特許第6802048号(P6802048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802048
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20201207BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201207BHJP
【FI】
   H02M3/28 Q
   H02M7/48 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-228319(P2016-228319)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-85863(P2018-85863A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】中村 将之
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−226002(JP,A)
【文献】 特開2009−043700(JP,A)
【文献】 特開2008−109766(JP,A)
【文献】 特開2004−040962(JP,A)
【文献】 特開2015−077007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、該インバータ回路に接続された直列共振回路とを備える直列共振型電源装置を制御する制御装置であって、
前記直列共振型電源装置の出力電圧のフィードバック信号に基づき、所望の出力を得るための制御量を演算する制御量演算部と、
前記制御量演算部により演算された制御量に基づき、前記インバータ回路の出力パルス指令を生成し、該生成した出力パルス指令に応じた出力パルスが前記インバータ回路から出力されるように、前記複数のスイッチング素子に対するゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、
前記制御量を前記直列共振回路の共振周期の半分の時間ごとに加算したバッファ変数が所定値以上であり、前記インバータ回路の出力パルス指令のパルス幅が、前記直列共振回路の共振周期の半周期の奇数倍となる場合、前記インバータ回路の出力パルスを反転させる前記ゲート信号を生成し、
前記出力パルス指令のパルス幅が、前記直列共振回路の共振周期の半分の3倍を超える場合には、前記インバータ回路をゲートブロック状態とすることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載を制御する制御装置において、
前記ゲート信号生成部は、前記出力パルス指令のパルス幅が、前記直列共振回路の共振周期の半分の3倍を超える場合には、前記出力パルス指令と逆方向の出力パルス指令を出力するまで、前記インバータ回路をゲートブロック状態とすることを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列共振型電源装置を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すような直列共振型電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。図4に示す直列共振型電源装置100は、入力される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路200と、インバータ回路200に接続された直列共振回路300と、直列共振回路300に接続された絶縁変圧器400と、絶縁変圧器400の二次巻線に接続された整流平滑回路500とを備える。インバータ回路200は、公知の4つの半導体スイッチング素子201〜204を備える。直列共振回路300は、コイル301と、コンデンサ302とが直列に接続されて構成される。整流平滑回路500は、ブリッジ型全波整流回路501と、平滑コンデンサ502とを備え、絶縁変圧器400から得られる交流電力を直流電力に変換して出力する。また、図4に示す直列共振型電源装置100は、インバータ回路200の半導体スイッチング素子201〜204のゲート電極に供給するゲート信号を生成する制御装置600を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−226002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示す直列共振型電源装置100の制御方法として、インバータ回路200の出力パルス指令を、図5に示すように、直列共振回路300の共振周期の半分の奇数倍の幅を持つパルス波形の組み合わせとする制御方法がある。この方法によれば、ゼロ電流でスイッチングを行うことができ、低い電力損失で動作させることができる。
【0005】
しかしながら、上述した制御方法では、軽負荷運転時には、インバータ回路200の出力パルス指令のパルス幅が長くなり、絶縁変圧器400と整流平滑回路500との間を流れる電流が不連続となる領域において、絶縁変圧器400の励磁インダクタンスにより直列共振回路300の共振周波数が変化する。直列共振回路300の共振周波数が変化することで、インバータ回路200を流れるインバータ電流の周期が変化する。
【0006】
図6は、軽負荷運転時のインバータ出力指令およびインバータ電流を示す図である。インバータ回路200を流れるインバータ電流の周期が変化すると、図6において、点線の丸印で示すように、インバータ電流がゼロでないタイミング(インバータ回路200がゼロ電流でないタイミング)でスイッチングが行われ、スイッチング損失が増大するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、直列共振型電源装置の軽負荷運転時にも、スイッチング損失の増大を抑制することができる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る制御装置は、複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、該インバータ回路に接続された直列共振回路とを備える直列共振型電源装置を制御する制御装置であって、前記直列共振型電源装置の出力電圧のフィードバック信号に基づき、所望の出力を得るための制御量を演算する制御量演算部と、前記制御量演算部により演算された制御量に基づき、前記インバータ回路の出力パルス指令を生成し、該生成した出力パルス指令に応じた出力パルスが前記インバータ回路から出力されるように、前記複数のスイッチング素子に対するゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、前記ゲート信号生成部は、前記制御量を前記直列共振回路の共振周期の半分の時間ごとに加算したバッファ変数が所定値以上であり、前記インバータ回路の出力パルス指令のパルス幅が、前記直列共振回路の共振周期の半周期の奇数倍となる場合、前記インバータ回路の出力パルスを反転させる前記ゲート信号を生成し、前記出力パルス指令のパルス幅が、前記直列共振回路の共振周期の半分の3倍を超える場合には、前記インバータ回路をゲートブロック状態とする。
【0009】
