特許第6802147号(P6802147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802147液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802147
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20201207BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 B
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-500086(P2017-500086)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2016087472
(87)【国際公開番号】WO2017119260
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-1194(P2016-1194)
(32)【優先日】2016年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−018810(JP,A)
【文献】 特開2010−169833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08G 59/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記熱硬化剤は、下記式(1)で表される構造を有し、かつ、主鎖の両末端に第1級アミノ基を有する化合物を含有することを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1)中、Xは、芳香環を有する構造であり、nは、1以上の整数であり、*は、結合位置である。
【請求項2】
式(1)中のXが、下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、又は、(2−5)で表される構造であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。












【化2】
式(2−1)中、R及びRは、それぞれ独立して水素又はメチル基であり、式(2−1)〜(2−5)中、*は、結合位置である。
【請求項3】
式(1)で表される構造を有する化合物として、下記式(3)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【化3】
式(3)中、Xは、式(1)中のXと同じ構造であり、nは、式(1)中のnと同じ数であり、*は、結合位置である。
【請求項4】
式(1)で表される構造を有する化合物として、下記式(4)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。




【化4】
式(4)中、Xは、式(1)中のXと同じ構造であり、nは、式(1)中のnと同じ数であり、*は、結合位置である。
【請求項5】
式(1)で表される構造を有する化合物は、融点が60℃〜100℃であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項7】
請求項1、2、3、4若しくは5記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項6記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性と低温での速硬化性とを両立できる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂と光重合開始剤と熱硬化剤とを含有する光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシール枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、機器の小型化は最も求められている課題である。機器の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【0004】
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部に光が到達し難く、従来のシール剤では硬化が不充分となる。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出して液晶汚染を発生させやすくなるという問題があった。
【0005】
そこで、シール剤を加熱によって硬化させることが検討されており、省エネルギー化や液晶の安定性の観点から、シール剤を低温かつ短時間の加熱で熱硬化させることが望まれている。シール剤を低温かつ短時間の加熱で硬化させるための方法としては、融点の低い熱硬化剤を用いることが考えられるが、融点の低い熱硬化剤を用いた場合、得られるシール剤が保存安定性に劣るものとなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保存安定性と低温での速硬化性とを両立できる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、上記熱硬化剤は、下記式(1)で表される構造を有し、かつ、主鎖の両末端に第1級アミノ基を有する化合物を含有する液晶表示素子用シール剤である。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、Xは、芳香環を有する構造であり、nは、1以上の整数であり、*は、結合位置である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、熱硬化剤として特定の構造を有する化合物を用いることにより、保存安定性と低温での速硬化性とを両立できる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤は、上記式(1)で表される構造を有する化合物を含有する。上記熱硬化剤として上記式(1)で表される構造を有する化合物を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、保存安定性と低温での速硬化性とを両立できる。
【0013】
上記式(1)中、nは、1〜10の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましい。
また、上記式(1)中、Xは、下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、又は、(2−5)で表される構造であることが好ましく、下記式(2−1)で表される構造であることがより好ましく、下記式(2−1)中のR及びRがメチル基である構造であることが更に好ましい。
【0014】
【化2】
【0015】
式(2−1)中、R及びRは、それぞれ独立して水素又はメチル基であり、式(2−1)〜(2−5)中、*は、結合位置である。
【0016】
上記式(1)で表される構造を有する化合物は、2価の脂肪族炭化水素基を有する第1級ジアミン化合物に由来する構造を有することが好ましく、2価の脂環式炭化水素基を有する第1級ジアミン化合物に由来する構造を有することがより好ましく、シクロヘキシレン基を有する第1級ジアミン化合物に由来する構造を有することが更に好ましく、下記式(3)で表される構造を有する化合物又は下記式(4)で表される構造を有する化合物であることが特に好ましい。
【0017】
【化3】
【0018】
式(3)中、Xは、式(1)中のXと同じ構造であり、nは、式(1)中のnと同じ数であり、*は、結合位置である。
【0019】
【化4】
【0020】
式(4)中、Xは、式(1)中のXと同じ構造であり、nは、式(1)中のnと同じ数であり、*は、結合位置である。
【0021】
上記式(1)で表される構造を有する化合物は、主鎖の末端にエポキシ基又は第1級アミノ基を有することが好ましく、主鎖の末端に第1級アミノ基を有することがより好ましく、主鎖の両末端に第1級アミノ基を有することが更に好ましい。
【0022】
上記式(1)で表される構造を有する化合物の融点の好ましい下限は60℃、好ましい上限は100℃である。上記式(1)で表される構造を有する化合物の融点がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が保存安定性と低温での速硬化性とを両立する効果により優れるものとなる。上記式(1)で表される構造を有する化合物の融点のより好ましい下限は65℃、好ましい上限は95℃である。
【0023】
上記式(1)で表される構造を有する化合物を製造する方法としては、具体的には例えば、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂肪族第1級ジアミンと、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジイルビス(グリシジルエーテル)等とを反応させる方法等が挙げられる。
【0024】
上記式(1)で表される構造を有する化合物の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が5重量部、好ましい上限が120重量部である。上記式(1)で表される構造を有する化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が保存安定性と低温での速硬化性とを両立する効果により優れるものとなる。上記式(1)で表される構造を有する化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は100重量部、更に好ましい下限は20重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0025】
上記熱硬化剤は、上記式(1)で表される構造を有する化合物に加えて、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の熱硬化剤を含有してもよい。
上記その他の熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、多価フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。なかでも、ヒドラジド系硬化剤が好適に用いられる。
【0026】
