(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る塗布具付きコンパクト容器(以下、単にコンパクト容器と称する)の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1〜
図3に示すように、本実施形態のコンパクト容器1は、持ち運び可能な携帯用容器であり、内容物が収容される第1収容容器2と、第1収容容器2に対してスライド移動可能に重ね合された第2収容容器3と、第2収容容器3内に収容された刷毛(塗布具)4と、を備えている。
なお、内容物としては特に限定されるものではないが、例えばファンデーション等の化粧料等が挙げられる。
【0025】
本実施形態では、コンパクト容器1の厚さ方向において、第1収容容器2側を上方とし、第2収容容器3側を下方とする。そのため、コンパクト容器1の厚さ方向が上下方向となる。また、上下方向に直交する2方向のうち一方向を前後方向L1、他方向を左右方向L2とする。さらに、前後方向L1のうち、後述するロック片40側を前方とし、ヒンジブロック37側を後方とする。
【0026】
第1収容容器2及び第2収容容器3は、互いに同形及び同サイズの薄型容器とされ、図示の例では左右方向L2よりも前後方向L1に僅かに長い平面視矩形状に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、第1収容容器2及び第2収容容器3は、前後方向L1よりも左右方向L2に長い平面視矩形状に形成されても構わないし、左右方向L2の長さと前後方向L1の長さとが同等の平面視正方形状に形成されていても構わない。さらには、第1収容容器2及び第2収容容器3の形状は、平面視で矩形状や正方形状以外の形状であっても良い。
【0027】
第1収容容器2は、上方に向けて開口する薄型の有底筒状に形成された第1容器本体10と、第1容器本体10に対して開閉可能に連結された蓋体30と、を備えている。
【0028】
第1容器本体10は、第1底壁部11と、第1底壁部11の外周縁部に連結され、上下方向に沿って延びた第1周壁部12と、を備えている。
第1周壁部12は、前方に位置する前壁部13と、後方に位置する後壁部14と、左右方向L2の両側に位置すると共に、前壁部13と後壁部14とを前後方向L1に接続する一対の側壁部15と、を有している。なお、第1周壁部12は第1底壁部11よりも下方に向けて突出している。
【0029】
前壁部13には、左右方向L2に沿って延びると共に下方に開口する縦溝13aが形成されている。これにより、前壁部13は縦溝13aを挟んで壁部が前後方向L1に並んだ二重壁状に形成されている。
前壁部13の下端部には、前方に向けて突出したフランジ壁16が形成されている。前壁部13の上端部側には、前方に向けて突出した第1係合突起17が形成されている。第1係合突起17は、前壁部13における左右方向L2の中央部分に形成され、左右方向L2に沿って僅かに延びるように形成されている。
【0030】
後壁部14には、後壁部14を上下に貫く連結凹部18が形成されている。連結凹部18は、後壁部14における左右方向L2の中央部分に形成され、後方に向けてさらに開口している。
一対の側壁部15には、前後方向L1に沿って延びると共に下方に開口する縦溝15aがそれぞれ形成されている。これにより、一対の側壁部15は、前壁部13と同様に縦溝15aを挟んで壁部が左右方向L2に並んだ二重壁状に形成されている。
一対の側壁部15の上端部には、全長に亘って段差部19がそれぞれ形成されている。これにより、一対の側壁部15の上端部は、左右方向L2の外側部分が内側部分よりも下方に凹んでいる。
【0031】
第1底壁部11と第1周壁部12とで画成される第1容器本体10の内部には、上方に開口した金属製の中皿20が嵌合等によって取り付けられている。この中皿20の内部に内容物が収容される。
なお、図示の例では中皿20の内部を1つの収容空間としているが、例えば複数の仕切り壁によって中皿20の内部を複数の収容空間に仕切る構成としても構わない。この場合には、例えば各収容空間内に異なる内容物を別個に収容することが可能となる。ただし、中皿20は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0032】
第1底壁部11には、第1底壁部11を上下に貫通する貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、第1底壁部11における左右方向L2の中央部分に形成され、左右方向L2よりも前後方向L1に長い平面視矩形状に形成されている。
