特許第6802155号(P6802155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802155
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】負圧治療用多機能ドレッシング構造
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20201207BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20201207BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20201207BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20201207BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20201207BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20201207BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20201207BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61M27/00
   A61F13/00 301A
   A61F13/00 301Z
   A61F13/00 301M
   A61F13/02 A
   A61L15/26 100
   A61L15/44 100
   A61L15/60 100
   A61L15/24 100
   A61L15/28 100
【請求項の数】43
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-518206(P2017-518206)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公表番号】特表2017-533009(P2017-533009A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】US2015053031
(87)【国際公開番号】WO2016057272
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】62/096,669
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/060,098
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,デイヴィッド,ジョージ
【審査官】 豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−510753(JP,A)
【文献】 特開2007−321289(JP,A)
【文献】 特表2014−523778(JP,A)
【文献】 特表2011−513003(JP,A)
【文献】 特表2008−536536(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0150764(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
A61L 15/00
D04H 1/00−18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレッシング用多機能コアであって、
組織部位に隣接して位置付けられるように構成された接触層と、
前記接触層に隣接する吸上げ層と、
前記吸上げ層に隣接するイオン交換層と、
前記イオン交換層に隣接する吸収層と、
前記吸収層に隣接する遮断層と、
前記遮断層に隣接する臭気吸収層とを含み、
前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層のそれぞれが、繊維質ウェブ中に配置された複数の繊維から形成され、
前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層のうちの2つ以上が同一の広がりを有することを特徴とする多機能コア。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層のすべてが同一の広がりを有することを特徴とする多機能コア。
【請求項3】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記臭気吸収層に隣接して結合される剛性層をさらに含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項4】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層の1つまたは複数の前記複数の繊維が、単一材料から形成された単層繊維を含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項5】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層の1つまたは複数の前記複数の繊維が、2種類の材料から形成された二層繊維を含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項6】
請求項5に記載の多機能コアにおいて、前記二層繊維が、第1材料から形成された内側コアと、第2材料から形成された外側シースとを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項7】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、および前記吸収層がそれぞれ、複数の二層繊維を含み、各二層繊維が、第1材料から形成された内側コアと、第2材料から形成された外側シースとを有することを特徴とする多機能コア。
【請求項8】
請求項7に記載の多機能コアにおいて、前記接触層の前記二層繊維の前記第1材料が疎水性ポリウレタンを含み、前記接触層の前記二層繊維の前記第2材料が親水性ポリウレタンを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項9】
請求項8に記載の多機能コアにおいて、前記親水性ポリウレタンがシリコーンゲルを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項10】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記接触層が、銀およびヨウ素からなる群から選択される抗菌物質を含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項11】
請求項7に記載の多機能コアにおいて、前記吸上げ層の前記二層繊維の前記第1材料が疎水性ポリウレタンを含み、前記吸上げ層の前記二層繊維の前記第2材料が親水性ポリウレタンを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項12】
請求項7に記載の多機能コアにおいて、前記イオン交換層の前記二層繊維の前記第1材料が疎水性ポリマーを含み、前記イオン交換層の前記二層繊維の前記第2材料が、イオン交換樹脂が中に配置された親水性ポリマーを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項13】
請求項7に記載の多機能コアにおいて、前記吸収層の前記二層繊維の前記第1材料が高吸収性ポリマーを含み、前記吸収層の前記二層繊維の前記第2材料が親水性ポリマーを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項14】
請求項1に記載の多機能コアにおいて、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層がそれぞれ、複数の単層繊維を含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項15】
請求項14に記載の多機能コアにおいて、前記吸上げ層の前記単層繊維が、ポリウレタン、ポリエステルおよびアクリルからなる群から選択される親水性ポリマーから形成されることを特徴とする多機能コア。
【請求項16】
請求項14に記載の多機能コアにおいて、前記イオン交換層の前記単層繊維が、活性炭素粒子が中に配置された親水性ポリウレタンから形成されることを特徴とする多機能コア。
【請求項17】
請求項14に記載の多機能コアにおいて、前記吸収層の前記単層繊維が、高吸収性ポリマーが中に配置された弾性ポリマーから形成されることを特徴とする多機能コア。
【請求項18】
請求項14に記載の多機能コアにおいて、前記遮断層の前記単層繊維が、開放性不織繊維質ウェブ中に配置された疎水性ポリマーから形成され、前記疎水性ポリマーがフルオロカーボンを含むことを特徴とする多機能コア。
【請求項19】
請求項14に記載の多機能コアにおいて、前記臭気吸収層の前記単層繊維が、開放性不織繊維質ウェブ中に配置された活性炭素粒子を有する気体透過性ポリマーから形成されることを特徴とする多機能コア。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1項に記載の多機能コアにおいて、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層の1つまたは複数が、負圧の流れを許容するように構成されることを特徴とする多機能コア。
