特許第6802041号(P6802041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802041
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20201207BHJP
   H01M 8/0267 20160101ALI20201207BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20201207BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20201207BHJP
【FI】
   H01M8/0247
   H01M8/0267
   H01M8/1004
   H01M8/10 101
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-215566(P2016-215566)
(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2018-73748(P2018-73748A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】五味 雄一
(72)【発明者】
【氏名】前田 正史
(72)【発明者】
【氏名】大津 亘
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−066829(JP,A)
【文献】 特開2009−266828(JP,A)
【文献】 特開2007−005237(JP,A)
【文献】 特開2010−232062(JP,A)
【文献】 特開2011−258396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を一対のガス拡散層で挟んだ膜電極ガス拡散層接合体と、
前記膜電極ガス拡散層接合体を挟むカソード側セパレータ及びアノード側セパレータと、を備え、
前記カソード側セパレータは、前記膜電極ガス拡散層接合体側に凹凸が交互に並んで画定された複数の溝を有する酸化剤ガス流路を含み、
前記アノード側セパレータは、前記膜電極ガス拡散層接合体側に凹凸が交互に並んで画定された複数の溝を有する燃料ガス流路と、前記燃料ガス流路の裏側に前記複数の溝と表裏一体である複数の溝を有する冷媒流路と、酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス入口マニホールド及び酸化剤ガス出口マニホールドと、燃料ガスが流通する燃料ガス入口マニホールド及び燃料ガス出口マニホールドと、燃料ガスを前記燃料ガス入口マニホールドから前記燃料ガス流路に分配する分配部と、燃料ガスを前記燃料ガス流路から前記燃料ガス出口マニホールドにかけて合流させる合流部と、を含み、
前記燃料ガス流路の前記複数の溝は、前記アノード側セパレータの略中央部に形成され、前記分配部から前記合流部に向けて互いに平行に延び、
前記燃料ガス流路の下流側は、前記膜電極ガス拡散層接合体を介して、前記酸化剤ガス流路の上流側に対向し、
前記燃料ガス出口マニホールドは、前記酸化剤ガス出口マニホールドよりも前記酸化剤ガス入口マニホールドに近く、
前記冷媒流路の前記複数の溝の幅は、前記酸化剤ガス入口マニホールドの近傍の領域の方が離れた領域よりも広く、
前記燃料ガス流路は、前記酸化剤ガス入口マニホールドの近傍の領域に、当該燃料ガス流路の前記溝を塞ぐ閉塞部を備える、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、膜電極接合体を挟む一対のガス拡散層と、一対のガス拡散層を挟むアノード側セパレータとカソード側セパレータとを備えている。カソード側セパレータには、カソード入口マニホールドと、カソードガス流路とが形成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−251778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化剤ガスは、カソード入口マニホールドからカソードガス流路へ流れる。ここで、カソード入口マニホールドの近傍では、発電反応による生成水の量は少なく、カソード側のガス拡散層を通過するカソードガスの流速も比較的速くなりやすい。