(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸音材が、ミネラルウール、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、セラミックス繊維、及びウレタンフォームから選択される少なくとも1種の材料である請求項1〜3のいずれかに記載の区画貫通構造。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態の区画貫通構造について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態の区画貫通構造100は、建築物の区画体としての壁1と、壁1に設けられた貫通孔2に配置された、耐火性のスリーブとしての熱膨張性スリーブ4と、熱膨張性スリーブ4を貫通して延びる配管6とを備えている。
【0016】
明細書において、「建築物」には、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設などの建材;客船、輸送船、連絡船などの船舶;車両;などの構造物が含まれるが、これらに限定されない。配管6としては、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管などの液体移送用管類、ガス管、暖冷房用媒体移送管、通気管などの気体移送用管などの配管が挙げられる。配管6は一種もしくは二種以上を用いることができる。
【0017】
熱膨張性スリーブ4は、貫通孔2を区画形成する壁1の略円形の内周面に沿うように該内周面に接着などにより固定される。熱膨張性スリーブ4は火災などの加熱により膨張するスリーブであり、合成樹脂、エラストマー、ゴム、またはこれらの組み合わせであるマトリックス成分及び熱膨張性黒鉛を含む耐火性樹脂組成物より形成されている。
【0018】
マトリックス成分の合成樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0020】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
【0021】
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0022】
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム等が挙げられる。
【0023】
これらの合成樹脂、エラストマー、及び/又はゴムは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0024】
これらの合成樹脂、エラストマー、及び/又はゴムの中でも、柔軟でゴム的性質を有しているものが好ましい。より柔軟で扱い易い耐火性樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。熱膨張性黒鉛は、酸処理した熱膨張性黒鉛を更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和した中和処理された熱膨張性黒鉛であってもよい。
【0026】
耐火性樹脂組成物は、マトリックス成分100重量部に対し、熱膨張性黒鉛を10〜350重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0027】
熱膨張性スリーブ4を構成する耐火性樹脂組成物はさらに、発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、無機充填剤、リン化合物、可塑剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0028】
無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;難燃剤としての無機リン酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0029】
耐火性樹脂組成物は、マトリックス成分100重量部に対し、無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0030】
また、熱膨張性黒鉛および無機充填材の合計は、マトリックス成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
【0031】
耐火性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛および無機充填材の合計量が50重量部以上であると燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
【0032】
リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
【0034】
化学式(1)中、R
1およびR
3は、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を示す。R
2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。リン化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0035】
可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、リン酸と陸レジル(TCP)等の燐酸エステル可塑剤、
鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
【0036】
前記可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0037】
前記可塑剤の添加量は、成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため可塑剤の添加量は限定されないが、マトリックス成分100重量部に対して20〜200重量部の範囲であることが好ましい。
【0038】
耐火性樹脂組成物及びこれにより形成された熱膨張性スリーブ4は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度を有する。耐火性樹脂組成物及びこれにより形成された熱膨張性スリーブ4は、50kW/m
2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍であれば好ましい。
【0039】
熱膨張性スリーブ4は、火災時などの加熱により膨張すると、後述する吸音材8と共に、熱膨張性スリーブ4と配管6の間の空間14を閉塞する。このため、熱膨張性スリーブ4は区画貫通構造100に耐火性を与える。
【0040】
区画貫通構造100はさらに、吸音材8と、弾性部材10と、固定部材12とを備えている。
【0041】
吸音材8は貫通孔2における熱膨張性スリーブ4と配管6の間の空間14に充填されて、区画貫通構造100に防音性を与える。吸音材8は、好ましくはミネラルウール、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、セラミックス繊維、及びウレタンフォームから選択される少なくとも1種の材料である。これらの材料は、防音性だけでなく耐火性も備えているため好ましい。
【0042】
弾性部材10は本実施形態では略円環状であり、中央に設けられた孔に配管6が挿通される。弾性部材10の貫通孔2と向き合う面の外形の断面積、つまり略円の断面積は、貫通孔2の断面積よりも大きい。このため、弾性部材10は、配管6の周囲に、貫通孔2の外から配管6と壁1との間の空間14を覆うように壁1に接触する。つまり、配管6の長手方向に沿って
図1の左側から区画貫通構造100を見ると、空間14は弾性部材10により塞がれ、弾性部材14は弾性部材14を設けない場合と比較して区画貫通構造100に特に防臭性を与え、さらには防火性及び防音性も与え得る。
【0043】
