特許第6802034号(P6802034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802034
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】輸液システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/44 20060101AFI20201207BHJP
   A61M 5/36 20060101ALI20201207BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20201207BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61M5/44 520
   A61M5/36 500
   A61M5/14 500
   A61M5/142
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-206891(P2016-206891)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-64872(P2018-64872A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 聡一郎
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−073848(JP,A)
【文献】 特表2013−501578(JP,A)
【文献】 特開2005−131078(JP,A)
【文献】 特開2011−010694(JP,A)
【文献】 特開2002−102349(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0305090(US,A1)
【文献】 米国特許第05211201(US,A)
【文献】 国際公開第2014/168210(WO,A1)
【文献】 特開2012−139533(JP,A)
【文献】 特表2013−514839(JP,A)
【文献】 特表2013−500060(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/105577(WO,A1)
【文献】 特開2013−094473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/44
A61M 5/14
A61M 5/142
A61M 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液用の液体を収容する液体容器と、
前記液体を加温する加温装置と、
前記液体中の気泡を除去する気泡除去チャンバと、
前記液体容器と前記加温装置を接続する第1の流路と、
前記加温装置と前記気泡除去チャンバを接続する第2の流路と、
前記気泡除去チャンバと輸液を行う輸液部を接続する第3の流路と、
前記気泡除去チャンバと前記液体容器を接続し、ポンプを備えていない第4の流路と、
前記第1の流路に設けられた第1のポンプと、
前記第3の流路に設けられた第2のポンプと、を備え、
前記加温装置は、前記液体が流れる加温流路と、前記加温流路に接触して前記加温流路に給熱する給熱体と、を有し、
前記第1のポンプの送液流量が前記第2のポンプの送液流量と同等かそれよりも大きくなるように前記第1のポンプと前記第2のポンプを制御する制御装置を備える、輸液システム。
【請求項2】
前記第2の流路を通過する気泡を検出する気泡検出器を更に有する、請求項1に記載の輸液システム。
【請求項3】
前記気泡検出器により気泡が検出された場合に、前記第1のポンプの送液流量を増やすように前記第1のポンプを制御する制御装置をさらに有する、請求項2に記載の輸液システム。
【請求項4】
前記気泡除去チャンバ内の液面を検出する液面検出器を更に有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の輸液システム。
【請求項5】
前記液面検出器により液面が所定の閾値よりも下がった場合に、前記第1のポンプの送液流量を増やすように前記第1のポンプを制御する制御装置をさらに有する、請求項4に記載の輸液システム。
【請求項6】
前記第1のポンプ及び第2のポンプは、100mL/min以上の送液能力を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の輸液システム。
【請求項7】
前記加温流路は、可撓性のチューブにより構成されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の輸液システム。
