特許第6802156号(P6802156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802156有機ELデバイス、有機EL照明パネル、有機EL照明装置および有機ELディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802156
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】有機ELデバイス、有機EL照明パネル、有機EL照明装置および有機ELディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20201207BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201207BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20201207BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20201207BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20201207BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20201207BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   H01L27/32
   H05B33/02
   G09F9/30 365
   G09F9/30 308A
   G09F9/30 309
   G09F9/30 310
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-525209(P2017-525209)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2016067420
(87)【国際公開番号】WO2016208430
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-129146(P2015-129146)
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519147348
【氏名又は名称】株式会社ホタルクス
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】長尾 和浩
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−118179(JP,A)
【文献】 特表2012−517086(JP,A)
【文献】 特開2006−294612(JP,A)
【文献】 特開2011−053339(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146583(WO,A1)
【文献】 特開2006−269515(JP,A)
【文献】 特開2002−151252(JP,A)
【文献】 特開2004−227792(JP,A)
【文献】 特開2006−086504(JP,A)
【文献】 特開2007−335327(JP,A)
【文献】 特開2006−252988(JP,A)
【文献】 特開2004−281085(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139746(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0062290(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0126355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/12
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、第2基板と、1以上の有機EL素子と、シール層とを有し、前記有機EL素子は、第1基板側と第2基板側の一対の電極と有機EL層とを有し、
前記第1基板の一方の表面は、前記1以上の有機EL素子が配置された実装表面であり、前記第1基板および前記第2基板は、前記シール層を介して、前記第1基板の実装表面と前記第2基板の一方の表面とが対向するように積層され、
前記シール層は、前記第1基板の実装表面における前記第2基板との対向領域の端部全域と、前記第2基板の対向表面における前記第1基板との対向領域の端部全域とにおいて、前記第1基板と前記第2基板との隙間をシールし、
さらに、1以上の支持層を有し、
前記支持層は、前記第1基板の実装表面における前記有機EL素子の非配置領域の全部または一部と、前記第2基板の対向表面における前記非配置領域の全部または一部に対向する対向領域とを、連結するように配置されており、
