特許第6802102号(P6802102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802102
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】目封止ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20201207BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20201207BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20201207BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20201207BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301A
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   F01N3/022 C
   B01D53/94 241
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-62752(P2017-62752)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-185484(P2017-185484A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-69757(P2016-69757)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 佑一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆弘
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−200741(JP,A)
【文献】 特開2003−269131(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/013513(WO,A1)
【文献】 特開2013−215645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/73,86−90,94−96
B01D39/00−41/04
B01D46/00−46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側端面から流出側端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記流出側端面における所定の流入セルの開口部に配設された流入側目封止部と、前記流入側端面における残余の流出セルの開口部に配設された流出側目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルが、前記流出セルを取り囲むように配設され、且つ、前記流入セルの数が前記流出セルの数よりも多く、
隣接する前記流入セル同士を区画する隔壁の交点部を複数有し、
前記交点部の全数の60%以上において、
前記交点部に内接する円の直径Dと、隣接する前記流入セルと前記流出セルとを区画する隔壁に内接する円の直径Dと、の間の関係が、下記式(1)のとおりである、目封止ハニカム構造体であって、
隣接する前記流入セル同士を区画する隔壁の交点部においてのみ、前記直径Dと前記直径Dとの間の関係が、下記式(1)のとおりである、目封止ハニカム構造体
式(1):D/(√2×D)=1.20〜1.80
【請求項2】
前記交点部の全数において、前記交点部に内接する円の直径Dと、隣接する前記流入セルと前記流出セルとを区画する隔壁に内接する円の直径Dと、の間の関係が、前記式(1)のとおりである、請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
前記流入セルに内接し、且つ当該流入セルの前記交点部側の隔壁と接する円の直径Dが、0.20〜0.80mmである、請求項1又は2に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォールフロー型排ガスフィルタ用の目封止ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、自動車エンジン等のエンジンからの排ガスに含まれる粒子状物質の除去、及び/又は窒素酸化物等の有毒ガスの浄化に好適に用いられる、目封止ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、動力源として内燃機関が用いられている。一方で、内燃機関が燃料の燃焼時に排出する排ガスには、窒素酸化物等の有毒ガスと共に、煤や灰等の粒子状物質(以下、「PM」ということがある)を大気中に放出する。特に、ディーゼルエンジンから排出されるPMの除去に関する規制は世界的に厳しくなっており、PMを除去するためのフィルタ(以下、「DPF」ということがある)として、ハニカム構造を有するウォールフロー型ガス浄化フィルタが用いられている。
【0003】
上記DPFは、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封止することで、上記多孔質の隔壁がPMを除去するフィルタの役目を果たす構造となっている。