上記ヒドラジド系硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル−5−イソプロピルヒダントイン)、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられ、市販されているものとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアUDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)、SDH、IDH、ADH(いずれも大塚化学社製)、MDH(日本ファインケム社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0028】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールE型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エポミックR710(三井化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0029】
上記エポキシ化合物としては、部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂も好適に用いられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味し、例えば、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0030】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0031】
また、上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られる(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、併せて「(メタ)アクリロイル基」ともいう)を有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、本発明の液晶表示素子用シール剤の含有する硬化性樹脂として上述したエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。
【0037】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182(いずれもダイセル・オルネクス社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0038】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0039】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0041】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN−330、アートレジンSH−500B、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−9000H(いずれも根上工業社製)、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6HA、U−6LPA、U−10H、U−15HA、U−108、U−108A、U−122A、U−122P、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4000、UA−4100、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AI−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明の液晶表示素子用シール剤が上記エポキシ化合物と上記(メタ)アクリル化合物とを含有する場合、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比が5:95〜70:30になるように上記エポキシ化合物と上記(メタ)アクリル化合物とを配合することが好ましい。エポキシ基の比率がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性により優れるものとなる。
【0044】
上記硬化性樹脂は、液晶汚染を抑える点で、−OH基、−NH−基、−NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤や加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0046】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン等が挙げられる。
【0047】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0048】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物からなる開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0049】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0050】
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子アゾ開始剤以外のアゾ開始剤としては、例えば、V−65、V−501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0051】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0052】
上記ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0053】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の更なる向上等を目的として充填剤を含有してもよい。
【0054】
上記充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0055】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0057】
上記シランカップリング剤としては、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができることから、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0059】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0060】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0061】
上記チタンブラックは、波長300〜800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370〜450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。従って、上記光ラジカル重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長(370〜450nm)の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の液晶表示素子用シール剤の光硬化性をより増大させることができる。また一方で、本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
上記チタンブラックは、1μmあたりの光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほどよく、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特にないが、通常は5以下となる。
【0062】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを配合した本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0063】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0064】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0065】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0066】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の基板に対する密着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0067】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、粘度調整の為の反応性希釈剤、パネルギャップ調整の為のポリマービーズ等のスペーサー、3−P−クロロフェニル−1,1−ジメチル尿素等の硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他のカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0068】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、熱硬化剤と、ラジカル重合開始剤や充填剤等とを混合する方法等が挙げられる。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0070】
上記導電性微粒子としては、例えば、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0071】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、ITO薄膜等の電極を有する2枚の透明基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により枠状のシールパターンを形成する工程、液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、真空下で他方の基板を重ね合わせる工程、及び、加熱してシール剤を硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。また、加熱してシール剤を硬化させる工程の前に、光照射によりシール剤を仮硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0072】
本発明によれば、保存安定性と低温での速硬化性とを両立できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0074】