【請求項21】
負圧治療を組織部位に提供するためのシステムであって、
前記組織部位に隣接して位置付けられるように構成されたマニホルドと、
前記マニホルド上に配置されるように、および密封空間を形成するために前記組織部位の周囲の組織に封じ付けられるように構成されたカバーと、
前記密封空間に流体結合されるように構成された負圧源と、
前記マニホルドと前記カバーの間に位置付けられるように構成された多機能コアであって、
前記マニホルド上に位置付けられるように構成された創傷界面層、
前記創傷界面層上に位置付けられる流体分散層、
前記流体分散層上に位置付けられるイオン除去層、
前記イオン除去層上に位置付けられる液体保持層、
前記液体保持層上に位置付けられる液体妨害層、
前記液体妨害層上に位置付けられる臭気除去層、
を含む多機能コアと、を含み、
前記創傷界面層、前記流体分散層、前記イオン除去層、前記液体保持層、前記液体妨害層、および前記臭気除去層のうちの2つ以上が同一の広がりを有することを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記創傷界面層、前記流体分散層、前記イオン除去層、前記液体保持層、前記液体妨害層、および前記臭気除去層のすべてが同一の広がりを有することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項21または22に記載のシステムにおいて、前記創傷界面層、前記流体分散層、前記イオン除去層、前記液体保持層、前記液体妨害層、および前記臭気除去層のそれぞれが、繊維質ウェブ中に配置される複数の繊維から形成されることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記創傷界面層、前記流体分散層、前記イオン除去層、前記液体保持層、前記液体妨害層、および前記臭気除去層の1つまたは複数の前記複数の繊維が、単一材料から形成された単層繊維を含むことを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記創傷界面層、前記流体分散層、前記イオン除去層、前記液体保持層、前記液体妨害層、および前記臭気除去層を形成する前記複数の繊維の少なくとも1つの前記複数の繊維が、2種類の材料から形成された二層繊維を含むことを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項21または22に記載のシステムにおいて、前記創傷界面層が複数の二層繊維を含み、各二層繊維が、第1材料から形成された内側コアと、第2材料から形成された外側シースとを有し、前記第1材料が疎水性ポリウレタンを含み、前記第2材料が親水性ポリウレタンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムにおいて、前記親水性ポリウレタンがシリコーンゲルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項21または22に記載のシステムにおいて、前記流体分散層が複数の二層繊維を含み、各二層繊維が、第1材料から形成された内側コアと、第2材料から形成された外側シースとを有し、前記第1材料が疎水性ポリウレタンを含み、前記第2材料が親水性ポリウレタンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項21または22に記載のシステムにおいて、前記イオン除去層が複数の二層繊維を含み、各二層繊維が、第1材料から形成された内側コアと、第2材料から形成された外側シースとを有し、前記第1材料が疎水性ポリマーを含み、前記第2材料が、イオン交換樹脂が中に配置された親水性ポリマーを含むことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項21または22に記載のシステムにおいて、前記イオン除去層が、活性炭素粒子が中に配置された親水性ポリウレタンから形成された複数の単層繊維を含むことを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項21乃至30の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記創傷界面層、前記流体分散層、前記イオン除去層、前記液体保持層、前記液体妨害層、および前記臭気除去層の1つまたは複数が、負圧の流れを許容するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項32】
負圧ドレッシング用多機能コアを製造する方法であって、
複数の作業ステーションの各作業ステーションにおいて1以上の繊維群を形成するステップと、
前記複数の作業ステーションの前記各作業ステーションにおいて前記繊維群のそれぞれを繊維質ウェブ層中に配置するステップと、
それら各層を互いに結合して多機能シートを形成するステップと、
前記各層を有する前記多機能シートを多機能コアへ分割するステップと、を含み、
前記各層が、接触層、吸上げ層、イオン交換層、吸収層、遮断層、および臭気吸収層を含み、
前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層のうちの2つ以上が同一の広がりを有することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記繊維群が、
単一材料から形成された単層繊維と、
2種類の材料、すなわち、第1材料から形成された内側コアおよび第2材料から形成された外側シースから形成された二層繊維と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法において、前記各層が、さらに、剛性層を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法において、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、および前記吸収層がそれぞれ、二層繊維群を含み、各二層繊維が、第1材料から形成された内側コアと、第2材料から形成された外側シースとを有することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記接触層の前記二層繊維の前記第1材料が疎水性ポリウレタンを含み、前記接触層の前記二層繊維の前記第2材料が親水性ポリウレタンを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記吸上げ層の前記二層繊維の前記第1材料が疎水性ポリウレタンを含み、前記吸上げ層の前記二層繊維の前記第2材料が親水性ポリウレタンを含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法において、前記イオン交換層の前記二層繊維の前記第1材料が疎水性ポリマーを含み、前記イオン交換層の前記二層繊維の前記第2材料が、イオン交換樹脂が中に配置された親水性ポリマーを含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法において、前記吸収層の前記二層繊維の前記第1材料が高吸収性ポリマーを含み、前記吸収層の前記二層繊維の前記第2材料が親水性ポリマーを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法において、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層前記遮断層、および前記臭気吸収層がそれぞれ、単層繊維群を含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項32乃至40の何れか1項に記載の方法において、前記繊維質ウェブ層が不織構造を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項32乃至41の何れか1項に記載の方法において、前記繊維群の少なくとも一つが織布構造中に配置されることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項32に記載の方法において、前記接触層、前記吸上げ層、前記イオン交換層、前記吸収層、前記遮断層、および前記臭気吸収層のすべてが同一の広がりを有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年10月6日に出願され“Multi−Function Dressing Structure for Negative Pressure Therapy”と題されたRobinsonらに対する米国仮特許出願第62/060,098号、および2014年12月24日に出願され“Ion Exchange Absorbent Systems,Apparatuses,and Methodsと題されたLockeらに対する米国仮特許出願第62/096,669号に基づく優先権および利益を主張するものであり、当該仮特許出願の両方をここに参照によって援用する。
【0002】
付随する請求項に記載される本発明は、全体として組織処置システムに関し、詳細には、負圧治療用多機能ドレッシング構造に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0003】
