特許第6802132号(P6802132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802132
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 5/00 20060101AFI20201207BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F27D5/00
   F27D3/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-179472(P2017-179472)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-56499(P2019-56499A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】天岸 伸夫
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−130959(JP,A)
【文献】 特開2012−043871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 5/00
F27D 3/12
H01L 21/68
C03B 25/00−27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱室を有し、当該加熱室内で薄板状の被加熱物を熱処理する熱処理装置であって、当該加熱室内に前記被加熱物を平置き状に支持する支持部材が設置されており、前記支持部材に前記被加熱物を設置することが可能な熱処理装置において、
前記支持部材は、棒状部材と棒保持部材を有し、
前記棒状部材は、その周面になだらかにつながる曲面部と、前記曲面部とは異なる平面又は曲面を構成する異形部とを有し、
前記棒状部材は、前記加熱室の正面側から奥面側に延びる姿勢で前記棒保持部材に載置され、
前記棒状部材の周面の断面の最高部は前記曲面部であり、前記棒状部材の異形部が前記棒保持部材の一部と接し、
前記棒保持部材は上方が開口した凹部を有し、当該凹部に前記棒状部材が設置され、
前記凹部の内面であって開口側から奥側に至る領域には対向する内壁があり、少なくとも一方の前記内壁が傾斜面であり、前記棒状部材は、周面が対向する前記内壁の両者と接し、且つ前記異形部が対向する前記内壁の一方と接することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記異形部は平面であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記棒保持部材は突起を有し、当該突起によって前記凹部が構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の薄板状の被加熱物を熱風等によって熱処理する熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等を熱処理する熱処理装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された熱処理装置は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)、有機ELディスプレイ等のようなフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel display)の製作に使用される。
熱処理装置の一形式として、加熱室内に所定温度の熱風を導入するものがある。
また熱処理装置の一例として、加熱室内に載置棚が配された構造のものがある。
例えば予めガラス板等に対して特定の溶液を塗布したガラス基板を、ロボットハンドを用いて前記した載置棚の段部の間に入れる。そして加熱室内に熱風を導入し、ガラス板を熱風に晒して乾燥したり熱処理(焼成)した後、ロボットハンドを用いて処理済みのガラス板を取り出す。
【0003】
載置棚には、ガラス基板を支持する支持部材が上下方向に複数段にわたって設けられた構造のものがある。
支持部材は、例えば、棒、梁、板によって構成されている場合がある。
ガラス基板は加熱室の中にあって支持部材の上に載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−46894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した様に、ガラス基板は加熱室の中にあって支持部材の上に載置され、支持部材の形状には例えば棒、梁、板等がある。