さらに第1底壁部11には、下方に向けて僅かに突出すると共に前後方向L1に沿って延びる一対のガイドリブ22が形成されている。一対のガイドリブ22は、貫通孔21の開口縁に沿って形成され、左右方向L2に間隔をあけて平行に配設されている。なお、ガイドリブ22は、その下端開口縁が第1周壁部12の下端開口縁と略面一となるように下方に突出している。
ガイドリブ22の下端部には、左右方向L2の内側に向けて突出したガイド突起23がガイドリブ22の全長に亘って形成されている。
【0033】
蓋体30は、平面視矩形状に形成され、第1容器本体10の第1底壁部11に対して上下方向に対向する天板部31と、天板部31の外周縁部から下方に向けて延びた枠壁部32と、を備え、第1容器本体10に対して左右方向L2に延びる回転軸線M回りに回転可能に連結されている。
【0034】
枠壁部32は、前方に位置する前枠部33と、後方に位置する後枠部34と、左右方向L2の両側に位置すると共に前枠部33と後枠部34とを前後方向L1に接続する一対の側枠部35と、を有している。
【0035】
前枠部33は、第1容器本体10のフランジ壁16に対して上方から対向している。一対の側枠部35は、第1容器本体10における一対の側壁部15の段差部19に対して上方から対向している。これらのことより、蓋体30は上下方向に位置決めされた状態で第1容器本体10に対して重なっている。
なお、前枠部33における左右方向L2の中央部分には、前枠部33を前後方向L1に貫通すると共に下方に開口した窓孔36が形成されている。
【0036】
後枠部34には、左右方向L2の中央部分において、下方に向けて突設されると共に第1容器本体10側の連結凹部18内に収容されたヒンジブロック37が形成されている。
ヒンジブロック37は、左右方向L2に沿って延びると共に下端部が半円状に突出している。ヒンジブロック37と連結凹部18とは、左右方向L2に沿って延びた回転軸部38を介して互いに連結されている。
回転軸部38は、連結凹部18における左右方向L2の内側端部と、ヒンジブロック37における左右方向L2の外側端部とをそれぞれ連結している。なお、回転軸部38の中心軸線が上記回転軸線Mとされている。
【0037】
これにより、蓋体30の全体は、第1容器本体10に対して回転軸線M回りに回転可能に連結され、回転軸線M回りに蓋体30を開閉操作することが可能とされている。
【0038】
前枠部33には、第1容器本体10に対する蓋体30の閉状態を維持するロック片40が窓孔36内に配置されるように設けられている。
ロック片40は、左右方向L2に延びた板状に形成されると共に、窓孔36を画成する上壁面から下方に向けて突設されている。なお、ロック片40の下端部とフランジ壁16との間には、例えば指先を進入させることができる程度の隙間が上下方向に確保されている。
【0039】
ロック片40には、後方に向けて突出すると共に、第1容器本体10側に形成された第1係合突起17に対して離脱可能にアンダーカット嵌合される第2係合突起41が形成されている。第1係合突起17に対して第2係合突起41が下方から係合することによって、蓋体30は閉状態でロックされる。
そして、例えば指先等によって、ロック片40の下端部を前方に向けて僅かに撓ませるように移動させて、第1係合突起17と第2係合突起41との係合を解除することで、蓋体30の閉状態のロックを解除することが可能となる。
【0040】
蓋体30における天板部31の内面には、平面視矩形状の鏡42が取り付けられている。なお、鏡42の取付方法としては、例えば接着剤や両面テープ等による接着、その他の方法による固着等が挙げられるが、特に限定されるものではない。図示の例では、鏡42は薄い板状に形成されているが、この場合に限定されるものではなく、例えばシート状或いはフィルム状の鏡であっても構わないし、天板部31の内面に金属反射膜を蒸着する方法等により鏡を設けても構わない。
ただし、鏡42は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0041】
第2収容容器3は、第1収容容器2に対して前後方向L1にスライド移動可能に、第1収容容器2の下方に組み合わされている。第2収容容器3は、スライド移動に伴って第1収容容器2により開閉される取出口50を有している。
そして、第2収容容器3は、
図1〜
図3に示すように取出口50が閉塞される閉位置P1と、
図4及び
