特許第6802037号(P6802037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802037
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】キーボックス
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/00 20060101AFI20201207BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   E05B19/00 E
   E05B49/00 K
   E05B49/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-209644(P2016-209644)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-71111(P2018-71111A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100106921
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 裕之
(72)【発明者】
【氏名】金澤 孝郎
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 玲
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−135262(JP,A)
【文献】 特開2006−249889(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/107006(WO,A1)
【文献】 米国特許第04651544(US,A)
【文献】 米国特許第03084008(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に鍵の収納空間を備えた筐体と、
筐体の側面部に設けられて前記収納空間に連通する開口部と、
前記開口部の下端側に設けられた軸と、
前記開口部を閉塞可能な形状を有し且つ前記軸を中心に回動する蓋と、
前記開口部を塞いだ閉姿勢の前記蓋のロックとロック解除とを行うロック手段と、
前記筐体内に一端側を保持させ且つ他端側に鍵を保持する鍵保持具を備えて前記筐体と前記鍵保持具とを連結する索状物と、
認証用手段からの認証信号を非接触で受ける信号通信部と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記信号通信部からの認証信号の入力を基に、前記ロック手段へ、蓋のロックを解除する指令を与える機能を備えること
を特徴とするキーボックス。
【請求項2】
前記制御器に電源が接続され、
前記電源は、前記筐体内に配置された一次電池または二次電池とした
請求項1記載のキーボックス。
【請求項3】
前記信号通信部は、前記認証信号を、無線通信により受信するものとした
請求項1または2記載のキーボックス。
【請求項4】
前記筐体内に前記索状物の一端側を引き出し可能に巻いて保持するリールが備えられている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のキーボックス。
【請求項5】
前記リールは、ばね式で前記索状物を巻き戻す機能を備えるものとした
請求項4記載のキーボックス。
【請求項6】
前記筐体内における前記収納空間の上方で且つ前記開口部に接近した位置に、前記索状物を案内するガイドを備え、
前記ガイドは、該ガイドから垂下する前記索状物の先端側に前記鍵保持具を介して保持された前記鍵の一部が、前記蓋が開放された前記開口部から露出する配置で設けられた
請求項4または5記載のキーボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の貸し出しを無人で行うキーボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
賃貸や販売などを目的として住宅の内覧を行う場合であって、管理者が立ち会わない場合は、内覧者に対象となる住宅の出入口の錠の鍵(以下、単に、住宅の鍵という)を貸し出す処理が必要になる。
【0003】
このような鍵の貸し出しのために係員を配したのでは人件費がかかってしまう。そのため、鍵の貸し出しは、無人で実施することが望まれる。
【0004】
従来、共同利用物の鍵の貸し出しと返却とを自動で行うための装置としては、たとえば、キーボックスを利用した共同利用物貸出返却システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−79199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に示されたものは、キーボックスに、予約センタとネットワークを介して通信を行う機能が必要とされる。
【0007】
したがって、特許文献1に示されたキーボックスは、たとえば、住宅の鍵などの鍵を自動で貸し出す処理に適用することはできるが、その場合は、キーボックスを設置すると共に、キーボックスが予約センタと通信を行うためのネットワーク設備も設ける必要が生じてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、ネットワークを介して外部と接続することなく、許可された利用者に対する鍵の貸し出しを自動で行うことができるキーボックスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、内部に鍵の収納空間を備えた筐体と、筐体の側面部に設けられて前記収納空間に連通する開口部と、前記開口部の下端側に設けられた軸と、前記開口部を閉塞可能な形状を有し且つ前記軸を中心に回動する蓋と、前記開口部を塞いだ閉姿勢の前記蓋のロックとロック解除とを行うロック手段と、前記筐体内に一端側を保持させ且つ他端側に鍵を保持する鍵保持具を備えて前記筐体と前記鍵保持具とを連結する索状物と、認証用手段からの認証信号を非接触で受ける信号通信部と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記信号通信部からの認証信号の入力を基に、前記ロック手段へ、蓋のロックを解除する指令を与える機能を備えた構成を有するキーボックスとする。
