(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
(当該分野の説明)
従来より半導体デバイスやICチップ、LEDチップなどのチップ部品の搬送のために、チップトレイと呼ばれる、複数に区画されたれたポケットを有するワッフル形状のトレイが用いられており(例えば、特許文献1)、トレイに収納されたICチップの外観検査を行う装置(つまり、チップ外観検査装置)がある(例えば、特許文献2)。
【0003】
そして、チップ部品をチップトレイにより搬送する形態の場合、外観検査装置にチップトレイをセットするのは人手で行う場合が多い。
【0004】
一方、ICチップなどの回路パターンやLEDチップなどの繰り返しパターンが形成されたウエーハの外観検査を行う装置も提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
そしてウエーハは、カセットやマガジン、フープと呼ばれる多段収納治具にて搬送され、ここから一枚ずつ搬送ロボットで抜き出されて、外観検査装置への受け渡し(いわゆる、ロボットによる自動ハンドリング)が行われる形態が一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2等に開示されている様なチップトレイと、特許文献3等に開示されている様なウエーハとでは、外形の形状や厚み、ハンドリング形態が大きく異なる。そのため、同一の外観検査装置で双方の形態に対応させることができず、チップトレイやウエーハを載置する載置台(いわゆる、検査ステージ)を段取り替えする必要があった。
【0008】
しかし、段取り替えを行うと、検査カメラと検査ステージとの相対位置が変わってしまうため、アライメント精度に狂いが生じてしまい、各チップ部品の欠陥座標にずれが生じてしまう。そのため、アライメント精度を維持するためには、段取り替え作業の後、検査カメラと検査ステージと相対位置の確認や再調整等するための時間を要し、一つの外観検査装置で双方の形態に対応させることが困難であった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、自動外観検査装置などの自動的にウエーハを枚葉処理できる装置でもハンドリングが可能な、ウエーハ型チップトレイを提供することを目的としている。
【0010】
また、ハンドリングするウエーハとチップトレイとの厚みが異なる場合にあっては、双方に対応させる外観検査装置を提供することを、第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明に係る一態様は、
複数のチップ部品をそれぞれ並べて収納する本体部を有するチップトレイであって、
外周側面が円弧状および位置決め基準部を有するウエーハ形状をしており、
本体部には、
位置決め基準部と所定の位置関係を有する、チップ部品を個別に収納するために区画された凹み部からなるチップ搭載部と、
チップ搭載部に収納されたチップ部品に設定された検査領域よりも外側の非検査領域に当接させるチップ押さえ板と、
チップ押さえ板を当該本体部側に引き寄せるように磁力で保持するマグネット部を備えたことを特徴とする、ウエーハ型チップトレイである。
【0012】
また、本発明に係る第2の一態様は、
上記一態様のウエーハ型チップトレイ
を載置する検査ステージと、
ウエーハ型チップトレイに収納されたチップ部品
の外観を検査する検査部とを備え、
ウエーハ型チップトレイ
の厚みに応じて、検査ステージと検査部との相対距離を調整する相対距離調節機構を備えた、外観検査装置である。
【発明の効果】
【0013】
上記の一態様によれば、ウエーハの表面上にパターニングされたチップでも、チップトレイに収納されたチップ部品でも、自動的にウエーハを枚葉処理できる装置でのハンドリングが可能となる。
【0014】
また、上記の第2の一態様によれば、ハンドリングするウエーハとチップトレイとの厚みが異なる場合であっても、1つの外観検査装置で双方に対応させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向とする。特に、Z方向は矢印の方向を上、その逆方向を下と表現する。