前記支持層は、絶縁層と、該絶縁層より第2基板側にある、前記有機EL層と同じ構成の層と、前記有機EL層と同じ構成の層よりも第2基板側にある、前記第2基板側の電極と同じ材料の層と、さらに、前記第2基板側の電極と同じ材料の層よりも第2基板側にある、前記シール層と同じ組成の層を有する積層体であることを特徴とする有機ELデバイス。
【請求項2】
前記第1基板の実装表面の面方向において、前記支持層1つあたりの断面積が、15〜80000μmの範囲である、請求項1に記載の有機ELデバイス。
【請求項3】
前記第1基板の実装表面の面方向において、前記シール層で囲まれる領域における前記支持層の密度が、10〜10000個/cmの範囲である、請求項1からのいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項4】
第1基板と、第2基板と、1以上の有機EL素子と、シール層とを有し、前記有機EL素子は、第1基板側と第2基板側の一対の電極と有機EL層とを有し、
前記第1基板の一方の表面は、前記1以上の有機EL素子が配置された実装表面であり、前記第1基板および前記第2基板は、前記シール層を介して、前記第1基板の実装表面と前記第2基板の一方の表面とが対向するように積層され、
前記シール層は、前記第1基板の実装表面における前記第2基板との対向領域の端部全域と、前記第2基板の対向表面における前記第1基板との対向領域の端部全域とにおいて、前記第1基板と前記第2基板との隙間をシールし、
さらに、1以上の支持層を有し、
前記支持層は、前記シール層と同じ材料で形成され、前記第1基板の実装表面における前記有機EL素子の非配置領域の全部または一部と、前記第2基板の対向表面における前記非配置領域の全部または一部に対向する対向領域とを、連結するように配置されており、
前記第1基板の実装表面における前記非配置領域の全部または一部は、一対の電極と有機EL層とを有し、且つ、前記非配置領域の一対の電極間に絶縁層を有する領域であることを特徴とする有機ELデバイス。
【請求項5】
前記電極間の絶縁層は、第1基板側に断面積が15〜80000μmの範囲の山裾を有する山状である請求項に記載の有機ELデバイス。
【請求項6】
前記第1基板の実装表面の面方向において、前記シール層で囲まれる領域における発光領域が、80%以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項7】
前記第1基板と前記第2基板とが対向する対向方向において、前記有機EL素子は、前記一対の電極のうち一方の電極層と、前記有機EL層と、前記一対の電極のうち他方の電極層とが、この順序で積層された積層体である、請求項1からのいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項8】
前記有機EL素子は、前記第1基板側の電極層が、陽極であり、前記第2基板側の電極層が、陰極である、請求項記載の有機ELデバイス。
【請求項9】
前記第1基板の実装表面における前記非配置領域の全部または一部は、前記支持層の配置領域である、請求項1からのいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項10】
前記第1基板および前記第2基板が、可撓性基板である、請求項1からのいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項11】
前記第1基板と前記第2基板との間であり且つ前記シール層で囲まれる空間に、充填剤が充填されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の有機ELデバイスを含むことを特徴とする有機EL照明パネル。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の有機ELデバイスまたは請求項12記載の有機EL照明パネルを含むことを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の有機ELデバイスまたは請求項12記載の有機EL照明パネルを含むことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイス、有機EL照明パネル、有機EL照明装置および有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Organic Electoro−Luminescence)デバイスは、一般的に、有機EL素子(有機EL層および一対の電極)と、前記有機EL素子を積層する基板と、封止基板と、シール層と、充填剤とを含み、前記基板と前記封止基板とは、それぞれの対向面における周端部に配置された前記シール層を介して積層され、前記基板と前記封止基板との間の空間に、前記充填剤が充填された構成である。
【0003】