【0004】
具体的には、上記DPFの流入側端面からPMを含有する排ガスを流入させ、多孔質の隔壁でPMを捕集することによって濾過した後に、浄化された排ガスを流出側端面から排出するハニカム構造体が従来用いられてきた。しかし、排ガスの流入に伴ってPMが隔壁上に堆積し、排ガスの流入セルを閉塞させるという問題があった。このようにセルが閉塞すると、DPFの圧力損失が急激に大きくなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、このようなセルの閉塞を抑制するために、流入セルの濾過面積及び開口率を高めることが重要となる。しかし、流入セルと流出セルとで異なる断面積や断面形状を有する場合、セルを形成する隔壁の厚さが、隔壁同士が交差する部分の一部で薄くなる場合があり、強度が弱くなる。このため、DPFに堆積したPMを燃焼除去することによって再生する際に、薄くなった隔壁の交点部の一部に熱応力が集中し、クラックが発生するという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、流入セルの濾過面積及び開口率を高めつつ、流出セルの開口径を大きく保つことにより、初期及びPM堆積時の圧力損失を低く抑えることが可能で、且つ耐熱衝撃性の高いウォールフロー型DPFが提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、特許文献1では、薄くなった隔壁の交点部の全てに略円弧状のR部を設けることにより、クラック発生を防止する技術が記載されている。この他、セルの対向する隅角部に略円弧状のR部を配設することによる、隔壁の交点部における亀裂発生を防止する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−200741号公報
【特許文献2】特開2003−269131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、例えば図5に示す従来のDPFのように、4つの流入セルの頂点が集まる隔壁の交点部は、応力が集中しやすい構造である。したがって、当該DPFをウォールフロー型ガス浄化フィルタとして自動車エンジンの排気系に用いた場合、自動車の走行中に、振動に加えて、PM燃焼、例えば、スス燃焼による急加熱及び急冷却による熱応力が発生することがある。そして、このような熱応力が発生した場合に、DPFにクラックが発生する可能性が更に高まるという問題がある。
【0010】
従来のDPFの代表的なクラックの模式図を図6に示す。流入セルの頂点同士を結ぶクラックは、一般にスス漏れへの寄与度は小さいと考えられている。しかし、当該クラックが進展し、流出セルまで到達した場合には、スス漏れが発生してしまう可能性があるため、これを防ぐ必要がある。図5は、従来のセグメント型の目封止ハニカム構造体の流入側端面を模式的に表した平面図である。図6は、図5の従来の目封止ハニカム構造体の拡大図であって、代表的なクラックを模式的に表した図である。
【0011】
上記クラックの発生を防ぐ手段として、特許文献2に開示のように、従来はセルの補強が行われてきた。しかし、従来のように隔壁の交点部の全てに補強部を設けた場合には、クラックの発生の問題は解決できるが、セルの開口面積が小さくなるため、圧力損失が増大したり、アッシュ(Ash)の堆積容量(アッシュキャパシティ)が減少するという問題があった。また、従来のDPFでは、熱容量が大きくなるため、ライトオフ性能(Light−off performance)が悪化するというデメリットが存在した。なお、ライトオフ性能とは、DPFに担持された触媒の浄化性能が発現する温度特性のことを意味する。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、開口面積の減少や圧力損失の増大、アッシュキャパシティの減少を最大限に抑制しつつ、機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能な、目封止ハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、以下に示す目封止ハニカム構造体が提供される。
【0014】
[1] 流入側端面から流出側端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記流出側端面における所定の流入セルの開口部に配設された流入側目封止部と、前記流入側端面における残余の流出セルの開口部に配設された流出側目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルが、前記流出セルを取り囲むように配設され、且つ、前記流入セルの数が前記流出セルの数よりも多く、
隣接する前記流入セル同士を区画する隔壁の交点部を複数有し、
前記交点部の全数の60%以上において、
前記交点部に内接する円の直径Dと、隣接する前記流入セルと前記流出セルとを区画する隔壁に内接する円の直径Dと、の間の関係が、下記式(1)のとおりである、目封止ハニカム構造体であって、
隣接する前記流入セル同士を区画する隔壁の交点部においてのみ、前記直径Dと前記直径Dとの間の関係が、下記式(1)のとおりである、目封止ハニカム構造体
【0015】
式(1):D/(√2×D)=1.20〜1.80
【0016】