【請求項8】
前記可撓性のチューブは、0.4mm以下の厚みを有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の輸液システム。
【請求項9】
前記加温流路は200cm2以上の流路面積を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の輸液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院では患者に輸液する血液製剤の機能を維持するため、血液製剤を冷蔵保管している。血液製剤を患者に輸液する際には、患者の負担を軽減するため、血液製剤を適切な温度まで加温して輸液する場合がある。特に大量または危機的出血が発生した場合には、血液製剤を短時間で大量に輸液する必要があり、この際には低体温症を防止するため、血液製剤を患者体温まで急速に加温する必要がある。
【0003】
従来から、上述の大量または危機的出血が発生した患者の治療には、血液製剤を加温しながら患者に輸液する輸液システムが知られている。輸液システムは、血液製剤を送液するチューブやポンプ、血液製剤を所定の温度まで加温する加温装置などから構成されている。加温装置は短時間に大量に輸液するため、高効率の加温が求められる。
【0004】
血液製剤を高効率に加温する方法としては、誘導加熱により熱を発する金属部材を血液製剤に直接接触させて熱交換する方法がある(特許文献1参照)。しかし、金属部材と血液製剤を直接熱交換すると、加温効率は良いが、使用後に廃棄される部分に高価な金属部材が含まれるため、使用にコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7819835号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述の金属部材を直接血液製剤に接触させない方法としては、安価な可撓性の加温流路に外側から熱を供給する方法が考えられる。この場合、前記方法に比べて加温効率が下がるため、加温流路の壁面の厚さを薄くし、加温流路の流路面積を広げることが考えられる。
【0007】
しかしながら、そうした場合、ポンプにより血液製剤を加温流路に高圧で液送する必要があるため、加温流路の内圧が高くなり、加温流路が膨張する。このため、加温装置に加温流路をしっかり押さえる構造が必要になり、この結果加温装置が重くなる。また、加温装置を押さえる構造の熱容量が大きくなると、加温効率にも影響する。また、患者への輸液量を例えば高流量から低流量に変更したときに、加温流路の周辺部に蓄熱されている熱が血液製剤に伝導して、血液製剤の温度が上昇しすぎる恐れがある。血液製剤は、高温になると形態学的・機能的に異常または溶血となるため、異常または溶血にならないよう(好適な状態に)維持できる上限温度がある。この上限温度が、42℃程度であって、血液製剤を加温する際も、この温度を超えないように制御することが重要である。
【0008】
また、血液製剤を加温すると気泡が発生するため、この種の輸液システムでは、発生した気泡を気泡除去チャンバで捕捉して気泡が患者へ注入されるのを防止する必要がある。しかしながら、従来の輸液システムでは、気泡除去チャンバに気泡が溜まり液面が降下してくると、気泡除去チャンバの下流に気泡が流入して患者へ注入される恐れがあるため、定期的に輸液を中断し、気泡を除去する作業が必要である。
【0009】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、加温流路の内部圧力を低減することができ、輸液量の変動に対応して血液製剤などの輸液用の液体の温度制御を適切に行うことができ、さらに気泡の除去を輸液を止めずに行うことができる輸液システムを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、気泡除去チャンバと輸液を行う輸液部を接続する流路にポンプを設けることなどにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
(1)輸液用の液体を収容する液体容器と、前記液体を加温する加温装置と、前記液体中の気泡を除去する気泡除去チャンバと、前記液体容器と前記加温装置を接続する第1の流路と、前記加温装置と前記気泡除去チャンバを接続する第2の流路と、前記気泡除去チャンバと輸液を行う輸液部を接続する第3の流路と、前記気泡除去チャンバと前記液体容器を接続し、ポンプを備えていない第4の流路と、前記第1の流路に設けられた第1のポンプと、前記第3の流路に設けられた第2のポンプと、を備え、前記加温装置は、前記液体が流れる加温流路と、前記加温流路に接触して前記加温流路に給熱する給熱体と、を有し、前記第1のポンプの送液流量が前記第2のポンプの送液流量と同等かそれよりも大きくなるように前記第1のポンプと前記第2のポンプを制御する制御装置を備える、輸液システム。
