成分が海水17に溶出および拡散することで、水生生物13を蝟集することができる。蝟集された水生生物13が、水生生物蝟集用粒体12の周囲に堆積した二枚貝の排泄物(偽糞)15を摂食することで、海水17を浄化することができる。
【0029】
図3は、水生生物蝟集用粒体22と、海底26に配置されている二枚貝24、28を含む水域浄化システム21を示す図である。
二枚貝24、28としては、ホタテ貝、牡蠣、ハマグリ、シジミ、アサリまたはヒオウギ貝が好適である。
水生生物蝟集用粒体22から、蝟集成分が海水27に溶出および拡散することで、水生生物23を蝟集することができる。蝟集された水生生物23が、水生生物蝟集用粒体22の周囲に堆積した二枚貝の排泄物(偽糞)25を摂食することで、海水27を浄化することができる。
水生生物蝟集用粒体22と二枚貝24、28を、このように設置することで、以下の(1)〜(2)の効果を得ることができる。
(1)垂下用支持体を設置できない浅い海域においても水域浄化を実施することができる。
(2)海底26に堆積した二枚貝の排泄物(偽糞)25等の栄養成分を処理することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
木材加工工場において木材切削時に発生する粉砕物を、3mm篩で篩分けして多孔質の粒体を得た。得られた粒体1kgと、水生生物を蝟集するための成分としてフィッシュミール工場において発生した可溶性タンパク質水溶液であるソルブル3kgを、ホバートミキサーを用いて2分間混合して、粒体に水生生物を蝟集するための成分を含浸させた。
含浸後の粒体を、直径が1mであるパンペレタイザーを用いて造粒し、次いで、得られた成形物(成形造粒物)を1日自然乾燥させた後、篩分けにより、粒度(粒径)が5〜10mmであるコア体(成形造粒物)を得た。
【0031】
該コア体を、前述のパンペレタイザーに入れて、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)と水を適宜添加しながら回転させてコーティングを行い、粒度が15〜20mmである水生生物蝟集用粒体を調製した。
なお、コア体100質量部に対する、普通ポルトランドセメントの配合量は800質量部であり、水の配合量は概ね200質量部であった。
また、水生生物蝟集用粒体10粒を、その中心を通る面で切断して、被覆層の厚みを測定したところ、平均で4.1mmであった。
得られた水生生物蝟集用粒体5kgを、牡蠣養殖用筏(牡蠣をセメント系接着剤でロープに固定した垂下用支持体(長さ8m)を有し、かつ、該垂下用支持体を海中に固定している保持体)の下方の海底(水深約12m)に散布し、1ヶ月間経過した後に、水生生物蝟集用粒体周辺の水生生物の生息状況を観察した。
水生生物蝟集用粒体を散布した後に確認された生物を表1に、確認された生物のうち、主に観察された生物の個体数を表2に示す。
なお、確認された節足動物門に分類される生物の種類のうち、主に観察された(個体数が多い)生物は、Leptochelia属、ベニツケガニ、Gammaropsis属、サワギテッポウエビであった。
また、環形動物門に分類される生物の種類のうち、主に観察された(個体数が多い)生物は、ヒメゴカイ科、オトヒメゴカイ、ゴカイ科であった。
【0032】
[比較例1]
上記コア体を使用せず、上記被覆層を形成する水硬性組成物のみを造粒してなる粒体(粒度:15〜20mm)を作製し、水生生物蝟集用粒体の代わりに該粒体を用いる以外は実施例1と同様にして、粒体周辺の水生生物の生息状況を観察した。
粒体を散布した後に確認された生物を表1に、確認された生物のうち、主に観察された生物の個体数を表2に示す。
なお、確認された節足動物門に分類される生物の種類のうち、主に観察された(個体数が多い)生物は、Leptochelia属、ベニツケガニ、Gammaropsis属、サワギテッポウエビであった。
また、環形動物門に分類される生物の種類のうち、主に観察された(個体数が多い)生物は、オトヒメゴカイ、ゴカイ科であった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1および表2から、本発明の水生生物蝟集用粒体(実施例1)を散布することにより、その周辺に節足動物や環形動物等の水生生物を蝟集することができ、その結果、二枚貝(牡蠣)からの排泄物(偽糞)を効率的に処理できることがわかる。
一方、水硬性組成物のみを造粒してなる粒体(比較例1)を散布する場合、その周辺に蝟集された節足動物や環形動物等の個体数は、実施例と比べて少ないことがわかる。