(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802068
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】水溶性ポリマーおよび水溶性抗菌剤を含む液体抗菌剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20201207BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20201207BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20201207BHJP
A61K 31/14 20060101ALN20201207BHJP
A61K 47/34 20170101ALN20201207BHJP
A61K 47/32 20060101ALN20201207BHJP
A61K 9/08 20060101ALN20201207BHJP
A61P 31/04 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
A01N25/02
A01P3/00
A01N33/12 101
!A61K31/14
!A61K47/34
!A61K47/32
!A61K9/08
!A61P31/04
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-567260(P2016-567260)
(86)(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公表番号】特表2017-520521(P2017-520521A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】GB2015051614
(87)【国際公開番号】WO2015189568
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月9日
(31)【優先権主張番号】1410510.0
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516333757
【氏名又は名称】ファンテックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FANTEX LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】キース ジョン ハリス
【審査官】
高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−500344(JP,A)
【文献】
特開2008−056595(JP,A)
【文献】
特表2011−506488(JP,A)
【文献】
特表2008−528135(JP,A)
【文献】
特開2011−105764(JP,A)
【文献】
特開2007−016024(JP,A)
【文献】
特開平02−184609(JP,A)
【文献】
特開平07−054272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/02
A01N 33/12
A01P 3/00
A61K 9/08
A61K 31/14
A61K 47/32
A61K 47/34
A61P 31/04
C08K 5/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)50〜60重量%の水、
(b)3〜7重量%の水溶性ポリマー、および、
(c)35〜45重量%の2つの水溶性抗菌剤を含み、
前記水溶性ポリマーがポリビニルアルコールであり、前記水溶性抗菌剤が、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ジデシルジメチルアンモニウムである、液体抗菌剤組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールが少なくとも部分的に加水分解されている、請求項1に記載の液体抗菌剤組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールが85〜93%加水分解されている、請求項2に記載の液体抗菌剤組成物。
【請求項4】
15〜20重量%の塩化ベンザルコニウムおよび19〜23重量%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含む、請求項1に記載の液体抗菌剤組成物。
【請求項5】
水、水溶性ポリマー、および、少なくとも1つの水溶性抗菌剤水溶液を混合する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体抗菌剤組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体抗菌剤組成物を吸収性素材に付与する方法であって、
前記吸水性布地と前記液体抗菌剤組成物とを接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、水溶性ポリマー、および、少なくとも1つの水溶性抗菌剤を含む液体抗菌剤組成物に関する。本発明はまた、該液体抗菌剤組成物を組み込むかまたはこれにより処置された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌および/または真菌および/またはウイルスなどの成長を阻害するために、消費財に抗菌剤を組み込むことが知られている。衣類、カーテン/ブラインド、寝具類などの吸収性布地の場合、抗菌剤は、抗菌剤を含む液体を布地に付与し、次いで布地を乾燥させることにより組み込むことが可能である。
【0003】
かかる方法で抗菌剤を付与することの欠点は、布地が一旦乾燥すると、処置前と比べて肌触りが異なり得ることである。このような布地を使用する者は、これを不快でありかつ好ましくないと一般的に考える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって本発明は、吸収性布地に付与し次いでこれを乾燥した場合に、布地が元の感触により近い感触を保持する液体抗菌剤を提供することを目的とする。
【0005】