(2)前記第2の流路を通過する気泡を検出する気泡検出器を更に有する、(1)に記載の輸液システム。
(3)前記気泡検出器により気泡が検出された場合に、前記第1のポンプの送液流量を増やすように前記第1のポンプを制御する制御装置をさらに有する、(2)に記載の輸液システム。
(4)前記気泡除去チャンバ内の液面を検出する液面検出器を更に有する、(1)から(3)のいずれかに記載の輸液システム。
(5)前記液面検出器により液面が所定の閾値よりも下がった場合に、前記第1のポンプの送液流量を増やすように前記第1のポンプを制御する制御装置をさらに有する、(4)に記載の輸液システム。
(6)前記第1のポンプ及び第2のポンプは、100mL/min以上の送液能力を有する、(1)から(5)のいずれかに記載の輸液システム。
(7)前記加温流路は、可撓性のチューブにより構成されている、(1)から(6)のいずれかに記載の輸液システム。
(8)前記可撓性のチューブは、0.4mm以下の厚みを有する、(1)から(7)のいずれかに記載の輸液システム。
(9)前記加温流路は200cm2以上の流路面積を有する、(1)から(8)のいずれか1項に記載の輸液システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加温流路における内部圧力を低減することができ、輸液量の変動に対応して輸液用の液体の温度制御を適切に行うことができ、さらに気泡の除去を輸液を止めずに行うことができる輸液システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】輸液システムの構成の概略を示す模式図である。
図2】加温装置の構成の概略を示す説明図である。
図3】加温装置の加温部の構成の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、輸液システム1の構成の一例を示す。図1に示すように輸液システム1は、輸液用の液体としての血液製剤を収容する液体容器10と、血液製剤を加温する加温装置11と、血液製剤中の気泡を除去する気泡除去チャンバ12と、液体容器10と加温装置11を接続する第1の流路13と、加温装置11と気泡除去チャンバ12を接続する第2の流路14と、気泡除去チャンバ12と患者に輸液を行う輸液部15を接続する第3の流路16と、気泡除去チャンバ12と液体容器10を接続する第4の流路17と、第1の流路13に設けられた第1のポンプ18と、第3の流路16に設けられた第2のポンプ19と、制御装置20等を備えている。
【0016】
液体容器10は、例えば血液製剤の供給源となる液体バッグ30に接続されている。液体容器10には、第1の流路13に流出する血液製剤の不要成分を除去するフィルター31が設けられている。液体容器10は、例えば樹脂製であり、例えば0.5L以上の容量を有している。
【0017】
加温装置11は、図2に示すように血液製剤が流れる加温流路40を有する加温部41と、加温流路40に接触して給熱する給熱体42と、断熱板43を備えている。
【0018】
加温部41は、可撓性のある樹脂製であり、図3に示すように方形の板状に形成されている。加温流路40は、例えば可撓性のあるチューブ状に構成され、加温部41内に蛇行するように形成されている。すなわち、加温流路40は、複数の往復路40aを横に並べて繋げた形状を有している。加温流路40の入口部50と出口部51は、例えば加温部41の同一方向の端部に設けられている。
【0019】
加温流路40は、200cm2以上の流路面積を有している。なお、「流路面積」とは、熱媒体(熱板60)と接触する部分の面積である。また、加温流路40のチューブの壁は、0.4mm以下、好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下の厚さを有している。
【0020】
給熱体42は、図2に示すように熱板60と、給電により発熱するヒータ61を有している。熱板60は、例えば加温部41と同一形状の方形の板状に形成されている。熱板60は、加温部41の加温流路40に接触している。ヒータ61は、加温流路40に沿った所定パターンに形成されている。給熱体42は、例えば加温部41を挟んだ両側に配置されている。断熱板43は、各給熱体42の外側に配置されている。
【0021】
図1に示すように気泡除去チャンバ12の上部に第2の流路14と第4の流路17が接続され、気泡除去チャンバ12の下部に第3の流路16が接続されている。
【0022】
気泡除去チャンバ12には、液面を検出する液面検出器70が設けられている。液面検出器70には、例えば静電容量によって液面を検出する静電容量式センサが用いられる。液面検出器70によって検出された液面情報は、制御装置20に出力される。