【0010】
前記制御器に電源が接続され、前記電源は、前記筐体内に配置された一次電池または二次電池とした構成としてある。
【0011】
前記信号通信部は、前記認証信号を、無線通信により受信するものとした構成としてある。
【0012】
前記筐体内に前記索状物の一端側を引き出し可能に巻いて保持するリールが備えられている構成としてある。
【0013】
前記リールは、ばね式で前記索状物を巻き戻す機能を備えるものとした構成としてある。
【0014】
前記筐体内における前記収納空間の上方で且つ前記開口部に接近した位置に、前記索状物を案内するガイドを備え、前記ガイドは、該ガイドから垂下する前記索状物の先端側に前記鍵保持具を介して保持された前記鍵の一部が、前記蓋が開放された前記開口部から露出する配置で設けられた構成としてある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキーボックスによれば、ネットワークを介して外部と接続することなく、許可された利用者に対する鍵の貸し出しを自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】キーボックスの第1実施形態を示す概要図である。
図2図1のキーボックスの切断正面図である。
図3図1のキーボックスの切断側面図である。
図4】キーボックスから取り出した鍵の使用状態を示す図である。
図5】蓋のロック手段を示す図である。
図6】キーボックスの第2実施形態を示す切断正面図である。
図7図6の切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、キーボックスの第1実施形態を示すもので、図1(a)は概略側面図、図1(b)は概略正面図である。図2は、図1のキーボックスの概略切断正面図であり、図2(a)は蓋がロックされた状態を示す図、図2(b)は蓋のロックが解除された状態を示す図である。図3は、図2(a)のA−A位置での概略切断側面図である。図4はキーボックスから取り出された鍵の使用状態を示す概要図である。図5は、ロック手段を拡大して示すもので、図5(a)はロック状態を示す正面図、図5(b)は図5(a)のB−B方向矢視図、図5(c)はロック解除状態を示す正面図、図4(d)は図4(c)のC−C方向矢視図である。
【0019】
本実施形態のキーボックスは、図1(a)(b)、図2(a)(b)、図3に符号1で示すものである。説明の便宜上、図1(a)(b)、図2(a)(b)における紙面の手前側(図3では右側)をキーボックス1の前側、図1(a)(b)、図2(a)(b)における奥側(図3では左側)をキーボックス1の後側といい、図1(a)(b)、図2(a)(b)における左右方向を、キーボックス1の左右方向として説明する。
【0020】
キーボックス1は、鍵Xの収納空間3を備えた筐体2と、筐体2の一側面部、たとえば、左側面部に設けられて収納空間3と連通する開口部4と、開口部4の下端側に配置された軸5と、開口部4を閉塞可能な形状を有し且つ軸5を中心に回動する蓋6と、開口部4を塞いだ閉姿勢の蓋6についてロックとロック解除とを行うロック手段7と、索状物9が引き出し可能に巻かれたリール8と、索状物9の先端側に取り付けられた鍵保持具10とを備え、更に、信号通信部11と、電源12と、制御器13とを備えた構成とされている。
【0021】
筐体2は、上下方向寸法と左右方向寸法に比して前後方向寸法が小さい、扁平した直方体形状とされている。
【0022】
筐体2は、たとえば、ベースプレート14と、ベースプレート14の前面側に取り付けられた箱体部15とを備えた構成とされている。
【0023】
ベースプレート14は、方形の板状部材である。なお、ベースプレート14は、図2(a)では、上下方向寸法が左右方向寸法よりも大となる長方形のものとして示したが、上下方向寸法よりも左右方向寸法が大となる長方形や、正方形であってもよいことは勿論である。
【0024】
ベースプレート14は、後述する箱体部15の取付個所と干渉しない位置に、図示しない取付穴を備えている。これにより、ベースプレート14は、図1(a)に示すように、住宅の出入口の周囲の壁面などの固定部16に、前記図示しない取付穴に通したねじやボルトを用いて固定することができる。
【0025】
箱体部15は、ベースプレート14と同様の方形の前側壁15aと、前側壁15aの左端縁、右端縁、上端縁、下端縁からそれぞれ後方に向けて突出する左側壁15b、右側壁15c、上側壁15dおよび下側壁15eとを備えた構成とされている。
【0026】
箱体部15は、左側壁15b、右側壁15c、上側壁15dおよび下側壁15eの突出端側が、ベースプレート14の前面の周縁部に接するように配置される。この状態で、箱体部15は、開口部4、収納空間3、および、内部の機器の配置および動作に干渉しない個所が、ベースプレート14に、図示しないボルトを介して取り外し可能に固定されている。この箱体部15の固定に用いるボルトとしては、着脱に特別な工具を必要とする特殊ねじを使用することが好ましい。これは、防犯性の向上化を図るためである。
【0027】
更に、本実施形態のキーボックス1は、図1(a)(b)に二点鎖線で示すように、箱体部15の前面側に、取り外し可能なカバー17を備える構成とすることが好ましい。これは、カバー17の表面に文字を記して表札や部屋番号の表示物として使用したり、ベースプレート14の設置個所に応じた模様をカバー17の表面に設けて装飾物として使用したりすることで、キーボックス1の有効利用を図ると共に、キーボックス1であることを外見上分かり難くして、防犯性の向上化を図るためである。また、たとえば、住宅が売却されるなど、鍵Xの貸し出しが必要なくなった場合は、ベースプレート14から箱体部15を取り外してダミーと取り替えることで、ベースプレート14を撤去せずに、表札や部屋番号の表示物、装飾物として継続して利用することが可能になる。
【0028】
図1(a)に示すように、筐体2の左側面部となる箱体部15の左側壁15bには、上下方向に延びる開口部4が設けられている。本実施形態では、開口部4は、左側壁15bの上端より設定された寸法下がった位置から、左側壁の下端までの領域に設けられている。開口部4のサイズは、本実施形態のキーボックス1の収納対象となる鍵Xが通過可能となるように設定されている。
【0029】