[2] 前記交点部の全数において、前記交点部に内接する円の直径Dと、隣接する前記流入セルと前記流出セルとを区画する隔壁に内接する円の直径Dと、の間の関係が、前記式(1)のとおりである、前記[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0017】
[3] 前記流入セルに内接し、且つ当該流入セルの前記交点部側の隔壁と接する円の直径Dが、0.20〜0.80mmである、前記[1]又は[2]に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0019】
本発明の目封止ハニカム構造体は、複数の流入セルの頂点が集まる隔壁の交点部の角部にのみ、選択的に補強部を設けている。これによって、開口面積の減少や圧力損失の増大、アッシュキャパシティの減少及びライトオフ性能の悪化を最大限に抑制しつつ、DPFの機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の目封止ハニカム構造体の斜視図である。
図2図1に示す目封止ハニカム構造体の流入側端面の一部を模式的に表した平面図である。
図3図2のA−A’線に沿った断面図である。
図4図2の流入側端面の拡大を模式的に表した平面図である。
図5】従来のセグメント型の目封止ハニカム構造体の流入側端面を模式的に表した平面図である。
図6図5の従来の目封止ハニカム構造体の拡大図であって、代表的なクラックを模式的に表した図である。
図7図5の従来の目封止ハニカム構造体の拡大図であり、交点部に内接する円を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0022】
図1図4は、本発明の実施形態の目封止ハニカム構造体を模式的に表した図である。ここで、本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、複数のハニカムセグメントを互いに接合したセグメント型ハニカム構造体であっても、隔壁と外周壁とが一体成形された一体型ハニカム構造体のいずれであってもよい。図1は、本発明の実施形態の目封止ハニカム構造体の斜視図である。図2は、図1に示す目封止ハニカム構造体の流入側端面の一部を模式的に表した平面図である。図3は、図2のA−A’線に沿った断面図である。図4は、図2の流入側端面6aの拡大を模式的に表した平面図である。
【0023】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、ハニカム構造部9と、流入側目封止部3aと、流出側目封止部3bと、を備えたものである。ハニカム構造部9は、複数個のハニカムセグメント7から構成されている。複数個のハニカムセグメント7のそれぞれは、流入側端面6aから流出側端面6bまで延びる流体の流路となる複数のセル2a、2bを区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。複数個のハニカムセグメント7の側面の相互間には、接合層8が配設されており、この接合層8によって複数個のハニカムセグメント7が接合されることにより、ハニカム構造部9が形成されている。ハニカム構造部9の外周には、複数個のハニカムセグメント7が接合した接合体を囲繞するように、外周壁11が配設されている。
【0024】
流入側目封止部3aは、流出側端面6bにおける所定の流入セル2aの開口部に配設されたものである。流出側目封止部3bは、流入側端面6aにおける残余の流出セル2bの開口部に配設されたものである。
【0025】
目封止ハニカム構造体100は、ハニカム構造部9のセル2の延びる方向に直交する断面において、流入セル2aが、流出セル2bを取り囲むように配設されたものである。また、目封止ハニカム構造体100は、流入セル2aの数が流出セル2bの数よりも多くなるように構成されている。目封止ハニカム構造体100は、隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4を複数有する。そして、目封止ハニカム構造体100は、隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4の全数の60%以上において、以下のような構成を有する。まず、上記した交点部4に内接する円の直径Dと、隣接する流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁1に内接する円の直径Dと、の間の関係が、下記式(1)を満たすものである。ここで、「隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4」とは、「隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1のみが交差する交点部4」のことをいう。即ち、「隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4」とは、その交点を基点として延びる隔壁1が、隣接する流入セル2a同士のみを区画する隔壁1である部位のことをいう。以下、特に断りのない限り、単に、「交点部4」という場合は、上述した「隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1のみが交差する交点部4」のことを意味する。
【0026】
式(1):D/(√2×D)=1.20〜1.80
【0027】