他方、有機ELデバイスの中でも、近年、曲げることが可能なフレキシブル有機ELデバイスが着目されており、その場合、前記基板および前記封止基板として、フレキシブルな基板(可撓性基板)が使用される(特許文献1)。しかし、フレキシブル有機ELデバイスを曲げると、湾曲部とその周辺において、前記基板と前記封止基板との厚み方向の距離が近づき、前記封止基板の内部側表面が前記有機EL層に接触し、前記有機EL層に傷がついてしまうことがある。前記有機EL層が傷つくと、その部分において発光しなくなるという問題がある。
【0004】
また、曲げによって、前記基板と前記シール層との界面や前記封止基板と前記シール層との界面に応力が集中し、前記基板または前記封止基板から前記シール層が剥がれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−118674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、湾曲時に生じる有機EL層の損傷を防止可能な有機ELデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の有機ELデバイスは、
第1基板と、第2基板と、1以上の有機EL素子と、シール層とを有し、
前記有機EL素子は、有機EL層と一対の電極とを有し、
前記第1基板の一方の表面は、前記1以上の有機EL素子が配置された実装表面であり、
前記第1基板および前記第2基板は、前記シール層を介して、前記第1基板の実装表面と前記第2基板の一方の表面とが対向するように積層され、
前記シール層は、前記第1基板の実装表面における前記第2基板との対向領域の端部全域と、前記第2基板の対向表面における前記第1基板との対向領域の端部全域とにおいて、前記第1基板と前記第2基板との隙間をシールし、
さらに、1以上の支持層を有し、
前記支持層は、前記第1基板の実装表面における前記有機EL素子の非配置領域の全部または一部と、前記第2基板の対向表面における前記非配置領域の全部または一部に対向する対向領域とを、連結するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、湾曲時に生じる有機EL層の損傷を防止可能な有機ELデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A)は、実施形態1の有機ELデバイスの構成の一例を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す有機ELデバイスのI−I方向から見た断面図である。
図2図2は、実施形態2の有機ELデバイスの構成の一例を示す断面図である。
図3図3は、実施形態3の有機ELデバイスの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の有機ELデバイス、有機EL照明パネル、有機EL照明装置および有機ELディスプレイについて、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。なお、以下の図1から図3において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。
【0011】
[実施形態1]
本実施形態は、支持層15が、2層以上の積層体であり、第1基板11上の陽極16を介して、第1基板11と第2基板12とを連結し、且つ、第1基板11の実装表面における有機EL素子の非配置領域の一部が、支持層15の配置領域である有機ELデバイスの一例である。本例においては、有機EL素子の非配置領域である有機EL層13端部とシール層14との間に、支持層15が配置されていない。ただし、本実施形態は、本発明の有機ELデバイスの一例に過ぎず、本発明の有機ELデバイスにおいて、有機EL層端部とシール層との間の領域に、さらに、支持層があってもよい。図1に、本実施形態の有機ELデバイスを示す。図1(A)は、本実施形態の有機ELデバイスの構成の一例を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す有機ELデバイスのI−I方向から見た断面図である。図1(A)および(B)に示すように、本実施形態の有機ELデバイス10は、第1基板11と、第2基板12と、有機EL素子と、シール層14とを有する。前記有機EL素子は、有機EL層13と一対の電極(陽極16および陰極17)とを有する。第1基板11の一方の表面(図1(B)においては、上面)は、前記有機EL素子が配置された実装表面である。第1基板11および第2基板12は、シール層14を介して、第1基板11の実装表面と第2基板12の一方の表面(図1(B)においては、下面)とが対向するように積層されている。シール層14は、第1基板11の実装表面における第2基板12との対向領域の端部全域と、第2基板12の対向表面における第1基板11との対向領域の端部全域とにおいて、第1基板11と第2基板12との隙間をシールしている。