図5に示すように取出口50が開放される開位置P2と、の間をスライド移動可能に構成されている。
【0042】
なお、
図1〜
図3に示すように、第1収容容器2と第2収容容器3とが上下方向に完全に重なり合っているときの第2収容容器3の位置が閉位置P1となる。そして、
図4及び
図5に示すように、閉位置P1から第2収容容器3が第1収容容器2に対して、第2収容容器3における前後方向L1の長さの略半分の長さ分、前方に向けてスライド移動したときの第2収容容器3の位置が開位置P2となる。
【0043】
図1〜
図3に示すように、第2収容容器3は、上方に向けて開口すると共に、第1収容容器2全体の厚みと同等の厚みの有底筒状に形成された第2容器本体60と、第2容器本体60内に配設された内枠部70と、を備えている。
【0044】
第2容器本体60は、第2底壁部(底部)61と、第2底壁部61の外周縁部から上方に向けて延びた第2周壁部62と、を備えている。第2周壁部62の上端部は、第1収容容器2におけるフランジ壁16、一対の側壁部15、及び後壁部14に対して下方から対向している。
【0045】
内枠部70は、第2容器本体60の開口部を塞ぐ閉塞板71と、閉塞板71から下方に向けて延びると共に前方に位置する前方枠部(ガイド板)72と、閉塞板71から下方に向けて延びると共に後方に位置する後方枠部73と、閉塞板71から下方に向けて延びると共に左右方向L2の両側に位置し、且つ前方枠部72と後方枠部73とを前後方向L1に接続する一対の側方枠部74と、を備えている。
そして、内枠部70と第2底壁部61とで画成された空間が、刷毛4を収容する収容空間となる。
【0046】
閉塞板71には、閉塞板71を上下方向に貫通する上記取出口50が形成されている。取出口50は、閉塞板71のうち主に前方側から前後方向L1の中央部分に亘って形成され、前後方向L1よりも左右方向L2に長い平面視矩形状に形成されている。
なお、取出口50の開口端縁のうち、前方に位置する前方端縁における左右方向L2の中央部分は、前方に向けて円弧状に膨らんだ膨出端縁51が形成されている。
【0047】
さらに閉塞板71には、上方に向けて突出すると共に前後方向L1に沿って延びる一対のスライドリブ75が形成されている。
一対のスライドリブ75は、閉塞板71における後方側において、左右方向L2に間隔をあけて配設されている。より具体的には、一対のスライドリブ75は、一対のガイドリブ22に対して左右方向L2の内側から向かい合うように配設されている。
スライドリブ75の上端部には、左右方向L2の外側に向けて突出し、ガイド突起23に対して上方から接触するスライド突起76がスライドリブ75の全長に亘って形成されている。スライド突起76は、ガイド突起23に対して前後方向L1に移動可能に接触している。
【0048】
このように、スライド突起76がガイド突起23に対して前後方向L1に移動可能に上方から接触していることで、第2収容容器3は第1収容容器2に対して上下方向に組み合わされていると共に第1収容容器2に対して前後方向L1にスライド可能とされている。
【0049】
なお、
図4及び
図5に示すように、第2収容容器3を開位置P2にスライド移動させたときに、一対のスライドリブ75は第1底壁部11に形成された貫通孔21の前方端縁に対して後方から接触可能とされている。これにより、第2収容容器3は、それ以上の前方に向けたスライド移動が規制される。
なお、
図4及び
図5では、一対のスライドリブ75と貫通孔21の前方端縁との間に、若干の隙間があいている場合を図示している。また、閉塞板71には、スライド突起76を射出成形で形成する場合の抜き孔71aが閉塞板71を上下方向に貫通するように形成されている。
【0050】
図1〜
図3に示すように、前方枠部72は、取出口50の開口周縁のうち、膨出端縁51を含む前方端縁に沿って左右方向L2に延びると共に、前方端縁から下方に向けて延びている。図示の例では、前方枠部72は、下方に向かうにしたがって漸次後方に向けて湾曲するように形成され、第2底壁部61に対して上方から接触している。
このように前方枠部72は湾曲しているので、前方枠部72は後述する下シート部81を第2底壁部61側から取出口50側に向けて案内する役割を果たしている。
【0051】
後方枠部73は、左右方向L2に沿って延びる板状に形成されると共に閉塞板71から下方に向けて延び、第2底壁部61に対して上方から接触している。図示の例では、後方枠部73は第2周壁部62との間に隙間をあけた状態で第2周壁部62の内側(前方)に配設されている。