開口部4は、左側壁15bを突出端側(後端側)から切り欠いて形成されていることが好ましい。このようにすれば、開口部4の形成を容易なものとすることができる。なお、開口部4は、左側壁15bの前後方向の中間部に内外方向に貫通する開口として設けてもよいことは勿論である。
【0030】
筐体2では、図2(a)(b)、図3に示すように、開口部4の内側でベースプレート14と前側壁15aとの間に挟まれた空間が、鍵Xの収納空間3とされている。
【0031】
下側壁15eは、開口部4側となる左端側に、開口部4に繋がる切欠き18が設けられている。この切欠き18は、蓋6が軸5を中心に回動するときに下側壁15eと干渉することを防ぐためのものである。
【0032】
軸5は、図1(a)(b)に示すように、開口部4の下端付近となる位置として、箱体部15の前側壁15aにおける左下のコーナ部に、後方に突出するように設けられている。ベースプレート14における左下のコーナ部には、軸5の突出端側を挿入する穴19が設けられている。箱体部15をベースプレート14に取り付けるときには、軸5の突出端側を穴19に挿入する。これにより、軸5は、前側壁15aとベースプレート14により両持ちで支持される。
【0033】
なお、図示しないが、軸5は、軸心部を貫通する貫通孔を備えて、この貫通孔に、箱体部15のベースプレート14への固定を行う特殊ねじを通す構成としてもよい。更には、軸5自体が、箱体部15のベースプレート14への固定を行う特殊ねじを兼ねる構成としてもよい。これらの構成によっても、軸5は両持ちで支持される。
【0034】
蓋6は、下端側が軸5に回動可能に取り付けられている。これにより、蓋6は、軸5を中心に、図2(a)に示すように蓋6が開口部4を塞ぐ閉姿勢と、図4に示すように、蓋6が筐体2の側方に突出するように配置されて開口部4が開放された開姿勢との間で、自在に回動することができる。なお、図示しないが、蓋6には、図4に示した開姿勢になると、ベースプレート14や箱体部15の一部、あるいは、ベースプレート14や箱体部15に設けられた係止部に係止されるストッパを備えて、蓋6のそれ以上の回動が制限されるようにすることが好ましい。
【0035】
蓋6には、更に、後述するロック手段7に係止させる係止部材20が取り付けられている。本実施形態では、係止部材20は、図2(b)に示すように、蓋6が閉姿勢となるときに、収納空間3よりも右側で且つ設定された高さ位置に配置された上向きの係止面20aを備えた部材である。
【0036】
具体的には、係止部材20は、前記設定された高さ位置に配置された係止面20aを備える上端側から下側壁15eの近傍位置まで上下方向に延びる柱状の部材であり、係止部材20の下端側は、蓋6の下端側に、下側壁15eの上面に沿い左右方向に延びる連結部材21を介して固定されている。更に、蓋6と係止部材20は、後端側同士が、収納空間3の後側、すなわち、ベースプレート14の前面に沿い配置された補強板22を介して連結されている。なお、蓋6と係止部材20は、前端側同士が、収納空間3の前側に沿い配置された図示しない補強板を介して連結された構成としてもよい。
【0037】
これにより、係止部材20は、蓋6と一体に軸5を中心に回動する。この際、係止部材20の係止面20aの移動軌跡23は、図5(a)(c)に二点鎖線で示すように、軸5を中心とする円弧となる。
【0038】
ロック手段7は、図5(a)(b)に示すように、箱体部15の内側に取り付けられているサーボモータ24と、サーボモータ24の出力軸24aに取り付けられた係止アーム25とを備えた構成とされている。係止アーム25は出力軸24aと直角な方向に設定された寸法で延びる棒状の部材であり、長手方向の一端側となる基端側が、出力軸24aに取り付けられている。したがって、係止アーム25の長手方向他端側である先端側は、出力軸24aの外周よりも外側に突出している。
【0039】
サーボモータ24は、蓋6が閉姿勢の状態のときに係止部材20よりも右側となる位置に、出力軸24aを左向きとし、且つ係止アーム25が係止部材20の上側に接近するようにした姿勢で配置されている。
【0040】
ロック手段7は、サーボモータ24の運転により係止アーム25を旋回させて、図5(a)(b)に示すように係止アーム25の先端側を出力軸24aの下方に突出する姿勢に配置した状態が、ロック状態である。ロック手段7は、蓋6が閉姿勢の状態のときにロック状態になると、係止アーム25の先端側を、係止部材20の係止面20aに上方から押し当てることができる。したがって、この状態では、係止部材20と共に蓋6が軸5を中心に回動する動作が阻止されるため、蓋6は、開口部4を塞いだ閉姿勢に保持される。
【0041】
一方、ロック手段7は、サーボモータ24の運転により係止アーム25を旋回させて、図5(c)(d)に示すように、係止アーム25の先端側を出力軸24aの前側、あるいは、後側に配置した状態が、ロック解除状態である。ロック手段7は、ロック解除状態では、図5(c)に示すように、係止アーム25を、係止部材20の係止面20aの移動軌跡23の外側へ退避させることができる。したがって、この状態では、係止部材20と共に蓋6の軸5を中心とする回動が可能となるため、開口部4を開放することが可能になる。
【0042】
ロック手段7のサーボモータ24には、図2(a)に示すように、制御器13が接続されている。
【0043】
更に、ロック手段7の制御に関連して、本実施形態では、蓋6が閉姿勢の状態のときに係止部材20が配置される位置の右側近傍位置に近接センサ26を備え、この近接センサ26が制御器13に接続された構成を備えている。制御器13は、近接センサ26により係止部材20が検出される場合、すなわち、蓋6が閉姿勢となっている場合にのみ、ロック手段7へロック指令やロック解除指令を与える機能を備えている。その他の制御器13の機能については後述する。
【0044】
リール8は、索状物9を、基端側となる長手方向の一端側から巻いた構成を備えている。これにより、リール8は、索状物9の先端側を引くことで、リール8から索状物9を引き出すことができる。また、リール8は、ばね式で索状物9を巻き戻す機能を備えている。これは、索状物9の引き出し時に変形するぜんまい式などのばね(図示せず)の復元力により、引き出された索状物9を元の状態まで巻き戻す機能である。
【0045】