臨床研究および実践は、組織部位の近傍に減圧を適用することにより組織部位における新たな組織の成長を拡大および促進できることを示している。この現象の応用は多数あるが、減圧の適用は創傷の処置に特に有利であることが分かっている。外傷、手術または別の要因であっても、創傷の原因に関わらず、創傷の適切なケアが治療後の結果に重要である。減圧を伴う創傷または他の組織の処置は一般に「負圧治療」と称され得るが、他の名称でも知られ、例えば「負圧創傷治療」「減圧治療」「陰圧治療」および「陰圧補助閉鎖」が挙げられる。負圧治療は多くの恩恵を与え得る治療であり、それら恩恵には上皮および皮下組織の移動、改善された血流、および創傷部位における組織の微小な変形が含まれる。これらの恩恵が合わさることにより肉芽組織の発生を増大することができ、および治癒時間を短縮することができる。
【0004】
負圧治療の臨床上の恩恵は広く知られているが、負圧治療の費用および複雑さはそれを利用する際の制限因子であり得、負圧システム、構成要素およびプロセスの開発および運用は、製造業者、医療機関、および患者に大きな難題を示し続けている。
【発明の概要】
【0005】
負圧治療環境における多機能コアの新規かつ有用なシステム、装置および方法が、付随の請求項に記載されている。説明に役立つ実施形態もまた、特許請求されている主題を当業者が作製および使用できるように提示される。例えば、ある多機能コアが本明細書に記載されている。この多機能コアは、組織部位に隣接して位置付けられるように構成された接触層と、接触層に隣接する吸上げ層と、吸上げ層に隣接するイオン交換層と、イオン交換層に隣接する吸収層と、吸収層に隣接する遮断層と、遮断層に隣接する臭気吸収層とを含み得る。接触層、吸上げ層、イオン交換層、吸収層、遮断層、および臭気吸収層は、繊維質ウェブ内に配置された複数の繊維から形成され得る。
【0006】
別の例示的な実施形態において、負圧治療を組織部位に提供するシステムが記載される。システムは、組織部位に隣接して位置付けられるように構成されたマニホルドと、マニホルド上に配置されるようにおよび密封空間を形成するために組織部位の周囲の組織に封じ付けられるように構成されたカバーとを含み得る。負圧源は、密封空間に流体結合されるように構成され得、多機能コアはマニホルドとカバーの間に位置付けられるように構成され得る。多機能コアは、マニホルド上に位置付けられるように構成された創傷界面層と、創傷界面層上に位置付けられる流体分散層と、流体分散層上に位置付けられるイオン除去層と、イオン除去層上に位置付けられる液体保持層と、液体保持層上に位置付けられる液体妨害層と、液体妨害層上に位置付けられる臭気除去層とを含み得る。
【0007】
さらに他の実施形態では、負圧治療を組織部位に提供するための方法が記載される。組織界面は組織部位に隣接して位置付けられ得、密封部材は組織界面上に配置され得、かつ密封空間を形成するために組織部位の周囲の組織に封じ付けられ得る。負圧源は密封空間と流体結合され得る。流体処理装置は、組織界面と密封部材との間に位置付けられ得る。流体処理装置は、組織界面に隣接して位置付けられるように構成された接触層と、接触層に結合される流体分散層と、流体分散層に結合されるイオン交換層と、イオン交換層に結合される液体保持層と、液体保持層に結合される液体遮断層と、液体遮断層に結合される臭気除去層とを含み得る。負圧源は、流体を密封空間から流体処理装置を通して引くように、および密封空間内に負圧を生成するように作動され得る。
【0008】
さらに別の実施形態において、負圧ドレッシング用多機能コアを製造する方法が記載される。1種以上の複数の繊維が、複数の作業ステーションの各作業ステーションにおいて形成され得る。複数の繊維は、複数の作業ステーションの各作業ステーションにおいて繊維質ウェブ中に配置され得る。各層は、多機能シートを形成するように互いに結合され得る。複数の層を有する多機能シートは、多機能コアへ分割され得る。
【0009】
特許請求される主題を作製および使用する目的、利点および好ましい形態は、説明に役立つ実施形態の以下の詳細な記載と併せて添付図面を参照することによって、最良に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本明細書による負圧治療を提供できる負圧治療システムの例示的実施形態の断面図である。
図2図2は、図1の多機能コアの繊維の例示的実施形態の斜視図であり、その一部は断面で示されている。
図3図3は、図1の多機能コアの二層繊維の例示的実施形態の斜視図であり、その一部は断面で示されている。
図4図4は、図1の多機能コアの織布層の追加の細部を示す斜視図である。
図5図5は、図1の多機能コアの不織層の追加の細部を示す平面図である。
図6図6は、図1の負圧治療システムの多機能コアの例示的実施形態に関連付けられ得る追加の細部を示す概略断面分解図である。
図7図7は、図6の多機能コアを製造する製造プロセスの例示的実施形態の概略的な表現である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の例示的実施形態の記載は、付随する請求項に記載されている主題を当業者が作製しかつ使用することを可能にする情報を提供するが、当該技術分野ですでに周知の特定の詳細を省略している場合がある。従って以下の詳細な記載は、説明に役立つ記載として読むべきであり、限定的なものではない。
【0012】
また、例示的実施形態は、本明細書中、添付図面に描かれている様々な要素間の空間的な関係に、または様々な要素の空間的な方向性に関連して記載されている場合もある。一般に、そのような関係または方向性は、治療を受ける立場にある患者と一致するまたは患者に関連する基準枠を前提とする。しかしながら、当業者によって認識されるように、この基準枠は、厳密な規定というよりも単に記述的な手段である。
【0013】
図1は、本明細書に従い負圧治療を実現可能である負圧治療システム100の例示的実施形態の一部を立面図で示した断面図である。負圧治療システム100はドレッシング102および負圧源104を含み得る。例えば、ドレッシング102は図1に示されるように負圧源104に流体結合され得る。いくつかの実施形態では、負圧源104は、チューブ106およびコネクタ107によってドレッシング102に流体結合され得る。ドレッシングは一般にカバーおよび組織界面を含む。ドレッシング102は例えばカバー108および組織界面110を含む。ドレッシング102はまた、コア112など、流体処理コアを含み得る。
【0014】
一般に、負圧治療システム100の構成要素は、直接または間接的に結合され得る。例えば、負圧源104はコネクタ107に直接結合され得、コネクタ107を介してドレッシング102に間接的に結合され得る。構成要素は、構成要素間で流体(すなわち液体および/またはガス)を移送するための経路を提供するために、互いに流体結合され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、例えば、構成要素は、チューブを介して流体結合され得る。「チューブ」は、本明細書で使用される際、チューブ、パイプ、ホース、導管、または2つの端部間で流体を搬送するように作られた1つまたは複数の管腔を有する他の構造のことを広く指す。典型的にチューブはいくらかの柔軟性のある細長い円筒状の構造であるが、形状および剛性は変化し得る。いくつかの実施形態では、構成要素は、追加的または代替的に、物理的近接性によって結合され得、単一構造物に一体化されるか、同一材料片から形成される。結合は状況によっては機械的、熱的、電気的または化学的な結合(化学結合など)も含み得る。
【0016】
処置の際、組織界面110は、組織部位の内側、それを覆って、その上、またはその近くに配置され得る。カバー108は組織界面110を覆って配置され得、および組織部位近くの組織に封じ付けられ得る。例えば、カバー108は組織部位の周囲の未損傷表皮に封じ付けられ得る。従って、ドレッシング102は、組織部位の近くに、外部環境から実質的に隔絶された密封治療環境を提供することができ、負圧源104は、密封治療環境内の圧力を低減することができる。密封治療環境内の組織界面110を介して組織部位全体に適用された負圧は、組織部位内に大きな歪みおよび微小な歪みを誘発可能であり、ならびに、滲出液および他の流体を組織部位から取り除くことができ、滲出液および他の流体はドレッシングコア112の中に集め、適切に処理することができる。
【0017】
密封治療環境内など、別の構成要素または場所内の圧力を低減するために負圧源を使用することの流体力学は数学的に複雑であり得る。しかしながら、負圧治療に適用可能な流体力学の基本原理は、当業者に一般的によく知られており、圧力を低減するプロセスは、本明細書において、例えば、負圧を「送達する」「分配する」または「発生させる」として説明に役立つように記載され得る。
【0018】
一般に、滲出液および他の流体は流体経路に沿ってより低い圧力の方へ流れる。従って用語「下流」は典型的に、負圧源に相対的により近い流体経路中の位置のことを指す。対照的に用語「上流」は典型的に、負圧源から相対的により離れた位置のことを指す。同様に、特定の特徴を、流体の「入口」または「出口」の観点から、そのような基準枠で記載することが便利であり得る。この方向性は一般に、本明細書の負圧治療システムの様々な特徴および構成要素を記載するために仮定される。しかしながら、流体経路はまた、いくつかの使用において(負圧源の代わりに正圧源を使用することによってなど)逆転される場合もあり、この記述的な規則は、制限的な規則として解釈するべきでない。