本実施形態の有機ELデバイス10は、さらに、1以上の支持層15(図1においては、45個)を有する。支持層15は、図1(B)に示すように、下部支持層15a、第1の中部支持層15b、第2の中部支持層15cおよび上部支持層15dの積層体である。下部支持層15aの一方の面(図1(B)においては、下面)は、陽極16と接しており、下部支持層15aの他方の面(図1(B)においては、上面)は、第1の中部支持層15bの一方の面(図1(B)においては、下面)と接している。第1の中部支持層15bの他方の面(図1(B)においては、上面)は、第2の中部支持層15cの一方の面(図1(B)においては、下面)と接している。第2の中部支持層15cの他方の面(図1(B)においては、上面)は、上部支持層15dの一方の面(図1(B)において、下面)と接しており、上部支持層15dの他方の面(図1(B)においては、上面)は、第2基板12の対向表面と接している。これにより、支持層15は、第1基板11の実装表面における前記有機EL素子の非配置領域の一部と、第2基板12の対向表面における前記非配置領域の一部に対向する対向領域とを、連結している。図1には、正方形状である有機ELデバイス10を例示したが、本発明の有機ELデバイスの形状はこの例に限定されず、例えば正方形状以外の平行四辺形状(長方形状、菱形状を含む。)、台形状、五角形状、六角形状等の正方形状以外の多角形状;円状;楕円状;およびそれらに近い形状(例えば、略正方形状等)等であってもよい。
【0012】
本実施形態の有機ELデバイス10は、湾曲可能なデバイスであり、いわゆるフレキシブル有機ELデバイスであることが好ましい。そのため、第1基板11および第2基板12は、それぞれ、可撓性基板であることが好ましい。
【0013】
第1基板11は、有機EL層13の発光を透過させる透過率の高いものであることが好ましい。第1基板11の透過率は、全光線透過率で80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。第1基板11の形成材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエーテルサルフォン;ポリ炭酸エステル;等があげられる。第1基板11のみでは水分の透過を抑制するのに不十分である場合には、第1基板11の実装表面上に水分透過を抑制するためのバリア膜を形成することが好ましい。第1基板11の大きさ(長さおよび幅)は、特に制限されず、例えば、所望の有機ELデバイス10の大きさに応じて、適宜設定すればよい。第1基板11の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、20〜300μmの範囲である。なお、第1基板11に加え若しくは代えて、後述の第2基板12を有機EL層13の発光を透過させる透過率の高いものとしてもよい。
【0014】
第2基板12の形成材料としては、例えば、第1基板11の形成材料として例示したものと同様の材料があげられる。第1基板11および第2基板12の形成材料は、必ずしも同一でなくてもよいが、曲げ応力が同一または近似するものであることが好ましい。第2基板12の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、20〜300μmの範囲である。
【0015】
前記有機EL素子は、陽極16、有機EL層13および陰極17が、この順序で積層された積層体である。本実施形態の有機ELデバイス10では、第1基板11上に陽極16が形成され、陽極16上に、下部支持層15aが形成され、陽極16および下部支持層15a上に、同じ材料を用いて、それぞれ、有機EL層13および第1の中部支持層15bが形成され、有機EL層13および第1の中部支持層15bの上に、同じ材料を用いて、それぞれ、陰極17および第2の中部支持層15cが形成されている。その結果、陽極16、有機EL層13および陰極17が積層された領域が前記有機EL素子となり、陽極16と第1の中部支持層15bとの間に下部支持層15aが介在する支持層15の配置領域が前記有機EL素子の非配置領域の一部となっている。
【0016】
陽極16は、有機EL層13の発光を透過させる透過率の高いものであることが好ましい。陽極16の透過率は、全光線透過率で85%以上であることが好ましい。陽極16の形成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛等があげられる。図1に例示する有機ELデバイス10では、陽極16を長方形状としているが、本実施形態の有機ELデバイスはこの例に限定されず、陽極16は、有機EL層13に電圧を印加可能であれば、いかなる形状であってもよい。陽極16は、前記有機EL素子毎に分割して形成することも可能であるが、例えば、図1に例示のように連続膜として形成することが好ましい。これにより、例えば、陽極16のパターニングを不要化又は簡略化できるため、有機ELデバイス10の製造が容易となり、製造コストを抑えることができる。また、陽極16のパターニングされた端部の凹凸により、例えば、前記有機EL素子にショートが発生する等の不具合も回避できる。陽極16の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、50〜300nmの範囲である。なお、第2基板12の形成材料が透過率の高いものである場合には、陽極16と後述の陰極17との配置箇所を、入れ替えてもよい。