更に、リール8は、図示しないが、索状物9を引き出した状態で、前記ばねの復元力に抗して索状物9の巻き戻しを一時的に停止可能なストッパ機構を備えることが好ましい。このストッパ機構は、索状物9の引き出し方の調整や巻き戻し方向の速度の調整といった索状物9の操作により、索状物9の巻き戻しの一時的な停止とその解除とを切り替えることができるものを使用する。
【0046】
なお、リール8における前記ばね式で索状物9を巻き戻す機能や、ストッパ機構は、電源コードのリールや、接続ケーブルのリールで広く使用されている技術であるため、ここでは構成の詳細な説明は省略する。
【0047】
リール8は、収納空間3の上方となる位置に配置されて、箱体部15の内側に取り付けられている。これにより、索状物9は、一端側がリール8を介して筐体2内に保持される。
【0048】
索状物9は、リール8に巻くことが可能な柔軟性を備えていると共に、リール8からの引き出しとリール8への巻き戻しとを繰り返し実施しても容易に損耗や切断が生じない強度や耐久性を備えていればよい。索状物9としては、たとえば、金属製または樹脂製のワイヤや、繊維ロープを使用することが好ましいが、他の材質や構造の索状物9を用いてもよい。
【0049】
鍵保持具10は、鍵Xの把持部Yに一般的に備えられている孔に通して取り付けるためのリング部27を備えた構成とされている。これにより、鍵保持具10は、リング部27を鍵Xの孔に通して取り付けることができる。この状態で、鍵Xは、鍵保持具10、索状物9およびリール8を介して筐体2に連結される。
【0050】
更に、本実施形態のキーボックス1は、収納空間3の上方で且つ開口部4に接近した位置に、索状物9を案内するガイド28を備えている。ガイド28は、箱体部15の内側、たとえば、前側壁15aの内側に取り付けられている。なお、ガイド28は、リール8における索状物9の出口に取り付けられていてもよい。
【0051】
図2(b)に示すように、開口部4からガイド28までの水平方向の距離Dは、鍵Xの把持部Yの幅寸法Wの1/2未満の寸法としてある。これにより、図2(b)に示すようにガイド28から自然に垂下する索状物9に鍵保持具10を介して鍵Xが吊られた状態では、鍵Xの一部である把持部Yの片側を、開口部4を通して筐体2の外部に露出させることができるようにしてある。よって、この状態では、鍵Xの筐体2外に露出された部分を持って、鍵Xを開口部4から外部へ取り出すことができる。
【0052】
なお、図示しないが、鍵保持具10を左右方向に幅広のものとして、ガイド28から自然に垂下する索状物9に鍵保持具10を介して鍵Xが吊られた状態のときに、鍵保持具10の片側が、開口部4を通して筐体2の外部に露出する構成としてもよい。この場合は、開口部4からガイド28までの水平方向の距離Dは、鍵保持具10の左右幅寸法の1/2未満の寸法となるようにすればよい。この構成によれば、鍵保持具10の筐体2の外部に露出される部分を持って、鍵保持具10と一緒に鍵Xを開口部4から外部へ取り出すことができる。
【0053】
更に、ガイド28が前記した配置で設けられていることに伴い、図2(b)に示すように開口部4が開放された状態から、図2(a)に示すように蓋6を開口部4に配置して閉姿勢とするときは、ガイド28から自然に垂下する索状物9と鍵保持具10と鍵Xを、蓋6を介して収納空間3へ押し込むことになる。よって、閉姿勢とされた蓋6には、索状物9と鍵保持具10と鍵Xがガイド28から自然に垂下した状態に復元しようとする復元力が、内側から外向きに常時作用することになる。
【0054】
そのため、本実施形態のキーボックス1では、ロック手段7により蓋6が閉姿勢でロックされた状態から、ロックが解除されると、蓋6は、自動的に開口部4から外方へ押し出されて図2(b)に示した状態になり、索状物9と鍵保持具10と鍵Xは、ガイド28から自然に垂下した状態に配置される。
【0055】
索状物9には、索状物9がリール8に巻き戻されるときに、巻き戻し量が適正になるとガイド28に当たる過巻規制部材29を取り付けた構成としてもよい。この構成によれば、前記ばねの復元力によってリール8に索状物9が巻き戻されるときに、リール8における索状物9の巻き戻し量が過剰になる虞を防止することができる。
【0056】
箱体部15の内側には、制御器13と電源12と信号通信部11が、収納空間3、リール8およびロック手段7と干渉しない配置で設けられている。
【0057】
信号通信部11と電源12は、制御器13に接続されている。電源12は、制御器13に加えて、制御器13を介して、信号通信部11、ロック手段7のサーボモータ24、近接センサ26に電力を供給する。
【0058】
本実施形態のキーボックス1を様々な個所に設置できるようにするという観点から考えると、電源12は、一次電池や二次電池を用いることが好ましい。なお、本実施形態のキーボックス1は、電源12として燃料電池を用いたり、筐体2内に配置した電源12に代えて、図示しない電源コードを介してAC電源などの商用電源に接続したりする構成であってもよいことは勿論である。
【0059】
電源12として一次電池や二次電池を用いる場合は、図1(b)に示すように、箱体部15を、前側壁15aに開閉可能な蓋31を備えた開口部30を備えた構成とし、この開口部30の内側に、図示しない電池ボックスなどを介して一次電池や二次電池による電源12を保持させた構成とすることが好ましい。なお、図示しないが、蓋付きの開口部30は、箱体部15の内側に設ける電源12の配置に応じて、前側壁15a以外の個所に設けた構成としてもよいことは勿論である。この構成によれば、開口部30の蓋31を開けることで電池交換を容易に行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態のキーボックス1は、ベースプレート14から箱体部15を取り外して電池交換を行うものとしてもよく、この場合は、箱体部15には開口部30を備えない構成としてよい。
【0061】
信号通信部11は、鍵Xの貸し出しを望む利用者(図示せず)が持っている図2(a)に一点鎖線で示す如き認証用手段32から、利用者が利用の許可を得た者であることを確認するための認証信号Sを受けるものである。
【0062】
なお、認証用手段32としては、スマートフォン、タブレット、携帯電話機など、利用者が携帯する携帯端末であって、アプリケーションプログラムの実行と、ネットワークを介した外部接続により認証信号Sの取得が可能となる機能を備えた携帯端末を用いることが好ましい。この認証用手段32を用いた本実施形態のキーボックス1の運用方法については、使用例として後述する。
【0063】