このため、カソード入口マニホールドの近傍での膜電極接合体の乾燥が促進されて、燃料電池の発電性能が低下する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、カソード入口マニホールドの近傍で膜電極接合体の乾燥が抑制された燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、膜電極接合体を一対のガス拡散層で挟んだ膜電極ガス拡散層接合体と、前記膜電極ガス拡散層接合体を挟むカソード側セパレータ及びアノード側セパレータと、を備え、前記カソード側セパレータは、前記膜電極ガス拡散層接合体側に凹凸が交互に並んで画定された複数の溝を有する酸化剤ガス流路を含み、前記アノード側セパレータは、前記膜電極ガス拡散層接合体側に凹凸が交互に並んで画定された複数の溝を有する燃料ガス流路と、前記燃料ガス流路の裏側に前記複数の溝と表裏一体である複数の溝を有する冷媒流路と、酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス入口マニホールド及び酸化剤ガス出口マニホールドと、燃料ガスが流通する燃料ガス入口マニホールド及び燃料ガス出口マニホールドと、燃料ガスを前記燃料ガス入口マニホールドから前記燃料ガス流路に分配する分配部と、燃料ガスを前記燃料ガス流路から前記燃料ガス出口マニホールドにかけて合流させる合流部と、を含み、前記燃料ガス流路の前記複数の溝は、前記アノード側セパレータの略中央部に形成され、前記分配部から前記合流部に向けて互いに平行に延び、前記燃料ガス流路の下流側は、前記膜電極ガス拡散層接合体を介して、前記酸化剤ガス流路の上流側に対向し、前記燃料ガス出口マニホールドは、前記酸化剤ガス出口マニホールドよりも前記酸化剤ガス入口マニホールドに近く、前記冷媒流路の前記複数の溝の幅は、前記酸化剤ガス入口マニホールドの近傍の領域の方が離れた領域よりも広く、前記燃料ガス流路は、前記酸化剤ガス入口マニホールドの近傍の領域に、当該燃料ガス流路の前記溝を塞ぐ閉塞部を備える、燃料電池によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
カソード入口マニホールドの近傍で膜電極接合体の乾燥が抑制された燃料電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、燃料電池の単セルの断面図である。
図2図2は、カソード側セパレータをMEGA側から見た図である。
図3図3は、アノード側セパレータをMEGA側から見た図である。
図4図4は、第1変形例のアノード側セパレータをMEGA側から見た図である。
図5図5は、第2変形例のアノード側セパレータをMEGA側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、単セル2が複数積層された燃料電池1の部分断面図である。この燃料電池1は、反応流体である燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば酸素)の供給を受けて発電する固体高分子型燃料電池である。単セル2は、膜電極ガス拡散層接合体10(以下、MEGA(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)と称する)と、MEGA10を挟持するアノード側セパレータ40a及びカソード側セパレータ20c(以下、セパレータと称する)とを含む。MEGA10は、アノードガス拡散層16a及びカソードガス拡散層16c(以下、拡散層と称する)と、膜電極接合体(以下、MEA(Membrane Electrode Assembly)と称する)11とを有している。
【0010】
MEA11は、電解質膜12と、電解質膜12の一方の面及び他方の面のそれぞれに形成されたアノード触媒層14a及びカソード触媒層14c(以下、触媒層と称する)とを含む。電解質膜12は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す固体高分子薄膜であり、例えばフッ素系のイオン交換膜である。触媒層14a及び14cは、例えば白金(Pt)などを担持したカーボン担体とプロトン伝導性を有するアイオノマとを含む触媒インクを、電解質膜12に塗布することにより形成される。
【0011】
拡散層16a及び16cは、ガス透過性及び導電性を有する材料、例えば炭素繊維や黒鉛繊維などの多孔質の繊維基材で形成されている。拡散層16a及び16cは、それぞれ触媒層14a及び14cに接合されている。
【0012】
セパレータ20c及び40aのそれぞれは、導電性の金属板をプレス成型することにより、反応ガスが流通する流路と冷媒が流通する流路とが表裏一体に形成されている。これにより、セパレータ20c及び40aの薄型化されている。
【0013】