上述のように吸収性布地に抗菌剤を付与する場合の更なる問題は、繰り返し洗濯すると抗菌剤が布地から洗い出されてしまうことである。よって、本発明はまた、洗濯を繰り返した後でも吸収性布地内での保持時間が長い液体抗菌剤を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】様々な回数の洗浄サイクル後の本発明の組成物の抗菌活性試験の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を図面を参照して更に説明するが、本発明の範囲は図面により限定されるものではない。
【0008】
本発明は、
(a)水、
(b)水溶性ポリマー、および、
(c)少なくとも1つの水溶性抗菌剤を含む液体抗菌剤組成物に関する。
【0009】
これにより、吸収性素材に付与可能な液体抗菌剤が提供される。水溶性ポリマーを含有することによって、従来の組成物と比較して(i)布地の感触に対する悪影響を低減することができ、また、(ii)繰り返し洗濯後の布地内での保持時間を長くすることができると考えられる。
【0010】
本発明に関して、「抗菌剤」との用語は、微生物を殺すかまたはその成長を阻害することが可能な物質をいう。抗菌剤の例としては、殺菌剤、抗生物質、抗細菌剤、抗ウイルス剤、および、抗真菌剤が挙げられる。抗菌剤は、対象微生物の細胞数を最大4log個減少させるものであることが好ましい。例えば、細胞数を10
8個から10
4個へ減少させること(すなわち、対象細胞の99.9%を殺すこと)が4log個の減少に相当する。
【0011】
上記液体抗菌剤組成物は、
(a)少なくとも30重量%の水、
(b)1〜10重量%の上記水溶性ポリマー、および、
(c)5〜69重量%の上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤を含むことが好ましい。
【0012】
好ましくは、上記液体抗菌剤組成物は、
(a)50〜60重量%の水、
(b)3〜7重量%の上記水溶性ポリマー、および、
(c)35〜45重量%の上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤を含む。
【0013】
より好ましくは、上記液体抗菌剤組成物は、
(a)約56.5重量%の水、
(b)約5重量%の上記水溶性ポリマー、および、
(c)約38.5重量%の上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤を含む。
【0014】
好ましくは、上記水溶性ポリマーは、フィルム形成剤、すなわち、上記組成物が基材に付与された際にフィルム(つまりコーティング)を形成するのを助ける剤である。
【0015】
上記水溶性ポリマーは、水溶性ポリアルキルアルコールまたはポリヘキサニド、より好ましくはポリヘキサメチレンビグアニドであることが好ましい。上記水溶性ポリアルキルアルコールはポリビニルアルコールであることが好ましい。好ましくは、上記ポリビニルアルコールは少なくとも部分的に加水分解されており、より好ましくは少なくとも60モル%加水分解されている。好ましい実施形態では、上記ポリビニルアルコールは85〜93モル%加水分解されている。好ましくは、上記ポリビニルアルコールの粘度は、4重量%水溶液として20℃において10〜34mPa・sである。ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーが特に好ましい。これらは、上記液体抗菌剤組成物を付与した布地の繊維中に上記水溶性抗菌剤を保持するのを助けるからである。如何なる理論に束縛されることは望まないが、これは、洗濯中に上記水溶性ポリマーが水と接触して膨張し、布地の繊維中に抗菌剤を閉じ込めるのを助けるためと考えられる。
【0016】
上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤は、第4級アンモニウム化合物であることが好ましい。第4級アンモニウム化合物は、第4級アンモニウムアルキル化合物であることが好ましく、より好ましくは塩化ベンザルコニウムまたは塩化ジデシルジメチルアンモニウムである。上記液体抗菌剤組成物が塩化ベンザルコニウムを含む場合、その含有量は5〜50重量%であることが好ましい。いくつかの実施形態では、塩化ベンザルコニウムの量は10〜25重量%、好ましくは15〜20重量%、より好ましくは約17.5重量%である。上記液体抗菌剤組成物が塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含む場合、その含有量は10〜50重量%であることが好ましい。いくつかの実施形態では、塩化ジデシルジメチルアンモニウムの量は14〜28重量%、好ましくは19〜23重量%、より好ましくは約21重量%である。
【0017】
好ましい一実施形態では、上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤は2つの水溶性抗菌剤である。2つの抗菌剤を含有することにより、より広範囲の抗菌活性を得ることが可能である。2つの水溶性抗菌剤は、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ジデシルジメチルアンモニウムであることが好ましい。上記液体抗菌剤組成物は、15〜20重量%の塩化ベンザルコニウムおよび19〜23重量%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含むことが好ましく、約17.5重量%の塩化ベンザルコニウムおよび約21重量%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含むことがより好ましい。
【0018】
本発明の組成物に使用され得る他の抗菌剤には、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール;ポリヘキサニド、好ましくはポリヘキサメチレンビグアニド;および/または、クロロフェノール、好ましくは4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、2−クロロ−3−メチル−フェノール、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジクロロ−5−メチルフェノール、4−クロロ−3−メチルフェノール、および/または、2,4,6−トリクロロフェノールが含まれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記液体抗菌剤組成物の残部は不可避不純物を含む。