ガラス基板は当然に支持部材に接することとなるから、支持部材によってガラス基板が傷付く場合がある。
ここでガラス基板を傷付けにくい支持部材として、丸棒状の部材でガラス基板を支持する構造が考えられる。丸棒状の部材で支持する支持部材は、ガラス基板と線接触し、且つ接触部分に角が無いので、ガラス基板に局部的な力が掛かりにくい。そのため丸棒状の部材を支持部材として採用すると、載置されたガラス基板に傷がつきにくい。
また丸棒状の支持部材は、前記した様にガラス基板と線接触するため、ガラス基板は支持部材の長手方向に移動しにくいという利点がある。
しかしその一方で、丸棒状の部材は転がり易く、それが理由でガラス基板を傷つけてしまう場合もある。
以下、説明する。
なお本明細書では、加熱室に対してガラス基板を挿入する方向を「ガラス基板の縦方向」と称し、これに直交する方向を「ガラス基板の幅方向」と称する場合がある。
【0006】
前記した様に、ガラス基板は、例えばロボットハンドを用いて加熱室に挿入され、載置棚の所定の段に設置される場合がある。そして例えば加熱室に熱風を循環させてガラス基板を乾燥並びに焼成する。
ここで被加熱物たるガラス基板のサイズはまちまちであり、大面積のものや、厚さの薄いものがある。特に近年では、面積が1.0平方メートル程度以上と大型であり、且つ厚さが0.5mmという様な極めて薄いガラス基板を熱処理する場合がある。
【0007】
面積が大きく、且つ薄いガラス基板を熱風にさらすと、風によってガラス基板が幅方向(横方向)に力を受ける場合がある。
ここで支持部材の支持部が丸棒状の部材であるならば、ガラス基板はあたかもコロの上に載せられた様な状態となり、幅方向の移動に対する抵抗が小さい状態となっている場合がある。
そのため丸棒状の部材が転がり、載置されたガラス基板が幅方向に移動する場合がある。そしてガラス基板が他の部材に当たって端辺が傷つくことがある。例えばガラス基板の幅方向の移動を規制するストッパ部材がある場合は、丸棒状の部材が転がり動いて上のガラス基板が幅方向に移動し、ガラス基板の端部がストッパ部材に衝突して傷つく場合がある。
またガラス基板が移動する際にガラス基板と支持部材の接触位置が変わり、ガラス基板に傷が付いてしまう場合もある。
【0008】
本発明は、上記した知見に基づいて開発されたものであり、ガラス基板を傷つけにくい構造の熱処理装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための発明は、被加熱物を加熱する加熱室を有し、当該加熱室内で薄板状の被加熱物を熱処理する熱処理装置であって、当該加熱室内に前記被加熱物を平置き状に支持する支持部材が設置されており、前記支持部材に前記被加熱物を設置することが可能な熱処理装置において、前記支持部材は、棒状部材と棒保持部材を有し、前記棒状部材は、その周面になだらかにつながる曲面部と、前記曲面部とは異なる平面又は曲面を構成する異形部を有し、前記棒状部材は、前記加熱室の正面側から奥面側に延びる姿勢で前記棒保持部材に載置され、前記棒状部材の周面の断面の最高部は前記曲面部であり、前記棒状部材の異形部が前記棒保持部材の一部と接することを特徴とする熱処理装置である。
【0010】
本発明の熱処理装置で採用する支持部材は、棒状部材を有し、当該棒状部材の上にガラス基板の様な被加熱物を載置する。
本発明で採用する棒状部材は、周面に曲面部がある。ここで曲面部とは、円弧面や楕円面等であり、不連続部分を有さずになだらかに連続する面である。
本発明の熱処理装置では、棒状部材が設置された状態においては、周面の断面の最高部に曲面部が来る。そのため被加熱物は、棒状部材の曲面部と接し、傷つきにくい。
また棒状部材には異形部があり、異形部は棒保持部材の一部と接していて棒状部材の転がりを阻止する。そのため棒状部材は転がりにくく、載置された被加熱物の移動が阻止される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記異形部は平面であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置である。
【0012】
本発明では、平面状の異形部を有し、当該平面状の異形部が棒保持部材の一部と接しているので、棒状部材は転がりにくい。
【0013】
記棒保持部材は上方が開口した凹部を有し、当該凹部に前記棒状部材が設置されていることが望ましい。
【0014】
凹部は、切削加工によって切り欠かれたものでもよく、曲げ加工によって板を変形して形成されたものでもよい。
本発明では、棒保持部材に形成された凹部に棒状部材が設置されているので、棒状部材の移動範囲が規制される。