ここで、図4を参照しながら本実施形態を説明する。流入セル2aが、流出セル2bを取り囲むように配設されというのは、例えば、一つの流出セル2bの周りに、複数の流入セル2aが取り囲むように配設された状態を意味する。なお、目封止ハニカム構造体100の流入側端面6aの最外周に配設されたセル2に関しては、流入セル2aが、流出セル2bを取り囲むように配設されていないことがある。また、各ハニカムセグメント7においても、最外周に配設されたセル2に関しては、流入セル2aが、流出セル2bを取り囲むように配設されていないことがある。ここで、図4では、セル形状が四角形の流出セル2bが、流出セル2bよりもセル形状の小さい五角形の流入セル2aによって取り囲まれている。なお、流出セル2bのセル形状及び流入セル2aのセル形状は特に制限は無く、流出セル2bを流入セル2aで取り囲むように配設することが可能な形状であればよい。例えば、セル形状としては、四角形、五角形、六角形等の多角形が考えられるが、これらに限定されない。また、1つの流出セル2bと1つの流入セル2aの大きさ(別言すれば、セルの断面積)については、同じであっても異なっていてもよい。ここで、「セル形状」とは、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状のことをいう。
【0028】
また、隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4というのは、流出セル2bを取り囲むように配設された複数の流入セル2a同士を区画する隔壁1のみが交差する交点部4を意味する。なお、図1及び図2に示すように、目封止ハニカム構造体100の外周壁の付近において、流入セル2aの形状が一部潰れた形状となる場合がある。このようなセル形状が一部潰れた形状となった流入セル2aについても、一つの流入セル2aとして数える。
【0029】
次に、交点部4に内接する円の直径Dとは、図4に示すように、隔壁1の交点部4に内接している円の直径である。なお、「交点部4に内接する円」とは、隔壁1の交点部4において、交点部4に面している流入セル2aのうちの過半数の流入セル2aと接する内接円とする。そして、「交点部4に内接する円の直径D」は、過半数の流入セル2aと接する内接円が複数存在する場合には、その直径が最大となる内接円の直径とする。
【0030】
また、隣接する流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁1に内接する円の直径Dとは、図4に示すように、流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁の交点部以外の隔壁1に内接する円の直径である。別言すれば、向かい合った流入セル2aと流出セル2bの角部を除く部分に外接する円の直径を意味する。以下、「隣接する流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁1に内接する円の直径D」を、単に、「隔壁1に内接する円の直径D」ということがある。隣接する流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁1に内接する円の直径Dは、以下のようにして求めることができる。まず、目封止ハニカム構造体100の流入側端面6aにおいて、隣接する流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁1のうちの5か所を無作為に選択する。そして、選択した5か所の隔壁1に対して、仮想的に内接円を描き、その内接円の直径を求める。5か所の内接円の直径の平均値を、円の直径Dとする。
【0031】
ここで、式(1)中の√2×Dについて説明する、式(1)中の√2×Dは、図7に示すような、補強部を配設していない従来の目封止ハニカム構造体において、流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4に内接する円の直径の値を示している。図7は、図5の従来の目封止ハニカム構造体の拡大図であり、交点部に内接する円を説明する図である。本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4に内接する円の直径Dが、補強部を配設していない従来の目封止ハニカム構造体の「同様箇所の交点部に内接する円の直径」よりも大きいという特徴を有する。
【0032】
上記式(1)の条件を満たす交点部4の数は、交点部4の全数を100%とした場合の少なくとも60%であり、より好ましくは100%である。上記条件を満たす交点部4の数が60%未満となった場合には、耐熱衝撃性が著しく低下する。
【0033】
上記式(1)における「D/(√2×D)」の値が、1.20未満である場合には、十分な耐熱衝撃性を得られることができない。また、上記式(1)における「D/(√2×D)」の値が、1.80を超える場合には、圧力損失の増加、ライトオフ性能の悪化、アッシュ容量が減少してしまう。
【0034】