また、本発明に係る制御装置において、前記ゲート信号生成部は、前記出力パルス指令のパルス幅が、前記直列共振回路の共振周期の半分の3倍を超える場合には、前記出力パルス指令と逆方向の出力パルス指令を出力するまで、前記インバータ回路をゲートブロック状態とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る制御装置によれば、直列共振型電源装置の軽負荷運転時にも、スイッチング損失の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る直列共振型電源装置の構成例を示す図である。
図2図1に示すゲート信号生成部による出力パルス指令の生成方法について説明するための図である。
図3図1に示すゲート信号生成部が生成する出力パルス指令およびインバータ回路を流れるインバータ電力の波形の一例を示す図である。
図4】従来の直列共振型電源装置の構成例を示す図である。
図5図4に示すインバータ回路の出力パルス指令およびインバータ電流の波形の一例を示す図である。
図6図4に示すインバータ回路の出力パルス指令およびインバータ電流の波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る直列共振型電源装置10の構成例を示す図である。
【0014】
図1に示す直列共振型電源装置10は、入力される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路20と、インバータ回路20に接続された直列共振回路30と、直列共振回路30に接続された絶縁変圧器40と、絶縁変圧器40の二次巻線に接続された整流平滑回路50と、制御装置60と、を備える。インバータ回路20は、公知の4つの半導体スイッチング素子(スイッチング素子)21〜24と、半導体スイッチング素子21〜24それぞれに逆並列接続されたダイオードとを有する。直列共振回路30は、コイル31とコンデンサ32とが直列に接続されて構成される。整流平滑回路50は、ブリッジ型全波整流回路51と平滑コンデンサ52とを備え、絶縁変圧器40から得られる交流電力を直流電力に変換して出力する。
【0015】
制御装置60は、制御量演算部61と、ゲート信号生成部62とを備える。
【0016】
制御量演算部61は、整流平滑回路50の出力電圧を示すフィードバック信号が入力され、フィードバック信号に基づき、予め設定された所望の出力電圧を得るための制御量を演算する。制御量演算部61は、演算した制御量をゲート信号生成部62に出力する。
【0017】
ゲート信号生成部62は、制御量演算部61から出力された演算量に基づき、インバータ回路20の出力パルス指令を生成し、生成した出力パルス指令に応じた出力パルスがインバータ回路20から出力されるように、インバータ回路20のスイッチング素子21〜24に対するゲート信号を生成する。ゲート信号生成部62により生成されたゲート信号は、インバータ回路20の半導体スイッチング素子21〜24のゲート電極に入力される。
【0018】
制御量演算部61は、制御量を0から1までの実数として演算する。ゲート信号生成部62は、制御量演算部61で演算された制御量を、直列共振回路30の共振周期の半分の時間ごとに加算する。以下の説明では、この加算値を便宜上、バッファ変数と称する。ゲート信号生成部62は、図2に示すように、バッファ変数が1以上で、出力パルス指令のパルス幅が、直列共振回路30の共振周期の半周期の奇数倍となるときに、バッファ変数から1を減算するとともに、インバータ回路20の出力パルス指令を反転させるゲート信号を生成する。これにより、インバータ回路20の出力パルス指令を、直列共振回路30の共振周期の半分の奇数倍の幅を持つパルス波形の組み合わせにより生成することができる。
【0019】
ここで、図2に示すように、生成された出力パルス指令Vの幅が、直列共振回路30の共振周期の半分の3倍を超えることがある。上述したように、インバータ回路20の出力パルスの幅が長くなると、インバータ回路20を流れるインバータ電流の周期が変化し、その結果、インバータ電流がゼロでないタイミングでスイッチングが行われ、スイッチング損失が増大する。
【0020】
そこで、本実施形態においては、ゲート信号生成部62は、出力パルス指令Vの幅が、直列共振回路30の共振周期の半分の3倍を超える場合には、インバータ回路20をゲートブロック状態とする(インバータ回路20を構成する半導体スイッチング素子21〜24をオフとする)。すなわち、図3に示すように、ゲート信号生成部62は、出力パルス指令Vのパルス幅が、直列共振回路30の共振周期の半分の3倍を超える場合には、直列共振回路30の共振周期の半分の3倍の幅の出力パルス指令Vを出力し、以降は、現在の出力パルス指令Vと逆方向の出力パルス指令Vを出力するまで、出力パルス指令Vをゼロとする。
【0021】
インバータ回路20をゲートブロック状態とすることで、軽負荷状態において、絶縁変圧器40の励磁インダクタンスにより、共振周波数の変化した電流がインバータ回路20のダイオードに流れる。このような電流が流れることで、インバータ回路20には、電流を抑制する方向の電圧が印加される。その結果、図3に示すように、インバータ回路20の出力電流I(インバータ回路20を流れるインバータ電流)は抑制され、次の出力パルス指令によるスイッチングのタイミングでは、インバータ電流はゼロとなる。そのため、インバータ電流がゼロでないタイミングでスイッチングが行われることを防ぎ、スイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0022】
このように本実施形態においては、直列共振型電源装置10を制御する制御装置60は、直列共振型電源装置10の出力電圧のフィードバック信号に基づき、所望の出力を得るための制御量を演算する制御量演算部61と、制御量演算部61により演算された制御量に基づき、インバータ回路20の出力パルス指令を、直列共振回路30の共振周期の半分の奇数倍の幅を持つパルス波形の組み合わせにより生成し、生成した出力パルス指令に応じた出力パルスがインバータ回路20から出力されるように、複数のスイッチング素子21〜24に対するゲート信号を生成するゲート信号生成部62と、を備える。ゲート信号生成部62は、出力パルス指令のパルス幅が、直列共振回路30の共振周期の半分の3倍を超える場合には、インバータ回路20をゲートブロック状態とする
【0023】
出力パルス指令のパルス幅が直列共振回路30の共振周期の半分の3倍を超え、インバータ回路200の出力パルスのパルス幅が長くなると、インバータ回路20をゲートブロック状態とすることで、絶縁変圧器40の励磁インダクタンスにより、共振周波数の変化した電流がインバータ回路20に流れる。このような電流が流れることで、インバータ回路20に電流が流れるのを抑制する方向の電圧が印加され、インバータ回路20に流れる電流が抑制されるので、スイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0024】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 直列共振型電源装置
20 インバータ回路
21〜24 半導体スイッチング素子
30 直列共振回路
31 コイル
32 コンデンサ
40 絶縁変圧器
50 整流平滑回路
51 ブリッジ型全波整流回路
52 平滑コンデンサ
60 制御装置
61 制御量演算部
62 ゲート信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6