認証用手段32から信号通信部11への認証信号Sの受け渡しは、たとえば、近距離無線通信などの無線通信で行うようにすればよい。この場合は、認証用手段32と信号通信部11の双方が、無線通信用の通信モジュールを備えた構成とすればよい。
【0064】
制御器13は、以下の鍵貸出処理を実行する機能を備えている。
【0065】
この鍵貸出処理では、制御器13は、信号通信部11からの信号を基に、認証信号Sの入力を確認すると、ロック手段7のサーボモータ24へ、図5(a)(b)に示した蓋6のロック状態から、図5(c)(d)に示した蓋6のロック解除状態へ動作させるロック解除指令を与える。
【0066】
このロック解除指令に従ってサーボモータ24が動作して、蓋6がロック解除状態になると、図2(b)で説明したように、蓋6が開口部4の外方に押し出されると共に、鍵Xの一部が開口部4を通して筐体2の外部に露出された配置になる。
【0067】
このように鍵Xが開口部4から露出されると、利用者は、鍵Xを手に持つことができる。更に、図4に示すように、利用者が鍵Xを引いて移動させると、それに応じてリール8から索状物9が引き出される。この際、リール8に備えた図示しないストッパ機構により索状物9の巻き戻しは一時的に停止できるため、利用者は、鍵Xを、索状物9に接続されたままの状態で使用目的の錠がある位置まで移動させて、錠の解錠操作や施錠操作を行うことができる。
【0068】
利用者は、鍵Xの使用が終了すると、索状物9を操作してリール8のストッパ機構を解除する。これにより、索状物9はリール8に巻き戻される。これにより、鍵Xは、図2(b)に示したように開口部4に配置された状態に復帰する。
【0069】
この状態で、利用者は、鍵Xを収納空間3へ押し込むようにしながら、蓋6を、開口部4を塞ぐ閉姿勢に戻す操作を行う。
【0070】
制御器13は、近接センサ26からの信号を基に、蓋6が開口部4を塞ぐ閉姿勢に復帰されたことを確認すると、ロック手段7のサーボモータ24へ、図5(c)(d)に示した蓋6のロック解除状態から、図5(a)(b)に示した蓋6のロック状態へ動作させるロック指令を与える。これにより、蓋6は、開口部4を塞ぐ閉姿勢に保持される。このため、本実施形態のキーボックス1では、開口部4からの鍵Xの取り出しが不能になる。
【0071】
このように、本実施形態のキーボックス1によれば、認証用手段32を用いて認証信号Sを発することで認証される利用者に対してのみ、鍵Xの貸し出しを行うことができる。
【0072】
また、本実施形態のキーボックス1では、制御器13は、認証信号Sが信号通信部11に入力されると、ロック手段7のサーボモータ24へロック解除指令を与える処理を行うようにしてある。したがって、制御器13では、認証用手段32を携帯する利用者の情報や、利用者がいつ鍵Xを使用するかというような情報は必要としない。
【0073】
よって、本実施形態のキーボックス1は、ネットワークを介して外部に接続する必要のないものとすることができる。
【0074】
なお、認証用手段32から認証信号Sをいつ発信可能とするか、というような鍵Xが使用可能となる期間や時間の管理は、認証用手段32側のアプリケーションプログラムで行うようにすればよい。
【0075】
したがって、本実施形態のキーボックス1は、さまざまな鍵Xを自動で貸し出す処理に適用することができ、その際、本実施形態のキーボックス1が外部と通信を行うためのネットワーク設備を付設する必要はないので、鍵Xの貸し出しを自動で行うために必要とされる設備コストの削減化を図ることができる。
【0076】
また、鍵Xは、鍵保持具10、索状物9、リール8を介して筐体2に連結されているため、利用者が鍵Xを返却し忘れて持ち帰るといった問題や、鍵Xを紛失するといった問題の発生を防止することができる。
【0077】
本実施形態のキーボックス1では、制御器13は、信号通信部11に認証信号Sが入力されるまでは待機状態となる。
【0078】
また、本実施形態のキーボックス1は、電力を消費する駆動部としては1つのサーボモータ24のみを備えた構成とされている。更に、本実施形態のキーボックス1は、蓋6のロック状態とロック解除状態とを切り替えるときは、サーボモータ24により、係止アーム25の先端部を、係止部材20の係止面20aに接する位置から、該係止面20aの移動軌跡23の外側となる位置まで移動させるのみでよい。このため、係止アーム25は、1cm程度あれば十分に機能させることができる。よって、サーボモータ24は、出力を抑えることができて、電力消費も抑えることができる。
【0079】
信号通信部11は、認証用手段32から認証信号Sを無線通信で受けるのみでよい。更に、信号通信部11に無線通信で受けた認証信号Sは、画像解析のような特別な処理を要することなく電気信号に変換することができるため、信号通信部11や制御器13の消費電力の低減化を図ることができる。
【0080】
リール8は、ばね式の巻き戻し機能を備えているため、リール8から引き出された索状物9を巻き戻すときに電力を消費することはない。
【0081】
このため、本実施形態のキーボックス1は、消費電力を抑えることができる。よって、本実施形態のキーボックス1は、電源12として一次電池を用いる場合は、電池交換の頻度の低減化を図ることができる。また、電源12として二次電池を用いる場合は、充電の頻度の低減化を図ることができる。
【0082】
[第1実施形態の使用例]
次に、キーボックス1の使用例として、住宅の鍵Xを、住宅の内覧を行う利用者に対して貸し出す場合について説明する。
【0083】
この場合、本実施形態のキーボックス1は、図4に示す如き住宅の出入口33の周囲の壁面に設置する。鍵保持具10には、住宅の鍵Xを接続した構成としておく。なお、図示する便宜上、図4におけるキーボックス1と住宅の出入口33の寸法や相対的な寸法比は実際の寸法や寸法比を反映したものではない。
【0084】
住宅の内覧のために鍵Xの一時利用を望む利用者は、認証用手段32(図2(a)参照)となる携帯端末を用いて、ネットワークを介して予約サーバ(図示せず)に接続し、内覧を希望する期間についての予約を申し込む。
【0085】
予約サーバは、申し込まれた利用希望期間について、住宅の内覧が可能かを判断し、内覧可能であれば、利用者の認証用手段32に、内覧希望期間に対応する鍵Xの利用期間に関連付けられた利用許可を送る。
【0086】