【0017】
有機EL層13としては、従来公知の一般的な有機EL層とすればよく、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機ELを含む発光層、電子輸送層、電子注入層が、順次積層された積層構造等である。有機EL層13の各層の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、1〜200nmの範囲であり、有機EL層13全体の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、100〜1000nmの範囲である。
【0018】
陰極17の形成材料としては、例えば、アルミニウム、銀等があげられる。また、陰極17の形成材料としては、例えば、陽極16の形成材料として例示したものと同様の透過率の高い材料を用いてもよい。例えば、第1基板11、第2基板12、陽極16および陰極17の全てを透過率の高い材料で形成すれば、全体が透明の有機ELデバイス10を製造可能である。陰極17の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、50〜300nmの範囲である。
【0019】
シール層14の形成材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の紫外線硬化型接着剤または熱硬化型接着剤等があげられる。シール層14は、有機EL層13の厚さおよび陰極17の厚さの合計よりも若干厚く形成され、その厚さは、例えば、1〜100μmの範囲である。
【0020】
図1に例示する有機ELデバイス10では、支持層15は、円柱状である。ただし、本実施形態の有機ELデバイス10はこの例に限定されず、支持層15は、例えば、六角柱等の角柱状等であってもよい。支持層15は、前記有機EL素子を分割し、各素子を取り囲むように格子状に形成することも可能であるが、例えば、図1(A)に例示のように、平面視で柱状の支持層15をドット状にパターニングすることが好ましい。これにより、例えば、支持層15を格子状に形成するよりも、第1基板11および第2基板12との接触面積を小さくでき、有機ELデバイス10の可撓性を高くでき、また、後述のように、発光領域も広くできる。第1基板11の実装表面の面方向において、1つあたりの支持層15の断面積は、平均直径で5μm以上、300μm以下の円の面積に相当することが好ましく、より好ましくは、平均直径で8μm以上、100μm以下の円の面積に相当することである。前述の支持層15の断面積は、15〜80000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、50〜8000μmの範囲である。
【0021】
第1基板11の実装表面の面方向において、シール層14で囲まれる領域における支持層15の密度は、10〜10000個/cmの範囲であることが好ましい。前記密度を前記範囲とすれば、有機ELデバイス10の湾曲時に第2基板12の対向表面が有機EL層13に接触するのをより好適に防止でき、その結果、有機EL層13の損傷をより好適に防止可能である。前記密度は、より好ましくは、100〜400個/cmの範囲である。また、第1基板11の実装表面において、シール層14で囲まれる領域における発光領域は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは、90%以上である。前記発光領域とは、前記有機EL素子の配置領域である。
【0022】
下部支持層15aは、絶縁層であることが好ましく、その形成材料としては、例えば、樹脂、無機化合物等があげられ、第1基板11および第2基板12の形成材料として例示したものと同様の材料であってもよい。下部支持層15aの厚さは、特に制限するものではないが、平均0.2μm以上、100μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは、平均1μm以上、30μm以下の範囲である。
【0023】
第1の中部支持層15bの構成は、前述のとおり、有機EL層13と同じである。
【0024】
第2の中部支持層15cの形成材料および厚さは、前述のとおり、陰極17と同じである。
【0025】
上部支持層15dは、シール層14の形成材料と同じ材料で形成されることが好ましい。上部支持層15dの厚さは、例えば、図1(B)に例示のように、シール層14の厚さから下部支持層15a、第1の中部支持層15bおよび第2の中部支持層15cの厚さを差し引いた値としてもよいし、シール層14と同じ厚さやそれ以外の厚さとしてもよく、特に制限されない。