【0019】
用語「組織部位」は、本文脈において、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、または靭帯を含むがそれらに限定されない組織の上または中に位置する創傷または欠損のことを広く指す。創傷は、例えば慢性、急性、外傷性、亜急性、および裂開性創傷、部分的に厚いやけど、潰瘍(糖尿病性、圧迫性、または静脈不全性潰瘍など)、皮弁および移植片を含み得る。用語「組織部位」はまた、必ずしも創傷も欠損もないが追加的な組織の成長を追加または促進することが所望され得る領域である組織の領域のことを指す場合もある。例えば、負圧は、採取され得るまたは別の組織箇所へ移植され得る追加の組織を成長させるために特定の組織領域で使用され得る。
【0020】
「負圧」は、ドレッシング102によって提供される密封治療環境の外部の局所的環境中の周囲圧力などの局所的周囲圧力より低い圧力のことを広く指す。多くの場合、局所的周囲圧力は、組織部位が置かれている大気圧でもあり得る。あるいは、圧力は、組織部位における組織に関連付けられる静水圧未満であり得る。特段の指示のない限り、本明細書に記載する圧力の値はゲージ圧力である。同様に、負圧の増大への言及は絶対圧力の低減のことを典型的に指し、一方で、負圧の低減は絶対圧力の増大のことを典型的に指す。
【0021】
負圧源104などの負圧源は負圧の空気貯蔵庫であり得、または、例えば陰圧ポンプ、吸引ポンプ、多くの医療施設で利用可能な壁の吸引ポートまたはミクロポンプなど、密閉体積内の圧力を低減可能な手動装置または電動装置であり得る。負圧源は、センサ、処理ユニット、警報指示器、メモリ、データベース、ソフトウェア、ディスプレイ装置、またはユーザインターフェースなど、負圧治療をさらに促進する他の構成要素内に収容されてもよく、またはそれらと併せて使用されてもよい。組織部位に適用される負圧の量および性質は治療要件に従って変化し得る一方、圧力は通常、−5mmHg(−667Pa)〜−500mmHg(−66.7kPa)の間の、一般に低陰圧とも呼ばれる低い陰圧である。一般的な治療範囲は、−75mmHg(−9.9kPa)〜−300mmHg(−39.9kPa)の間である。
【0022】
組織界面110は組織部位と接触するように全体として適合可能である。組織界面110は組織部位と部分的または完全に接触し得る。組織部位が創傷の場合、例えば、組織界面110は部分的または完全に創傷を満たし得る、または創傷の上に置かれ得る。組織界面110は、実行される処置の種類または組織部位の性質および寸法などの様々な要因に依存して、多くの形態を取り得、また多くの寸法、形状または厚さを有し得る。例えば、組織界面110の寸法および形状は深く不規則な形状の組織部位の輪郭に適合され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、組織界面110は、マニホルドであり得る。「マニホルド」は本文脈において、負圧下に組織部位全体にわたって流体を収集または分配するように適合された複数の経路を提供するあらゆる物体または構造物を広く含む。例えば、マニホルドは、源から負圧を受け入れ、その負圧を組織部位全体に複数の開口を介して分配するように適合され得、組織部位全体から流体を収集し、流体を源の方へ引く効果を有し得る。いくつかの実施形態では、流体経路は逆転されてもよく、または第2の流体経路が組織部位全体に流体を送達することを促すために提供されてもよい。
【0024】
いくつかの説明に役立つ実施形態では、マニホルドの経路は、組織部位にわたる流体の分配または収集を改善するために相互に接続されたチャネルであり得る。例えば、気泡質発泡体、連続気泡発泡体、網状発泡体、多孔性組織集積物およびガーゼまたはフェルトマットなどの他の多孔性材料は、相互接続された流体経路を形成するように適合された細孔、縁部および/または壁を一般に含む。液体、ゲルおよび他の発泡体もまた、開口および流れチャネルを含み得る、またはそれらを含むように硬化され得る。いくつかの説明に役立つ実施形態では、マニホルドは、均一(または準均一)に負圧を組織部位に分配するように適合された相互接続セルまたは細孔を有する多孔質発泡材料であり得る。発泡材料は疎水性または親水性のどちらかであり得る。1つの非限定的な例では、マニホルドは、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio,Texas)から入手可能なGranuFoam(登録商標)ドレッシングなどの連続気泡型網状ポリウレタン発泡体であり得る。
【0025】
組織界面110が親水性材料から作られ得る例において、組織界面110はまた、組織部位から流体を吸い上げ得る一方で、負圧を組織部位に分配し続ける。組織界面110の吸上げ特性は、毛管流または他の吸上げ機序によって組織部位から流体を引き離し得る。親水性発泡体の例は、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio,Texas)から入手可能なV.A.C.WhiteFoam(登録商標)ドレッシングなどのポリビニルアルコールの連続気泡発泡体である。他の親水性発泡体はポリエーテルから作製されたものを含み得る。親水特性を示す他の発泡体は、親水性をもたらすように処理またはコートされた疎水性発泡体を含む。
【0026】
組織界面110はさらに、密封治療環境内の圧力が低減されるとき、組織部位において肉芽形成を促進し得る。例えば、組織界面110の表面のいずれかまたは全てが、負圧が組織界面110を通して適用される場合に組織部位に微小な歪みおよび応力を誘発できる平らでない、粗いまたはぎざぎざのプロファイルを有してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、組織界面110は、生体再吸収性材料から構成され得る。適切な生体再吸収性材料は、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)の高分子ブレンドを含み得るがそれらに限定されない。この高分子ブレンドはポリカーボネート、ポリフマレートおよびカプララクトンも含み得るがそれらに限定されない。組織界面110は新しい細胞成長の足場としてさらに機能し得る、または細胞成長を促進するために足場材料が組織界面110と組み合わせて使用され得る。足場は一般に、細胞成長のためのテンプレートを提供する3次元多孔性構造物など、細胞の成長または組織の形成を向上させるまたは促進するために使用される物体または構造物である。足場材料の説明に役立つ例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、珊瑚状ヒドロキシアパタイト、カーボネート、または処理された同種移植材料を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、カバー108などの密封部材は、細菌遮断層および物理的外傷からの保護を提供し得る。カバー108はまた、蒸発損失を低減可能でありかつ2つの構成要素間、または治療環境と局所的外部環境との間など2つの環境間に流体シールを提供可能な材料から構成され得る。カバー108は例えば、所与の負圧源の負圧を組織部位で維持するのに適したシールを提供できる弾性フィルムまたは膜であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、カバー108は、水蒸気に対し透過性であるが液体不透過性である、ポリウレタンフィルムなどの高分子ドレープであり得る。そのようなドレープは典型的に、25〜50マイクロメートルの範囲内の厚さを有する。透過性材料に関して、その透過性は一般に、所望の負圧を維持できるのに十分に低くあるべきである。
【0029】
カバー108を、未損傷表皮、ガスケットまたは他のカバーなどの取付表面に取り付けるために取付装置が使用され得る。取付装置は多くの形態をとり得る。例えば取付装置は、シール部材の周囲、一部または全体に広がる医療的に許容可能な感圧性接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、カバー108の一部または全部が、25〜65g.s.m.の間のコーティング重量を有するアクリル系接着剤でコートされ得る。シールを改善しかつ漏出を低減するために、より厚い接着剤、または接着剤の組合せが、いくつかの実施形態では適用され得る。取付装置の他の例示的実施形態は、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲルまたはオルガノゲルを含み得る。
【0030】
組織部位は、負圧によって除去可能な流体を生成し得る。組織部位から除去される流体は、後続の処分または分析のために収集可能である。例えば、キャニスタが、創傷から流体を収集するためにドレッシングに流体結合され得る。そのようなキャニスタは、容易に入手可能であり、比較的安価であり得る。しかしながら、キャニスタはまた、扱いにくい場合があり、また、患者の移動自由度を制限する可能性がある。いくつかのドレッシングは、流体を吸収可能で、これは患者の移動自由度を向上し得るが、適切な流体容量を備えたドレッシングを製造することは複雑であり費用が掛かる可能性がある。
【0031】
コア112などの流体処理コアは、流体貯蔵容量を備えたドレッシングを製造する費用および複雑さを低減し得る。例えば、いくつかの実施形態において、多機能コアが、一体装置内で皮膚接触、流体吸上げ、イオン交換、液体吸収、液体遮断および臭気吸収機能を提供する6層以上の層を含み得る。ドレッシングは、各層を一部として製造し、製造時間および費用を低減するプロセスにおいて多機能コアを組み立てるプロセスによって製造され得る。