一方、認証用手段32では、予約サーバより受けた利用許可に基づいて、利用許可を受けた期間にのみ認証信号S(図2参照)の発信が可能となるアプリケーションプログラムを、予め実行可能としておく。
【0087】
この状態で、利用者は、利用許可を受けた期間に内覧対象の住宅へ行き、認証用手段32を本実施形態のキーボックス1の近くに配置した状態で、認証用手段32で所定のアプリケーションプログラムを実行する。これにより、認証用手段32からは、認証信号Sが無線通信により発信される。
【0088】
本実施形態のキーボックス1は、この認証信号Sを信号通信部11で受けると、前記したように制御器13によるロック解除指令に従ってロック手段7による蓋6のロックが解除されるため、蓋6が開くと共に、開口部4から鍵Xが外部に露出される。
【0089】
この状態で、利用者は、鍵Xを手に持って、図4に示すように、索状物9をリール8から引き出しながら鍵Xを出入口33の錠の位置まで移動させて、その解錠操作を行う。
【0090】
これにより、利用者は、出入口33を開いて、住宅の内覧を行うことができる。
【0091】
利用者は、内覧が終了すると、鍵Xを用いて出入口33の施錠操作を行い、その後、リール8に索状物9を巻き戻させることで、鍵Xを開口部4まで戻し、しかる後、鍵Xを開口部4から筐体2内へ押し込むようにして、蓋6を開口部4を塞いだ閉姿勢に配置させる。
【0092】
このように、蓋6が閉姿勢になると、前記したように制御器13によるロック指令に従ってロック手段7による蓋6のロックが実施される。
【0093】
認証用手段32における所定のアプリケーションプログラムは、鍵Xの利用許可を受けた期間よりも前や後の時点では認証信号Sを発信しない。よって、たとえ内覧の予約を行った利用者であっても、鍵Xの利用許可を受けた期間以外は、本実施形態のキーボックス1から鍵Xを取り出すことはできない。
【0094】
また、内覧予約を行っていない者は、認証用手段32を用いた認証信号Sの発信を行うことができないので、本実施形態のキーボックス1から鍵Xを取り出すことはできない。
【0095】
以上により、内覧対象の住宅では、予約により鍵Xの利用許可を受けた利用者が、利用許可を受けた期間に限って鍵Xを取り出して住宅の内覧を行うことが可能となる。
【0096】
一方、住宅の管理者は、内覧対象住宅に本実施形態のキーボックス1を設けて、キーボックス1に、その住宅の鍵Xを保持させる構成を追加すれば、鍵Xの利用許可を受けた利用者への鍵Xの貸し出しは自動で行うことができる。
【0097】
しかも、本実施形態のキーボックス1は、ネットワーク設備を付設する必要はないので、鍵Xの自動での貸し出しを実現するために要する設備コストを低く抑えることができる。
【0098】
また、鍵Xは索状物9に繋がれているため、利用者が鍵Xを返却し忘れて持ち帰るといった問題や、鍵Xを紛失するといった問題の発生は防止することができて、他の利用者が鍵Xの貸し出しを受けられずに住宅の内覧を行うことができなくなるという問題も防止することができる。
【0099】
[第2実施形態]
図6および図7は、キーボックスの第2実施形態を示すものである。図6はキーボックスの概略切断正面図であり、図6(a)は、蓋がロックされた状態を示すもので、図2(a)に対応する図である。図6(b)は、蓋のロックが解除された状態を示すもので、図2(b)に対応する図である。図7は、図6(a)のD−D位置での概略切断側面図である。
【0100】
図6(a)(b)および図7において、第1実施形態と同一のものには、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0101】
本実施形態のキーボックス1aは、第1実施形態のキーボックス1と同様な構成において、リール8に巻き取り可能な索状物9を備える構成に代えて、筐体2内と鍵Xとを連結する索状物として、巻き取らない方式のチェーン34を用いる構成としたものである。
【0102】
そのために、本実施形態のキーボックス1aは、蓋6の内側に、鍵Xおよび折りたたまれた状態のチェーン34を収納可能な収納容器35を備えた構成とされている。これにより、本実施形態のキーボックス1aでは、蓋6を開口部4を塞いだ閉姿勢にすると、鍵Xは、収納容器35ごと筐体2内の収納空間3に収納することができる。
【0103】
更に、本実施形態のキーボックス1aは、チェーン34の一端側を筐体2内に保持する保持手段36と、筐体2内でチェーン34が収納空間3へ垂下する位置を規制する規制手段37と、蓋6が閉姿勢のときに、蓋6および収納容器35を軸5を中心に蓋6を開く方向へ付勢する付勢手段38とを備えた構成とされている。
【0104】
本実施形態では、収納容器35は蓋6と一体とされている。収納容器35は、蓋6と、係止部材20と、蓋6の幅方向(前後方向)の両側と係止部材20の幅方向(前後方向)の両側とを連結する2枚の補強板22,22aと、蓋6の下端側と係止部材20の下端側とを連結する連結部材21とにより形成されている。これにより、収納容器35は、蓋6と、係止部材20と、2枚の補強板22,22aと、連結部材21とで囲まれた内側に平面形状が矩形状の内部空間を備えた箱形となっている。よって、収納容器35は、この内部空間に鍵Xとチェーン34とを収納することができる。
【0105】
更に、筐体2内の左右方向の中央部分には、係止部材20の上端側よりも上方で係止アーム25の旋回動作と干渉しない高さ位置から、筐体2の上側壁15dまで達する位置に、閉塞板39が、筐体2内を仕切るように設けられている。
【0106】
閉塞板39は、図6(a)に示すように、蓋6が閉姿勢のとき、補強板22,22aにおける係止部材20より上方に位置する部分と干渉することなく、補強板22,22aに近接する位置に設けられている。これにより、蓋6が閉姿勢のときには、補強板22,22a同士の間に形成されている収納容器35の開口部であって且つ横向きの配置となる部分が、閉塞板39でほぼ塞がれるようになっている。このため、本実施形態のキーボックス1aでは、蓋6を開姿勢から回動させて閉姿勢とするときに、収納容器35に収納された状態で回動する鍵Xとチェーン34に慣性力が作用しても、筐体2内で鍵Xやチェーン34が収納容器35からはみ出ることを防止することができる。
【0107】
付勢手段38は、鍵Xとチェーン34が収納されて重くなっている収納容器35と蓋6を開く方向へ付勢するためのものである。本実施形態では、付勢手段38は、収納容器35の底部の連結部材21と、箱体部15の下側壁15eとの間に備えるばね部材40とされている。