即ち棒状部材の移動形態は、転がり移動と、滑り移動がある。ここで滑り移動とは、棒状部材が転がることなくずれ動く状態を言う。
本発明では、棒状部材は凹部に設置されているので、仮に滑り移動したとしても移動範囲が限定される。
【0015】
記凹部の内面であって開口側から奥側に至る領域には対向する内壁があり、少なくとも一方の前記内壁が傾斜面であり、前記棒状部材は、周面が対向する前記内壁の両者と接し、且つ異形部が対向する前記内壁の一方と接していることが望ましい。
【0016】
本発明で採用する凹部は、内壁の少なくとも一方が傾斜面である。そして棒状部材は、周面が対向する内壁の両者と接している。そのため棒状部材は、異なる2点で棒保持部材と接し、幅方向の移動が規制される。
また棒状部材は、異形部が一方の内壁と接しているから、回転しにくい。
請求項1に記載の発明は、被加熱物を加熱する加熱室を有し、当該加熱室内で薄板状の被加熱物を熱処理する熱処理装置であって、当該加熱室内に前記被加熱物を平置き状に支持する支持部材が設置されており、前記支持部材に前記被加熱物を設置することが可能な熱処理装置において、前記支持部材は、棒状部材と棒保持部材を有し、前記棒状部材は、その周面になだらかにつながる曲面部と、前記曲面部とは異なる平面又は曲面を構成する異形部と、を有し、前記棒状部材は、前記加熱室の正面側から奥面側に延びる姿勢で前記棒保持部材に載置され、前記棒状部材の周面の断面の最高部は前記曲面部であり、前記棒状部材の異形部が前記棒保持部材の一部と接し、前記棒保持部材は上方が開口した凹部を有し、当該凹部に前記棒状部材が設置され、前記凹部の内面であって開口側から奥側に至る領域には対向する内壁があり、少なくとも一方の前記内壁が傾斜面であり、前記棒状部材は、周面が対向する前記内壁の両者と接し、且つ前記異形部が対向する前記内壁の一方と接することを特徴とする熱処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記棒保持部材は突起を有し、当該突起によって前記凹部が構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱処理装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱処理装置によると、薄板状の被加熱物が熱処理中にずれ動きにくく、被加熱物が傷つきにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の熱処理装置の内部構造を示す透視斜視図である。
図2図1の熱処理装置に内蔵されている棚部材の正面図である。
図3】(a)は図1の熱処理装置に内蔵されている棚部材の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
図4】(a)は図1の熱処理装置に内蔵されている棚部材の側壁近傍の部分斜視図であり、(b)はその拡大図である。
図5図1の熱処理装置で採用する支持部材の棒状部材の拡大図である。
図6】(a)は支持部材の部分斜視図であり、(b)は支持部材にガラス基板が載置された状態を示す部分拡大図である。
図7】(a)乃至(d)の各左図は、棒状部材の変形例を示す断面図であり、各右図は、棒状部材と棒保持部材との関係を示す断面図である。
図8】(a)乃至(g)は、棒保持部材の変形例を示し、棒状部材と棒保持部材との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の熱処理装置1は、図1に示すように被加熱物を加熱する加熱室2を有し、加熱室2内に棚部材3が設置されたものである。棚部材3は、被加熱物たるガラス基板100(図6)を略水平姿勢で保持し、これを上下に一定の間隔をおいて複数枚収容する載置棚として機能するものである。
本実施形態では、棚部材3は熱処理装置1の本体部分とは別体のものである。
熱処理装置1の本体部分は、2点鎖線で示す外郭部材5内の中央に、周囲が囲まれていて被加熱物を加熱する加熱室2を有する。加熱室2の正面側には開口6があり、二点鎖線で示す扉7によって加熱室2の正面の開口6が開閉される。
加熱室2の奥面側、即ち開口6と対向する面は、全面が送風口8となっており、フィルター10が装着されている。
【0020】
本実施形態では、加熱室2の側面に側面通風路11がある。また加熱室2の上部にはヒータ室12があり、電気ヒータ13が設置されている。側面通風路11とヒータ室12との間には通風口20があり、側面通風路11とヒータ室12は通風口20を介して連通している。加熱室2の裏面側には奥側通風路21がある。奥側通風路21は前記したヒータ室12と加熱室2の送風口8を繋ぐものであり、送風機23が設置されている。
【0021】