【0032】
図1に示されるように、コア112は、異なる機能を達成するように構成可能な複数の層を有する多機能コアまたは流体処理装置であり得る。いくつかの実施形態では、コア112は、6つの層を含み得る。例えば、コア112は、創傷界面層または接触層114と、流体分配層または吸上げ層116と、イオン除去層またはイオン交換層118と、液体保持層または吸収層120と、液体妨害層または遮断層122と、臭気除去層または臭気吸収層124とを有し得る。各層は、繊維質ウェブ内に配置される複数の繊維から形成され得る。いくつかの実施形態では、繊維質ウェブは、各繊維が重なり互いに結合され隣接繊維間で開放空間を形成するように配置された複数の繊維を含み得る。繊維質ウェブは織布または不織布であり得る。いくつかの実施形態では、複数の繊維は単層繊維であり得る。いくつかの実施形態では、複数の繊維は二層繊維であり得る。いくつかの実施形態では、各層の繊維は、単層および二層繊維の両方であり得る。コア112は、構造を横切る高い水蒸気透過率(MVTR)と気体透過性を有し得、その結果、乾燥負圧が、すなわち水分含有量がほとんどまたは全くない空気が、コア112の領域全体にわたって分岐され得る。いくつかの実施形態では、コア112は、直立カップ法(upright cup method)を用いて37℃および50%相対湿度で測定したとき、約250g/m/日〜約2000g/m/日の間のMVTRを有し得る。いくつかの実施形態では、コア112は、約50cm/m/日/MPaの酸素の気体透過率を有し得る。
【0033】
図2は、単層繊維200の部分断面図であり、いくつかの例示的実施形態に関連付けられ得る追加的な細部を示すものである。単層繊維200は約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲内の直径を有し得る。単層繊維200は実質的に均質の組成を有する繊維であり得る。例えば、単層繊維200は、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、フルオロカーボンまたはシリコーンなどの単一材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、単層繊維200は、活性炭素粒子または高吸収性高分子粒子または繊維などの追加の材料に関連付けられ得る。例えば、単層繊維200は、シリコーンから形成され得、およびシリコーン内にまたはシリコーン上に配置された活性炭素粒子を有し得る。単層繊維200は、メルトブローン繊維形成、溶融紡糸繊維形成、湿式紡糸繊維形成、または溶液ベース電界紡糸によって形成され得る。
【0034】
メルトブローン繊維形成は、溶融ポリマーをスピンネットまたはダイを通して押出して繊維を製造することを伴い得る。繊維がスピンネットまたはダイを通過するとき、高温の空気が繊維の上に吹き付けられ、繊維を伸長しかつ冷却し得る。溶融紡糸は、ポリマーを溶融し、溶融されたポリマーを紡糸口金に通して絞り出し、繊維を形成することを伴い得る。例えば、溶液を形成するためにシリコーンがグリセロールおよび脱イオン水と混合され得る。溶液は繊維を形成するべく押出機紡糸システムに供給され得る。湿式紡糸は、ポリマーを溶解し、低pHを有する凝固浴を形成することを伴い得る。凝固浴中の液体は気化され、微細繊維を形成し得る。例えば、シリコーンを円筒型紡糸システムによって処理して糸を紡糸することが可能であり、糸は浴中に凝集され、空気乾燥され、ボビンに巻かれ得る。電界紡糸は、ポリマー溶液を電界に曝し、垂滴の表面の電荷の蓄積を誘起し得る。電荷の蓄積は、電界強度の臨海値を超えると、帯電した噴流が射出して微細フィラメントを形成することを引き起こし得る、垂滴の表面張力によって生成される力に直接対抗する力を生成する。次いでフィラメントは、標準的な長さに切断され、ステープル繊維を形成し得る。いくつかの実施形態では、ステープル繊維は、約4mm〜約6mmの間の長さを有し得る。ステープル繊維は互いに撚り合わされてカーディングされ、単層繊維200を形成し得る。
【0035】
図3は、二層繊維300の部分断面図であり、いくつかの例示的実施形態に関連付けられ得る追加的な細部を示すものである。二層繊維300は内側コア302および外側シース304を有し得る。いくつかの実施形態では、内側コア302は実質的に均質の組成を有する繊維であり得る。例えば、内側コア302は、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、フルオロカーボンまたはシリコーンなどの単一材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、内側コア302は、活性炭素粒子または抗菌物質などの追加の材料に関連付けられ得る。例えば、内側コア302は、シリコーンから形成され得、およびシリコーン内にまたはシリコーン上に配置された活性炭素粒子を有し得る。内側コア302は、メルトブローン繊維形成、溶融紡糸繊維形成、湿式紡糸繊維形成、または溶液ベース電界紡糸によって形成され得る。いくつかの実施形態では、内側コア302は、約0.75マイクロメートル〜約75マイクロメートルの範囲内の直径を有し得る。外側シース304は内側コア302の材料と異なる材料のコーティングであり得る。いくつかの実施形態では、外側シース304は、シリコーンゲルまたは親水性ポリウレタンから形成され得る。いくつかの実施形態では、外側シース304は、約0マイクロメートル〜約12.5マイクロメートルの間の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、二層繊維300は、約0.75マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間の全体直径を有し得る。
【0036】
図4はコア112のいくつかの実施形態に関連付けられ得る層の一部の斜視図である。例えば、この層は図4に示されるように織布構造を有する吸上げ層116であり得る。織布とは一般に、繊維が交錯されるように繊維を織る、編む(knitting)、レース編みする、フェルト化する、編組する、または編む(plaiting)ことによって形成された布状材料のことを言う。吸上げ層116が図4に示されているが、接触層114、イオン交換層118、および吸収層120のいずれかまたは全てが、吸上げ層116に類似する織布として同様に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、織布層の繊維は、単層繊維200であり得る。いくつかの実施形態では、織布層の繊維は、二層繊維300であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、吸上げ層116は、開口またはメッシュ孔230の規則的なパターンを形成するべく単層繊維200を織ることによって形成され得る。図4に示されるように、吸上げ層116は、互いに実質的に平行に整列された第1の複数の単層繊維200と、同様に互いに実質的に平行に整列された第2の複数の単層繊維201とを含み得、ここで繊維200は角度を成して繊維201に隣接して配置される。いくつかの実施形態では、繊維200は、繊維201に対して垂直であり得る。繊維200および繊維201は、複数の孔230を有する織物またはメッシュを形成するように互いに重なり合ってもよい。繊維200は複数の交差部分236を形成するように繊維201と交差し得る。交差部分236は、重なり合った繊維によって形成され得る。いくつかの実施形態では、繊維200および繊維201は、網目またはメッシュを形成するように互いに織られ得る。
【0037】
第1繊維200および第2繊維は、それぞれ距離232および234だけ、それぞれ隣接繊維200および繊維201から離間され得、距離232および234は約0.5mm〜約5mmの間であり得る。他の実施形態では、距離232および距離234は、約1.0mm〜約2.5mmの間であり得る。いくつかの実施形態では、距離232および距離234は、実質的に等しい可能性がある。他の実施形態では、距離232および距離234は、異なる可能性がある。
【0038】
いくつかの実施形態では、メッシュ孔230は、約2mmの平均有効直径を有し得る。非円形面積の有効直径は、非円形面積と同じ表面面積を有する円形面積の直径であり得る。例えば、距離232が0.5mmであり距離234が0.5mmであるメッシュ孔230の表面面積は、0.25mmであり得る。0.25mmの表面面積を有する円形面積の直径は約0.56mmであり、結果、例示的なメッシュ孔230の有効直径は約0.56mmである。同様に、距離232が約4mmであり距離234が約4mmである場合、メッシュ孔230の有効直径は約4.51mmであり得る。いくつかの実施形態では、各メッシュ孔230は、メッシュ孔230の有効直径によって形成される面積を有し得る。いくつかの実施形態では、各メッシュ孔230は面積が均一であり得る。他の実施形態では、各メッシュ孔230は面積が均一でない場合がある。メッシュ孔230の面積が均一でない場合、メッシュ孔230の面積の平均は、約0.2mm〜約20mmの間であり得る。接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122および臭気吸収層124のそれぞれは、約0.2mm〜約20mmの間のメッシュ孔230を有し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、吸上げ層116の単層繊維200、201のそれぞれは、直径228を有し得る。他の実施形態では、単層繊維200、201の直径は、異なり得る。交差部分236は突出部241を有し得る。いくつかの実施形態では、交差部分236の突出部241は、単層繊維200、201の直径228と等しい可能性がある。いくつかの実施形態では、突出部241は、吸上げ層116の形成後に吸上げ層116を圧縮することによって低減され得る。突出部241はまた、吸上げ層116をカレンダーに通すことによって低減され得、カレンダーは吸上げ層116のしわを伸ばすために吸上げ層116に圧力を適用し得る。接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122および臭気吸収層124のそれぞれは、突出部241を有し得る。吸上げ層116は厚さ224を有し得る。いくつかの実施形態では、厚さ224は、単層繊維200、201の直径228の合計厚さであり得る。