【0108】
ばね部材40は、本実施形態では、たとえば、無負荷状態のときに図6(b)に示すような上向きに凸の湾曲形状となる板ばね状部材としてある。
【0109】
ばね部材40は、一端側が連結部材21の蓋6側の下面に取り付けられ、他端側(係止部材20側)は、連結部材21から離反する方向へ突出した状態に配置されている。
【0110】
なお、連結部材21の下面は、蓋6の下端面および係止部材20の下端面よりも高い位置に形成されている。これにより、本実施形態では、蓋6を閉姿勢とした状態のときに、連結部材21の下面と下側壁15eの上面との間に、ばね部材40を収容可能な隙間41が形成されるようにしてある。
【0111】
ばね部材40は、図6(a)に示すように、蓋6が閉姿勢でロック手段7によりロックされた状態のときには、他端側の位置が下側壁15eの上面に接することで拘束されるため、湾曲形状が延ばされた弾性変形を生じた状態で隙間41内に収められる。この状態では、ばね部材40の弾性変形状態からの復元力が、連結部材21に対して上向きの力として作用する。よって、この力により、蓋6および収納容器35は、軸5を中心に開く方向へ付勢される。
【0112】
したがって、ロック手段7による蓋6のロックが解除されると、図6(b)に示すように、蓋6は、自動的に、軸5を中心に、図6(b)で反時計方向に回動して、開口部4を開くことができる。
【0113】
そのため、ばね部材40の弾性は、図6(b)に示した弾性変形状態からの復元力により、収納容器35とそれに収納される鍵Xとチェーン34の重量を押し上げることができるように設定されている。
【0114】
なお、ばね部材40は、板ばね状部材とし、ばね部材40の一端側を連結部材21の下面に取り付けた例を示したが、これに限られるものではなく、ばね部材40を上下方向に反転させた姿勢として、下側壁15e側に一端側を取り付けた構成としてもよい。また、ばね部材40は、コイルばねのような圧縮ばね部材を、蓋6を閉姿勢とするときに対向して配置される連結部材21の下面と下側壁15eの上面との間に配置して、いずれかに取り付けた構成としてもよい。
【0115】
更には、付勢手段38は、閉姿勢の蓋6を開く方向に付勢することができれば、ばね以外の弾性部材を採用してもよいことは勿論であり、付勢する力を掛ける個所は、蓋6と収納容器35の任意の部分でよいことは勿論である。
【0116】
保持手段36は、図6(a)(b)、図7に示すように、収納空間3の上方となる位置に配置されている。本実施形態では、保持手段36は、たとえば、箱体部15の前側壁15aとベースプレート14との間で前後方向に延びる円筒体とされている。更に、保持手段36は、一端側が前側壁15aの内側に固定されている。なお、保持手段36は、軸5と同様な構成によって前側壁15aとベースプレート14により両持ちで支持される構成としてもよい。
【0117】
なお、保持手段36は、円筒体でなくてもよく、円柱状のものでもよい。また、保持手段36は、断面形状が円形のものに限られるものではなく、断面形状が四角、三角のものであってもよい。更には、後述するリング部42のようなチェーン34の一端側に備える係止具を係止して、筐体2内に保持することができれば、たとえば、アイボルトやアイナットのような係止金具や、その他、図示した以外の形式の保持手段であってもよいことは勿論である。
【0118】
チェーン34は、一端側に、筐体2に保持させるための係止具としてのリング部42を備えた構成とされている。リング部42は、保持手段36の外周に嵌めることで、保持手段36に係止されている。
【0119】
なお、リング部42は、保持手段36を挿通可能な環状の構造を備えていればよく、保持手段36の断面形状に合わせた形状のものを使用してもよいし、保持手段の断面形状とは異なる形状のものを使用してもよい。
【0120】
チェーン34の他端側には、第1実施形態と同様のリング部27を備えた鍵保持具10が取り付けられている。したがって、本実施形態においても、鍵保持具10は、リング部27を、鍵Xの把持部Yに備えられている孔に通して取り付けることができる。この状態で、鍵Xは、鍵保持具10、チェーン34とリング部42、および、保持手段36を介して筐体2に連結される。
【0121】
なお、本実施形態では、鍵保持具10は、チェーン34と鍵Xの把持部Yの孔とを連結する機能を得るための最低限の構成として、リング部27のみの構成としてある。
【0122】
チェーン34は、キーボックス1aから取り出した鍵Xを、図4に示す出入口33で使用できる長さを有するものとしてある。したがって、鍵Xを収納容器35に収納するときには、チェーン34に弛みが生じるので、このチェーン34の弛む部分を折りたたんで鍵Xと一緒に収納容器35に収納する。
【0123】
チェーン34は、引っ張っても容易に切れることがない強度を備えるものであることが好ましい。チェーン34の材質は、金属製のものが好ましいが、必ずしも金属製のものに限られるものではない。
【0124】
規制手段37は、筐体2内にて、保持手段36の位置よりも開口部4側の位置で且つ保持手段36の位置よりも下方となる位置に配置されている。
【0125】
本実施形態では、規制手段37は、保持手段36と平行に配置された棒状の部材とされ、その一端側が前側壁15aの内側に固定されている。この規制手段37には、チェーン34の一端側の部分が掛けられている。これにより、チェーン34は、開口部4の内側にて、保持手段36よりも開口部4に近い位置で垂下するように配置されている。
【0126】
本実施形態のキーボックス1aは、前記した構成とされているので、第1実施形態の使用例と同様に、蓋6が閉姿勢となっている図6(a)の状態において、たとえば、住宅の内覧のために鍵Xの一時利用を望む利用者は、本実施形態のキーボックス1aから鍵Xを取り出す。この際、利用者は、利用許可を受けた期間に内覧対象の住宅へ行き、図6(a)に示す認証用手段32で所定のアプリケーションプログラムを実行する。これにより、本実施形態のキーボックス1aでは、第1実施形態と同様に、制御器13によるロック解除指令に従ってロック手段7による蓋6のロックが解除される。
【0127】
蓋6のロックが解除されると、蓋6と収納容器35は、ばね部材40の変形状態からの復元力により押し上げられる。このため、図6(b)に示すように、蓋6と収納容器35は、軸5を中心に回動し、上端側が、開口部4から外側に開く。