【0017】
図1は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。
図1には、本発明に係るウエーハ型チップトレイ1の斜視図が示されている。
【0018】
ウエーハ型チップトレイ1は、複数のチップ部品Cをそれぞれ並べて収納する本体部2を有するチップトレイであり、外周側面Eが円弧状(円弧状部)および位置決め基準部Fを有するウエーハ形状をしている。
【0019】
本体部2には、チップ搭載部3、チップ押さえ板4、マグネット部5が備えられている。具体的には、本体部2は、プラスチックなどの樹脂やアルミ等で構成されている。
【0020】
チップ搭載部3は、位置決め基準部Fと所定の位置関係を有しつつ、チップ部品Cを個別に収納するために区画された凹み部Pからなる。
【0021】
図2は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。
図2には、
図1に図示したウエーハ型チップトレイ1の本体部2の平面図が示されており、チップ搭載部3を構成する凹み部Pと位置決め基準部Fとの位置関係が示されている。
【0022】
具体的には、チップ搭載部3は、X方向に4つ並んで配置された凹み部Pで構成されており、位置決め基準部Fに対して、X方向にd1離れた位置に、それぞれ幅Pxで、互いの間隔がd2,d3,d4で、Y方向にd5離れた位置に、幅Pyで配置されている。
【0023】
位置決め基準部Fは、ウエーハ型チップトレイ1におけるチップ搭載部3の方向や位置を定義づける基準となるものであり、位置決め基準部Fを所定の方向や位置に合わせる(いわゆる、アライメントする)ことで、チップ搭載部3に収納されたチップ部品Cの方向や位置を揃えるものである。
【0024】
具体的には、位置決め基準部Fは、ウエーハ型チップトレイ1の外周側面Eに2ヶ所設けられており、それぞれが平坦面で構成されている。また、それぞれの平坦面がなす角度は、90度に設定されている。
【0025】
凹み部Pは、チップ部品Cを個別に収納するものである。具体的には、凹み部Pは、本体部2の上面よりも掘り下げられた形状(いわゆる、凹んだ形状)をしており、隣接する凹み部Pとは互いに区画されている。より具体的には、凹み部Pは、チップ部品Cの外形とは僅かな隙間がある程度の寸法(つまり、X方向に幅Px、Y方向に幅Py)に設定されている。
【0026】
チップ押さえ板4は、チップ搭載部3に収納されたチップ部品Cに設定された検査領域Rよりも外側の非検査領域Tに当接させるものである。
【0027】
具体的には、チップ押さえ板4は、X方向に並んだ4つのチップ部品Cを一括して下向きに押さえるものである。
【0028】
より具体的には、チップ押さえ板4は、磁性のあるフェライト系のステンレス材:SUS430で構成されている。
マグネット部5は、チップ押さえ板4を本体部2側に引き寄せるように磁力で保持するものである。具体的には、マグネット部5は、本体部2のチップ押さえ板4が配置される部位に埋設されている。より具体的には、マグネット部5は、ネオジム磁石やフェライト磁石などで構成されている。
【0029】
本発明に係るウエーハ型チップトレイ1は、この様な構成をしているため、一般的な形状のウエーハを扱うように搬送したり、自動検査装置等に投入したりすることができる。この際、チップ搭載部3の凹み部Pに並べて収納されたチップ部品Cは、マグネット部5とチップ押さえ板4により下向き(つまり、本体部2側)に押さえられるため、搬送中や検査中にチップ部品Cが脱落・位置ずれすることを防ぐことができる。
【0030】
[変形例]
なお上述では特筆していなかったが、ウエーハ型チップトレイ1は、一般的なウエーハと同じ厚みにしておくことが好ましい。そうすることで、一般的なウエーハと同様にハンドリングが可能である。しかし、ウエーハ型チップトレイ1は、一般的なウエーハと同じ厚みにできない場合であっても、一般的なウエーハ収納カセットに収納可能な程度の厚みにしておくことが好ましい。一方、搬送工程や外観検査装置などでハンドリングが可能であれば、ウエーハ型チップトレイ1は、適宜所望の厚みに設定しても良い。
【0031】
[外観検査装置について]