【0026】
本実施形態の有機ELデバイス10において、第1基板11と第2基板12との間であり且つシール層14で囲まれる空間(図1(B)における白抜き部分)に、充填剤が充填されていてもよい。前記充填剤としては、例えば、不活性ガス等があげられる。また、前記充填剤として、シリコーンに酸化カルシウム等の捕水剤を混練したものを用いれば、有機ELデバイス10の湾曲時に第2基板12の対向表面が有機EL層13に接触するのをより好適に防止でき、その結果、有機EL層13の損傷をより好適に防止可能である。
【0027】
つぎに、本実施形態の有機ELデバイス10の製造方法について、例をあげて説明する。ただし、この製造方法は例示に過ぎず、本実施形態の有機ELデバイス10は、いかなる方法で製造してもよい。
【0028】
まず、第1基板11の実装表面上に、陽極16を形成する。陽極16は、例えば、シャドーマスクを介して、前述の陽極16の形成材料を、スパッタ法、化学気相蒸着(CVD)法等の従来公知の方法で成膜することで形成可能である。また、陽極16は、前述の陽極16の形成材料を、第1基板11の実装表面上に一様に成膜し、フォトリソグラフィーにより所望の形状にパターニングすることでも形成可能である。
【0029】
つぎに、陽極16上に、下部支持層15aを形成する。下部支持層15aは、例えば、前述の下部支持層15aの形成材料を用いて、陽極16の形成方法と同様にして形成できる。また、下部支持層15aは、前述の下部支持層15aの形成材料のディスペンス塗布、インクジェット塗布、スクリーン・フレキソ・グラビア等の印刷によっても形成可能である。
【0030】
下部支持層15aをフォトリソグラフィーにより形成する場合、下部支持層15aは、例えば、陽極16上にフォトレジストを成膜し、前記フォトレジスト膜をフォトリソグラフィーによりパターニングすることで形成可能である。前記フォトレジストとしては、ネガ型、ポジ型のいずれを用いてもよく、例えば、アクリル系樹脂、ノボラック、ポリイミド等のネガ型を用いることができる。フォトリソグラフィーによれば、10μm単位の微細なパターンの形成が可能であり、また、前記フォトレジストとして透明のアクリル系樹脂を用いれば、有機EL層13からの発光を遮断することもないため、好ましい。
【0031】
下部支持層15aを印刷により形成する場合、下部支持層15aが所望の厚さとなるように、複数回反復して実施してもよい。印刷により形成した下部支持層15aは、フォトリソグラフィーによる場合より、第1基板11の実装表面の面方向における1つあたりの断面積が大きくなるが、厚さを厚くしやすく、また、形成材料の選択幅が広がり、形成工程・形成装置も簡便であり、形成効率が高く、安価に形成可能である。
【0032】
つぎに、陽極16上および下部支持層15a上に、同じ形成材料を用いて、それぞれ、有機EL層13および第1の中部支持層15bを同時に形成する。このように、同じ形成材料を用いて、有機EL層13および第1の中部支持層15bを同時に形成すれば、それらのパターニングを不要化または簡略化できるため、例えば、有機ELデバイス10をより容易に製造可能である。これについては、後述の陰極17および第2の中部支持層15cについても同様である。有機EL層13および第1の中部支持層15bは、例えば、従来公知の形成材料を用いて、抵抗加熱による真空蒸着法、MBE(分子線エピタキシー)法、レーザーアブレーション法等の従来公知の方法でシャドーマスクを介して形成可能である。また、有機EL層13および第1の中部支持層15bの形成に高分子材料を用いる場合、前記高分子材料を液状にしてインクジェット等の印刷により陽極16および下部支持層15a上に有機EL層13および第1の中部支持層15bを形成することも可能であり、また、感光性塗布液にして、スピンコートまたはスリットコートし、フォトリソグラフィーにより陽極16および下部支持層15a上に有機EL層13および第1の中部支持層15bを形成することも可能である。
【0033】
つぎに、有機EL層13上および第1の中部支持層15b上に、同じ形成材料を用いて、それぞれ、陰極17および第2の中部支持層15cを同時に形成する。陰極17および第2の中部支持層15cは、前述の陰極17の形成材料を用いて、例えば、真空蒸着法、スパッタ法等の従来公知の方法により形成可能である。
【0034】
つぎに、シール層14および上部支持層15dを、前述のように、同じ形成材料を用いて、それぞれ、陽極16上および第2の中部支持層15d上に同時に形成し、シール層14および上部支持層15dの上面に、第2基板12を接着または融着する。このようにして、本実施形態の有機ELデバイス10を得ることができる。
【0035】