【0128】
蓋6が図6(b)に示すように開くと、利用者は、蓋6を更に手動で開く方向へ回動させることにより、蓋6を90度回動させることができる(図4参照)。
【0129】
この状態で、利用者は、収納容器35に収納されている鍵Xを手に持つことができる。利用者が鍵Xを移動させると、鍵Xに繋がれているチェーン34が収納容器35から引き出される。これにより、第1実施形態の場合と同様に、利用者は、図4に示すように、鍵Xを使用して出入口33の錠の解錠操作を行うことが可能となり、住宅の内覧を行うことができる。
【0130】
利用者は、内覧が終了すると、鍵Xを用いて出入口33の施錠操作を行い、鍵Xとチェーン34を収納容器35に収納させる。この際、チェーン34は、鍵Xと保持手段36との間で張られている状態から鍵Xを収納容器35に近付けることで弛みが生じるが、チェーン34を順次収納容器35に収納して行くことで、チェーン34は絡まることなく収納でき、最後に鍵Xを収納容器35に収納することができる。
【0131】
利用者は、鍵Xとチェーン34が収納容器35に収納されると、蓋6を閉じる方向へ回動させる。
【0132】
蓋6が図6(b)の位置まで閉じられると、それ以降の回動では、ばね部材40の変形が生じるため、回動に対し抵抗が生じるが、使用者は、その抵抗に抗して蓋6を更に開口部4の方向に押圧し、開口部4を閉塞させる。
【0133】
蓋6が開口部4を閉塞した閉姿勢になると、第1実施形態の場合と同様に、制御器13によるロック指令に従ってロック手段7による蓋6のロックが実施される。
【0134】
したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0135】
なお、本発明は、前記各実施形態および使用例にのみ限定されるものではなく、各図に示した各構成部材の寸法や各構成部材同士の寸法比は、図示するための便宜上のものであり、実際の寸法や寸法比を反映したものではない。
【0136】
本発明のキーボックス1,1aは、各図に示した構成を左右に反転させた構成としてもよい。
【0137】
本発明のキーボックス1,1aは、箱体部15をベースプレート14から取り外してダミーと取り替えるという使用方法を実施するには、筐体2の内部に備える機器が箱体部15側に取り付けられていることが好ましい。しかし、前記のような使用方法が想定されない場合は、筐体2の内部の機器は、箱体部15とベースプレート14のいずれに支持させるようにしてもよい。
【0138】
筐体2は、ベースプレート14と、取り外し可能な箱体部15とを備えた構成のものを例示したが、第1実施形態において、鍵保持具10が接続される鍵Xを収納する収納空間3と、収納空間3の側方の開口部4とを備え、更に、索状物9のリール8、ロック手段7、信号通信部11、電源12、制御器13を収納できるようにしてあれば、図2(a)(b)に図示した以外の構造や形状を備えていてもよい。
【0139】
開口部4は、筐体2の側面部における上下方向の中間部に設けられていてもよい。
【0140】
ロック手段7は、図5(a)(b)(c)(d)に示した如きサーボモータ24と係止アーム25とを備えた構成とすることが好ましいが、蓋6と一体に回動する係止部材20を解除可能に係止する構成を備えていれば、たとえば、係止アーム25を、軸5と平行に配置された出力軸を有するサーボモータに取り付けた構成、サーボモータ24に代えて直動式のアクチュエータを備えて直動させる係止片を係止部材に押し当てる構成、その他、図示した以外の任意の形式の係止部材とロック手段を採用してもよい。
【0141】
蓋6が閉姿勢であることを検出するためのセンサとして、係止部材20を検出対象とする近接センサ26を例示したが、蓋6自体、あるいは、蓋6と一体に回動する係止部材20以外の部材を検出対象とするセンサを用いるようにしてもよい。また、その検出方式は、検出対象の動きや材質などに応じた任意の方式を採用してよい。
【0142】
信号通信部11は、認証用手段32から認証信号Sを受けることができるようにしてあれば、認証信号Sを無線通信以外の手法で受けるものとしてもよい。たとえば、信号通信部11が画像認識の機能を備える一方、認証用手段32がディスプレイに認証信号Sをバーコードや二次元コードのような画像によるコードを表示する機能を備える構成としてもよい。この場合は、認証用手段32のディスプレイに表示される画像コードを信号通信部11が画像認識することで、認証用手段32から信号通信部11への認証信号Sの受け渡しを行うことができる。更に、非接触で十数メートル程度までの範囲で通信可能な手段であれば、赤外線などの光を用いた通信手段や、その他の非接触通信手段を採用してもよい。また、認証信号Sを無線通信(BLUETOOTH(登録商標)など)で受ける場合には、信号通信部11は、筐体2の上部など、図示した以外の位置に配置してもよい。
【0143】
更に、認証用手段32は、信号通信部11に認証信号Sを入力することができるようにしてあれば、たとえば、非接触型ICカードや、接触型ICカード、その他、任意の形状の認証用手段を使用してもよい。
【0144】
本発明のキーボックス1,1aに収納して自動での貸し出しを行う対象となる鍵Xは、カードキーであってもよい。
【0145】
第2実施形態では、チェーン34に代えて、索状物として、収納容器35に収納可能な繊維製、樹脂製の紐状物を用いるようにしてもよい。
【0146】
鍵保持具10は、索状物に鍵Xを取り付けることが可能となる機能を備えていれば、使用する索状物に応じて、各実施形態で示した以外の形状や構造の鍵保持具10を採用してもよい。
【0147】
また、本発明のキーボックス1,1aは、設置された対象物の解錠のための鍵Xであって、一時利用が望まれる鍵Xであれば、たとえば、機械式駐車装置の制御盤収納箱の鍵Xや、貸し会議室のような建物内の部屋の鍵Xなど、住宅の鍵X以外の鍵Xの自動での貸し出しに適用してもよい。
【0148】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0149】
2 筐体
3 収納空間
4 開口部
5 軸
6 蓋
7 ロック手段
8 リール
9 索状物
10 鍵保持具
11 信号通信部
12 電源
13 制御器
28 ガイド
34 チェーン(索状物)
X 鍵
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7