特許第6802022号(P6802022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802022
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】リバーシブルファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20201207BHJP
   F04D 29/66 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   F04D29/54 C
   F04D29/54 D
   F04D29/54 G
   !F04D29/66 N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-191989(P2016-191989)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-53823(P2018-53823A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 哲
(72)【発明者】
【氏名】川島 高志
(72)【発明者】
【氏名】荒起 聡直
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−007573(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0122278(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201891676(CN,U)
【文献】 特開平02−185700(JP,A)
【文献】 特許第5832052(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順方向及び逆方向に気流を発生させるリバーシブルファンであって、
第1開口と第2開口を有し前記気流を前記第1開口と前記第2開口との間で通過させる筒状のフレームを備え、
前記第1開口は、前記フレームの内側から外側に向かって広がる第1テーパ部を有し、
前記第2開口は、前記フレームの内側から外側に向かって広がる第2テーパ部を有し、
前記第2テーパ部の表面は、前記フレームの内側に向かって突出した第2凸部を有し、
前記第1テーパ部の表面は、前記フレームの内側に向かって突出した第1凸部を有し、
前記第1凸部の個数は、前記第2凸部の個数よりも多いことを特徴とするリバーシブルファン。
【請求項2】
らに、モータを取り付けるベース部材を備え、
前記ベース部材は、前記フレームの内側の空間において前記第2開口よりも前記第1開口に近い位置に配置されている
ことを特徴とする請求項記載のリバーシブルファン。
【請求項3】
前記第1テーパ部は、前記第2テーパ部よりも長い
ことを特徴とする請求項記載のリバーシブルファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
送風ファンは、気流を発生させることにより例えば電子部品を冷却するために用いる装置である。送風ファンの性能は気流を通過させる能力によって左右されるが、気流を通過させる能力を高めるとこれにともなって騒音が増加する傾向があるので、送風ファンとしての性能と騒音低減を両立させるために様々な工夫がなされている。
【0003】
下記特許文献1は、『気流とファンフレームのフレーム壁部との摩擦によって発生されるノイズを低減し、気流の安定化と集中化を図り、性能を高めることができる滑らかな湾曲状拡大部を有する放熱ファンとそのファンフレーム構造,および放熱システムを提供する。』ことを課題とする技術として、『 本発明における放熱装置のファンフレーム構造は、気流を一方の開口から他方の開口に導く柱状通路216を含み、少なくとも一つの前記開口の側にある前記柱状通路216の内周壁は、径方向に且つ外向きに拡大する滑らかな湾曲状拡大部Fを有する。』という技術を開示している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−316787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送風ファンのなかには、正回転と逆回転の2方向にモータを回転させることにより、2方向の気流いずれにおいても用いることができる、リバーシブルファンなどと呼ばれるタイプのものがある。リバーシブルファンは、正回転時の性能と逆回転時の性能が同等であることが求められる場合がある。同様に騒音特性についても、正回転時と逆回転時が同等の特性であることが望ましい場合がある。
【0006】
上記特許文献1記載の技術は、ノイズを低減することを図っているものの、正回転と逆回転の2方向において用いることは想定されていないと考えられる。したがって同文献記載の技術は、リバーシブルファンにおける正逆回転いずれにおいても同等の騒音特性を発揮することは困難であると考えられる。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、リバーシブルファンにおける正回転時の騒音特性と逆回転時の騒音特性を同等にすることができる送風ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る送風ファンは、開口部にテーパを設けており、テーパの表面はフレームの内側に向かって突出する凸部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る送風ファンによれば、正回転時の騒音特性と逆回転時の騒音特性を同等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】送風ファン100が備える部品の斜視図である。
図2】フレーム110の詳細を説明する図である。
図3図2の拡大図である。
図4】第1テーパ部111と第2テーパ部112がともに凸部を有していないフレームの形状を示す図である。
図5図4に示す送風ファンと本発明に係る送風ファンそれぞれの風量−静圧特性を比較するグラフである。