具体的には、セパレータ20cは、断面視で凹凸が交互に並んだ形状であり、触媒層14c側には、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝23と、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝25とが形成されている。また、触媒層14cとは反対側には、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝24と、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝26とが形成されている。溝23及び25と、溝24及び26とは表裏一体に形成されている。ここで、溝23及び25には酸化剤ガスが流通し、溝24及び26には冷媒が流通する。従って、冷媒が流通する溝24は交互に並んだ溝23を仕切る隔壁として機能し、冷媒が流通する溝26は交互に並んだ溝25を仕切る隔壁として機能する。このため、溝23の幅L23は互いに隣接する溝24同士の間隔に相当し、同様に、溝24の幅L24は互いに隣接する溝23同士の間隔に相当し、溝25の幅L25は互いに隣接する溝26同士の間隔に相当し、溝26の幅L26は互いに隣接する溝25同士の間隔に相当する。幅L25及びL26はほぼ同じ幅であるが、幅L24は、幅L23、L25、及びL26のそれぞれよりも広い。幅L23は、幅L24、L25、及びL26のそれぞれよりも狭い。
【0014】
同様に、セパレータ40aは、断面視で凹凸が交互に並んだ形状であり、触媒層14a側には、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝43と、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝45とが形成されている。また、触媒層14aとは反対側には、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝44と、所定の間隔をあけて互いに隣接した複数の溝46とが形成されている。溝43及び45と、溝44及び46とは表裏一体に形成されている。ここで、溝43及び45には燃料ガスが流通し、溝44及び46には冷媒が流通する。従って、冷媒が流通する溝44は交互に並んだ溝43を仕切る隔壁として機能し、冷媒が流通する溝46は交互に並んだ溝45を仕切る隔壁として機能する。このため、溝43の幅L43は互いに隣接する溝44同士の間隔に相当し、同様に、溝44の幅L44は互いに隣接する溝43同士の間隔に相当し、溝45の幅L45は互いに隣接する溝46同士の間隔に相当し、溝46の幅L46は互いに隣接する溝45同士の間隔に相当する。幅L45及びL46はほぼ同じ幅であるが、幅L44は、L43、L45、及びL46のそれぞれよりも広い。幅L43は、幅L44、L45、及びL46のそれぞれよりも狭い。
【0015】
次に、セパレータ20cについて説明する。図2は、セパレータ20cをMEGA10側から見た図である。セパレータ20cには、酸化剤ガスが供給される酸化剤ガス入口マニホールドc1及び排出される酸化剤ガス出口マニホールドc2、冷媒が供給される冷媒入口マニホールドw1及び排出される冷媒出口マニホールドw2、燃料ガスが供給される燃料ガス入口マニホールドa1及び排出される燃料ガス出口マニホールドa2が形成されている。詳しくは後述するが、セパレータ40aにも同様のマニホールドが形成されている。
【0016】
また、セパレータ20cには、拡散層16cを介してMEA11に対向し酸化剤ガス入口マニホールドc1側から酸化剤ガス出口マニホールドc2側に延びた酸化剤ガス流路Gc、酸化剤ガスを酸化剤ガス入口マニホールドc1から酸化剤ガス流路Gcに分配する分配部21、酸化剤ガスを酸化剤ガス流路Gcから酸化剤ガス出口マニホールドc2にかけて合流させる合流部29、が形成されている。酸化剤ガス流路Gcは、セパレータ20cの略中央部に形成され、酸化剤ガス入口マニホールドc1側から酸化剤ガス出口マニホールドc2側に延び、上述した複数の溝23及び25を有している。尚、溝23及び25に表裏一体に形成された溝24及び26は、冷媒流路を画定する。ここで溝23及び25が延びた方向を長さ方向LDとし、溝23及び25が並んだ方向であって長さ方向LDに垂直な方向を幅方向WDとする。溝23〜26は、分配部21から合流部29に向けて互いに平行に延びている。酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口マニホールドc1から分配部21、酸化剤ガス流路Gcの溝23及び溝25、合流部29、酸化剤ガス出口マニホールドc2へと流れる。冷媒は、冷媒入口マニホールドw1から図2の分配部21の裏側を流れ、冷媒流路の溝24及び26、合流部29の裏側、冷媒出口マニホールドw2へと流れる。