一対の側方枠部74は、前後方向L1に沿って延びる板状に形成されると共に閉塞板71から下方に向けて延び、第2底壁部61に対して上方から接触している。図示の例では、一対の側方枠部74は、第2周壁部62との間に隙間をあけた状態で第2周壁部62の左右方向L2の内側に配設され、且つ前方枠部72と後方枠部73とを前後方向L1に一体に連結している。
【0052】
一対の側方枠部74の下端部には、側方枠部74を左右方向L2に貫通すると共に下方に開口し、且つ前後方向L1に延びたスライド溝77がそれぞれ形成されている。
図示の例では、スライド溝77は、後側壁面77aが後方枠部73よりも若干前方に位置する部分に配置され、且つ前側壁面77bが前方枠部72の下端部よりも若干後方に位置する部分に配置されるように、前後方向L1に沿って直線状に形成されている。
【0053】
なお、スライド溝77は、側方枠部74を左右方向L2に貫通する場合に限定されるものではなく、例えば側方枠部74の内面に凹状に形成されていても構わない。
【0054】
上述のように構成された第2収容容器3内には、上下に折り返されて刷毛4を上下方向から挟み込むシート体80が、取出口50から外部に向けて引き出し可能に配設されている。
【0055】
刷毛4について簡単に説明する。
刷毛4は、ブラシ5が取り付けられた柄部6を備えている。図示の例では、左右方向L2に沿った刷毛4の横幅は、取出口50の左右方向L2に沿った長さよりも僅かに短く形成されている。また、前後方向L1に沿った刷毛4の全長は、取出口50の前後方向L1に沿った長さよりも僅かに長く、且つ第2収容容器3内に収まる長さに形成されている。また、上下方向に沿った刷毛4の厚みは、第2収容容器3内に収まる厚みとされている。
このように構成された刷毛4は、柄部6を取出口50側に向けた状態で第2収容容器3内に収容されている。
【0056】
シート体80は、
図1〜
図3、
図6及び
図7に示すように、フィルム状の薄いシートであって、刷毛4を下方から支持する下シート部81と、折返し部82を介して下シート部81に連結され、刷毛4を上方から覆って押さえ込む上シート部83と、を備えている。
なお、シート体80としては、例えば平滑性、非伸縮性で一定の引張強度を有し、且つ折り曲げ前の状態に復帰しようとする復元力が高いものが好ましい。
【0057】
シート体80は、折返し部82を後方側に配置させた状態で、前方に引き出し可能に第2収容容器3内に配設されている。
シート体80の全体は、左右方向L2に沿った幅方向の長さ(横幅)が刷毛4の横幅よりも僅かに長く形成され、刷毛4をその全幅に亘って上下方向に挟んでいる。下シート部81は、刷毛4及び上シート部83よりも、折返し部82から前方に向けて長く形成されている。図示の例では、下シート部81のうち、刷毛4よりも前方に位置する部分は、第2容器本体60における前方枠部72上に配置されていると共に、前方枠部72の形状に倣って上方に向けて湾曲している。
なお、シート体80の横幅は刷毛4の横幅と同じ長さでも良いが、刷毛4をその全幅に亘って上下方向に確実に挟み込むために、上述のようにシート体80の横幅を刷毛4の横幅よりも長くすることがより好ましい。
【0058】
下シート部81には、折返し部82とは前後方向L1の反対側に位置するシート端縁に、取出口50に向けて突出する摘み片84が形成されている。
摘み片84は、下シート部81における左右方向L2の中央部分に形成され、取出口50よりも僅かに上方に突出して、第1収容容器2側の縦溝13a内に下方から入り込んでいる。また、摘み片84と第1容器本体10の膨出端縁51との間には、例えば指先を入れることができる程度の隙間が形成されている。
【0059】
下シート部81には、上方に向けて僅かに膨らんだ膨出部85が形成されている。図示の例では、膨出部85は、下シート部81における前後方向L1の中央部分に配置され、上方に膨らむと共に左右方向L2に沿って延びるように形成されている。
膨出部85は、柄部6とブラシ5との接続部分よりも後方に配置され、刷毛4に対してシート体80が前方移動したときに、柄部6とブラシ5との接続部分に対して後方から接触可能とされている。
【0060】
さらに下シート部81には、左右方向L2の外側に向けて突出し、側方枠部74に形成されたスライド溝77内に入り込む係止突起86が形成されている。係止突起86は、下シート部81のうち折返し部82よりも僅かに前方に位置する部分に形成され、前方に向いた係止面87を有している。