【0040】
図5は、吸上げ層116など、不織層の一部の概略図であり、負圧治療システム100の他の例示的実施形態に関連付けられ得る追加の細部を示す。不織布は化学的、機械的、熱的または溶剤処理によって互いに結合され得る長い繊維から作製される布状材料の層であり得る。不織布は例えばメルトブローン、エアレイド、サーマルボンド、およびスパンボンド(spun bond)され得る。接触層114、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122、および臭気吸収層124のそれぞれは、本明細書において吸上げ層116に関連して記載されるように不織布として形成され得る。不織吸上げ層116は織布吸上げ層116と同様のまたは類似した働きをし得る。類似する要素は、300に指標化された類似する参照番号を有し得る。いくつかの実施形態では、複数の二層繊維300が、不織吸上げ層116に形成され得る。例えば、二層繊維300は、コンベヤベルト上に分散され、ウェットレイド、エアレイドまたはカーディング/クロスラッピングプロセスによって均一ウェブに広げられ得る。二層繊維300は熱的にまたは樹脂を用いることによって結合されて、吸上げ層116のメッシュを形成し得る。例えば、二層繊維300は重ねられ、交差部分336を形成し得るが、交差部分336で二層繊維300は他の二層繊維300と重なる。吸上げ層116の重なり合った二層繊維300はまた、メッシュ孔330などの開口を形成し得る。図5に示されるように、メッシュ孔330は、形状が均一でない可能性がある。吸上げ層116のメッシュ孔330は、約1mm〜約5mmの間の平均有効直径を有し得る。メッシュ孔330の寸法が均一でない場合、メッシュ孔330のそれぞれの有効直径の平均は約1mm〜約5mmの間であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、吸上げ層116はまた、スパンボンド(spunlaid)プロセスで形成され得る。スパンボンド不織布は、連続プロセスで作製され得る。二層繊維300が二層繊維300をさらに切断することなく製造されるように、二層繊維300は物理的デフレクタによってまたは空気ストリームによってウェブへ分散され得る。
【0042】
概して、不織吸上げ層116の厚さ、二層繊維300、二層繊維300の直径、メッシュ孔330および交差部分336は、それぞれ、織布吸上げ層116、吸上げ層116の厚さ224、単層繊維200、201、直径228、メッシュ孔230、および交差部分236と同様であり、それらに関連して上に記載されたような働きをし得る。
【0043】
図6は、多機能コア112の例示的実施形態に関連付けられ得る追加の細部を示す概略断面分解図である。いくつかの実施形態では、接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122、臭気吸収層124、および剛性層126は、互いに同一の広がりを有し得る。他の実施形態では、接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122、臭気吸収層124、および剛性層126の1つまたは複数が、互いに同一の広がりを有し得る。さらに他の実施形態では、接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122、臭気吸収層124、および剛性層126は、互いに同一の広がりを有さない可能性がある。いくつかの実施形態では、接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、遮断層122、臭気吸収層124、および剛性層126の1つまたは複数は、各層を通して負圧を引き得る。いくつかの実施形態では、接触層114、吸上げ層116、イオン交換層118、吸収層120、臭気吸収層124、および剛性層126の1つまたは複数は、液体透過性であり得る。
【0044】
接触層114は、織布または不織布材料層へと形成される複数の二層繊維300から形成され得る。いくつかの実施形態では、接触層114は、約0.5ミリメートル(mm)〜約2mmの間の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、二層繊維300は、疎水性ポリウレタンから形成された内側コア302と、シリコーンゲルから形成された外側シース304とを有し得る。他の実施形態では、内側コア302は、疎水性ポリウレタンコアであり得、外側シース304は、親水性ポリウレタンであり得る。いくつかの実施形態では、外側シース304の親水性ポリウレタンは、ゲルであり得る。いくつかの実施形態では、銀などの抗菌物質が、接触層114の二層繊維300の外側シース304内に分散され得る。いくつかの実施形態では、ヨウ素などの抗菌物質が、接触層114の二層繊維300の内側コア302内に分散され得る。いくつかの実施形態では、抗菌物質が外側コア304でなく内側コア302内に配置される場合、抗菌物質は徐放特性を有し得る。さらに他の実施形態では、外側シース304は、コラーゲンから形成され得る。いくつかの実施形態では、接触層114は、組織部位の周囲の表皮に封じ付けられ得る。いくつかの実施形態では、接触層114は、シールの形成を補助するように粘着性であり得る。例えば、接触層114は、アメリカ材料試験協会(「ASTM」)規格ASTM D3330に基づき23℃および50%相対湿度においてステンレス鋼基板上で約0.2N/cmの粘着力または引きはがし粘着力を有し得る。いくつかの実施形態では、二層繊維300は、約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強度を有し得、および接触層114は、約0.83立方センチメートル/時の流体流れを許容し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、吸上げ層116は、織布または不織布に形成される複数の単層繊維200から形成され得る。いくつかの実施形態では、吸上げ層116は、約1mm〜約4mmの間の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、単層繊維200は、ポリウレタン、ポリエステルまたはアクリルなどの親水性ポリマーから形成され得る。他の実施形態では、吸上げ層116は、二層繊維300から形成され得る。吸上げ層116が二層繊維300から形成される場合、内側コア302は、疎水性ポリウレタンから形成され得、外側シース304は、親水性ポリウレタンから形成され得る。内側コア302の疎水性ポリウレタンは、親水性ポリウレタンのみから形成された単層繊維200よりも強度をもたらし得る。一般にポリウレタンはその容量水分含有量と反比例する強度を有し得る。内側コア302を形成するために疎水性ポリウレタンを使用することによって、吸上げ層116の二層繊維300の内側コア302は水分の吸収に抵抗し得、それにより、二層繊維300の強度を増大する。例えば、二層繊維300を有する不織布として形成された吸上げ層116は、約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強度を有し得る。いくつかの実施形態では、吸上げ層116は、流体が流体流れの方向に対してある角度を成して広がることを促し得る。例えば、負圧源が、吸上げ層116の厚さと平行に吸上げ層116を通して流体を引く場合、吸上げ層116は、流体が吸上げ層116の厚さに対して垂直に広がることを促し得る。いくつかの実施形態では、吸上げ層116は、約0.83立方センチメートル/時以上の流体流れを許容し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、イオン交換層118は、複数の二層繊維300から形成され得る。いくつかの実施形態では、イオン交換層118は、約0.5mm〜約2mmの範囲内の厚さと、約0.83立方センチメートル/時の流量とを有し得、二層繊維300は、約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強度を有し得る。
【0047】
イオン交換層118の二層繊維300は、疎水性ポリウレタンなどの疎水性ポリマーから形成された内側コア302と、親水性ポリウレタンなどの親水性ポリマーから形成された外側シース304とを有し得る。イオン交換媒体(IEM)は外側シース304内に配置され得る。一般に、IEMは、水素およびヒドロキシルイオンの両方を、ナトリウム、塩化物、カルシウムなど、創傷流体中に見出されるカチオン性およびアニオン性塩イオンと交換し得る。他の実施形態では、イオン交換層118は、イオン交換機能のための活性炭素粒子または繊維を有する親水性ポリマーから掲載された単層繊維200から形成され得る。