【0017】
図2では、酸化剤ガス入口マニホールドc1に近い近傍領域CRを破線で囲って示している。図2では、上方側に幅狭の溝23及び幅広の溝24が形成され、下方側に略同じ幅の溝25及び26が形成されている。即ち、近傍領域CRにおいて、幅広の溝24が形成されている。これにより、近傍領域CRにおいて、溝24を流通する冷媒の流量を確保することができる。よって、近傍領域CRの温度を効果的に低下させて相対湿度を確保することができ、近傍領域CRに対応するMEA11の領域での乾燥を抑制することができる。
【0018】
次に、セパレータ40aについて説明する。図3は、セパレータ40aをMEGA10側から見た図である。セパレータ40aには、酸化剤ガスが供給される酸化剤ガス入口マニホールドc3及び排出される酸化剤ガス出口マニホールドc4、冷媒が供給される冷媒入口マニホールドw3及び排出される冷媒出口マニホールドw4、燃料ガスが供給される燃料ガス入口マニホールドa3及び排出される燃料ガス出口マニホールドa4が形成されている。上述したセパレータ20cの各マニホールドとセパレータ40aのこれらマニホールドとがそれぞれ連通する。
【0019】
セパレータ40aには、拡散層16aを介してMEA11に対向し燃料ガス入口マニホールドa3側から燃料ガス出口マニホールドa4側に延びた燃料ガス流路Ga、燃料ガスを燃料ガス入口マニホールドa3から燃料ガス流路Gaに分配する分配部41、燃料ガスを燃料ガス流路Gaから燃料ガス出口マニホールドa4にかけて合流させる合流部49、が形成されている。燃料ガス流路Gaは、セパレータ40aの略中央部に形成され、燃料ガス入口マニホールドa3側から燃料ガス出口マニホールドa4側に延び、上述した複数の溝43及び45を有している。尚、溝43及び45に表裏一体に形成された溝44及び46は、冷媒流路を画定する。上述した場合と同様に、溝43及び45が延びた方向を長さ方向LDとし、溝43及び45が並んだ方向であって長さ方向LDに垂直な方向を幅方向WDとする。溝43〜46は、分配部41から合流部49に向けて互いに平行に延びている。燃料ガスは、燃料ガス入口マニホールドa3から分配部41、燃料ガス流路Gaの溝43及び45、合流部49、燃料ガス出口マニホールドa4へと流れる。冷媒は、冷媒入口マニホールドw3から図3の合流部49の裏側の裏側を流れ、冷媒流路の溝44及び46、分配部41の裏側、冷媒出口マニホールドw4へと流れる。
【0020】
燃料ガス出口マニホールドa4は、酸化剤ガス出口マニホールドc4よりも酸化剤ガス入口マニホールドc3に近い。また、燃料ガス入口マニホールドa3は、酸化剤ガス入口マニホールドc3よりも酸化剤ガス出口マニホールドc4に近い。同様に、図2に示したようにセパレータ20cについても、燃料ガス出口マニホールドa2は酸化剤ガス出口マニホールドc2よりも酸化剤ガス入口マニホールドc1に近く、燃料ガス入口マニホールドa1は酸化剤ガス入口マニホールドc1よりも酸化剤ガス出口マニホールドc2に近い。このため、本実施例の燃料電池1の単セル2では、燃料ガスが流れる燃料ガス流路Gaの下流側が、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路Gcの上流側に対応する。
【0021】
図3においても、酸化剤ガス入口マニホールドc3に近い近傍領域CRを破線で囲って示している。図3では、上方側に幅狭の溝43及び幅広の溝44が形成され、下方側に略同じ幅の溝45及び46が形成されている。即ち、近傍領域CRにおいて、幅広の溝44が形成されている。これにより、近傍領域CRにおいて、溝44を流通する冷媒の流量を確保することができる。よって、近傍領域CRの温度を効果的に低下させて相対湿度を確保することができ、近傍領域CRに対応するMEA11の領域での乾燥を抑制することができる。
【0022】
また、図3に示すように、燃料ガスの下流側には溝43を塞ぐ閉塞部431と、上流側に溝43を塞ぐ閉塞部432とが、複数の溝43に交互に設けられている。ここで、閉塞部431は近傍領域CR内に設けられている。このため、燃料ガス入口マニホールドa3から流れた燃料ガスが溝43を流れて閉塞部431に衝突して、拡散層16aを介してMEA11近傍を流れることを促進することができる。これにより、例えば溝43内に滞留している生成水などを、燃料ガスを利用してアノード側から近傍領域CRに対応するMEA11へ供給することができる。このような作用によっても、近傍領域CRに対応するMEA11の領域での乾燥を抑制することができる。尚、溝45にも閉塞部451及び452が設けられている。