熱処理装置1は、奥側通風路21に設けられた送風機23によって、加熱室2内の空気が側面通風路11等を経由して循環し、その間にヒータ室12を通過して循環する空気が所定の温度に調整される。
即ち加熱室2の空気は、送風機23の負圧によって吸引され、正面開口6の近傍から側面通風路11に流れる。側面通風路11を通過した空気は、通風口20からヒータ室12内に入り、電気ヒータ13と接して所定の温度に調整される。なお加熱室2には図示しない温度センサーがあり、当該温度センサーの検知温度が所定の温度となる様に電気ヒータ13が制御されている。
【0022】
ヒータ室12内で所定の温度に調整された空気は、送風機23に吸引されて加圧され、奥側通風路21及び送風口8を経由して加熱室2内に供給される。
本実施形態の熱処理装置1は、被加熱物を加熱処理するものであるから、加熱室2に導入される空気は高温である。また加熱室2内はある程度の風速をもって空気が流れている。本実施形態では、加熱室2内は、熱風が循環する状態となる。
【0023】
次に棚部材3について説明する。
棚部材3は、図1の様に熱処理装置1の本体部分とは別体のものである。棚部材3は、筐体25内に支持部材30(図3図4)及びストッパー部材27(図2図6)が設置されたものである。
棚部材3の筐体25は、図1図2図3の様に底面45、天面46及び左右の側面47,48が板で覆われ、正面と裏面が開口している。
【0024】
支持部材30は、加熱室2内においてガラス基板100を平置き状に支持するものであり、本実施形態では、図4図6の様に棒状部材31とブラケット(棒保持部材)32によって構成されている。
支持部材30は、図2図3の様に左右の側面47,48に設けられている。また本実施形態では、多数のガラス基板100を収容するべく支持部材30は、高さ方向に所定の間隔をあけて複数段にわたって設置されている。
【0025】
支持部材30を構成する棒状部材31は、図4(a)に示す様に棒状である。本実施形態では、棒状部材31の断面形状はいずれの部分も同一であるが、一部が異なっていてもよい。棒状部材31の断面形状は図3図5の様に円を基調とし、その一部が平面状に削られている。棒状部材31はその周面の大部分が円弧面であり、一部が平面である。
従って棒状部材31は、その周面になだらかにつながる曲面部35と、曲面部35とは異なる平面を構成する異形部36を有している。
【0026】
棒状部材31の全長は、図4(a)の様に棚部材3の奥行き寸法に対して相当に短い。棒状部材31の好ましい全長は、棚部材3の奥行き寸法に係わらず、10cmから30cmであり、好ましくは12cmから20cmである。
棒状部材31の断面形状に注目すると、図3(b)の様に曲面部35の円弧のなす角Aと異形部36の平面のなす角Bは、円弧のなす角Aの方が大きい。
【0027】
棒状部材31の素材は限定されるものではないが、相当の高温に耐えることが望ましく、ガラスやセラミック等の無機物や金属であることが望ましい。
本実施形態では、棒状部材31はガラスで作られている。
棒状部材31の製造方法は任意であるが、例えば断面形状が円形の棒を製造し、その棒の一面を研削加工して異形部36を形成する方法が推奨される。
【0028】
ブラケット32は、棒状部材31を保持する棒保持部材として機能する。ブラケット32の全体形状は、図4(a)の様に帯状の板である。ブラケット32の全長は、棚部材3の奥行き寸法と略等しく、前記した棒状部材31に比べてはるかに長い。
【0029】
ブラケット32には、図4(b)の様にその一方の長辺の近傍に凹部38が形成されている。凹部38は、溝状に延びており、ブラケット32の全長に至っている。本実施形態では、凹部38は連続する溝であり、端部はブラケット32の対向する短辺に至っている。凹部38は上記した様に連続する溝であることが望ましいが、分断されていてもよい。凹部38は連続するものである必要はなく、棒状部材31が載せられる部位が凹状であればよい。
凹部38の断面形状は、図3(b)、図4の様に上方が開口した「V」字状である。そのため凹部38の内壁は、対向する一対の傾斜壁40a,40bを有している。
本実施形態では、図3(b)の様に対向する傾斜壁40a,40bの傾斜角度は等しい。
【0030】
ブラケット32は、図2図3図4の様に、棚部材3の筐体25の左右の側面47,48に一方の長辺が固定されている。
そのため帯状の板たるブラケット32は、加熱室2の側壁に沿って、加熱室2の正面側から奥面側に向かって延びている。
またブラケット32は、いずれも一方の側面47,48に片持ち支持され、加熱室2の側面側から中央方向に向かって張り出し状に設置されている。
即ちブラケット32は、その長辺の一方を基端として棚部材3に片持ち支持され、自由端側は棚部材3の中央に向かって張り出されている。