また、隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4においてのみ、交点部4に内接する円の直径(D)と、隣接する流入セル2aと流出セル2bとを区画する隔壁1に内接する円の直径(D)と、の間の関係が、式(1)を満たす。これは、隔壁の交点部の全てに補強部を配設する従来技術とは異なり、図1図4に示すように、本発明では隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4においてのみ補強部を配設することを意味する。このような補強部を作製する方法としては、例えば、従来公知の方法により、押出成形時の口金の形状を変更する方法を挙げることができる。また、所定の流入セル2aの所定の角部にスラリーを流入させることによって、Rを有する角部を形成することによって、上記した補強部を作製してもよい。なお、「補強部を有する」とは、隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4が、上記式(1)の関係を満たすことを意味する。また、上述した「隣接する流入セル2a同士を区画する隔壁1の交点部4においてのみ・・・式(1)を満たす。」とは、それ以外の他の交点部については、式(1)の関係を満たさなくてもよいことを意味する。ここで、上記式(1)の関係を満たさないとは、例えば従来技術のようにD=√2×Dの関係や、「D/(√2×D)」の値が1.20未満であってもよいことを意味する。ただし、上記式(1)は、製造公差を含んでいないことに留意されたい。
【0035】
また、流入セル2aに内接し、且つこの流入セル2aの交点部4側の隔壁1と接する円の直径Dは、0.20〜0.80mmであることが好ましい。ここで、流入セル2aに内接し、且つこの流入セル2aの交点部4側の隔壁1と接する円の直径Dを、図4に示す。図4に示すように、直径Dとなる円は、流入セル2a内に存在しており、且つ、交点部4の隔壁1と接する円である。このような円の直径が、上記した「直径D」である。ここで、直径Dが0.20mmより小さくなる場合は、十分な耐熱衝撃性を得られることができないことがある。
【0036】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、ハニカム構造部9が以下のように構成されたものを好適例の1つとして挙げることができる。流入セル2aにおいて、幾何学的表面積GSAが、10〜30cm/cmであることが好ましく、12〜18cm/cmであることが更に好ましい。ここで、上述した「幾何学的表面積GSA」とは、流入セル2aの全内表面積(S)を、ハニカム構造部9の全容積(V)で除した値(S/V)のことをいう。一般に、フィルタの濾過面積が大きいほど、隔壁へのPM堆積厚さを低減できるため、上述した幾何学的表面積GSAの数値範囲とすることにより、目封止ハニカム構造体の圧力損失を低く抑えることができる。よって、流入セル2aの幾何学的表面積GSAが10cm/cmより小さいと、PM堆積時の圧力損失の増加につながるため好ましくない。また、30cm/cmより大きいと、初期の圧力損失が増加するため好ましくない。
【0037】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、流入セル2aのセル断面開口率が20〜70%であることが好ましく、25〜65%であることが更に好ましい。流入セル2aのセル断面開口率が20%よりも小さいと、初期の圧力損失が増加するため好ましくない。また、70%より大きいと、濾過流速が速くなるためPMの捕集効率が低下し、更に隔壁1の強度が不足するため好ましくない。ここで、「流入セル2aのセル断面開口率」とは、ハニカム構造部9の中心軸方向に垂直な断面における、以下のような比率を意味する。即ち、「ハニカム構造部9を形成する隔壁1全体の断面積」と「全てのセル2(流入セル2aと流出セル2bの全て)の断面積の総和」との合計に対する、「流入セル2aの断面積の総和」の比率を意味する。
【0038】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、複数のセル2(流入セル2a、流出セル2b)のそれぞれの水力直径が、0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.8〜2.2mmであることが更に好ましい。複数のセルのそれぞれの水力直径が0.5mmより小さいと、初期の圧力損失が増加するため好ましくない。また、2.5mmより大きいと、排ガスと隔壁1との接触面積が減少し、浄化効率が低下するため好ましくない。ここで、複数のセルのそれぞれの水力直径とは、各セル2の断面積及び周長に基づき、4×(断面積)/(周長)によって計算される値である。セル2の断面積とは、ハニカム構造部9の中心軸方向に垂直な断面に現れるセルの形状(別言すれば、断面形状)の面積を指す。セルの周長とは、そのセルの断面形状の周囲の長さ(別言すれば、当該断面を囲む閉じた線の長さ)を指す。
【0039】
初期の圧力損失、PM堆積時の圧力損失、及び捕集効率のトレードオフに鑑み、本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、以下のような構成を好適例として挙げることができる。流入セル2aの幾何学的表面積GSAが10〜30cm/cmであること、流入セル2aのセル断面開口率が20〜70%であること、及び複数のセル2のそれぞれの水力直径が0.5〜2.5mmであること、を同時に満たすことが好ましい。また、流入セル2aの幾何学的表面積GSAが12〜18cm/cmであること、流入セル2aのセル断面開口率が25〜65%であること、及び複数のセル2のそれぞれの水力直径が0.8〜2.2mmであること、を同時に満たすことが更に好ましい。