本実施形態の有機ELデバイス10によれば、支持層15が、第1基板11の実装表面における前記有機EL素子の非配置領域の一部と、第2基板12の対向表面における前記非配置領域の一部に対向する対向領域とを、連結するように配置されていることで、有機ELデバイス10の湾曲時に第1基板11と第2基板12との厚み方向の距離が近づくのを抑制し、その結果、有機ELデバイス10の湾曲時に生じる有機EL層13の損傷を防止可能である。また、図1(A)に示すように、平面視で柱状の支持層15をドット状にパターニングすれば、有機ELデバイス10の湾曲時の曲げ応力を分散し、第1基板11または第2基板12からシール層14、下部支持層15aおよび上部支持層15dが剥がれるのを防止できる。
【0036】
本実施形態の有機ELデバイス10は、後述のように、例えば、有機EL照明パネル、有機EL照明装置、有機ELディスプレイ等、幅広い用途に用いることができる。
【0037】
[実施形態2]
本実施形態は、支持層15が、単層体であり、第1基板11上の陽極16を介して、第1基板11と第2基板12とを連結し、且つ、第1基板11の実装表面における有機EL素子の非配置領域の一部が、有機EL層13が配置されていない領域である有機ELデバイスの一例である。図2は、本実施形態の有機ELデバイスの構成の一例を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の有機ELデバイス20は、支持層15が、単層体である点以外、実施形態1の有機ELデバイス10と同様である。
【0038】
支持層15の形成材料としては、例えば、実施形態1において下部支持層15aの形成材料として例示したもの、シール層14の形成材料として例示したもの等があげられる。支持層15の厚さは、例えば、図2に例示するように、シール層14の厚さと同じとしてもよいし、それ以外の厚さとしてもよく、特に制限されない。
【0039】
つぎに、本実施形態の有機ELデバイス20の製造方法について、例をあげて説明する。ただし、この製造方法は例示に過ぎず、本実施形態の有機ELデバイス20は、いかなる方法で製造してもよい。
【0040】
まず、実施形態1と同様にして、第1基板11の実装表面上に、陽極16を形成する。実施形態1と同様に、陽極16は、前記有機EL素子毎に分割して形成することも可能であるが、例えば、図2に例示のように連続膜として形成することが好ましい。これにより、例えば、陽極16のパターニングを不要化又は簡略化できるため、有機ELデバイス20の製造が容易となり、製造コストを抑えることができる。また、陽極16のパターニングされた端部の凹凸により、例えば、前記有機EL素子にショートが発生する等の不具合も回避できる。これについては、実施形態3についても同様である。
【0041】
つぎに、陽極16上に、実施形態1における下部支持層15aの形成と同様の方法により、前述の支持層15の形成材料を用いて、後に形成するシール層14と同じ厚さとなるように、支持層15を形成する。
【0042】
つぎに、実施形態1と同様にして、陽極16上に、支持層15の形成箇所を除き、有機EL層13を形成する。
【0043】
つぎに、実施形態1と同様にして、有機EL層13上のみに、陰極17を形成する。
【0044】
つぎに、シール層14を、陽極16上に形成し、シール層14および支持層15の上面に、第2基板12を接着または融着する。このようにして、本実施形態の有機ELデバイス20を得ることができる。
【0045】
本実施形態の有機ELデバイス20によっても、実施形態1の有機ELデバイス10と同様の効果を得ることができ、本実施形態の有機ELデバイス20は、実施形態1の有機ELデバイス10と同様の用途に利用可能である。
【0046】
[実施形態3]
本実施形態は、第1基板11の実装表面における有機EL素子の非配置領域の一部が、一対の電極(陽極16および陰極17)と有機EL層13とを有し、且つ、前記一対の電極(陽極16および陰極17)間に絶縁層18を有する有機ELデバイスの一例である。図3は、本実施形態の有機ELデバイスの構成の一例を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態の有機ELデバイス30は、下部支持層15aの位置に絶縁層18が形成されている点、有機EL層13が連続膜として形成されている点、陰極17が有機EL層13上に連続膜として形成されている点、および、上部支持層15dの位置に支持層15が形成されている点以外、実施形態1の有機ELデバイス10と同様である。本実施形態の有機ELデバイス30では、陽極16、有機EL層13および陰極17が積層された領域が前記有機EL素子となり、陽極16、絶縁層18、有機EL層13および陰極17が積層された領域が前記有機EL素子の非配置領域の一部となっている。
【0047】