(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン71重量部と、ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500重量部と、n−ブチルアルコール500重量部を加えて混合溶解し、100℃で3時間加熱撹拌を行った。得られた反応混合物の溶媒除去と乾燥を行い、得られた固形物をジェットミルにて粉砕し、上記式(1)で表される構造を有する化合物A(融点83℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Aは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(3)で表される構造(Xが上記式(2−1)で表される基(R及びRがメチル基))を有することを確認した。
【0075】
(式(1)で表される構造を有する化合物Bの作製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に代えてビスフェノールFジグリシジルエーテル170重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物B(融点68℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Bは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(3)で表される構造(Xが上記式(2−1)で表される基(R及びRが水素))を有することを確認した。
【0076】
(式(1)で表される構造を有する化合物Cの作製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に代えてビスフェノールEジグリシジルエーテル180重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物C(融点78℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Cは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(3)で表される構造(Xが上記式(2−1)で表される基(R及びRの一方がメチル基、もう一方が水素))を有することを確認した。
【0077】
(式(1)で表される構造を有する化合物Dの作製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に代えてレゾルシノールジグリシジルエーテル130重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物D(融点94℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Dは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(3)で表される構造(Xが上記式(2−4)で表される基)を有することを確認した。
【0078】
(式(1)で表される構造を有する化合物Eの作製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に代えてビフェニル−4,4’−ジイルビス(グリシジルエーテル)180重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物E(融点98℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Eは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(3)で表される構造(Xが上記式(2−3)で表される基)を有することを確認した。
【0079】
(式(1)で表される構造を有する化合物Fの作製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に代えてビスフェノールA型エポキシ樹脂247重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物F(融点109℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Fは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(3)で表される構造(Xが上記式(2−1)で表される基(R及びRがメチル基))を有することを確認した。
【0080】
(式(1)で表される構造を有する化合物Gの作製)
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン71重量部に代えてジアミノジフェニルメタン99重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物G(融点97℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Gは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(1)におけるXが上記式(2−1)で表される基(R及びRがメチル基)である構造を有することを確認した。
【0081】
(式(1)で表される構造を有する化合物Hの作製)
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン71重量部に代えて1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン71重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Aの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物H(融点81℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Hは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(4)で表される構造(Xが上記式(2−1)で表される基(R及びRがメチル基))を有することを確認した。
【0082】
(式(1)で表される構造を有する化合物I作製)
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン71重量部に代えて1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン71重量部を用いたこと以外は、上記「(式(1)で表される構造を有する化合物Bの作製)」と同様にして、上記式(1)で表される構造を有する化合物I(融点67℃)を得た。得られた式(1)で表される構造を有する化合物Iは、H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、上記式(4)で表される構造(Xが上記式(2−1)で表される基(R及びRが水素))を有することを確認した。
【0083】
(エポキシ−イミダゾールアダクト化合物の作製)
2−メチルイミダゾール20重量部と、ビスフェノールAジグリシジルエーテル190重量部に、トルエン500重量部と、n−ブチルアルコール500重量部を加えて混合溶解し、70℃で2時間加熱撹拌を行った。得られた反応混合物の溶媒除去と乾燥を行い、得られた固形物をジェットミルにて粉砕し、エポキシ−イミダゾールアダクト化合物を得た。
【0084】
(実施例1〜15、比較例1、2)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1〜15、比較例1、2の各液晶表示素子用シール剤を調製した。
【0085】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0086】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、製造直後の初期粘度と、25℃で3日間保管したときの粘度とを測定した。(25℃、3日間保管後の粘度)/(初期粘度)を粘度変化率とし、粘度変化率が1.2未満であったものを「○」、1.2以上1.5未満であったものを「△」、1.5以上であったものを「×」として保存安定性を評価した。
なお、シール剤の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV−III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0087】
(低温硬化性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、100℃で40分間加熱した時のエポキシ基の反応率(エポキシ基由来のピークの減少率)をFT−IR測定器(Agilent Technologies社製、「UMA600」)を用いて測定した。エポキシ基の反応率が90%以上であったものを「○」、90%未満70%以上であったものを「△」、70%未満であったものを「×」として低温硬化性を評価した。
【0088】
(液晶表示素子の表示性能)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部にスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI−H050」)1重量部を分散させ、液晶表示素子用シール剤として、2枚のラビング済み配向膜及び透明電極付き基板の一方にシール剤の線幅が1mmになるようにディスペンサーで塗布した。
続いて液晶(チッソ社製、「JC−5004LA」)の微小滴を透明電極付き基板のシール剤の枠内全面に滴下塗布し、すぐにもう一方の透明電極付きカラーフィルター基板を貼り合わせ、シール剤部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、100℃で40分間加熱して液晶表示素子を得た。
得られた液晶表示素子について、100時間動作試験を行った後、80℃で1000時間電圧印加状態とした後のシール剤付近の液晶配向乱れを目視によって確認した。
配向乱れは表示部の色むらにより判断しており、色むらの程度に応じて、色むらが全くなかった場合を「◎」、色むらが微かにあった場合を「○」、色むらが少しあった場合を「△」、色むらがかなりあった場合を「×」として低液晶汚染性を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は、実用に全く問題のないレベルであり、「△」は液晶表示素子の表示設計によって問題になる可能性があるレベルであり、「×」は実用に耐えないレベルである。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、保存安定性と低温での速硬化性とを両立できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。