【0023】
第1の流路13、第2の流路14、第3の流路16及び第4の流路17は、軟質の可撓性のあるチューブにより構成されている。第2の流路14には、気泡を検出する気泡検出器80が設けられている。気泡検出器80には、例えば超音波によって気泡を検出する超音波式センサが用いられる。気泡検出器80によって検出された気泡情報は、制御装置20に出力される。
【0024】
第1のポンプ18及び第2のポンプ19には、例えばチューブポンプが用いられる。第1のポンプ18及び第2のポンプ19は、例えば100mL/min以上、好ましくは250mL/min以上、さらに好ましくは500mL/min以上の送液能力を有する。第1のポンプ18及び第2のポンプ19の動作は、制御装置20により制御される。
【0025】
制御装置20は、例えば汎用コンピュータであり、メモリに記録されたプログラムをCPUで実行することにより第1のポンプ18、第2のポンプ19、液面検出器70、気泡検出器80等を制御して、輸液システム1の輸液動作を実行できる。
【0026】
制御装置20は、第1のポンプ18の送液流量P1と第2のポンプ19の送液流量P2をそれぞれ制御する。通常第1のポンプ18の送液流量P1は、第2のポンプ19の送液流量P2と同等かそれよりも大きくなるように制御され、第2のポンプ19の送液流量P2が、第3の流路16を通じた輸液部15(患者)への血液製剤の輸液量となり、第1のポンプ18の送液流量P1と第2のポンプ19の送液流量P2の差(P1−P2)が、第4の流路17を通じた気泡除去チャンバ12から液体容器10への流体流量となる。このとき、例えば第2のポンプ19の送液流量P2を一定にし、第1のポンプ18の送液流量P1を制御することにより、気泡除去チャンバ12から液体容器10への流体流量を制御してもよい。なお、このときの流体には、血液製剤と、気泡除去チャンバ12で補足された気体が含まれる。
【0027】
制御装置20は、例えば液面検出器70によって検出された気泡除去チャンバ12の液面情報に基づいて、第1のポンプ18の送液流量を制御する。例えば制御装置20は、気泡除去チャンバ12の液面が予め設定された閾値よりも下がった場合に、第1のポンプ18の送液流量を増加させて、気泡除去チャンバ12にある気体を除去する。また、第1のポンプ18の送液流量をポンプの上限にしても、気泡除去チャンバ12の液面が閾値よりも下がっている場合には、第2のポンプ19の流量を減らして、気泡除去チャンバ12にある気体を除去する。
【0028】
制御装置20は、例えば気泡検出器80によって検出された気泡情報に基づいて、第1のポンプ18の送液流量を制御する。例えば制御装置20は、気泡検出器80で多くの気泡が検出された場合に、第1のポンプ18の送液流量を増加させて、気泡除去チャンバ12から液体容器10に流体を戻す。より具体的には、気泡検出器80によって検出された気泡情報から、第2の流路14の単位時間当たりの気泡通過率Aを計算し、その気泡通過率Aから、第2の流路14の単位時間当たりに通過する気泡通過量B(A×第1のポンプ18の送液流量)を測定する。気泡通過量Bが所定の閾値よりも高くなった場合に、気泡通過量Bの量に応じて第1のポンプ18の流量を増やし、気泡除去チャンバ12から液体容器10に戻す流体流量を増やして、気泡を除去する。また、第1のポンプ18の送液流量をポンプの上限にしても、まだ気泡通過量Bが所定の閾値よりも高い場合には、第2のポンプ19の流量を減らして、気泡除去チャンバ12から液体容器10に戻す流体流量を増やす。
【0029】
次に、以上のように構成された輸液システム1の動作について説明する。先ず、低温の血液製剤が貯留された液体バッグ30が液体容器10に接続され、液体バッグ30の血液製剤が液体容器10内に貯留される。その後第1のポンプ18と第2のポンプ19が作動し、液体容器10の血液製剤が第1の流路13を通って加温装置11に送られる。加温装置11では、血液製剤が加温流路40を通過し、その際にヒータ61を熱源とする熱板60により血液製剤が体温に近い所定の温度に加温される。加温装置11で加温された血液製剤は、第2の流路14を通過し、気泡除去チャンバ12に流入する。その後、血液製剤は、第2のポンプ19により第3の流路16を通過し、輸液部15から患者に輸液される。患者への輸液量は、第2のポンプ19の液送流量を調整することにより制御される。
【0030】