絶縁層18は、滑らかな傾斜を伴う山状にパターニングされている。第1基板11の実装表面の面方向において、1つあたりの絶縁層18の山裾部分の断面積は、平均直径で5μm以上、300μm以下の円の面積に相当することが好ましく、より好ましくは、平均直径で8μm以上、100μm以下の円の面積に相当することである。前述の絶縁層18の山裾部分の断面積は、15〜80000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、50〜8000μmの範囲である。絶縁層18の厚さ(高さ)は、特に制限するものではないが、平均0.2μm以上、100μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは、平均1μm以上、30μm以下の範囲である。絶縁層18の形成材料としては、例えば、実施形態1で下部支持層15aの形成材料として例示したものと同様の材料、10μm単位の微細なパターニングが可能なフォトレジスト材料(例えば、アクリル系樹脂、ノボラック、ポリイミド等)等があげられる。
【0048】
支持層15の形成材料としては、例えば、実施形態1において上部支持層15dの形成材料として例示したもの等があげられる。支持層15の厚さは、例えば、図3に例示するように、シール層14の厚さから絶縁層18、有機EL層13および陰極17の厚さを差し引いた値としてもよいし、シール層14と同じ厚さやそれ以外の厚さとしてもよく、特に制限されない。
【0049】
つぎに、本実施形態の有機ELデバイス30の製造方法について、例をあげて説明する。ただし、この製造方法は例示に過ぎず、本実施形態の有機ELデバイス30は、いかなる方法で製造してもよい。
【0050】
まず、実施形態1と同様にして、第1基板11の実装表面上に、陽極16を形成する。
【0051】
つぎに、実施形態1における下部支持層15aの形成と同様の方法により、前述の絶縁層18の形成材料を用いて、陽極16上に、絶縁層18を形成する。このとき、前述の絶縁層18の形成材料の粘度が所望の値となるように形成温度を調整すれば、絶縁層18を容易に滑らかな傾斜を伴う山状とすることが可能である。
【0052】
つぎに、連続膜として形成する点以外は実施形態1と同様にして、陽極16および絶縁層18の上に、有機EL層13を形成する。
【0053】
つぎに、実施形態1と同様の方法により、有機EL層13上に、陰極17の連続膜を形成する。
【0054】
つぎに、シール層14および支持層15を、同じ形成材料を用いて、それぞれ、陽極16上および陰極17上に同時に形成し、シール層14および支持層15の上面に、第2基板12を接着または融着する。このようにして、本実施形態の有機ELデバイス30を得ることができる。実施形態1と同様に、例えば、支持層15を、平面視で柱状のドット状にパターニングすれば、例えば、支持層15を格子状に形成するよりも、第1基板11および第2基板12との接触面積を小さくでき、有機ELデバイス30の可撓性を高くでき、また、発光領域も広くできる。
【0055】
本実施形態の有機ELデバイス30によっても、実施形態1の有機ELデバイス10と同様の効果を得ることができ、本実施形態の有機ELデバイス30は、実施形態1の有機ELデバイス10と同様の用途に利用可能である。また、本実施形態の有機ELデバイス30は、有機EL層13が連続膜であるため、そのパターニングを不要化またはより簡略化でき、製造が容易である。
【0056】
[実施形態4]
本実施形態では、本発明の有機EL照明パネルについて説明する。本発明の有機ELパネルは、実施形態1〜3の有機ELデバイスを含むことを特徴とし、その他の構成および条件は、何ら制限されず、例えば、従来公知の有機EL照明パネルと同様とすればよい。
【0057】
[実施形態5]
本実施形態では、本発明の有機EL照明装置について説明する。本発明の有機EL照明装置は、実施形態1〜3の有機ELデバイスまたは実施形態4の有機EL照明パネルを含むことを特徴とし、その他の構成および条件は、何ら制限されず、例えば、従来公知の有機EL照明装置と同様とすればよい。
【0058】
[実施形態6]
本実施形態では、本発明の有機ELディスプレイについて説明する。本発明の有機ELディスプレイは、実施形態1〜3の有機ELデバイスまたは実施形態4の有機EL照明パネルを含むことを特徴とし、その他の構成および条件は、何ら制限されず、例えば、従来公知の有機ELディスプレイと同様とすればよい。
【0059】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0060】
この出願は、2015年6月26日に出願された日本出願特願2015−129146を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、湾曲時に生じる有機EL層の損傷を防止可能な有機ELデバイスを提供することができる。本発明の有機ELデバイスは、例えば、有機EL照明パネル、有機EL照明装置、有機ELディスプレイ等、幅広い用途に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10、20、30 有機ELデバイス
11 第1基板
12 第2基板
13 有機EL層
14 シール層
15 支持層
16 陽極
17 陰極
18 絶縁層
図1
図2
図3