【0023】
また、上述したように近傍領域CRでは幅広の溝44が形成されていることに伴って、幅狭の溝43が形成されている。このため、幅狭の溝43を流れる燃料ガスの流量が低下して溝43から拡散層16aを介してMEA11に拡散される燃料ガスの流量も低下すると考えられる。しかしながら近傍領域CRにおいて閉塞部431が形成されているため、閉塞部431に衝突した燃料ガスを、拡散層16aを介してMEA11側へと拡散できる。よって、幅狭の溝43が形成されたことに伴う燃料ガスの拡散性の低下が抑制されている。
【0024】
尚、セパレータ40aと同様に、セパレータ20cにも閉塞部を設けてもよい。また、セパレータ20cに閉塞部を設けた場合、隣接する溝23間に、酸化剤ガスの流通を許容する微細溝を形成してもよい。
【0025】
次にアノード側セパレータの複数の変形例について説明する。以下の複数の変形例では、上記実施例と同じ構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。まず、第1変形例のセパレータ40aaについて説明する。図4は、第1変形例のセパレータ40aaをMEGA10側から見た図である。流路Gaaには、図4において上方側の溝43a及び44aが形成されている。溝43aは、近傍領域CRで幅狭となった幅狭部43a1を有している。溝44aは、近傍領域CRで幅広となった幅広部44a1を有している。近傍領域CR以外での溝43a及び44aは、互いにほぼ同じ幅であって、溝45や溝46ともほぼ同じ幅である。このように溝43a及び44aの近傍領域CRにのみ、幅広部44a1が形成されていても、冷媒の流量を確保でき、近傍領域CRに対応するMEA11の部分の乾燥を抑制できる。また、近傍領域CR以外の溝43a、即ち燃料ガスの上流側での溝43aの幅は、下流側の幅狭部43a1よりも幅広に形成されている。このように溝43aの幅狭の部分が一部分のみに設けられているため、溝43aの上流側を流れる燃料ガスの流量を確保できる。
【0026】
次に第2変形例であるセパレータ40abについて説明する。図5は、第2変形例のセパレータ40abをMEGA側から見た図である。酸化剤ガス入口マニホールドc3b及び酸化剤ガス出口マニホールドc4bは、燃料ガス流路Gabを幅方向WDで挟む位置に設けられている。燃料ガス入口マニホールドa3及び燃料ガス出口マニホールドa4や、冷媒入口マニホールドw3b及び冷媒出口マニホールドw4bは、燃料ガス流路Gabを長さ方向LDで挟む位置に設けられている。カソード側セパレータの各マニホールドも、図5に示したセパレータ40abの各マニホールドに対応する位置に設けられている。尚、酸化剤ガス入口マニホールドc3b及び酸化剤ガス出口マニホールドc4bはそれぞれ3つ設けられており、冷媒入口マニホールドw3b及び冷媒出口マニホールドw4bはそれぞれ2つ設けられているが、これに限定されない。
【0027】
第2変形例においても、燃料ガス出口マニホールドa4は、酸化剤ガス出口マニホールドc4bよりも酸化剤ガス入口マニホールドc3bに近く、燃料ガス入口マニホールドa3は、酸化剤ガス入口マニホールドc3bよりも酸化剤ガス出口マニホールドc4bに近い。このため、燃料ガスの下流側が酸化剤ガスの上流側に対応する。
【0028】
酸化剤ガス入口マニホールドc3bの近傍の近傍領域CRbにおいて、溝43及び44が形成されている。このため、近傍領域CRbにおいて、溝44を流通する冷媒の流量を確保することができ、近傍領域CRbの温度を効果的に低下させて相対湿度を確保して、近傍領域CRbに対応するMEAの領域での乾燥を抑制することができる。また、閉塞部431及び432は近傍領域CRb内に設けられているので、燃料ガスを利用してアノード側から近傍領域CRbに対応するMEAへ生成水を供給することができる。このような作用によっても、近傍領域CRbに対応するMEAの領域での乾燥を抑制することができる。
【0029】
上記実施例及び変形例では、拡散層は繊維基材で成形されたものであるが、これに限定されず、例えば切り曲げ加工により形成されたエキスパンド部が形成された金属多孔質体であってもよい。
【0030】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料電池
2 単セル
10 MEGA
11 MEA
20c カソード側セパレータ
23〜26、43〜46、溝
40a アノード側セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5