係止突起86は、シート体80の引き出し操作に伴ってスライド溝77に沿って移動し、取出口50からシート体80が所定量引き出されたときに、スライド溝77の前側壁面77bに対して後方から接触して、前側壁面77bに対して係止される。これにより、シート体80はそれ以上の前方への引き出しが規制される。
【0061】
従って、係止突起86及びスライド溝77は、第2収容容器3とシート体80との間に設けられ、取出口50からのシート体80の所定量を超える引き出しを規制する規制部材90を構成する。
【0062】
上シート部83には、上方に向けて折り返された返し片88が形成されている。返し片88は、上シート部83における左右方向L2の中央部分に形成され、前方から後方に立ち上がるように折り返されている。
なお、上シート部83には、シート体80の折り返しに伴う復元力によって折返し部82を中心として上方に起き上がるような応力が作用している。そのため、返し片88は、シート体80の引き出し操作の過程において、上シート部83が上方に起き上がることに伴って第1収容容器2におけるフランジ壁16に対して下方から接触可能とされている。
【0063】
(コンパクト容器の使用)
次に、上述したように構成されたコンパクト容器1を使用する場合について説明する。
この場合には、
図1〜
図3に示す状態から、第1収容容器2に対して第2収容容器3を前方にスライド移動させて、
図4及び
図5に示すように第2収容容器3を閉位置P1から開位置P2にセットする。
【0064】
このとき、一対のスライドリブ75が一対のガイドリブ22によってガイドされるので、がたつき少なく安定して第2収容容器3を前後方向L1にスライド移動させることができる。また、第2収容容器3を開位置P2に位置させたときに、一対のスライドリブ75を貫通孔21の前方端縁に接触させることが可能であるので、第2収容容器3を開位置P2に確実にセットすることができる。
【0065】
第2収容容器3を開位置P2にセットすることで、取出口50を開放させることができる。本実施形態では、第2収容容器3が第1収容容器2の下方に配設されているので、取出口50を上方に向けて開放させることができる。
取出口50を開放させることで、第2収容容器3内に配設されているシート体80を取出口50から外部に引き出す(引っ張り出す)ことができると共に、シート体80に挟み込まれている刷毛4をシート体80と共に取出口50から外部に引き出すことができる。
【0066】
具体的に説明する。
第2収容容器3を開位置P2にセットして取出口50を開放させると、下シート部81の摘み片84が取出口50の上方に突出した状態となっている。そのため、摘み片84を例えば指先等で把持しながら、下シート部81を前方且つ上向きに引き出すことができる。このとき、摘み片84と膨出端縁51との間に形成された隙間に指先を入れることができるので、摘み片84を容易に把持し易い。
【0067】
そして、
図8に示すように下シート部81を引き出すことで、刷毛4を挟み込んだ状態でシート体80の全体を徐々に引き出すことができる。なお、シート体80に形成された係止突起86は、シート体80の引き出し操作に伴って第2収容容器3に形成されたスライド溝77内を前方に向けて移動する。
【0068】
この際、シート体80に形成された膨出部85が柄部6とブラシ5との接続部分に対して後方から接触(
図5参照)するので、シート体80と共に刷毛4を取出口50から確実に引き出すことが可能となる。特に、
図5に示すように刷毛4の全体が第2収容容器3内に入り込んでいる、引き出し初期状態においては、膨出部85を利用してシート体80と共に刷毛4を効果的に引き出し易くなる。
【0069】
ところで上シート部83には、シート体80の折り返しに伴う復元力によって折返し部82を中心として上方に起き上がるような応力が作用している。そのため、
図9及び
図10に示すように、シート体80及び刷毛4の取出し操作を進行させて上シート部83を取出口50から外部に徐々に引き出すと、上シート部83は上方に起き上がりながら取出口50から引き出される。
従って、シート体80を取出口50から引き出すにつれて、上シート部83を刷毛4から離間するように徐々に開かせることができる。
【0070】
そして、
図11に示すように、返し片88が取出口50の近くに達する程度、上シート部83を引き出すと、返し片88は第1収容容器2のフランジ壁16に対して下方から接触して係合する。そのため、シート体80の引き出し操作をさらに進行させることで、上シート部83を返し片88とフランジ壁16との係合部分を起点として大きく開かせることができ、上シート部83を刷毛4からさらに大きく離間させることができる。