【0040】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、隔壁1に触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1の形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。触媒の種類としては、SCR触媒(ゼオライト、チタニア、バナジウム)や、Pt、Ph、Pdのうち少なくとも2種類の貴金属と、アルミナ、セリア、ジルコニアの少なくとも1種を含む三元触媒等が挙げられる。このような触媒を担持することにより、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれるNOx、CO、CH等を無毒化できるとともに、隔壁1の表面に堆積したPMを触媒作用により燃焼除去させ易くすることが可能となる。
【0041】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100に触媒を担持させる方法は、特に限定されず、当業者が通常行う方法を採用することができる。具体的には、触媒スラリーをウォッシュコートして乾燥、焼成する方法等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100の製造方法に特に制限はないが、例えば、以下のような方法により製造することができる。ハニカム構造部9の原料粉末として、前述の好適な材料の中から選ばれた材料に、バインダを添加し、更に界面活性剤及び水を添加し、可塑性の坏土を作製する。原料粉末としては、例えば、炭化珪素粉末を使用することができる。バインダとしては、例えば、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース等をすることができる。この坏土を押出成形することにより、所定の断面形状の隔壁1及びセル2を有するハニカム構造部9の成形体を得る。これを、例えばマイクロ波及び熱風で乾燥する。その後、ハニカム構造部9の製造に用いた材料と同様の材料で目封止することで目封止部3(流入側目封止部3a、流出側目封止部3b)を配設し、更に乾燥する。その後、例えば窒素雰囲気中で加熱脱脂し、その後アルゴン等の不活性雰囲気中で焼成することにより本実施形態の目封止ハニカム構造体100を得ることができる。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0043】
本実施形態において、ハニカム構造部9を構成する隔壁ならびに外周壁の材料には特に制限はないが、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分は酸化物、又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、及びチタン酸アルミニウム等が挙げられる。金属としては、Fe−Cr−Al系金属、及び金属珪化物等が挙げられる。これらの材料から選択された、1種類又は2種類以上を主成分として用いることが好ましい。高強度、高耐熱性の観点から、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、コージェライト、炭化珪素、及び窒化珪素からなる群から選ばれた1又は2種類以上を主成分とすることが特に好ましい。ここで、「主成分とする」というときは、ハニカム構造部9の少なくとも50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を構成することを意味する。
【0044】
目封止部3(流入側目封止部3a及び流出側目封止部3b)の材料にも特に制限はないが、上記ハニカム構造部9と同一であることが好ましい。
【0045】
隔壁1の厚さについては、100〜410μmであることが好ましく、150〜360μmであることが更に好ましい。100μmより薄いと、ハニカム基材の強度が低下することがある。410μmより厚いと、捕集性能が低下し、圧力損失が増大することがある。また、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中のPM量が比較的多いため、通常、セル数を少なくする(セル密度を小さくする)傾向がある。そのため、隔壁1の厚さを150〜360μmとすることが、強度と捕集性能のバランスをよくするために好ましい。隔壁の厚さは、ハニカム基材の軸方向の断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
炭化珪素粉末80質量部と、Si粉末20質量部とを混合して、混合粉末を得た。この混合粉末に、バインダ、造孔材、及び水を添加して、成形原料とした。次に、成形原料を混練して円柱状の坏土を作製した。
【0047】
次に、所定の押出成形金型を用いて坏土を押出成形し、正方形の流出セルの周りを五角形の流入セルが取り囲んだ形のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、16個作製した。
【0048】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、ハニカム成形体の流入側端面全域を覆うようにフィルムを被せ、流出セルとなるセルの開口部に該当するフィルムの箇所に穿孔部を開けた。次に、ハニカム成形体のフィルムを施した側の端部を、セラミックス原料を含むスラリー状の目封止材料に浸漬することによって、流入側端面における流出セルに目封止材料を充填した。さらに、流出側端面において、同様にして、流入セルに目封止材料を充填した。