【0020】
上述の好ましい液体抗菌剤組成物は、水、85〜93%加水分解ポリビニルアルコール、塩化ベンザルコニウム、および、塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含む。特に好ましい組成物は、
(a)50〜60重量%の水、好ましくは約56.5重量%の水、
(b)3〜7重量%の85〜93%加水分解ポリビニルアルコール、好ましくは約5重量%の85〜93%加水分解ポリビニルアルコール、
(c)15〜20重量%の塩化ベンザルコニウム、好ましくは約17.5重量%の塩化ベンザルコニウム、および
(d)19〜23重量%の塩化ジデシルジメチルアンモニウム、好ましくは約21重量%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含む。
【0021】
本発明はまた、水、水溶性ポリマー、および、少なくとも1つの水溶性抗菌剤水溶液を混合する工程を含む、上述の液体抗菌剤組成物の製造方法に関する。好ましくは、上記方法は、25〜35重量%の水、3〜7重量%の上記水溶性ポリマー、および、60〜70重量%の上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤水溶液を混合する工程を含む。より好ましくは、上記方法は、約30重量%の水、約5重量%の上記水溶性ポリマー、および、約65重量%の上記少なくとも1つの水溶性抗菌剤水溶液を混合する工程を含む。好ましい一実施形態では、上記方法は、約30重量%の水、約5重量%の上記水溶性ポリマー、約35重量%の50重量%塩化ベンザルコニウム水溶液、および、約30重量%の70重量%塩化ジデシルジメチルアンモニウム水溶液を混合する工程を含む。
【0022】
本発明はまた、吸水性布地と液体抗菌剤組成物とを接触させる工程を含む、上述の液体抗菌剤組成物を吸水性素材に付与する方法に関する。接触工程中、上記液体抗菌剤組成物は液体および/または蒸気であり得る。上記吸水性素材は吸水性布地であり得る。好ましくは、上記方法は、接触工程後に上記素材を乾燥する工程を含む。いくつかの実施形態では、吸水性素材に付与する液体抗菌剤組成物の量は20〜100g/m
2、好ましくは25〜30g/m
2、より好ましくは約27g/m
2である。
【0023】
本発明に関して、「吸水性素材」との用語は、上記液体抗菌剤組成物を吸収可能な任意の材料を意味する。本発明に関して、「吸水性布地」(例えば、コットン、または、ポリエステルとコットンのブレンドなどの織布、または、ポリプロピレンまたはビスコースなどの不織布)との用語は、上記液体抗菌剤組成物を吸収可能な布地(ファブリック)または生地(クロス)を意味するために使用される。上記吸収性素材は、衣服、カーテン、ブラインド、寝具、壁紙またはランドリー製品であり得る。衣服の例としては、Tシャツおよび靴下が挙げられる。寝具の例としては、枕および羽根布団が挙げられる。
【0024】
本発明はまた、上述の水溶性ポリマーおよび少なくとも1つの水溶性抗菌剤を含む、衣服、カーテン、ブラインド、寝具、壁紙またはランドリー製品に関する。衣服の例としては、Tシャツおよび靴下が挙げられる。寝具の例としては、枕および羽根布団が挙げられる。本発明の組成物は、寝具に蓄積する死んだ皮膚に真菌が成長するのを阻害するのに特に有用であり得る。トコジラミはこれらの真菌を餌にすることが知られているため、その成長を阻害することにより生存率が低減する。ランドリー製品の例としては、洗濯サイクル中にまたは洗濯サイクル後に使用するための液体製剤が挙げられる。
【実施例】
【0025】
(a)約30重量%の水、(b)約5重量%の85〜93%加水分解ポリビニルアルコール、(c)約35重量%の50重量%塩化ベンザルコニウム水溶液、および、(d)約30重量%の70重量%塩化ジデシルジメチルアンモニウム水溶液を混合することにより、液体抗菌剤組成物を調製した。この組成物を、ポリコットンブレンドTシャツに約28g/m
2の量で噴霧して付与した。
【0026】
処置したTシャツの一部分を取った(0回洗浄後サンプル)。処置したTシャツを、1%生物系洗剤溶液中、40℃で10回洗浄した後、サンプルを取った(10回洗浄後サンプル)。この操作を繰り返して、20回洗浄後、30回洗浄後、40回洗浄後および50回洗浄後のサンプルをそれぞれ得た。
【0027】
上記未洗浄Tシャツサンプルおよび洗浄Tシャツのサンプルを121℃で5分間滅菌した後、下記に詳細に説明するように抗菌活性を試験した。
【0028】
抗菌保護の評価
試験菌種:黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)
【0029】
試験は、EN ISO 20645:2004(抗菌活性の測定―寒天拡散プレート試験)に従って実施した。
【0030】
下層としての培地(トリプチケースソイ寒天;TSA)10mlを滅菌シャーレに注ぎ、固まらせた。約45℃に事前に冷却した培地(TSA)に試験細菌を接種し、これを下層上に注いで上層とし、固まらせた。
【0031】
Tシャツサンプルの生地(サイズ:25mm×25mm)を、無菌状態で2層寒天プレート上に移し、35℃で24時間インキュベートした。
【0032】
寒天と試験生地との間の接触領域における菌成長の程度を検査することにより、抗菌活性レベルを評価した。阻害領域は下記式を用いて算出した。
【0033】
H=(D−d)/2
式中、Hは阻害領域(単位:mm)であり、Dは生地および阻害領域の合計直径であり、dは生地の直径(単位:mm)である。
【0034】
試験結果を下記表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
EN ISO 20645によれば、標準阻害領域≧1mmであり試験片下に菌成長が無い場合は「効果あり」として認められる。阻害0mmであり僅かな菌成長がある場合は「限定的な効果」として評価される。
【0037】
本試験で使用したシャーレの写真を
図1に示す。サンプルは下記の通りラベルしている。
(i)0回洗浄
(ii)10回洗浄
(iii)20回洗浄
(iv)30回洗浄
(v)40回洗浄
(vi)50回洗浄
【0038】
試験結果は、洗浄50回後であっても、処置したTシャツ生地が効果的な抗菌保護を示したことを示している。