【0048】
IEMは2つの電解質間でのまたは電解液と錯体との間でのイオン交換を実現するように適合され得る。電解質は、水などの適切なイオン化溶媒中で溶解されるとイオン化する化合物であり得る。電解液は、NaClなどの溶解塩を含有し得る。錯体は、リガンドまたは錯化剤として知られる固定分子またはアニオンの周囲配列を有する原子またはイオンであり得る。電解質または電解液がIEMと相互作用するとき、IEMは電解質または電解液中のカチオンおよびアニオンを置換する。カチオンは正味の正の電荷を有するイオン、例えばNa+である。カチオンは、電解質または電解液中で、IEMの水素(H+)イオンと置換され得る。アニオンは、正味の負の電荷を有するイオン、例えばCl−である。アニオンは、電解質または電解液中で、IEMのヒドロキシル(OH−)イオンと置換され得る。H+およびOH−イオンは、電解質または電解液中で組み合わされて水を形成し得る。IEMは典型的に、酸性ポリマーでドーピングまたはグラフトされる、ポリスチレンなどの架橋ポリマーから形成された多孔性ビードの形態である。酸性ポリマーの例は、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)またはポリAMPSを含み得る。ポリAMPSは、正に荷電された塩イオンをH+と交換する。酸性ポリマーの別の例は、ポリ(アクリルアミド−N−プロピルトリメチルアンモニウム塩化物)またはポリAPTACを含み得る。ポリAPTACは負に荷電された塩イオンをOH−と交換する。
【0049】
IEMは、アニオンおよびカチオンの両方を同時に吸収する混合床媒体を形成するために、カチオン吸収媒体およびアニオン吸収媒体の混合物を含み得る。混合床媒体の非限定的な例は、Amberlite(商標)IRN150およびTMD−8を含む。IEMは例えば、イオン交換樹脂、ゼオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、粘土、または土壌腐植質から形成され得る。イオン交換樹脂(イオン交換ポリマーとしても知られる)は、通常、有機ポリマー基体から形成される小さなビードの形態の不溶性マトリックスである。イオン交換樹脂は、イオンを捕捉かつ放出する細孔を表面に有し得る。イオン交換樹脂は、例えば架橋ポリスチレンを含むことができる。ゼオライトは微孔性のアルミノケイ酸鉱物である。ゼオライトは多孔質構造を有し、それにより、例えばNa、K、Ca2+およびMg2+などのカチオンがゼオライトに収容されることを可能にする。一般的なゼオライトは、例えば、ホウフッ石、リョウフッ石、クリノプチロライト、輝沸石、ソーダフッ石、フィリップス沸石、タバフッ石を含む。上記の物質に加えて、他のイオン交換媒体は、例えば粒子および布または不織布の形態の両方である活性化された炭、および、Chemviron Carbonとしても知られるZorflex(登録商標)を含む。Chemviron Carbonはまた、100%活性化された炭素としても知られ得る。実験的実施形態において、0.154モル/リットルのNaClを有する流体をイオン交換層118に通した。実験的実施形態において、イオン交換層118は、1時間当たり約0.0026モルの率でNa+およびCL−イオンを除去した。いくつかの実施形態では、イオン交換層118は、同様のまたはそれよりも高いイオン除去率を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、吸収層120は、複数の二層繊維300から形成され得る。吸収層120の二層繊維300は、ポリアクリレート、ポリアクリル、またはカルボキシメチルセルロースなどの高吸収性ポリマーから形成された内側コア302を有し得る。外側シース304は親水性であり得る。いくつかの実施形態では、吸収層120は、高吸収性粒子が中に配置されたエラスタン(elastane)ポリウレタンなどの弾性ポリマーを有する単層繊維200から形成され得る。いくつかの実施形態では、吸収層120の繊維は、織られるまたは織られない可能性がある。いくつかの実施形態では、吸収層120は、約1mm〜約4mmの範囲内の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、単層繊維200および二層繊維300は、約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強度を有し得る。いくつかの実施形態では、吸収層120は、約0.83立方センチメートル/時の流量を許容し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、高吸収性物質または高吸収性粒子は、高吸収性ポリマー(SAP)から形成され得る。概して、それらの質量に比して、SAPは大量の液体、特に水を吸収し保持することができる。例えば、一部のSAPは、それ自体の重量の約500倍の水を、またはそれ自体の体積の約30〜60倍の水を、吸収できる可能性がある。水を吸収するSAPの能力は、吸収される流体のイオン濃度に部分的に基づく可能性がある。SAPは「ヒドロゲル」、「高吸収性物質」または「親水コロイド」としばしば称される種類のものであり得る。SAPは繊維または球体に形成され得る。繊維または球体間の空間または空隙は、減圧が吸収層120内におよびそれを通して送られることを可能にし得る。
【0052】
SAPは、いくつかの方法で、例えば、ゲル重合、溶液重合または懸濁重合によって形成され得る。ゲル重合は、アクリル酸、水、架橋剤および紫外線(UV)開始剤化学物質の混合を伴い得る。混合された混合物は反応器に入れられ得、そこで混合物は、SAPを形成する架橋反応を引き起こすためにUV光に暴露される。混合物は乾燥かつ破砕され得、次いで梱包および/または配送される。溶液重合は、反応物重合ゲルの塊を生成する水ベースモノマー溶液を必要とし得る。モノマー溶液は、モノマーの架橋を促進する発熱性の反応を経る可能性がある。架橋プロセスの後、反応物ポリマーゲルは、細断、乾燥および粉砕され得、その最終の粒状サイズにされる。懸濁重合は、炭化水素ベース溶液中に懸濁される水ベース反応物を必要とし得る。しかしながら、懸濁重合プロセスは、密な制御を必要とし、あまり用いられない。
【0053】
SAPは、水素結合を介して水分子と結合することによって液体を吸収する。水素結合は、極性水素原子と電気的陰性原子との相互作用を伴う。その結果、SAPは、電気的陰性イオン成分を有するSAPの親水性ポリマーと結合する各水分子中の水素原子の能力に基づいて水を吸収する。高吸収性SAPは、塩または遊離酸の形態のアクリルまたはアクリルアミドなどのイオン性架橋親水性ポリマーから形成される。いくつかの実施形態では、吸収層120は、アクリル、アクリレートおよびメタクリルコポリマーのナトリウムおよびカリウムなどのエステル塩から形成されたイオンベースSAPを使用し得る。いくつかの実施形態では、吸収層120は、約0.83立方センチメートル/時を超える率で液体を保持し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、遮断層122は、ポリウレタンまたはフルオロカーボンなどの高疎水性ポリマーから形成された複数の単層繊維200から形成され得る。疎水性は、材料の表面エネルギーによって測定され得、より低い表面エネルギーはより高い疎水性に対応する。いくつかの実施形態では、遮断層122の単層繊維200の疎水性ポリマーは、約25ミリニュートン/メートル以下であり得る。概して、遮断層122は、液体移動に対して圧力バリヤを形成することによって、遮断層122を通る流体流れを防止し得る。例えば、液体を遮断層122に引き込んで貫通させる圧力が遮断層122の水漏出圧力未満である場合、遮断層122の疎水性材料は液体の通過を阻止する。概して、材料の水漏出圧力は、材料の疎水性が増大するにつれて増大する。いくつかの実施形態では、遮断層122は、約125mmHg負圧を超える水漏出圧力を有し得る。
【0055】