加温装置11において血液製剤中に生じた気泡は、気泡除去チャンバ12で補足される。気泡除去チャンバ12内の一部の血液製剤と気体は、第4の流路17を通って液体容器10に戻される。この第4の流路17を通過する気体を含む流体の流量は、第1のポンプ18の送液流量を調整することにより制御される。例えば第1のポンプ18の送液流量を増やすことにより、気泡除去チャンバ12から第4の流路17に流出する流体の流量が増え、第1のポンプ18の送液流量を減らすことにより、気泡除去チャンバ12から第4の流路17に流出する液体の流量が減る。例えば液面検出器70によって検出された気泡除去チャンバ12の液面が予め設定された閾値よりも下がった場合に、第1のポンプ18の送液流量を増加させて、気泡除去チャンバ12にある気体を除去する。また、気泡検出器80によって気泡が検出された際に、第1のポンプ18の送液流量を増加させて、気泡除去チャンバ12に溜まる気体を除去する。
【0031】
本実施の形態によれば、第1の流路13に第1のポンプ18を設け、第3の流路16に第2のポンプ19を設けることにより、加温流路40における液送と、気泡除去チャンバ12から患者への液送を別のポンプで分担して行うことができるので、第1のポンプ18の送液圧力を下げることができ、加温流路40の内圧を低減することができる。この結果、加温装置11における加温流路40を押さえる構造を簡略化することができ、加温装置11の重量を抑えることができる。
【0032】
また、患者への輸液量を減らす場合に、第2のポンプ19の液送流量だけを変更すればよく、第1のポンプ18の液送流量を変更する必要がないので、加温流路40を通過する血液製剤の流量が変動せず、加温流路40の血液製剤の温度が周辺の熱の影響を受けて不規則に変動することがない。この結果、輸液量の変動に対応して血液製剤の温度制御を適切に行うことができる。特に加温流路40において血液製剤に周囲の大量の熱が入り込み血液製剤が上限温度に加温されるようなことがない。
【0033】
第1のポンプ18の送液流量を変えることにより、気泡除去チャンバ12から第4の流路17を通って液体容器10に戻す流体の流量を調整できるため、気泡除去チャンバ12に気泡が多くなった場合には、第1のポンプ18の送液流量を増加させるだけでよく、気泡の除去を輸液を止めずに行うことができる。
【0034】
第2の流路14に気泡を検出する気泡検出器80を設けたので、例えば気泡検出器80により多くの気泡が検出された場合に、制御装置20により第1のポンプ18の送液流量を増やして、気泡除去チャンバ12の気体を第4の流路17を通じて液体容器10に除去することができる。
【0035】
気泡除去チャンバ12に液面を検出する液面検出器70を設けたので、例えば液面検出器70により液面が所定の閾値よりも下がった場合に、制御装置20により第1のポンプ18の送液流量を増やして、気泡除去チャンバ12の気体を第4の流路17を通じて液体容器10に除去することができる。
【0036】
第1のポンプ18及び第2のポンプ19は、100mL/min以上の高い送液能力を有するものであるので、高圧領域での使用時に特に加温流路40の内圧が低減できるので好ましい。
【0037】
さらに、加温流路40が可撓性のチューブにより構成され、また加温流路40の可撓性のチューブが0.4mm以下の厚みを有している。この場合、加温流路40の加温性能が高くなるが、耐圧性能が低くなるので、本発明のように第1のポンプ18と第2のポンプ19で分担して加温流路40の内圧の上昇を抑えるメリットが大きくなる。
【0038】
加温流路40が200cm2以上の流路面積を有するので、この場合加温流路40から加温装置11の本体にかかる荷重(加温流路面積×加温流路の内圧)が大きくなりやすいので、本発明のように第1のポンプ18と第2のポンプ19で分担して加温流路40の内圧の上昇を抑えるメリットが大きくなる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0040】
例えば上記実施の形態において、輸液システム1が液面検出器70と気泡検出器80を有していたが、これらは必ずしもなくてもよい。また、加温装置11の構成も上記例に限られない。輸液システム1で送液される輸液用の液体は血液製剤であったが、これに限られず、例えば新鮮凍結血漿(FFP)、アルブミン、細胞外液などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、加温流路の内部圧力を低減することができ、輸液量の変動に対応して輸液用の液体の温度制御を適切に行うことができ、さらに気泡の除去を輸液を止めずに行うことができる輸液システムを提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 輸液システム
10 液体容器
11 加温装置
12 気泡除去チャンバ
13 第1の流路
14 第2の流路
15 輸液部
16 第3の流路
17 第4の流路
18 第1のポンプ
19 第2のポンプ
20 制御装置
40 加温流路
42 給熱体
図1
図2
図3