図3は、本発明を具現化する第2の一態様の一例の全体構成を示す概略図である。
図3には、本発明に係る外観検査装置10の概略図が示されている。
【0032】
外観検査装置10は、上述のウエーハ型チップトレイ1に収納されたチップ部品Cおよびウエーハのうち、選択された一方の外観を検査するものである。具体的には、外観検査装置10は、検査ステージ11、検査部12、相対距離調節機構13等を備えている。
【0033】
検査ステージ11は、ウエーハ型チップトレイ1およびウエーハのうち、選択された一方(以下、ワークWと呼ぶ)を載置するものである。
【0034】
具体的には、検査ステージ11には、上下方向に出没可能なリフトピンとその昇降機構(いずれも、図示せず)が取り付けられており、プリアライナーと呼ばれる搬送ロボットにより、ワークハWの搬送・受け渡しが行われる。また、検査ステージ11の上面には、格子状の溝や点在する穴が設けられており、切替バルブなどを介して真空源や大気と接続されている。そのため、ワークWが受け渡しされた後、リフトピンを加工させ、ワークWの下面側を負圧吸引(いわゆる、真空吸着)させる。
【0035】
より具体的には、検査ステージ11は、装置フレーム10fに搭載されたX軸スライダー機構10X、Y軸スライダー機構10Y、回転機構10θからなるXYθ機構の上に取り付けられている。そのため、検査ステージ11を、Z方向を回転中心軸とするθ方向に所定の角度回転させたり、所定の角度で静止させたり、X方向やY方向に所定の速度で移動させたり、所定の位置で静止させることができる。
【0036】
検査部12は、選択された、ウエーハ型チップトレイ1に収納されたチップ部品C又はウエーハの外観を検査するものである。
【0037】
具体的には、検査部12は、検査領域を撮像した画像と基準画像とを比較したり、検査領域を撮像した画像中の隣接パターン同士を比較したりして、欠陥や異物の有無などを検査するものである。
【0038】
より具体的には、検査部12は、照明12a、対物レンズ12b、鏡筒12c、撮像カメラ12d、画像処理部12e、コンピュータ部12f等を備えて構成されている。
【0039】
照明12aは、撮像のために必要な光(いわゆる、照明光)をワークWに向けて照射するものである。具体的には、照明12aは、鏡筒12cの側面に取り付けられ、鏡筒12c内に組み込まれたプリズムやハーフミラー等で撮像光軸と合致した状態で、対物レンズ12bを通じてワークWに照明光が照射される。
【0040】
対物レンズ12bは、ワークWの撮像対象エリアに焦点を合わせ、所定の倍率で撮像カメラ12dの撮像素子に結像させるためのものである。なお、対物レンズ12bは、倍率の異なるレンズを複数備え、レボルバーと呼ばれる回転機構で切替できる構成をしている。
【0041】
鏡筒12cは、照明12a、対物レンズ12b、撮像カメラ12d等を所定の間隔で固定し、照明12aから照射された光をワークWに向けて照射させたり、ワークWの撮像対象エリアに対応する像を撮像カメラ12dに結像させるためのものである。
【0042】
撮像カメラ12dは、撮像素子を備え、撮像した画像を外部へ出力するものである。
【0043】
画像処理部12eは、撮像カメラ12dで撮像した画像を取得し、取得した画像に対して所定の画像処理(フィルタ処理など)を行い、処理後の画像(検査対象)と基準画像(または、隣接パターン画像、良品学習画像など)と比較して検査処理を行うものである。
【0044】
コンピュータ部12fは、予め登録されたプログラムに基づいて、画像処理部12eに対するレシピ切替指令や、相対距離調節機構13などの外部機器の制御を行ったり、上位システム(ホストコンピュータなど)や隣接装置(プリアライナやローダ・アンローダなど)、オペレータ等とのインターフェスとなるものである。また、コンピュータ部12fは、検査対象として受け入れるワークWの厚み情報を取得し、その厚みに応じて相対距離調節機構13を制御するものである。
【0045】
相対距離調節機構13は、ウエーハ型チップトレイ1およびウエーハの厚みに応じて、検査ステージ11と検査部12との相対距離を調整するものである。
【0046】