【0071】
これにより、シート体80を取出口50から十分に引き出すことができると共に、シート体80から刷毛4を容易に取り出し易くすることができる。そして最後に、シート体80と共に引き出された刷毛4をシート体80から取り出すことで、刷毛4を使用することが可能となる。
【0072】
なお、刷毛4を取り出すことに前後して、例えば指先等によって、ロック片40の下端部を前方に向けて僅かに撓ませるように移動させて、第1係合突起17と第2係合突起41との係合を解除し、蓋体30の閉状態のロックを解除し、蓋体30を第1軸線回りに回転させて開状態にする。
これにより、取り出した刷毛4のブラシ5に、第1容器本体10に収容されている内容物を付着させて、内容物の塗布を行える。
【0073】
上述のように、刷毛4を直接的に取出口50から取り出すのではなく、刷毛4を包み込むように上下方向から挟み込んだシート体80ごと刷毛4を引き出すので、取出口50の開口面積が十分に確保できない場合であっても、刷毛4をスムーズに取り出して利用することができる。
【0074】
また、内容物の塗布が終了した後、刷毛4を第2収容容器3内に戻して収容する場合には、取出口50から引き出されたシート体80の内側に刷毛4を進入させながら、シート体80ごと刷毛4を第2収容容器3内に押し込む。これにより、シート体80で刷毛4を上下方向から挟み込んだ状態で、これらシート体80及び刷毛4を第2収容容器3内に押し込んで格納でき、元の状態に戻すことができる(
図5に示す状態)。
【0075】
特に、シート体80の内側に刷毛4を挟み込んだ状態を維持しながら取出口50を通過させて、刷毛4及びシート体80を第2収容容器3内に戻すので、その過程において、刷毛4をシート体80で覆って保護できる。そのため、取出口50の開口面積が十分に確保できない場合であっても、刷毛4が取出口50に引っ掛かり難く、刷毛4を第2収容容器3内にスムーズに収容することができる。
【0076】
上述したように、本実施形態のコンパクト容器1によれば、シート体80を利用することで、刷毛4をスムーズに出し入れすることができ、出し入れ操作を容易に行うことができる。
また、シート体80で刷毛4を覆って保護できるので、刷毛4の引っ掛かりが生じ難く、刷毛4の品質を維持し易い。特に、シート体80でブラシ5を保護できるので、取出口50に対するブラシ5の引っ掛かりを抑制できる。そのため、軟性の塗布部であるブラシ5に癖等が付いてしまうことを防止して、ブラシ5の毛並みの状態を良好に維持することができ、例えばブラシ5による繊細な塗布を行える。従って、例えば化粧筆(メイクブラシ)等の化粧用塗布具として刷毛4を好適に利用できる。
【0077】
また、シート体80が刷毛4をその全幅に亘って覆うので、シート体80を利用してブラシ5を含む刷毛4の全体を包み込むように上下方向から挟み込むことが可能である。従って、刷毛4の引っ掛かりを効果的に抑制でき、刷毛4のよりスムーズな出し入れを行うことができる。また、例えばブラシ5が折れ曲がった状態のまま収容されることを防止でき、折れ曲がりに起因する癖等がブラシ5につくことを効果的に防止できるうえ、ブラシ5に内容物が付着したとしても、シート体80がブラシ5をその全幅に亘って覆うので内容物が飛散することを防止し易い。
【0078】
また、下シート部81が刷毛4を前後方向L1の全長に亘って支持するので、下シート部81の引き出し操作に伴って刷毛4を安定且つ容易に取出口50から外部に引き出すことができる。
さらに、摘み片84を利用して下シート部81の引き出し操作を行えるので、刷毛4の取出しを容易に行えると共に、摘み片84という特定の位置を毎回例えば指先で摘まみながら引き出し操作できるので、シート体80及び刷毛4の引き出し具合を再現性良く繰り返すことができる。従って、刷毛4の取出し操作を繰り返し安定して行うことができる。
【0079】
また、第1収容容器2における前方枠部72に沿って下シート部81を引き出すことができるので、第2収容容器3の深さ(厚み)に影響されることなく、下シート部81を抵抗少なくスムーズに取出口50から外部に引き出すことができる。
しかも、下シート部81に形成された係止突起86がスライド溝77内を移動するので、例えば第2底壁部61からの下シート部81の浮き上がりを抑えながら、下シート部81を前方に移動させることができる。これにより、シート体80及び刷毛4のスムーズな引き出し操作を行い易い。