ブラケット32の姿勢を概観すると、加熱室2の側面側から加熱室2の中央方向に向かって張り出されている。
そしてブラケット32の自由端側に前記した凹部38がある。
【0031】
本実施形態の支持部材30は、複数の棒状部材31がブラケット32で支持されたものである。
即ち本実施形態の支持部材30は、図4(a)の様に複数の棒状部材31とブラケット32によって構成されており、複数の棒状部材31が直列に並べられて凹部38に装着されてなるものである。
前記した様に帯状の板たるブラケット32は、加熱室2の側壁に沿って加熱室2の正面側から奥側に向かって延びており、且つ凹部38はブラケット32の自由端側の長辺の近傍に設けられた溝であるから、棒状部材31は、加熱室2の正面側から奥側に向かって延びる姿勢となっている。
【0032】
また本実施形態では、ブラケット32に設けられた凹部38は、一条の溝であり、且つ棒状部材31の全長は、凹部38の全長に対してはるかに短いから、凹部38内に複数本の棒状部材31を直列的に並べて配置することができる。
また棒状部材31の周面の一部は凹部38から露出している。
ブラケット32の凹部38内における棒状部材31の姿勢は、図3(b)、図6の通りであり、棒状部材31の異形部36が、一方の傾斜壁40bと接し、その背面側が他方の傾斜壁40aと接している。
ここで棒状部材31の異形部36は平面であるから、凹部38のいずれかの傾斜壁40の表面と密接した姿勢で安定する。
【0033】
また凹部38の断面形状は「V」字状であり、開口側が広く、奥に行く程、傾斜壁40の間隔が狭まって行くから、異形部36の背面側となる曲面部35は、いずれかの深さで必ず他方の傾斜壁40と接する。
そのため棒状部材31は、「V」字状の溝に嵌まり込み、且つ異形部36は平面部分が傾斜壁40の表面と密接する。
従って棒状部材31は、回転しにくい状態となる。また水平方向(図3 矢印X)のずれ動きは、傾斜壁40で阻止される。即ち傾斜壁40は、垂直方向成分を持つから、棒状部材31に対して水平方向に掛かる力が傾斜壁40に付加され、棒状部材31の幅方向へのずれ動きが阻止される。
【0034】
また異形部36は、棒状部材31の周面の一部に過ぎず、周面の大部分は円弧面であるから、棒状部材31が凹部38に嵌まり込み、且つ異形部36の平面部分が傾斜壁40の表面と密接した状態における棒状部材31の最高高さの位置は、円弧面となる。
言い換えると、図3(b)の様に、棒状部材31の断面の中心を通る垂直線50を想定したとき、垂直線50は棒状部材31の凹部38から露出した側の曲面部35と交わる。
【0035】
ストッパー部材27は、ステンレススチール等の金属板を曲げ加工して作られたものであり、図2の様に、複数の接触部28が連接部33で繋がった構造となっている。
接触部28は、図2図6(b)の様に取り付け姿勢を基準として傾斜した平面を構成する部分である。
ストッパー部材27は、ガラス基板100の幅方向への移動範囲を規制するものである。
【0036】
次に、本実施形態の熱処理装置1の機能について説明する。
本実施形態の熱処理装置1についても、ガラス基板100を被加熱物とし、ガラス基板100を熱処理するものである。
本実施形態においても、ガラス基板100は、加熱室2内において支持部材30で支持される。具体的には、図6の様に、ガラス基板100は、支持部材30の棒状部材31の上に平置きされる。
ここで本実施形態で採用する支持部材30は、棒状部材31でガラス基板100を支持するが、棒状部材31の周面は、円を基調とする曲面であり、且つ最も高い位置に曲面がある。そのため棒状部材31は曲面でガラス基板100と接し、ガラス基板100を傷つけ難い。
【0037】
ガラス基板100は、加熱室2内で熱風にさらされて乾燥並びに焼成される。またガラス基板100は、熱風にさらされて幅方向に力を受ける場合がある。
ここで本実施形態の支持部材30は、棒状部材31の平面状の異形部36が、一方の傾斜壁40bと接しているから、棒状部材31自体は回転しにくく、その場で転がりにくい。そのため棒状部材31は回転動作をせず、ガラス基板100は転がり移動しにくい。
【0038】
また棒状部材31が水平移動することも阻止されているので、ガラス基板100は、熱風から幅方向に力を受けても、幅方向には移動しにくい。そのためガラス基板100がストッパー部材27と衝突する頻度が低く、ガラス基板100の端部は傷つきにくい。
またガラス基板100が棒状部材31に対して相対移動することが少ないので、ガラス基板100を傷つけにくい。
【0039】