具体的には、相対距離調節機構13は、装置フレーム10fに取り付けられた連結金具10bに取り付けられており、照明部12a、対物レンズ12b、鏡筒12c、撮像カメラ12dを、一体的に上下方向に移動させ、所定の高さで静止させる物である。
【0047】
より具体的には、相対距離調節機構13は、ステッピングモータ13a、ボールネジ13b、ガイドレール13c、スライダー13d、コントローラ13e等を備えて構成されている。
【0048】
ステッピングモータ13aは、コントローラ13eと接続されており、コントローラ13eからの駆動信号に基づいて所定の角度回転したり静止したりするものである。
【0049】
ボールネジ13bは、ステッピングモータ13aの回転をスライダー13dに伝達するものである。
【0050】
ガイドレール13cは、スライダー13dの移動方向を一方向(つまり、Z方向)に規制するものである。
【0051】
スライダー13dは、ボールネジ13bが回転することでZ方向(つまり、上下方向)に移動したり、所定の高さで静止するものである。スライダー13dには、連結金具などを介して鏡筒12cが取り付けられている。
【0052】
コントローラ13eは、コンピュータ部12fと接続されており、コンピュータ部12fからの制御信号に基づいて、ステッピングモータ13aを所定の角度回転させるものである。
【0053】
本発明に係る外観検査装置10は、この様な構成をしているため、上述のウエーハ型チップトレイ1でも、一般的な形状のウエーハでも取り扱うことが可能で、それらの厚み違いに応じて、相対距離調節機構13を制御し、所望のフォーカス高さで検査を行うことができる。そのため、外観検査装置10は、ウエーハの表面上にパターニングされたチップでも、チップトレイに収納されたチップ部品でも、自動的にウエーハを枚葉処理できる装置でのハンドリングが可能となる。
【0054】
[他の形態]
なお上述では、チップ押さえ板4としてフェライト系のステンレス材:SUS430を例示したが、下記のような材料で構成されていても良い。
(1)他のフェライト系(SUS405など)、マルテンサイト系(SUS410など)、オーステナイト・フェライト系(二相系)(SUS329J4Lなど)などの磁性のあるステンレス材
(2)非磁性のオーステナイト系(SUS304など)のステンレス材に、磁性化処理を施したもの
(3)鉄、ニッケル、コバルトやそれを含む合金で磁性のあるもの
(4)アルミ、真鍮、チタンなどの非磁性金属や、プラスチックなどの樹脂にてチップ押さえ板の本体部を構成し、マグネット部5と対向する部分ないし周囲に磁石または磁性のある材料を埋め込んだもの
なお凹み部Pの上面は、本体部を構成する材料(プラスチックなどの樹脂やアルミ等)が露出していても良いし、錆止め加工などが施されていても良い。あるいは、シリコンやゴムなどの樹脂を薄くコーティングし、チップ部品Cが移動中に位置ずれしない様な滑り止め加工を施しても良い。なお、この滑り止め加工は、凹み部Pの上面全体であっても良いし、所定の間隔で点在するような配置であっても良い。
【0055】
なお上述では、ウエーハ型チップトレイ1の外周側面Eに有している位置決め基準部Fとして、オリエンテーション・フラットと呼ばれる平坦な面が2ヶ所に設けられた構成を例示した。しかし、位置決め基準部Fは、このような構成に限定されず、平坦面が1ヶ所に設けられた構成であっても良いし、平坦面に代えてノッチと呼ばれる凹み部で構成されていても良い。すなわち、これら平坦面やノッチと所定の位置関係を有するように、チップ搭載部3の凹み部Pがそれぞれ配置されていれば良く、一般的なウエーハを取り扱う場合と同様に各チップ部品Cが位置決めできる構成であれば良い。
【0056】
なお上述では、ウエーハ型チップトレイ1の本体部2が、プラスチックなどの樹脂やアルミ等で構成されている例を示した。このような材料であれば、チップトレイ全体が軽量で、凹み部Pの成形や加工がしやすいため、好ましい。しかし、本体部2は、この様な材料に限定されず、ハンドリングする工程の環境等に適合するように、耐腐食性の高いステンレスや他の金属合金で構成したり、耐熱性の高いチタン材料で構成したりできる。また、本体部2は、単一の材料で形成しても良いし、外周部とチップ搭載部3とが異なる材料で構成されて組み合わされたものであっても良い。