弾性部材10を形成する材料は、弾性を有する材料であれば特に限定されないが、ゴム、エラストマー、またはそれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0044】
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム等が挙げられる。
【0045】
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0046】
また好ましくは、弾性部材10として自己粘着性を有する材料を用いると、弾性部材10は壁1に密着して配管6の周囲で貫通孔2(空間14)を気密に封止するため、区画貫通構造100の防臭性が高められる。また、弾性部材10が貫通孔2を封止することで、防火性及び防音性も高められ得る。
【0047】
固定部材12は、弾性部材10の位置を固定するための略円環状部材の部材であり、配管6の周囲であって、かつ弾性部材10に対して壁1の反対側に設けられている。固定部材12の中央に設けられた孔22(
図2参照)に配管6が挿通されているため、固定部材12は配管6に沿って配管6の長手方向に移動させることができる。固定部材12を弾性部材10と接触させ、固定部材12を用いて弾性部材10を区画貫通孔2の壁1に対して押圧し、弾性部材10の位置を固定する。
【0048】
固定部材12を形成する材料は、特に限定されず、例えば金属または合成樹脂が挙げられる。金属としては、鋼などが挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0050】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。また、区画貫通構造100において、壁1における弾性部材10及び固定部材12が設けられた側とは反対側には、閉塞部材16が設けられている。
【0051】
閉塞部材16の材料は限定されないが、例えば金属または合成樹脂などの防火性の材料が挙げられる。金属としては、鋼などが挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0053】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
【0054】
閉塞部材16の形状は特に限定されないが、例えば中央に孔を有する略円環状であり、配管6を閉塞部材16の該孔に通し、閉塞部材16を壁1に接して装着することにより、貫通孔2における熱膨張性スリーブ4と配管6の間の空間14が弾性部材10及び固定部材12が設けられた側とは反対側でも閉塞され、熱膨張性スリーブ4と吸音材8が区画貫通孔2の外へ出てくるのを防ぐことができる。また、区画貫通構造100の防火性、防臭性、及び防音性も高めることができる。
【0055】
図2に示すように、第1実施形態の固定部材12は略円環状のフランジ部18と、フランジ部18よりも小径の略円環状の突出部20とを備え、連続するフランジ部18及び突出部20により孔22が画成されている。
【0056】
以上の構成により、本発明の一実施形態の区画貫通構造100は、簡素な構成で防火性、防臭性、及び防音性を兼ね備えることができる。
【0057】
次に、区画貫通構造100の形成方法について説明する。壁1に設けられた貫通孔2に熱膨張性スリーブ4を固定すると共に、貫通孔2に配管6を挿通する。熱膨張性スリーブ4が先に貫通孔2に設置されてもよいし、配管6が先に貫通孔2に挿通されてもよいし、これらの順序はいずれが先でもよい。次に、熱膨張性スリーブ4と配管6の間の空間14に吸音材8を充填する。次に、配管6上に装着した弾性部材10を配管6と壁1との間の空間14を覆うように壁1に隣接配置し、配管6上に装着した固定部材12により弾性部材10を壁1にして押圧し、弾性部材10の位置を固定する。
【0058】
このように、簡便な施工で区画貫通構造100を形成することができる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態の区画貫通構造について
図3を参照しながら説明する。以下の第2〜第4実施形態では、第1実施形態と同じ部材は同じ符号で表し、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0060】
図3に示すように、第2実施形態の区画貫通構造200では、配管6が貫通孔2の中央に配置されず、熱膨張性スリーブ4に接触している。つまり、配管6の長手方向軸が貫通孔2の軸と一致せず、ずれて(オフセットして)いる。
【0061】
このような構成でも、区画貫通構造200は優れた防火性、防臭性、及び防音性を有する。
【0062】
次に、本発明の第3実施形態の区画貫通構造について
図4を参照しながら説明する。第3実施形態では、第1実施形態と同じ部材は同じ符号で表し、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0063】
図4に示すように、第3実施形態の区画貫通構造300は、区画体としての床24に施工した例である。区画貫通構造300が床24に設けられているため、区画貫通孔2からの熱膨張性スリーブ及び吸音材8の落下を防止すべく板状の支持部材26が区画貫通孔2の下方に床24に係合するように設けられている。
【0064】
このような構成でも、区画貫通構造300は優れた防火性、防臭性、及び防音性を有する。
【0065】
ここまで本発明の第1〜第3実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
・上記第1〜第3実施形態では、スリーブとして熱膨張性スリーブ4を使用しているが、鋼製スリーブを始めする金属製スリーブ等、樹脂以外の耐火性材料から形成されたスリーブをスリーブとして使用してもよい。
・
図1において壁1の貫通孔2は略円筒形に示されているが、貫通孔2は略直方形のような他の形状であってよい。また、スリーブ4の形状、弾性部材10の形状、および固定部材12の形状も、貫通孔2に合わせて変更され得る。例えば
図5に示すように、固定部材12は
図2に示した固定部材のような突出部20を備えず、略円環状のフランジ部18からなる構成を有してもよい。
【0066】
・
図1の壁1と閉塞部材16の間にも吸音材8が配置されてもよい。代わりに、
図1の閉塞部材16は省略されてもよい。
【0067】
・配管6に加えて、または配管6の代わりに、配線が使用されてもよい。配線としては、電線ケーブル、光ファイバーケーブル、船舶用ケーブルなどの配線が挙げられる。配線は一種もしくは二種以上を用いることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態および変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
また、本発明は以下の構成を採用することもできる。
[1]区画体の貫通孔に配置されたスリーブと、スリーブを貫通する配管または配線とを備えた区画貫通構造であって、
スリーブと配管の間に配置された吸音材と、
配管または配線の周囲に、貫通孔の外から配管または配線と区画体との間の空間を覆うように区画体に接触して設けられた弾性部材と、
配管または配線の周囲であって、かつ前記弾性部材に対して前記区画体の反対側に設けられた、前記弾性部材の位置を固定するための固定部材と、
を備えた区画貫通構造。
[2]前記固定部材が金属または合成樹脂製の略円環状部材である[1]に記載の区画貫通構造。
[3]前記弾性部材がブチルゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴムから選択される合成樹脂より形成されている[1]または[2]に記載の区画貫通構造。
[4]前記吸音材が、ミネラルウール、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、セラミックス繊維、及びウレタンフォームから選択される少なくとも1種の材料である[1]〜[3]のいずれかに記載の区画貫通構造。