【0049】
次に、ハニカム乾燥体について、400℃で5時間加熱することにより脱脂を行い、更に、アルゴン雰囲気下において、1450℃で2時間加熱することにより焼成を行い、ハニカム焼成体を得た。ハニカム焼成体は、全体形状が四角柱状であった。
【0050】
次に、得られた16個のハニカム焼成体を、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合材によって接合し、ハニカム接合体を作製した。ハニカム接合体は、その端面において、縦方向に4個、横方向に4個の合計16個のハニカム焼成体は配列するように接合して作製した。
【0051】
次に、ハニカム接合体の外周部を研削によって加工して、ハニカム接合体のセルの延びる方向に垂直な断面の形状を円形にした。その後、研削加工したハニカム接合体の最外周に、セラミックス原料を含む外周コート材を塗工した。
【0052】
このようにして、実施例1の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体は、中心軸に直交する断面の直径が143.8mmであり、中心軸方向の長さが152.4mmの円筒形であった。隔壁の厚さは、0.3mmであり、セル密度は、208セル/cmであった。
【0053】
表1に、隔壁厚さ[mm]、a[mm]、b[mm]、セル密度[セル/cm]を示す。ここで、a[mm]とは、図4において、符号aにて示される範囲の長さのことをいう。即ち、a[mm]とは、流入セル2aと流出セル2bとを区画し、且つ1つの流出セル2bを挟んで対向する、平行に配置された2つの隔壁1の間の距離を意味する。また、b[mm]とは、図4において、符号bにて示される範囲の長さのことをいう。即ち、b[mm]とは、流入セル2aと流出セル2bとを区画し、且つ1つの流入セル2aを挟んで対向する、平行に配置された2つの隔壁1の間の距離を意味する。a[mm]、及びb[mm]のそれぞれにおいて、2つの隔壁1の間の距離は、各隔壁1の厚さ方向の中間地点からの、相互間の距離とする。
【0054】
また、表1に、「流入セルと流出セルとを区画する隔壁に内接する円の直径D[mm]」、「流入セル同士を区画する隔壁の交点部に内接する円の直径D[mm]」、及び「D/(√2×D)の値」を示す。また、表1に、「式(1)を満たす交点部の比率」を示す。ここで、「式(1)を満たす交点部の比率」とは、隣接する流入セル同士を区画する隔壁の交点部において、「D/(√2×D)=1.20〜1.80」の関係を満たす交点部の個数の比率のことである。
【0055】
また、表1に、「流入セルに内接し、交点部側の隔壁と接する円の直径D[mm]」を示す。
【0056】
以下、本実施例において、「流入セルと流出セルとを区画する隔壁に内接する円の直径D[mm]」を、「内接円の直径D[mm]」ということがある。また、「流入セル同士を区画する隔壁の交点部に内接する円の直径D[mm]」を、「内接円の直径D[mm]」ということがある。更に、「流入セルに内接し、交点部側の隔壁と接する円の直径D[mm]」を、「内接円の直径D[mm]」ということがある。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
(実施例2〜12)
「内接円の直径D[mm]」、「内接円の直径D[mm]」、「内接円の直径D[mm]」、及び「式(1)を満たす交点部の比率」を、表1又は表2に示すように変更して、実施例2〜12の目封止ハニカム構造体を製造した。
【0060】
(比較例1〜4)
「内接円の直径D[mm]」、「内接円の直径D[mm]」、「内接円の直径D[mm]」、及び「式(1)を満たす交点部の比率」を、表1又は表2に示すように変更して、比較例1〜4の目封止ハニカム構造体を製造した。
【0061】
比較例1の目封止ハニカム構造体は、隣接する流入セル同士を区画する隔壁の交点部において、D=√2×Dであることを除き、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。即ち、比較例1の目封止ハニカム構造体は、「D/(√2×D)の値」が、1.00である。
【0062】
実施例1〜12及び比較例1〜4の目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、「耐熱衝撃性」、「ライトオフ性能」、「入口開口率」、及び「PM堆積時の圧力損失」についての評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
【0063】
[耐熱衝撃性]
加熱加振試験により耐熱衝撃性を評価した。具体的には、作製した目封止ハニカム構造体の流出側端面から130mmの範囲を、三菱樹脂社製のMAFTEC(商品名)によって把持した。このようにして流出側端面を把持した目封止ハニカム構造体に、振動数100Hz、加速度30Gの振動を与えながら、プロパンバーナで加熱した空気を流し、100時間試験した。加熱加振試験における加熱された空気の条件は、流量2Nm/min、温度150〜800℃(1サイクル20分)とした。加熱加振試験後、目封止ハニカム構造体の隔壁に破損が生じているか否か、目視にて確認した。目封止ハニカム構造体の隔壁に破損が確認されない場合を「良」とし、軽微な破損が確認された場合を「可」とし、重度の破損が確認された場合を「不可」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0064】