図6】従来品と発明品それぞれの音圧レベル特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る送風ファン100が備える部品の斜視図である。送風ファン100は、筒状のフレーム110の内部にブレード120を収容することにより形成される。ベース部材130はモータを取り付ける部材であり、スポーク131によって支持されている。ブレード120は、中央の筒状部分の内部にモータを収容し、モータと一体になって回転するように取り付けられる。
【0012】
フレーム110が有する2つの開口は、それぞれ正回転時における吸込口と吐出口として機能する。例えば図1の上側が吸込口であり、下側が吐出口である。ベース部材130は例えば吐出口側に取り付けられる。
【0013】
図1のようにベース部材130を吐出口側に設けた場合、正回転時の騒音特性と逆回転時の騒音特性が大きく異なる場合がある。ベース部材130が吐出口側のみに配置されているので、正回転時において気流が通過する際のフレーム110の表面形状と、逆回転時において気流が通過する際のフレーム110の表面形状とが、対称ではないからである。具体的には、逆回転時(図1の下から上に向かって気流が流れる場合)において、気流がフレーム110の内部に流入する際に、スポーク131と衝突して大きな騒音が発生する場合がある。そこで本発明においては、逆回転時の騒音を抑制することができる構造をフレーム110の内壁に設けた。
【0014】
図2は、フレーム110の詳細を説明する図である。図2(a)はフレーム110の斜視図である。図2(b)は図2(a)のAA断面図である。図2(b)に示すように、フレーム110は吸込口が外側に向かって広がる第1テーパ部111を有しており、吐出口も同様に外側に向かって広がる第2テーパ部112を有している。
【0015】
図3は、図2の拡大図である。図3(a)は第1テーパ部111の周辺を拡大した図である。図3(b)は第2テーパ部112の周辺を拡大した図である。破線は説明の便宜上付与したものである。図3に示すように、第1テーパ部111の表面は、フレーム110の内側に向かって突出した凸部を有する。この凸部は、図2などに示すように、吸込口の開口の全周にわたって形成されている。第2テーパ部112の表面も同様に、フレーム110の内側に向かって突出した凸部を有し、この凸部も同様に吐出口の全周にわたって形成されている。
【0016】
図3に示す凸部は、フレーム110の内部を通過する気流を攪乱し、騒音をキャンセルする作用を有する。図2図3に示した例においては、第1テーパ部111は第2テーパ部112よりも長く、また第1テーパ部111は第2テーパ部112よりも多くの凸部を有するので、特に逆回転時(図面の下から上に向かって気流が流れる場合)において騒音をより強く抑制する作用を有すると考えられる。したがって、吐出口側にベース部材130を配置することにより逆回転時の騒音が正回転時よりも大きい構成において、より効果的に騒音を抑制できると考えられる。
【0017】
図4は、第1テーパ部111と第2テーパ部112がともに凸部を有していないフレームの形状を示す図である。図4(a)(b)はそれぞれ図2(a)(b)に対応する。本発明の効果を検証するため、図4に示すフレーム形状を採用した場合と本発明におけるフレーム110を採用した場合それぞれにおいて、騒音特性を比較した。
【0018】
図5は、図4に示す送風ファンと本発明に係る送風ファンそれぞれの風量−静圧特性を比較するグラフである。図5の細線は図4の送風ファン(従来品)を正回転させたときの特性である。図5の破線は従来品を逆回転させたときの特性である。図5の点線は本発明に係る送風ファン(発明品)を正回転させたときの特性である。図5の太線は発明品を逆回転させたときの特性である。図5に示すように、風量−静圧特性は凸部を設けてもほぼ変化しない。
【0019】
図6は、従来品と発明品それぞれの音圧レベル特性を示す図である。図6上図は、ある回転速度(5300rpm)における正逆回転それぞれの音圧レベル(dB)を示す。図6下図は、逆回転時における音圧レベルを異なる回転速度で測定した結果である。図6下図において、2点破線は従来品の音圧特性を示し、破線は発明品の音圧特性を示す。
【0020】
図6上図に示すように、正回転時においては従来品と発明品ともに同様の音圧レベル特性を示し、逆回転時においては発明品が1dB低い音圧レベル特性を示した。図6下図に示すように、逆回転時の音圧レベル特性は回転速度が変わっても同様に発明品のほうが低い音圧レベル特性を示した。
【0021】
以上説明したように、本発明に係る送風ファン100は、(正回転時における)吐出口に第1テーパ部111を有するとともに、(正回転時における)吸込口に第2テーパ部112を有し、各テーパ部の表面には凸部が形成されている。これにより正逆回転それぞれにおける騒音レベルをそれぞれ抑制するとともに、正逆回転それぞれの騒音特性を同等に揃えることができる。
【0022】
<本発明の変形例について>
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0023】
以上の説明においては、第1テーパ部111と第2テーパ部112はそれぞれフレーム110の全周にわたって凸部を有することを説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、フレーム110の周方向の一部においてのみ凸部が形成されている場合であっても、相応の効果を発揮することができる。
【0024】
以上の説明においては、吸込口と吐出口それぞれにおいて凸部を有することを説明したが、吸込口と吐出口のいずれか一方においてのみ凸部を有する場合であっても、相応の効果を発揮することができる。例えばベース部材130を吐出口側に配置した場合は、第1テーパ部111の表面のみに凸部を設けてもよい。これにより逆回転時の騒音を抑制することができる。あるいは例えば送風ファン100を設置する場所の環境などに応じて正回転時の騒音レベルのほうが大きいのであれば、第2テーパ部112の表面のみに凸部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0025】
100:送風ファン
110:フレーム
111:第1テーパ部
112:第2テーパ部
120:ブレード
130:ベース部材
131:スポーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6