遮断層122は、構造の領域全体にわたる空気および負圧の分岐を提供するために不織構造を有し得る。概して、不織構造は、所与の圧力に対して空気流を許容する空隙率または密度を有し得、これは織布構造と同様である。いくつかの実施形態では、不織布は開放性不織布とも称され得る。いくつかの実施形態では、空隙率は、不織布の自由体積の量によって、すなわち、構造のどれくらいの量が繊維に占有されないかによって、測定され得る。例えば、遮断層122は、約85%〜約98%の自由体積を有し得る。いくつかの実施形態では、遮断層122は、約0.2〜約1.0リットル/m/分/Paの空気流が遮断層122を通過することを許容し得る。いくつかの実施形態では、遮断層122は、0.2mmおよび約0.5mmの範囲内の厚さを有し得、単層繊維200は約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強さを有し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、臭気吸収層124は、活性炭素粒子の分散を含有する、ポリウレタンまたはシリコーンなどの高い気体透過性ポリマーから形成された複数の単層繊維200から形成され得る。臭気吸収層124はまた、構造の領域全体にわたる空気および負圧の分岐を提供するために、不織構造を有し得る。いくつかの実施形態では、臭気吸収層124は、約85%〜約98%の自由体積を有し得る。いくつかの実施形態では、臭気吸収層124は、約0.2〜約1.0リットル/m/分/Paの空気流を許容し得る。いくつかの実施形態では、臭気吸収層124は、0.2mmおよび約1mmの範囲内の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、単層繊維200は約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強さを有し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、コア112は剛性層126も有し得る。剛性層126は、ポリウレタンまたは高硬度ポリマーから形成された複数の単層繊維200であり得る。概して、高硬度ポリマーは、約70ショアAを超えるまたはそれに等しい硬度等級を有する。いくつかの実施形態では、高硬度ポリマーは、約75ショアA〜約85ショアAの間の硬度等級を有し得る。いくつかの実施形態では、剛性層126は、約1mmから約4mmの範囲内の厚さを有し得る。剛性層126は、接触層114または臭気吸収層124に隣接して配置され得る。いくつかの実施形態では、剛性層126は、コア112のしわ寄り、折れ曲がり、またはしわの形成に抵抗し得る。いくつかの実施形態では、剛性層126は、剛性層126のないコア112よりも、剛性を約25%〜約40%増大し得る。いくつかの実施形態では、単層繊維200は、約+/−15%の許容誤差で、適用される力の方向において、5cm長さあたり約40ニュートン(N)の引張強さを有し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、接触層114はコア112の基礎部分を形成し得、吸上げ層116は、接触層114に隣接して積層され得る。イオン交換層118は、吸上げ層116に隣接して積層され得、吸収層120は、イオン交換層118に隣接して積層され得る。遮断層122は、吸収層120に隣接して積層され得、臭気吸収層124は遮断層122に隣接して配置され、コア112の頂部を覆い得る。各層が先行する層の上に積層されるとき、各層は互いに結合され得る。例えば、吸上げ層116は、接着、溶接または縫合によって、接触層114に結合され得る。各後続層は同様の方法で結合され、コア112を形成する。概して、各層は、各層の表面面積が実質的に同じであるように、コア112の全長および全幅にわたり延在する。
【0059】
図1を参照すると、コア112はマニホルド110に隣接して配置され得、カバー108は、密封治療環境または密封空間を形成するために、コア112およびマニホルド110を覆って配置され得る。負圧源104は密封空間に流体結合され、組織部位から流体を引くように操作され得る。いくつかの実施形態では、接触層114はマニホルド110と接触し得る。他の実施形態では、接触層114は、組織部位または組織部位に隣接する皮膚と直接接触し得る。接触層114は、コア112と接触する皮膚の刺激を低減するように機能し得る。
【0060】
流体が負圧源104によって組織部位から引かれるとき、流体は接触層114を通して吸上げ層116に引き込まれ得る。吸上げ層116は、コア112を横切る流体の分配を補助するように機能し得る。具体的には、コア112の一部が、例えば吸収層120内に蓄積された流体によって閉塞される場合、吸上げ層116は、流体が閉塞部分の周囲を移動しコア112内をさらに移動するために経路を提供し得る。例えば、吸上げ層116の単層繊維200の親水特性、または吸上げ層116の二層繊維300の外側シース304の親水特性は、吸上げ層116を通過する流体の移動を促進する。
【0061】
流体は吸上げ層116からイオン交換層118へ引き込まれ得る。流体がイオン交換層118中を移動するとき、流体中の塩が除去され得、流体のイオン濃度を低減する。流体はイオン交換層118から吸収層120へ引き込まれ得、ここで流体は吸収層120の高吸収性ポリマー中に蓄積され得る。イオン交換層118と吸収層120の組合せは、コア112の蓄積能力を、イオン交換層118のないコアよりも増大し得る。
【0062】
遮断層122は、吸収層120に捕捉されないあらゆる液体が、遮断層122を越えて、およびコア112の外へ移動することを防止し、それにより負圧源104の損傷の危険性を制限する働きをし得る。例えば、遮断層122の単層繊維200の疎水特性は、液体が遮断層122の中へ入りそれを通過することを阻止する。最後に、流体、大部分ガスは、臭気吸収層124を通して引かれ得るが、そこで流体と共に移動し得る不快な臭気を吸収することができる。
【0063】
図7は、いくつかの実施形態に関連付けられ得るコア112の製造システム500を示す概略図である。製造システム500は複数の作業ステーションを含み得る。いくつかの実施形態では、製造システム500は、6つの作業ステーション:第1作業ステーション502、第2作業ステーション504、第3作業ステーション506、第4作業ステーション508、第5作業ステーション510、および第6作業ステーション512を有し得る。各作業ステーションは、コア112の個々の層を形成するように構成され得る。例えば、第1作業ステーション502は接触層114を形成するように構成され得、第2作業ステーション504は吸上げ層116を形成するように構成され得、第3作業ステーション506はイオン交換層118を形成するように構成され得、第4作業ステーション508は吸収層120を形成するように構成され得、第5作業ステーション510は遮断層122を形成するように構成され得、第6作業ステーション512は臭気吸収層124を形成するように構成され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、各作業ステーション502〜512は、その作業ステーションによって製造される特定層の繊維を形成し得る。いくつかの実施形態では、各作業ステーション502〜512は、その作業ステーションによって製造される特定層の材料を形成するために繊維を織るまたは配置する場合がある。いくつかの実施形態では、各作業ステーション502〜512は、特定層の繊維を形成すること、次いでプロセス中、繊維を特定層に形成するように係合することの両方を実行し得る。次に各層は作業ステーション502〜512から組立ステーション514に供給され得る。組立ステーション514は各層を積層し、各層を互いに結合して多機能シートを形成し得る。組立ステーション514によっていったん形成されると、多機能シートは、負圧治療システム100で使用するために、個々のコア112など、より小さな部分に分割され得る。例えば、いくつかの実施形態では、多機能シートは、変化する組織部位のサイズ向けに様々なサイズのコア112へ切断され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、より多いまたは少ない機能を有する代替コアを形成するために、より多いまたは少ない作業ステーションが製造システム500で使用され得る。例えば、コア112が剛性層126を含む場合、製造システム500は、剛性層126を製造するように構成された第7作業ステーション516を含み得る。同様に、コア112が臭気吸収層124またはイオン交換層118を含まない場合、第3作業ステーション506または第6作業ステーション512は停止され得る、または製造システム500から完全に除去され得る。
【0066】
本明細書に記載したシステム、装置および方法は、著しい有利性を提供し得る。例えば、コア112はドレッシング組立体を簡素化する。それというのも、医療従事者または使用者によって組織部位に配置する準備の整った状態で吸上げおよび吸収コアの特徴の全てを提供できるからである。使用者はコア112を組織部位に位置付けてコア112の上にカバーを取り付けるだけでよいかもしれない。コア112はまた、使用する間ドレッシングの下に疱疹をもたらし得るしわ寄りおよび畝の形成に抵抗し得る。さらに、コア112は、製造する間、高度に構成可能であり、その結果、異なる機能を達成すべく層および材料の追加または取り去りを可能する。例えば、感染症に対する抵抗を支援するために抗菌剤が接触層114に追加され得る。同様に、マトリックスメタロプロテイナーゼの規則性を支援するために、コラーゲンが接触層114に追加され得る。
【0067】
いくつかの説明に役立つ実施形態において示される一方で、本明細書に記載したシステム、装置および方法は様々な変更および修正を受け入れることができることを当業者は認識するであろう。さらに、「または(or)」などの語を使用した様々な代替案の記載は、文脈が明白に要求しない限り相互排他性を要求せず、また、不定冠詞「a」または「an」は、文脈が明白に要求しない限りその主体を単一の例に制限しない。
【0068】
付随する請求項は上に記載した主題の新規かつ発明的な態様を記載するが、それら請求項は具体的に詳細に挙げられない追加の主題も包含し得る。例えば、特定の特徴、要素または態様は、新規かつ発明的な特徴を当業者に既に知られているものから区別する必要のない場合、請求項から省略される場合がある。本明細書に記載した特徴、要素および態様はまた、付随する請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく組み合わされてもよく、または同一、同等または同様の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7