[ライトオフ性能(200℃到達時間[秒])]
ライトオフ性能の評価は、目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、このDPFに400℃の燃焼ガスを流入させ、DPFの流出側端部が200℃に到達する時間を計測することによって行った。具体的には、まず、得られた目封止ハニカム構造体の外周に、保持材としてセラミック製非熱膨張性マットを巻き、SUS409のステンレス鋼製のキャニング用缶体に押し込んで、キャニング構造体とした。更に、キャニング構造体の流出側端部にKタイプのシース熱電対を設置した。その後、ディーゼル燃料の燃焼により、400℃の燃焼ガスを流入させ、事前に設置した熱電対の温度をモニターし、それが200℃に到達する時間[秒]を測定した。なお、ディーゼル燃料としては、軽油を用いた。ライトオフ性能評価では、比較例1の目封止ハニカム構造体の200℃到達時間[秒]を基準(Base)とし、以下のように評価を行った。Baseに対して、200℃到達時間[秒]が+0.5秒以下の場合を「良」とした。Baseに対して、200℃到達時間[秒]が+0.5秒超で、且つ+1秒以下の場合を「可」とした。Baseに対して、200℃到達時間[秒]が+1秒超の場合を「不可」とした。
【0065】
[入口開口率]
目封止ハニカム構造体の断面の面積に対する、流入側端面における流入セルが占める面積の比率[%]を測定した。この面積の比率[%]を、目封止ハニカム構造体の入口開口率[%]とした。入口開口率の評価では、比較例1の目封止ハニカム構造体の入口開口率[%]を基準(Base)とし、以下のように評価を行った。Baseに対して、入口開口率[%]が+1%以下の場合を「良」とした。Baseに対して、入口開口率[%]が1%超で、且つ+2%以下の場合を「可」とした。Baseに対して、入口開口率[%]が+2%超の場合を「不可」とした。
【0066】
[PM堆積時の圧力損失]
目封止ハニカム構造体に、スス含有燃焼ガスを流して、目封止ハニカム構造体にススを堆積させ、スス堆積量が4g/Lとなった際の流入側と流出側における圧力差から、目封止ハニカム構造体のPM堆積時の圧力損失を測定した。具体的には、まず、軽油を、酸素欠乏状態で燃焼させることで、ススを生じた燃焼ガスを発生させた。そして、スス発生量10g/h、流量2.4Nm/min、温度200℃の燃焼ガスに対して、希釈空気を追加して調整することで、PM堆積時の圧力損失評価用のスス含有燃焼ガスを作製した。このスス含有燃焼ガスを、目封止ハニカム構造体に流し、目封止ハニカム構造体へのスス堆積量が4g/Lとなった時点で、この目封止ハニカム構造体の流入側及び流出側の圧力を測定し、その圧力差を、目封止ハニカム構造体のPM堆積時の圧力損失値とした。PM堆積時の圧力損失の評価では、比較例1の目封止ハニカム構造体の圧力損失値を基準(Base)とし、以下のように評価を行った。Baseに対して、圧力損失値の増加が+4%以下の場合を「良」とした。Baseに対して、圧力損失値の増加が+4%を超え、且つ+8%以下の場合を「可」とした。Baseに対して、圧力損失値の増加が+8%を超える場合を「不可」とした。
【0067】
(結果)
表1及び表2に示すように、実施例1〜12の目封止ハニカム構造体は、「耐熱衝撃性」、「ライトオフ性能」、「入口開口率」、及び「PM堆積時の圧力損失」の全ての評価において、「可」以上の評価結果であった。特に、実施例1〜12及び比較例1の目封止ハニカム構造体の評価結果から、「内接円の直径D[mm]」が、「内接円の直径D[mm]」の√2倍より大きいと、目封止ハニカム構造体の耐熱衝撃性が向上することが判明した。また、比較例2及び3のように、D/(√2×D)の値が1.20〜1.80以外の場合には、「ライトオフ性能」や「入口開口率」の評価において、不可という結果となった。したがって、D1/(√2×D)の値を1.20〜1.80とした場合に、「耐熱衝撃性」、「ライトオフ性能」、「入口開口率」、及び「PM堆積時の圧力損失」の全てが、比較例1に対して向上することが分かった。
【0068】
また、式(1)を満たす交点部の比率は、その比率が減少するに従って、目封止ハニカム構造体の耐熱衝撃性が低下し、60%を下回った場合には、耐熱衝撃性が大きく低下することが分かった。
【0069】
更に、「内接円の直径D[mm]」は、0.20〜0.80mmであると、「ライトオフ性能」、「入口開口率」、及び「PM堆積時の圧力損失」の評価が良好であったが、0.80mmを超えると、それぞれの評価が低下することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の目封止ハニカム構造体は、排ガスの浄化用フィルタとして利用することができる。また、本発明の目封止ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持させた、触媒担体としても利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:目封止部、3a:流入側目封止部、3b:流出側目封止部、4:交点部、6a:流入側端面、6b:流出側端面、7:ハニカムセグメント、8:接合層、9:ハニカム構造部、11:外周壁、100:目封止ハニカム構造体、C:クラック、D,D:円の直径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7