【0080】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態では、塗布具として刷毛4を用いた場合を例に挙げて説明したが、刷毛4に限定されるものではなく、例えばパフ等、内容物を塗布できるものであれば良い。
【0082】
また、第1収容容器2の下側に第2収容容器3を配設させて、第1収容容器2と第2収容容器3とを上下に組み合わせたが、この場合に限定されるものではなく、第1収容容器2の上側に第2収容容器3を組み合わせても構わない。
ただし、上述のように第1収容容器2の下側に第2収容容器3を配設することで、取出口50を上方に向けて開口させることができるので、例えば刷毛4を出し入れする際に、ブラシ5に付着した内容物が落下したとしても、第2収容容器3内に留めることができ、それ以外の場所に飛散することを防止し易い。
【0083】
また、上記実施形態では、第1収容容器2に対して第2収容容器3を前後方向L1にスライド操作可能に構成したが、この場合に限定されるものではなく、例えばその他の方向にスライド移動させても構わないし、回転によるスライド移動であっても構わない。
【0084】
また、上記実施形態では、スライド溝77を前後方向L1に沿って直線状に形成したが、
図12に示すようにスライド溝77のうち前方寄りの部分が前方に向かうにしたがって上方に向けて僅かに湾曲するように、スライド溝77を形成しても構わない。
なお、この場合のスライド溝77の湾曲具合としては、例えば前後方向L1に沿った刷毛4の全長、取出口50の開口面積、第2収容容器3の厚み等を考慮しながら、シート体80の引き出し角度に対応するように設定すれば良い。
【0085】
スライド溝77を湾曲させた場合、
図12に示すように、第2収容容器3の第2底壁部61に上方に向けて突出すると共に、スライド溝77内に下方から入り込むガイド壁61aを形成することが好ましい。
【0086】
ガイド壁61aは、第2底壁部61のうちスライド溝77に対して対向する部分に形成されると共に、前後方向L1に沿って延びるように形成されている。具体的には、ガイド壁61aはスライド溝77内の前方部分に配置され、スライド溝77の湾曲に対応するように前方に向かうにしたがって上方に向けて湾曲するように形成されている。これにより、ガイド壁61aの上端面は、なだらかに湾曲した湾曲面とされている。
【0087】
スライド溝77内にガイド壁61aが配置されていることで、スライド溝77の上壁面と、ガイド壁61aの上端面との上下方向の間隔(スライド溝77の溝高さ)を、スライド溝77の全長に亘って一定にすることが可能とされている。
【0088】
上述のようにスライド溝77及びガイド壁61aを形成することで、シート体80の引き出し操作に伴って、下シート部81に形成された係止突起86をガイド壁61aの上端面に沿ってガイドしながらスライド溝77に沿って移動させることができるので、シート体80を取出口50に向けて誘導させ易くなる。
【0089】
従って、
図12及び
図13に示すように、上記実施形態の場合よりもシート体80の引き出し操作をさらに進行させることができ、予め設定した所定量の引き出しを行うことで、例えば刷毛4のブラシ5の先端部を取出口50の下方付近まで移動させることが可能となる。
なお、これ以上シート体80を引き出した場合には、返し片89がフランジ壁16から外れて両者の係合が解除されると共に、シート体80が第2収容容器3から抜け出てしまうおそれがある。
【0090】
この点、本実施形態では、
図12及び
図13に示すように刷毛4のブラシ5の先端部が取出口50の下方付近まで移動すると、下シート部81に形成された係止突起86の係止面87が、スライド溝77の前側壁面77bに対して後方から接触して係止される。
これにより、シート体80はそれ以上の引き出しが規制される。従って、規制部材90を利用して第2収容容器3からシート体80が抜け出てしまうことを防止することができる。従って、シート体80の引き出し操作性を向上することができ、刷毛4の出し入れ操作を安定して行うことができる。また、操作者はシート体80の引き出し操作が完了したことを、容易且つ確実に認識することができる。
【0091】
上述のように、スライド溝77の前方側を上方に向けて湾曲させ、これに対応してガイド壁61aを形成することで、シート体80を取出口50からさらに引き出すことが可能になり、より好ましい。
【0092】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。