以上説明した実施形態では、異形部36の一例として平面に削った面を採用した。しかしながら本発明は、異形部36の形態を平面形状に限定するものではない。要するに、異形部36は、曲面部とは異なる平面又は曲面を構成するものであって、ブラケット32の一部と係合したり、回転時に引っ掛かりを起こす形状であればよい。
例えば図7(a)に示す棒状部材60の様に、表面の一部に切り欠き溝61があり、その開口に平行な2条の直線部62が形成されたものであってもよい。
切り欠き溝61の部位は、他の曲面部とは異なる平面を構成し、異形部として機能する。
棒状部材60は、凹部38の中において、2条の直線部62が傾斜壁40と接し、棒状部材60の回転を阻止する。
【0040】
また図7(b)に示す棒状部材65の様に、表面の一部に凹み66が形成されたものであってもよい。
凹み66の部位は、他の曲面部とは異なる曲面を構成している。
棒状部材65は、凹部38の中において、凹み66が傾斜壁40と接し、棒状部材65の回転を阻止する。本実施形態では、凹み66が異形部として機能する。
【0041】
また図7(c)に示す棒状部材67の様に、異形部36が複数箇所に設けられていてもよい。
さらに図7(d)に示す棒状部材68の様に、表面に突起70を設けて異形部71としてもよい。
【0042】
以上説明した実施形態では、ブラケット32の凹部38は、「V」字状であり、傾斜壁40a,40bの傾斜角度は等しいものであったが、図8(a)の様に、傾斜壁40a,40bの傾斜角度が異なるものであってもよい。
また図8(b)、図8(c)の様に一方の内壁が垂直姿勢であってもよい。
図8(d)は、異形部36が垂直壁側に接した例を示している。図8(d)に示す例では、対向する内壁の高さが異なっている。
【0043】
また図8(e)の様な矩形断面の凹部80であってもよい。
図8(e)に示す実施形態では、棒状部材31の異形部36がブラケット32の表面と接することによって回転が阻止される。凹部80の幅は棒状部材31の断面の直径よりも大きいので、棒状部材31は、多少、幅方向に動く場合がある。
【0044】
さらに図8(f)、図8(g)の様に、突起81等によって棒状部材31の回転や、水平移動を阻止してもよい。
図8(f)に示す例では、棒状部材31の異形部36がブラケット32の表面と接することによって回転が阻止される。また突起81によって、棒状部材31の幅方向のずれが矯正される。
図8(g)に示す例では、突起82の斜面に棒状部材31の異形部36が接することによって回転が阻止される。またに突起82、83によって、棒状部材31の幅方向のずれが矯正される。
【0045】
以上、棒状部材の変形例と、ブラケット32の変形例を個別に説明したが、変形例同士を任意に組み合わせた形態も可能である。
【0046】
以上説明した実施形態では、ブラケット32は、板状であり、これを曲げ加工して凹部38等を形成したが、比較的厚さのある部材を採用し、フライス加工する等によって凹部38を形成してもよい。
また凹部38が複数条に渡って設けられていてもよい。
ブラケット32は、複数に分割されていてもよく、梁状のものが複数並べられたものであってもよい。
【0047】
以上説明した実施形態では、比較的短い棒状部材31を採用し、これを直線状に並べてガラス基板100を支持した。言い換えると、上記した実施形態では、分割された棒状部材31でガラス基板100を支持している。
これに対して、より全長の長い棒状部材を使用し、例えば棚部材3の全長に匹敵する長さの棒状部材をブラケット32で保持してガラス基板100を支持してもよい。
しかしながら、長尺の棒を精密加工することは困難であり、部分的に歪んだり、捩じれてしまう場合もある。
そのため上記した実施形態の様に、複数の棒状部材31を直線的に並べてガラス基板100を保持することが望ましい。
直線状に並べる場合の棒状部材31の本数は任意であるが、3本から10本程度が望ましく、より望ましくは、4本から6本程度である。
【0048】
以上説明した実施形態では、支持部材30が複数段に設置されているが、支持部材30の段数には限定はなく、一段のみであってもよい。
以上説明した実施形態では、加熱室2内に棚部材3が設置され、当該棚部材3に支持部材30が設けられているが、棚部材3は必須ではなく、加熱室2に直接的に支持部材30が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 熱処理装置
2 加熱室
3 棚部材
30 支持部材
31,60,65,67,68 棒状部材
32 ブラケット(棒保持部材)
35 曲面部
36,71 異形部
38 凹部
40a,40b 傾斜壁
47,48 側面
100 ガラス基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8